説明

均一で高強度のヤーンおよび繊維シートの作成のための方法

優れたヤーン間の繊度、テナシティおよび引張モジュラスの均一性を有する高強度ヤーンおよび均一な一方向繊維シートの製造のための方法。これらのヤーンおよび繊維シートから製造されるバリスティック複合材料は、弾道抵抗の改良された均一性を有する。延伸ヤーン、繊維シートおよびそれらから作られた製品は、以前の技術よりも均一であり、衝撃吸収および弾道抵抗を必要とする用途、例えばボディーアーマー、ヘルメット、ブレストプレート、ヘリコプターの座席、スポールシールド;複合材料のスポーツ用品、例えばカヤック、カヌー、自転車およびボート;ならびに釣り糸、帆、ロープ、縫合用の糸およびファブリックに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたヤーン間の繊度、テナシティおよび引張モジュラスの均一性を有する高強度ヤーンの製造のための方法、および均一な一方向繊維シートの製造のための方法に関する。これらのヤーンおよび繊維シートから製造されるバリスティック複合材料は、弾道抵抗(ballistic resistance)の改良された均一性を有する。
【0002】
本ヤーンおよび繊維シートは、衝撃吸収、貫通抵抗および弾道抵抗を必要とする用途、例えばボディーアーマー、ヘルメット、ブレストプレート、ヘリコプターの座席、スポールシールド;複合材料のスポーツ用品、例えばカヤック、カヌー、自転車およびボート;ならびに釣り糸、帆、ロープ、縫合用の糸およびファブリックに有用である。
【背景技術】
【0003】
本発明の目的のための高強度ヤーンは、ASTM D2256−02により測定される引張強さが最低でも17g/dであるヤーンである。そのようなヤーンの例は、KEVLAR(登録商標)ブランドのようなアラミド類、ZYLON(登録商標)ブランドのようなポリベンザゾール類(PBO)、M5(登録商標)ブランドのようなポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}、超高分子量ポリ(アルファ−オレフィン類)(UHMWPO)、ならびにそれらのブレンドおよび混合物である。超高分子量ポリオレフィン類には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(ブテン−1)、ポリ(4−メチル−ペンテン−1)、それらの共重合体、付加体、ブレンドおよび混合物が含まれる。
【0004】
高強度ヤーンは、織布の形で、およびクロスプライ一方向シートとしても衝撃抵抗製品および弾道抵抗製品に用いられる。織布は小程度、好ましくは約2.5回転/インチ(0.98回転/cm)未満の撚りを有する、あるいは米国特許5,773,370に記載されているようにからんでいるヤーンから生産されるのが好ましい。クロスプライ一方向シートは、米国特許4,916,000に記載されているような薄層に広げられたヤーンから生産されるのが好ましい。米国特許4,916,000の開示を、本明細書と矛盾しない程度まで本明細書に援用する。
【0005】
マルチフィラメント高強度ポリエチレンヤーンは、Honeywell International Inc.により超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)から商業的に生産されている。ゲル紡糸UHMWPO繊維は、UHMWPOの溶液を紡糸して溶液フィラメントにし、溶液フィラメントを冷却してゲル状態にして、次いで紡糸溶媒の一部または全てを除去することにより製造される。溶液フィラメント、ゲルフィラメントおよび固体フィラメントの1種類以上が、高度に配向された状態まで延伸される。ゲル紡糸過程が折りたたまれた鎖のラメラの形成を妨げ、より効率的に引張荷重を伝える引き伸ばされた鎖構造の形成を助ける。
【0006】
米国特許4,551,296、4,663,101、6,448,659および6,969,533ならびに米国出願11/393,218に、溶液フィラメント、ゲルフィラメントおよび固体フィラメントの3種類全ての延伸が記載されている。高分子量ポリエチレンヤーンの延伸のための方法は米国特許5,741,451に記載されている。より新しい延伸法が同時係属中の米国出願11/206,838に、および米国公開20050093200に記載されている。ポリエチレン繊維の延伸に役立つオーブンは、米国特許公開20040040176に記載されている。米国特許4,551,296、4,663,101、5,741,451、6,448,659および6,969,533、米国出願11/206,838および11/393,218ならびに米国公開20040040176および20050093200の開示を、本明細書と矛盾しない程度まで本明細書に援用する。
【0007】
これらの参考文献のそれぞれは技術水準の進歩を代表するものであったが、いずれも本発明の方法を示唆しておらず、いずれも本発明により満たされる要求の全てを満たすものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許5,773,370
【特許文献2】米国特許4,916,000
【特許文献3】米国特許4,551,296
【特許文献4】米国特許4,663,101
【特許文献5】米国特許6,448,659
【特許文献6】米国特許6,969,533
【特許文献7】米国出願11/393,218
【特許文献8】米国特許5,741,451
【特許文献9】米国出願11/206,838
【特許文献10】米国公開20050093200
【特許文献11】米国特許公開20040040176
【発明の概要】
【0009】
1態様において、本発明は、複数の実質的に等しいUHMWPOヤーンを、それらのヤーン間の均一性を保ち、かつその均一性を延伸ヤーンに繰り越す方式で同時に延伸するための方法である。特に、この態様は以下の段階を含む複数のUHMWPOヤーンを同時に延伸するための方法を含む:
a)デカリン中、135℃において測定した固有粘度が5dl/g〜45dl/gであるUHMWPOを含む、複数の実質的に等しいUHMWPOマルチフィラメント供給ヤーンを成形する、この供給ヤーンはASTM D2256−02により測定したテナシティが5g/d〜65g/d(0.43GPa〜5.56GPa)、繊度が100〜20,000であり、このヤーンのフィラメントは0.5〜100デニール/フィラメント(0.055〜11.1テックス/フィラメント)である;
b)ヤーンに撚れを付与することなくこの供給ヤーンを巻き上げる
c)ヤーンに撚れを付与することなく複数の供給ヤーンを巻き出す、ここで巻き出しトルクはそれぞれのヤーンに関して実質的に同じである;
d)複数の巻き出した供給ヤーンを同時にかつ連続的に、オーブンに入れ、オーブンを通過させ、オーブンから出す、ここでヤーンの通り道に沿って1個以上の区画が存在し、これらの区画は約100℃〜約165℃の範囲の温度を有し、ここでヤーンがこのオーブンから出る速度はヤーンがオーブンに入る速度より大きく、これらのヤーンはオーブンの中で延伸される;
e)張力の下で延伸ヤーンを冷却する;および
f)それらに撚れを付与することなく複数の延伸ヤーンを巻き上げる。
【0010】
他の態様において、本発明は、以下の段階を含む一方向繊維シートの形成のための方法である:
a)上記のように延伸されたUHMPO、ポリ(p−フェニレンテレレフタルアミド)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}ならびにそれらのブレンドおよび混合物から成るグループから選択された、複数の巻き上げられたマルチフィラメントの撚れのない高強度ヤーンを選択する;
b)ヤーンに撚れを付与することなく複数の高強度ヤーンを巻き出す、ここで巻き出しトルクはそれぞれのヤーンに関して実質的に同じである;
c)ヤーンを広げて並べそれらの構成要素であるフィラメントにし、実質的に平行なフィラメントの一方向シート様の列を形成する;
d)フィラメントに接着剤を塗布する;ならびに
e)フィラメントの列および接着剤を固めて単一の一方向繊維シートにする。
【0011】
本発明は上記の方法により製造される繊維シート製品を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の延伸法を実施する別の方式を図説したものである。図1は延伸オーブン50の外部の抑制ロール40および延伸ロール60の使用を表わしている。
【図2】図2は、本発明の延伸法を実施する別の方式を図説したものである。図2は延伸オーブン90の内部の延伸ロール80および外部の延伸ロール60両方の使用を表わしている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的に関して、繊維はその長さの寸法が幅および厚さの横断寸法よりもはるかに大きい細長い物体である。従って、繊維という用語にはフィラメント、リボン、ストリップおよび規則的または不規則な横断面を有するそれらと似た物が含まれる。ヤーンは多くの繊維またはフィラメントで構成される連続的なストランドである。ヤーンパッケージは巻心上に巻き取ったヤーンである。
【0014】
繊維産業において多くの異なる型のヤーンパッケージが知られており、用いられている。”Dictionary of Fiber and Textile Technology”, KoSa Communications and Public Affairs, Charlotte, N. C., 1999には、”チーズ”、”コーン”、”ホーザリーコーン(hosiery cone)”、”ワープワインドパッケージ(warp-wind package)”、”パイナップルパッケージ”、および”チューブ”として知られるパッケージ型が記載されている。”チューブ”または”チューブパッケージ”は、円筒形の巻心に巻き取ったヤーンの円筒状の積層である。
【0015】
多くの種類の繊維操作において、パッケージの末端からパッケージの軸に本質的に平行な方向にヤーンを引くことにより、固定されたパッケージからヤーンを巻き戻すのが通例である。この巻き戻し方はヤーンに撚れを生じさせる。あるいは、パッケージをその軸に関して回転させ、パッケージの軸に本質的に垂直な方向にヤーンの末端を引くことにより、パッケージからヤーンを巻き戻してもよい。本明細書で用いているように、この巻き戻し方を”巻き出し”と呼ぶ。本発明の目的に関して、もしヤーンがパッケージから巻き出される場合、巻き出しトルクは巻き出しヤーンの張力とパッケージの巻心の外側の直径の積である。クリールは、ヤーンパッケージを保持して複数のヤーンの末端が絡まることなく同時に巻き戻されることができるように設計された、通常は金属の枠組みである。本発明の方法は、巻き出しによりヤーンパッケージを巻き戻すように設計されたクリールを用いて実行することができる。
【0016】
ビームは、さらに先の過程の準備としてそれに非常に多数のヤーンが巻き上げられる、通常は金属の水平の円筒である。本発明の方法は、ビームから巻き出しによりヤーンを巻き戻すことにより実行してもよい。本発明の目的に関して、もしヤーンがビームから巻き出される場合、巻き出しトルクは巻き出しヤーンの張力とビームの外側の直径の積である。
【0017】
1態様において、本発明は、以下の段階を含む複数のUHMWPOヤーンを同時に延伸するための方法である:
a)デカリン中、135℃において測定した固有粘度が5dl/g〜45dl/gであるUHMWPOを含む、複数の実質的に等しいUHMWPOマルチフィラメント供給ヤーンを成形する、この供給ヤーンはASTM D2256−02により測定したテナシティが5g/d〜65g/d(0.43GPa〜5.56GPa)、繊度が100〜20,000であり、このヤーンのフィラメントは0.5〜100デニール/フィラメント(0.055〜11.1テックス/フィラメント)である;
b)ヤーンに撚れを付与することなくこの複数の供給ヤーンを巻き上げる;
