説明

地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法、耐震工法、建築基礎工法

【課題】地盤改良部の無駄を無くすことでコストの低減が図れるうえ、簡単且つ小型化した構造を実現することができる。
【解決手段】鉛直軸回りに回転し、互いに平行に設けられた3軸の主掘削回転軸2と、これら主掘削回転軸2の下端に固定されて水平回転する主掘削カッタ20と、主掘削回転軸2に平行に配置された副掘削回転軸3と、副掘削回転軸3の下端3aに固定されて水平方向に回転する駆動翼30と、主掘削回転軸2同士を水平方向に連結するとともに、各主掘削回転軸2を回転自在に支持する第1連結軸4Aと、連結軸4Aの軸線方向C1に直交する水平軸回りに回転するとともに、連結軸4Aに対して回転自在に挿通支持された伝達回転軸31と、伝達回転軸31の両端に固定され、その伝達回転軸31を中心にして回転する副掘削カッタ32と、伝達回転軸31から径方向外側に向けて延びる従動翼33とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削し、その掘削部分に地盤改良材を添加して掘削土と混合し、攪拌することにより地盤改良を行う地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法、耐震工法、建築基礎工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤改良施工として、地盤をブロック状あるいは壁状に掘削し、地盤をほぐした状態で、例えば地盤改良材を添加し、ほぐされた地盤とともに混合し、攪拌することにより地盤改良壁等を施工する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、先端(下端)に掘削翼を設けたロッドを、隣り合う掘削翼同士が接触しないように複数のロッドを配列するとともに、各ロッドの掘削翼の上方位置に攪拌翼を設け、その攪拌翼がロッドの回転方向と異なる方向に回転させるようにした構成であって、ロッドとともに掘削翼を回転させて地盤中を下方に移動させつつ、攪拌翼によって混合し、攪拌する地盤改良装置について開示されている。
【0003】
また、一般的な地盤改良装置として、3軸のロッドを地盤中に下方へ移動させるもので、それらロッドにはプロペラ状の混練翼と螺旋状の移動翼とが配置されており、それら混練翼と移動翼とが隣り合うロッド間で干渉しないように交互に配置された装置がある。この場合、図25に示すように各ロッドで造成される地盤改良領域M11(二点鎖線)同士がオーバーラップしており、例えば仮設土留壁として利用する地盤改良壁を施工する場合にあっては、壁面を形成できる領域(図25で符号M10の領域)がその仮設土留壁の有効断面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−217820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の地盤改良装置では、図25に示すように隣り合う地盤改良領域M11、M11どうしをオーバーラップさせて掘削する構造であり、地盤改良壁の壁面より外側の部分が有効断面とならず、すなわち改良径に対して有効断面が小さくなる問題があった。そのため、掘削翼で掘削して改良される円形の一部が有効断面として機能しない余掘り部に相当し、地盤改良部に無駄があることからコストの低減が求められていた。
また、近年では、都市部で狭いスペースでの地盤改良施工の要求が増加しており、簡単且つ小型化した構造のものが必要とされており、その点で改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、地盤改良部の無駄を無くすことでコストの低減が図れるうえ、簡単且つ小型化した構造を実現することができる地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法、耐震工法、建築基礎工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る地盤改良装置では、地盤中を移動させて地盤改良を行う地盤改良装置であって、鉛直軸回りに回転し、互いに平行に設けられた複数の第1回転軸と、第1回転軸の下端に固定されて水平回転する第1掘削翼と、隣り合う第1回転軸同士の中間で第1回転軸に平行に配置され、第1回転軸の回転が伝達されて鉛直軸回りに回転する第2回転軸と、第2回転軸の下端に固定されて水平方向に回転する駆動翼と、複数の第1回転軸同士を水平方向に連結するとともに、各第1回転軸を回転自在に支持する連結軸と、連結軸の軸線方向に直交する水平軸回りに回転するとともに、連結軸に対して回転自在に挿通支持された第3回転軸と、第3回転軸の両端に固定され、その第3回転軸を中心にして回転する第2掘削翼と、第3回転軸から径方向外側に向けて延びる従動翼とを備え、駆動翼の回転軌跡内に従動翼が配置され、駆動翼の回転を従動翼に伝達する構成とされ、第2掘削翼は、第1回転軸の軸方向から見て、隣り合う第1掘削翼のそれぞれの回転軌跡をなす一次掘削領域と、隣り合う一次掘削領域の円の共通外接線との間に形成される二次掘削領域内に位置することを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る地盤改良方法では、上述した地盤改良装置を用いた地盤改良方法であって、地盤改良装置を改良対象地盤上に設置し、第1回転軸とともに複数の第1掘削翼を回転させて一次掘削領域の地盤を掘削する工程と、第2回転軸の回転を駆動翼から従動翼に伝達させ、第3回転軸に固定されている第2掘削翼によって二次掘削領域の地盤を掘削する工程と、一次掘削領域および二次掘削領域の掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌する工程とを有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る耐震工法では、上述した地盤改良装置を用いて構造物の周囲を地盤改良する耐震工法であって、構造物下の地盤を囲う改良対象地盤中に地盤改良装置を投入する工程と、第1掘削翼および第2掘削翼により一次掘削領域および二次掘削領域を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで外周改良部を形成する工程とを有し、外周改良部によって囲繞された構造物下の地盤の変動を規制するようにしたことを特徴としている。
