説明

地盤改良方法およびシールド

【課題】シールド工法や密閉型推進工法で地下トンネルを構築する際に、切羽の安定を維持するとともに、地盤改良を確実に行うことが可能な地盤改良方法を提供する。
【解決手段】切羽10とシールド隔壁7とに跨る形でガイド筒30を配置し、ガイド筒30に地盤改良装置40を挿入する。地盤改良装置40をガイド筒30より前方に移動させて地山25を削孔し、地山25にジェットノズル46から地盤改良材を噴射して固化体26を築造する。地盤改良材の噴射に伴って発生する余剰物をガイド筒30を通じてシールド隔壁7の後方へ排出する。これにより、シールド機1の内部から地山25を地盤改良する際に、余剰物がカッターチャンバー9内に流れ込む事態を防止し、カッターチャンバー9内の泥水の劣化を防止して切羽10の安定を維持できる。また、余剰物の排出圧力を一定に保持すれば、一定量の余剰物を排出することができ、地盤改良を確実に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法や密閉型推進工法で地下トンネルを構築する際に適用するに好適な地盤改良方法およびシールド(シールド機、掘進機)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド工法や密閉型推進工法で地下トンネルを構築する際に、地中に障害物(撤去し忘れた矢板など)や既設構造物が近接している場合、周囲の地山を地盤改良し、障害物を撤去したり、既設構造物を防護したりする必要がある。ところが、近年の都市化に伴い、敷地が狭隘化し、交通量が増加したことから、地上で作業区域を占有して施工することが難しくなってきている。そのため、シールド機(シールド工法の場合)や掘進機(密閉型推進工法の場合)の内部から地盤を改良する地盤改良方法が強く要望されていた。
【0003】
従来、このような地盤改良方法としては、地盤改良材(セメント系懸濁型注入材、水ガラス等溶液型注入材、ベントナイト、気泡の混合液など)を地盤に向けてジェット噴射することにより、地山の土粒子を攪乱して地盤改良材に置き換えたり、地山の土粒子に地盤改良材を混合して固化体を形成したりする方法が採用されていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−204666号公報(段落〔0041〕〜〔0043〕の欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これでは、地盤改良材の噴射に伴い、地山の土粒子と地盤改良材とが混じり合った泥状の余剰物が発生するため、次のような課題があった。
【0005】
第1に、この余剰物がカッターチャンバー内に流れ込むと、カッターチャンバー内の泥土の圧力が上昇し、切羽に過剰な圧力を与えてしまう。また、この余剰物がカッターチャンバー内の泥土と置き換わって内部で固化すると、カッターヘッドの回転が阻害されたり、シールド機や掘進機の掘進を再開できなくなったりする。さらに、この余剰物が多くなると、その圧力が高くなり、余剰物がスクリューコンベアから噴出して切羽の泥土がこれとともに流出してしまい、切羽が崩壊する危険性がある。これらの結果、切羽の安定を維持することができなくなる恐れがある。
【0006】
第2に、この余剰物は、排出経路が不安定であり、排出経路の大きさ(直径、長さなど)が決まっていないことから、一定量の余剰物を排出することが不可能となる。したがって、切羽および周辺の地山の安定性が損なわれる危険性が高くなり、地盤改良を確実に行うことができない場合が生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、切羽の安定を維持するとともに、地盤改良を確実に行うことが可能な地盤改良方法およびシールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、切羽の後方にカッターチャンバーを介してシールド隔壁が設けられたシールドを用いて地盤を改良する際に適用される地盤改良方法であって、前記切羽と前記シールド隔壁とに跨る形でガイド筒を配置し、このガイド筒に地盤改良装置を挿入し、この地盤改良装置を前記ガイド筒より前方に移動させて地山を削孔し、この地山に前記地盤改良装置の先端から地盤改良材を噴射して固化体を築造し、この地盤改良材の噴射に伴って発生する余剰物を前記ガイド筒を通じて前記シールド隔壁の後