c)ヤーンに撚れを付与することなく複数の供給ヤーンを巻き出す、ここで巻き出しトルクはそれぞれのヤーンに関して実質的に同じである;
d)複数の巻き出した供給ヤーンを同時にかつ連続的に、オーブンに入れ、オーブンを通過させ、オーブンから出す、ここでヤーンの通り道に沿って1個以上の区画が存在し、これらの区画は約100℃〜約165℃の範囲の区画温度であり、ここでヤーンがオーブンから出る速度はヤーンがオーブンに入る速度より大きく、これらのヤーンはオーブンの中で延伸される;
e)張力の下でそのように延伸されたヤーンを冷却する;および
f)それらに撚れを付与することなく複数の延伸ヤーンを巻き上げる。
【0018】
本発明の方法に用いられるUHMWPOは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(ブテン−1)、ポリ(4−メチル−ペンテン−1)、それらの共重合体および付加体から成るグループから選択されるのが好ましい。UHMWPOは、より好ましくは100炭素原子あたり1個未満の突き出た側基、さらに好ましくは300炭素原子あたり1個未満の側基、その上さらに好ましくは500炭素原子あたり1個未満の側基、最も好ましくは1000炭素原子あたり1個未満の側基を持つポリエチレンである。側基はC1−C10アルキル基、末端がビニルのアルキル基、ノルボルネン、ハロゲン原子、カルボニル、ヒドロキシル、エポキシドおよびカルボキシルを含んでいてよいが、それらに限られない。UHMWPOは少量の、通常は5wt.%未満、好ましくは3wt.%未満の添加物、例えば抗酸化剤、熱安定剤、着色剤、流動促進剤、溶剤、その他を含んでいてよい。UHMWPO供給ヤーンは米国特許4,551,296、4,663,101、6,448,659および6,969,533ならびに米国出願11/393,218に記載されている方法の内の1種類により成形されるのが好ましい。供給ヤーンは100〜20,000の繊度を有し、0.5〜100デニール/フィラメントのフィラメントで構成されるのが好ましい。供給ヤーンは100〜5,000の繊度を有し、2〜25デニール/フィラメントのフィラメントで構成されるのがより好ましい。
【0019】
複数の供給ヤーンは複数の別個のヤーンパッケージとして、あるいは1個以上のビーム上に巻き上げられるのが好ましい。供給ヤーンパッケージはチューブパッケージであるのが好ましい。複数の供給パッケージまたはビームは均一な長さのヤーンおよび均一な寸法を有するのが好ましい。いくつかのヤーンパッケージが連続するように結び、ヤーン同士を結ぶために延伸操作を止める必要がなく連続的に巻き戻すことを可能とする”尾”を作るために、供給ヤーンはヤーンの最初の数メートル程度が残りのヤーンが巻かれている場所の外側にあるように巻かれているのが好ましい。
【0020】
2〜1000本の供給ヤーンが同時に延伸されるのが好ましい。20〜500本の供給ヤーンが同時に延伸されるのがより好ましい。それぞれのビームは10〜1000本のヤーンを有するのが好ましい。それぞれの巻き出しクリールは10〜1000のパッケージ位置を有するのが好ましい。
【0021】
ビーム上のヤーンの巻き出しトルクは全てのヤーンに関して同じである。クリール上のヤーンに関する巻き出しトルクは、クリールのそれぞれの位置のスリップクラッチの個別の調節により、それぞれのヤーンに関して同じであるように設定することができる。全てのヤーンパッケージに関して同じ巻き出しトルクを同時に設定することができ、巻き戻しの間を通してトルクが一定であるような機構をクリールが有しているのが好ましい。そのような機構の単純な例は、一端でクリール構造に取り付けられており、それぞれのパッケージホルダーの一部である滑車の周りに巻きつけられている革のストラップから成る。革のストラップのもう一端は、それぞればねにより同じ可動性のフレームに取り付けられている。フレームはクリール構造内を自由にスライドすることができる。クリール構造内のフレームの位置は、ばねが伸びるように設定される。ばねがストラップを引き締めてストラップの滑車上での摩擦を生じさせ、同時にそれぞれのパッケージホルダーの巻き戻しトルクを設定する。この機構は、それぞれのパッケージに関して巻き出しトルクが実質的に同じになるように最初に検量される。巻き出しトルクは約0.6lb−in(0.07N−m)〜約1.2lb−in(0.14N−m)であるのが好ましい。それぞれのヤーンパッケージに同じ巻き戻しトルクを与えられる他の機構、例えば本明細書と矛盾しない程度まで本明細書に援用する米国特許6,129,193に記載されているような、それぞれのクリールの位置における磁気スリップクラッチもまた適している。
【0022】
複数の供給ヤーンは、実質的に均一かつ実質的に一定の張力の下でオーブンの中に入るのが好ましい。実質的に均一な張力とは、ヤーン間のヤーンの張力の標準偏差が平均張力の好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満であることを意味する。実質的に一定の張力とは、供給ロールが10回転する間の張力の時間変化の標準偏差が平均張力の好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満であることを意味する。
【0023】
クリールを離れるヤーンの巻き出し張力は、それらが巻き出している際にヤーンパッケージの外側の直径に比例して米国特許6,129,193に記載されているような磁気スリップクラッチへの電力を調節することにより調整することができる。あるいは、供給パッケージまたはビームを離れる際のヤーンの張力は、それぞれのヤーンを本明細書と矛盾しない程度まで本明細書に援用する米国特許6,457,666B1に記載されているような張力コントローラーを通過させることより、実質的に均一かつ実質的に一定になるように調整することができる。
【0024】
複数の延伸ヤーンはヤーンパッケージとして巻き上げられるのが好ましい。あるいは、複数の延伸ヤーンはビーム上に巻き上げられてもよい。
