説明

地形図作成装置及び地形図作成方法

【課題】微地形が判読しやすい地形図を作成することができる地形図作成装置及び地形図作成方法を提供する。
【解決手段】色相決定部10、輝度決定部12及び凹凸補正部14が、数値標高モデル24から標高データを取得すると、上記標高データに基づいて、色相決定部10が色相化標高データを生成し、輝度決定部12が太陽光反射強度データを生成し、凹凸補正部14が微細な凹凸情報の補正データを生成する。また、彩度決定部16は、上記凹凸補正部14の処理結果に基づいて彩度データを決定する。画像合成部18は、上記色相化標高データ、太陽光反射強度データ、彩度データを使用し、対象となっている地表面の画像データをHSI色空間の画像データとして合成し、この画像データを画像変換部20がRGB色空間に変換して画像表示部22に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地形図作成装置及び地形図作成方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、3次元地形を2次元(平面)上に表現する方法として、等高線図、標高段彩図、陰影図等があるが、地形の判読には十分とは言えなかった。
【0003】
そこで、下記特許文献1には、地表面を凹部、凸部及び平坦部に分離し、凹部に寒色系、凸部に暖色系色を付与して地表面の凹凸を識別しやすくした技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−72857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術においては、地表面の微細な状態(微地形)を表現することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、微地形が判読しやすい地形図を作成することができる地形図作成装置及び地形図作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の地形図作成装置の発明は、地表面の標高に応じて色相を決定する色相決定手段と、地表面の傾斜に応じて輝度を決定する輝度決定手段と、地表面の微細凹凸情報を補正する凹凸補正手段と、前記凹凸補正手段の出力に応じて彩度を決定する彩度決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の地形図作成装置において、前記凹凸補正手段が、地表面の微細凹凸情報を強調することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の地形図作成装置において、前記凹凸補正手段が、地表面の微細凹凸情報を平滑化することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項記載の地形図作成装置において、前記彩度決定手段が、前記色相決定手段が同じ色相を設定する各標高範囲において、彩度を標高に比例させることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の地形図作成方法の発明は、地表面の標高に応じて色相を決定するステップと、地表面の傾斜に応じて輝度を決定するステップと、地表面の微細凹凸情報を補正するステップと、前記凹凸補正手段の出力に応じて彩度を決定するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微細凹凸情報を強調または平滑化し、その微細凹凸情報に応じて地形図の彩度を決定するので、微地形が判読しやすい地形図を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0013】
図1には、本発明にかかる地形図作成装置の一実施形態の構成例が示される。図1において、地形図作成装置は、色相決定部10、輝度決定部12、凹凸補正部14、彩度決定部16、画像合成部18、画像変換部20及び画像表示部22を含んで構成されている。
【0014】
色相決定部10は、中央処理装置(例えばCPUを用いることができる)及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、地表面の標高データを有する数値標高モデル24から取得した標高データに基づき、所定の標高範囲毎に、地表面各部を表示する際の色相を決定する。この場合、例えばHSI色空間における色相を使用することができる。
【0015】
輝度決定部12は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、数値標高モデル24から取得した標高データに基づき、地表面各部を表示する際の輝度を地表面の傾斜に応じて決定する。この輝度は、例えば真上から太陽光(平行光)を地表面に照射した場合の真上への反射光の強度として求めることができる。
【0016】
