説明

地盤改良における注入材注入構造及びそれを用いた注入材注入方法

【課題】地盤改良工事において、地盤に注入材を良好に注入して地盤中に所望の良好な固結改良体を造成するとともに、この注入材の注入時の注入圧力を抑制して注入材の地盤への注入速度を向上させることにより、工期の短縮及び工費の低減を図る。
【解決手段】削孔した孔内に、注入口3を所定の間隔で複数設けた注入外管2を挿入するとともに、注入外管2の注入口3の周囲に、対象地盤よりも透水性の良い孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16を設け、この孔壁崩壊防止構造16の上に、孔壁崩壊防止材15よりも透水性の良い注入材逸走防止材11にシール材12を注入してなる注入材逸走防止構造13を設け、孔壁崩壊防止構造16を通して注入材18を地盤に注入することで、注入材18の浸透断面を大きくした地盤改良における注入材注入構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に注入材を注入して地盤中に固結改良体を造成することにより、軟弱地盤の地盤強化を目的とする地盤改良における注入材注入構造及びそれを用いた注入材注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤に注入材を注入して地盤中に固結改良体を造成する地盤改良における注入材注入方法として、二重管ダブルパッカー工法が知られていた。
【0003】
この二重管ダブルパッカー工法は、図7(a)に示すように、地盤をケーシングパイプ21にて削孔し、図7(b)に示すように、削孔した孔内に充填材22を充填し、図7(c)に示すように、充填材22を充填した孔内に、注入口23を所定の間隔で複数設けた注入外管24を挿入し、注入外管24を設置するとともに、ケーシングパイプ21を引抜く。そして、孔内に充填した充填材22が固まったのち、図7(d)に示すように、注入外管24内に先端にダブルパッカー25を装着した注入内管26を挿入する。次に、図7(e)に示すように、注入内管26を注入外管24の注入口23に合わせる。そして、注入内管26内に注入材27を圧送し、注入外管24の注入口23から注入材27を吐出し、固まった充填材22を割り裂いてから、この割り裂いた隙間を介して注入材27を地盤に注入する。地盤への注入材27の注入が完了したのち、図7(f)に示すように、注入外管24における一段上方の注入口23に注入内管26を合わせて、先程と同様に注入材27を地盤に注入する。これを繰り返し行うことにより、地盤中に多数の固結改良体28を造成するようにしている。
【0004】
また、従来の地盤改良における注入材注入方法の別の方法として、例えば、特許文献1である特許第3102786号公報に開示された工法も知られていた。
【0005】
この工法は、地盤をケーシングパイプにて削孔し、削孔した孔内に注入外管を挿入する。この注入外管にはゴム等の可撓性の袋体パッカーを所定の間隔で複数装着しつつこの複数の袋体パッカー間それぞれに多数の注入口を設けている。そして、ケーシングパイプを引抜いたのち、注入外管内に注入内管を挿入する。そして、注入内管内に膨出流体を圧送し、注入外管に装着した複数の袋体パッカーを膨出させて孔内の孔壁に密着させる。次に、注入内管内に注入材を圧送し、注入外管の多数の注入口から注入材を吐出し、隣接する膨出した袋体パッカー間において地盤に注入材を注入する。この注入材の注入を隣接する膨出した袋体パッカー間毎に行うことにより、地盤中に多数の固結改良体を造成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3102786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる従来の地盤改良における注入材注入方法の前者である二重管ダブルパッカー工法にあっては、注入外管の周囲が充填材にて固まっており、このため、地盤に注入材を注入する際、注入材の吐出圧力を高めて固まっている充填材を割り裂いてから、この割り裂いた隙間を介して注入材を地盤に注入するようにしていた。このように割り裂いた隙間から注入材を注入するといった浸透断面の小さな状態での注入材の注入であったため、地盤への注入材の注入速度を速めると、注入時の注入圧力が高まり、地盤にも亀裂が生じ、注入材が地盤に脈状に注入されて、地盤中に所望の良好な固結改良体を造成することが困難となるおそれがあった。また、地盤への注入材の注入速度を速めることができないことから、地盤改良工事における工期が長くなるといったこともあった。
【0008】
