説明

地盤改良効果の確認方法並びにこの方法を用いた地盤注入工法

【課題】溶液型シリカグラウトを地盤中に注入後の注入率と改良地盤の固結状況を把握し、さらには改良地盤の固結範囲と固結状況の分布を確認して地盤改良効果の確認を行う。
【解決手段】溶液型シリカグラウトの薬液注入による地盤改良効果の確認方法であって、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて注入率100%として作製した供試体の単位体積当りのシリカ含有量の測定値を(A)とし、薬液注入を行った改良地盤から採取した固結土の単位体積当りのシリカ含有量の測定値を(B)とし、B/A×100から改良地盤の注入率λ(%)を求める。あるいは供試体を作製するに要した薬液から算出したシリカ含有量を(C)とし、薬液注入を行った改良地盤から採取した固結土のシリカ含有量の測定値を(B)とし、薬液注入前の地盤から採取した砂の単位体積当りのシリカ含有量の測定値を(D)とし、(B−D)/C×100から改良地盤の注入率λ(%)を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液型シリカグラウト、特に非アルカリ性シリカグラウトを用いた薬液注入の地盤改良効果の確認方法に係り、詳細には注入後の注入率と改良地盤の固結状況を把握し、更には改良地盤の固結範囲と固結状況の分布を確認して地盤改良効果の確認を行う地盤改良効果の確認方法およびこの方法を用いた地盤注入工法である。
【背景技術】
【0002】
近年、液状化防止や基礎の補強工事が長期耐久性のあるシリカ溶液を用いた地盤注入工法で行われるようになり、注入地盤の効果の確認方法が極めて重要になってきた。なぜならば、薬液注入が本設工事に使用される以上、注入材そのものが長期耐久性に優れていること、適用する注入工法の土粒子間浸透が可能であり、かつ注入孔間隔を広く取って広範囲の浸透固結による経済的施工が可能であることが必要である。
【0003】
従来の効果の確認方法としては、標準貫入試験や透水試験等の現位置試験が用いられてきた。しかし、液状化防止等の本設工事では注入後の液状化強度に対応した一軸圧縮強度の把握を注入地盤のコアサンプリングによって行うのが一般的である。
【0004】
一方、不撹乱試料の採取は現地盤に礫等が介在していると一軸圧縮強度のためのコア採取が不可能な場合が多い。
【0005】
また、従来の仮設用地盤注入では注入孔間隔は1m程度であったが、近年本設施工のためには経済的施工が必要であることから注入孔間隔は1.5〜4mとして柱状浸透注入工法や多点同時注入工法によって長い浸透距離が可能な注入工法が本出願人などによって発明されている。
【0006】
一方、広範囲な注入においては注入孔からの距離が長くなるにつれて浸透固結した強度が低減する分布を示すことがわかってきた。このような注入目的の注入効果の確認方法としてのコアサンプリングによるコアを採取することの困難さとサンプリング数に限度があること、成型しにくい等の問題があった。
【0007】
そこで固結土中の薬液の含有量を測定し、不撹乱試料を必要としない化学分析によって薬液の主成分であるSやNaOを固結土から溶出させて定量する方法がある。
【0008】
しかし固結土中のSの測定から含有量を求める方法では、土粒子に含まれる非晶質のシリカ分も測定されてしまう。現地盤中の非晶質のシリカ分がシリカグラウト中のシリカ分と必ずしも同じ性質のものとは限らないし、これら双方のシリカを分けて検出することは可能であるが、それには複雑な処理過程や高い技術が必要となるので実用的とはいえず、たとえシリカグラウト中のシリカ分を分析してもその分析法におけるシリカ分の測定値が固結地盤に注入されているシリカ分の絶対値を示しているとは限らない。
【0009】
