説明

地盤注入工法および地盤注入装置

【課題】割裂注入や注入材の逸送を防止し、かつ低圧浸透注入でありながら急速浸透注入により大容量の注入材をきわめて効率的に注入することのできる地盤注入装置および地盤注入工法を提供する。
【解決手段】削孔および注入材を注入する注入管3を備えて構成する。注入管3は外管2と外管2内に設置された内管1とから構成する。外管2は先端に削孔水および注入材の吐出口2bと削孔用のリングビット2aを備えている。内管1は周壁に複数の内管吐出口1aと逆止弁5、内管吐出口1aおよび逆止弁5の上側に袋パッカー6、さらに袋パッカー6の上側に傘状逆止弁7をそれぞれ備えている。内管1は外管2の下端から削孔内に突出するように設置する。袋パッカー6は削孔内で膨張して孔壁に密着して孔壁と内管1との間に柱状空間Aを形成するように設置する。笠状逆止弁7は外管2内に注入された削孔水および注入材の逆流を阻止するように設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の注入管路を有する注入管を備えた地盤注入装置および当該地盤注入装置による地盤注入工法に関し、特に注入材が脈状に注入される割裂注入や注入材の逸送を防止することができ、かつ低圧浸透注入でありながら急速浸透注入により大容量の注入材をきわめて効率的に注入することができる。
【背景技術】
【0002】
礫質層などの粗粒土層と粘性土層などの細粒土層が乱雑に積層する地盤や、泥と多量の水を含み常に柔らかい状態の地盤、さらには未固結状態の緩い砂からなる地盤は、その地盤だけではその上に建つ建物や構造物を支えきれず、建物が沈下したり液状化を引き起こすおそれがある。
【0003】
このような軟弱地盤を建物や構造物の敷地として利用するには、予め地盤改良を行う必要がある。これまで、このような軟弱地盤の地盤改良工法として地盤中に注入材を注入して地盤を固結強化する方法が知られている。
【0004】
また、注入に際し、削孔時に生じた注入管周囲の隙間や地盤内に元々存在する粗間隙を瞬結性の注入材や懸濁性の注入材を注入して粗詰を行い、その後から浸透性の注入材を注入することにより粗隙間を伝わって二次注入材が逸送するのを防止して地盤の浸透固結を行う方法が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、注入管の先端に削孔用のリングビットを備え、その上側に袋パッカー、さらにその上側に圧縮空気、削孔水および注入材をそれぞれ送り込むための各管路を備えた注入管装置とその装置による注入工法が開示されている。
【0006】
施工に際しては、最初に地上より削孔水を送り込み、注入管の先端より吐出させながら、リングビットで地盤を削孔することにより注入管を地盤中に挿入する。次に、圧縮空気を送り込み、袋パッカーを膨張させて孔壁に密着させることにより削孔のパッカーより下方部分をシールする。
【0007】
そして、注入材を送り込み、袋パッカーより下方に注入材を注入する。注入材が固化したら袋パッカーを収縮させて元の状態に復帰させる。この作業を管軸方向に所定の距離ごとに繰り返すことにより、削孔の上方から下方に向かって地盤改良を行う。
【0008】
また、特許文献2には、先端に削孔用のリングビットと削孔水吐出口をそれぞれ有し、その上側の周壁に複数の外管吐出口を備えた外管と、先端に袋パッカー、その上側の周壁に複数の内管吐出口と逆止弁、さらにその上側に傘状逆止弁を備え、かつ外管内に設置された内管とからなる注入管装置が開示されている。
【0009】
施工に際しては、最初に、外管に削孔水を注入し削孔水吐出口より地盤中に削孔水を吐出しつつ、リングビットで地盤を削孔しながら注入管を地盤中に挿入する。
【0010】
次に、内管に注入材を注入し内管を介して袋パッカーに注入材を注入することによりを膨張させ袋パッカーによって削孔水吐出口を塞ぐ。さらに、内管に注入材を注入することにより内管吐出口と外管吐出口を介して外管周囲の地盤中に注入材を吐出する。この作業を所定の距離ごとに繰り返すことにより削孔の上方から下方に向かって地盤改良を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−173243号公報
【特許文献2】特公昭63−64567号公報
【特許文献3】特開昭55−142819号公報