複数の延伸ヤーンはそれぞれ実質的に均一な張力の下でオーブンから出るのが好ましい。延伸パッケージはそれぞれ実質的に均一な張力で巻き取られるのが好ましい。
【0025】
延伸パッケージまたはビームは均一な長さのヤーンおよび均一な寸法を有しているのが好ましい。延伸ヤーンは、”尾”を作るためにヤーンの最初の数メートル程度が残りのヤーンが巻かれる場所の外側にあるように巻かれるのが好ましい。
【0026】
延伸ヤーンは0.1〜20デニール/フィラメントを有するフィラメントで構成されるのが好ましい。延伸ヤーンは0.1〜10デニール/フィラメントを有するフィラメントで構成されるのがより好ましい。延伸ヤーンは0.1〜5デニール/フィラメントを有するフィラメントで構成されるのがなお一層好ましい。延伸ヤーンは0.1〜2デニール/フィラメントを有するフィラメントで構成されるのがさらにもっと好ましい。延伸ヤーンは0.1〜1デニール/フィラメントを有するフィラメントで構成されるのが最も好ましい。
【0027】
本発明のこの態様を実施する二つの方式を図1および2に図説する。図1は延伸オーブン50の外部の抑制ロール40および延伸ロール60の使用を表わしている。ヤーンに撚れを付与することなくチューブパッケージ10上に巻き取られた複数のUHMWPO供給ヤーンが、1個以上のマルチポジションクリール20上に配置されている。クリールの位置は、それぞれのパッケージに同じ巻き出しトルクが与えられるように調節した。単純化のため1個のクリール20および4個のヤーンパッケージ10が描かれているが、それに限定されることを意図するものではない。複数の供給ヤーンをパッケージから同じ巻き戻しトルクで、あるいは同じ巻き戻し張力で、ヤーンに撚れを付与することなく巻き出し、供給ヤーンを並べて整列させるコームガイド30を通過させる。供給ヤーン100の並んだ列は、供給ヤーンがオーブン50に入る速度と温度を定める一組の大きな直径の(抑制)ロール40の上および下を通過する。ロール40が内部の熱源を持っていて温度が調整されてもよい。ヤーンを抑制しそれがオーブンに入る速度を調整するのに必要なロール40の数は、ロールの直径、材質、表面仕上および操作温度ならびにヤーンの強度、繊度および摩擦特性によって異なるであろう。便宜上3個の抑制ロール40を図示したが、この図はそれに限定されることを意図するものではない。オーブンは1個以上の温度区画を有していてよい。送風機および加熱機(図示していない)がオーブン内に熱い気体を循環させてもよい。延伸ヤーン200はオーブン50を出て、延伸ヤーンの速度およびオーブン50中での延伸の程度を定める一組の大きな直径の(延伸)ロール60の上および下を通過する。3個のロールの図は便宜上のものであり、それに限定されることを意図するものではない。延伸ヤーンはチューブパッケージ70上に、ヤーンに撚れを付与することなく巻き上げられる。
【0028】
図2は本発明のこの態様を実施する2番目の方式を説明する。1番目の方式同様、ヤーンに撚れを付与することなく巻き上げられた供給ヤーン10のパッケージは1個以上のクリール20上に配置され、それぞれのヤーンに関して同じトルクで巻き出される。ヤーンは供給ヤーンを並べて平行に整列させるコームガイド30を通過する。供給ヤーン100の並んだ列はオーブン90に入る。オーブン90は1個以上の温度区画を有していてよい。送風機および加熱機(図示していない)がオーブン90内に熱い気体を循環させてもよい。オーブン内で、ヤーンは一連の被動ロール80の上および下を通過し、それぞれのロール80は1個前よりも速い速度で作動(回転)している。便宜上11個の内部の被動ロールを図示したが、この図はそれに限定されることを意図するものではない。ヤーンはそれらがそれぞれの被動ロール80の上を連続して通過する際にそれにより伸ばされる。延伸ヤーン200はオーブン90を出て、延伸ヤーンの最終速度を定めそれらを張力の下で冷却する一組の大きな直径のロール60の上および下を通過する。延伸ヤーンはチューブパッケージ70上に、延伸ヤーンに撚れを付与することなく巻き上げられる。
【0029】
本発明のこの態様を実施する別の方式において、クリール20およびチューブパッケージ10は、ヤーンに撚れを付与することなく供給ヤーンがその上に巻き取られた1個以上のビームで置き換えることができる。同様に、延伸ヤーン200はチューブパッケージ70上の代わりに1個以上のビーム上に巻き上げられてもよい。本発明を実行するこれらの方式は図示していないが、当業者には容易に理解されるであろう。
【0030】
本発明のこの方法により生産された同時に延伸されたヤーンは、以前の技術による方法を用いて生産された同程度の数の延伸ヤーンよりも繊度、テナシティ、引張モジュラスにおいてより均一である。
【0031】
他の態様において、本発明は以下の段階を含む一方向繊維シートの形成のための方法である:
a)上記のように延伸されたUHMPO、ポリ(p−フェニレンテレレフタルアミド)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}ならびにそれらのブレンドおよび混合物から成るグループから選択されたグループから選択された、複数の巻き上げられたマルチフィラメントの撚れのない高強度ヤーンを選択する;
b)ヤーンに撚れを付与することなく複数の高強度ヤーンを巻き出す、ここで巻き出しトルクはそれぞれのヤーンに関して実質的に同じである;
c)ヤーンを広げて並べそれらの構成要素であるフィラメントにし、平行なフィラメントの一方向シート様の列を形成する;
d)フィラメントに接着剤を塗布する;ならびに
e)フィラメントの列および接着剤を固めて単一の一方向繊維シートにする。
【0032】
