説明

地震災害用スプリンクラーと飲料水の貯留与圧タンク

【課題】 常時から自動的に無電力、無動力で水道水を貯留与圧タンク内へ与圧状態で貯留しておき、地震発生時の建物の火災に対してスプリンクラーへの給水が無電力、無動力で行え、迅速な初期消火を可能にして建物及び人命を火災から救済することができる地震災害用スプリンクラーと飲料水の貯留与圧タンクを提供する。
【解決手段】 水道本管1と逆止弁3を介して入口4が接続され、入口4から流入した水を収納してこれに与圧を与える貯留与圧タンク5の下部出口7と、建物に設置されるスプリンクラー6を配管で接続し、この配管の途中に設けた絞り部9の位置に、スプリンクラー6に向かう水流に消火濃厚原液を供給する消火濃厚原液タンク10を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震による災害時に停電や断水が発生しても、飲料水の確保と共に、建物に生じた火災の消火が、電気や機械動力を用いることなく確実迅速に行える地震災害用スプリンクラーと飲料水の貯留与圧タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
地震による最大の被害は人命と建物の全半壊であるが、その後に起こる二次災害として建物からの出火が人命の被害を大きくする要因になっている。
【0003】
また、災害時の断水に対して、飲料水の確保は生活並びに社会的にも最低にして最大の必須である。
【0004】
従来、建物に設置されたスプリンクラーへの給水は、水道管と接続した貯水タンクとスプリンクラーを配管で接続し、火災発生の熱でスプリンクラーが開栓すると、貯水タンクの水をポンプで圧送し、スプリンクラーに水道水を供給するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、地震が発生した場合、停電や水道本支管の断水は避けることができず、生活に必須となる飲料水はなく、また、スプリンクラーに水を供給できなくなり、飲料水の確保と、建物からの出火を防いで人命の被害を少なくする目的を達成することができないという問題がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、常時から自動的に無電力、無動力で水道水を与圧状態で貯留しておき、地震発生時の飲料水の確保と、建物の火災に対してスプリンクラーへの給水が無電力、無動力で行えるようにし、迅速な初期消火を可能にして建物及び人命を火災から救済することができる地震災害用スプリンクラーと飲料水の貯留与圧タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するため、この発明は、入口から流入した水を収納してこれに与圧を与える貯留与圧タンクの入口に逆止弁を介して水道本管を接続し、前記貯留与圧タンクの下部出口に、建物に設置される炊事飲料用栓及びスプリンクラーを配管で接続し、このスプリンクラーを接続する配管の途中に、スプリンクラーに向けての水流の流速を速くする絞り部を設け、この絞り部の位置に、スプリンクラーに向かう水流に消火濃厚原液を供給する消火濃厚原液タンクを接続した構成を採用したものである。
【0008】
上記貯留与圧タンクが、タンク本体の内部に、飲用水の圧力で封入した気体が圧縮されることにより蓄圧する蛇腹伸縮袋を収納して形成されているようにしたり、上記貯留与圧タンクとスプリンクラーを接続する配管の途中に、貯留与圧タンク内の水を取出すための開閉栓と止水栓及び逆止弁を設置した構造とすることができる。
【0009】