【特許文献4】特許第3545322号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、引用文献1,2に記載された注入装置および注入工法は、いずれも、注入管の直径を有効径とする球状浸透源からの浸透を基本とし、小さな吐出量で注入する注入工法であるため注入効率が悪く、施工の長期化が免れないだけでなく、吐出量を大きくすると割裂注入状態になりやすいという課題があった。
【0013】
また特に、特許文献1に記載された注入装置および注入工法では、ゴム製のメカニカルパッカーが外管に装着されているため、削孔に際してメカニカルパッカーが孔壁に直接当たり、このため、孔壁にメカニカルパッカーが引っ掛かる等して削孔がスムーズにできないだけでなく、メカニカルパッカーが孔壁との摩擦により破けてしまうおそれがあった。
また引用文献2に記載された注入装置および注入工法には、注入管と孔壁との間をシールするパッカーを備えていないため、孔壁と注入管との間を注入材が地上に逸送しやすく、不経済な施工になりやすいという課題があった。
【0014】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、注入材が脈状に注入される割裂注入や注入材の逸送を防止して、低圧浸透注入でありながら急速浸透注入により大容量の注入材をきわめて効率的に注入することができる地盤注入装置および地盤注入工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る地盤注入装置、削孔および注入材を注入するための注入管を備えた地盤注入装置において、前記注入管は先端に削孔水および注入材の吐出口と削孔用ビットを備えた外管と、周壁に複数の内管吐出口と逆止弁、前記内管吐出口および逆止弁の上側に袋パッカー、さらに当該袋パッカーの上側に傘状逆止弁をそれぞれ備えて、前記外管内に設置された内管とから構成され、前記内管は外管の下端から削孔内に突出するように設置され、前記袋パッカーは削孔内で膨張して孔壁に直接密着することにより孔壁と内管との間に柱状空間を形成するように設置され、かつ前記笠状逆止弁は前記外管内に注入された削孔水および注入材の逆流を阻止するように設置されてなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明は、注入管の周囲に一定長の柱状空間を形成することにより、低圧浸透注入でありながら急速浸透注入により大容量の注入材をきわめて効率的に浸透注入することを可能にしたものである。
【0017】
また、浸透注入に先だって注入管周囲の粗詰めを行うことにより、注入材が脈状に注入される割裂注入や注入材の逸送を防止して、注入材が地盤全体に均等に注入されることと、注入材の無駄をなくして経済性を担保できるようにしたものである。
【0018】
特に本発明によれば、袋パッカーは内管に取り付けられ、注入時にのみ膨張して孔壁と直接密着し、削孔の際には外管の中に収納されているため、削孔の際に袋パッカーが破損することもなく、外管と内管を含めて注入ステージを移動する際の妨げになることはない。
【0019】
また、注入管は、注入後地上に回収することにより地中に放置されることもないので、施工後に掘削する際に注入管が邪魔になることもない。
【0020】
なお、袋パッカーは、内管を介して注入される注入材(二次注入材)によって膨張させることができる。この場合、内管の周壁に袋パッカーに連通するパッカー内吐出口を設け、当該パッカー内吐出口の口径を各内管吐出口の口径より大きく形成すればよい。そうすると、内管に注入された注入材は先にパッカー内吐出口から袋パッカー内に流れ込んで袋パッカーを膨張させ、続いて内管吐出口から柱状空間内に吐出する。
【0021】
また、前記袋パッカーは内管に挿入された注入管を介して注入されるエアまたは液体によって膨張させることもできる(図10参照)。
【0022】
また、内管内に複数の管路を設け、A液(主材)、B液(反応材)として瞬結材または瞬結材と緩結材を切り替えて注入することもできるし、さらに、外管、内管および袋パッカーに注入されるエアまたは液体の注入管の3重管または3本の並列管を用いることもできる。
【0023】
