説明

地盤注入における流量比率制御方法

【課題】 複数種類の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、任意の混合比率で調合することが可能となるとともに、短時間で配合の制御を安定させることができ、また、注入の途中で流量比率を変更する場合にも配合の制御が不安定になることを防止できる。
【解決手段】 A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として、注入開始後、主液の流量を増やし、主液の流量入力値(測定値)が基準値に達したならば、従液の流量を増やし、圧力入力値(測定値)が基準値に達し、かつ、従液の流量入力値(測定値)が基準値に達したならば、仕様で定められた混合液の流量設定値と各注入液の混合割合を基に主液の流量設定値を算出し、それに基づいて主液の流量制御を行い、また、主液の流量の測定値と従液の混合比率を基に従液の流量設定値を算出し、それに基づいて従液の流量制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム、トンネル、都市土木等の薬液またはセメント注入の地盤注入工法で、多液を混合して注入する場合の流量比率制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤注入工法としての薬液注入工法は、地盤の中に固化材(薬液)を注入して固結土を造成し、地盤の透水性を低下させるとともに、地盤を強化する工法である。
【0003】
薬液注入工法での多液注入、例えば、注入液として、セメントミルク等の懸濁型注入液(A液)と水ガラス系等の溶液型注入液(B液)などの二液混合グラウチングでは、グラウトミキサで作成する注入液Aと注入液Bをポンプで地盤に挿入する注入管に送り、これら注入液Aと注入液Bを配管経路の途中または注入管の先端で混合して地盤に吐出する。
【0004】
図13において、図中1、2は注入液Aと注入液Bのグラウトミキサであるが、これらグラウトミキサ1、2の注入液Aと注入液Bは薬液注入ポンプ3からそれぞれの配管経路で注入管4の注入孔4aに送られる。
【0005】
このような二液混合グラウチングで注入液の圧力、流量を管理する方法としては、従来、薬液注入ポンプ3による。薬液注入ポンプ3からの各配管経路に薬液流量圧力測定装置5で計測して本薬液注入ポンプ3を制御する。
【0006】
前記薬液注入ポンプ3に使用されるポンプはピストン式またはプランジャ式のポンプで、吐出量(流量)を制御する機能を有し、二種類の注入液(注入液Aと注入液B)を等量で吐出できる。なお、1台の薬液注入ポンプ3とせずに2台のポンプとしてもよい。
【0007】
このように圧力制御については、作業員が薬液流量圧力測定装置5の圧力表示を目で見て確認しながら、薬液注入ポンプ3の吐出量を調整することで、間接的に調整を行う。注入配管は単管×2系列である。
【0008】
なお、下記特許文献1には、グラウトA液系統とグラウトB液系統との少なくとも2系統を有し、各系統に挿入されたポンプから吐出された液体を混合して所定の比率のグラウトを得るようにしたグラウトの比率制御装置として、前記各系統のポンプをそれぞれ駆動するポンプモータに、速度制御するためのモータインバータをそれぞれ結合し、これらモータインバータに、流量設定信号出力手段をそれぞれ結合し、それぞれの流量設定信号出力手段を互いに逆動作するように連動せしめてなることを特徴とするグラウトの比率制御装置が提案されている。
【特許文献1】特開平11−13053号公報(グラウトの比率制御装置)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記図13の薬液注入ポンプによる制御方式では制御に人手を介在しなければならないものである。
【0010】
また、扱う注入液は2種類のものに限られ、しかも、混合比率は1:1に固定されている。しかも、注入液Aと注入液Bの二種類の注入液を配管経路の途中または注入管4の先端で合流させると、注入液が互いに干渉し合い、圧力、流量が不規則に変化するので、このような二種類の注入液の混合割合を1:1に保つには、迅速かつ微妙な制御を連続的に行う必要がある。そのためには前記のごとく制御に人手を介在させるものでは、圧力、流量の変化に追随できない場合が多い。
【0011】
