説明

坑口形成方法、及び、土留め壁

【課題】シールドマシンのコスト負担や作業負担をなくせ、坑口形成作業の簡単化が図れる坑口形成方法を提供する。
【解決手段】立坑2に設けられた土留め壁3にシールドマシン6の発進又は到達用の坑口を形成する坑口形成方法において、土留め壁3に地上10から坑口形成部分4の位置まで延長する孔(放電用孔54a;54b)を形成し、地上10から孔を経由して土留め壁3の坑口形成部分4に圧力を加えて坑口形成部分4を除去することによって坑口を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立坑に設けられた土留め壁に坑口を形成する方法、坑口形成部分を備えた土留め壁に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法においては、立坑の土留め壁にシールドマシンの発進又は到達用の坑口を形成する。従来、土留め壁の外側の地盤を改良して自立させた後に土留め壁の坑口形成部分を人力あるいは重機で壊すことにより坑口を形成していた。しかしながら、この方法では、地山の開放を伴うことから安全面に問題がある。
そこで、土留め壁の坑口形成部分をシールドマシンのカッタで切削可能な炭素繊維含有コンクリートなどの材料で形成し、この坑口形成部分をシールドマシンのカッタで切削することにより坑口を形成する方法が知られている(特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開平5−302490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した方法では、坑口形成部分の全てをシールドマシンによって切削するため、坑口形成部分を切削するための専用の超硬カッタが必要となり、また、坑口形成部分を切削する際のシールドマシンの負担も大きい。
また、シールドマシンのカッタで坑口形成部分を切削した場合に、坑口形成部分が大きく割れてしまって割れたコンクリートの塊が大きくなってしまうことが多い。そのような大きなコンクリートの塊は、シールドマシン内で閉塞し、排土の支障となる。この場合、その大きなコンクリートの塊を人力で撤去しなければならず、作業が煩雑化してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の坑口形成方法は、立坑に設けられた土留め壁にシールドマシンの発進又は到達用の坑口を形成する坑口形成方法において、土留め壁に地上から坑口形成部分の位置まで延長する孔を形成し、地上から孔を経由して土留め壁の坑口形成部分に圧力を加えて坑口形成部分を除去することによって坑口を形成したことを特徴とする。
孔を土留め壁の立坑の内側と土留め壁の立坑の外側とに設け、立坑の内側の孔を経由して土留め壁の立坑の内側の坑口形成部分に圧力を加えて当該坑口形部分を除去する作業と、立坑の外側の孔を経由して土留め壁の立坑の外側の坑口形成部分に圧力を加えて当該坑口形部分を除去する作業とを、時間をずらして別々に行うことによって坑口を形成したことも特徴とする。
孔を土留め壁の立坑の内側と土留め壁の立坑の外側とに設け、立坑の内側の孔を経由して土留め壁の立坑の内側の坑口形成部分に圧力を与えて当該坑口形部分を除去する作業を行った後に、立坑の外側の孔を経由して土留め壁の立坑の外側の坑口形成部分に圧力を与えて当該坑口形部分を除去する作業を行ったことも特徴とする。
電極装置の放電部を孔に入れて土留め壁の坑口形成部分に位置させた状態で放電部の電極に電圧を印加して放電させることによって坑口形成部分を破砕したことも特徴とする。
本発明の土留め壁は、シールドマシンが発進又は到達する立坑に形成される土留め壁において、シールドマシンの発進又は到達用の坑口形成部分と、地上から坑口形成部分の位置まで延長する孔とを備えたことを特徴とする。
土留め壁が、横に並設された複数の土留め柱体によって形成され、土留め柱体が、芯柱体と止水部と孔とを備え、芯柱体が坑口形成部分を形成する坑口形成部を備え、止水部が芯柱体の周囲に形成された固化材によって形成され、孔が地上から止水部を経由して坑口形成部の位置まで延長して形成されたことも特徴とする。