また、固結土中のNaOの測定から含有量を求める方法では、地盤中で硬化したゲルのNaOは可溶性成分として存在しており、地盤中の水により移動しやすいことや、海水の影響のある地盤ではシリカグラウトの水ガラスに起因するNaOと海水のNaOとの区別ができず使用できないこと等の問題があった。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では薬液注入における地盤改良後の注入効果の確認を行う方法として、改良地盤の固結土中のシリカ含有量を求めて注入対象地盤への薬液の注入率を把握するものである。ここで、注入率とは、注入対象土量の単位体積当りに注入するグラウト量の割合を百分率で表したもので、注入効果並びに強度発現に著しい影響を与えるものである。
【0011】
しかし、前記の化学分析方法によって得られた改良地盤の固結土のみの測定によるシリカ含有量の測定値は様々な不確定要因を含む値であり、改良地盤に注入されたシリカ含有量の絶対値を示すものではない。
【0012】
従って、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて地盤の相対密度に調整して、存在する空隙をすべて注入液で充填した場合を注入率100%として供試体を作製し、その供試体の単位体積当りのシリカ含有量を注入率100%とみなして基準とし、地盤改良後の固結土の単位体積当りのシリカ含有量の基準値に対する割合から注入率を算定する方法、または薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて地盤の相対密度に調整して存在する空隙をすべて注入液で充填して注入率100%になるように供試体を作製するに要した薬液から算出したシリカ含有量を注入率100%とみなして基準とし、地盤改良後の固結土の単位体積あたりのシリカ含有量から地盤の非晶質のシリカ含有量を差し引き、基準値に対する割合から注入率を算定する方法の2通りの方法により、前記の不確定要因と関係なく注入率を算出して前記の問題を解決し、簡便かつ正確な地盤改良効果を確認する方法を確立して信頼性の高い地盤改良を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の発明では、薬液注入後の改良地盤から採取した固結土の単位体積当りのシリカ含有量を測定し、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて地盤の相対密度に調整して存在する空隙をすべて注入液で充填した場合を注入率100%として作製した供試体の単位体積当りのシリカ含有量に対する割合から注入率を求める方法を前記課題の解決手段とした。
【0014】
第二の発明では、薬液注入後の改良地盤から採取した固結土の単位体積当りのシリカ含有量を測定し、これより薬液注入前の地盤の非晶質のシリカ含有量を差し引き、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて地盤の相対密度に調整して存在する空隙をすべて注入液で充填して注入率100%になるように供試体を作製するに要した薬液から算出したシリカ含有量に対する割合から注入率を求める方法を前記課題の解決手段とした。
【0015】
第三の発明では、第一、第二の発明の方法を用いて求めた注入率から、注入後の固結状況や地盤改良範囲の固結状況の分布を確認する地盤改良効果の確認方法を前記課題の解決手段とした。
【0016】
第四の発明では、第一、第二の発明の方法を用いて求められる注入率から地盤改良範囲および注入後の固結状況を確認する工程を含む地盤注入工法を前記課題の解決手段とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明の注入率を求める方法によれば、請求項1記載の薬液注入後の改良地盤から採取した固結土の単位体積当りのシリカ含有量を測定し、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて地盤の相対密度に調整して存在する空隙をすべて注入液で充填した場合を注入率100%として作製した供試体の単位体積当りのシリカ含有量に対する割合から注入率を求める。
