説明

地絡位置標定方法及びその方法を実現するための地絡位置標定システム

【課題】構成が複雑化された機器を用いる必要があった。
【解決手段】第1測定器200は、電源供給線路10を介して、電気信号12を第2測定器300に送信し、第2測定器は、電気信号を受信してからノイズ信号13を受信するまでに要した到達時間差Δtsを計測し、第1測定器は、電気信号を送信してからノイズ信号14を受信するまでに要した全体時間Tを計測するとともに、到達時間差Δtsを取得し、さらに、第1測定器から地絡位置までの距離をXsとし、線路を伝搬する信号の速度をCとして、Xs=C×(T−Δts)/2によって、地絡位置を標定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源供給線路で地絡が発生した場合に、その発生位置を標定する地絡位置標定方法及びその方法を実現するための地絡位置標定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地絡位置標定方法を実現するためのシステムとして、送信機と第1測定器と第2測定器とを用いるものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたシステムは、停止配電線路の一端側に送信機と第1測定器とが設置され、他端側に第2測定器が設置される。送信機は、停止配電線路のR相、S相、及びT相の各相に高電圧パルスを流す。第1測定器及び第2測定器は、それぞれ、健全相(すなわち、地絡が発生していない相)の波形と故障相(すなわち、地絡が発生している相)の波形とを比較して、故障点からの進行波(すなわち、故障点での放電により発生するノイズ信号)の受信時間を測定する。そして、第1測定器及び第2測定器は、両測定器における受信時間の差に基づいて、それぞれの測定器から故障点までの距離を標定する。
【0003】
また、この種の地絡位置標定システムとして、時計部にGPS技術を利用して、故障点で発生する電流の伝搬時刻差を両端で測定することにより、故障点を標定するものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、この種の地絡位置標定システムとして、光ファイバ分布型温度センサを内蔵した光ファイバケーブルを電力ケーブルに添わせて布設し、温度センサで故障時のアークによる温度上昇を検出し、検出された温度上昇に基づいて故障点を標定するものがある(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−113571号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】相原靖彦・浅川正人・矢代誠一・大井学・鈴木聡・天野一夫著、「超高圧電力ケーブル用故障点標定システム」、フジクラ技報第99号、株式会社フジクラ、2000年10月
【非特許文献2】滝波直樹・千野孝・渡辺和夫・天野一夫・中村良晴著、「光ファイバ分布型温度センサによるケーブル故障点標定方法―接続部への適用と実用化システムの検討―」、フジクラ技報第99号、株式会社フジクラ、2000年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、非特許文献1、及び非特許文献2の各文献に開示されたシステムは、いずれも、以下に説明するように、構成が複雑化・大型化された機器を用いる必要がある、という課題があった。
【0008】
例えば、特許文献1に開示されたシステムは、第1測定器及び第2測定器が同期して時間を計測する必要があるため、第1測定器と第2測定器間との間で時刻を同期させるための仕組みが必要であった。
また、このシステムは、第1測定器と第2測定器との間の距離を特定する必要があるため、第1測定器の位置及び第2測定器の位置を特定するための仕組み(具体的には、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信機)が必要であった。
また、このシステムは、線路の各相に高電圧パルスを流す必要があるため、高電圧パルスを流すための高電圧発生機能を有する送信機が必要であった。
そのため、特許文献1に開示されたシステムは、構成が複雑化・大型化された機器を用いる必要があった。
このような特許文献1に開示されたシステムは、(1)機器を製造するためのコストがかかる、(2)GPS用の測地衛星からの電波を受信できない場所では地絡位置を標定できない、(3)機器を運搬したり設置したりするための作業負担を操作者に強いる等の問題があった。
【0009】
また、例えば、非特許文献1に開示されたシステムは、第1測定器と第2測定器間との間で時刻を同期させるための仕組みとして、時計部にGPS技術を利用している。
そのため、非特許文献1に開示されたシステムは、構成が複雑化された機器を用いる必要があった。
このような非特許文献1に開示されたシステムは、(1)機器を製造するためのコストがかかる、(2)GPS用の測地衛星からの電波を受信できない場所では地絡位置を標定できない等の問題があった。
【0010】
また、例えば、非特許文献2に開示されたシステムは、光ファイバ分布型温度センサを内蔵した光ファイバケーブルを電力ケーブルに添わせて布設する。
そのため、非特許文献2に開示されたシステムは、構成が複雑化・大型化された機器を用いる必要があった。
このような非特許文献2に開示されたシステムは、(1)機器を製造するためのコストがかかる、(2)光ファイバケーブルを布設するための作業負担を操作者に強いる等の問題があった。
【0011】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、構成が単純化・小型化された機器(すなわち、第1測定器と第2測定器間との間で時刻を同期させるための仕組みやGPS受信機等の構成を含まない機器)を用いて、地絡位置を標定する地絡位置標定方法及びその方法を実現するための地絡位置標定システムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、第1発明に係る地絡位置標定方法は、電源供給線路の一端側に設置される第1測定器と他端側に設置される第2測定器とを用いて、当該電源供給線路に発生する地絡の位置を標定する地絡位置標定方法であって、前記第1測定器は、所定の電気信号を生成して、前記電源供給線路を介して、当該電気信号を前記第2測定器に送信し、前記第2測定器は、当該第2測定器が前記電気信号を受信してから前記地絡によって発生するノイズ信号を受信するまでに要した時間を到達時間差として計測し、前記第1測定器は、当該第1測定器が前記電気信号を送信してから前記ノイズ信号を受信するまでに要した時間を全体時間として計測するとともに、前記第2測定器によって計測された前記到達時間差を取得し、さらに、当該第1測定器から前記地絡の位置までの距離をXsとし、前記到達時間差をΔtsとし、前記全体時間をTとし、前記電源供給線路を伝搬する信号の速度をCとする場合に、以下の式(1)によって、前記地絡の位置を標定する手順とする。