本発明の目的のための高強度ヤーンは、ASTM D2256−02により測定される引張強さが最低でも17g/dであるヤーンである。そのようなヤーンの例は、KEVLAR(登録商標)ブランドのようなアラミド類、ZYLON(登録商標)ブランドのようなポリベンザゾール類(PBO)、M5(登録商標)ブランドのようなポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}、超高分子量ポリ(アルファ−オレフィン類)(UHMWPO)、ならびにそれらのブレンドおよび混合物である。超高分子量ポリオレフィン類には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(ブテン−1)、ポリ(4−メチル−ペンテン−1)、それらの共重合体、付加体、ブレンドおよび混合物が含まれる。本発明の方法は前記の例の高強度ヤーンに適用できるが、このリストに限定されない。
【0033】
高強度ヤーンは実質的に同じ張力で巻き出されるのが好ましい。本明細書と矛盾しない程度まで本明細書に援用する米国特許4,916,000に記載されているようにして、ヤーンを広げ一方向シートを形成するのが好ましい。本発明の一方向繊維シートは、同等のフィラメントの直径に対するシートの厚さの比が12.8以下であるのが好ましい。
【0034】
延伸ヤーンは1個以上の巻き出しクリールから巻き出されるのが好ましい。それぞれの巻き出しクリールは10〜1000のパッケージ位置を有し、一方向繊維シートは10〜2000本のヤーンから形成されるのが好ましい。あるいは、延伸ヤーンは1個以上のビームから巻き出されてもよく、それぞれのビームは50〜1000本のヤーンをホールドする。
【0035】
本発明は本発明の方法により製造される一方向繊維シート製品を含む。繊維シートは、ランダムまたはパターンのある配列を持つ1本より多い高強度ヤーンで構成されていてよい。別の態様において、本発明は、表面間で接着して一緒にした、本発明の方法により製造された最低2枚の一方向繊維シートを含む製品であり、ここでシート中のフィラメントの方向は隣接するシート中のフィラメントの方向に対してある角度をなしている。
【0036】
本発明の一方向繊維シートから製造された集合体は、それらを構成するヤーンのより優れた物理的特性の均一性および一方向シートが形成される際のヤーン中の張力のより優れた均一性により、弾道抵抗の均一性が向上している。
【実施例】
【0037】
比較例1
複数の本質的に等しいUHMWPO供給ヤーンを、米国特許4,551,296に記載された方法により製造した。ヤーンはデカリン中、135℃において測定した固有粘度が約12dl/gである線状ポリエチレンで構成されていた。240本のフィラメントヤーンを、外側の直径が3.988インチ(10.13cm)である円筒チューブ上に、ヤーンに撚れを付与することなくパッケージとして巻き上げた。これらの供給ヤーンパッケージの平均繊度、テナシティおよび最初の引張モジュラス(弾性率)を、それらの特性の標準偏差および変動係数と共に下記の表Iに示す。ヤーンの引張特性はASTM D−2256−02により測定した
供給ヤーンパッケージは2個の48位置クリール上に配置し、ヤーンに撚れを付与することなく96本のヤーンを同時に巻き出した。それぞれのヤーンに関して巻き出しトルクが同じであることを保証するための処理は行わなかった。巻き出しトルクは、パッケージ間で約0.6lb−in(0.07N−m)〜約1.8lb−in(0.2N−m)まで異なっていた。ロードセルおよびチャートレコーダーを用いて、単一の供給ロールに関して毎瞬間のヤーンの張力を測定および記録した。供給ロールが12回転する間の瞬間ヤーン張力の平均は約150g±67%であった。
【0038】
96本のヤーンを並べて整列させ、一組の被動ロールの上および下を通過させ、150℃の温度で維持された強制対流オーブンに入れ、これを通過させ、ここから出し、図1に図説されているような2組目の被動ロールに送った。2組目の被動ロールは1組目のロールよりも速い速度で作動し、オーブン中のヤーンを延伸する役割を果たした。延伸ヤーンは張力の下で冷却され、ヤーンに撚れを付与することなく個別のチューブパッケージとして巻き上げられた。全てのグループの供給ヤーンが延伸されるまで、新しい組の96本のヤーンでこの過程を繰り返した。これらの延伸ヤーンパッケージの平均繊度、テナシティおよび最初の引張モジュラスを、それらの特性の標準偏差および変動係数(C.O.V.)と共に下記の表Iに示す。
【0039】
実施例1
複数の本質的に等しいUHMWPO供給ヤーンパッケージを、米国特許4,551,296に記載された方法により製造した。ヤーンはデカリン中、135℃において測定した固有粘度が12〜14dl/gであるポリエチレンで構成されていた。240本のフィラメントヤーンを、外側の直径が3.988インチ(10.13cm)である円筒チューブ上に、ヤーンに撚れを付与することなくパッケージとして巻き上げた。ASTM D−2256−02により測定したこれらの供給ヤーンパッケージの平均繊度、テナシティおよび最初の引張モジュラス(弾性率)を、それらの特性の標準偏差および変動係数と共に下記の表Iに示す。
【0040】
供給ヤーンパッケージは2個の50位置クリール上に配置し、ヤーンに撚れを付与することなく100本のヤーンを同時に巻き出した。それぞれのヤーンに関して実質的に均一かつ実質的に一定の巻き出しトルクは、約0.88lb−in(0.098N−m)に設定された。供給ロールが12回転する間のヤーン張力の平均は約100g±25%であった。100本の供給ヤーンを平行に並べて整列させ、一組の被動ロールの上および下を通過させ、150℃の温度で維持された強制対流空気オーブンに入れ、これを通過させ、ここから出し、図1に図説されているような2組目の被動ロールに送った。2組目の被動ロールは1組目のロールよりも速い速度で作動し、オーブン中のヤーンを延伸する役割を果たした。延伸ヤーンは張力の下で冷却され、ヤーンに撚れを付与することなく個別のチューブパッケージとして巻き上げられた。全てのグループの供給ヤーンが延伸されるまで、新しい組の100本のヤーンでこの過程を繰り返した。これらの延伸ヤーンパッケージの平均繊度、テナシティおよび最初の引張モジュラスを、これらの特性の標準偏差および変動係数と共に下記の表Iに示す。
【0041】
【表1】

【0042】