【0018】
また、請求項2記載の薬液注入後の改良地盤から採取した固結土の単位体積当りのシリカ含有量を測定し、これより地盤の非晶質のシリカ含有量を差し引き、地盤から採取した砂を用いて地盤の相対密度に調整して存在する空隙をすべて注入液で充填して注入率100%になるように供試体を作製するに要した薬液から算出したシリカ含有量に対する割合から注入率を求める。
【0019】
さらにまた、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて注入率100%として作製した供試体並びに薬液注入前の地盤から採取した砂の相対密度は地盤の相対密度と同一にすることを特徴とするから、簡便かつ正確な薬液注入における地盤改良後の注入効果の確認方法を確立することができ、信頼性の高い施工管理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に使用する溶液型シリカグラウトは、浸透性に優れ、ゲル化時間が長く、耐久性に優れており、広い注入範囲への浸透固結による経済的施工が可能なグラウトであり、水ガラスを素材とするグラウトであって、水ガラスと反応剤からなる水ガラスグラウトである。
【0021】
好ましい具体例としては、(1)水ガラスと酸を混合して脱アルカリした酸性シリカ溶液、(2)水ガラスをイオン交換樹脂処理またはイオン交換膜処理によって脱アルカリして得られるシリカ溶液、(3)水ガラスを脱アルカリ処理して酸性シリカ溶液とし、これにアルカリ材を添加して中性〜アルカリ性としたシリカ溶液、(4)水ガラスを脱アルカリ処理して得られるシリカ溶液または水ガラスを脱アルカリ処理して得られる酸性シリカ溶液にアルカリ材を添加して中性〜アルカリ性としたシリカ溶液を再度脱アルカリ処理して得られる酸性シリカ溶液、(5)水ガラスを脱アルカリ処理して酸性シリカ溶液とし、これを濃縮増粒して得られる安定化されたコロイダルシリカ溶液、(6)水ガラスとコロイダルシリカとを混合して得られるそれ自体自硬性のない安定化したシリカ溶液を脱アルカリして得られる酸性シリカ溶液、(7)水ガラスとコロイダルシリカと水ガラスを脱アルカリ処理して得られるシリカ溶液とを混合して得られるそれ自体自硬性のない安定化したシリカ溶液を脱アルカリして得られる酸性シリカ溶液等が挙げられる。
【0022】
前記のシリカ溶液にさらにゲル化調整剤を添加することもできる。このゲル化調整剤としては、硫酸、リン酸、硫酸塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、有機酸(クエン酸、コハク酸、酢酸)等、水溶液中に溶解して酸性を呈する酸性反応剤、アルカリ金属塩、アルカリ土金属塩等の無機塩類等が挙げられる。この中で特に、クエン酸や縮合リン酸塩等の金属イオン封鎖剤やリン酸系化合物は地盤中のコンクリート構造物や土中の微量金属に不溶性被覆膜を形成してマスキング作用によってアルカリの溶出を封鎖するため、コンクリートを保護する効果がある。
【0023】
金属イオン封鎖剤としては、具体的にはクエン酸、グルコン酸等の脂肪族オキシカルボン酸、ピロリン酸、トリリン酸、トリメタリン酸等の縮合リン酸塩、ポリリン酸ナトリウム、酸性ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウムまたはこれらのカリウム塩等のポリリン酸塩、その他にエチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸及びこれらの塩類等が挙げられる。
【0024】
