説明

地盤沈下対策配管構造及び地盤沈下対策配管方法

【課題】 単純な構成で、鉛直方向、水平方向、及び斜め方向のいずれの変位に対しても高い追従性を有する地盤沈下対策配管構造1及び地盤沈下対策配管方法を提供する。
【解決手段】 地盤沈下対策配管構造1は、建築物に支持されて、排水を流下させる排水管と、建築物の敷地に埋設される集水桝との間に配設される地盤沈下対策配管構造であって、該排水管の下端に連通する第1の管と、前記集水桝に連通する第2の管と、を備え、前記第1の管及び前記第2の管のいずれか一方の管が他方の管に出入自在に挿入されるとともに、前記第1の管及び/又は前記第2の管が可撓性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物から排水を排出する地盤沈下対策配管構造及び地盤沈下対策配管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物から流れる排水を公共桝に流下させる排水配管は、土中に埋設されているので、地盤の不等沈下により抜けや破損の虞があった。そこで、地盤の不等沈下に追従する構造を備えた配管構造が種々提案されている。例えば、図13に示すように、建築物101から屋外方向に延びて土中に埋設された配管に、一方の管を他方の管に外挿させ出し入れすることにより管の全長を伸縮させる伸縮継手102a,102bを鉛直方向と水平方向とにそれぞれ設けて、不等沈下の鉛直成分と水平成分とに対応できる配管構造103が示されている(特許文献1参照)。また、別の例としては、土中に埋設された配管の一部に土中埋設用のフレキシブル管が形成されており、この土中埋設用のフレキシブル管の変形により地盤の不等沈下に追従することができ、土中に埋設された配管の抜けや破損を抑制するものも提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−248075号公報
【特許文献2】実用新案登録第3047714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、伸縮継手102a,102bを鉛直方向と水平方向とにそれぞれ設けた配管構造103は、土中に埋設される配管の経路が複雑となるため材料コスト及び施工コストが大きくなることが多く、また、排水配管等のように公共桝まで下り勾配をつけて水を流す必要がある場合には設置が困難となる場合が多い。また、鉛直方向の伸縮継手102aと水平方向の伸縮継手102bとが別々に配置されることとなるので、例えば斜め向きに沈下したような場合にそれぞれの伸縮継手102a,102bをうまく機能させることは困難であり、斜め向きの不等沈下には十分対応できない。
【0005】
一方、土中埋設用のフレキシブル管は、土中に埋設することを前提とした設計であるため土の重みに耐えるために管の周壁を厚く形成する必要があり、一般的に地上で用いられるフレキシブル管に比べて柔軟性が低く、また伸縮性も低いため地盤の沈下量によっては十分に追従できない場合もある。
【0006】
そこで、本発明は、鉛直方向、水平方向、及び斜め方向のいずれの変位に対しても高い追従性を有する地盤沈下対策配管構造及び地盤沈下対策配管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の地盤沈下対策配管構造は、建築物に支持されて、排水を流下させる排水管と、建築物の敷地に埋設される集水桝との間に配設される地盤沈下対策配管構造であって、該排水管の下端に連通する第1の管と、前記集水桝に連通する第2の管と、を備え、前記第1の管及び前記第2の管のいずれか一方の管が他方の管に出入自在に挿入されるとともに、前記第1の管及び/又は前記第2の管が可撓性を有することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の地盤沈下対策配管構造は、建築物に支持されて、排水を流下させる排水管と、該排水管の下端に連通する可撓性を有するフレキシブル管と、該フレキシブル管が一端側から出入自在に挿入されるとともに、他端が集水桝に連通する前記フレキシブル配管よりも強度の高い土中に配置されている鞘管と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の地盤沈下対策配管構造は、前記排水管は建築物の外壁に沿って略鉛直に配置され、雨水を流下させる立樋であって、当該立樋の下端に湾曲するエルボを介して前記フレキシブル管が連通することを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の地盤沈下対策配管構造は、前記鞘管の前記フレキシブル管が挿入される一端側の端部は、上側が長手方向に突出するように斜めに切断されて形成されることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の地盤沈下対策配管構造は、建築物に支持されて、排水を流下させる排水管と、一端が前記排水管の下端に連通するとともに他端が建築物の屋外で地中に埋設される鞘管と、一端が前記鞘管に出入自在に挿入されるとともに他端側が土中に設けられた集水桝に連通するフレキシブル管と、を備えることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の地盤沈下対策配管構造は、前記排水管は建築物の外壁に沿って略鉛直に配置され、雨水を流下させる立樋であって、当該立樋の下端に湾曲するエルボを介して前記鞘管が連通することを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の地盤沈下対策配管構造は、前記フレキシブル管の前記鞘管に挿入される端部にリング状の防水パッキンが外嵌されることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の地盤沈下対策配管構造は、前記鞘管が透明又は半透明であることを特徴としている。
【0015】
請求項9に記載の地盤沈下対策配管方法は、建築物に支持されて、排水を流下させる排水管と、建築物の敷地に埋設される集水桝との間に配設される地盤沈下対策配管構造であって、該排水管の下端に連通する第1の管と、前記集水桝に連通する第2の管と、を備え、前記第1の管及び前記第2の管のいずれか一方の管が他方の管に出入自在に挿入されるとともに、前記第1の管及び/又は前記第2の管が可撓性を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の地盤沈下対策配管構造及び請求項9に記載の地盤沈下対策配管方法によると、排水管に連通する第1の管及び集水桝に連通する第2の管のいずれか一方の管が他方の管に出入自在に挿入されているので、一方の管から他方の管を引き出すことで配管構造の全長を延長することができる。また、前記第1の管及び/又は前記第2の管が可撓性を有するので、可撓性を有する管を変形させることにより、不等沈下に追従することができる。このように、全長を延長しつつ方向も変更することができるので、鉛直方向、水平方向、及び斜め方向のいずれの変位に対しても追従性することができる。
【0017】
請求項2に記載の地盤沈下対策配管構造によると、排水管の下端にフレキシブル管の一端が連通しており、このフレキシブル管の他端が、集水桝に連通する鞘管に出入自在に挿入されているので、不等沈下により集水桝が沈下する場合には、集水桝の沈下にしたがって鞘管が沈下し、フレキシブル管が鞘管から引き出されることにより、配管構造の全長を延長するとともに、フレキシブル管自体が曲がることで、不等沈下に追従することができる。このフレキシブル管は埋設時にはこのフレキシブル管よりも強度の高い鞘管内に挿入されているので、土の重みに耐える必要がなく、土中用ではない一般的なフレキシブル管を用いることができる。したがって、この地盤沈下対策配管構造及び地盤沈下対策配管方法は、単純な構成で、低コストで柔軟性が高い一般用のフレキシブル管を用いることができ、鉛直方向、水平方向、及び斜め方向のいずれの変位に対しても高い追従性を有する。
【0018】
請求項3に記載の地盤沈下対策配管構造によると、排水管が建築物の外壁に沿って略鉛直に配置されて雨水を流下させる立樋であって、湾曲するエルボを介してフレキシブル管が連通しているので、雨水用の埋設配管と立樋の下端とが固定されてておらず、地盤の不等沈下によって立樋が曲がることを低減させる事ができる。また、フレキシブル管及び鞘管は、地面より下に埋設されているので、意匠性を良くすることができる。
【0019】
請求項4に記載の地盤沈下対策配管構造によると、鞘管のフレキシブル管に外挿する端部が、斜め向きに切断されて形成されており、上側が長手方向に突出しているので、鞘管の上端開口部が鉛直方向から見えず、水平方向に開口していることで、地面の上に人が乗るなどして圧力が掛かっても、土が侵入しにくい。さらに建物側に開口しているため開口部と建物側の狭い空間に人が乗るなどは考えにくく、開口側とは反対側から土圧が掛かる場合にほぼ限定されるため、土が侵入しにくい。
【0020】
請求項5に記載の地盤沈下対策配管構造によると、排水管の下端に鞘管が連通しており、集水桝に連通するフレキシブル管がこの鞘管内に出入自在に挿入されるので、不等沈下により集水桝が沈下する場合には、集水桝の沈下に追従してフレキシブル管が鞘管から引き出される。また、フレキシブル管の可撓性によっても不等沈下に追従できる。したがって、全長を延長しつつ方向も変更することができるので、鉛直方向、水平方向、及び斜め方向のいずれの変位に対しても追従性することができる。