坑口形成部分が、モルタル又はコンクリートにより形成されたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の坑口形成方法によれば、地上から孔を経由して土留め壁の坑口形成部分に圧力を加えて坑口形成部分を除去するため、坑口形成部分をシールドマシンで切削しないで坑口を形成できるので、シールドマシンのコスト負担や作業負担をなくせ、坑口形成作業の簡単化が図れる。
土留め壁の立坑の内側の坑口形成部分の除去作業と土留め壁の立坑の外側の坑口形成部分の除去作業とを時間をずらして別々に行ったので、坑口形成部分を効率的に除去できる。
土留め壁の立坑の内側の坑口形成部分を除去する作業を行った後に、土留め壁の立坑の外側の坑口形部分を除去する作業を行ったので、発進用の坑口を効率的に形成できる。
土留め壁の坑口形成部分を放電破砕によって破砕したので、坑口形成部分を細かく破砕できる。従って、破片を、シールドマシンの排土装置で効率的に排出でき、破片の排出作業の効率化が図れる。
本発明の土留め壁によれば、地上から坑口形成部分の位置まで延長する孔を備えたので、地上から孔を経由して土留め壁の坑口形成部分に圧力を加えて坑口形成部分を除去できるので、シールドマシンのコスト負担や作業負担をなくせ、坑口形成作業の簡単化が図れる。
複数の土留め柱体にそれぞれ形成された孔を経由して個々の土留め柱体の坑口形成部に圧力を加えることができるので、坑口形成部を細かく破壊でき、作業の効率化が図れる。
坑口形成部分が、モルタル又はコンクリートにより形成されたので、シールドマシンのコスト負担や作業負担をなくせ、坑口形成作業の簡単化が図れる土留め壁のコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1乃至図7は最良の形態を示し、図1は坑口形成装置を示し、図2は坑口形成部分を備えた土留め壁を正面から見て示し、図3は土留め壁の断面を示し、図4は芯柱体を分解して示し、図5は芯柱体の接続部による接続を示し、図6は放電破砕装置を示し、図7は間隔保持材による電線間の間隔保持状態を断面で示す。
【0007】
図1に示すように、坑口形成装置1は、立坑2の土留め壁3に設けられた坑口形成部分4、放電破砕装置5、シールドマシン6を備える。
【0008】
図2に示すように、土留め壁3は、地盤の地山7に複数の土留め柱体51が横に複数並設されたことによって形成される。図3に示すように、土留め柱体51は、芯柱体52、止水部53、放電用孔54を備える。放電用孔54は、坑口形成部分4に放電による圧力を加えるために地上10から電極40を挿入するための孔(圧力投入孔)として機能する。止水部53は、例えば、強度の小さいソイルセメントと呼ばれるような固化材により形成される。図4に示すように、芯柱体52は、坑口形成部55と鋼材56と放電用孔形成材としての筒棒58及び延長筒棒58Aとを備える。筒棒58は後述する放電や発破で壊れる合成樹脂や紙等で形成されたものを用いる。延長筒棒58Aは合成樹脂や紙あるいは金属等で形成されたものを用いる。
【0009】
坑口形成部55は、例えば高強度モルタル又はコンクリートのような固化材により形成される。坑口形成部55は、上下に貫通する筒棒58と、上下に設けられた鋼材接続用の接続部57とを備える。このような坑口形成部55は、筒棒58が図外の型枠の内側を横切って型枠の両端より突出するように設置され、接続部57の一部が図外の型枠の両端より突出するように接続部57が型枠に設置された状態で、型枠内に固化材を充填して硬化させることによって形成できる。坑口形成部55の上の接続部57aに上部鋼材56aが繋がれ、坑口形成部55の下の接続部57bに下部鋼材56bが繋がれる。接続部57及び鋼材56は例えばH形鋼により形成される。接続部57と鋼材56との接続は、リベット継手、溶接、ボルト及びナット等の接続手段により接続される。