【0010】
本発明では、複数の第1掘削翼の掘削による一次掘削領域と、第2掘削翼の掘削による隣り合う一次掘削領域の円の共通外接線との間に形成される二次掘削領域とからなる地盤改良領域を形成することで、その掘削断面全体を地盤改良壁としての有効断面とすることができる。つまり、一次掘削領域全体が有効断面となるので、従来のように一次掘削領域の一部が地盤改良壁として機能せずに余掘りになることがなくなる。そのため、第1掘削翼の外径寸法を従来の掘削翼よりも小径にすることが可能なうえ、余掘りに相当する部分に対応する地盤改良材の添加量を少なくすることができるので、施工費の低減が図れ、しかも装置の小型化を図ることができる。
【0011】
また、第1回転軸の回転が第2回転軸に伝達され、その第2回転軸の下端に固定された駆動翼から従動翼に回転力が伝達され、従動翼とともに第3回転軸が回転して第2掘削翼が回転する構成、すなわち第2掘削翼は第1回転軸の回転力を利用して駆動するので、第2回転軸用の駆動手段を省略することができ、コストの低減が図れ、装置の構造を簡単にすることができる。
【0012】
また、本発明では、地盤改良装置を簡単な構造とし、小型化させることができるので、バックホウなどの作業機のアタッチメントとして使用することが可能である。そのため、狭い空間であっても本地盤改良装置を導入して、地盤改良壁を形成することができる。この場合、既設の構造物下の地盤を囲うようにして外周改良部を形成することで、外周改良部によって囲繞された構造物下の地盤の水平方向の移動が規制され、変動が抑えられることから、その地盤の破壊を防止することができる。したがって、地震時おける構造物の振動を小さくすることができ、構造物の破壊を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係る地盤改良装置では、第1回転軸の軸方向から見て、第2掘削翼の回転軌跡を含む平面が共通外接線の内側に沿って配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明では、二次掘削領域より広い範囲を第2掘削翼によって掘削することがなく、一次掘削領域と二次掘削領域とで形成される有効断面を確実に掘削することができる。
【0015】
また、本発明に係る地盤改良装置では、連結軸は、その両端が全ての第1掘削翼で掘削した内壁面に当接する長さ寸法をなしていることが好ましい。
【0016】
本発明では、連結軸の両端面が第1掘削翼で掘削した内壁面に当接して突っ張った姿勢となり、水平方向にずれ難い状態となっているので、第1掘削翼を回転させて掘削するときの第1回転軸に対する連結軸の共回りを防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る地盤改良装置では、第1回転軸には、その中心軸線から径方向外側に向けて延びる第1伝達翼が設けられるとともに、第2回転軸には、その中心軸線から径方向外側に向けて延びる第2伝達翼が設けられ、第1伝達翼の回転軌跡内に第2伝達翼が配置されていることがより好ましい。
【0018】
この発明によれば、第1伝達翼と第2伝達翼との中心軸線が平行で、且つ第1伝達翼の回転軌跡内に第2伝達翼が配置されているので、第1回転軸とともに回転する第1伝達翼が第2伝達翼に当接することで、第2伝達翼は第2回転軸の中心軸線回りに回転し、第2伝達翼を介して第2回転軸が回転することになる。つまり、第2回転軸は、独自の回転駆動手段を備えずに、第1回転軸より伝達された回転力のみで回転することができることから、装置の簡略化を図ることができる。
【0019】
また、本発明に係る地盤改良装置では、第1回転軸および第2回転軸のうち少なくとも一方には、これら回転軸と共に回転する攪拌翼が設けられていることが好ましい。
【0020】
本発明では、第1回転軸および第2回転軸のうち少なくとも一方に設けられた攪拌翼が第1掘削翼および第2掘削翼の回転とともに回転し、掘削土を均一に且つ効果的に混合し、攪拌することができる。そして、攪拌翼が回転軸の軸方向の所定位置に固定されているので、地盤改良装置を掘削とともに下方に移動させたときでも、その掘削位置に対する攪拌翼の位置が変化しないことから、安定した攪拌を行うことができる。
【0021】
また、本発明に係る地盤改良装置では 従動翼は、第3回転軸の連結軸を挟んで一端側に設けられ、第3回転軸の他端側には、第3回転軸と共に回転する攪拌翼が設けられ、攪拌翼は、駆動翼の回転軌跡の外側に位置することが好ましい。
【0022】
本発明では、第2掘削翼で掘削された二次掘削領域内の掘削土を、第3回転軸と共に回転する攪拌翼によって混合し、攪拌することができる。
【0023】
また、本発明に係る地盤改良装置を用いた耐震工法では、構造物と外周改良部との間の地表面側の地盤を地盤改良装置によって改良し、表面改良部を形成するようにしてもよい。
【0024】
本発明では、表面改良部によって構造物と外周改良部とが接続され、一体化が図れる構造となり、外周改良部が地盤から受ける水平力に対する耐力が高められるので、耐震性能をさらに向上させることができる。
【0025】
また、本発明に係る地盤改良装置を用いた耐震工法では、上述した地盤改良装置を用いて構造物を直接支持する地盤を地盤改良する耐震工法であって、構造物直下の改良対象地盤中に地盤改良装置を投入する工程と、第1掘削翼および第2掘削翼により一次掘削領域および二次掘削領域を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで外周改良部を形成する工程とを有し、外周改良部によって構造物直下の地盤の変動を規制するようにしたことを特徴としている。
【0026】
また、本発明に係る地盤改良装置を用いた建築基礎工法では、上述した地盤改良装置を用いて構造物を直接支持する地盤を地盤改良する建築基礎工法であって、構造物直下の改良対象地盤中に地盤改良装置を投入する工程と、第1掘削翼および第2掘削翼により一次掘削領域および二次掘削領域を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで外周改良部を形成する工程とを有し、外周改良部によって構造物直下の地盤の変動を規制するようにしたことを特徴としている。