Xs=C×(T−Δts)/2 …(1)
【0013】
前記目的を達成するため、第2発明に係る地絡位置標定システムは、電源供給線路の一端側に設置される第1測定器と他端側に設置された第2測定器とを用いて、当該電源供給線路に発生する地絡の位置を標定する地絡位置標定システムであって、第1測定器は、所定の電気信号を生成する電気信号生成部と、前記電源供給線路を介して、前記電気信号生成部によって生成された前記電気信号を前記第2測定器に送信する第1送信部と、前記電源供給線路上を伝搬する伝搬信号を受信する第1受信部と、前記第1受信部によって受信された前記伝搬信号の中から、前記電気信号に応じて前記地絡によって発生するノイズ信号を検出する第1ノイズ信号検出部と、当該第1測定器が前記電気信号を送信してから前記ノイズ信号を受信するまでに要した時間を全体時間として計測する全体時間計測部と、前記地絡の位置を標定する地絡位置標定部とを備え、前記第2測定器は、前記電源供給線路上を伝搬する、前記電気信号及び前記ノイズ信号を含む伝搬信号を受信する第2受信部と、前記第2受信部によって受信された前記伝搬信号の中から、前記ノイズ信号を検出する第2ノイズ信号検出部と、当該第2測定器が前記電気信号を受信してから前記ノイズ信号を受信するまでに要した時間を到達時間差として計測する到達時間差計測部とを備え、かつ、前記第1測定器の前記地絡位置標定部は、前記第2測定器の前記到達時間差計測部によって計測された前記到達時間差を取得し、さらに、当該第1測定器から前記地絡の位置までの距離をXsとし、前記到達時間差をΔtsとし、前記全体時間をTとし、前記電源供給線路を伝搬する信号の速度をCとする場合に、以下の式(1)によって、前記地絡の位置を標定する構成とする。
Xs=C×(T−Δts)/2 …(1)
【0014】
第1発明の地絡位置標定方法及び第2発明の地絡位置標定システムは、第1測定器及び第2測定器が、第1測定器と第2測定器との間で時刻を同期させることなく、独立して、所要の動作に要した時間を地絡位置の標定用の値として計測するだけで、地絡位置を標定することができる。
そのため、第1発明の地絡位置標定方法及び第2発明の地絡位置標定システムは、第1測定器及び第2測定器が独立して時間を計測する機能を有すればよいため、第1測定器及び第2測定器から第1測定器と第2測定器との間で時刻を同期させるための仕組みやGPS受信機等を削除することができ、これにより、第1測定器及び第2測定器の構成を単純化・小型化することができる。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、構成が単純化・小型化された機器を用いて、地絡位置を標定する地絡位置標定方法を提供することができる。
また、第2発明によれば、第1発明の方法を実現するための地絡位置標定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る地絡位置標定方法の説明図(1)である。
【図2】本発明に係る地絡位置標定方法の説明図(2)である。
【図3】本発明に係る地絡位置標定方法の処理工程を示すフローチャートである。
【図4】実施形態1に係る地絡位置標定システムの構成図(1)である。
【図5】実施形態1に係る地絡位置標定システムの構成図(2)である。
【図6】実施形態2に係る地絡位置標定システムの構成図である。
【図7】実施形態3に係る地絡位置標定システムの構成図(1)である。
【図8】実施形態3に係る地絡位置標定システムの構成図(2)である。
【図9】実施形態3に係る地絡位置標定システムの動作説明図である。
【図10】実施形態4に係る地絡位置標定システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0018】
[実施形態1]
<地絡位置標定方法>
以下、図1乃至図3を参照して、本発明に係る地絡位置標定方法につき説明する。図1及び図2は、それぞれ、本発明に係る地絡位置標定方法の説明図である。図1は、本発明に係る地絡位置標定方法を実現するための地絡位置標定システムの構成を示している。一方、図2は、本発明に係る地絡位置標定方法に用いられる信号が伝搬する距離(x)と時間(t)との関係を示している。図3は、本発明に係る地絡位置標定方法の処理工程を示すフローチャートである。
【0019】
図1に示すように、本発明に係る地絡位置標定システム100は、電源供給線路(ただし、配電が停止状態となっている線路、すなわち、停止配電線路)10(以下、単に「線路10」と称する)の一端に第1測定器200が設置され、他端に第2測定器300が設置される。
【0020】
第1測定器200は、後記する全体時間Tを計測し、全体時間T及び後記する到達時間差Δtsに基づいて、故障点、すなわち、地絡(短絡を含む)の発生位置(以下、「地絡位置」と称する)を標定する装置である。この第1測定器200は、電気信号12(図2参照)を生成して第2測定器300に送信する機能を有している。
【0021】
一方、第2測定器300は、後記する到達時間差Δtsを計測する装置である。図2に示す例では、第2測定器300は、第1測定器200の位置を原点0とし、第1測定器200から距離Lの位置に設置されている。
【0022】
ここで、線路10は、三相に構成されており、その中のいずれかの相(例えば、相R)が故障相(すなわち、地絡(短絡を含む)が発生している相)になっているものとする。ここでは、故障相は、図2に示すように、第1測定器200から距離Xsの位置で、地絡が発生しているものとする。
【0023】
本発明に係る地絡位置標定システム100では、第1測定器200が、電気信号12を生成して、線路10を介して、第2測定器300に送信する(図3のS105参照)。図2に示す例では、時刻t0に、第1測定器200が電気信号12を送信している。以下、このときの時刻t0を「電気信号送信開始時刻」と称する。
【0024】
第1測定器200は、電気信号12を送信すると、全体時間Tの計測を開始する。この「全体時間T」とは、第1測定器200が電気信号12を送信してから後記するノイズ信号14を受信するまでに要した時間を意味している。
【0025】
電気信号12は、線路10の健全相(例えば、相S)を所定の速度C(具体的には、約30万km/sの速度)で伝搬し、やがて、第2測定器300に到達する。図2に示す例では、時刻t2に、電気信号12が第2測定器300に到達し、第2測定器300がその電気信号12を受信している。以下、このときの時刻t2を「第2測定器電気信号受信開始時刻」と称する。
【0026】
第2測定器300は、電気信号12を受信すると、到達時間差Δtsの計測を開始する。この「到達時間差Δts」とは、第2測定器300が電気信号12を受信してから後記するノイズ信号13を受信するまでに要した時間を意味している。
【0027】
線路10の故障相では、第1測定器200から距離Xsの位置で、地絡が発生している。そのため、線路10の故障相では、放電が発生し、これにより、ノイズ信号が発生する。以下、ノイズ信号が発生した時刻tsを「地絡時刻」と称する。
【0028】