また、前記特許文献1は、グラウトA液と、グラウトB液が保有されている状態で、グラウトA液ポンプとグラウトB液ポンプとを同時に運転して両液をバッファータンクに送り込んで撹拌するものであり、バッチ単位で注入液を混合する。その結果、注入中に注入液の配合を随時、任意に変更することはできない。
【0012】
さらに、特許文献1は、比率制御装置が一方的に制御信号を送るだけで、その結果(流量)を測定しない。また、混合後の流量、圧力の制御を別なシステムで行うものである。
【0013】
これに対して発明者は先に特願2003−356108号として、図7〜図9に示すように、複数の注入液をグラウトミキサに接続する注入ポンプから地盤に挿入する注入管に同時に送る際に、圧力検出器、流量検出器、制御弁等を備え、液路を流れてくる注入液の圧力、流量をそれぞれ圧力検出器、流量検出器で検出するとともに、これら検出値に基いて、制御弁の開閉を制御することにより注入液を所望の圧力、流量で液路に送り出すグラウト流量制御装置8を、少なくともA液(第1注入液)のグラウトポンプ6から注入管4への液路に配設し、また、各注入液相互を所望の割合で供給するように前記グラウト流量制御装置8を制御するグラウト流量比率設定装置9を設けた多液同時注入システムを提案した。
【0014】
このグラウト流量比率設定装置9にはパソコン等が利用でき、前記グラウト流量制御装置8の圧力検出器24、流量検出器(電磁流量計)25の測定出力を受け、制御信号をグラウト流量制御装置8を介して、制御弁20を制御する。また、グラウト流量比率設定装置9は、可変吐出型注入ポンプであるグラウトポンプ7と信号線で接続され、本グラウトポンプ7の運転を制御できるものである。
【0015】
また、グラウト流量比率設定装置9は流量・圧力センサ10からの出力を受け、これに基づいてグラウトポンプ7等の制御も可能である。
【0016】
図12は、グラウト流量比率設定装置9のブロック回路図で、電気信号を物理量(流量・圧力)に変換するスケーリング回路9a、混合比率をもとに二液の流量の大小を判定する主/従制御判別回路9b、流量の大きな側の信号(例えばA液の流量>B液の流量の場合、A液側の信号)を主制御回路へ渡す主/従制御振り分け回路9c、主側について、流量または圧力のどちらか一方の制御を割出し、設定値と入力値の差を求める主制御用流量・圧力偏差量算出回路9d、主側について、設定値と入力値の差に応じた電動弁の開閉信号を出力する主制御用電動弁駆動開閉判別回路9f、従側について、主側の注入液の流量と混合比率をもとに算出した流量の設定値と入力値の差を求める従制御用流量・圧力偏差量算出回路9e、従側について、設定値と入力値の差に応じた電動弁の開閉信号を出力する従制御用電動弁駆動開閉判別回路9g、主/従判別回路からの信号(9f、9gからの信号)に応じて主制御出力と従制御出力を切り替える主/従制御切替回路9hとからなる。
【0017】
前記グラウト流量比率設定装置9によってそれぞれ所望の割合で供給するように流量を制御でき、数種類の注入液を液路の途中またはその先端で任意の混合比率で調合することが可能となり、混合液の性質(浸透性、粘性、凝結、硬化時間、強度等)の調整範囲が大きく広がり、その結果、薬液またはセメント注入工事における止水効果・補強効果の向上、それらにともなう経済性の改善を期待することができる。
【0018】
この特願2003−356108号のような、A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として、仕様で定められた混合液の流量設定値と各注入液の混合割合を基に主液の流量設定値を算出し、それに基づいて主液の流量制御を行い、また、主液の流量の測定値と従液の混合比率を基に従液の流量設定値を算出し、それに基づいて従液の流量制御を行う場合に、混合後の注入液の流量もしくは圧力を一定に保ちながら、各注入液の流量比率(混合割合、配合)を変更する場合、その制御を安定的に行うには、下記の問題がある。
【0019】
第1に、注入開始直後は、まず、A液(第1注入液)の流量が増え、やや時間を置いて、それにしたがいながらB液(第2注入液)の流量が増え始める。そのため所望の流量比率(混合割合、配合)に到達し、配合の制御が安定するまで長い時間を要する。
【0020】
第2に、注入の途中で流量比率を変更し、A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の流量の大小関係が入れ替わる場合の制御では、A液(第1注入液)の流量の微妙な変動が拡大され、B液(第2注入液)の流量が大きく変動することにより、配合の制御が不安定になる。