この場合、外周改良部の上端に構造物の基礎が設けられていてもよい。
【0027】
本発明では、予め構造物直下に外周改良部を施工しておき、その外周改良部上に構造物を直接支持させることができる。つまり、施工する外周改良部の位置が平面視で構造物より外側に設けずに済むことから、敷地が狭く、作業スペースが小さな施工条件となる住宅などの構造物にも適用することができる。そのため、上述した施工費の低減や装置の小型化という効果に加え、狭小な場所での適用が可能となる効果を奏する。
【0028】
また、本発明に係る地盤改良装置を用いた建築基礎工法では、上述した地盤改良装置を用いて構造物の周囲を地盤改良する建築基礎工法であって、構造物下の地盤を囲う改良対象地盤中に地盤改良装置を投入する工程と、第1掘削翼および第2掘削翼により一次掘削領域および二次掘削領域を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで外周改良部を形成する工程とを有し、外周改良部によって囲繞された構造物下の地盤の変動を規制するようにしたことを特徴としている。
この場合、外周改良部の上端には、地表面側の地盤を地盤改良装置によって改良した表面改良部、又はコンクリートからなる構造物の基礎が設けられていてもよい。
また、基礎の平面視中央部に開口が設けられ、この開口縁上に構造物が載置されていてもよい。
【0029】
本発明では、予め構造物下の地盤を囲う改良対象地盤中に外周改良部を施工しておき、その外周改良部上に構造物を支持させることができる。そして、外周改良部の上端に表面改良部、又はコンクリートの基礎を設け、この基礎を介して構造物を外周改良部によって支持することも可能である。また、基礎の中央部に開口を設ける場合には、基礎の施工量を少なくすることができ、施工費を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法、耐震工法、建築基礎工法によれば、第1掘削翼と第2掘削翼とで掘削される全領域を地盤改良壁としての有効断面とすることができるので、従来のように余掘り部に添加する分の地盤改良材を無くすことが可能となるので、コストの低減を図ることができる。
また、第2掘削翼は第2回転軸を介して第1回転軸の回転力を利用して駆動するため、第2回転軸用の駆動手段を省略することができることから、コストの低減が図れるうえ、簡単且つ小型化した構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態による地盤改良装置の構成を示す正面図である。
【図2】図1に示す地盤改良装置の側面図である。
【図3】図1に示すA−A線矢視図である。
【図4】図1に示す地盤改良装置の掘削部の拡大図である。
【図5】図1に示すB−B線断面図である。
【図6】主掘削カッタと攪拌機の回転軌跡を示す図である。
【図7】図1に示すC−C線断面図である。
【図8】図4の掘削部をさらに詳細に示した図である。
【図9】図3に示す地盤改良装置の掘削部の拡大図である。
【図10】図8に示すD−D線断面図である。
【図11】図8に示すE−E線断面図である。
【図12】地盤改良装置による地盤改良部の水平断面図である。
【図13】本実施の形態による地盤改良装置を用いた耐震工法の説明図であって、(a)は側面図、(b)は上から見た図である。
【図14】第1変形例による耐震工法の説明図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図15】第2変形例による耐震工法の説明図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図16】第3変形例による耐震工法の説明図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図17】第4変形例による耐震工法の説明図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図18】第5変形例による耐震工法の説明図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図19】第6変形例による建築基礎工法の説明図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図20】第7変形例による建築基礎工法の説明図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図21】第8変形例による建築基礎工法を説明するための側面図である。
【図22】第9変形例による建築基礎工法を説明するための側面図である。
【図23】第10変形例による建築基礎工法を説明するための側面図である。
【図24】第11変形例による建築基礎工法を説明するための側面図である。
【図25】従来の地盤改良装置による地盤改良部の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態による地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法、耐震工法、建築基礎工法について、図面に基づいて説明する。
【0033】
図1乃至図3の符号1は、本実施の形態による地盤改良装置1を示している。この地盤改良装置1は、壁状あるいはブロック状での地盤改良部を形成するための装置であって、バックホウ等の図示しない作業機のアーム先端にアタッチメントとして装着して使用され、3軸のロッドの各下端に備えた掘削翼を回転させながら地盤中を鉛直方向下方に移動させて掘削し、その掘削土に地盤改良材を添加して混合し、攪拌することにより前記地盤改良部を施工するものである。
【0034】
ここで、掘削土に添加される地盤改良材は、地盤改良の目的に応じて、例えばセメントミルク等の液状の材料や、粉体状の材料などの適宜な薬剤を採用することができる。
なお、以下の説明で「掘削土」とは、地盤改良装置1によって掘削された地盤と地盤改良材とが混合されたものをいう場合もある。
また、本地盤改良装置1をアタッチメントとして装着する作業機については、上述したように一般に用いられる自走式のバックホウ等が対象となるため、ここでは詳細な説明は省略する。
さらにまた、地盤改良装置1の「幅方向」とは図1において紙面に向かって左右方向の長さ寸法をいう。
【0035】