一方、従来の地盤改良における注入材注入方法の後者である特許文献1に開示された工法にあっては、前記の二重管ダブルパッカー工法のような浸透断面の小さな状態での注入材の注入ではなく、隣接する膨出した袋体パッカー間において地盤に注入材を注入することができることから、浸透断面の大きな状態での注入材の注入が可能となり、地盤への注入材の注入速度を速めることができる。しかしながら、この工法では、地盤よりケーシングパイプを引抜いたとき、孔内に充填材等がないことから、孔壁が崩れて孔内に挿入している注入外管の注入口を塞いでしまうおそれがあり、さらには、孔壁が大きく崩れてしまうと孔の径が大きくなって、注入外管に装着した袋体パッカーを膨出させても孔内の孔壁に密着させることができなくなり、地盤に注入材を注入する際、孔内の孔壁と膨出した袋体パッカーとの間にできた隙間から注入材が漏れ出してしまうことで、地盤中に所望の良好な固結改良体を造成することが困難となるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の発明は、軟弱地盤を改良する注入材注入構造において、削孔した孔内に、注入口を所定の間隔で複数設けた注入外管を挿入するとともに、注入外管の注入口の周囲に、対象地盤よりも透水性の良い孔壁崩壊防止材よりなる孔壁崩壊防止構造を設け、この孔壁崩壊防止構造の上に、孔壁崩壊防止材よりも透水性の良い注入材逸走防止材にシール材を注入してなる注入材逸走防止構造を設け、孔壁崩壊防止構造を通して注入材を地盤に注入することで、注入材の浸透断面を大きくした地盤改良における注入材注入構造である。
【0010】
第二の発明は、第一の発明にあって、前記注入材逸走防止構造は、対象地盤の性状に応じて当該注入材逸走防止構造の設置間隔を決定するとともに、この注入材逸走防止構造に用いるシール材は、前記孔壁崩壊防止構造における孔壁崩壊防止材に浸透することなく、注入材逸走防止材のみに浸透するようになるものを用いた地盤改良における注入材注入構造である。
【0011】
第三の発明は、第一又は第二の発明にあって、前記孔壁崩壊防止構造及び前記注入材逸走防止構造を用いることで、注入材注入にかかる注入圧力を抑制しつつ、注入速度を向上させることが可能な注入材注入構造を用いた地盤改良における注入材注入方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、孔内において、孔壁崩壊防止構造における孔壁崩壊防止材を充填した箇所全体が地盤への注入材の注入箇所となることで、注入材の浸透断面を大きくすることができ、これにより、地盤に注入材を極めて良好に浸透するように注入させることができ、地盤中に所望の良好な固結改良体を造成することができる。しかも、注入材の浸透断面が大きいことから、注入時の注入材の注入圧力が高くなるのを抑えることができ、注入材の地盤への注入速度を向上させて、その作業時間を短くすることにより、地盤改良工事における工期の短縮及び工費の低減を図ることができる。
【0013】
また、孔内に挿入した注入外管の周囲において、孔壁崩壊防止構造の上に、充填した注入材逸走防止材にシール材を注入してなる注入材逸走防止構造を設けて、削孔した孔内の孔壁がどのような凹凸形状や大きさのものであっても、注入材逸走防止構造を孔内の孔壁に隙間なく密着して密閉状態にて設けることで、この注入材逸走防止構造により、地盤に注入材を注入する際、注入材が孔内の孔壁に沿って漏れ出すといったことをなくすことができ、地盤中に所望の良好な固結改良体を造成することができる。
【0014】
さらに、孔内に挿入した注入外管の周囲において、注入材逸走防止構造の下に孔壁崩壊防止構造における孔壁崩壊防止材を充填しているので、充填した孔壁崩壊防止材によって孔内の孔壁が崩れるのを防止することができ、これにより、地盤に注入材を注入する際、この孔壁崩壊防止材よりなる孔壁崩壊防止構造を通して注入材を良好に浸透するように注入することができ、地盤中に所望の良好な固結改良体を造成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の地盤改良における注入材注入構造及びそれを用いた注入材注入方法を示す説明図である。
【図2】本発明の地盤改良における注入材注入構造及びそれを用いた注入材注入方法を示す説明図である。
【図3】施工手順を示す説明図である。
【図4】施工手順を示す説明図である。
【図5】施工手順を示す説明図である。
【図6】施工手順を示す説明図である。
【図7】従来の二重管ダブルパッカー工法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による地盤改良における注入材注入構造及びそれを用いた注入材注入方法の一実施形態について、図1から図6を用いて説明する。