例えば、図5に示すように、接続部57と鋼材56とがこれらボルト59a及びナット59bで連結された連結板60によって互いに接続されたことによって、上部鋼材56aと下部鋼材56bとの間に坑口形成部55が設けられた芯柱体52が形成される。尚、坑口形成部分4の径はシールドマシン6の外径以上に設定され、芯柱体52の長さは地上10から坑口形成部分4を超えた長さに形成される。芯柱体52の上部鋼材56aや下部鋼材56bや坑口形成部55や筒棒58や延長筒棒58Aの長さは、坑口形成部分4の場所によって各々異なる。即ち、筒棒58は坑口形成部分4の上下長さに応じた長さのものが用いられ、上の接続部57aには坑口形成部分4の上端部から地上10までの長さに合わせた長さの上部鋼材56aが接続され、下の接続部57bには坑口形成部分4の下端部から土留め壁3の下端までの長さに合わせた長さの鋼材56が接続され、坑口形成部55に埋め込まれた筒棒58の上端58aには坑口形成部分4の上端部から地上10までの長さに合わせた長さの延長筒棒58Aが接続されることによって、芯柱体52が形成される。尚、筒棒58の下端58bの開口は塞いでおく。
【0010】
最良の形態の芯柱体52によれば、坑口形成部55が高強度モルタル又はコンクリートのような固化材により形成されたので、従来のようにシールドマシンのカッタで切削可能な炭素繊維含有コンクリートなどの材料で形成された坑口形成部分を備えた構成と比べて、芯柱体52及びこれを用いた土留め壁3のコスト、ひいては、坑口形成作業に係るコストを削減できる。尚、この芯柱体52によって坑口形成前の土留め壁3の強度を持たせているとともに、坑口形成部55が後述する放電や発破で壊れやすい高強度モルタル又はコンクリートのような固化材のみにより形成されたので、坑口形成部55を放電や発破で容易に壊せて、シールドマシン6の負担を軽減できる。
【0011】
土留め壁3の形成方法を説明する。地上10からアースオーガーのような掘削機械を使用して地盤の地山7を掘削して地山7の深さ方向に断面円形の孔99(図1;3参照)を形成する。この場合、孔99を形成しながら孔99内に止水部53を形成する固化材としてのセメントミルクを注入し、現位置の土砂と攪拌してソイルセメントを形成していく。孔99を所望の深さまで形成した後に、未固結状態のソイルセメントが入った孔99内に、芯柱体52を下部鋼材56b側から建て込むことによって、硬化したソイルセメントが止水部53として機能するとともに、延長筒棒58A及び筒棒58によって土留め柱体51に地上から坑口形成部55よりも下方の位置まで延長する放電用孔54が形成される。尚、土留め柱体51に形成する放電用孔54は、図3に示すように、土留め柱体51の立坑の内側と立坑の外側とにそれぞれ1つづつ形成する。即ち、土留め柱体51は、立坑の内側に放電用孔54aを備えるとともに、立坑の外側に放電用孔54bを備える。図2に示すように、複数の土留め柱体51が横に複数並設されることによって、複数の土留め柱体51の坑口形成部55から成る坑口形成部分4を備えた土留め壁3が形成される。
尚、図2の4Aは坑口形成部分4に形成しようとする坑口の予想線である。また、図3の左の土留め柱体51の断面は土留め柱体51の上部鋼材56aの部分を切断した断面を図示し、図3の中央の土留め柱体51の断面は土留め柱体51の坑口形成部55の部分を切断した断面を図示し、図3の右の土留め柱体51の断面は土留め柱体51の下部鋼材56bの部分を切断した断面を図示した。
【0012】
図6;7を参照し、放電破砕装置5を説明する。放電破砕装置5は、電源装置8、電極装置9を備える。