方へ排出する地盤改良方法としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記余剰物の排出圧力を一定に保持することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、切羽の後方にカッターチャンバーを介してシールド隔壁が設けられたシールドであって、前記シールド隔壁にガイド筒が前記切羽に達するように進退自在に設けられ、前記ガイド筒は、筒体と、この筒体の内部空間と外部空間とを連通・遮断するバルブと、前記筒体に設けられた排泥口とから構成され、地山に地盤改良材を噴射する地盤改良装置が前記ガイド筒の筒体に挿通自在に設けられ、前記地盤改良材の噴射に伴って発生する余剰物を前記ガイド筒を通じて前記シールド隔壁の後方へ排出する排泥管が、前記ガイド筒に前記排泥口を介して連通しうる形で設けられているシールドとしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記余剰物の排出圧力を一定に保持する排出圧力保持手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の構成に加え、前記ガイド筒は、前記シールド隔壁に設けられた複数個の注入部に対して選択的に着脱自在となっており、前記注入部は、前記シールド隔壁に取り付けられた取付台と、この取付台に回動自在に支持された球状回転部と、この球状回転部に連設された注入筒とを備え、前記注入筒を開閉しうるバルブが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、シールドの内部から地山を地盤改良する際に、余剰物がカッターチャンバー内に流れ込む事態を防止することにより、カッターチャンバー内の泥水の劣化を防止して切羽の安定を維持することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、一定量の余剰物を排出することが可能となるため、地盤改良を確実に行うことができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、シールドの内部から地山を地盤改良する際に、余剰物がカッターチャンバー内に流れ込む事態を防止することにより、カッターチャンバー内の泥水の劣化を防止して切羽の安定を維持することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、一定量の余剰物を排出することが可能となるため、地盤改良を確実に行うことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、バルブを閉めることにより、ガイド筒の非装着状態においてカッターチャンバー内の泥水が筒体を通ってシールド隔壁の後方に流入する事態を阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0019】
図1乃至図4には、本発明の実施の形態1を示す。
【0020】
まず、構成を説明する。
【0021】
シールド機(シールド)1は、図1に示すように、円筒状のフード2を有しており、フード2の先端部(図1左端部)には円盤状のカッターヘッド3が回転自在に取り付けられている。カッターヘッド3の中心にはカッター回転軸5が後方(図1右方)へ向けて突設されており、カッター回転軸5にはカッター駆動部6が接続されている。また、フード2内には、カッターヘッド3の後方に円盤状のシールド隔壁7が設けられている。ここで、カッターヘッド3とシールド隔壁7との間にはカッターチャンバー9が形成されており、カッターチャンバー9には、泥水が送泥管(図示せず)から供給されて加圧充満している。また、シールド隔壁7の後方には作業空間11が形成されている。さらに、カッターヘッド3の前面には切羽10が形成されており、カッターヘッド3の後面には、カッターチャンバー9内の泥水を攪拌するための複数個(図1では、4個)の攪拌翼12が後方へ向けて突設されている。また、作業空間11には、掘削土をフード2の後方へ搬出するためのスクリューコンベア13が設置されている。
【0022】