地盤改良装置1は、鉛直軸をなす中心軸線O1回りに回転し、互いに平行に設けられた複数(本実施の形態では3軸)の主掘削回転軸2(2A、2B、2C)(第1回転軸)と、これら主掘削回転軸2の下端に固定されて水平回転する主掘削カッタ20(20A、20B、20C)(第1掘削翼)と、隣り合う主掘削回転軸2、2同士の中間で主掘削回転軸2に平行に配置された副掘削回転軸3(第2回転軸)と、副掘削回転軸3の下端3aに固定されて水平方向に回転する駆動翼30と、主掘削回転軸2、2同士を水平方向に連結するとともに、各主掘削回転軸2を回転自在に支持する連結軸4(4A)と、連結軸4Aの軸線方向C1に直交する水平軸(中心軸線C2)回りに回転するとともに、連結軸4Aに対して回転自在に挿通支持された伝達回転軸31(第3回転軸)と、伝達回転軸31の両端に固定され、その伝達回転軸31を中心にして回転する副掘削カッタ32(第2掘削翼)と、伝達回転軸31から径方向外側に向けて延びる従動翼33とを備えて概略構成されている。
【0036】
3軸の主掘削回転軸2A、2B、2Cは、それぞれ軸方向に同じ長さ寸法をなし、上端2bが支持フレーム5(後述)に対して回転可能に支持されている。主掘削回転軸2の先端には、下方に向けて尖った先端刃21が設けられている。
【0037】
そして、3軸の主掘削回転軸2および2軸の副掘削回転軸3は、それぞれが軸方向の複数個所で連結軸4(4A〜4E)によって互いに平行に且つ一定間隔をもって支持されている。
ここで、これら連結軸4は、主掘削カッタ20の直上に位置する符号4Aの第1連結軸が本発明の「連結軸」に相当し、その第1連結軸4Aより上方に向かう順に第2連結軸4B、第3連結軸4C、第4連結軸4Eが配置されている。
【0038】
図4に示すように、主掘削カッタ20(20A、20B、20C)は、それぞれ主掘削回転軸2の下端2aから径方向外側に向けて棒状の翼本体20aが延び、その翼本体20aの周面に複数の切削ビット20bが配置された構成となっており、主掘削回転軸2とともに中心軸線O1回りに回転し、図5に示す一次掘削領域M1(二点鎖線の主掘削カッタ20による回転軌跡に相当)を掘削する。
ここで、主掘削カッタ20において、必要に応じて符号20Aを第1主掘削カッタとし、符号20Bを第2主掘削カッタとし、符号20Cを第3主掘削カッタとして以下説明する。
【0039】
主掘削回転軸2は、内部に軸方向全体にわたって流路が設けられており、上端2bに供給された地盤改良材が下端2aへ流通するようになっている。そして、主掘削回転軸2の下端2aの周面には地盤改良材を噴射させるための噴出口7が内部の流路に連通した状態で設けられ、この噴出口7から地盤改良材を主掘削カッタ20の回転とともに径方向外方へ向けて噴射させ、掘削土に混合させるようになっている。
【0040】
図1に示すように、主掘削回転軸2および副掘削回転軸3には、これら回転軸2、3と共に回転する攪拌翼23A、23B、36A、36Bがそれぞれの軸方向の所定位置に設けられている。これら攪拌翼23A、23B、36A、36Bは、それぞれ径方向外側に向けて複数の翼が延びた形状をなしている。
具体的には、主掘削カッタ20寄りの位置(正確には第1連結軸4Aと第2連結軸4Bとの間の位置)において、主掘削回転軸2の第1攪拌翼23Aと、副掘削回転軸3の第2攪拌翼36Aとがずれた位置で互いに干渉しないように配置されている。また、各回転軸2、3の軸方向中間部において、第3連結軸4Cを挟んで上下方向下側の位置で主掘削回転軸2の第3攪拌翼23Bのみが設けられ、上下方向上側の位置で副掘削回転軸3の第4攪拌翼36Bのみが設けられている。このように、地盤改良装置1の主掘削カッタ20寄りの位置には攪拌翼23A、36Aを密に配置することで、掘削土の攪拌が良好に行えるようにしている。
【0041】
次に、主掘削回転軸2と副掘削回転軸3とを回転させるための駆動機構について説明する。
図1に示すように、主掘削回転軸2の上端2bを回転可能に支持する支持フレーム5は、上述した作業機のアーム等に連結するための連結部51を備えるとともに、内部には主掘削回転軸2に回転動力を与える駆動モータ6が設けられている。連結部51は、作業機のアーム先端と係合ピン52(図2、図3参照)を介して着脱自在に取り付けるための係合孔51aを有している。
【0042】
駆動モータ6の駆動軸61は、第2主掘削回転軸2Bの上端2bに同軸線上に固定されている。そして、その駆動軸61には、第1歯車62が同軸に設けられ、この第1歯車62が第2歯車63および第3歯車64にそれぞれ噛合している。第2歯車63と第3歯車64は、それぞれの回転軸63a、64aが第3主掘削回転軸2Cと第1主掘削回転軸2Aの上端2bに同軸線上に固定されている。つまり、駆動モータ6の回転により、第2主掘削回転軸2Bが回転するとともに、各歯車62、63、64を介して第1、第3主掘削回転軸2A、2Cも回転する構成となっている。
なお、主掘削回転軸2および主掘削回転軸20の回転方向としては、図6に示すように、3軸のうち駆動モータ6の駆動軸61に直結されている第2主掘削回転軸2Bの第2主掘削カッタ20Bが一方の回転方向(矢印E2方向、図6で反時計回りの回転方向)で回転するとき、その両側に位置する第1主掘削カッタ20Aおよび第3主掘削カッタ20Cは反対の回転方向(矢印E1方向、図6で時計回りの回転方向)で回転することになる。
【0043】
さらに、図1に示すように、第1主掘削回転軸2Aおよび第3主掘削回転軸2Cのそれぞれの上端2bには、中心軸線O1から径方向外側に向けて延びる第1伝達翼22が設けられている。一方、2軸の副掘削回転軸3には、それぞれ中心軸線O2から径方向外側に向けて延びる第2伝達翼35が設けられている。
そして、第1伝達翼22の回転軌跡内に第2伝達翼35が配置された構成、すなわち第1伝達翼22の回転によって第2伝達翼35が回転する構成となっており、これにより副掘削回転軸3が中心軸線O2を中心に回転する構造となっている。
【0044】
次に、主掘削回転軸2と副掘削回転軸3とを互いに平行で且つ間隔を一定に保持するための連結軸4(4A〜4E)の構成について、図面に基づいて説明する。
図7および図8に示すように、連結軸4は、回転軸2、3を回転可能に挿通させる筒状支持部41と、隣り合う筒状支持部41、41同士を水平方向に連結する水平バー42とからなる。そして、回転軸2、3の周面で筒状支持部41の上下位置には、その筒状支持部41の上下移動を規制する係止突起44が周方向の一部、或いは全周にわたって設けられている。