電源装置8は、昇圧装置12、パルスパワー出力装置13を備える。昇圧装置12は、電源電圧入力部14A、図外の変圧器を備えた昇圧回路15、出力部14を備える。昇圧回路15は、電源電圧入力部14Aに接続された電源ケーブル14C経由で三相交流200V電源電圧を入力して例えば直流22kVの電圧を生成し、直流22kVの電圧を出力部14より出力する。出力部14は、正極端子14aと負極端子14bとを備える。パルスパワー出力装置13は、入力端子16、充電回路17、出力部としての電極接続部18を備える。入力端子16は、正極端子16aと負極端子16bとを備える。電極接続部18は、正極端子18aと負極端子18bとを備える。充電回路17は、正極線17a、負極線17b、コンデンサ装置19、コンデンサ装置接続部20、スイッチ21;22を備える。正極線17aには、スイッチ21とスイッチ22とが直列に接続される。正極線17aの一端が入力端子16の正極端子16aに接続され、正極線17aの他端が電極接続部18の正極端子18aに接続される。負極線17bの一端が入力端子16の負極端子16bに接続され、負極線17bの他端が電極接続部18の負極端子18bに接続される。コンデンサ装置接続部20は、正極線17aにおけるスイッチ21とスイッチ22との間に並列に接続された複数の正極接続端子20aと、負極線17bに並列に接続された複数の負極接続端子20bとを備える。1対の正極接続端子20aと負極接続端子20bとによりコンデンサ装置19を1つ接続するためのコンデンサ装置接続端子20Aが形成される。即ち、コンデンサ装置接続部20は、複数のコンデンサ装置接続端子20Aを備えるため、昇圧装置12及び電極接続部18に複数のコンデンサ装置19を接続可能である。コンデンサ装置接続部20は、例えば6個のコンデンサ装置接続端子20Aを備え、1個から6個までの任意の数のコンデンサ装置19を接続可能である。即ち、コンデンサ装置19を1個から6個まで任意に増減可能な電源装置8を得ることができる。スイッチ21はコンデンサ装置19に昇圧装置12から供給された電圧を充電させるためのスイッチ、スイッチ22はコンデンサ装置19に充電された電荷を放電させて電極接続部18経由で電極装置9に出力させるためのスイッチである。図示しないが、充電回路17は接地(アース)されている。
【0013】
電極装置9は、接続コード部31、電極部32を備える。接続コード部31は、電源装置8の電極接続部18の正極端子18a及び負極端子18bの各々に接続される正極端子35a及び負極端子35bを備えた入力側コネクタ35と、電極部32の電極接続コネクタ36に接続される出力側コネクタ37と、入力側コネクタ35と出力側コネクタ37とを接続する電気接続コード38とを備える。
電極部32は、出力側コネクタ37と接続される電極接続コネクタ36と、電極40とを備える。つまり、電極部32は、接続コード部31の出力側コネクタ37に着脱可能な電極接続コネクタ36を備え、電極接続コネクタ36が電線43を着脱自在に接続できる図外の電線取付部を備えるため、後述するワイヤ電極41を容易に交換できる。
【0014】
図6に示すように、電極40は、例えば、ワイヤ電極41、あるいは、同軸電極42を用いる。
ワイヤ電極41は、電線43が切断され、電線43の切断面と電線43の切断面との間が間隔保持材45によって一定の放電間隔(ギャップ)に維持されたことによって放電部46が形成された構成である。電線43は、例えば線径2mm〜3mm程度の銅線のような導体線の周囲がビニル樹脂などの樹脂で被覆された線径4mm〜5mm程度の、いわゆる被覆線により形成される。ワイヤ電極41は放電部46を1つ以上備える。
【0015】
図7に示すように、間隔保持材45は、筒状に形成され、筒孔の両端部により形成された電線固定部61;62と、筒孔の中央部により形成された間隔維持部63とを備える。電線固定部61;62の孔径は電線43が嵌合する寸法の径に形成される。間隔維持部63の孔径は電線固定部61;62の径よりも小さい径に形成される。電線固定部61、電線固定部62、間隔維持部63の中心軸は同一である。間隔維持部63と電線固定部61;62との段差部である段差面によりストッパとしての電線端面突当面64;65が形成される。