地絡によって発生したノイズ信号は、第2測定器300及び第1測定器200の双方に向かって、伝搬する。以下、第2測定器300に向かって伝搬するノイズ信号を「ノイズ信号13」と称し、第2測定器300に向かって伝搬するノイズ信号を「ノイズ信号14」と称する。
【0029】
ノイズ信号13は、線路10の故障相を所定の速度C(具体的には、約30万km/sの速度)で伝搬し、やがて、第2測定器300に到達する。図2に示す例では、時刻t3に、ノイズ信号13が第2測定器300に到達し、第2測定器300がそのノイズ信号13を受信している。以下、このときの時刻t3を「第2測定器ノイズ信号受信時刻」と称する。
【0030】
一方、ノイズ信号14は、線路10の故障相を所定の速度C(具体的には、約30万km/sの速度)で伝搬し、やがて、第1測定器200に到達する。図2に示す例では、時刻t4に、ノイズ信号14が第1測定器200に到達し、第1測定器200がそのノイズ信号14を受信している。以下、このときの時刻t4を「第1測定器ノイズ信号受信時刻」と称する。
【0031】
第2測定器300は、ノイズ信号13を受信すると、第2測定器電気信号受信開始時刻t2から第2測定器ノイズ信号受信時刻t3までの時間を到達時間差Δtsと見なして、到達時間差Δtsの計測を終了する(図3のS110参照)。
【0032】
一方、第1測定器200は、ノイズ信号14を受信すると、電気信号送信開始時刻t0から第1測定器ノイズ信号受信時刻t4までの時間を全体時間Tと見なして、全体時間Tの計測を終了する(図3のS115参照)。
【0033】
この後、第1測定器200は、第2測定器300によって計測された到達時間差Δtsを取得する(図3のS120参照)。
到達時間差Δtsの取得は、例えば、到達時間差Δtsを第1測定器200に通知する信号(以下、「到達時間差通知信号」と称する)が、線路10を介して、第2測定器300から第1測定器200に送信されることによって行われる。
または、到達時間差Δtsの取得は、例えば、第2測定器300を操作する人物が第2測定器300によって計測された到達時間差Δtsを確認してその値を電話や郵便等の伝達手段で第1測定器200を操作する人物に通知し、第1測定器200を操作する人物がその値を第1測定器200に入力することによって行われる。
【0034】
第1測定器200は、到達時間差Δtsを取得すると、以下の原理に基づいて、信号の地絡位置到達時間Txs(図2参照)を特定(算出)する(図3のS125参照)。この「信号の地絡位置到達時間Txs」とは、線路10を伝搬する信号が原点0から地絡位置Xsに到達するまでに要する時間を意味している。
【0035】
ここで、仮想的に、第1測定器200がノイズ信号13を送信したものとし、第1測定器200がノイズ信号13を送信した時刻を「t1」とする。以下、このときの時刻t1を「ノイズ信号の仮想送信時刻」と称する。このノイズ信号の仮想送信時刻t1は、電気信号送信開始時刻t0から到達時間差Δts後の時刻となる。
【0036】
ここで、図2において、時刻t1からt4までの時間(t)を底辺とし、原点0からXsまでの距離(x)を高さとする三角形に注目すると、この三角形は、二等辺三角形の形状をなしている。
この二等辺三角形の底辺を形成する時間の値は、「T−ΔTs」となっている。
しかも、この底辺を形成する時間の半分の値(すなわち、「(T−ΔTs)/2」)は、信号の地絡位置到達時間Txsとなっている。
したがって、第1測定器200は、「Txs=(T−ΔTs)/2」を演算することによって、信号の地絡位置到達時間Txsを特定することができる。
【0037】
この後、第1測定器200は、特定された信号の地絡位置到達時間Txsを用いて、以下の式(1)によって、地絡位置を標定する(図3のS130参照)。
【0038】
Xs=C×Txs=C×(T−Δts)/2 …(1)
ここで、各記号は、
Xs:第1測定器200から地絡位置までの距離、
C:電源供給線路10の内部を伝搬する信号の速度(約30万km/s)、
t0:電気信号送信開始時刻(第1測定器200が電気信号12を送信した時刻)、
t4:第1測定器ノイズ信号受信時刻(第1測定器200がノイズ信号14を受信した時刻)、
Δts:到達時間差(第2測定器300が電気信号12を受信した時刻からノイズ信号13を受信した時刻までの時間差)、
を意味している。
【0039】
地絡位置標定システム100は、第1測定器200が地絡位置を標定することにより、一連の処理を終了する。
なお、第1測定器ノイズ信号受信時刻t4は、地絡位置が第1測定器200と第2測定器300との中間よりも第1測定器200に近い場合に、第2測定器ノイズ信号受信時刻t3よりも早くなる。この場合であっても、地絡位置標定システム100は、式(1)によって、地絡位置を標定することができる。
【0040】
ところで、前記した式(1)の全体時間Tは、第1測定器200が、第2測定器300から独立して(すなわち、第2測定器300によって計測される時刻とは無関係に)、時刻t0から時刻t4までの時間を計測することによって特定される。また、前記した式(1)の到達時間差Δtsは、第2測定器300が、第1測定器200から独立して(すなわち、第1測定器200によって計測される時刻とは無関係に)、時刻t2から時刻t3までの時間を計測することによって特定される。
したがって、地絡位置標定システム100は、地絡位置を標定するに際して、第1測定器200と第2測定器300との間で時刻を同期させる必要がない。そのため、地絡位置標定システム100は、前記した特許文献1に開示されたシステムや非特許文献1に開示されたシステムと異なり、第1測定器200と第2測定器300との間で時刻を同期させるための仕組みやGPS受信機等を持たない構成とすることができる。
【0041】
<地絡位置標定システムの具体的な構成>
以下、図4及び図5を参照して、本実施形態1に係る地絡位置標定システム100の具体的な構成につき説明する。図4及び図5は、それぞれ、本実施形態1に係る地絡位置標定システムの構成図である。以下、本実施形態1に係る第1測定器200を他の実施形態に係る第1測定器と区別するために「第1測定器200a」と称し、また、本実施形態1に係る第2測定器300を他の実施形態に係る第2測定器と区別するために「第2測定器300a」と称する。
【0042】
(第1測定器の具体的な構成)
図4に、第1測定器200aの具体的な構成を示す。
図4に示すように、第1測定器200aは、送信系の機能手段として、時計部205、電気信号生成部210、及び送信部215を備え、さらに、受信系の機能手段として、受信部225、ノイズ信号検出部260、全体時間特定部266、到達時間差取得部270、入力部272、地絡位置到達時間特定部275、地絡位置標定部280、及び表示部285を備えている。
【0043】
時計部205は、時刻を計測する機能手段である。
電気信号生成部210は、電気信号12(図2参照)を生成する機能手段である。本実施形態1では、電気信号生成部210は、所定周期の正弦波状のパルス信号を生成するパルス信号生成部211として構成されている。