本発明に係る第一の地盤注入工法は、前記地盤注入装置による地盤注入工法において、(1)外管内に削孔水を注入し、かつ外管先端の削孔水および注入材の吐出口から地盤中に削孔水を吐出しつつ、削孔用ビットで削孔しながら地盤中に注入管を挿入する工程と、(2)外管内に一次注入材を注入し、かつ外管先端の削孔水および注入材の吐出口から地盤中に一次注入材を吐出することにより外管周囲の粗詰めを行う工程と、(3)袋パッカーを含む内管の先端部分を削孔内に突出する工程と、(4)前記袋パッカーを膨張させ、かつ孔壁に密着させて内管と孔壁との間に柱状空間を形成する工程と、(5)前記内管に二次注入材を注入し、かつ内管先端部分の内管吐出口から前記柱状空間内に二次注入材を吐出し、かつ当該柱状空間から地盤中に浸透注入する工程と、(6)前記袋パッカーを収縮させ、かつ内管の先端部分を外管内に収納する工程とからなり、かつ前記(1)〜(6)の各工程を地盤中に向かって一定深さ毎に行うことを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明に係る第二の地盤注入工法は、(1)外管内に削孔水を注入し、かつ外管先端の削孔水および注入材の吐出口から地盤中に削孔水を吐出しつつ、削孔用ビットで削孔しながら地盤中に注入管を挿入する工程と、(2)外管内に一次注入材を注入し、かつ外管先端の削孔水および注入材の吐出口から地盤中に削孔水を吐出することにより外管周囲の粗詰めを行う工程と、(3)袋パッカーを含む内管の先端部分を削孔内に突出する工程と、(4)前記袋パッカーを膨張させ、かつ孔壁に密着させて内管と孔壁との間に柱状空間を形成する工程と、(5)前記内管に二次注入材を注入し、かつ内管先端部分の内管吐出口から前記柱状空間内に二次注入材を吐出し、かつ当該柱状空間から地盤中に浸透注入する工程と、(6)前記袋パッカーを収縮する工程とからなり、前記(1)の工程の後、(2)〜(6)の工程を行い、さらに(2)の工程と(4)〜(6)の工程を地表に向かって一定深さ毎に行うことを特徴とするものである。
【0025】
なお、(3)の袋パッカーを含む内管の先端部分を削孔内に突出させる工程において、外管を一定量引き上げるか、若しくは内管を下方に押し下げるかすることによって、袋パッカーを含む内管の先端部分を削孔内に突出させることができる。
【0026】
また特に、第二の発明に係る地盤注入工法においては、袋パッカーを含む内管の先端部分を内管本体の管軸方向にスライドするように二重管に構成し、注入管を地盤中に挿入する際は内管本体の下端部に二重管状態に収納しておき、二次注入材を注入する際に内管本体の先端方向にスライドさせて削孔内に突出させる構成としてもよい。その際、内管の先端部分は、内管に注入される二次注入材の注入圧を利用して削孔内に突出させることができる。
【0027】
また、(4)の袋パッカーを膨張させ、かつ孔壁に密着させて内管と孔壁との間に柱状空間を形成する工程において、袋パッカーはその中に二次注入材、エアまたは液体を注することにより膨張させることができる。その際、二次注入材は内管を介して袋パッカーに注入することができ、エアまたは液体(主として水)は内管内に挿入される注入管を利用して袋パッカーに注入することができる(図10参照)。
【0028】
そして、(6)の袋パッカーを収縮する工程において、袋パッカーは注入された二次注入材、エアまたは液体を抜くことにより収縮させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、特に注入管の周囲に一定長の柱状空間を形成し、この柱状空間を二次注入材の浸透源として注入材を地盤中に注入するため、低圧浸透注入でありながら急速浸透注入により大容量の注入材をきわめて効率的に地盤注入することができる。
【0030】
また、浸透注入を行う前に粗詰め注入を行うため、注入材が脈状に注入される割裂注入や注入材の逸送を防止して地盤全体に注入材を均等に浸透注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】地盤注入装置を示し、(a)は、注入管の先端から削孔水を吐出しつつ、削孔しながら注入管を地盤中に挿入する状態を示す側面図、(b)は注入管の周囲に二次注入材を注入する状態を示す側面図である。
【図2】注入管の先端部分を示し、(a)はその縦断面図、(b),(c),(d)は、それぞれ図(a)におけるイ−イ線断面図、ロ−ロ線断面図、ハ−ハ線断面図である。