【0021】
請求項6に記載の地盤沈下対策配管構造によると、排水管は雨水を流下させる立樋であって、立樋の下端にエルボを介して鞘管が連通しているので、フレキシブル管及び鞘管は、地面より下に埋設されているので、意匠性を良くすることができる。
【0022】
請求項7に記載の地盤沈下対策配管構造によると、フレキシブル管の鞘管に挿入される端部にリング状の防水パッキンが外嵌されているので、配管構造内を流下する水が流出することを防ぐことができる。また、このような防水パッキンが外嵌されることで、鞘管とフレキシブル管との隙間から土砂の流入を防ぐことができる。
【0023】
請求項8に記載の地盤沈下対策配管構造によると、鞘管が透明又は半透明であるので、外部から鞘管の内部に挿入されているフレキシブル管の長さを確認することができ、地盤沈下などにより鞘管からフレキシブル管が引き出された場合に、鞘管からフレキシブル管が脱落しないか外部から見て判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態の地盤沈下対策配管構造の全体構成を示す断面図。
【図2】図1のA部分拡大図。
【図3】第1の実施形態の地盤沈下対策配管構造において、集水桝が沈下した状態を示す図。
【図4】第1の実施形態の変形例として、シール部材を用いて鞘管とフレキシブル管との隙間を覆った状態を示す図。
【図5】図4のB部分拡大図。
【図6】第1の実施形態の変形例として、土中埋設用フレキシブル管を鞘管に用いた例を示す図。
【図7】第1の実施形態の変形例として内側の管を可撓性の低い内管とし、鞘管を土中埋設用フレキシブル管とした変形例を示す図。
【図8】第2の実施形態の地盤沈下対策配管構造の全体構成を示す断面図。
【図9】図8のC部分拡大図。
【図10】第2の実施形態の地盤沈下対策配管構造において、集水桝が沈下した状態を示す図。
【図11】第2の実施形態の変形例として、土中埋設用フレキシブル管を鞘管に用いた例を示す図。
【図12】第2の実施形態の変形例として内側の管を可撓性の低い内管とし、鞘管を土中埋設用フレキシブル管とした変形例を示す図。
【図13】従来の配管構造の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の地盤沈下対策配管構造1及び地盤沈下対策配管方法の第1の実施形態について図1から図3を参照しつつ説明する。本実施形態において地盤沈下対策配管構造1は、例えば住宅等の建築物2の図示しない屋根等に降り注いだ雨を軒下に敷設された図示しない軒樋によって集め、建築物2の外壁に沿って鉛直方向に敷設された立樋3に流し、地中に埋設された配管構造1を介して集水桝4(雨水桝)に集める雨水排水系に用いている。なお、本発明の地盤沈下対策配管構造1及び地盤沈下対策配管方法は、このような雨水排水系に用いられるものに限定されるものではなく、例えば、建築物2内部で使用された汚水を流す汚水排水系にも用いることができる。
【0026】
本実施形態の地盤沈下対策配管構造1は、図1に示すように建築物2の外壁に固定されて、屋根に降った雨水を流下させる排水管としての立樋3と、この立樋3の下端に一端が挿入されて固定され、中間部で湾曲した管状のエルボ5と、エルボ5の他端に固定されてこのエルボ5を介して立樋3に連通するフレキシブル管6aと、一端側からフレキシブル管6aが出入自在に挿入されるとともに、他端が、直線状に伸びる連結管7に固定され、この連結管7を介して、集水桝4に連通する鞘管8aと、を備えている。
【0027】
立樋3は、樹脂又は金属製の管状の部材であり、例えば円筒形又は四角筒形に形成されている。この立樋3は、建築物2の外壁に固定された支持リング9に保持されて外壁に沿って敷設されている。エルボ5は、例えば樹脂又は金属で形成されており、中間部で45度屈曲して形成されている。なおエルボ5の屈曲角度は45度に限定されるものではなく、その他の角度に屈曲するものであっても良い。また、本発明の地盤沈下対策配管構造1の実施形態としては、エルボ5を介さずに立樋3の下端にそのままフレキシブル管6aの一端が挿入されて固定されるものであってもよい。
【0028】
フレキシブル管6aは、一端がエルボ5の下端に挿入されて固定される樹脂又は金属製の円筒管であって、可撓性を有するものである。このフレキシブル管6aの側面は可撓性を発揮するために蛇腹状または螺旋状に溝が形成されている。なお、フレキシブル管6aの形状はこれに限らず、所望の可撓性を有するものであれば他の形状であってもよい。このフレキシブル管6aは、建築物2内の地上に配管される一般的なフレキシブル管を流用することができる。
【0029】