比較例1におけるようにそれぞれの延伸ヤーンに関してヤーンの巻き出しトルクが同じでない場合、繊度の差異は供給ヤーンにおいてよりも延伸ヤーンにおいてより大きかったことが分かるであろう。それに対し、それぞれの供給ヤーンに関して巻き出しトルクが実質的に等しくなるように設定された場合、繊度は供給ヤーンにおいてよりも延伸ヤーンにおいてより均一であり、比較例の方法により延伸されたヤーンにおいてよりも本発明の方法により延伸されたヤーンにおいてより均一であった。同様に、本発明の方法により延伸されたヤーンの引張特性は供給ヤーンと比べてより均一であり、比較例の方法により延伸されたヤーンよりも均一であった。
【0043】
実施例2
実施例1に記載したものと同じ条件下で複数の供給ヤーンを製造し、これらは実施例1に記載したものと本質的に同じ特性を持つ。供給ヤーンを撚れなしに均一な長さのチューブパッケージとして巻き上げる。2個のマルチポジションクリール上に供給ヤーンパッケージを配置し、複数のヤーンをヤーンに撚れを付与することなく同時に巻き出す。張力コントローラーを離れたヤーンが実質的に均一かつ実質的に一定の張力の下にあるように、それぞれのヤーンを米国特許6,457,666に記載されているような張力コントローラーを通過させる。複数の供給ヤーンを並べて整列させ、一組の被動ロールの上および下を通過させ、本質的に均一な張力の下で強制対流空気オーブンに入れ、これを通過させ、ここから出し、実施例1に記載したように延伸する。延伸ヤーンを、実質的に均一な張力の下で冷却し、撚れなしに再度巻き取る。
【0044】
延伸ヤーンは、それらの供給ヤーンと比べて、および比較例1の延伸ヤーンと比べて繊度および引張特性の均一性が向上しているであろうことが期待される。
比較例2
比較例1の方法により、240本のフィラメントポリエチレン延伸ヤーンの複数のチューブパッケージを製造し、巻き上げた。延伸ヤーンの繊度、引張特性および均一性は、表1の2列目に示したものと本質的に等しかった。延伸ヤーンパッケージをマルチポジションクリール上に配置し、巻き出して並べて整列させた。それぞれのヤーンに関して巻き出しトルクが同じであることを保証するための処理は行わなかった。巻き出しトルクは、パッケージ間で約0.6lb−in(0.07N−m)〜約1.8lb−in(0.2N−m)まで異なっていた。供給ロールが12回転する間のヤーン張力の平均は約150g±67%であった。ヤーンを広げてそれらの構成要素であるフィラメントにし、米国特許4,916,000に記載されているような一方向シート様の列を形成させた。フィラメントに接着剤を塗布し、フィラメントの列および接着剤を固め、長さ不定の一方向繊維シートとして巻き上げた。本明細書と矛盾しない程度まで本明細書に援用する米国特許5,173,138に記載されているようにして、2本のそのような一方向繊維シートのロールをクロスプライさせ、熱および圧力の下で固めた。
【0045】
それぞれが37層の、表面同士を合わせて積み重ね平均面密度1.0276lbs/ft(5.022Kg/m)とした上記のクロスプライ素材で構成される弾道標的を形成した。22口径(5.588mm)、発射物を模した17グレイン(1.102g)の小片を用いて標的を撃ち、これらの標的のV50速度をMIL−STD 662Fにより測定した。次の関係式からV50速度で標的の比エネルギー吸収(SEA)を計算した:
SEA,J−m/Kg = 1/2m(V50)/A.D.
ここで:mは発射物のKgでの質量
V50はm/secでのV50速度
A.D.はKg/mでの標的の面密度
そのような標的45枚に関する平均結果を下記の表IIに示す。
【0046】
比較例3
比較例1の方法により、240本のフィラメントポリエチレン延伸ヤーンの複数のチューブパッケージを製造し、巻き上げた。延伸ヤーンの繊度、引張特性および均一性は、表1の2列目に示したものと本質的に等しかった。延伸ヤーンパッケージをマルチポジションクリール上に配置し、実質的に均一なトルクで巻き出して並べて整列させた。それぞれのヤーンに関する実質的に均一かつ実質的に一定の巻き出しトルクは約0.88lb−in(0.098N−m)に設定された。供給ロールが12回転する間のヤーン張力の平均は約100g±25%であった。ヤーンを広げてそれらの構成要素であるフィラメントにし、米国特許4,916,000に記載されているような一方向シート様の列を形成させた。フィラメントに接着剤を塗布し、フィラメントの列および接着剤を固め、長さ不定の一方向繊維シートとして巻き上げた。米国特許5,173,138に記載されているようにして、2本のそのような一方向繊維シートのロールをクロスプライさせ、熱および圧力の下で固めた。
【0047】
それぞれが37層の、表面同士を合わせて積み重ね平均面密度1.0245lbs/ft(5.007Kg/m)とした上記のクロスプライ素材で構成される弾道標的を形成した。22口径(5.588mm)、発射物を模した17グレイン(1.102g)の小片を用いて標的を撃ち、これらの標的のV50速度をMIL−STD 662Fにより測定した。上で示したものと同じ関係式により、V50速度で標的の比エネルギー吸収を計算した。そのような標的11枚に関する平均結果を下記の表IIに示す。
【0048】
【表2】

【0049】
一定のトルクで巻き出したヤーンで作製されたクロスプライ一方向シートを用いて作製した標的(比較例3)は、比較例2で作製された標的に関してよりもわずかに低い平均V50を有していたが、平均面密度もわずかに低かった。両方の組の標的の平均比エネルギー吸収は等しかった。主な違いは、一定のトルクで巻き出したヤーンを用いたクロスプライ一方向シートで作製した標的の弾道特性が、それらの特性の標準偏差により評価したところV50速度およびSEAの両方において、比較例のそれらよりもはるかに均一であったことである。
【0050】
実施例3