また、シールド隔壁7には、図1に示すように、複数個(図1では、3個)の注入部15がカッターチャンバー9と作業空間11とを連通する形で設けられており、各注入部15は、図2に示すように、円環状の取付台16、球体筒状の球状回転部17、円筒状の注入筒19およびバルブ20から構成されている。ここで、取付台16はシールド隔壁7に嵌着されており、球状回転部17は取付台16に回動自在に支持されている。また、注入筒19は球状回転部17の後方(つまり、作業空間11側)に一体に連設されている。さらに、バルブ20は注入筒19の前端部近傍に取り付けられており、バルブ20を開けると注入筒19が開放され、バルブ20を閉めると注入筒19が閉塞される。なお、注入筒19には、その後端にフランジ19aが形成されているとともに、このフランジ19aとバルブ20との間に排泥管接続孔19bが貫通して穿設されている。
【0023】
そして、これらの注入部15には、図1に示すように、排泥管21が注入筒19の排泥管接続孔19bに接続される形で選択的に着脱自在となっている。排泥管21の途中には、図2に示すように、排泥管21の開閉動作を行うとともに排出圧力を一定に保持するバルブ・圧力制御部(排出圧力保持手段)22が設けられている。
【0024】
また、これらの注入部15には、図1に示すように、ガイド筒30が選択的に着脱自在となっており、ガイド筒30は、図2および図4に示すように、円筒状の筒体31、ドリルヘッド収容部32、バルブ33、排泥口34、円柱状の栓35およびリング状のシール部材36から構成されている。ここで、筒体31は注入部15の注入筒19内に摺動自在となっており、ドリルヘッド収容部32は筒体31の後端部に形成されている。また、ドリルヘッド収容部32の前方にはバルブ33が開閉自在に取り付けられており、バルブ33が開いた状態では、筒体31の内部空間が筒体31の後端開口部を介して筒体31の外部空間と連通するとともに、バルブ33が閉じた状態では、筒体31の内部空間と外部空間とが遮断された状態となる。また、排泥口34はバルブ33の前方で筒体31に貫通して穿設されている。さらに、栓35は、図2に示すように、筒体31の後端部に排泥口34を塞ぐ形で着脱自在となっており、栓35の後端にフランジ35aが形成されている。また、シール部材36は、図3に示すように、筒体31の後端部に着脱自在となっている。なお、注入筒19の内周面には、Oリングなどのシール材23が注入筒19と筒体31との隙間を塞ぐように周設されている。
【0025】
さらに、ガイド筒30の筒体31には、図4および図5に示すように、地盤改良装置40が着脱自在となっており、地盤改良装置40は、短円筒状の先頭ドリルロッド41、複数本の円筒状のドリルロッド42、短円筒状のドリルヘッド43、複数個のビット44、注水口45、ジェットノズル46、駆動部47、モータ48および注入ホース49から構成されている。ここで、先頭ドリルロッド41および複数本のドリルロッド42は、一直線状に接合されてガイド筒30の筒体31内にシール部材36を介して摺動自在となっており、ドリルヘッド43は、図3に示すように、先頭ドリルロッド41の前側に取り付けられている。また、各ビット44はドリルヘッド43の前面周縁部に装着されており、注水口45はドリルヘッド43の前面中央部に形成されている。さらに、ジェットノズル46はドリルヘッド43の周面部に横向きに内蔵されている。また、駆動部47は、図5に示すように、最後端のドリルロッド42の後ろ側に取り付けられており、モータ48は駆動部47を介してドリルロッド42、先頭ドリルロッド41およびドリルヘッド43を同期的に回転駆動しうるように取り付けられている。さらに、注入ホース49は、シールド機1の後続台車に配置されたプラント設備(図示せず)から供給される水、エア、地盤改良材(例えば、セメント液、セメント液と水ガラスとの混合液など)をドリルロッド42、先頭ドリルロッド41およびドリルヘッド43の内部を通じて注水口45、ジェットノズル46に供給しうるように接続されている。なお、先頭ドリルロッド41とドリルロッド42とは同じ外径を有しており、ドリルヘッド43の外径は先頭ドリルロッド41およびドリルロッド42の外径より大きくなっている。
【0026】
以上のような構成を有するシールド機1の作用につき、以下に説明する。
【0027】
このシールド機1を用いてシールド工法で地下トンネルを構築する際に、地下トンネルに近接して障害物や既設構造物が存在する場合は、その手前でシールド機1の前進およびカッターヘッド3の回転を一旦停止させ、以下に述べるとおり、噴射攪拌による地盤改良を行う。
【0028】