送信部215は、電気信号生成部210によって生成された電気信号12を、線路10を介して、第2測定器300aに送信する機能手段である。
【0044】
受信部225は、線路10を伝搬する信号(以下、「伝搬信号」と称する)を受信する機能手段である。第1測定器200aは、伝搬信号として、第2測定器300aから、ノイズ信号14(図2参照)を受信し、さらに、前記した到達時間差通知信号を受信する。
ノイズ信号検出部260は、受信部225によって受信された伝搬信号の中からノイズ信号14を検出する機能手段である。
全体時間特定部266は、前記した全体時間Tを特定(算出)する機能手段である。全体時間特定部266は、時計部205とともに、全体時間Tを計測する全体時間計測部265を構成している。
【0045】
到達時間差取得部270は、前記した到達時間差Δtsを取得する機能手段である。本実施形態1では、到達時間差取得部270は、受信部225によって受信された伝搬信号の中から前記した到達時間差通知信号を検出する到達時間差通知信号検出部271として構成されている。
入力部272は、テンキー等のキーボードによって構成されている。入力部272は、第1測定器200を操作する人物が到達時間差Δtsを第1測定器200に入力する場合の入力手段として用いられる。
【0046】
地絡位置到達時間特定部275は、前記した信号の地絡位置到達時間Txsを特定(算出)する機能手段である。
地絡位置標定部280は、地絡位置を標定する機能手段である。
表示部285は、液晶等のディスプレイによって構成されている。表示部285は、地絡位置標定部280によって標定された第1測定器200aから地絡位置までの距離Xsを表示する。
【0047】
(第2測定器の具体的な構成)
図5に、第2測定器300aの具体的な構成を示す。
図5に示すように、第2測定器300aは、受信系の機能手段として、受信部310、電気信号検出部320、ノイズ信号検出部330、時計部340、及び到達時間差計測部350を備え、さらに、送信系の機能手段として、到達時間差通知部360、及び送信部370を備えている。
【0048】
受信部310は、線路10を伝搬する伝搬信号を受信する機能手段である。第2測定器300aは、伝搬信号として、第1測定器200aから、電気信号12(図2参照)を受信し、さらに、ノイズ信号13(図2参照)を受信する。
電気信号検出部320は、受信部310によって受信された伝搬信号の中から電気信号12を検出する機能手段である。本実施形態1では、電気信号検出部320は、伝搬信号の中から正弦波状のパルス信号を検出するパルス信号検出部321として構成されている。
ノイズ信号検出部330は、受信部310によって受信された伝搬信号の中からノイズ信号13を検出する機能手段である。
【0049】
時計部340は、時刻を計測する機能手段である。なお、時計部340は、第1測定器200の時計部205と同期されていなくてもよい。つまり、時計部340によって計測される時刻は、時計部205によって計測される時刻と相違していてもよい。
【0050】
到達時間差計測部350は、到達時間差Δtsを計測する機能手段である。本実施形態1では、到達時間差計測部350は、パルス信号受信時刻判定部351、ノイズ信号受信時刻判定部352、及び到達時間差特定部353として構成されている。
【0051】
パルス信号受信時刻判定部351は、時計部340によって計測されている時刻を参照して、前記した第2測定器電気信号受信開始時刻t2(図2参照)を判定する機能手段である。
ノイズ信号受信時刻判定部352は、時計部340によって計測されている時刻を参照して、前記した第2測定器ノイズ信号受信時刻t3(図2参照)を判定する機能手段である。
到達時間差特定部353は、到達時間差Δtsを特定(算出)する機能手段である。到達時間差特定部353は、ノイズ信号受信時刻判定部352によって判定された第2測定器ノイズ信号受信時刻t3からパルス信号受信時刻判定部351によって判定された第2測定器電気信号受信開始時刻t2を差し引くことによって、到達時間差Δtsを特定する。
【0052】
到達時間差通知部360は、到達時間差計測部350によって計測された到達時間差Δtsを第1測定器200aに通知する機能手段である。本実施形態1では、到達時間差通知部360は、前記した到達時間差通知信号を生成する到達時間差通知信号生成部361として構成されている。
送信部370は、到達時間差通知信号生成部361によって生成された到達時間差通知信号を、線路10を介して、第1測定器200aに送信する機能手段である。
【0053】
<地絡位置標定システムの具体的な動作>
以下、本実施形態1に係る第1測定器200a及び第2測定器300aの動作につき説明する。
【0054】
図3に示すように、地絡位置標定システム100は、第1測定器200aが、第1測定器200aを操作する人物の操作に応じて、「電気信号生成・送信」処理を行う(S105参照)。この処理は、以下のようにして行われる。
【0055】
まず、第1測定器200aは、電気信号生成部210のパルス信号生成部211が、所定周期の正弦波状のパルス信号を生成して送信部215に出力する。送信部215は、そのパルス信号を電気信号12(図2参照)として、線路10を介して第2測定器300aに送信する。
【0056】
第1測定器200aは、送信部215が電気信号12を送信すると、全体時間特定部266が、時計部205から、その時点の時刻(ここでは、時刻t0(図2参照))を取得して、時刻t0を電気信号送信開始時刻として図示せぬ格納部に格納する。これにより、全体時間特定部266は、全体時間Tの計測を開始する。
このようにして、S105の処理(「電気信号生成・送信」処理)が、行われる。
【0057】
一方、第2測定器300aは、第2測定器300aを操作する人物の操作に応じて、「到達時間差計測」処理を行う(S110参照)。この処理は、以下のようにして行われる。
【0058】
すなわち、第2測定器300aは、受信部310が、常時、線路10を伝搬する伝搬信号を受信し、受信した伝搬信号を電気信号検出部320のパルス信号検出部321とノイズ信号検出部330とに出力する。
【0059】
パルス信号検出部321は、伝搬信号の中に電気信号12が含まれている場合に、電気信号12を検出し、電気信号12を検出したことを通知する信号(以下、「検出信号」と称する)を到達時間差計測部350のパルス信号受信時刻判定部351に出力する。
パルス信号受信時刻判定部351は、パルス信号検出部321から電気信号12の検出信号が入力されると、時計部340から、その時点の時刻(ここでは、時刻t2(図2参照))を取得して、時刻t2を到達時間差特定部353に出力する。
到達時間差特定部353は、時刻t2を図示せぬ格納部に格納して、到達時間差Δtsの計測を開始する。
【0060】
一方、ノイズ信号検出部330は、伝搬信号の中にノイズ信号13(図2参照)が含まれている場合に、ノイズ信号13を検出し、ノイズ信号13の検出信号を到達時間差計測部350のノイズ信号受信時刻判定部352に出力する。