【0045】
また、図8に示すように、第1連結軸4Aは、他の第2〜第5連結軸4B〜4Eとは異なり、両端が全ての主掘削カッタ20A、20B、20Cで掘削したときの内壁面G0(図8に示す二点鎖線)に当接する長さ寸法(図4に示す地盤改良装置1の幅寸法L)となっている。具体的に第1連結軸4Aは、3軸のうち両側に位置する第1掘削回転軸2Aと第3掘削回転軸2Cに係止する筒状支持部41、41のそれぞれから連結軸4の中心軸線C1方向で外側に向けて突出する張出バー43、43が水平バー42と同軸線上に設けられている。この張出バー43の端面4aは、上述した内壁面G0に当接している。つまり、地盤改良装置1が掘削とともに下方に移動するときに、第1連結部4Aの両端面4a、4aが常に内壁面G0に接触した状態となる。
【0046】
次に、副掘削回転軸3より回転動力が伝達されて回転する副掘削カッタ32の構成と、その駆動構造について説明する。
図8乃至図11に示すように、第1連結部4Aには、筒状支持部41、41同士の間で、その中心軸線方向C1に直交する水平方向に中心軸線C2を配置させた伝達回転軸31が回転支持部45によって回転可能に支持されている。つまり、伝達回転軸31は、その中心軸線C2を中心にして回転可能となっている。そして、伝達回転軸31の両端には翼支持部材38が設けられ、この翼支持部材38から伝達回転軸31の中心軸線C2を中心とした径方向外側に向けて延びる副掘削カッタ32が設けられている。
【0047】
従動翼33は、伝達回転軸31の軸方向中心(回転支持部45)を挟んで一端側に設けられ、駆動翼30の回転軌跡内に配置されている。つまり、従動翼33と駆動翼30とが回転に伴って干渉する位置関係に配置あれており、駆動翼30の回転動力が従動翼33に伝達される構成となっている。
【0048】
また、伝達回転軸31の他端側には、伝達回転軸31と共に回転する第5攪拌翼34が設けられている。この第5攪拌翼34は、伝達回転軸31より径方向外方に突出し、駆動翼30の回転軌跡の外側に位置する長さ寸法をなし、駆動翼30に対して干渉することなく伝達回転軸31と共に回転する構成となっている。この第5攪拌翼34において、伝達回転軸31と共に回転することによって、副掘削カッタ32で掘削された二次掘削領域M2(図6参照))内の掘削土を混合し、攪拌することができる。
【0049】
また、図9に示すように、副掘削カッタ32は、主掘削カッタ20に干渉しない寸法、位置に設けられている。
さらに、図6に示すように、副掘削カッタ32は、主掘削回転軸2の中心軸線方向O1から見て、隣り合う主掘削カッタ20のそれぞれの回転軌跡をなす一次掘削領域M1と、双方の一次掘削領域M1の円の共通外接線Tとの間に形成される二次掘削領域M2内に位置している。しかも、図5に示すように、副掘削カッタ32の回転軌跡を含む平面が共通外接線Tの内側に沿って配置されている。
【0050】
次に、上述した地盤改良装置1を用いた地盤改良方法について説明する。
図1に示すように、本実施の形態では、地盤改良装置1をバックホウ(図示省略)のアタッチメントとして使用し、支持フレーム5の連結部51をバックホウのアーム先端に取り付けておく。そして、地盤改良装置1を改良対象地盤上に設置した後、バックホウにより地盤改良装置1に鉛直方向で下向きの力を与え、掘削反力を取り、3軸の主掘削回転軸2A、2B、2Cとともに主掘削カッタ20A、20B、20Cを回転させて一次掘削領域M1(図6)の地盤を掘削する。このとき、副掘削回転軸3の回転を駆動翼30を介して従動翼33に伝達させ、伝達回転軸31に固定されている副掘削カッタ32によって二次掘削領域M2(図6)の地盤を掘削する。
このようにして地盤改良を行うことにより、図12に示すように、一次掘削領域M1と二次掘削領域M2とからなる地盤改良部Mが形成されることになる
【0051】
なお、一次掘削領域M1および二次掘削領域M2で掘削した掘削土には地盤改良材を混合させ、主掘削回転軸2および副掘削回転軸3に設けられる攪拌翼23A、23B、36A、36Bと伝達回転軸31に設けられる攪拌翼34によって掘削土を均一に且つ効果的に混合し、攪拌する。そして、これら攪拌翼23A、23B、36A、36Bが回転軸2、3の軸方向の所定位置に固定されているので、地盤改良装置1を掘削とともに下方に移動させても、その主掘削カッタ20に対して攪拌翼の位置が変化しないことから、安定した攪拌を行うことができる。
また、掘削土に添加される地盤改良材は、主掘削回転軸2の下端2aに設けられる図4に示す噴出口7から地盤に向けて噴射される。
【0052】
次に、地盤改良装置1の作用について、上述した図1乃至図12に基づいてさらに具体的に説明する。
本地盤改良装置1では、複数の主掘削カッタ20A、20B、20Cの掘削による一次掘削領域M1と、副掘削カッタ32の掘削による隣り合う一次掘削領域M1の円の共通外接線Tとの間に形成される二次掘削領域M2とからなる地盤改良部Mを形成することで、その掘削断面全体を地盤改良壁としての有効断面とすることができる。
つまり、一次掘削領域M1全体が有効断面となるので、従来のように一次掘削領域の一部が地盤改良壁として機能せずに余掘りになることがなくなる。そのため、主掘削カッタ20の外径寸法を従来の掘削翼よりも小径にすることが可能なうえ、余掘りに相当する部分に対応する地盤改良材の添加量を少なくすることができるので、施工費の低減が図れ、しかも装置の小型化を図ることができる。
【0053】
また、主掘削回転軸2の回転が副掘削回転軸3に伝達され、その副掘削回転軸3の下端3aに固定された駆動翼30から従動翼33に回転力が伝達され、従動翼33とともに伝達回転軸31が回転して副掘削カッタ32が回転する構成、すなわち副掘削カッタ32は主掘削回転軸2の回転力を利用して駆動するので、副掘削回転軸3用の駆動手段を省略することができ、コストの低減が図れ、装置の構造を簡単にすることができる。
【0054】
また、本地盤改良装置1では、主掘削回転軸2の軸方向から見て、副掘削カッタ32の回転軌跡を含む平面が共通外接線Tの内側に沿って配置されているので、二次掘削領域M2より広い範囲を副掘削カッタ32によって掘削することがなく、一次掘削領域M1と二次掘削領域M2とで形成される有効断面を確実に掘削することができる。
【0055】