薬液注入地盤の注入率を求める方法として、一つは注入率を求めたい薬液注入後の地盤から採取した相対密度b%、質量M〔g〕、体積V〔cm〕、密度ρb=M/V〔g/cm〕の固結土と、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて地盤の相対密度に調整して存在する空隙をすべて注入液で充填した場合を注入率100%として作製した相対密度b%、質量M〔g〕、体積V〔cm〕、密度ρa=M/V〔g/cm〕の供試体の2種類の試料についてシリカの分析を行い、それぞれ試料1〔g〕当りのシリカ含有量〔mg〕を測定し、注入率100%として作製した供試体の1〔g〕当りのシリカ含有量A’〔mg /g〕、薬液注入後の地盤から採取した固結土のシリカ含有量B’〔mg/g〕にそれぞれの密度ρa、ρbを乗じて単位体積当りのシリカ含有量A〔mg/cm〕、B〔mg/cm〕を求め、注入率100%として作製した供試体の単位体積当りのシリカ含有量を基準として、これに対する改良地盤から採取した固結土の単位体積当りのシリカ含有量の割合から注入率λを求める。前記の内容を簡単に式で表すと、λ=(B’ ・ρb)/(A’ ・ρa)×100=B/A×100〔%〕(式1.1)となる。
【0025】
二つ目の方法としては、注入率を求めたい薬液注入後の地盤から採取した相対密度b%、質量M〔g〕、体積V〔cm〕、密度ρb=M/V〔g/cm〕の固結土と薬液注入前の地盤から採取した砂の2種類の試料についてシリカの分析を行い、それぞれ試料1〔g〕当りのシリカ含有量を測定し、薬液注入後の地盤から採取した固結土のシリカ含有量B’〔 mg /g〕に密度ρbを乗じて単位体積当りのシリカ含有量B〔mg/cm〕を求め、これより砂から溶出したシリカ含有量D’〔 mg/g〕に相対密度b%のときの砂の乾燥密度ρdを乗じて求めた単位体積当りのシリカ含有量D〔mg/cm〕を差し引き、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて地盤の相対密度に調整して存在する空隙をすべて注入液で充填して注入率100%になるように作製した相対密度b%、質量M〔g〕、体積V〔cm〕の供試体に要する薬液(質量M〔g〕)のシリカ濃度C’〔%〕にMcG/Vを乗じて求めた単位体積当りのシリカ含有量C〔mg/cm 〕を基準として、これに対する割合から注入率を求める。前記の内容を簡単に式で表すと、λ=(B’ ・ρb−D’ ・ρd)/{(C’/100)×(McG/V)×1000}×100=(B‐D)/C×100〔%〕(式1.2)となる。
【0026】
従来は薬液注入後の地盤から採取した固結土のシリカ含有量の測定値B’〔mg/g〕のみから注入後の地盤改良効果を判断していたが、前期の方法を用いればより正確な注入率が求められ、注入後の地盤改良効果の確認がより確実となる。従って、前記の方法によるシリカ含有量の測定から求められた注入率と設計注入率とを比較することによって、更には薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて地盤の相対密度に調整し、存在する空隙をすべて注入液で充填した場合を注入率100%として作製した供試体の強度から薬液注入後の地盤の強度を推定することができ、設計強度と比較することによって地盤改良効果を充分に評価できる。
【0027】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
シリカ含有量の測定方法
(1)シリカ含有量測定用試料液の作製方法
試料を105℃の高温室へ2時間入れて乾燥させる。乾燥した試料から5gを採取し、10%の水酸化ナトリウム(NaOH)溶液20mlと純水50mlを加えて1時間撹拌を行った後、ろ紙でろ過し、ろ紙上の試料分を純水で洗浄しながらろ液を作り、得られたろ液に水を加えて250mlとしてシリカ含有量測定用供試液を作製した。その際、試料を乾燥させた際の乾燥減量〔%〕を式2.1にて求めた。
【0028】
【数1】