ノイズ信号受信時刻判定部352は、ノイズ信号検出部330からノイズ信号13の検出信号が入力されると、時計部340から、その時点の時刻(ここでは、時刻t3(図2参照))を取得して、時刻t3を到達時間差特定部353に出力する。
到達時間差特定部353は、時刻t3を図示せぬ格納部に格納する。
【0061】
この後、到達時間差特定部353は、図示せぬ格納部から時刻t2と時刻t3とを読み出し、時刻t3から時刻t2を差し引いた時間(t3−t2)を、到達時間差Δtsとして特定(算出)する。
到達時間差特定部353は、到達時間差Δtsを特定すると、特定した到達時間差Δtsを到達時間差通知部360の到達時間差通知信号生成部361に出力する。
【0062】
到達時間差通知信号生成部361は、到達時間差特定部353から到達時間差Δtsが入力されると、到達時間差通知信号を生成して、送信部370に出力する。送信部370は、その到達時間差通知信号を、線路10を介して第1測定器200aに送信する。
このようにして、S110の処理(「到達時間差計測」処理)が、行われる。
【0063】
S105の後、第1測定器200aは、S110の処理(「到達時間差計測」処理)と並行して、「全体時間計測」処理を行う(S115参照)。この処理は、以下のようにして行われる。
【0064】
すなわち、第1測定器200aは、受信部225が、常時、線路10を伝搬する伝搬信号を受信し、受信した伝搬信号をノイズ信号検出部260と到達時間差取得部270とに出力する。
【0065】
ノイズ信号検出部260は、伝搬信号の中にノイズ信号14(図2参照)が含まれている場合に、ノイズ信号14を検出し、ノイズ信号14の検出信号を全体時間計測部265の全体時間特定部266に出力する。
全体時間特定部266は、ノイズ信号検出部260からノイズ信号14の検出信号が入力されると、時計部205から、その時点の時刻(ここでは、時刻t4(図2参照))を取得して、時刻t3を図示せぬ格納部に格納する。
【0066】
この後、全体時間特定部266は、図示せぬ格納部から時刻t0と時刻t4とを読み出し、時刻t4から時刻t0を差し引いた時間(t4−t0)を、全体時間Tとして特定(算出)する。
【0067】
全体時間特定部266は、全体時間Tを特定すると、特定した全体時間Tを地絡位置到達時間特定部275に出力する。
地絡位置到達時間特定部275は、全体時間Tを図示せぬ格納部に格納する。
このようにして、S115の処理(「全体時間計測」処理)が、行われる。
【0068】
S115の後、第1測定器200aは、「到達時間差取得」処理を行う(S120参照)。この処理は、以下のようにして行われる。
【0069】
すなわち、到達時間差取得部270は、伝搬信号の中に到達時間差通知信号が含まれている場合に、到達時間差通知信号検出部271が、到達時間差通知信号を検出し、到達時間差通知信号から到達時間差Δtsを抽出する。そして、到達時間差取得部270は、到達時間差Δtsを、地絡位置到達時間特定部275に出力する。なお、到達時間差取得部270は、第1測定器200aを操作する人物が入力部272から到達時間差Δtsを入力した場合に、その入力された到達時間差Δtsを地絡位置到達時間特定部275に出力する。
地絡位置到達時間特定部275は、到達時間差取得部270から到達時間差Δtsが入力されると、到達時間差Δtsを図示せぬ格納部に格納する。
このようにして、S120の処理(「到達時間差取得」処理)が、行われる。
【0070】
S120の後、第1測定器200aは、「信号の地絡位置到達時間特定」処理を行う(S125参照)。この処理は、以下のようにして行われる。
【0071】
すなわち、地絡位置到達時間特定部275は、図示せぬ格納部から全体時間Tと到達時間差Δtsとを読み出し、全体時間Tから到達時間差Δtsを差し引いた時間の半分の値(「(T−Δts)/2」)を、信号の地絡位置到達時間Txsとして特定(算出)する。
地絡位置到達時間特定部275は、信号の地絡位置到達時間Txsを特定すると、特定した信号の地絡位置到達時間Txsを地絡位置標定部280に出力する。
このようにして、S125の処理(「信号の地絡位置到達時間特定」処理)が、行われる。
【0072】
S125の後、第1測定器200aは、「地絡位置標定」処理を行う(S130参照)。この処理は、以下のようにして行われる。
【0073】
すなわち、地絡位置標定部280は、地絡位置到達時間特定部275から信号の地絡位置到達時間Txsが入力されると、前記した式(1)によって、地絡位置を標定する。
地絡位置標定部280は、地絡位置を標定すると、標定した第1測定器200aから地絡位置までの距離Xsを表示部285に出力し、表示部285に距離Xsを表示させる。
このようにして、S130の処理(「地絡位置標定」処理)が、行われる。
【0074】
以上の通り、本実施形態1に係る地絡位置標定システム100によれば、第1測定器200及び第2測定器300から第1測定器200と第2測定器300との間で時刻を同期させるための仕組みやGPS受信機等を削除することができ、これにより、第1測定器及び第2測定器の構成を単純化・小型化することができる。
【0075】
この地絡位置標定システム100によれば、特許文献1に開示されたシステムに比べて、(1)機器を製造するためのコストを低減することができ、(2)GPS用の測地衛星からの電波を受信できない場所でも地絡位置を標定することができ、(3)機器を運搬したり設置したりするための操作者の作業負担を軽減することができる。
また、この地絡位置標定システム100によれば、非特許文献1に開示されたシステムに比べて、(1)機器を製造するためのコストを低減することができ、(2)GPS用の測地衛星からの電波を受信できない場所でも地絡位置を標定することができる。
また、この地絡位置標定システム100によれば、非特許文献2に開示されたシステムに比べて、(1)機器を製造するためのコストを低減することができ、(2)光ファイバケーブルを布設するための作業者の作業負担をなくすことができる。
【0076】
[実施形態2]
本実施形態2は、第2測定器300から時計部340を削除して、第2測定器300の構成を簡略化するためのものである。本実施形態2は、到達時間差計測部350がタイマ354(図6参照)として構成されていることを特徴にしている。
【0077】
以下、図6を参照して、本実施形態2に係る第2測定器300bの構成及び動作につき説明する。図6は、実施形態2に係る地絡位置標定システムの構成図である。なお、ここでは、実施形態1と相違する構成及び動作を重点的に説明し、実施形態1と同様の構成及び動作については、前記した実施形態1の構成及び動作を本実施形態2の構成及び動作に読み替えるものとして、詳細な説明を省略する。
【0078】
図6に示すように、第2測定器300bは、実施形態1に係る第2測定器300a(図5参照)と比較すると、時計部340が削除され、到達時間差計測部350がタイマ354として構成されている点で相違している。
【0079】