【0021】
第3に、注入の途中で流量比率を変更し、どちらか一方の注入液だけで注入を行う場合の制御では、A液(第1注入液)の流量の微妙に変動すると、ゼロとなるべきB液(第2注入液)の流量がそれに合わせて変動し、配合の制御が不安定になる。
【0022】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、複数種類の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、任意の混合比率で調合することが可能となるとともに、短時間で配合の制御を安定させることができ、また、
注入の途中で流量比率を変更する場合にも配合の制御が不安定になることを防止できる地盤注入における流量比率制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1記載の本発明は前記目的を達成するため、A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として、注入開始後、主液の流量を増やし、主液の流量入力値(測定値)が基準値に達したならば、従液の流量を増やし、圧力入力値(測定値)が基準値に達し、かつ、従液の流量入力値(測定値)が基準値に達したならば、仕様で定められた混合液の流量設定値と各注入液の混合割合を基に主液の流量設定値を算出し、それに基づいて主液の流量制御を行い、また、主液の流量の測定値と従液の混合比率を基に従液の流量設定値を算出し、それに基づいて従液の流量制御を行うことを要旨とするものである。
【0024】
請求項1記載の本発明によれば、注入開始直後は、主液の流量制御に基づく従液の流量制御を行うことをせずに、主液の流量制御と従液の流量制御とを独立させ、主液の流量入力値(測定値)が基準値に達するまで主液の流量を増やし、その後、圧力入力値(測定値)が基準値に達し、従液の流量入力値(測定値)が基準値に達するまで従液の流量を増やす。その後は、主液の流量制御に基づく従液の流量制御を行う。これにより、まず、A液(第1注入液)の流量が増え、やや時間を置いて、それにしたがいながらB液(第2注入液)の流量が増え始めるといったことが解消され、配合の制御の安定に時間の短縮が図れる。
【0025】
請求項2記載の本発明は、A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、注入の途中で流量比率を変更し、A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の流量の大小関係が入れ替わる場合、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として、仕様で定められた混合液の流量設定値と各注入液の混合割合を基に主液の流量設定値を算出し、それに基づいて主液の流量制御を行い、また、主液の流量の測定値と従液の混合比率を基に従液の流量設定値を算出し、それに基づいて従液の流量制御を行うことを要旨とするものである。
【0026】
請求項2記載の本発明によれば、注入の途中で流量比率を変更し、A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の流量の大小関係が入れ替わる場合、そのまま制御を続行すると、少ない量(流量比率の小さい)の液の流量の微妙な変動が拡大され、多い量の流量(流量比率の大きい)の液が大きく変動することにより配合の制御が不安定になるおそれがあるが、これを常に流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として、常に配合の制御の安定性を確保することができる。
【0027】
請求項3記載の本発明は、A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として、仕様で定められた混合液の流量設定値と各注入液の混合割合を基に主液の流量設定値を算出し、それに基づいて主液の流量制御を行い、また、主液の流量の測定値と従液の混合比率を基に従液の流量設定値を算出し、それに基づいて従液の流量制御を行い、注入の途中で流量比率を変更し、どちらか一方の注入液だけで注入を行う場合、ゼロとなるべき注入液の流量入力値(測定値)が基準値以下になると、他の注入液の流量入力値(測定値)から独立して、強制的にゼロを目指すことを要旨とするものである。