【0029】
ここで、 G:乾燥減量〔%〕
E:乾燥前の試料の重量〔g〕
F:乾燥後の試料の重量〔g〕
【0030】
(2)測定方法
ICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)によりSiを測定した。Si からSiOを式2.2により換算して求めた。
【0031】
ここで、ICP-AESは、物質中の成分をプラズマ発光させて分光することによって元素を分析するものであり、金属、ガラス、セラミック、紙、繊維、洗浄加工水、工業排水などの主成分元素・微量成分元素を高感度・高精度で定性・定量することができる。特に微量元素の分析に有効である。
【0032】
【数2】

【0033】
ここで、 J:試料液1L当りのSiO2量〔mg〕
H:試料液1L当りのSi量〔mg〕
【0034】
(4)試料1g当たりのSiO2量の求め方
式2.3より試料1g当たりのSiO2量を求めた。
【0035】
【数3】

【0036】
ここで、 K:試料1g当りのSiO〔mg/g〕
J:試料液1〔L〕当りのSiO〔mg/L〕
l:試料液量(250〔ml〕)
m:測定に用いた乾燥試料の重量(5〔g〕)
G:乾燥減量〔%〕
【実施例1】
【0037】
注入率を求める際の相対密度による影響を把握するために、豊浦標準砂とシリカ濃度4、5、6%の溶液型非アルカリ性シリカゾルグラウトを用い、相対密度40%、80%で注入率100%の供試体を作製して相対密度と強度、相対密度とシリカ含有量の関係を求めた。
【0038】
(1)薬液
表1示す溶液型非アルカリ性シリカグラウトを用いた。
この、溶液型非アルカリ性シリカグラウトは水ガラスをイオン交換により脱アルカリして得られる活性シリカ(SiO濃度4Wt%)をベースとし、それに水ガラスと酸(リン酸)によって所定のシリカ濃度とpHに調整した酸性シリカ溶液である。
【0039】
ここで、活性シリカの代わりにコロイダルシリカをベースにして用いてもよいし、水ガラスと酸を加えて水ガラスのアルカリを除去して得られた酸性シリカゾルからなる酸性シリカ溶液を用いてもよい。
【0040】
【表1】

【0041】
(2)試料砂
豊浦標準砂
(3)供試体の作製
内径5cm、高さ10cmのモールドを用いて供試体を作製した。
【0042】
(4)強度並びにシリカ含有量の測定
供試体の一軸圧縮強度を測定し、強度を測定し終えた固結砂のシリカ含有量を前記のシリカ含有量の測定方法により分析し、供試体の質量に対するシリカ含有量の割合で表した。また、供試体からは薬液のシリカと試料砂のシリカが溶出されるので、試料砂のみのシリカ含有量も測定してブランクとした。
【0043】
(5)結果
一軸圧縮強度の測定結果を表2に示す。また、代表して4週強度について相対密度40%、80%の薬液のシリカ濃度に対する強度の関係を図1に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
薬液のシリカ濃度が高くなれば一軸圧縮強度も高くなり、薬液のシリカ濃度が同じであっても供試体の相対密度が高ければ一軸圧縮強度も高くなる結果となり、シリカ濃度並びに相対密度が一軸圧縮強度に大きく影響することがわかった。
【0046】
次に、強度測定を行った供試体について前記の測定方法によりシリカ含有量を測定し、供試体の質量に対するシリカ含有量の割合を表3、図2に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
試料砂のみのシリカ含有量は0.07 wt%となり、試料砂の可溶性シリカが溶出したものと思われる。図2ではこの値を薬液のシリカ濃度0%としてプロットし、近似線を描いたものである。
薬液のシリカ濃度が高くなれば、それに比例して供試体の質量に対するシリカ含有量の割合も高い値となった。
【0049】
また、相対密度は80%よりも40%の方が供試体の質量に対するシリカ含有量の割合が高くなっている。これは、相対密度を求める式を式3.1に示すが、供試体の相対密度が高いとその間隙が小さくなるためである。
【0050】
間隙は間隙比や間隙率で表され、土の密度と共に土の力学的特性に大きな影響を及ぼす要因であるが、間隙比が同じであっても砂の種類が異なれば土の力学的特性も違ってしまう。しかし、同じ相対密度で比較すると砂の種類に関係なく土の力学的特性が決まることが多く、広く利用されている。相対密度は砂の現在の締まり具合がその砂の最も密な状態と最も緩い状態の間のどの状態にあるかを示す指標である。従って、シリカの含有量を求める際には供試体試料の相対密度による影響を充分考慮しなければならない。
【0051】
【数4】

【0052】
ここで、 e:試料の間隙比
ρd:試料の乾燥密度〔g/cm
max:最小密度試験による試料の間隙比
min:最大密度試験による試料の間隙比
ρdmax:最大密度試験による試料の乾燥密度〔g/cm
ρdmin:最小密度試験による試料の乾燥密度〔g/cm
【実施例2】
【0053】
実験1
薬液注入による改良地盤中の浸透距離と注入率並びに強度の関係を把握するために、現場採取砂を用いたシリカ濃度6%の溶液型非アルカリ性シリカグラウトの一次元浸透試験を実施し、浸透固結体の一軸圧縮強度を測定して浸透距離と強度の関係を求め、強度測定後の供試体から採取した固結土の注入率を前記のシリカ含有量の測定方法により求めて式1.1から算出し、浸透距離と注入率の関係を求めた。
【0054】
(1)薬液
実施例-1と同じ表4に示す溶液型非アルカリ性シリカグラウトを用いた。
【0055】
【表4】

