説明

地温保持に用いる有機肥料及びその施肥法

【課題】冬期の地温保持に好適な有機肥料を作り、この有機肥料を冬期に地中深く施肥して地温保持剤として寒い時期の作物の成育促進を図ることを目的とする。
【解決手段】畜産排泄物を主原料とする有機性廃棄物に、米糠、穀類滓等にて放線菌を培養した発酵菌体と、木炭または竹炭の粉末か、或いはコーヒー粕を加えて約60℃〜70℃で発酵処理した有機肥料を混合攪拌した後、更に糖蜜5%〜10%の希釈液を投入混合しながら全体の水分が最も発酵し易い含水率が約60%程度になるように調整しながら混合攪拌し、その後3〜10日間位、発酵温度60℃〜70℃程度にて発酵させた後、約15℃〜20℃程度まで自然冷却して含水率35%程度の粉末状態とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家畜などの排泄物である有機性廃棄物に米糠、穀類粕等にて培養した発酵菌体を加えて発酵処理した有機肥料を作り、この有機肥料を冬期に地中深く施肥して地温保持剤として寒い時期の作物の成育促進を図ることを目的としたものであり、特に施設園芸等にその効果が顕著に現れる地温保持に用いる有機肥料の製法及び施肥法に関する。
【背景技術】
【0002】
冬季の寒い時期の農作物の栽培、特に施設園芸等の施設内の温度と、根の活躍する地下部の温度差による不均衡を出来るだけ少なくするために地下部の保温、または地温の上昇を図る必要があり好適な有機質地温保持剤が求められていた。また地温上昇を図るために電力を使用した電熱ヒ―ターやスチームによる地下の加温が行なわれていたがコストがかかり過ぎるという問題があった。
【0003】
本発明は冬期の寒い時期の作物の成育促進を目的としたものであり、特に本肥料を用いることにより施設園芸等に其の効果が顕著に現れる。そして外気温の低い時期に施設内の温度を高めて25℃〜35℃と作物が成育し易い様に温度を保ち、人工的に価値ある作物の生産を行なうものであるが、室内温度は充分な成育温度を満たしているが、地下部の根の位置する温度が13℃〜16℃となるため地上部と地下部との温度の格差が大きく作物の成育を妨げる結果となっている。
【0004】
地上部の成育は順調に見えるが地下部の温度が上がらず、折角、良い肥料を充分与えても、地下部の温度不足の為に根の活動力、養分の吸収力が不足して地上部の旺盛な成育について行けず与えた肥料も充分に消化吸収出来ず、地上部に栄養分が届かず、充分に成育できない結果となっている。其の為に3℃〜5℃程度でも地中温度を上げることで作物の成育を旺盛にする事が出来て生産を大きく向上させる事が出来る。
【0005】
従来、家畜糞尿など畜産廃棄物や生ゴミ等におが屑などの炭素質基材を混ぜ発酵処理して有用な有機肥料を生成する手段がいろいろと提案されているが地温を上昇させることを目的とした有機肥料は存在しない。
【特許文献1】特開平11―156395号
【特許文献2】特開2000―26181号
【特許文献3】特開平9―142972号
【特許文献4】特開2003―171191号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は冬期の地温保持に好適な有機肥料を作り、この有機肥料を冬期に地中深く施肥して地温保持剤として寒い時期の作物の成育促進を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、請求項1記載のように、畜産排泄物を主原料とする有機性廃棄物に、米糠、穀類滓等にて放線菌を培養した発酵菌体と、木炭または竹炭の粉末か、或いはコーヒー粕を加えて約60℃〜70℃で発酵処理した有機肥料を混合攪拌した後、更に糖蜜5%〜10%の希釈液を投入混合しながら全体の水分が最も発酵し易い含水率が約60%程度になるように調整しながら混合攪拌し、その後3〜10日間位、発酵温度60℃〜70℃程度にて発酵させた後、約15℃〜20℃程度まで自然冷却して含水率35%程度の粉末状態としたことを特徴とする有機肥料である。
【0008】
また請求項2記載のように、前記有機肥料原料の混合割合を重量基準で、
・畜産排泄物を主原料とする有機性廃棄物を43重量%、
・米糠、穀類粕等にて培養した発酵菌体を29重量%、
・木炭または竹炭の粉末を29重量%とするか、または木炭または竹炭に代えコーヒー粕を29重量%とした請求項1記載の有機肥料である。
【0009】