地盤にケーシングパイプ1にて所定深度まで削孔した孔内に、注入外管2を挿入する。この注入外管2には注入口3を所定の間隔で複数設けており、この注入口3の間隔については任意であるが、対象地盤の性状に応じて決定するのが良い。
【0017】
そして、この孔内に挿入した注入外管2の周囲に、対象地盤よりも透水性の良い孔壁崩壊防止材15を充填してなる孔壁崩壊防止構造16を設け、この孔壁崩壊防止構造16の上に、注入材逸走防止構造13を設ける。この注入材逸走防止構造13にあっては、孔壁崩壊防止構造16における孔壁崩壊防止材15よりも透水性の良い注入材逸走防止材11を充填し、この充填した注入材逸走防止材11にセメントベントナイト等のシール材12を注入して固めることにより密閉するもので、例えばケーシングパイプ1を引抜いたとき、削孔した孔内の孔壁がどのような凹凸形状や大きさのものになっても、充填した注入材逸走防止材11が孔壁に隙間なく密着することで、ここに注入材逸走防止構造13を密閉状態にて設けることができ、後述する地盤に注入材18を注入する際に、この注入材逸走防止構造13によって注入材18が孔内の孔壁に沿って漏れ出すのをなくし、要するに注入時における注入材18の逸走を防止する。なお、注入材逸走防止材11としては、具体的には礫であるが、礫以外の人工ガラスビーズ等の粒状物でも良いし、それのみならず、孔壁崩壊防止材15よりも透水性の良いもの、すなわち孔壁崩壊防止材15よりも透水係数が大きなもので、孔壁に隙間なく密着するものであるなら他のものでも良い。また、シール材12もセメントベントナイトに限定されるものではなく、同様の性質を有するものなら他のものでも良い。
【0018】
また、孔壁崩壊防止構造16にあっては、孔内に挿入した注入外管2の周囲において、注入材逸走防止構造13の下に所定の量の孔壁崩壊防止材15を充填したものである。この孔壁崩壊防止材15としては、対象地盤よりも透水性の良いもの、すなわち対象地盤よりも透水係数が大きなもので、具体的には粗め砂である。そして、この孔壁崩壊防止構造16は、例えばケーシングパイプ1を引抜いたときに孔壁に密着して孔壁の崩壊を防止するものである。なお、孔壁崩壊防止材15としては粗め砂等の粒状物のみならず、対象地盤よりも透水係数が大きなものであるなら他のものでも良い。
【0019】
なお、孔壁崩壊防止材15について対象地盤よりも透水性の良いもの、また、注入材逸走防止材11について孔壁崩壊防止材15よりも透水性の良いものと述べているが、この透水性の良いとは、透水係数が大きいという意味である。この透水係数の求め方は、第一の方法として、実験による実測値より透水係数を求める方法、第二の方法として、粒度分布を用いて透水係数を推定して求める方法がある。そして、この第一の方法である実験による実測値より透水係数を求める方法については、対象地盤の透水係数を求める場合、地盤工学会基準の単孔を利用した透水試験方法(JGS 1314−2003)にて実測して求める方法が挙げられる。また、注入材逸走防止材11である礫や孔壁崩壊防止材15である粗め砂の透水係数を求める場合、日本工業規格の土の透水試験方法(JIS A1218:1998)にて実測して求める方法が挙げられる。また、第二の方法である粒度分布を用いて透水係数を推定して求める方法については、日本工業規格の土の粒度試験方法(JIS A1204)にて粒度試験を行って粒度分布を求め、求めた粒度分布からCreager(クレーガー)の方法やHazenの式を用いて、それぞれの透水係数を推定して求める方法が挙げられる。ただし、透水係数を求める方法はこれらに限定されるものではない。
【0020】
そして、注入外管2内に注入内管4を挿入する。この注入内管4にはダブルパッカー5を取り付けており、ダブルパッカー5はエアー等により膨張することで注入内管4と注入外管2の隙間を塞いで、ここでの漏洩を防止するものである。この注入内管4は、注入外管2の周囲に充填した注入材逸走防止材11に注入するシール材12を供給する機能と、注入外管2の周囲に充填した孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16を通して地盤に注入させる注入材18を供給する機能をそれぞれ持っている。
【0021】
まず、注入材逸走防止材11にシール材12を注入する場合、図1に示すように、注入材逸走防止材11を充填したところに位置する注入外管2の注入口3に注入内管4を合わせてから注入内管4内にシール材12を圧送することで、注入外管2の注入口3からシール材12を吐出し注入外管2の周囲に充填した注入材逸走防止材11にシール材12を所定量注入する。