タイマ354は、到達時間差Δtsを計測する機能手段である。タイマ354は、電気信号12の受信を契機にして、到達時間差Δtsの計測動作を開始し、ノイズ信号13の受信を契機にして、到達時間差Δtsの計測動作を停止し、その値を保持する。これにより、タイマ354は、動作の開始から停止までの時間を、到達時間差Δtsとして計測する。
【0080】
本実施形態2では、第2測定器300bは、電気信号検出部320のパルス信号検出部321が、伝搬信号の中から電気信号12を検出すると、電気信号12の検出信号をタイマ354に出力する。これにより、タイマ354は、到達時間差Δtsの計測動作を開始する。
【0081】
また、第2測定器300bは、ノイズ信号検出部330が、伝搬信号の中からノイズ信号13を検出すると、ノイズ信号13の検出信号をタイマ354に出力する。これにより、タイマ354は、到達時間差Δtsの計測動作を停止する。
【0082】
この第2測定器300bは、実施形態1に比べて、到達時間差計測部350の構成が単純化され、さらに、時計部340が削除されている。そのため、第2測定器300bは、故障しにくい。また、第2測定器300bは、構成要素が少ないので、処理速度を向上させることができる。
【0083】
この後、第2測定器300bは、計測動作の開始から停止までの時間を、到達時間差Δtsとして、到達時間差通知部360に出力する。そして、第2測定器300bは、実施形態1の第2測定器300aと同様に、到達時間差通知部360の到達時間差通知信号生成部361が到達時間差通知信号を生成し、送信部370が、線路10を介して、到達時間差通知信号を送信する。
【0084】
以下、本実施形態2に係る第1測定器200は、実施形態1の第1測定器200aと同様に動作して、地絡位置を標定する。
【0085】
以上の通り、本実施形態2によれば、実施形態1と同様に、第1測定器200及び第2測定器300から第1測定器200と第2測定器300との間で時刻を同期させるための仕組みやGPS受信機等を削除することができ、これにより、第1測定器及び第2測定器の構成を単純化・小型化することができる。
【0086】
しかも、本実施形態2に係る第2測定器300bによれば、実施形態1に係る第2測定器300aに比べて、構成が簡略化されているため、故障の発生を抑制することができ、かつ、処理速度を向上させることができる。
【0087】
[実施形態3]
本実施形態3は、実施形態2と同様に、第2測定器300から時計部340を削除して、第2測定器300の構成を簡略化するためのものである。本実施形態3は、電気信号12として、周波数が時間の経過と共に周期的にノコギリ歯状に変動するパルス信号(以下、単に「周波数変動波」と称する)を用いることを特徴にしている。
【0088】
以下、図7乃至図9を参照して、本実施形態3に係る地絡位置標定システムの構成及び動作につき説明する。図7及び図8は、それぞれ、実施形態3に係る地絡位置標定システムの構成図である。図7は、本実施形態3に係る第1測定器200cの構成を示している。一方、図8は、本実施形態3に係る第2測定器300cの構成を示している。図9は、実施形態3に係る地絡位置標定システムの動作説明図である。なお、ここでは、実施形態1と相違する構成及び動作を重点的に説明し、実施形態1と同様の構成及び動作については、前記した実施形態1の構成及び動作を本実施形態3の構成及び動作に読み替えるものとして、詳細な説明を省略する。
【0089】
図7に示すように、本実施形態3に係る第1測定器200cは、実施形態1に係る第1測定器200a(図4参照)と比較すると、電気信号生成部210が周波数変動波生成部212として構成されている点で相違している。
【0090】
周波数変動波生成部212は、周波数変動波(すなわち、周波数が時間の経過と共に周期的にノコギリ歯状に変動するパルス信号)を生成する機能手段である。
【0091】
図8に示すように、本実施形態3に係る第2測定器300cは、実施形態1に係る第2測定器300a(図5参照)と比較すると、電気信号検出部320及び時計部340が削除され、到達時間差計測部350が周波数分析部355、周波数対応時間情報格納部356、及び到達時間差特定部357として構成されている点で相違している。
【0092】
周波数分析部355は、機能手段である。
周波数対応時間情報格納部356は、周波数変動波の周波数とその周波数に対応する時間(周波数変動波の立ち上がりからの経過時間)との関係を表す情報(以下、「周波数対応時間情報」と称する)を予め格納する記憶手段である。
到達時間差特定部357は、到達時間差Δtsを特定する機能手段である。
【0093】
本実施形態3では、第1測定器200cは、電気信号生成部210の周波数変動波生成部212が、周波数変動波を生成する。周波数変動波は、図9に示すように、信号の立ち上がりから所定時間経過するまでは、周波数が、時間の経過と共に0Hzから一定の割合で増加し、信号の立ち上がりから所定時間すると、周波数が、0Hzに立ち下がる動作を、繰り返すパルス信号である。
【0094】
第1測定器200cは、周波数変動波を生成すると、送信部215が、線路10を介して、周波数変動波を電気信号12として第2測定器300cに送信する。
【0095】
第2測定器300cは、受信部310が、常時、線路10を伝搬する伝搬信号を受信し、受信した伝搬信号を、到達時間差計測部350の周波数分析部355と、ノイズ信号検出部330とに出力する。
【0096】
到達時間差計測部350の周波数分析部355は、受信部310から伝搬信号が入力されると、伝搬信号の先頭部分の周波数を分析する。この伝搬信号の先頭部分が、周波数変動波の先頭部分となっている。ここでは、伝搬信号の先頭部分の周波数が「Ft2」であるものとする。この周波数Ft2は、第2測定器300cが周波数変動波の受信を開始した時点での周波数を表している。
周波数分析部355は、周波数Ft2を到達時間差特定部357に出力する。
到達時間差特定部357は、周波数Ft2を図示せぬ格納部に格納する。
【0097】
一方、ノイズ信号検出部330は、伝搬信号の中にノイズ信号13(図2参照)が含まれている場合に、ノイズ信号13を検出し、ノイズ信号13の検出信号を到達時間差計測部350の周波数分析部355に出力する。
周波数分析部355は、ノイズ信号検出部330からノイズ信号13の検出信号が入力されると、その時点をノイズ信号13の検出時とし、その時点での伝搬信号の周波数を分析する。ここでは、ノイズ信号13の検出時の周波数が「Ft3」であるものとする。この周波数Ft3は、第2測定器300cがノイズ信号13を受信した時点での周波数を表している。
周波数分析部355は、周波数Ft3を到達時間差特定部357に出力する。
到達時間差特定部357は、周波数Ft3を図示せぬ格納部に格納する。
【0098】
この後、到達時間差特定部357は、図示せぬ格納部から周波数Ft2と周波数Ft3とを読み出すとともに、周波数対応時間情報格納部356に予め格納された周波数対応時間情報を参照して、周波数Ft2に対応する時間T2(図9参照)と周波数Ft3に対応する時間T3(図9参照)とを割り出す。