【0028】
請求項3記載の本発明によれば、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として、仕様で定められた混合液の流量設定値と各注入液の混合割合を基に主液の流量設定値を算出し、それに基づいて主液の流量制御を行い、また、主液の流量の測定値と従液の混合比率を基に従液の流量設定値を算出し、それに基づいて従液の流量制御を行う制御において、注入の途中で流量比率を変更し、どちらか一方の注入液だけで注入を行う場合、A液(第1注入液)の流量の微妙に変動すると、ゼロとなるべきB液(第2注入液)の流量がそれに合わせて変動し、配合の制御が不安定になるが、ゼロとなるべき注入液の流量入力値(測定値)が基準値以下になると、他の注入液の流量入力値(測定値)から独立して、強制的にゼロを目指すことにより、常に配合の制御の安定性を確保することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上述べたように本発明の地盤注入における流量比率制御方法によれば、複数種類の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、任意の混合比率で調合することが可能となるとともに、短時間で配合の制御を安定させることができ、また、注入の途中で流量比率を変更する場合にも配合の制御が不安定になることを防止できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面について本発明の実施の形態を説明する。先に、本発明の地盤注入における流量比率制御方法を行う場合の基本的な制御について説明する。図1はそのフロー図、図7〜図9はA液(第1注入液)とB液(第2注入液)との二液同時注入の場合の設備説明図である。
【0031】
図7〜図9において、A液(第1注入液)とB液(第2注入液)との二液同時注入の場合で、注入液の種類は、注入液A(第1注入液):セメントミルク(懸濁型注入液)、注入液B(第2注入液):水ガラス(溶液型注入液)であり、注入液の用途としては、通常はセメントミルクの注入を行い、地表への漏出防止、湧水の逆流防止等の理由で、注入液をゲル化(≒凝結)させる必要が生じた場合、セメントミルクに水ガラスを混合するものである。
【0032】
図8は、懸濁型注入液に循環路式注入配管、溶液型注入液に単路式注入配管を用いる例である。注入液Aと注入液Bのグラウトミキサ1、2にはそれぞれ注入ポンプとしてのグラウトポンプ6、7が接続され、注入液Aと注入液Bは本グラウトポンプ6、7から途中の合流管11で合流して注入管4の注入孔4aに送られる。
【0033】
図10に注入管4の詳細を示すと、注入ロッド(ボーリングロッド)30の上端部には注入ヘッドとしての注入孔4aがあり、先端部にはエアーパッカー32を配設したパッカーヘッド31を設けている。図示の例はチューブ式であり、エアーパッカー32の膨張用の窒素を供給するエアーチューブ33を注入ロッド30の外周に取り付けたが、エアー通路を注入ロッド30の中に形成することも可能である。図中34はチッソボンベ、ロッドホルダー35である。
【0034】
注入液Aと注入液Bは合流管11で合流して注入孔4aを介して注入管4に入り、先端で突出されるが、合流管11と注入孔4aとの間には、静止型混合器12を配設する。本静止型混合器12は各注入液を混合するものであり、スタティックミキサと称されている。なお、注入管4を2ショット方式(二液が注入管の先端で合流する)のものでは、前記静止型混合器12は不要となる。
【0035】
グラウトポンプ6から注入管4への液路配管で、前記合流管11の手前に、図11に示すような、圧力検出器24、流量検出器(電磁流量計)25、制御弁20等を備え、液路を流れてくる注入液の圧力、流量をそれぞれ圧力検出器24、流量検出器25で検出するとともに、これら測定値に基づいて、バルブ制御部としての制御弁20の開閉を制御することにより注入液を所望の圧力、流量で液路に送り出すグラウト流量制御装置8を設ける。
【0036】
グラウト流量制御装置8は、岩盤や構造物に危険な影響を与えないために注入圧力が設計上の計測値を超えないようにグラウトポンプ6側に吐出流量をリターンさせる機能を有するが、前記制御弁20に対応して入口21、出口22、リターン口23を設けた。図中26はキャスタである。