また、第1連結軸4Aの両端面4a、4aが主掘削カッタ20で掘削した内壁面G0に当接して突っ張った姿勢となり、水平方向にずれ難い状態となっているので、主掘削カッタ20を回転させて掘削するときの主掘削回転軸2に対する第1連結軸4Aの共回りを防止することができる。
【0056】
また、本地盤改良装置1では、主掘削回転軸2の第1伝達翼22と副掘削回転軸3の第2伝達翼35との中心軸線O1、O2が互いに平行で、且つ第1伝達翼22の回転軌跡内に第2伝達翼35が配置されているので、主掘削回転軸2とともに回転する第1伝達翼22が第2伝達翼35に当接することで、第2伝達翼35は副掘削回転軸3の中心軸線O2回りに回転し、第2伝達翼35を介して副掘削回転軸3が回転することになる。
つまり、副掘削回転軸3は、独自の回転駆動手段を備えずに、主掘削回転軸2より伝達された回転力のみで回転することができることから、装置の簡略化を図ることができる。
【0057】
次に、上述した地盤改良装置1を用いた耐震工法について図面に基づいて説明する。
図13(a)および(b)に示すように、本実施の形態による耐震工法は、上述した地盤改良装置1を用いて構造物Kの周囲を地盤改良することによるものである。
すなわち、構造物K下の地盤周囲を囲う領域の改良対象地盤中に図1に示す地盤改良装置1を投入し、主掘削カッタ20および副掘削カッタ32により一次掘削領域M1および二次掘削領域M2を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで地盤改良部10Aを形成する。
【0058】
本実施の形態による地盤改良装置1では、上述したように簡単な構造であり、小型化させることができるので、バックホウなどの作業機のアタッチメントとして使用することが可能である。そのため、狭い空間であっても地盤改良装置1を導入して、地盤改良部10Aを形成することができる。この場合、既設の構造物K下の地盤を囲うようにして外周改良部11を形成することで、外周改良部11によって囲繞された構造物K下の地盤の水平方向の移動が規制され、変動が抑えられることから、その地盤の破壊を防止することができる。したがって、地震時おける構造物Kの振動を小さくすることができ、構造物Kの破壊を防ぐことができる。
【0059】
上述のように本実施の形態による地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法、耐震工法、建築基礎工法では、主掘削カッタ20と副掘削カッタ32とで掘削される全領域(一次掘削領域M1と二次掘削領域M2)を地盤改良壁としての有効断面とすることができるので、従来のように余掘り部に添加する分の地盤改良材を無くすことが可能となるので、コストの低減を図ることができる。
また、副掘削カッタ32は副掘削回転軸3を介して主掘削回転軸2の回転力を利用して駆動するため、副掘削回転軸3用の駆動手段を省略することができることから、コストの低減が図れるうえ、簡単且つ小型化した構造を実現することができる。
【0060】
次に、本実施の形態の変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
【0061】
図14〜図18に示す第1〜第5変形例は、上述した実施の形態による耐震工法の他の例であり、上記実施の形態と同様に地盤改良装置1(図1参照)を用いて施工している。
図14(a)、(b)に示す第1変形例による耐震工法では、平面視四角形状の外周改良部11の四隅の内角部のそれぞれに角部改良部12を配置させた地盤改良部10Bを設けている。角部改良部12は、外周改良部11の各辺に対して斜め45度の位置に設けられている。
【0062】
図15(a)、(b)に示す第2変形例の耐震工法による地盤改良部10Cは、構造物Kと平面視四角形状の外周改良部11との間の地表面側の地盤で、その外周改良部11の四隅の内角部のそれぞれを地盤改良装置1(図1参照)によって改良し、平面視で三角形状の角部表面改良部13(表面改良部)を形成させている。
【0063】
図16(a)、(b)に示す第3変形例の耐震工法による地盤改良部10Dは、平面視四角形状の外周改良部11の内側全面にわたって地盤改良装置1(図1参照)によって改良した全面表面改良部14(表面改良部)を形成させている。
【0064】
図17(a)、(b)に示す第4変形例の耐震工法による地盤改良部10Eは、平面視四角形状の外周改良部11の外側に張出改良部15を設けている。すなわち、本第4変形例の構造物Kは平面視で縦長形状(図17(b)で紙面に向って上下方向に長い長方形状)をなし、構造物Kに対して一定間隔をもって配置される外周改良部11も同様に平面視で縦長形状をなしている。そして、張出改良部15は、外周改良部11の両長辺部中央11a、11aに直交する方向に延びて形成され、その両辺部を補強する機能を有している。
【0065】
図18(a)、(b)に示す第5変形例による地盤改良部10Fは、構造物を構築する前の造成時において、区画を仕切るようにして平面視で田の字状をなす区画改良部16を前記地盤改良装置1(図1参照)によって形成させている。
【0066】
これら第1〜第5変形例の地盤改良部10A〜10Fでは、上述した実施の形態と同様に構造物K下の地盤を囲うようにして外周改良部11(区画改良部16)を形成することで、構造物K下の地盤の水平方向の移動が規制され、変動が抑えられることから、その地盤の破壊を防止することができる。
また、第2変形例と第3変形例では、それぞれ角部表面改良部13、全面表面改良部14によって構造物Kと外周改良部11とが接続され、一体化が図れる構造となり、外周改良部11が地盤から受ける水平力に対する耐力が高められるので、耐震性能をさらに向上させることができる効果を奏する。
【0067】
次に、図19および図24に示す第6〜第11変形例は、上述した実施の形態による耐震工法の他の例であって、構造物Kを対象とした建築基礎工法であり、上記実施の形態と同様に地盤改良装置1(図1参照)を用いて施工したものである。
【0068】
図19(a)、(b)に示す第6変形例による地盤改良部10Gは、住宅などの構造物Kを直接支持する地盤を地盤改良する耐震工法であって、構造物Kの直下に地盤改良装置1(図1参照)を投入して所定領域を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで外周改良部11を形成したものである。この外周改良部11は、平面視で構造物Kの外周部に沿って配置されており、構造物Kの直下の地盤の変動を規制している。