【0099】
例えば、図9に示す周波数Ft2が「500Hz」であり、時間T2が「2μs」であり、周波数Ft3が「1000Hz」であり、時間T3が「4μs」であるものとする。この場合に、到達時間差特定部357は、周波数Ft2に対応する時間T2として「2μs」を、また、周波数Ft3に対応する時間T3として「4μs」を割り出す。
【0100】
到達時間差特定部357は、時間T2と時間T3とを割り出すと、時間T3から時間T2を差し引いた時間(T3−T2)を特定(算出)する。この時間(T3−T2)は、第2測定器300cが電気信号12(周波数変動波)を受信してからノイズ信号13を受信するまでに要した時間(すなわち、到達時間差Δts)を表している。
【0101】
到達時間差特定部357は、時間(T3−T2)を特定すると、特定した時間(T3−T2)を到達時間差Δtsとして到達時間差通知部360の到達時間差通知信号生成部361に出力する。そして、第2測定器300cは、実施形態1の第2測定器300aと同様に、到達時間差通知部360の到達時間差通知信号生成部361が到達時間差通知信号を生成し、送信部370が、線路10を介して、到達時間差通知信号を送信する。
【0102】
以下、第1測定器200cは、実施形態1の第1測定器200aと同様に動作して、地絡位置を標定する。
【0103】
以上の通り、本実施形態3によれば、実施形態1と同様に、第1測定器200及び第2測定器300から第1測定器200と第2測定器300との間で時刻を同期させるための仕組みやGPS受信機等を削除することができ、これにより、第1測定器及び第2測定器の構成を単純化・小型化することができる。
【0104】
しかも、本実施形態3に係る第2測定器300cによれば、実施形態1に係る第2測定器300aに比べて、時計部340が削除されて、構成が簡略化されているため、故障の発生を抑制することができる。
【0105】
[実施形態4]
本実施形態4は、操作者が地絡の発生を見逃す可能性がある場合に、それを回避するためのものである。
【0106】
以下、図10を参照して、本実施形態4に係る地絡位置標定システムの構成及び動作につき説明する。図10は、実施形態4に係る地絡位置標定システムの構成図である。
【0107】
本実施形態4は、図10に示すように、実施形態1の地絡位置標定システム100に、地絡検出リレー400を組み合わせたものである。
地絡検出リレー400は、地絡の発生を検出する装置である。地絡検出リレー400は、線路10の第1測定器200側に設置される。この地絡検出リレー400は、公知の装置であるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0108】
本実施形態4は、第1測定器200及び第2測定器300による地絡位置の標定に加えて、地絡検出リレー400による地絡の発生の検出も行う。これにより、操作者は、地絡の発生の有無を確実に認識することができる。
そのため、本実施形態4は、操作者が地絡の発生を見逃す可能性がある場合(例えば、第1測定器200によって標定された地絡位置が第1測定器200に非常に近い場合等)であっても、操作者が地絡の発生を見逃すのを回避することができる。
【0109】
以上の通り、本実施形態4によれば、実施形態1と同様に、第1測定器200及び第2測定器300から第1測定器200と第2測定器300との間で時刻を同期させるための仕組みやGPS受信機等を削除することができ、これにより、第1測定器及び第2測定器の構成を単純化・小型化することができる。
【0110】
しかも、本実施形態4によれば、操作者が地絡の発生を見逃す可能性がある場合であっても、操作者が地絡の発生を見逃すのを回避することができるため、地絡位置標定システム100の信頼度を向上させることができる。
【0111】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、第2測定器300は、計測した到達時間差Δtsを表示するための表示部を備える構成にしてもよい。
また、例えば、実施形態4に係る地絡検出リレー400は、実施形態2又は実施形態3の第1測定器200及び第2測定器300と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0112】
10 電源供給線路(線路)
12 電気信号
13 地絡位置から第2測定器側に進行するノイズ信号
14 地絡位置から第1測定器側に進行するノイズ信号
200(200a,200c) 第1測定器
205 時計部
210 電気信号生成部
211 パルス信号生成部
212 周波数変動波生成部
215 送信部
225 受信部
260 ノイズ信号検出部
265 全体時間計測部
266 全体時間特定部
270 到達時間差取得部
271 到達時間差通知信号検出部
272 入力部
275 地絡位置到達時間特定部
280 地絡位置標定部
285 表示部
300(300a,300b,300c) 第2測定器
310 受信部
320 電気信号検出部
321 パルス信号検出部
330 ノイズ信号検出部
340 時計部
350 到達時間差計測部
351 パルス信号受信時刻判定部
352 ノイズ信号受信時刻判定部
353,357 到達時間差特定部
354 タイマ
355 周波数分析部
356 周波数対応時間情報格納部
360 到達時間差通知部
361 到達時間差通知信号生成部
370 送信部
400 地絡検出リレー
Xs 第1測定器から地絡位置までの距離(地絡位置)
Δts 第2測定器での電気信号到達時刻とノイズ信号到達時刻との時間差
ts 地絡位置でのノイズ信号の発生時刻(地絡時刻)
t0 第1測定器での電気信号の送信開始時刻
t1 第1測定器でのノイズ信号の仮想送信時刻
t2 第2測定器での電気信号の受信開始時刻
t3 第2測定器でのノイズ信号の受信時刻
t4 第1測定器でのノイズ信号の受信時刻


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源供給線路の一端側に設置される第1測定器と他端側に設置される第2測定器とを用いて、当該電源供給線路に発生する地絡の位置を標定する地絡位置標定方法において、
前記第1測定器は、所定の電気信号を生成して、前記電源供給線路を介して、当該電気信号を前記第2測定器に送信し、
前記第2測定器は、当該第2測定器が前記電気信号を受信してから前記地絡によって発生するノイズ信号を受信するまでに要した時間を到達時間差として計測し、
前記第1測定器は、当該第1測定器が前記電気信号を送信してから前記ノイズ信号を受信するまでに要した時間を全体時間として計測するとともに、前記第2測定器によって計測された前記到達時間差を取得し、さらに、当該第1測定器から前記地絡の位置までの距離をXsとし、前記到達時間差をΔtsとし、前記全体時間をTとし、前記電源供給線路を伝搬する信号の速度をCとする場合に、以下の式(1)によって、前記地絡の位置を標定する
ことを特徴とする地絡位置標定方法。
Xs=C×(T−Δts)/2 …(1)