まず、ガイド筒装着工程で、図1に示すように、地山25の地盤改良区域27をいくつかの部分に分割し、いずれかの部分に応じて複数個の注入部15から1個の注入部15を選択し、この注入部15にガイド筒30を所定の方向に向けて装着する。それには、図2に示すように、この注入部15の注入筒19の後端部にガイド筒30の筒体31を差し込み、ガイド筒30の後端を注入筒19とともに上下左右に適宜移動させる。すると、注入部15にガイド筒30が所定の方向に向けて装着された状態となる。
【0029】
次に、排泥管装着工程に移行し、図2に示すように、注入筒19の排泥管接続孔19bに排泥管21を接続する。
【0030】
その後、ガイド筒前進工程に移行し、図4に示すように、バルブ20を開けた後、ガイド筒30を前進させて筒体31の先端部を切羽10に貫入させる。このとき、ガイド筒30の排泥口34が注入筒19の排泥管接続孔19bに一致し、ガイド筒30と排泥管21とが連通する。なお、筒体31の切羽10への貫入量は、地山25の土質などの状況に応じて適宜調整する。
【0031】
次に、ドリルヘッド組付工程に移行し、図4に示すように、ガイド筒30のドリルヘッド収容部32にドリルヘッド43を組み付ける。それには、まず、栓35のフランジ35aの固着を解き、栓35を筒体31から引き抜く。その後、図3に示すように、ドリルヘッド43の後ろ側に先頭ドリルロッド41を取り付け、この先頭ドリルロッド41にシール部材36を周設してドリルヘッド43の後面に当接させた後、図4に示すように、これを筒体31に取り付け、シール部材36をボルトなどで筒体31に固定する。すると、ガイド筒30のドリルヘッド収容部32にドリルヘッド43が組み付けられた状態となる。
【0032】
その後、ドリルヘッド前進工程に移行し、ドリルヘッド43を切羽10の近傍まで押し込む。それには、バルブ33を開けてから、先頭ドリルロッド41の後方に必要本数のドリルロッド42を順次継ぎ足しながらジャッキ等の推進装置(図示せず)で押し込んでいく。すると、ドリルヘッド43が切羽10の近傍まで押し込まれた状態となる。このとき、ドリルロッド42はガイド(図示せず)によって支持されているため、ドリルロッド42の押し込み動作は円滑に行われる。また、こうしてドリルヘッド43が切羽10の近傍まで押し込まれると、図5に示すように、ガイド筒30の筒体31とドリルロッド42との間に円筒状の間隙28が生じる。
【0033】
次に、地山削孔工程に移行し、図5に示すように、地盤改良装置40で地山25を前方に向けて削孔していく。それには、注入ホース49から水を注入するとともに、モータ48を駆動してドリルヘッド43を回転させながら、ドリルヘッド43を徐々に前進させる。すると、注水口45から地山25に向けて水が吐出しつつ、ビット44で地山25が前方に向けて削孔されていく。このとき、ドリルヘッド43の外径は先頭ドリルロッド41およびドリルロッド42の外径より大きいので、ドリルヘッド43が通過した跡には、図5に示すように、先頭ドリルロッド41およびドリルロッド42と地山25との間に円筒状の間隙29が間隙28に連通する形で生じる。
【0034】
こうして地山25の削孔動作が進行し、ドリルヘッド43が地山25の所定区域に到達したところで、固化体築造工程に移行し、ドリルヘッド43を回転させたまま後方(図5右方)へ引き戻しつつ、注入ホース49から地山25に地盤改良材を高圧で注入する。すると、図5に示すように、ジェットノズル46から地山25に向けて地盤改良材がジェット噴射され、地山25が攪拌される。その結果、地山25の地盤改良区域27の一部分に固化体26が築造される。
【0035】
このとき、地盤改良材のジェット噴射に伴い、地山25の土粒子と地盤改良材とが混じり合った泥状の余剰物が発生するが、この余剰物は、図5に示すように、間隙29、28を通じて後方へ供給され、排泥口34および排泥管接続孔19bを通って排泥管21に流入した後、シールド機1の後方へ排出されるため、カッターチャンバー9内に流れ込む事態を防止することができる。したがって、カッターチャンバー9に加圧充満している泥水が劣化することはなく、切羽の安定を維持することができる。このように、固化体築造工程において余剰物を排出するときには、2つの間隙29、28が余剰物排出通路となるが、一方の間隙29は、固化体築造工程に先立つ地山削孔工程で既に形成されており、他方の間隙28は、固化体築造工程に先立つドリルヘッド前進工程で既に形成されている。したがって、余剰物の排出作業を円滑に行うことができると同時に、工程数を削減することができる。なお、注入筒19と筒体31との間にはシール材23が設けられているため、排泥口34から排出された余剰物が注入筒19と筒体31との間を通って作業空間11に漏れ出す恐れはない。また、筒体31の後端部はシール部材36を介してドリルロッド42に当接しているため、余剰物が筒体31とドリルロッド42との隙間から作業空間11に漏れ出す恐れもない。