電線固定部61;62に嵌合された電線43;43の端面がそれぞれ電線端面突当面64;65に突き当てられた状態で、間隔保持材45と電線43とが図外の接着テープや接着剤などで互いに固定されることによって、間隔維持部63が電線43と電線43との間に放電ギャップgを形成する。即ち、間隔維持部63が電線固定部61;62に固定された電線43の端面と電線43の端面との間に放電ギャップとしての間隔gを維持するので、放電部46の放電ギャップを簡単かつ正確に設定できる。尚、絶縁ビニル粘着テープ、締結バンド、ゴムバンド、専用の接続具などを間隔保持材45として使用してもよい。
【0016】
図6に示すように、同軸電極42は、例えば、+電極のような一方電極としての棒状の内部導体73と、内部導体73の外周囲を被覆する筒状の絶縁体74と、絶縁体74の外周囲に設けられた−電極のような他方電極としての外部導体75とにより構成される。外部導体75は、内部導体73の中心線に沿った方向に間隔を隔てて設けられた複数の浮遊電極76を構成する。浮遊電極76とは、電源側と電気的に絶縁された電極のことである。絶縁体74の先端74tより突出して露出する内部導体73の先端部により形成された先端電極73tとこの先端電極73tに最も近い浮遊電極76である先端側浮遊電極76tとの間で先端側放電ギャップ77が形成され、互いに対向する浮遊電極76同士の端部76sと端部76sとの間で中間側放電ギャップ78が形成される。中間側放電ギャップ78は複数形成される。先端側放電ギャップ77を隔てて配置された先端電極73tと先端側浮遊電極76tとによって放電部が形成される。中間側放電ギャップ78を隔てて配置された浮遊電極76と浮遊電極76とによって放電部が形成される。即ち、同軸電極42は、複数の放電部を備える。この場合、電極部32は、出力側コネクタ37と接続される電極接続コネクタ36と、同軸電極42とを備えるので、出力側コネクタ37に対する電極接続コネクタ36の着脱により同軸電極42を容易に交換できる。
【0017】
次に坑口形成方法を説明する。土留め壁3を形成し、土留め壁3で囲まれた内側の地盤を掘削してシールドマシンの発進用の立坑2を形成し、この立坑2内にシールドマシン6を搬入する。放電破砕装置5を立坑2の近傍の地上10に設置する。シールドマシン6の前端6tを立坑2に面する坑口形成部分4に接触させるとともに、電源装置8に繋がれた電極装置9の電極40の放電部を地上10から土留め柱体51の立坑の内側の放電用孔54aに挿入して土留め柱体51の坑口形成部55に位置決めした後に、全ての土留め柱体51に対して放電用孔54a内に電解液やゲルのような放電破砕用充填材を充填して放電する。その後、シールドマシン6を駆動してその破砕した破片を図外のスクリューコンベアや排土ポンプ等の排土装置でシールドマシン6の後方に送って排出する。これにより、立坑の内側の坑口形成部分4が放電によって破砕され、その破片がシールドマシン6によって撤去される。その後、シールドマシン6の前端を残った坑口形成部分4に接触させるとともに、電源装置8に繋がれた電極装置9の放電部46を地上10から立坑の外側の放電用孔54bに挿入して土留め柱体51の坑口形成部55に位置決めした後に、全ての土留め柱体51に対して放電用孔54a内に放電破砕用充填材を充填して放電する。その後、シールドマシン6を駆動してその破砕した破片を図外のスクリューコンベアでシールドマシン6の後方に送って排出する。これにより、立坑の外側の坑口形成部分4が破砕され、その破片がシールドマシン6によって撤去される。以上によって、発進用の坑口が形成される。尚、到達用の坑口の形成は、到達用の立孔2にシールドマシン6がまだ到達していないことから、土留め柱体51の立坑の外側の放電用孔54bでの放電を行った後に、土留め柱体51の立坑の内側の放電用孔54aでの放電を行って坑口を形成する。
即ち、土留め壁3の立坑の内側の坑口形成部分4の除去作業と土留め壁3の立坑の外側の坑口形成部分4の除去作業とを時間をずらして別々に行うことで作業の効率化を図った。また、放電による破砕によって坑口形成部分4を破砕するので、坑口形成部分4を細かく破砕できる。
【0018】