【0056】
(2)試料砂
現場採取砂
(3)一次元浸透装置
図3に一次元浸透装置を示す。
【0057】
(4)一次元浸透試験方法
内径5cm、長さ1.5mの透明アクリル製モールドに相対密度が60%となるように試料砂を充填した。予め水を注入して飽和させてから薬液の注入を行った。薬液の注入はモールド下部より0.03MPaで定圧注入した。薬液注入し始めはモールド上部より水が押し出されメスシリンダーに採取され、その液体のpHは中性を示すが、薬液がモールド上部に達するとメスシリンダーに採取された液体のpHが酸性になることによって、モールド内の水が薬液に置き換わったことを確認し、注入を終了とした。4週間養生し、モールドの端部を5cm除いてから10cmごとに切断し、5cm×10cmの供試体を得た。
【0058】
(5)注入率100%の供試体
内径5cm、高さ10cmのモールドを用い、試料砂を用いて相対密度が60%となるように調整して存在する空隙をすべて注入液で充填して注入率100%の供試体を作製した。
【0059】
(6)強度並びにシリカ含有量の測定
(4)一次元浸透試験と(5)注入率100%の供試体作製から得られた供試体の一軸圧縮強度を測定し、強度を測定し終えた固結砂のシリカ含有量を前記のシリカ含有量の測定方法により分析した。
【0060】
(7)結果
注入率100%として作製した供試体並びに一次元浸透試験より得られた供試体の質量〔g〕、体積〔cm〕を測定し、密度〔g/cm〕を算出した結果を表5に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
注入率100%として作製した供試体のシリカ含有量並びに一次元浸透試験による供試体のシリカ含有量を表6に示す。
【0063】
【表6】

【0064】
一次元浸透試験による供試体の一軸圧縮強度と注入率を式1.1より求めた結果を表7に示し、浸透距離と注入率並びに強度の関係を図4に示す。更に、注入率と強度の関係を図5に示す。図5には注入率100%として作製した供試体の強度0.35〔MN/m〕も含む。
【0065】
【表7】

【0066】
図4において浸透距離が長くなるほど注入率並びに強度は低下している。これは、薬液がモールド上部に達したのを確認してすぐに注入を終了しており、飽和土に始めに注入された薬液は希釈されているので、土粒子間に充填された薬液量が少なくなったためである。
【0067】
従って、浸透距離に対する注入率並びに強度の分布は酷似してくる。そこで注入率と強度の関係をプロットしたのが図5であり、注入率と強度の相関係数は0.97と高い相関が得られた。このため化学分析による注入率の測定は、薬液注入による改良範囲並びに改良地盤の固結状況の確認にとどまらず、改良地盤の強度を推定する補助手段としても有効であると考えられる。
【0068】
実験2
式1.2により注入率を求める方法を用いて実験1と同様に実験を行って、浸透距離と強度並びに注入率の関係を求めた。
【0069】
(1)薬液と実験方法
実験1と同様
【0070】
(2)シリカ含有量の測定
強度を測定し終えた固結砂並びにこれらの作製に用いた試料砂のシリカ含有量を前記のシリカ含有量の測定方法により分析した。
【0071】
(3)結果
注入率100%として作製した供試体並びに一次元浸透試験より得られた供試体の質量〔g〕、体積〔cm〕を測定し、密度〔g/cm〕を算出した結果を表8に示す。また、注入率100%として供試体を作製した際の試料砂の質量〔g〕並びに薬液の質量〔g〕を表9示す。
【0072】
【表8】

