説明

垂直記録方式の磁気ディスク装置及びライトデータ生成方法

【課題】ポストアンブル部にDCオフセットが発生するのを防止して再生波形の安定化を図る。
【解決手段】HDC240はユーザデータ31を符号化する。HDC240は符号化されたデータ32のECC33を生成し、当該ECC33を符号化する。HDC240は、符号化されたデータ32及び符号化されたECC34から構成されるデータ(符号化データ)35の終端側に非DCパターン(例えばランダムパターン)から構成されるポストアンブル36を付加する。ライトチャネル232は、ポストアンブル36が付加された符号化データ35を受けて、当該符号化データ35に対応するランダムパターンデータ38の始端側にプリアンブルパターン40を付加することによりライトデータ41を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザデータに対する符号化を行うディスクコントローラを有する垂直記録方式の磁気ディスク装置に係り、特にポストアンブルパターンが付加されたライトデータを生成するのに好適な磁気ディスク装置及びライトデータ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に磁気ディスク装置では、ホストシステムから転送されるユーザデータは、一定のサイズ(例えば512バイト)に分割される。分割されたユーザデータは、ディスク媒体上のデータセクタと呼ばれる記憶領域に、当該ユーザデータ以外の信号と共に記録される。データセクタに記録されるデータ(セクタデータ)は、例えば特許文献1に記載されているように、プリアンブルパターン(プリアンブル)、ユーザデータ、誤り訂正符号(Error Correcting Code: ECC)及びポストアンブルパターン(ポストアンブル)を含む。
【0003】
磁気ディスク装置は、大きく分けて、ヘッドディスクアセンブリ部(HDA)と、印刷回路基板部(PCB部)とから構成される。PCB部は、CPU、ディスクコントローラ(HDC)及びリード/ライトチャネル(R/Wチャネル)を含む。CPUは、磁気ディスク装置の主コントローラをなす。HDCは、磁気ディスク装置とホストシステムとのインタフェースをなす。上記ポストアンブルはHDC内で生成される。R/Wチャネルは信号処理機能を有する。上記プリアンブルはR/Wチャネル内で生成される。
【0004】
ポストアンブル(PAD)をHDC内で生成する典型的な磁気ディスク装置における信号の流れは次に示す通りである。まず、ホストから送られた例えば512バイトのユーザデータ(DATA)はHDCで受信される。HDCは、このユーザデータ(DATA)に基づいてECC(及び巡回冗長検査(Cyclic Redundancy Check: CRC)データ)を生成し、生成されたECC(CRC/ECC)を当該ユーザデータ(DATA)の終端側に付加する。HDCは、これらのデータ「DATA+ECC」の終端側にDC信号パターン(DCパターン)から構成されるポストアンブル(PAD)を付加する。このポストアンブル(PAD)が付加されたデータ(DATA+ECC+PAD)はR/Wチャネルへ送られて、当該R/Wチャネル内部で符号化される。この符号化されたデータは、その始端側にR/Wチャネルでプリアンブルが付加されてヘッドによりディスク媒体上のデータセクタに記録される。
【0005】
近年の磁気ディスク装置では、CPU、HDC及びR/Wチャネルは、単一チップのLSI(システムLSI)に集積されている。このようなシステムLSIを搭載した磁気ディスク装置における信号の流れは次に示す通りである。まず、ホストから送られたユーザデータ(DATA)は、HDCで符号化される。符号化されたデータに対してHDC内でECCが付加され、しかる後に当該ECCのみ符号化される。これらの符号化されたデータに対して、HDC内でポストアンブル(PAD)が付加される。このポストアンブル(PAD)が付加されたデータはR/Wチャネルへ送られる。R/Wチャネルは、このポストアンブル(PAD)が付加されたデータをHDCから受け取ると、新たに符号化は行わずに、当該データの始端側にプリアンブル(PLL)を付加することによりライトデータを生成する。このブリアンブル(PLL)が付加されたデータ(ライトデータ)がヘッドによりディスク媒体上のデータセクタに記録される。