また請求項3記載のように、前記有機肥料を畑に掘った施肥溝の底に厚み10cm〜15cm程度施肥し、その上に該有機肥料が見えなくなる程度に軽く覆土し、さらにその上に腐熟した混合基肥と畑土とを約1:1程度に満遍なく混ぜて厚み10cm〜15cm程度被せるようにした請求項1及び請求項2記載の有機肥料を用いた施肥法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機肥料を土壌中に施す事により、土壌中の酸素や水分の保持力を高めて、更に同じ施用する事により土壌中の水分と酸素を適当に含むことによって35%程度の水分不足状態の有機質特殊地温保持剤の中の菌体を活性化して、発酵が始まり地温の上昇を図る事が出来る。又、有機性腐食物質を多く含んでいる為に土壌を膨軟にし、作物の生長に応じて根の伸長を助長促進し、肥効成分の吸収力を増大する事が出来る等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明実施の最良の形態は、畜産排泄物を主原料とする有機性廃棄物に、米糠、穀類粕等にて培養した放線菌を主体とした発酵菌体と、木炭または竹炭の粉末加えて60℃〜70℃にて発酵処理した有機肥料に、更に糖蜜5%〜10%の希釈液を投入混合し、その混合物全体を最も発酵し易い含水率60%程度になるように調整しながら混合攪拌する。その後3〜10日位、発酵温度60℃〜70℃程度にて発酵させた後、約15℃〜20℃程度に自然冷却して含水率35%程度の粉末状態とした有機肥料を生成する。
【実施例1】
【0012】
本発明の地温保持効果を目的とする有機肥料を生成するには、家畜などの排泄物である有機性廃棄物を発酵処理した有機肥料45kgと、米糠、穀類粕等に培養した発酵菌体を加えたもの30kgと、木炭又は竹炭の粉末30kgか、または木炭又は竹炭の粉末に代えてコ−ヒー粕30kgを混合攪拌し、更に糖蜜を5g%〜10g%含む希釈液を約40L程度投入し、混合物全体の水分が最も発酵し易い含水率が約60%になる様に混合攪拌しながら調整する。その後8時間程度で発酵が始まるので5~10日間ほど温度60℃〜70℃程度にて発酵させる、その後、自然冷却し含水率を約30〜35%程度のサラサラな粉末状態の地温保持に好適な有機肥料を生成することが出来る。
【0013】
そして前記有機肥料原料の混合割合は重量基準で換算すると、
・畜産排泄物を主原料とする有機性廃棄物を43重量%、
・米糠、穀類粕等にて培養した発酵菌体を29重量%、
・木炭または竹炭の粉末を29重量%とするか、または木炭または竹炭に代えコーヒー粕を29重量%となる。
【実施例2】
【0014】
そしてこの地温保持に好適な有機肥料が畑の地温上昇及びその保持に効果があるか、約10坪の耕した畑に施肥し実験した。長さ5m、巾20cm、深さ18cmの溝を掘り、そこへ前述の製法で生成した含水率35%程度のサラサラな有機肥料を溝の一番底に、厚さ約10cm〜15cm程度、巾約20cm程度、5m.の長さに施した。その上に地温保持有機肥料が見えなくなる程度に覆土をし、その上からあらかじめ準備しておいた良く腐熟した混合元肥を、長さ5m、巾20cm、厚さ10cm〜15cmに亘って畑土と約1:1程度に満遍なく混合攪拌して施肥した。その後1週間を経て野菜の苗を植えた。
【0015】
施肥1週間後に地温保持有機肥料の温度を測って見たら23℃に温度が上がっていた。近くの土壌の温度を測ってみると16℃を示している。明らかに本発明地温保持有機肥料は地温保持剤としての昇温効果を確認する事が出来た。地温保持有機肥料の理想的な含水率は、温度の持続を望む場合、約50%程度が一番好ましく、60%以上は逆に温度を下降させる恐れが多分にあるので、過度の潅水には充分注意すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜産排泄物を主原料とする有機性廃棄物に、米糠、穀類滓等にて放線菌を培養した発酵菌体と、木炭または竹炭の粉末か、或いはコーヒー粕を加えて約60℃〜70℃で発酵処理した有機肥料を混合攪拌した後、更に糖蜜5%〜10%の希釈液を投入混合しながら全体の水分が最も発酵し易い含水率が約60%程度になるように調整しながら混合攪拌し、その後3〜10日間位、発酵温度60℃〜70℃程度にて発酵させた後、約15℃〜20℃程度まで自然冷却して含水率35%程度の粉末状態としたことを特徴とする有機肥料。
【請求項2】
前記有機肥料原料の混合割合を重量基準で、
・畜産排泄物を主原料とする有機性廃棄物を43重量%、
・米糠、穀類粕等にて培養した発酵菌体を29重量%、
・木炭または竹炭の粉末を29重量%とするか、または木炭または竹炭に代えコーヒー粕を29重量%とした請求項1記載の有機肥料。
【請求項3】
前記有機肥料を畑に掘った施肥溝の底に厚み10cm〜15cm程度施肥し、その上に該有機肥料が見えなくなる程度に軽く覆土し、さらにその上に腐熟した混合基肥と畑土とを約1:1程度に満遍なく混ぜて厚み10cm〜15cm程度被せるようにした請求項1及び請求項2記載の有機肥料を用いた施肥法。

【公開番号】特開2006−193378(P2006−193378A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7571(P2005−7571)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(393001615)
【Fターム(参考)】