【0036】
また、余剰物が排泥管21を通じて排出されるときには、バルブ・圧力制御部22により、排出圧力が一定に保持されるため、一定量の余剰物を排出することが可能となる。したがって、切羽および周辺の地山の安定性を維持して地山の崩壊を未然に防止し、地盤改良を確実に行うことが可能となる。
【0037】
こうして地山25の地盤改良区域27の一部分に固化体26が築造されたところで、地盤改良装置撤去工程に移行し、地盤改良装置40をガイド筒30から引き抜いて撤去する。それには、モータ48の駆動によるドリルヘッド43の回転および地盤改良材の注入を停止した後、ガイド筒30を固定したままドリルロッド42を後方へ引き戻す。そして、図4に示すように、ドリルヘッド43がドリルヘッド収容部32に達したところで、バルブ33を閉めた後、ドリルロッド42を先頭ドリルロッド41から分離してから、シール部材36を取り外し、ドリルヘッド43および先頭ドリルロッド41を筒体31から引き抜く。その後、栓35を少し挿入し、バルブ33を開けてから、栓35を奥まで完全に挿入し、フランジ35aで筒体31に固着する。これで、地盤改良装置40がガイド筒30から撤去された状態となる。なお、ドリルロッド42を後方へ引き戻すときには、ドリルヘッド43が地山25の削孔部25aを通過するので、ドリルロッド42を低負荷で迅速に引くことができる。
【0038】
こうして地盤改良装置40がガイド筒30から撤去されたところで、ガイド筒撤去工程に移行し、ガイド筒30を注入部15から引き抜いて撤去する。それには、ガイド筒30を後方へ引き戻す。そして、ガイド筒30の筒体31がバルブ20の後方に達したところで、バルブ20を閉めた後、ガイド筒30を注入部15から引き抜く。これで、ガイド筒30が注入部15から撤去された状態となる。なお、このとき、バルブ20が閉まっているので、ガイド筒30を注入部15から引き抜いても、カッターチャンバー9内の泥水が筒体31を通って作業空間11に流入する心配はない。
【0039】
続いて、別の注入部15にガイド筒30を装着し、上述した手順と同様に、地山25の地盤改良区域27の別の部分に固化体26を築造する。
【0040】
以下、同様の手順を繰り返して地山25の地盤改良区域27の全域に固化体26を築造する。
【0041】
ここで、噴射攪拌による地盤改良作業が終了する。
【0042】
このように、地盤改良装置40を取り付けるための注入部15が複数個設けられており、しかも、各注入部15において注入筒19が取付台16に対して回動自在となっており、ひいては地盤改良装置40がシールド隔壁7に対して回動自在となっているため、広い範囲を効率よく地盤改良することができる。
【0043】
また、ガイド筒30は着脱自在となっているため、注入部15が複数個あってもガイド筒30を1個だけ用意すれば足り、ガイド筒30の材料コスト、ひいてはシールド機1の製造コストを低廉に抑えることができる。
[発明のその他の実施の形態]
【0044】
なお、上述した実施の形態1では、シールド工法に本発明を適用する場合について説明したが、泥水式や土圧式など各種の密閉型推進工法に本発明を同様に適用することもできる。密閉型推進工法の場合、掘進機(先導管)がシールドに該当する。
【0045】
また、上述した実施の形態1では、注水口45およびジェットノズル46が設けられたドリルヘッド43について説明したが、このドリルヘッド43にさらに逆止弁を設けてもよい。そうすれば、注水口45やジェットノズル46から放出された水、エア、地盤改良材が逆流する事態が発生しないので、水、エア、地盤改良材の放出作業を円滑に行うことができる。
【0046】
さらに、上述した実施の形態1では、撤去工程において地盤改良装置40を撤去するときに、ドリルロッド42を後方へ引き戻してドリルヘッド43が地山25の削孔部25aを通過するようにしたが、このとき、地盤改良材を含まない泥状物(作泥材)で地山25の削孔部25aを充填することもできる。この場合、地盤改良に伴って地山25に空洞が発生することはないので、地面の陥没などの不具合を惹起する危険性がなくなる。