凹凸補正部14は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、数値標高モデル24から取得した標高データに基づき、地表面の微地形を表現すべく微細凹凸情報を強調または平滑化する補正を行う。ここで、微細凹凸情報とは、地表面の標高の局所的な平均値と現実の地表面の標高との差分である。また、標高の局所的な平均値は、処理の対象点及びその所定の近傍における標高の平均値である。なお、補正の方法については後述する。
【0017】
彩度決定部16は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、上記凹凸補正部14の補正出力に応じて、地表面各部を表示する際の彩度を決定する。上記彩度を決定する際には、上記色相決定部10が同じ色相を設定する各標高範囲において、彩度を標高に比例させる、すなわちある標高範囲内で標高値が大きいほど彩度が高く、標高値が小さいほど彩度が低くなるような処理を行う。
【0018】
画像合成部18は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、上記色相決定部10、輝度決定部12及び彩度決定部16の各出力を合成し、例えばHSI色空間で地表面の微地形を表現する。
【0019】
画像変換部20は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、上記画像合成部18が合成した地表面の画像データを、例えばRGB色空間等に変換する。
【0020】
画像表示部22は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)等で構成され、画像変換部20が変換した地表面の画像データ(地形図)を表示する。
【0021】
なお、上記数値標高モデル24は、対象範囲を格子で覆い、格子点毎に地表面の標高値が付与されているデータベースであり、図示しない記憶装置に記憶されている。
【0022】
図2には、上述した数値標高モデル24としての画像の例が示される。図2の画像の各画素(格子点)には、当該地点の標高データすなわち高さ情報が割り付けられている。
【0023】
図3には、上記数値標高モデル24から取得した標高データに基づいて、色相決定部10が地表面各部を表示する際の色相を決定して作成した色相化標高データの例が示される。図3では、色相化標高データが白黒画像として表されているが、実際には上述したHSI色空間等における色相が所定の標高範囲毎に割り当てられる。HSI色空間を使用する場合には、図の黒色部分が最も標高が低い領域であり、色相として赤色が割り当てられ、標高が高くなるに従って図の色は白色になり、割り当てられる色相が黄色に変わって行く。また、標高が最も高い領域は図の灰色で表されており、色相として淡紅色が割り当てられる。
【0024】
図4には、上記数値標高モデル24から取得した標高データに基づいて、輝度決定部12が地表面の傾斜に応じて太陽光の反射強度(輝度)を決定して作成した太陽光反射強度データの例が示される。図において、斜面は暗く、尾根や谷の平野は明るく表現されている。ここで、上記太陽光の反射強度は、以下の式により求めることができる。
【数1】

【0025】
なお、反射強度を求める方法は、上記式に限られるものではない。
【0026】
図5(a)、(b)には、上記凹凸補正部14の補正処理の説明図が示される。図5(a)は補正前のデータであり、図5(b)は補正後のデータである。なお、図5(a)、(b)において、横軸が地表面上の位置であり、縦軸が標高である。
【0027】
図5(a)に示されるように、地表面には標高の局所的な平均αに対して微細な凹凸βが存在する。凹凸補正部14は、上記標高の局所的な平均αを維持しつつ微細な凹凸βの高低差を増幅する。この結果、図5(b)に示されるように、地表面の微細な凹凸βの高低差(振幅)が大きくなり、地表面の微地形(山及び谷の微細な状態)を強調して表現することができる。
【0028】
以上は微地形の標高差を大きくして凸凹を強調する方法であるが、これ以外に微地形以外の地形の標高差を平滑化することにより凸凹を強調することも可能である。地表面には山及び谷の他に様々な凹凸が存在する。例えば、平野部においては家屋その他の建造物が存在する場合が多い。この建造物等を凹凸補正部14が強調すると、地表面の微細な凹凸である微地形を正確に表現することができなくなる。そこで、凹凸補正部14は、地表面の建造物等の高さを縮小し凹凸を平滑化する補正も行う。地表面の凹凸が建造物であることは、利用者が建造物の存在する平野部の情報を入力する等の方法で指定することができる。
【0029】
上述した凹凸補正部14が微細な凹凸βを強調し、または縮小する処理には、例えばLAC処理等の従来公知の方法を使用することができる。LAC処理は、コントラストの強い画像等に適用し、局所的な明るさあるいはコントラストを補正して明るいところと暗いところ、あるいはコントラストが強いところと弱いところのいずれも見やすくする画像処理方法である。このLAC処理を標高データに適用すると、地表面の全体的な高低情報(標高の局所的な平均α)をそのまま維持しつつ、微地形(微細な凹凸β)を強調して表現することができる。
【0030】
以下に、上記LAC処理の基本式を示す。
【数2】

【0031】
上記基本式において、定数a,bを適宜設定することにより地表面の微細な凹凸情報を強調しまたは縮小する処理とすることができる。