ここで、上記貯留与圧タンクは、タンク本体の下部に入口と出口が設けられ、入口から流入した水道水は、タンク本体の内部に組み込んだ蛇腹伸縮袋を押上げて圧縮し、この蛇腹伸縮袋に封入した気体を圧縮することで蓄圧し、収納した水に水道菅の水圧と同圧の与圧を与えることになり、飲料水の供給と共に、火災発生時にスプリンクラーが開栓すると上記与圧された圧力水をスプリンクラーに供給することができ、タンク本体から水が流出すると気体の膨張で蛇腹伸縮袋が伸長し、漸次減圧されるが、圧力のある水を連続して供給することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、逆止弁を介して水道水を貯留与圧タンクに入れ、タンク内部に予め一定量の空気を入れた蛇腹形空気袋を水道水と同圧に圧縮して、常に自動的に無電力、無動力にて水道水を与圧状態で貯留しておくことができ、地震発生時に水道の断水があっても、圧力のある飲料水の供給と、建物火災に対してスプリンクラーの自動放射を行い、迅速な初期消火の実現をなさしめる。
【0011】
また、貯留与圧タンクとスプリンクラーを接続する配管の途中に、スプリンクラーに向けての水流の流速を速くする絞り部を設け、この絞り部の位置に、スプリンクラーに向かう水流に消火濃厚原液を供給する消火濃厚原液タンクを接続したので、スプリンクラーに対して初期消火に必要な流速と流量の水を供給でき、しかも、噴射する水に消火濃厚原液を混入供給することで、火事は最初の30秒といわれるが、瞬時に作用する初期消火をもつて火災の被害から救済できる。
【0012】
更に、飲料水の供給と特にスプリンクラーの自動放射は、地震の有無に関係なく、いつでも対処でき、特に一般家屋におけるスプリンクラーの設置は、極めて少ないと言われているが、消火液混入のスプリンクラーは、被害を最少に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1のように、地震災害用スプリンクラーと飲料水の貯留与圧タンクは、水道本管1と減圧弁2及び逆止弁3を介して下部の入口4が接続され、この入口4から流入した水道水を収納してこれに与圧を与える貯留与圧タンク5と、建物に設置されるスプリンクラー6と、前記貯留与圧タンク5の下部出口7とスプリンクラー6を接続する配管8とで形成され、前記配管8の途中に、スプリンクラー6に向けての水流の流速を速くする絞り部9を設け、この絞り部9の位置に、スプリンクラー6に向かう水流に消火濃厚原液を混入供給する消火濃厚原液タンク10が接続されている。
【0015】
上記貯留与圧タンク5は、タンク本体5aの下部に入口4と出口7が設けられ、入口4から流入した水道水は、タンク本体5aの内部に組み込んだゴムや樹脂製の蛇腹伸縮袋11を押上げて圧縮し、この蛇腹伸縮袋11に封入した空気のような気体を圧縮することで蓄圧し、収納した水に水道本管1の水圧と同圧の与圧を与えるようになっている。
【0016】
なお、タンク本体5aの上部には、蛇腹伸縮袋11内に予め1キロ位の空気を補充するための空気吹込み口12が設けてある。それがため、タンク本体5a内の水は最後まで圧水となる。
【0017】
上記貯留与圧タンク5は、火災発生時にスプリンクラー6が開栓すると上記与圧された圧力水をスプリンクラー6に供給することができ、タンク本体5aから水が流出すると気体の膨張で蛇腹伸縮袋11が伸長し、流出に比して漸次減圧する水を連続して供給することになるが、最後まで圧力水となる。
【0018】
上記貯留与圧タンク5とスプリンクラー6を接続する配管8の途中には、貯留与圧タンク5内の水を取出して洗濯や散水に用いるための開閉栓13と、スプリンクラー6のメンテナンス時の給水を停止する止水栓14と、逆流防止用の逆止弁15が設置されている。
【0019】
図2のように、貯留与圧タンク5とスプリンクラー6を接続する配管8は、スプリンクラー6の手前で径が細くなり、スプリンクラー6に向けての水流の流速を速くして負圧を生じさせる絞り部9を設け、この絞り部9の位置に、スプリンクラー6に向かう水流に炭酸カリウム等の消火濃厚原液を混入供給する消火濃厚原液タンク10を接続し、消火濃厚原液タンク10は内部に昇降動する蓋部材16があり、下部の部屋が配管8の上流側と細いパイプ17でつながり、配管8の水圧と同圧になっていると共に、上部の部屋に消火濃厚原液を収納し、前記消火濃厚原液タンク10の上部は調整弁18を備えた小径パイプ19で絞り部9の外側につながっている。