【0047】
さらにまた、上述した実施の形態1では、地下トンネルを構築する場合について説明したが、山岳トンネルを構築する場合に本発明を同様に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1に係るシールド機を示す縦断面図である。
【図2】同実施の形態1に係る地盤改良方法のガイド筒装着工程を示す縦断面図である。
【図3】同実施の形態1に係る地盤改良方法のドリルヘッド組付工程を示す縦断面図である。
【図4】同実施の形態1に係る地盤改良方法のガイド筒前進工程を示す縦断面図である。
【図5】同実施の形態1に係る地盤改良方法の固化体築造工程を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1……シールド機(シールド)
2……フード
3……カッターヘッド
5……カッター回転軸
7……シールド隔壁
9……カッターチャンバー
10……切羽
11……作業空間
13……スクリューコンベア
15……注入部
16……取付台
17……球状回転部
19……注入筒
19a……フランジ
19b……排泥管接続孔
20……バルブ
21……排泥管
22……バルブ・圧力制御部(排出圧力保持手段)
23……シール材
25……地山
25a……削孔部
26……固化体
27……地盤改良区域
28……間隙(余剰物排出通路)
29……間隙(余剰物排出通路)
30……ガイド筒
31……筒体
32……ドリルヘッド収容部
33……バルブ
34……排泥口
35……栓
35a……フランジ
36……シール部材
40……地盤改良装置
41……先頭ドリルロッド
42……ドリルロッド
43……ドリルヘッド
44……ビット
45……注水口
46……ジェットノズル
47……駆動部
48……モータ
49……注入ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽の後方にカッターチャンバーを介してシールド隔壁が設けられたシールドを用いて地盤を改良する際に適用される地盤改良方法であって、
前記切羽と前記シールド隔壁とに跨る形でガイド筒を配置し、このガイド筒に地盤改良装置を挿入し、この地盤改良装置を前記ガイド筒より前方に移動させて地山を削孔し、この地山に前記地盤改良装置の先端から地盤改良材を噴射して固化体を築造し、この地盤改良材の噴射に伴って発生する余剰物を前記ガイド筒を通じて前記シールド隔壁の後方へ排出することを特徴とする地盤改良方法。
【請求項2】
前記余剰物の排出圧力を一定に保持することを特徴とする請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
切羽の後方にカッターチャンバーを介してシールド隔壁が設けられたシールドであって、
前記シールド隔壁にガイド筒が前記切羽に達するように進退自在に設けられ、
前記ガイド筒は、筒体と、この筒体の内部空間と外部空間とを連通・遮断するバルブと、前記筒体に設けられた排泥口とから構成され、
地山に地盤改良材を噴射する地盤改良装置が前記ガイド筒の筒体に挿通自在に設けられ、
前記地盤改良材の噴射に伴って発生する余剰物を前記ガイド筒を通じて前記シールド隔壁の後方へ排出する排泥管が、前記ガイド筒に前記排泥口を介して連通しうる形で設けられていることを特徴とするシールド。
【請求項4】
前記余剰物の排出圧力を一定に保持する排出圧力保持手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のシールド。
【請求項5】
前記ガイド筒は、前記シールド隔壁に設けられた複数個の注入部に対して選択的に着脱自在となっており、
前記注入部は、前記シールド隔壁に取り付けられた取付台と、この取付台に回動自在に支持された球状回転部と、この球状回転部に連設された注入筒とを備え、
前記注入筒を開閉しうるバルブが設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載のシールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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