【0022】
また、地盤に注入材18を注入する場合、図2に示すように、孔壁崩壊防止構造16における孔壁崩壊防止材15を充填したところに位置する注入外管2の注入口3に注入内管4を合わせてから注入内管4内に注入材18を圧送することで、注入外管2の注入口3から注入材18を吐出し注入外管2の周囲に充填した孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16全体に広がり、この孔壁崩壊防止構造16を通して注入材18を地盤に注入する。なお、注入材18としてはセメントやベントナイト、スラグ等の懸濁粒子を含んだ懸濁液型注入材である。ただし、これに限定されるものではなく、溶液型注入材でも良い。
【0023】
この注入外管2の注入口3から注入材18を吐出し、注入外管2の周囲に充填した孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16を通して注入材18を地盤に注入することにより、地盤中に所望の良好な固結改良体19を造成することができる。なお、このとき、注入材18にあっては、上に設けた注入材逸走防止構造13によって、孔内の孔壁に沿って漏れ出すことがない。そして、この固結改良体19の造成は、一段あるいは複数段、必要に応じた段数の固結改良体19を造成するようにしている。
【0024】
また、この地盤への注入材18の注入にあっては、注入材逸走防止構造13の上下方向の厚み寸法、及び上下に位置する注入材逸走防止構造13の設置間隔を変更するとともに、これに合わせて注入外管2の注入口3の位置を変更することにより、対象地盤の性状に応じた注入材18の注入を可能にし、これにより、地盤改良現場に応じた最適な固結改良体19を造成することができる。
【0025】
また、注入材逸走防止構造13を設ける際に注入材逸走防止材11に注入するシール材12については、孔壁崩壊防止構造16における孔壁崩壊防止材15に浸透することなく、注入材逸走防止材11のみに浸透するようになるものを用いるようにしている。これは、注入材逸走防止材11において、孔壁崩壊防止材15よりも透水性が良い、すなわち透水係数が大きいことを前提条件とし、注入材逸走防止材11とシール材12にあっては、グラウタビリティ比(D15/G85)が24以上となり、また、孔壁崩壊防止材15とシール材12にあっては、グラウタビリティ比(D15/G85)が11以下となるものを使用する。なお、このグラウタビリティ比(D15/G85)であるが、D15とは孔壁崩壊防止材15や注入材逸走防止材11である地盤の15%粒径を示し、G85とはシール材12である懸濁液粒子の85%粒径を示すもので、D15/G85が11以下だと浸透せず、D15/G85が24以上だと浸透するという判定法である。これにより、シール材12が孔壁崩壊防止材15に浸透することなく、注入材逸走防止材11のみに浸透させることができ、孔壁崩壊防止材15が固まることなく、注入材逸走防止材11のみが固まって注入材逸走防止構造13を設けることができ、孔壁崩壊防止材15には何らの影響も出ないようにする。これにより、地盤に注入材18を注入する際、この孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16を通して良好に注入材18を注入することができる。
【0026】
このような地盤改良における注入材注入構造及びそれを用いた注入材注入方法にあっては、孔内において、孔壁崩壊防止構造16における孔壁崩壊防止材15を充填した箇所全体が地盤への注入材18の注入箇所となることで、注入材18の浸透断面を大きくすることができ、これにより、地盤に注入材18を極めて良好に浸透するように注入させることができ、地盤中に所望の良好な固結改良体19を造成することができる。しかも、注入材18の浸透断面が大きいことから、注入時の注入材18の注入圧力が高くなるのを抑えることができ、このように注入材18注入にかかる注入圧力を抑制することが可能となることで、注入材18の地盤への注入速度を向上させて、その作業時間を短くすることができる。
【0027】
なお、地盤に注入材18を注入する際の注入圧力について、以下のような実験を行ったので、これについて述べると、従来の二重管ダブルパッカー工法を採用した場合と本発明による注入材注入構造を用いた地盤改良における注入材注入方法を採用した場合とにおける注入材18を注入する際の注入圧力について時間の経過に沿ってそれぞれ計測した。このときの注入材18の注入量は250リットル、注入速度は8リットル/minで、同じ条件で行った。
【0028】