鞘管8aは、フレキシブル管6aを内部に挿入して出入自在にできる大きさの管であって、直管をその中間部で略45度に屈曲して形成している。図2に示すように、鞘管8aのフレキシブル管6aを挿入する側の端部は上側が長手方向に尖って突出するように斜めに切断されている。これにより、鞘管8aのフレキシブル管6aを挿入する側の端部の開口が鉛直方向から見えず、水平方向に開口していることで、地面の上に人が乗るなどして圧力が掛かっても、土が侵入しにくい。さらに建築物2側に開口しているため開口と建築物2側の狭い空間に人が乗るなどは考えにくく、開口とは反対側から土圧が掛かる場合にほぼ限定されるため、土が侵入しにくい。また、斜めに切断されていることで、鞘管8aのフレキシブル管6aが挿入される側の端縁が楕円状に形成されてその周の長さが長くなるので、内部に挿入されているフレキシブル管6aと鞘管8aの端縁との接触部分が増えることになり、接触部分への圧力を分散させて、鞘管8aの端縁がフレキシブル管6aに食い込みが防止でき、フレキシブル管6aがスムーズに抜ける。さらに、フレキシブル管6aの外周に形成された凹凸と、鞘管8aの端縁の下側の形状が一致しないようになるため、鞘管8aの端縁がフレキシブル管の凹部に嵌って、引っ掛かることを防ぐことができる。この鞘管8aは、例えば金属又は樹脂などで形成された直管を加工して形成することができるが、より好ましくは透明又は半透明な樹脂製である。鞘管8aが透明又は半透明に形成されると、内部に挿入されたフレキシブル管6aの長さが土を掘り起こすだけで外部から確認することができるため、この地盤沈下対策配管構造の点検の際に、不等沈下に対応できているか確認することができる。
【0030】
鞘管8aの他端に固定される連結管7は、例えば樹脂により形成された直管であり、集水桝4が設置された位置まで内部に流入した水を流すことができるように傾斜して設けられている。この連結管7は集水桝4の側面に貫通して集水桝4内に雨水を案内しており、連結管7と集水桝4との間には樹脂又はゴムなどにより形成された水密性を有する環状部材が装着されている。この環状部材により連結管7は集水桝4に対する角度を所定範囲内で自在に変化させることができる。
【0031】
集水桝4は、本実施形態の配管構造内を流下した雨水を集めて公共桝などに排出するものである。なお、この集水桝4はこのような雨水桝に限定されるものではなく、建築物2内で使用された汚水を公共桝を介して下水に排出する汚水桝であってもよい。
【0032】
以上のように構成される地盤沈下対策配管構造1及び地盤沈下対策配管方法をもちいると、例えば杭打ちなどによって強固な地盤に支持された建築物2の周辺の地盤が沈下したような場合に、建築物2そのものは沈下しないため建築物2に比べて軟弱な地盤上に設置されている集水桝4が沈下することになる。このとき、図3に示すように、連結管7が集水桝4の沈下に引っ張られることになり、連結管7が集水桝4側の端部から沈下し、この連結管7に引っ張られて鞘管8aも傾きながら沈下する。一方、フレキシブル管6aは、鞘管8aに固定されておらず、鞘管8a内に出入自在に挿入されているだけであるので、鞘管8aが傾きながら沈下した場合には、鞘管8aの形状に合わせて形状を変形させつつ、鞘管8a内から引き出される。これにより、フレキシブル管6aのエルボ5側の端部は変位しないので、このエルボ5が固定されている立樋3にも負荷が掛かることがなく、立樋3の曲がりや破損を防ぐことができる。
【0033】
以上のように、第1の実施形態に係る地盤沈下対策配管構造1及び地盤沈下対策配管方法は、フレキシブル管6aが鞘管8aに出入自在であることにより、配管構造の全長を変化させることができるとともに、鞘管8a内に収納されるのがフレキシブル管6aであることにより、このフレキシブル管6aを不等沈下の方向に合わせて変形させることができるので、様々な方向の大きな沈下量の不等沈下に対応することができる。特に、フレキシブル管6aがこのフレキシブル管6aよりも強度の高い鞘管8a内に挿入されているので、土中用ではない、低コストで柔軟性が高い一般用のフレキシブル管を用いることができ、より高い追従性を有する。
【0034】
なお、この第1の実施形態の地盤沈下対策配管構造1及び地盤沈下対策配管方法においては、鞘管8aのフレキシブル管6aを挿入する側の端部の形状を上側が長手方向に尖って突出するように斜めに切断して形成し、これにより、土が入りにくい構成にしているが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、図4及び図5に示すように、柔軟な樹脂で形成された筒状のシール部材10を、一端がフレキシブル管6aの外周に当接し、他端が鞘管8aのフレキシブル管6aを挿入する側の端部に当接するように外嵌させるものであってもよい。このように構成すると、シール部材10により鞘管8aとフレキシブル管6aとの隙間が覆われるので、周辺の土が鞘管8aとフレキシブル管6aとの隙間に入り込むことを確実に防止することができる。