【0037】
前記グラウト流量制御装置8を設けるに際して、グラウトミキサ1に、余剰の注入液を戻す戻し路18をリターン口23に接続する。
【0038】
一方、注入液Bのグラウトミキサ2に接続される注入ポンプとしてのグラウトポンプ7は、これを可変吐出型注入ポンプとし、また、グラウトポンプ7から注入管4への液路配管に流量・圧力センサ10を配設した。
【0039】
各注入液相互を所望の割合で供給するように前記グラウト流量制御装置8を制御するものとして、仕様で定められた混合液の流量設定値と各注入液の混合割合を基にA液の流量設定値を算出し、それに基づいてA液の流量制御を行い、また、A液の流量の測定値とB液(第2注入液)の混合比率を基にB液の流量設定値を算出し、それに基づいてB液の流量制御を行うグラウト流量比率設定装置9を設けた。
【0040】
グラウト流量比率設定装置9にはパソコン等が利用でき、前記グラウト流量制御装置8の圧力検出器24、流量検出器(電磁流量計)25の測定出力を受け、制御信号をグラウト流量制御装置8を介して、制御弁20を制御する。また、グラウト流量比率設定装置9は、可変吐出型注入ポンプであるグラウトポンプ7と信号線で接続され、本グラウトポンプ7の運転を制御できるものである。
【0041】
また、グラウト流量比率設定装置9は流量・圧力センサ10からの出力を受け、これに基づいてグラウトポンプ7等の制御も可能である。
【0042】
図12に示すように、グラウト流量比率設定装置9は、電気信号を物理量(流量・圧力)に変換するスケーリング回路9a、混合比率をもとに二液の流量の大小を判定する主/従制御判別回路9b、流量の大きな側の信号(例えばA液の流量>B液の流量の場合、A液側の信号)を主制御回路へ渡す主/従制御振り分け回路9c、主側について、流量または圧力のどちらか一方の制御を割出し、設定値と入力値の差を求める主制御用流量・圧力偏差量算出回路9d、主側について、設定値と入力値の差に応じた電動弁の開閉信号を出力する主制御用電動弁駆動開閉判別回路9f、従側について、主側の注入液の流量と混合比率をもとに算出した流量の設定値と入力値の差を求める従制御用流量・圧力偏差量算出回路9e、従側について、設定値と入力値の差に応じた電動弁の開閉信号を出力する従制御用電動弁駆動開閉判別回路9g、主/従判別回路からの信号(9f、9gからの信号)に応じて主制御出力と従制御出力を切り替える主/従制御切替回路9hとからなる。
【0043】
図8は二種類の懸濁型注入液にそれぞれ循環路式注入配管を用いる例であり、前記図7の流量・圧力センサ10の代わりにA液側のグラウト流量制御装置8と同様なグラウト流量制御装置8をB液のグラウトポンプ7から注入管4への液路に配設し、本グラウト流量制御装置8にグラウト流量比率設定装置9から制御信号を送ることで行うものとした。
【0044】
B液側にも前記グラウト流量制御装置8を設けるに際して、グラウトミキサ1に、余剰の注入液を戻す戻し路18を設けた。また、注入液Bのグラウトミキサ2に接続される注入ポンプとしてのグラウトポンプ7は、これを可変吐出型注入ポンプとせずに、A液側のグラウトポンプ6と同等なものとする。その他の構成は図7の場合と同一である。
【0045】
図9は前記図8の場合の応用として、一方の注入液(混合前)の流量・圧力と、混合後の注入液の流量・圧力をもとに制御を行う場合である。
【0046】
注入液Bのグラウトミキサ2に接続される注入ポンプとしてのグラウトポンプ7と合流管11の間の液路に前記第2実施形態のグラウト流量制御装置8の代わりにリターンバルブ13を設け、また、合流管11または静止型混合器12と注入孔4aとの間にグラウト流量圧力検出器14を設ける。
【0047】
これらリターンバルブ13やグラウト流量圧力検出器14はグラウト流量比率設定装置9と信号線で接続され、A液側のグラウト流量制御装置8の流量・圧力測定値とグラウト流量圧力検出器14の混合後の注入液の流量・圧力をもとに、グラウト流量制御装置8の制御弁20やリターンバルブ13を開閉制御する。
【0048】
準備として、A液側のグラウトミキサ1〜グラウトポンプ6〜グラウト流量制御装置8の間でセメントミルク(A液)を循環する。図8、図9の場合は、A液側、B液側のグラウトミキサ1、2〜グラウトポンプ6、7〜グラウト流量制御装置8、8の間でセメントミルク、急硬ミルクを循環する。