【0020】
スプリンクラー6が火災のために開栓して放水を開始すると、絞り部9を流れる水流で負圧が発生し、この負圧によって消火濃厚原液タンク10内の消火濃厚原液が吸い出され、スプリンクラー6の放水に混入することにより、水道水の消火液となり、初期消火が確実に得られるようにする。
【0021】
なお、スプリンクラー6の放水がなければ、消火濃厚原液は回路内に混入せず、貯留与圧タンク5への逆流はないが、逆止弁15は万一の安全のために設けてある。
【0022】
図1は、地震発生後の飲料水の確保のため、水道本管1に減圧弁2及び逆止弁20を介して飲料水の貯留与圧タンク21を接続し、飲料水をこの貯留与圧タンク21内に常時貯留するようにした例を示している。
【0023】
この飲料水の貯留与圧タンク21は、タンク本体21aが必要に応じた容積を有し、下部入口22を水道本管1に減圧弁2及び逆止弁20を介して接続し、下部の出口23に接続した飲料水取出管24に、屋外給水栓25と、地震の揺れで作用する自動揺れ検知逆止弁26及び炊事用開閉栓27とが設けられ、入口22から流入した水道水は、前記タンク本体21aの内部に組み込んだゴムや樹脂製の蛇腹伸縮袋28を押上げて圧縮し、この蛇腹伸縮袋28に封入した空気のような気体を圧縮することで蓄圧し、収納した水に水道本管の水圧と同圧の与圧を与えるようになっており、タンク本体21aの上部には、蛇腹伸縮袋28内に予め1キロ圧位の空気を補充するための空気吹込み口29が設けてある。
【0024】
上記自動揺れ検知逆止弁26は、図3のように、上下端がホース接続筒26aと26bとなる通水路26cの途中に弁体26dと弁座26eを設け、弁体26dにスプリング26fで弁座26eに圧接する方向の移動弾性を付勢し、スプリング26fを圧縮してこの弁体26dを常時開弁位置にトリガー26gで係合保持し、トリガー26gの近接位置に揺れ鋼球26hを揺動可能に吊り下げ配置し、地震の振動で揺れ鋼球26hがトリガー26gの末端に当接すると、トリガー26gは弁体26dの係合保持を解き、弁体26dは弁座26eに圧接して通水路26cを遮断するようになっている。
【0025】
この自動揺れ検知逆止弁26を回路に設けることにより、炊事用開閉栓27が使用中で開栓されていても、自動的に回路は閉鎖され、飲料水の貯留与圧タンク21からの不必要な圧力水の流出を防ぐことができる。
【0026】
なお、上記貯留与圧タンク5と飲料水の貯留与圧タンク21の対応力は、水道圧力を4キロとすれば、それに耐えるようになっているが、減圧弁2は、何らかの異常でそれを越す高圧の水道水が送られてきたとき、これを減圧してタンクを保護する調整弁の役目をする。
【0027】
上記貯留与圧タンク5と飲料水の貯留与圧タンク21は、一般家屋だけでなく高層マンション、事務所などの各階に設置しておき、水道本管1と貯留与圧タンク5やスプリンクラーへの回路は、建物の全半壊にも送水できるようゴムホース等を用いた配管8でスプリンクラー6と接続し、貯留与圧タンク5内に与圧状態で貯留されている水は、開閉栓13によって洗濯や散水に用いる。
【0028】
また、飲料水の貯留与圧タンク21に与圧状態で貯留されている水は、屋外給水栓25と炊事用開閉栓27で取出し、炊事や飲用水として使用する。
【0029】
上記貯留与圧タンク5と飲料水の貯留与圧タンク21において、与圧状態で貯留されている水を取出すとき、水道管から通水されているので、常時一定圧力の圧力水を得ることができ、取出しを停止すると水道本管1から貯留与圧タンク5、21内に新たな水道水が補充され、これによって、常時適量の水道水を確保できる。