【0073】
【表9】

【0074】
注入率100%として作製した供試体のシリカ含有量並びに一次元浸透試験による供試体のシリカ含有量、試料砂のシリカ含有量の測定結果を表10に示す。ここで、相対密度60%のときの試料砂の乾燥密度は1.433〔g/cm〕であった。
【0075】
【表10】

【0076】
一次元浸透試験による供試体の一軸圧縮強度と注入率を式1.2より求めた結果を表11に示し、浸透距離と注入率並びに強度の関係を図6に示す。更に、注入率と強度の関係を図7に示す。図7には注入率100%として作製した供試体の強度0.32〔MN/m〕も含む。
【0077】
【表11】

【0078】
実験1と同様に浸透距離に対する注入率並びに強度の分布は酷似しており、注入率と強度の相関係数は0.99と高い相関が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は溶液型シリカグラウトを地盤中に注入後の注入率と改良地盤の固結状況を把握し、さらには改良地盤の固結範囲と固結状況の分布を確認して地盤改良効果の確認を行うものであるから、地盤改良材の注入技術分野での利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】薬液のシリカ濃度と相対密度を40%と80%で作製した供試体の養生期間4週の一軸圧縮強度測定値の関係を示したグラフである。
【図2】薬液のシリカ濃度と供試体の質量に対するシリカ含有量の割合の関係を示したグラフである。
【図3】一次元浸透装置の模式図である。
【図4】一次元浸透試験による浸透距離に対する浸透供試体の一軸圧縮強度測定値と式1.1による注入率の分布図である。
【図5】注入率と一軸圧縮強度測定値の関係を表したグラフである。
【図6】一次元浸透試験による浸透距離に対する浸透供試体の一軸圧縮強度測定値と式1.2による注入率の分布図である。
【図7】注入率と一軸圧縮強度測定値の関係を表したグラフである。
【符号の説明】
【0081】
1 コンプレッサー
2 圧力計
3 注入液
4 注入液タンク
5 バルブ
6 バルブ
7 アクリル製モールド
8 試料砂
9 排出口
10 メスシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液型シリカグラウトの薬液注入による地盤改良効果の確認方法であって、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて注入率100パーセントとして作製した供試体の単位体積当りのシリカ含有量の測定値を(A)とし、薬液注入を行った改良地盤から採取した固結土の単位体積当りのシリカ含有量の測定値を(B)とし、B/A×100から改良地盤の注入率λ〔パーセント〕を求めることを特徴とする地盤改良効果の確認方法。
【請求項2】
溶液型シリカグラウトの薬液注入による地盤改良効果の確認方法であって、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて注入率100パーセントになるように供試体を作製するに要した薬液から算出したシリカ含有量を(C)とし、薬液注入を行った改良地盤から採取した固結土のシリカ含有量の測定値を(B)とし、薬液注入前の地盤から採取した砂の単位体積当りのシリカ含有量の測定値を(D)とし、(B‐D)/C×100から改良地盤の注入率λ〔パーセント〕を求めることを特徴とする地盤改良効果の確認方法。
【請求項3】
請求項1または2の地盤改良効果の確認方法であって、薬液注入前の地盤から採取した砂を用いて注入率100パーセントとして作製する供試体の相対密度は地盤の薬液注入前の相対密度と対応させることを特徴とする地盤改良効果の確認方法。
【請求項4】
請求項1または2の地盤改良効果の確認方法であって、注入する薬液として特に非アルカリ性シリカグラウトを用いた際の地盤改良効果の確認方法。
【請求項5】
請求項1または2の地盤改良効果の確認方法であって、求めた注入率から地盤改良範囲の固結状況を確認する地盤改良効果の確認方法。
【請求項6】
経時的に請求項1または2の地盤改良効果の確認を行うことによって地盤の評価を行う地盤改良効果の確認方法。
【請求項7】
請求項1または2のいずれかまたは両方の地盤効果の確認を行う工程を含むことを特徴とする地盤注入工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−51497(P2007−51497A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238475(P2005−238475)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】