【表1】

【0029】
この表1から明らかなように、本発明による注入材注入構造を用いた地盤改良における注入材注入方法は、従来の二重管ダブルパッカー工法と比べて、注入時の注入材18の注入圧力が略半分以下となっており、注入時の注入材18の注入圧力を低くできることがわかる。このように本発明による注入材注入構造を用いた地盤改良における注入材注入方法では、注入材18注入にかかる注入圧力を抑制することができる。
【0030】
また、この地盤改良における注入材注入構造及びそれを用いた注入材注入方法にあっては、孔内に挿入した注入外管2の周囲において、孔壁崩壊防止構造16の上に、充填した注入材逸走防止材11にシール材12を注入してなる注入材逸走防止構造13を設けて、削孔した孔内の孔壁がどのような凹凸形状や大きさのものであっても、注入材逸走防止構造13を孔内の孔壁に隙間なく密着して密閉状態にて設けることで、この注入材逸走防止構造13により、地盤に注入材18を注入する際、注入材18が孔内の孔壁に沿って漏れ出すといったことをなくすことができ、地盤中に所望の良好な固結改良体19を造成することができる。
【0031】
さらに、孔内に挿入した注入外管2の周囲において、注入材逸走防止構造13の下に孔壁崩壊防止構造16における孔壁崩壊防止材15を充填しているので、例えばケーシングパイプ1を引抜いても、充填した孔壁崩壊防止材15によって孔内の孔壁が崩れるのを防止することができ、これにより、地盤に注入材18を注入する際、この孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16を通して注入材18を良好に浸透するように注入することができ、地盤中に所望の良好な固結改良体19を造成することができる。
【0032】
次に、地盤改良現場における施工手順について説明する。
図3(a)に示すように、図示していない施工機械により所定深度までケーシングパイプ1で地盤を削孔する。そして、図3(b)に示すように、削孔した孔内に注入外管2を挿入する。この注入外管2を挿入したのち、図3(c)に示すように、注入外管2の周囲に粗め砂である孔壁崩壊防止材15を所定の位置まで充填することにより孔壁崩壊防止構造16を設ける。そして、図3(d)に示すように、注入外管2の周囲であって、充填した孔壁崩壊防止材15の上に礫である注入材逸走防止材11を所定の位置まで充填する。
【0033】
図4(e)に示すように、地盤の所定深度まで達しているケーシングパイプ1を充填した注入材逸走防止材11の上部まで引抜く。そして、図4(f)に示すように、再び、注入外管2の周囲に孔壁崩壊防止材15を所定の位置まで充填することにより孔壁崩壊防止構造16を設け、図4(g)に示すように、再び、注入外管2の周囲であって、充填した孔壁崩壊防止材15の上に注入材逸走防止材11を所定の位置まで充填する。それから、ケーシングパイプ1を引抜くことで、注入外管2の設置作業が完了する。そして、図4(h)に示すように、設置作業が完了した注入外管2内にダブルパッカー5を取り付けた注入内管4を挿入する。
【0034】
図5(i)に示すように、注入外管2内に挿入した注入内管4を注入材逸走防止材11を充填したところに位置する注入外管2の注入口3に合わせる。それから、注入内管4のダブルパッカー5においてエアー等により膨張させて漏洩防止を行ったのち、注入内管4内にセメントベントナイト等のシール材12を圧送し、注入内管4を経て注入外管2の注入口3からシール材12を吐出し、注入外管2の周囲に充填した注入材逸走防止材11にシール材12を所定量注入する。そして、図5(j)に示すように、注入内管4のダブルパッカー5を収縮させたのち、次の注入材逸走防止材11を充填したところに位置する注入外管2の注入口3に合わせる。そして、先程と同様に、注入外管2の周囲に充填した注入材逸走防止材11にシール材12を所定量注入する。そして、図5(k)に示すように、注入外管2内に挿入した注入内管4を引抜いて、注入材逸走防止材11にシール材12を注入した状態で養生させる。この養生の時間としては、例えば、1日から2日である。図5(l)に示すように、注入材逸走防止材11にシール材12を注入することにより、注入材逸走防止材11を充填した箇所が固まって、注入材逸走防止構造13が設けられ、この注入材逸走防止構造13が孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16それぞれの上に設けられる。これにより、注入材逸走防止構造13の設置作業が完了する。
【0035】