最良の形態によれば、坑口形成部分4をシールドマシン6で切削するのではなく、放電により瞬間的に発生する圧力波と放電破砕用充填材の気化による体積膨張により放電用孔54内の圧力を高めることによって破砕するので、シールドマシン6のための専用の超硬カッタが不要となってコストを低減でき、シールドマシン6の負担も低減する。即ち、坑口形成部分4をシールドマシン6で切削しないで坑口を形成でき、シールドマシン6のコスト負担や作業負担をなくせ、坑口形成作業の簡単化が図れる。
最良の形態によれば、放電破砕によって坑口形成部分4を細かく破砕でき、その破片をシールドマシン6の排土装置で効率的に排出できるので、破片の排出作業の効率化が図れる。
最良の形態によれば、土留め壁3の立坑の内側の坑口形成部分4の除去作業と土留め壁3の立坑の外側の坑口形成部分4の除去作業とを時間をずらして別々に行ったので、坑口形成部分4を効率的に除去でき、坑口を効率的に形成できる。特に土留め壁3の立坑の内側の坑口形成部分4の除去作業を行った後に、土留め壁3の立坑の外側の坑口形成部分4の除去作業を行ったので、シールドマシン6の発進時の坑口形成部分4を効率的に除去でき、発進用の坑口を効率的に形成できる。
最良の形態によれば、高強度モルタル又はコンクリートのような固化材により形成された坑口形成部55を備えた芯柱体52を使用したので、芯柱体52及びこれを用いた土留め壁3のコスト、ひいては、坑口形成作業に係るコストを削減できる。
最良の形態によれば、孔としての放電用孔54を備えた土留め壁3を使用したので、地上10から放電用孔54を経由して土留め壁3の坑口形成部分4に電極40の放電部を位置させて放電によって坑口形成部分4を破砕できるので、坑口形成部分4をシールドマシン6で切削しないで坑口を形成でき、シールドマシン6のコスト負担や作業負担をなくせ、坑口形成作業の簡単化が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
放電用孔54は、地上10から坑口形成部55の下端55a(図4参照)の直前位置まで延長するように形成してもよい。
放電用孔54は、次のように形成してもよい。孔99を所望の深さまで形成した後に、未固結状態のソイルセメントが入った孔99内に、筒棒58及び延長筒棒58Aを備えない芯柱体52を建て込むとともに、放電用孔54を形成するための図外の孔形成棒も立て込む。この孔形成棒は、地上10から坑口形成部55の下端を越えた坑口形成部55よりも下方の位置、あるいは、坑口形成部55の下端の位置まで届く長さのものを使用する。そして、ソイルセメントが硬化した後に孔形成棒を抜くことによって、土留め柱体51に地上から坑口形成部55よりも下方の位置、あるいは、坑口形成部55の下端の位置まで延長する放電用孔54が形成される。
最良の形態では、放電用孔54を、図3に示すように、土留め柱体51の立坑の内側と立坑の外側とにそれぞれ1つづつ形成した場合を説明したが、図3の土留め柱体51の立坑の内側と立坑の外側との間に放電用孔54を3つ以上形成してもよい。即ち、立坑の内側から立坑の外側に向かう方向に沿って放電用孔を3個以上並べて設けても良い。例えば、図3において、土留め柱体51の中心から立坑の外側に向けて放電用孔54を複数個並ぶように設けるとともに、土留め柱体51の中心から立坑の内側に向けて放電用孔を複数個並ぶように設ける。そして、例えば、土留め壁3の立坑の内側において、立坑2に近い側に設けた放電用孔54を用いた放電破砕と立坑2より遠い側に設けた放電用孔54を用いた放電破砕とを時間をずらして別々に行い、その後、土留め壁3の立坑の外側において、地山7に近い側に設けた放電用孔54を用いた放電破砕と地山7より遠い側に設けた放電用孔54を用いた放電破砕とを時間をずらして別々に行うというように作業すれば、土留め柱体51の厚さ、即ち、土留め壁3の厚さが厚い場合でも坑口形成部分4を効率的に破砕できる。
坑口形成部分4の破壊に発破(ダイナマイト)を用いてもよい。つまり、坑口形成部分4に発破による圧力を加えるために地上10から発破を挿入するための孔(圧力投入孔)を形成し、この孔を経由して坑口形成部分4の位置に発破を設置して坑口形成部分4を破壊してもよい。