【図3】注入管の先端部分を示し、注入管が先端から削孔水を吐出しながら削孔する状態を示す縦断面図である。
【図4】注入管の先端部分を示し、注入管の先端から一次注入材を吐出することにより注入管周囲の粗詰めを行う状態を示す縦断面図である。
【図5】注入管の先端部分を示し、外管を引き上げることにより外管の先端から内管の先端部分が突出した状態を示す縦断面図である。
【図6】注入管の先端部分を示し、袋パッカーを膨張させて孔壁に密着させることにより柱状空間を形成した状態を示す縦断面図である。
【図7】注入管の先端部分を示し、内管の先端から柱状空間内に二次注入材を吐出し、かつ柱状空間から周囲の地盤中に浸透注入する状態を示す縦断面図である。
【図8】注入管の先端部分を示し、袋パッカーを収縮させた状態を示す縦断面図である。
【図9】注入管の先端部分を示し、内管を引き上げて内管の先端部分を外管内に収納した状態を示す縦断面図である。
【図10】注入管の先端部分を示し、図(a)は、内管本体に挿入された注入管を介して注入されるエアまたは液体によって袋パッカーを膨張させる状態を示す縦断面図、図(b),(c)は図(a)における二−二線、ホ−ホ線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1〜図10は、本発明の一実施形態を示し、本発明に係る地盤注入装置は、内管1と外管2とからなる注入管3を備え、注入管3はボーリングマシン等の建設重機4に鉛直に据え付けられている。
【0033】
内管1と外管2は二重に設置され、かつ互いに一方が固定された状態で他方が管軸方向(鉛直方向)に移動するように設置され、特に内管1の先端部分は外管2の下方に一定長突出するように構成されている。
【0034】
また、内管1と外管2間の間隙および内管1内は、それぞれ後述するように削孔水、一次注入材および二次注入材を地上より地盤中に注入するための管路になっている。
【0035】
また、内管1の先端は閉じられ、かつ先端部分の周壁に複数の内管吐出口1aが形成され、各内管吐出口1aには逆止弁5が取り付けられ、さらに内管吐出口1aの上側に袋パッカー6、袋パッカー6の上側に傘状逆止弁7がそれぞれ取り付けられている。
【0036】
内管吐出口1aは、内管1の円周方向と管軸方向に一定間隔おきに複数形成されている。逆止弁5は、各内管吐出口1aにおける二次注入材の逆流と削孔水および一次注入材の流入を阻止するための弁であり、ゴムチューブ等から形成されている。
【0037】
袋パッカー6は、後述するように削孔内で膨張しかつ孔壁に密着して削孔内をシールことにより、内管1と孔壁との間に柱状空間Aを形成するためのパッカーであり、ゴム等の膨縮性の袋体から形成され、そして、内管1の周壁に形成されたパッカー内吐出口1bを介して内管1内と連通している。
【0038】
なお、パッカー内吐出口1bは、各内管吐出口1aより大きい内径に形成されている。これにより、内管1内に二次注入材を注入すると、二次注入材は先に袋パッカー6内に吐出して袋パッカー6を膨張させ、かつ孔壁に密着させてシール後、内管吐出口1aから柱状空間A内に吐出する。
【0039】
傘状逆止弁7は、後述するように外管2内を地盤中に注入される削孔水や一次注入材の逆流を防止するための弁であり、可撓性ゴム等から変形可能な傘状に形成されている。
【0040】
内管2は、先端に削孔用のリングビット2aと、削孔する際は削孔水を、注入材を注入する際は一次注入材をそれぞれ吐出するための削孔水および一次注入材の吐出口2bを備えて形成されている。
【0041】
次に、本発明の地盤注入装置による地盤注入工法の施工手順について説明する。
【0042】
(1) 最初に、注入管3をボーリングマシン等の建設重機4に設置して改良すべき軟弱地盤の上に鉛直に立て付ける。
【0043】
(2) 次に、地上より外管2内に削孔水を注入し、かつ外管2先端の削孔水および注入材の吐出口2aから地盤中に削孔水を吐出しながら外管2を回転させ、リングビット2bによって削孔することにより、注入管3を地盤中に挿入する。その際、注入管3の挿入深さに応じて内管1と外管2をそれぞれ継ぎ足す。
【0044】
なお、削孔中、傘状逆止弁7の働きにより外管2内を地上から地盤中に送り込まれる削孔水の逆流が防止される。また、掘削土は削孔水と共に注入管3と孔壁との間隙を通って地上に排出される。