【請求項2】
請求項1に記載の地絡位置標定方法において、
前記第1測定器は、正弦波状のパルス信号として、前記電気信号を生成する
ことを特徴とする地絡位置標定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の地絡位置標定方法において、
前記第1測定器は、周波数が時間と共に周期的にノコギリ歯状に変動するパルス信号として、前記電気信号を生成する
ことを特徴とする地絡位置標定方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の地絡位置標定方法において、
前記第1測定器は、前記電源供給線路を介して、前記第2測定器から当該第1測定器に送信された前記到達時間差を受信することによって、前記到達時間差を取得する
ことを特徴とする地絡位置標定方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の地絡位置標定方法において、
前記第1測定器は、当該第1測定器に備えられた入力部が、操作者による前記到達時間差の入力を受け付けることによって、前記到達時間差を取得する
ことを特徴とする地絡位置標定方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の地絡位置標定方法において、
さらに、地絡の発生を検出する地絡検出リレーを用い、
前記第1測定器は、前記地絡検出リレーによって、前記電源供給線路上で地絡の発生が検出された場合に、前記地絡の位置を標定する
ことを特徴とする地絡位置標定方法。
【請求項7】
電源供給線路の一端側に設置される第1測定器と他端側に設置された第2測定器とを用いて、当該電源供給線路に発生する地絡の位置を標定する地絡位置標定システムにおいて、
前記第1測定器は、
所定の電気信号を生成する電気信号生成部と、
前記電源供給線路を介して、前記電気信号生成部によって生成された前記電気信号を前記第2測定器に送信する第1送信部と、
前記電源供給線路上を伝搬する伝搬信号を受信する第1受信部と、
前記第1受信部によって受信された前記伝搬信号の中から、前記電気信号に応じて前記地絡によって発生するノイズ信号を検出する第1ノイズ信号検出部と、
当該第1測定器が前記電気信号を送信してから前記ノイズ信号を受信するまでに要した時間を全体時間として計測する全体時間計測部と、
前記地絡の位置を標定する地絡位置標定部とを備え、
前記第2測定器は、
前記電源供給線路上を伝搬する、前記電気信号及び前記ノイズ信号を含む伝搬信号を受信する第2受信部と、
前記第2受信部によって受信された前記伝搬信号の中から、前記ノイズ信号を検出する第2ノイズ信号検出部と、
当該第2測定器が前記電気信号を受信してから前記ノイズ信号を受信するまでに要した時間を到達時間差として計測する到達時間差計測部とを備え、かつ、
前記第1測定器の前記地絡位置標定部は、前記第2測定器の前記到達時間差計測部によって計測された前記到達時間差を取得し、さらに、当該第1測定器から前記地絡の位置までの距離をXsとし、前記到達時間差をΔtsとし、前記全体時間をTとし、前記電源供給線路を伝搬する信号の速度をCとする場合に、以下の式(1)によって、前記地絡の位置を標定する
ことを特徴とする地絡位置標定システム。
Xs=C×(T−Δts)/2 …(1)
【請求項8】
請求項7に記載の地絡位置標定システムにおいて、
前記第1測定器の前記全体時間計測部は、時刻を計測する第1時計部を備えるとともに、
前記第2測定部の前記到達時間差計測部は、時刻を計測する第2時計部を備えており、
前記第1測定器の前記電気信号生成部は、前記第1時計部によって計測された時刻に応じて、正弦波状のパルス信号として、前記電気信号を生成し、かつ、
前記第2測定部の前記到達時間差計測部は、前記第2時計部によって計測された時刻に基づいて、前記パルス信号の受信時刻及び前記ノイズ信号の受信時刻を計測し、前記ノイズ信号の受信時刻から前記パルス信号の受信時刻を差し引くことによって、前記到達時間差を計測する
ことを特徴とする地絡位置標定システム。
【請求項9】
請求項7に記載の地絡位置標定システムにおいて、
前記第1測定器の前記全体時間計測部は、時刻を計測する第1時計部を備えるとともに、
前記第2測定部の前記到達時間差計測部は、時間を計測するタイマ部を備えており、
前記第1測定器の前記電気信号生成部は、前記第1時計部によって計測された時刻に応じて、正弦波状のパルス信号として、前記電気信号を生成し、かつ、
前記第2測定部の前記到達時間差計測部は、前記タイマ部が前記パルス信号の受信時に時間の計測の開始しかつ前記ノイズ信号の受信時に時間の計測の終了することによって、前記到達時間差を計測する
ことを特徴とする地絡位置標定システム。
【請求項10】
請求項7に記載の地絡位置標定システムにおいて、
前記第1測定器の前記全体時間計測部は、時刻を計測する第1時計部を備えるとともに、
前記第2測定部の前記到達時間差計測部は、信号の周波数を分析する周波数分析部を備えており、
前記第1測定器の前記電気信号生成部は、前記第1時計部によって計測された時刻に応じて、周波数が時間と共に周期的にノコギリ歯状に変動するパルス信号として、前記電気信号を生成し、かつ、
前記第2測定部の前記到達時間差計測部は、前記周波数分析部によって、前記周波数がノコギリ歯状に変動するパルス信号の受信時の周波数及び前記ノイズ信号の受信時の周波数を検出し、双方の周波数間の変化量に応じた時間を特定することによって、前記到達時間差を計測する
ことを特徴とする地絡位置標定システム。
【請求項11】
請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の地絡位置標定システムにおいて、
前記第2測定器は、さらに、前記電源供給線路を介して、前記到達時間差計測部によって計測された前記到達時間差を前記第1測定器に送信する第2送信部を備えており、
前記第1測定器は、前記第1受信部が、前記電源供給線路を介して、前記第2測定器から当該第1測定器に送信された前記到達時間差を受信することによって、前記到達時間差を取得する
ことを特徴とする地絡位置標定システム。
【請求項12】
請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の地絡位置標定システムにおいて、
前記第1測定器は、さらに、操作者が操作して情報を入力する入力部を備えており、
前記第1測定器は、前記入力部が、前記操作者による前記到達時間差の入力を受け付けることによって、前記到達時間差を取得する
ことを特徴とする地絡位置標定システム。
【請求項13】
請求項7乃至請求項12のいずれか一項に記載の地絡位置標定システムにおいて、
さらに、前記電源供給線路上に、地絡の発生を検出する地絡検出リレーを有する
ことを特徴とする地絡位置標定システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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