【0035】
また、第1の実施形態の地盤沈下対策配管構造1及び地盤沈下対策配管方法において、鞘管8aは直管を折り曲げ加工して形成したものであり、低コストで地盤沈下対策配管構造1及び地盤沈下対策配管方法を実現できるものであるが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、鞘管8aとして土中埋設用フレキシブル管を用いるものであってもよい。このように構成すると、土中埋設用フレキシブル管も集水桝4の沈下に対応して変形することができるので、集水桝4の沈下量がより大きくなっても、これに追従することができる。
【0036】
また、第1の実施形態においては、鞘管8aに挿入される内側の管は、直接土圧を受けないので、土中用ではない、低コストで柔軟性が高い一般用のフレキシブル管6aを用いており、より高い追従性を有する顕著な効果を奏するものであるが、本発明の実施形態としてはこれに限定されるものではなく、図7に示すように、鞘管8aとして土中埋設用フレキシブル管を用いており、内側の管にフレキシブル管6aを用いずに、直管を折り曲げて形成した内管6cを用いるものであってもよい。すなわち、立樋3にエルボ5を介して内管6cが連通しており、一端側から内管6cを出し入れ自在に土中埋設用フレキシブル管の鞘管8aが外挿し、鞘管の他端が集水桝4に連通する構成であってもよい。このように構成した場合であっても、土中埋設用フレキシブル管を用いた鞘管8aの可撓性と、鞘管8aから内管6cを出入することによる伸縮性と、により地盤沈下に追従することができる。
【0037】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態に係る地盤沈下対策配管構造1及び地盤沈下対策配管方法について、図8から図10を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。第2の実施形態に係る地盤沈下対策配管構造1は、図8に示すように住宅の外壁に固定されて、屋根に降った雨水を流下させる排水管としての立樋3と、この立樋3の下端に一端が挿入されて固定され、中間部で湾曲した管状のエルボ5と、エルボ5の他端に固定されてこのエルボ5を介して立樋3に連通する鞘管8bと、一端がこの鞘管8b内に出入自在に挿入されるとともに、他端が直線状に伸びる連結管7に固定され、この連結管7を介して集水桝4に連通するフレキシブル管6bと、を備えている。
【0038】
鞘管8bは、フレキシブル管6bを内部に挿入して出入自在にできる大きさの直管である。この鞘管8bは、例えば金属又は樹脂などで形成された直管を加工して形成することができるが、より好ましくは透明又は半透明な樹脂製である。鞘管8bが透明又は半透明に形成されると、内部に挿入されたフレキシブル管6bの長さが土を掘り起こすだけで外部から確認することができるため、この地盤沈下対策配管構造の点検の際に、不等沈下に対応できているか確認することができる。
【0039】
フレキシブル管6bは、一端が鞘管8b内に出入自在に挿入される大きさの可撓性を有する樹脂又は金属製の円筒管であり、他端は、連結管7に挿入されて固定されている。このフレキシブル管6bの鞘管8bに挿入される端部には、図9に示すように、リング状の防水パッキン11が外嵌されており、鞘管8b内に挿入されたときに鞘管8bとフレキシブル管6bとの隙間をシールして、鞘管8b内からフレキシブル管6b内を流下する水が外部に漏れることを防ぐことができる。このフレキシブル管6bの側面は可撓性を発揮するために蛇腹状または螺旋状に溝部が形成されている。なお、フレキシブル管6bの形状はこれに限らず、所望の可撓性を有するものであれば他の形状であってもよい。
【0040】
以上のように構成される第2の実施形態に係る地盤沈下対策配管構造1及び地盤沈下対策配管方法を用いると、不等沈下により集水桝4が沈下するときに、図10に示すように、連結管7が集水桝4の沈下に引っ張られることになり、連結管7が集水桝4側の端部から沈下し、この連結管7に引っ張られてフレキシブル管6bが鞘管8bから引き出されつつ、沈下に追従するように変形する。一方、鞘管8bは、フレキシブル管6bに固定されておらず、フレキシブル管6bが鞘管8b内を出入自在に挿入されているだけであるので、集水桝4の沈下によって変位することはなく、鞘管8bが固定されているエルボ5及びこのエルボ5が固定されている立樋3にも負荷が掛かることがなく、立樋3の曲がりや破損を防ぐことができる。
【0041】
なお、第2の実施形態における鞘管8bは直管であるが、これに限定されるものではなく、図11に示すように、土中埋設用フレキシブル管を用いたものであってもよい。鞘管8bとして土中埋設用フレキシブル管を用いると、より柔軟な構成となるため、沈下量の大きい不等沈下に対してより高い追従性を有することができる。