【0045】
(3) 注入管3を所定の深さまで挿入したら、次に地上より外管2内に一次注入材を注入し、かつ外管2先端の削孔水および注入材の吐出口2aから地盤中に一次注入材を注入する。この場合、外管2内に注入された一次注入材は、外管2内をその先端まで送り込まれ、かつ先端の削孔水および注入材の吐出口2aから地盤中に吐出され、これにより注入管3周囲の一定範囲に対してシールと粗詰めが行われる。また、傘状逆止弁7の働きにより外管2内を地上から地盤中に送り込まれる一次注入材の逆流が防止される。
【0046】
(4) 次に、内管1を静止させた状態で外管2のみを一定量地上に引き上げることにより、袋パッカー6を含む内管1の先端部分を削孔A内に突出させる。
【0047】
(5) 次に、地上より内管1内に二次注入材を注入する。内管1内に注入された二次注入材は、最初に内管1のパッカー内吐出口1bから袋パッカー6内に流れ込むことにより袋パッカー6が膨張して孔壁に密着し、削孔内がシールされる。これにより内管1の先端部部分と孔壁との間に柱状空間Aが形成される。
【0048】
なお、パッカー内吐出口1bには、袋パッカー6内に流入した二次注入材が自然な状態では漏出しないように逆止弁(図省略)が取り付けられている。また、袋パッカー6内に注入された二次注入材は、吸引用の管を介して地上から吸い出すことにより抜き取ることができるようになっている。
【0049】
(6) さらに、内管1内に二次注入材を注入し続ける。そうすると、二次注入材は内管1の内管吐出口1aから柱状空間A内に吐出される。そして、柱状空間Aから周囲の地盤中に浸透注入される。
【0050】
(7) 次に、袋パッカー6内に注入された二次注入材を抜いて袋パッカー6を収縮させ、そして、外管2の下方に突出した袋パッカー6を含む内管1の先端部分を外管2内に収納する。以上の工程により1ステージの地盤注入が完了したことになる。
【0051】
(8) 以下、(2)〜(7)の工程を地中方向に一定深さずつ行い、かつ横方向に一定間隔おきに行うことにより一定領域の地盤改良を行うことができる。図1において、符号Bは、(2)〜(7)の工程を地中方向に一定深さずつ行うことにより形成された改良体である。
【0052】
なお、エアまたは液体(主として水)の注入により袋パッカー6を膨張させる方法としては、注入管3の内管1として特に図10に図示するような内管を使用する。
【0053】
図示する内管1は、内管本体1Aと内管本体1A内に挿入された注入管1Bとから二重管に構成され、内管本体1Aの先端部分に袋パッカー6とパッカー内吐出口1b、さらに複数の内管吐出口1aがそれぞれ設けられている。
【0054】
注入管1Bは内管本体1A内に地上から内管本体1Aの先端部分まで挿入されている。符号8は内管本体1Aと注入管1B間の管路の先端部分を塞ぐ底板であり、また、符号9は注入管1Bを内管本体1A内に保持するリブである。
【0055】
これにより、内管本体1Aと注入管1Bとの間隙が地上から袋パッカー6内にエアまたは液体を送り込むための管路になっており、また注入管1Bが地上から内管本体1Aの先端部分、さらに複数の内管吐出口1aを介して柱状空間A内に二次注入材を送り込むための管路になっている。
【0056】
なお、パッカー内吐出口1bには、袋パッカー6内に注入されたエアまたは液体が自然な状態では漏出しないように逆止弁(図省略)が取り付けられ、袋パッカー6内に注入されたエアまたは液体は、吸引用の管を介して地上おいて吸い出すことにより抜き取ることができるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、注入の逸送や割裂注入を防止し、低圧浸透注入でありながら急速浸透注入により大容量の注入材を効率的に注入することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 内管
1a 内管吐出口
1b パッカー内吐出口
2 外管
2a リングビット(削孔用ビット)
2b 削孔水および注入材の吐出口
3 注入管
4 建設重機
5 逆止弁
6 袋パッカー
7 傘状逆止弁
8 管路の底板