【0049】
グラウト流量比率設定装置9が、セメントミルク(A液)の流量・圧力の設定にしたがって、制御信号(制御弁20の開度を調整する信号)をA液側のグラウト流量制御装置8に送り、A液側のグラウト流量制御装置8が制御弁20を調整し、セメントミルクの流れが注入孔4aへ向かう。
【0050】
グラウト流量比率設定装置9は、セメントミルク(A液)について流量・圧力の測定値(A液側のグラウト流量制御装置8が測定)と設定値を照合し、その差異に応じて、A液側のグラウト流量制御装置8に制御信号を送り、図1のステップ(ア)のように、主液(A液)の流量を増やす。
【0051】
そして、二液注入が指示されると、図1のステップ(イ)のように、従液(B液)の流量を主液(A液)流量と従液(B液)の流量比率から算出した目標値に向けて調整する。
【0052】
具体的には、グラウト流量比率設定装置9は、A液であるセメントミルクの流量(測定値)と二液の混合割合をもとに、B液である水ガラスの流量(設定値)を計算し、その制御信号(吐出量を調整する信号)をB液側のグラウトポンプ7(可変吐出量型)に送る。
【0053】
これを受けて、B液側のグラウトポンプ7(可変吐出量型)はグラウトポンプを運転し、水ガラスを注入孔4a側へ送り出す。
【0054】
次いで、注入完了基準を満足しているかを判定し[ステップ(ウ)]、満足している場合には注入完了[ステップ(ケ)]となる。
【0055】
満足していない場合には、流量比率を変更するか否かを判定し[ステップ(エ)]、変更しない場合には注入圧力がPmax(ポンプ最大圧)を超えたか否かを判定し[ステップ(オ)]、Pmaxを超えた場合は、図2における[ステップ(ト)]の主液の流量を減らす、さらに、[ステップ(ト)]の従液(B液)の流量を主液(A液)流量と従液(B液)の流量比率から算出した目標値に向けて調整するものとし、次いで、前記[ステップ(ウ)]に移行する。
【0056】
また、Pmaxで安定している場合には主液、従液の流量を維持する[ステップ(コ)]。さらに、前記[ステップ(ウ)]に移行する。
【0057】
Pmaxに到達していない(Pmax)未満である場合、主液の流量がQ3[主液の最大流量(2液の混合流量の最大値と主液の流量比率をもとに算出)]に到達したか否かを判定し[ステップ(カ)]、Q3を超えた場合、図2における[ステップ(ト)]の主液の流量を減らす、さらに、[ステップ(ト)]の従液(B液)の流量を主液(A液)流量と従液(B液)の流量比率から算出した目標値に向けて調整するものとする。
【0058】
また、Q3に到達した(Q3で安定している)場合は、従液の流量を維持する[ステップ(コ)]。さらに、前記[ステップ(ウ)]に移行する。
【0059】
Q3に到達していない(Q3未満である)場合は、主液の流量を増やし[ステップ(キ)]、さらに、従液(B液)の流量を主液(A液)流量と従液(B液)の流量比率から算出した目標値に向けて調整し[ステップ(ク)]、前記[ステップ(ウ)]に移行する。
【0060】
本発明は、このような制御を行うのに先立ち、下記の制御を行うものとする。
前記制御では、注入開始直後は、まず、A液(第1注入液)の流量が増え、やや時間を置いて、それにしたがいながらB液(第2注入液)の流量が増え始めるので、そのため所望の流量比率(混合割合、配合)に到達し、配合の制御が安定するまで長い時間を要するのを解消するためである。図2に示すように、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として[ステップ(サ)]、注入を開始し[ステップ(シ)]、注入開始後、まず、[主液A液(第1注入液)]の流量を増やす[ステップ(ス)]。
【0061】
注入圧力がPmaxを超えたか否かを判定し[ステップ(セ)]、Pmaxを超えた場合は、主液の流量を減らす[ステップ(ト)]、さらに、従液(B液)の流量を主液(A液)流量と従液(B液)の流量比率から算出した目標値に向けて調整するものとし[ステップ(ナ)]、前記[ステップ(ウ)]に移行する。
【0062】
Pmaxを超えていない(Pmax以下である)場合、主液の流量がQ1(主液の流量の初期目標値)に到達したか否かを判定し[ステップ(ソ)]、Q1に達していない(Q1未満である)場合には、前記[ステップ(ス)]に戻る。
【0063】