実施例1の方法により、240本のフィラメントポリエチレン延伸ヤーンの複数のチューブパッケージを製造し、巻き上げる。延伸ヤーンの繊度、引張特性および均一性は、表1の4列めに示したものと本質的に等しい。延伸ヤーンパッケージをマルチポジションクリール上に配置し、実質的に均一なトルクで巻き出して並べて整列させた。それぞれのヤーンに関する実質的に均一かつ実質的に一定の巻き出しトルクは約1.0lb−in(0.11N−m)に設定される。ヤーンを広げてそれらの構成要素であるフィラメントにし、米国特許4,916,000に記載されているような一方向シート様の列を形成する。フィラメントに接着剤を塗布し、フィラメントの列および接着剤を固め、長さ不定の一方向繊維シートとして巻き上げる。米国特許5,173,138に記載されているようにして、2本のそのような一方向繊維シートのロールをクロスプライさせ、熱および圧力の下で固める。
【0051】
それぞれが37層の、表面同士を合わせて積み重ね平均面密度約1.0lbs/ft(4.887Kg/m)とした上記のクロスプライ素材で構成される弾道標的を形成する。22口径(5.588mm)、発射物を模した17グレイン(1.102g)の小片を用いて標的を撃ち、これらの標的のV50速度をMIL−STD 662Fにより測定する。V50速度、SEAおよびそれらの特性の均一性は、比較例2または3で測定されたそれらよりも優れているであろうと信じる。
【0052】
実施例4
KEVLAR(登録商標)49ブランド高強度ポリ(p−フェニレンテレレフタルアミド)アラミドヤーンの、1140デニール(1270デシテックス)の768本のフィラメントの複数のチューブパッケージを選択する。ヤーンはASTM D2256=02により測定された23.6g/d(20.8cN/dtex)のテナシティを有する。ヤーンパッケージをマルチポジションクリール上に配置し、実質的に均一なトルクで巻き出して並べて整列させた。それぞれのヤーンに関する実質的に均一かつ実質的に一定の巻き出しトルクは約1.0lb−in(0.11N−m)に設定される。ヤーンを広げてそれらの構成要素であるフィラメントにし、米国特許4,916,000に記載されているような一方向シート様の列を形成する。フィラメントに接着剤を塗布し、フィラメントの列および接着剤を固め、長さ不定の一方向繊維シートとして巻き上げる。米国特許5,173,138に記載されているようにして、2本のそのような一方向繊維シートのロールをクロスプライさせ、熱および圧力の下で固める。
【0053】
表面同士を合わせて積み重ね平均面密度約1.0lbs/ft(4.887Kg/m)とした上記のクロスプライ素材で弾道標的を形成した。22口径(5.588mm)、発射物を模した17グレイン(1.102g)の小片を用いて標的を撃ち、これらの標的のV50速度をMIL−STD 662Fにより測定した。V50速度、SEAおよびそれらの特性の均一性は、繊維シートが実質的に一定かつ実質的に均一のトルクで巻き出されたヤーンから形成されていない標的と比較して優れているであろうと信じる。
【0054】
実施例5
ZYLON(登録商標)ブランドAS高強度ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)(PBO)ヤーンの、1300デニール(1170デシテックス)の688本のフィラメントの複数のチューブパッケージを選択する。ヤーンは42g/d(37cN/dtex)のテナシティを有する。ヤーンパッケージをマルチポジションクリール上に配置し、実質的に均一なトルクで巻き出して並べて整列させた。それぞれのヤーンに関する実質的に均一かつ実質的に一定の巻き出しトルクは、パッケージの巻心の外側の直径で測定して約1.0lb−in(0.11N−m)に設定される。ヤーンを広げてそれらの構成要素であるフィラメントにし、米国特許4,916,000に記載されているような一方向シート様の列を形成する。フィラメントに接着剤を塗布し、フィラメントの列および接着剤を固め、長さ不定の一方向繊維シートとして巻き上げる。米国特許5,173,138に記載されているようにして、2本のそのような一方向繊維シートのロールをクロスプライさせ、熱および圧力の下で固める。
【0055】
表面同士を合わせて積み重ね平均面密度約1.0lbs/ft(4.887Kg/m)とした上記のクロスプライ素材で弾道標的を形成した。22口径(5.588mm)、発射物を模した17グレイン(1.102g)の小片を用いて標的を撃ち、これらの標的のV50速度をMIL−STD 662Fにより測定した。V50速度、SEAおよびそれらの特性の均一性は、繊維シートが実質的に一定かつ実質的に均一のトルクで巻き出されたヤーンから形成されていない標的と比較して優れているであろうと信じる。
【0056】
実施例6
高強度ポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}(M5(登録商標)ブランド)ヤーンの複数のチューブパッケージを選択する。ヤーンは42g/d(37cN/dtex)のテナシティを有する。ヤーンパッケージをマルチポジションクリール上に配置し、実質的に均一なトルクで巻き出して並べて整列させた。それぞれのヤーンに関する実質的に均一かつ実質的に一定の巻き出しトルクは、パッケージの巻心の外側の直径で測定して約1.0lb−in(0.11N−m)に設定される。ヤーンを広げてそれらの構成要素であるフィラメントにし、米国特許4,916,000に記載されているような一方向シート様の列を形成する。フィラメントに接着剤を塗布し、フィラメントの列および接着剤を固め、長さ不定の一方向繊維シートとして巻き上げる。米国特許5,173,138に記載されているようにして、2本のそのような一方向繊維シートのロールをクロスプライさせ、熱および圧力の下で固める。
【0057】
表面同士を合わせて積み重ね平均面密度約1.0lbs/ft(4.887Kg/m)とした上記のクロスプライ素材で弾道標的を形成した。22口径(5.588mm)、発射物を模した17グレイン(1.102g)の小片を用いて標的を撃ち、これらの標的のV50速度をMIL−STD 662Fにより測定した。V50速度、SEAおよびそれらの特性の均一性は、繊維シートが実質的に一定かつ実質的に均一のトルクで巻き出されたヤーンから形成されていない標的と比較して優れているであろうと信じる。