図6(m)に示すように、複数の注入材逸走防止構造13が設けられたのち、注入外管2内に注入内管4を再び挿入し、下端近傍まで挿入する。それから、注入内管4を孔壁崩壊防止構造16における孔壁崩壊防止材15を充填したところに位置する注入外管2の注入口3に合わせる。そして、注入内管4のダブルパッカー5においてエアー等により膨張させて漏洩防止を行ったのち、注入内管4内に注入材18を圧送し、注入内管4を経て注入外管2の注入口3から注入材18を吐出し、注入外管2の周囲に充填した孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16全体に広がり、この孔壁崩壊防止構造16を通して注入材18を地盤に注入させる。このように地盤に注入材18を注入させることで、地盤中に所望の良好な固結改良体19が造成される。なお、地盤に注入材18を注入する際、上に設けられた注入材逸走防止構造13によって、注入材18が孔内の孔壁に沿って漏れ出すことが一切なく、また、孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16を通して注入材18を地盤に注入するので、注入材18の地盤への浸透断面を大きくすることができ、地盤に注入材18を良好に浸透するように注入させることができる。
【0036】
図6(n)に示すように、注入内管4のダブルパッカー5を収縮させたのち、その上方の次の孔壁崩壊防止構造16における孔壁崩壊防止材15を充填したところに位置する注入外管2の注入口3に合わせる。そして、先程と同様に、注入外管2の注入口3から注入材18を吐出し、注入外管2の周囲に充填した孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16全体に広がり、この孔壁崩壊防止構造16を通して注入材18を地盤に注入させる。このように地盤に注入材18を注入させることで、地盤中に所望の良好な固結改良体19が造成される。なお、このときも、地盤に注入材18を注入する際、上と下とに設けられた注入材逸走防止構造13によって、注入材18が孔内の孔壁に沿って漏れ出すことが一切ない。
【0037】
図6(o)に示すように、注入外管2の注入口3から注入材18を吐出して注入材逸走防止構造13の下に充填した孔壁崩壊防止材15よりなる孔壁崩壊防止構造16を通して地盤に注入材18を注入させて、地盤中に複数段の固結改良体19を造成することで、ここでの全ての作業が完了する。そして、次の作業場所へと移るようになる。
【0038】
なお、この施工手順の説明において、固結改良体19の造成は、地盤中に固結改良体19を二段造成するようにしていたが、これは例えであって、一段あるいは三段以上の複数段、必要な段数の固結改良体を造成するようになるものである。
【符号の説明】
【0039】
1…ケーシングパイプ、2…注入外管、3…注入口、4…注入内管、5…ダブルパッカー、11…注入材逸走防止材、12…シール材、13…注入材逸走防止構造、15…孔壁崩壊防止材、16…孔壁崩壊防止構造、18…注入材、19…固結改良体、21…ケーシングパイプ、22…充填材、23…注入口、24…注入外管、25…ダブルパッカー、26…注入内管、27…注入材、28…固結改良体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱地盤を改良する注入材注入構造において、
削孔した孔内に、注入口を所定の間隔で複数設けた注入外管を挿入するとともに、注入外管の注入口の周囲に、対象地盤よりも透水性の良い孔壁崩壊防止材よりなる孔壁崩壊防止構造を設け、この孔壁崩壊防止構造の上に、孔壁崩壊防止材よりも透水性の良い注入材逸走防止材にシール材を注入してなる注入材逸走防止構造を設け、孔壁崩壊防止構造を通して注入材を地盤に注入することで、注入材の浸透断面を大きくしたことを特徴とする地盤改良における注入材注入構造。
【請求項2】
前記注入材逸走防止構造は、対象地盤の性状に応じて当該注入材逸走防止構造の設置間隔を決定するとともに、この注入材逸走防止構造に用いるシール材は、前記孔壁崩壊防止構造における孔壁崩壊防止材に浸透することなく、注入材逸走防止材のみに浸透するようになるものを用いたことを特徴とする請求項1記載の地盤改良における注入材注入構造。
【請求項3】
前記孔壁崩壊防止構造及び前記注入材逸走防止構造を用いることで、注入材注入にかかる注入圧力を抑制しつつ、注入速度を向上させることが可能な請求項1又は2記載の注入材注入構造を用いた地盤改良における注入材注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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