Q1に達した、またはQ1を超えた(Q1以上である)場合には、従液の流量を増やす[ステップ(タ)]、もしくは、主液の流量を維持する[ステップ(チ)]、注入圧力がPmaxを超えたか否かを判定し[ステップ(ツ)]、Pmaxを超えた場合は主液の流量を減らす[ステップ(ト)、さらに、従液(B液)の流量を主液(A液)流量と従液(B液)の流量比率から算出した目標値に向けて調整するものとし[ステップ(ナ)]、前記[ステップ(ウ)]に移行する。
【0064】
Pmaxを超えていない(Pmax以下である)場合、従液流量がQ2(従液の流量の初期目標値)に到達したか否かを判定し[ステップ(テ)]、Q2に達していない(Q2未満である)場合には、前記[ステップ(タ)(チ)]に戻る。
【0065】
Q2に達した、またはQ2を超えた(Q2以上である)場合には、前記[ステップ(ア)]に移行する。
【0066】
前記制御を要約すると、下記の通りであり、図4に示す制御値設定画面(制御パラメータ設定)と参照する。
【0067】
(1)注入開始→(2)A液の流量を増やす→(3)A液の流量入力値(測定値)が基準値に達した→(4)B液の流量を増やす→(5)圧力入力値(測定値)が基準値に達しない→(6)B液の流量入力値(測定値)が基準値に達した。
【0068】
前記(3)A液の流量入力値(測定値)が基準値に達したか否かは、図4の(a)に該当する部分であり、これが否の場合には、圧力入力値(測定値)が基準値に達したかを見て[図4の(c)に該当する部分]、達していない場合には、(2)のA液の流量を増やすに戻り、達した場合は前記図1に制御となる。
【0069】
前記(5)圧力入力値(測定値)が基準値に達しないか否かも図4の(c)に該当する部分を見て判断し、(6)のB液の流量入力値(測定値)が基準値に達したか否かは図4の(b)に該当する部分を見て判断する。
【0070】
次に、図1のステップ(エ)で流量比率を変更するか否かを判定して変更する場合で2液の流量の大小関係が入れ替わる場合の制御は図5に示すように流量設定値の小さな側が、流量設置値の大きな側に合わせて制御を行うものとする。
【0071】
これは、図3に示すように、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」とし[ステップ(ニ)]、主液の流量を2液の混合液量と変更後の主液の流量比率から算出した目標値に向けて調整する[ステップ(ヌ)]。
【0072】
そして、従液の流量を主液の流量と変更後の従液の流量比率から産出した目標値に向けて調整する[ステップ(ネ)]。
【0073】
一例として、図5において、混合流量=10L/minの場合、
A液=7.0L/min→A液=4.3L/min
B液3.0L/min→B液5.7L/minとなる。
【0074】
次いで、従液の流量比率の目標値はゼロか否かを判定し[ステップ(ノ)]、ゼロでない場合は前記[ステップ(ウ)]に移行する。
【0075】
ゼロである場合、すなわち、注入の途中で流量比率を変更し、どちらか一方の注入液だけで注入を行う場合は、図6に示すように、ゼロとなるべきB液(第2注入液)の流量入力値(測定値)が基準値以下になると、A液(第1注入液)の流量入力値(測定値)から独立して、強制的にゼロを目指すこととした。
【0076】
すなわち、図3に示すように、ゼロである場合、従液の流量がQ4(流量の目標値を強制的にゼロに切り替える値)まで低下したか否かを判定し[ステップ(ハ)]、Q4まで低下していない場合は、前記[ステップ(ネ)]に移行する。
【0077】
Q4まで低下した(Q4以下である)場合、従液の流量を主液の流量と無関係にゼロに向けて調整し[ステップ(ヒ)]、次いで、前記[ステップ(ウ)]に移行する。
【0078】
一例として、図6において、混合流量=10L/minの場合、
A液=4.3L/min→A液=10.0L/min
B液=5.7L/min→B液0.0L/minとなる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の地盤注入における流量比率制御方法の1実施形態を示す通常制御部分のフローチャートである。
【図2】本発明の地盤注入における流量比率制御方法の1実施形態を示す注入開始直後の制御のフローチャートである。
【図3】本発明の地盤注入における流量比率制御方法の1実施形態を示す2液の流量の大小関係が入れ替わる場合、および、主液による一液注入の制御のフローチャートである。
【図4】制御値設定画面を示す正面図である。