【特許文献1】特開2005− 50415(段落0003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように近年の磁気ディスク装置では、ユーザデータがHDC内で符号化され、その符号化されたユーザデータに基づいてHDC内でECC(CRC/ECC)が生成される。このECCはHDC内で符号化される。つまり近年の磁気ディスク装置では、それ以前の磁気ディスク装置(旧来の磁気ディスク装置)と異なり、ユーザデータ及びECCがHDC内で符号化される。これらの符号化されたデータにHDC内でポストアンブルが付加されてR/Wチャネルに送られる。このため、R/Wチャネルでは、旧来の磁気ディスク装置と異なり、符号化は行われない。そこで、近年の磁気ディスク装置において、HDC内で生成されて当該HDC内で符号化されるECCは、リバース(Reverse)ECCと呼ばれる。
【0007】
リバースECCを適用する磁気ディスク装置では、HDC内で符号化されたユーザデータ及びECCにポストアンブル(PAD)が付加される。このため、ポストアンブル(PAD)が付加されたデータ(符号化されたデータ)は、R/Wチャネルで新たに符号化されずにディスク媒体上のデータセクタに記録される。ここでポストアンブル(PAD)には、DCパターンが用いられる。このため、データセクタのポストアンブル部には、DCパターンが記録される。
【0008】
ディスク媒体に記録されたデータの読み出し(再生)はヘッドにより行われる。ヘッドにより読み出されたデータはヘッドICにより増幅されてR/Wチャネルに送られて、当該R/Wチャネルにより元のデータに復号される。
【0009】
リバースECCを適用する磁気ディスク装置において、ヘッドにより読み出されたデータ(セクタデータ)の波形(再生波形)は、当該磁気ディスク装置が長手記録方式或いは垂直記録方式いずれの磁気ディスク装置であるかによって異なる。図4(b)及び(c)は、それぞれ長手記録方式及び垂直記録方式の磁気ディスク装置における再生波形の一例を示す。図4(b)及び(c)に示される再生波形で大きく異なるのは、ポストアンブル(PAD)及び当該ポストアンブルに後続するデータ部分の波形である。
【0010】
図4(b)に示すように、長手記録方式の磁気ディスク装置では、再生波形のポストアンブル部のDCオフセットはほぼ0である。これに対して垂直記録方式の磁気ディスク装置では、再生波形のポストアンブル部分にDCオフセットが生じる。このDCオフセットは、図4(c)に示すようにポストアンブル部の終端に近づくほど増加(上昇)する。このポストアンブル部のDCオフセットは、後続するデータ部分の再生波形に影響を及ぼす。これに対し、旧来の磁気ディスク装置では、垂直記録方式の磁気ディスク装置でも、ポストアンブルが後続するデータ部分の再生波形に影響を及ぼすことはない。
【0011】
本発明者は、垂直記録方式の磁気ディスク装置において、ポストアンブルが後続するデータ部分の再生波形に影響を及ぼすか否かは、リバースECCを適用するか否かにあることを認識するに至った。
【0012】
即ち、リバースECCを適用しない磁気ディスク装置では、HDC内でポストアンブルが付加されたデータに対して、R/Wチャネル内でポストアンブルを含めて符号化が行われる。このため、ポストアンブルとして用いられるDCパターンは必ずランダムなパターンとなって、データセクタのポストアンブル部に記録される。これによりリバースECCを適用しない磁気ディスク装置では、垂直記録方式の磁気ディスク装置であっても、ポストアンブルにDCパターンを用いながら、ポストアンブルが後続するデータ部分の再生波形に影響を及ぼすおそれはない。これに対してリバースECCを適用する磁気ディスク装置では、ポストアンブルとして用いられるDCパターンはそのままデータセクタのポストアンブル部に記録される。このためリバースECCを適用する垂直記録方式の磁気ディスク装置では、再生波形のポストアンブル部分にDCオフセットが生じる。
【0013】