そして、外周改良部11の上端には、構造物Kの断面視で逆T型の布基礎16が設けられており、その布基礎16上に基礎梁17を介して構造物Kが構築されている。
【0069】
第6変形例では、予め構造物Kの直下に外周改良部11を施工しておき、その外周改良部11上に構造物Kを直接支持させることができる。つまり、施工する外周改良部11の位置が平面視で構造物Kより外側に設けずに済むことから、敷地が狭く、作業スペースが小さな施工条件となる住宅などの構造物Kにも適用することができる。そのため、上述した実施の形態と同様に施工費の低減や装置の小型化という効果に加え、狭小な場所での適用が可能となる効果を奏する。
【0070】
図20(a)、(b)に示す第7変形例は、上述した第6変形例の地盤改良部10Gにおいて、布基礎16(図19参照)に代えてベタ基礎18を外周改良部11の上端に設け、外周支持部11がベタ基礎18を介してその上の構造物Kを直接支持する構成となっている。
【0071】
図21〜図24に示す第8〜第11変形例は、上述した実施の形態と同様に構造物K下の地盤を囲うようにして設けた外周改良部11上に構造物Kを支持させる建築基礎工法である。
図21に示す第8変形例による地盤改良部10Hは、外周改良部11の上端11bに表面改良部14からなる基礎の外周部を載置し、この表面改良部14を介して構造物Kを外周改良部11によって支持する構成となっている。なお、表層改良部14に代えて、コンクリートのベタ基礎としても良い。
【0072】
図22に示す第9変形例では、上述した図21の第8変形例の地盤改良部10Hにおいて、表面改良部14の外周下縁部に切欠凹部14aを設け、この切欠凹部14aを外周改良部11上に載置させ、表面改良部14を介して構造物Kを外周改良部11によって支持する構成となっている。なお、表層改良部14に代えて、コンクリートのベタ基礎としても良い。
【0073】
図23に示す第10変形例による地盤改良部10Iは、上述した図21の第8変形例において、表層改良部からなる基礎の平面視中央部に開口を形成した外周基礎19が設けられ、この開口縁19a上に構造物Kが載置された構成となっている。なお、外周基礎19は、表層改良部に代えて、コンクリートとしても良い。
【0074】
図24に示す第11変形例は、上述した図23の第10変形例において、外周基礎19の外周下縁部に切欠凹部19bを設け、この切欠凹部19bを外周改良部11上に載置させ、表面改良部14を介して構造物Kを外周改良部11によって支持する構成となっている。なお、本変形例でも、外周基礎19は、表層改良部に代えて、コンクリートとすることができる。
【0075】
以上、本発明による地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法、耐震工法、建築基礎工法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では1台の駆動モータ6によって、歯車62、63、64や第1伝達翼22、第2伝達翼35を介して3軸の主掘削回転軸2と2軸の副掘削回転軸3とを回転させる回転駆動構造としているが、このような構造に限定されることはない。歯車のみで全ての回転軸を回転させるような構造であってもかまわない。
【0076】
また、主掘削カッタ20、福掘削カッタ32の外径寸法、配置、形状、数量などの構成は、任意に設定することができる。さらに主掘削回転軸2、副掘削回転軸3の本数、長さ寸法なども装置の仕様条件に合わせて任意に設定することができる。
さらにまた、攪拌翼23A、23B、26A、36B、34の大きさ、配置、形状、数量などの構成は、改良対象地盤の地質、掘削速度などに応じて適宜設定することができる。
また、連結軸4の上下方向の設置位置、設置数量についても、本実施の形態に限定されることはなく、任意に設定することができる。
【0077】
また、本実施の形態による地盤改良装置1はバックホウ等の作業機に取り付けられるアタッチメントとしての使用としているが、このような使用形態であることに制限されることはなく、例えば専用の架台に設置して用いることも可能である。
さらにまた、耐震工法による地盤改良部10A〜10Fの位置、深さ、構造物Kと外周改良部11の間隔、表面改良部の厚さ寸法等も特に制限されることはない。
【符号の説明】
【0078】
1 地盤改良装置
2 主掘削回転軸(第1回転軸)
3 副掘削回転軸(第2回転軸)
4 連結軸
4a 端面
5 支持フレーム
6 駆動モータ
10A〜10I 地盤改良部
11 外周改良部
13 角部表面改良部(表面改良部)
14 全面表面改良部(表面改良部)
15 張出改良部
16 布基礎
18 ベタ基礎
19 外周基礎
20 主掘削カッタ(第1掘削翼)
22 第1伝達翼
23A、23B 攪拌翼
30 駆動翼
31 伝達回転軸(第3回転軸)
32 副掘削カッタ(第2掘削翼)
33 従動翼
34 攪拌翼
35 第2伝達翼
36A、36B 攪拌翼
43 張出バー
K 構造物
M1 一次掘削領域
M2 二次掘削領域
T 共通外接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中を移動させて地盤改良を行う地盤改良装置であって、
鉛直軸回りに回転し、互いに平行に設けられた複数の第1回転軸と、
該第1回転軸の下端に固定されて水平回転する第1掘削翼と、
隣り合う前記第1回転軸同士の中間で前記第1回転軸に平行に配置され、前記第1回転軸の回転が伝達されて鉛直軸回りに回転する第2回転軸と、
該第2回転軸の下端に固定されて水平方向に回転する駆動翼と、
複数の前記第1回転軸同士を水平方向に連結するとともに、各第1回転軸を回転自在に支持する連結軸と、
該連結軸の軸線方向に直交する水平軸回りに回転するとともに、前記連結軸に対して回転自在に挿通支持された第3回転軸と、
該第3回転軸の両端に固定され、その第3回転軸を中心にして回転する第2掘削翼と、
該第3回転軸から径方向外側に向けて延びる従動翼と、
を備え、
前記駆動翼の回転軌跡内に前記従動翼が配置され、前記駆動翼の回転を前記従動翼に伝達する構成とされ、
前記第2掘削翼は、前記第1回転軸の軸方向から見て、隣り合う前記第1掘削翼のそれぞれの回転軌跡をなす一次掘削領域と、隣り合う一次掘削領域の円の共通外接線との間に形成される二次掘削領域内に位置することを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