【0030】
地震発生後の停電や断水が発生した時、貯留与圧タンク5と飲料水の貯留与圧タンク21内の水にて、常時適量の飲料水とスプリンクラー6に対する消火水を確保することができると共に、この貯留した与圧水を無電力、無動力で取出して使用することができる。
【0031】
また、貯留与圧タンク5と飲料水の貯留与圧タンク21に常時から自動的に無電力、無動力で水道水を水道本管と同じ与圧状態で貯留しておくことで、飲料水の確保と、与圧状態で貯留水を地震発生時の建物の火災に対してスプリンクラー6へ無電力、無動力で給水することが可能になり、停電や断水が発生しても、迅速な初期消火が自動的に実現できると共に、スプリンクラー6に対して初期消火に必要な流速と流量の水を供給でき、しかも、噴射する水に消火濃厚原液を混入供給することで、瞬時に作用する初期消火をもつて火災の被害から建物及び人命を救済することができる。
【0032】
なお、上記貯留与圧タンク5と飲料水の貯留与圧タンク21は、図1のように、別々のタンクとする以外に、貯留与圧タンク5と飲料水の貯留与圧タンク21を一つの貯留与圧タンクで共用するようにしてもよく、この場合、貯留与圧タンクに接続するスプリンクラー6の配管と屋外給水栓25及び炊事用開閉栓27の配管は別々にするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】貯留与圧タンクと飲料水の貯留与圧タンクを併用した地震災害用スプリンクラーと飲料水の貯留与圧タンクの正面図
【図2】スプリンクラーとその配管の要部を示す縦断正面図
【図3】自動揺れ検知逆止弁の構造を示す縦断正面図
【符号の説明】
【0034】
1 水道本管
2 減圧弁
3 逆止弁
4 入口4
5 貯留与圧タンク
6 スプリンクラー
7 下部出口
8 配管
9 絞り部
10 消火濃厚原液タンク
11 蛇腹伸縮袋
12 空気吹込み口
13 開閉栓
14 止水栓
15 逆止弁
16 蓋部材
17 パイプ
18 調整弁
19 小径パイプ
20 逆止弁
21 飲料水の貯留与圧タンク
22 下部入口
23 下部の出口
24 飲料水取出管
25 屋外給水栓
26 自動揺れ検知逆止弁
27 炊事用開閉栓
28 蛇腹伸縮袋
29 空気吹込み口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口から流入した水を収納してこれに与圧を与える貯留与圧タンクの入口に逆止弁を介して水道本管を接続し、前記貯留与圧タンクの下部出口に、建物に設置される炊事飲料用栓及びスプリンクラーを配管で接続し、このスプリンクラーを接続する配管の途中に、スプリンクラーに向けての水流の流速を速くする絞り部を設け、この絞り部の位置に、スプリンクラーに向かう水流に消火濃厚原液を供給する消火濃厚原液タンクを接続した地震災害用スプリンクラーと飲料水の貯留与圧タンク。
【請求項2】
上記貯留与圧タンクが、タンク本体の内部に、飲用水の圧力で封入した気体が圧縮されることにより蓄圧する蛇腹伸縮袋を収納して形成されている請求項1に記載の地震災害用スプリンクラーと飲料水の貯留与圧タンク。
【請求項3】
上記貯留与圧タンクとスプリンクラーを接続する配管の途中に、貯留与圧タンク内の水を取出すための開閉栓と止水栓及び逆止弁を設置した請求項1又は2に記載の地震災害用スプリンクラーと飲料水の貯留与圧タンク。
【請求項4】
上記貯留与圧タンクと炊事飲料用栓を接続する回路の途中に自動揺れ検知逆止弁を設けた請求項1乃至3の何れかに記載の地震災害用スプリンクラーと飲料水の貯留与圧タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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