【0032】
なお、凹凸補正部14の処理としては、地表面の凹凸情報に所定の定数A(0<A)を乗ずる処理としてもよい。
【0033】
彩度決定部16は、上記凹凸補正部14の処理結果に基づき、地表面各部を表示する際に使用する彩度データを決定する。この場合、地表面の標高値が大きいほど高彩度となり、標高値が小さいほど低彩度となるように処理するので、微地形を判別しやすくなり、輝度と色相の組み合わせでは難しかった尾根と谷との区別を容易にできる画像を生成することができる。
【0034】
図6には、上記色相化標高データ、太陽光反射強度データ及び彩度データの合成結果である画像の例が示される。図6の画像データは、画像合成部18が上記色相化標高データをHSI色空間の色相(H)とし、上記太陽光反射強度データをHSI色空間の輝度(I)とし、上記彩度データをHSI色空間の彩度(S)として使用することにより、HSI色空間の画像データとして合成したものである。
【0035】
図7には、画像変換部20が変換した画像の例が示される。画像変換部20は、上記画像合成部18が合成した地表面の画像データを画面表示用の色空間としてRGB色空間に変換している。これにより、画像表示部22が地表面をカラー表示することができ、視覚的に見やすい地形図を生成することができる。
【0036】
図8には、本実施形態にかかる地形図作成装置の動作例のフローが示される。図8において、色相決定部10、輝度決定部12及び凹凸補正部14が、数値標高モデル24から標高データを取得する(S1)。
【0037】
色相決定部10は、上記標高データに基づいて色相化標高データを生成し(S2)、輝度決定部12は、上記標高データに基づいて太陽光反射強度データを生成し(S3)、凹凸補正部14は、上記標高データに基づいて微細な凹凸情報の補正データを生成する(S4)。また、彩度決定部16は、上記凹凸補正部14の処理結果に基づいて彩度データを決定する(S5)。
【0038】
次に、画像合成部18が、上記色相化標高データをHSI色空間の色相(H)とし、上記太陽光反射強度データをHSI色空間の輝度(I)とし、上記彩度データをHSI色空間の彩度(S)として使用することにより、対象となっている地表面の画像データをHSI色空間の画像データとして合成する(S6)。
【0039】
画像合成部18が合成した地表面の画像データは、画像変換部20がRGB色空間に変換し(S7)、画像表示部22に表示する(S8)。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる地形図作成装置の一実施形態の構成例を示す図である。
【図2】数値標高モデルの画像の例を示す図である。
【図3】色相化標高データの例を示す図である。
【図4】太陽光反射強度データの例を示す図である。
【図5】凹凸補正部の補正処理の説明図である。
【図6】色相化標高データ、太陽光反射強度データ及び彩度データの合成結果である画像の例を示す図である。
【図7】画像変換部が変換した画像の例を示す図である。
【図8】本発明にかかる地形図作成装置の動作例のフロー図である。
【符号の説明】
【0041】
10 色相決定部、12 輝度決定部、14 凹凸補正部、16 彩度決定部、18 画像合成部、20 画像変換部、22 画像表示部、24 数値標高モデル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面の標高に応じて色相を決定する色相決定手段と、
地表面の傾斜に応じて輝度を決定する輝度決定手段と、
地表面の微細凹凸情報を補正する凹凸補正手段と、
前記凹凸補正手段の出力に応じて彩度を決定する彩度決定手段と、
を備えることを特徴とする地形図作成装置。
【請求項2】
請求項1記載の地形図作成装置において、前記凹凸補正手段は、地表面の微細凹凸情報を強調することを特徴とする地形図作成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の地形図作成装置において、前記凹凸補正手段は、地表面の微細凹凸情報を平滑化することを特徴とする地形図作成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項記載の地形図作成装置において、前記彩度決定手段は、前記色相決定手段が同じ色相を設定する各標高範囲において、彩度を標高に比例させることを特徴とする地形図作成装置。
【請求項5】
地表面の標高に応じて色相を決定するステップと、
地表面の傾斜に応じて輝度を決定するステップと、
地表面の微細凹凸情報を補正するステップと、
前記凹凸補正手段の出力に応じて彩度を決定するステップと、
を備えることを特徴とする地形図作成方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−242298(P2008−242298A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85655(P2007−85655)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】