9 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔および注入材を注入するための注入管を備えた地盤注入装置において、前記注入管は先端に削孔水および注入材の吐出口と削孔用ビットを備えた外管と、周壁に複数の内管吐出口と逆止弁、前記内管吐出口および逆止弁の上側に袋パッカー、さらに当該袋パッカーの上側に傘状逆止弁をそれぞれ備えて、前記外管内に設置された内管とから構成され、前記内管は外管の下端から削孔内に突出するように設置され、前記袋パッカーは削孔内で膨張し、孔壁に密着することにより孔壁と内管との間に柱状空間を形成するように設置され、かつ前記笠状逆止弁は前記外管内に注入された削孔水および注入材の逆流を阻止するように設置されてなることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項2】
請求項1記載の地盤注入装置において、前記袋パッカーは内管を介して注入される注入材によって膨張するように設置されていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項3】
請求項1記載の地盤注入装置において、前記袋パッカーは内管に挿入された注入管を介して注入されるエアまたは液体によって膨張するように設置されていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかひとつに記載の地盤注入装置による地盤注入工法において、(1)外管内に削孔水を注入し、かつ外管先端の削孔水および注入材の吐出口から地盤中に吐出しつつ、削孔用ビットで削孔しながら注入管を地盤中に挿入する工程と、(2)外管内に一次注入材を注入し、かつ外管先端の削孔水および注入材の吐出口から地盤中に吐出することにより外管周囲の粗詰めを行う工程と、(3)袋パッカーを含む内管の先端部分を削孔内に突出する工程と、(4)前記袋パッカーを膨張させ、かつ孔壁に密着させて内管と孔壁との間に柱状空間を形成する工程と、(5)前記内管に二次注入材を注入し、かつ内管先端部分の内管吐出口から前記柱状空間内に吐出し、かつ当該柱状空間から地盤中に浸透注入する工程と、(6)前記袋パッカーを収縮させ、かつ内管の先端部分を外管内に収納する工程とからなり、前記(1)〜(6)の各工程を地盤中に向かって一定深さ毎に行うことを特徴とする地盤注入工法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかひとつに記載の地盤注入装置による地盤注入工法において、(1)外管内に削孔水を注入し、かつ外管先端の削孔水および注入材の吐出口から地盤中に吐出しつつ、削孔用ビットで削孔しながら注入管を地盤中に挿入する工程と、(2)外管内に一次注入材を注入し、かつ外管先端の削孔水および注入材の吐出口から地盤中に吐出することにより外管周囲の粗詰めを行う工程と、(3)袋パッカーを含む内管の先端部分を削孔内に突出する工程と、(4)前記袋パッカーを膨張させ、かつ孔壁に密着させて内管と孔壁との間に柱状空間を形成する工程と、(5)前記内管に二次注入材を注入し、かつ内管先端部分の内管吐出口から前記柱状空間内に吐出し、かつ当該柱状空間から地盤中に浸透注入する工程と、(6)前記袋パッカーを収縮する工程とからなり、前記(1)の工程の後、(2)〜(6)の工程を順に行い、さらに(2)の工程と(4)〜(6)の工程を地表に向かって一定深さ毎に行うことを特徴とする地盤注入工法。
【請求項6】
請求項4または5記載の地盤注入工法において、袋パッカーをその中に二次注入材、エアまたは液体を注することにより膨張させることを特徴とする地盤注入工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−91961(P2013−91961A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234055(P2011−234055)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【特許番号】特許第4979829号(P4979829)
【特許公報発行日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(509023447)強化土株式会社 (31)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【Fターム(参考)】