【図5】2液の流量の大小関係が入れ替わる場合のグラフである。
【図6】主液による一液注入のグラフである。
【図7】2液同時注入システムの設備の第1例を示す説明図である。
【図8】2液同時注入システムの設備の第2例を示す説明図である。
【図9】2液同時注入システムの設備の第3例を示す説明図である。
【図10】注入管の正面図である。
【図11】グラウト流量制御装置の正面図である。
【図12】グラウト流量比率設定装置のブロック図である。
【図13】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1、2…グラウトミキサ 3…薬液注入ポンプ
4…注入管 4a…注入孔
5…薬液流量圧力測定装置 6、7…グラウトポンプ
8…グラウト流量制御装置 9…グラウト流量比率設定装置
9a…スケーリング回路 9b…主/従制御判別回路
9c…主/従制御振り分け回路
9d…主制御用流量・圧力偏差量算出回路
9e…従制御用流量・圧力偏差量算出回路
9f…主制御用電動弁駆動開閉判別回路
9g…従制御用電動弁駆動開閉判別回路
9h…主/従制御切替回路 10…流量・圧力センサ
11…合流管 11a…急縮管
11b…貫入型T字管 11c…逆止弁
12…静止型混合器 13…リターンバルブ
14…グラウト流量圧力検出器 15…合流管
16…グラウトポンプ 17…流量センサ
18…戻し路 19…グラウトミキサ
20…制御弁
21…入口 22…出口
23…リターン口 24…圧力検出器
25…電磁流量計 26…キャスタ
27…管 28…エレメント
30…注入ロッド
31…パッカーヘッド 32…エアーパッカー
33…エアーチューブ 34…チッソボンベ
35…ロッドホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として、
注入開始後、
主液の流量を増やし、主液の流量入力値(測定値)が基準値に達したならば、
従液の流量を増やし、圧力入力値(測定値)が基準値に達し、かつ、従液の流量入力値(測定値)が基準値に達したならば、仕様で定められた混合液の流量設定値と各注入液の混合割合を基に主液の流量設定値を算出し、それに基づいて主液の流量制御を行い、また、主液の流量の測定値と従液の混合比率を基に従液の流量設定値を算出し、それに基づいて従液の流量制御を行うことを特徴とする地盤注入における流量比率制御方法。
【請求項2】
A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、注入の途中で流量比率を変更し、A液((第1注入液)とB液(第2注入液)の流量の大小関係が入れ替わる場合、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として、仕様で定められた混合液の流量設定値と各注入液の混合割合を基に主液の流量設定値を算出し、それに基づいて主液の流量制御を行い、また、主液の流量の測定値と従液の混合比率を基に従液の流量設定値を算出し、それに基づいて従液の流量制御を行うことを特徴とする地盤注入における流量比率制御方法。
【請求項3】
A液(第1注入液)とB液(第2注入液)の注入液を混合して注入管により地盤に注入する地盤注入工法において、A液、B液のうち流量比率の大きい方を「主液」小さい方を「従液」として、仕様で定められた混合液の流量設定値と各注入液の混合割合を基に主液の流量設定値を算出し、それに基づいて主液の流量制御を行い、また、主液の流量の測定値と従液の混合比率を基に従液の流量設定値を算出し、それに基づいて従液の流量制御を行い、注入の途中で流量比率を変更し、どちらか一方の注入液だけで注入を行う場合、ゼロとなるべき注入液の流量入力値(測定値)が基準値以下になると、他の注入液の流量入力値(測定値)から独立して、強制的にゼロを目指すことを特徴とする地盤注入における流量比率制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−28768(P2006−28768A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205419(P2004−205419)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(504269741)株式会社東都建設機器サービス (1)
【Fターム(参考)】