シールドマシンのカッタで切削可能な炭素繊維含有コンクリートなどの材料で形成された坑口形成部分を備えた構成の土留め壁に、地上10から坑口形成部分の位置まで延長する孔(圧力投入孔)を形成し、孔内での放電による破砕や発破による破壊によって坑口を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】坑口形成装置を示す構成図(最良の形態)。
【図2】土留め壁の正面図(最良の形態)。
【図3】土留め壁の断面図(最良の形態)。
【図4】芯柱体の分解斜視図(最良の形態)。
【図5】芯柱体の接続部と鋼材との接続状態を示す図(最良の形態)。
【図6】放電破砕装置を示す構成図(最良の形態)。
【図7】間隔保持材を示す断面図(最良の形態)。
【符号の説明】
【0021】
1 坑口形成装置、2 立坑、3 土留め壁、4 坑口形成部分、
5 放電破砕装置、6 シールドマシン、7 地山、8 電源装置、
9 電極装置、51 土留め柱体、52 芯柱体、53 止水部、
54 放電用孔(孔)、55 坑口形成部、56 鋼材、
57 接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑に設けられた土留め壁にシールドマシンの発進又は到達用の坑口を形成する坑口形成方法において、土留め壁に地上から坑口形成部分の位置まで延長する孔を形成し、地上から孔を経由して土留め壁の坑口形成部分に圧力を加えて坑口形成部分を除去することによって坑口を形成したことを特徴とする坑口形成方法。
【請求項2】
孔を土留め壁の立坑の内側と土留め壁の立坑の外側とに設け、立坑の内側の孔を経由して土留め壁の立坑の内側の坑口形成部分に圧力を加えて当該坑口形部分を除去する作業と、立坑の外側の孔を経由して土留め壁の立坑の外側の坑口形成部分に圧力を加えて当該坑口形部分を除去する作業とを、時間をずらして別々に行うことによって坑口を形成したことを特徴とする請求項1に記載の坑口形成方法。
【請求項3】
孔を土留め壁の立坑の内側と土留め壁の立坑の外側とに設け、立坑の内側の孔を経由して土留め壁の立坑の内側の坑口形成部分に圧力を与えて当該坑口形部分を除去する作業を行った後に、立坑の外側の孔を経由して土留め壁の立坑の外側の坑口形成部分に圧力を与えて当該坑口形部分を除去する作業を行ったことを特徴とする請求項1に記載の坑口形成方法。
【請求項4】
電極装置の放電部を孔に入れて土留め壁の坑口形成部分に位置させた状態で放電部の電極に電圧を印加して放電させることによって坑口形成部分を破砕したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の坑口形成方法。
【請求項5】
シールドマシンが発進又は到達する立坑に形成される土留め壁において、シールドマシンの発進又は到達用の坑口形成部分と、地上から坑口形成部分の位置まで延長する孔とを備えたことを特徴とする土留め壁。
【請求項6】
土留め壁が、横に並設された複数の土留め柱体によって形成され、土留め柱体が、芯柱体と止水部と孔とを備え、芯柱体が坑口形成部分を形成する坑口形成部を備え、止水部が芯柱体の周囲に形成された固化材によって形成され、孔が地上から止水部を経由して坑口形成部の位置まで延長して形成されたことを特徴とする請求項5に記載の土留め壁。
【請求項7】
坑口形成部分が、モルタル又はコンクリートにより形成されたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の土留め壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−163569(P2008−163569A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351543(P2006−351543)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(502281127)株式会社ファテック (83)
【Fターム(参考)】