【0042】
また、第2の実施形態において内側の管はフレキシブル管6bが用いられているが、図12に示すように、内側の管として、直管を折り曲げ加工して形成した内側管6dを用いてもよい。すなわち、立樋3にエルボ5を介して土中埋設用フレキシブル管の鞘管8bが連通しており、この鞘管8bに内管6dの一端側が出入自在に挿入され、内管6dの他端は集水桝4に連通する構成であってもよい。このように構成した場合であっても、土中埋設用フレキシブル管を用いた鞘管8bの可撓性と、鞘管8bから内管6dを出入することによる伸縮性と、により地盤沈下に追従することができる。
【0043】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る地盤沈下対策配管構造1及び不等沈下対策配管方法は、例えば住宅の雨水排水系における配管構造及び配管方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 地盤沈下対策配管構造
2 建築物
3 立樋(排水管)
4 集水桝
5 エルボ
6a,6b フレキシブル管
8a,8b 鞘管
11 防水パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に支持されて、排水を流下させる排水管と、建築物の敷地に埋設される集水桝との間に配設される地盤沈下対策配管構造であって、
該排水管の下端に連通する第1の管と、
前記集水桝に連通する第2の管と、を備え、
前記第1の管及び前記第2の管のいずれか一方の管が他方の管に出入自在に挿入されるとともに、
前記第1の管及び/又は前記第2の管が可撓性を有することを特徴とする地盤沈下対策配管構造。
【請求項2】
建築物に支持されて、排水を流下させる排水管と、
該排水管の下端に連通する可撓性を有するフレキシブル管と、
該フレキシブル管が一端側から出入自在に挿入されるとともに、他端が集水桝に連通する前記フレキシブル配管よりも強度の高い土中に配置されている鞘管と、
を備えることを特徴とする地盤沈下対策配管構造。
【請求項3】
前記排水管は建築物の外壁に沿って略鉛直に配置され、雨水を流下させる立樋であって、当該立樋の下端に湾曲するエルボを介して前記フレキシブル管が連通することを特徴とする請求項2に記載の地盤沈下対策配管構造。
【請求項4】
前記鞘管の前記フレキシブル管が挿入される一端側の端部は、上側が長手方向に突出するように斜めに切断されて形成されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の地盤沈下対策配管構造。
【請求項5】
建築物に支持されて、排水を流下させる排水管と、
一端が前記排水管の下端に連通するとともに他端が建築物の屋外で地中に埋設される鞘管と、
一端が前記鞘管に出入自在に挿入されるとともに他端側が土中に設けられた集水桝に連通するフレキシブル管と、
を備えることを特徴とする地盤沈下対策配管構造。
【請求項6】
前記排水管は建築物の外壁に沿って略鉛直に配置され、雨水を流下させる立樋であって、当該立樋の下端に湾曲するエルボを介して前記鞘管が連通することを特徴とする請求項5に記載の地盤沈下対策配管構造。
【請求項7】
前記フレキシブル管の前記鞘管に挿入される端部にリング状の防水パッキンが外嵌されることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の地盤沈下対策配管構造。
【請求項8】
前記鞘管が透明又は半透明であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の地盤沈下対策配管構造。
【請求項9】
建築物に支持されて、排水を流下させる排水管と、建築物の敷地に埋設される集水桝との間に配設される地盤沈下対策配管構造であって、
該排水管の下端に連通する第1の管と、
前記集水桝に連通する第2の管と、を備え、
前記第1の管及び前記第2の管のいずれか一方の管が他方の管に出入自在に挿入されるとともに、
前記第1の管及び/又は前記第2の管が可撓性を有することを特徴とする地盤沈下対策配管方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−219996(P2011−219996A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90404(P2010−90404)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000201582)前澤化成工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】