前記第1回転軸の軸方向から見て、前記第2掘削翼の回転軌跡を含む平面が前記共通外接線の内側に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項3】
前記連結軸は、その両端が全ての前記第1掘削翼で掘削した内壁面に当接する長さ寸法をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良装置。
【請求項4】
前記第1回転軸には、その中心軸線から径方向外側に向けて延びる第1伝達翼が設けられるとともに、
前記第2回転軸には、その中心軸線から径方向外側に向けて延びる第2伝達翼が設けられ、
前記第1伝達翼の回転軌跡内に前記第2伝達翼が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地盤改良装置。
【請求項5】
前記第1回転軸および前記第2回転軸のうち少なくとも一方には、これら回転軸と共に回転する攪拌翼が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の地盤改良装置。
【請求項6】
前記従動翼は、前記第3回転軸の前記連結軸を挟んで一端側に設けられ、
前記第3回転軸の他端側には、該第3回転軸と共に回転する攪拌翼が設けられ、
該攪拌翼は、前記駆動翼の回転軌跡の外側に位置することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の地盤改良装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の前記地盤改良装置を用いた地盤改良方法であって、
前記地盤改良装置を改良対象地盤上に設置し、前記第1回転軸とともに複数の前記第1掘削翼を回転させて前記一次掘削領域の地盤を掘削する工程と、
前記第2回転軸の回転を前記駆動翼から前記従動翼に伝達させ、前記第3回転軸に固定されている前記第2掘削翼によって前記二次掘削領域の地盤を掘削する工程と、
前記一次掘削領域および前記二次掘削領域の掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌する工程と、
を有することを特徴とする地盤改良装置を用いた地盤改良方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の前記地盤改良装置を用いて構造物の周囲を地盤改良する耐震工法であって、
前記構造物下の地盤を囲う改良対象地盤中に前記地盤改良装置を投入する工程と、
前記第1掘削翼および前記第2掘削翼により前記一次掘削領域および前記二次掘削領域を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで外周改良部を形成する工程と、
を有し、
前記外周改良部によって囲繞された前記構造物下の地盤の変動を規制するようにしたことを特徴とする地盤改良装置を用いた耐震工法。
【請求項9】
前記構造物と前記外周改良部との間の地表面側の地盤を前記地盤改良装置によって改良し、表面改良部を形成するようにしたことを特徴とする請求項8に記載の地盤改良装置を用いた耐震工法。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の前記地盤改良装置を用いて構造物を直接支持する地盤を地盤改良する耐震工法であって、
前記構造物直下の改良対象地盤中に前記地盤改良装置を投入する工程と、
前記第1掘削翼および前記第2掘削翼により前記一次掘削領域および前記二次掘削領域を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで外周改良部を形成する工程と、
を有し、
前記外周改良部によって前記構造物直下の地盤の変動を規制するようにしたことを特徴とする地盤改良装置を用いた耐震工法。
【請求項11】
請求項1乃至6のいずれかに記載の前記地盤改良装置を用いて構造物を直接支持する地盤を地盤改良する建築基礎工法であって、
前記構造物直下の改良対象地盤中に前記地盤改良装置を投入する工程と、
前記第1掘削翼および前記第2掘削翼により前記一次掘削領域および前記二次掘削領域を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで外周改良部を形成する工程と、
を有し、
前記外周改良部によって前記構造物直下の地盤の変動を規制するようにしたことを特徴とする地盤改良装置を用いた建築基礎工法。
【請求項12】
前記外周改良部の上端に前記構造物の基礎が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の建築基礎工法。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれかに記載の前記地盤改良装置を用いて構造物の周囲を地盤改良する建築基礎工法であって、
前記構造物下の地盤を囲う改良対象地盤中に前記地盤改良装置を投入する工程と、
前記第1掘削翼および前記第2掘削翼により前記一次掘削領域および前記二次掘削領域を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで外周改良部を形成する工程と、
を有し、
前記外周改良部によって囲繞された前記構造物下の地盤の変動を規制するようにしたことを特徴とする地盤改良装置を用いた建築基礎工法。
【請求項14】
前記外周改良部の上端には、地表面側の地盤を前記地盤改良装置によって改良した表面改良部、又はコンクリートからなる前記構造物の基礎が設けられていることを特徴とする請求項13に記載の地盤改良装置を用いた建築基礎工法。
【請求項15】
前記基礎の平面視中央部に開口が設けられ、この開口縁上に前記構造物が載置されていることを特徴とする請求項14に記載の地盤改良装置を用いた建築基礎工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−226254(P2011−226254A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71802(P2011−71802)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000154565)株式会社福田組 (34)
【Fターム(参考)】