【0058】
このようにして本発明をかなり完全に詳細に記載したが、その詳細に厳密に固執する必要はなく、付記した請求項により定められるような本発明の範囲に収まる全てのさらなる変化および修正が当業者の心に浮かんでもよいことは理解されるであろう。
【符号の説明】
【0059】
10 チューブパッケージ
20 クリール
30 コームガイド
40 抑制ロール
50 オーブン
60 延伸ロール
70 チューブパッケージ
80 被動ロール
90 オーブン
100 供給ヤーン
200 延伸ヤーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の超高分子量ポリ(アルファ−オレフィン)(UHMWPO)ヤーンを同時に延伸する、以下の段階を含む方法:
a)デカリン中、135℃において測定した固有粘度が5dl/g〜45dl/gであるUHMWPOを含む、複数の実質的に等しいゲル紡糸マルチフィラメント供給ヤーンを成形する、この供給ヤーンはASTM D2256−02により測定したテナシティが5g/d〜65g/d(0.43GPa〜5.56GPa)、繊度が100〜20,000であり、このヤーンのフィラメントは0.5〜100デニール/フィラメント(0.055〜11.1テックス/フィラメント)である;
b)ヤーンに撚れを付与することなくこの複数の供給ヤーンを巻き上げる;
c)ヤーンに撚れを付与することなく複数の供給ヤーンを巻き出す、ここで巻き出しトルクはそれぞれのヤーンに関して実質的に同じである;
d)複数の供給ヤーンを同時にかつ連続的に、オーブンに入れ、オーブンを通過させ、オーブンから出す、ここでヤーンの通り道に沿って1個以上の区画が存在し、これらの区画は約100℃〜約165℃の範囲の区画温度を有し、ここでヤーンがオーブンから出る速度はヤーンがオーブンに入る速度より大きく、これらのヤーンはオーブンの中で延伸される;
e)張力の下で延伸ヤーンを冷却する;および
f)それらに撚れを付与することなく複数の延伸ヤーンを巻き上げる。
【請求項2】
このUHMWPOはポリエチレンである、請求項1の方法。
【請求項3】
これらの供給ヤーンはチューブパッケージおよびビームから選択される形で巻き上げられる、請求項1の方法。
【請求項4】
これらの供給ヤーンは尾を持った状態で巻き上げられる、請求項3の方法。
【請求項5】
これらの供給ヤーンは均一なヤーンの長さを持った状態で巻き上げられる、請求項3の方法。
【請求項6】
複数の供給ヤーンは実質的に均一かつ一定の張力の下でこのオーブンに入る、請求項1の方法。
【請求項7】
複数の延伸ヤーンは実質的に均一な張力の下でこのオーブンを出る、請求項1の方法。
【請求項8】
延伸ヤーンはチューブパッケージおよびビームから選択される形で巻き上げられる、請求項1の方法。
【請求項9】
延伸ヤーンは均一なヤーンの長さを持った状態で巻き上げられる、請求項1の方法。
【請求項10】
延伸ヤーンパッケージは実質的に同じ張力で巻き取られる、請求項1の方法。
【請求項11】
延伸ヤーンは0.1〜20のデニール/フィラメントを有するフィラメントで構成される、請求項1の方法。
【請求項12】
延伸ヤーンは0.1〜2のデニール/フィラメントを有するフィラメントで構成される、請求項1の方法。
【請求項13】
2〜1000本の供給ヤーンが同時に延伸される、請求項1の方法。
【請求項14】
20〜500本の供給ヤーンが同時に延伸される、請求項1の方法。
【請求項15】
一方向繊維シートを形成する、以下の段階を含む方法:
a)請求項1の方法により延伸されたUHMWPO、ポリ(p−フェニレンテレレフタルアミド)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}ならびにそれらのブレンドおよび混合物から成るグループから選択された、複数の巻き上げられたマルチフィラメントの撚れのない高強度ヤーンを選択する;
b)ヤーンに撚れを付与することなく複数の高強度ヤーンを巻き出す、ここで巻き出しトルクはそれぞれのヤーンに関して実質的に同じである;
c)ヤーンを広げて並べそれらの構成要素であるフィラメントにし、実質的に平行なフィラメントの一方向シート様の列を形成する;
d)フィラメントに接着剤を塗布する;ならびに
e)フィラメントの列および接着剤を固めて単一の一方向繊維シートにする。
【請求項16】
高強度ヤーンは実質的に同じ張力で巻き出される、請求項15の方法。
【請求項17】
高強度ヤーンは1個以上の巻き出しクリール上のパッケージから巻き出され、それぞれの巻き出しクリールは10〜1000のパッケージ位置を有し、一方向繊維シートは10〜2000本のヤーンから形成される、請求項15の方法。
【請求項18】
請求項15の方法により製造される一方向繊維シートを含む製品。
【請求項19】
シート中のフィラメントの方向は隣接するシート中のフィラメントの方向に対してある角度をなしている、表面間で組み合わせて一緒にした、最低2枚の請求項18に記載されたような一方向繊維シートを含む製品。
【請求項20】
最低2枚の一方向シートをそれらの表面で接着して一緒にした、請求項19の製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−511795(P2010−511795A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529314(P2009−529314)
【出願日】平成19年9月15日(2007.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/078589
【国際公開番号】WO2008/039650
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】