本発明は上記事情を考慮してなされたものでその目的は、ポストアンブル部にDCオフセットが発生するのを防止して再生波形の安定化を図ることができる垂直記録方式の磁気ディスク装置及びライトデータ生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの態様によれば、垂直記録方式の磁気ディスク装置が提供される。この磁気ディスク装置は、前記磁気ディスク装置とホストシステムとのインタフェースをなすディスクコントローラであって、前記ホストシステムから転送されたユーザデータを符号化すると共に、当該符号化されたユーザデータの誤り訂正のための誤り訂正符号(ECC)を符号化し、当該符号化されたユーザデータ及びECCから構成される符号化データの終端側に非DCパターンから構成されるポストアンブル(PAD)パターンを付加して出力するディスクコントローラと、前記ポストアンブルパターン(PAD)が付加された前記符号化データの始端側にプリアンブルパターンを付加することにより、ヘッドによりディスク媒体に書き込まれるべきライトデータを生成するリード/ライトチャネルとを具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リバースECCを適用する垂直記録方式の磁気ディスク装置において、ディスクコントローラ内で符号化されたデータ(符号化されたユーザデータ及び誤り訂正符号から構成される符号化データ)に当該ディスクコントローラ内で付加されるポストアンブル(PAD)パターンとして、非DCパターンが用いられる。このため、ポストアンブル(PAD)パターンが付加されたデータ(符号化データ)が当該ポストアンブル(PAD)パターンを含めてリード/ライトチャネルで符号化されなくても、当該データがディスク媒体に記録された際に、ポストアンブル(PAD)部にDCパターンが記録されるのを防止できる。これにより、ディスク媒体に記録されたデータがヘッドにより読み出された場合に、再生波形のポストアンブル(PAD)部にDCオフセットが発生するのを防止して、安定した再生波形を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る垂直記録方式の磁気ディスク装置(HDD)の構成を示すブロック図である。このHDDは、大きく分けて、ヘッドディスクアセンブリ部(HDA部)100と、印刷回路基板部(PCB部)200とから構成される。
【0017】
HDA部100は、HDDの本体部であり、垂直記録(垂直磁気記録)用のディスク媒体110と、ヘッド120-0及び120-1の対と、スピンドルモータ(SPM)130と、アクチュエータ140と、ヘッドアンプIC(HIC)150とを有する。
【0018】
ヘッド120-0及び120-1は、ディスク媒体110のそれぞれ上面及び下面に対応して配置される。各ヘッド120-0及び120-1はいずれも、ヘッド本体であるスライダ(ABS)に、リードヘッド(GMR素子)及びライトヘッドを有する磁気ヘッド素子が実装されることにより構成される複合ヘッドである。ヘッド120-0及び120-1は、アクチュエータ140に搭載されている。
【0019】
アクチュエータ140は、ヘッド120-0及び120-1をそれぞれ支持するサスペンションアーム141-0及び141-1と、当該アーム141-0及び141-1を回転自在に支持するピボット軸142と、ボイスコイルモータ(VCM)143とを有する。VCM143はアクチュエータ140の駆動源であり、アーム141-0及び141-1にピボット軸142周りの回転トルクを発生させて、ヘッド120-0及び120-1をディスク媒体110の半径方向に移動させる。
【0020】
ヘッド120-0及び120-1は、当該ヘッド120-0及び120-1の入出力信号(記録再生信号)を増幅するためのHIC150と接続されている。HIC150は、例えばアクチュエータ140の所定部位に固定され、フレキシブル印刷回路基板(FPC)で、PCB部200側と電気的に接続されている。但し、図1では、作図の都合で、HIC150は、アクチュエータ140から離れた箇所に配置されている。このように本実施形態では、HIC150は、ヘッド120-0及び120-1の記録再生信号のSN低減のために、当該ヘッド120-0及び120-1の近傍のアクチュエータ140に設けられている。しかし、HIC150がPCB部200に固定された構成であっても良い。
【0021】
一方、PCB部200は、主として2つのLSI、即ちモータドライバIC210及びシステムLSI220を有している。モータドライバIC210は、SPM130及びVCM143を駆動する。即ちモータドライバIC210は、SPM130を一定の回転速度で駆動制御する。モータドライバIC210はまた、後述するCPU250から指定されたVCM操作量を、電流値としてVCM143に与えることで、アクチュエータ140を駆動する。
【0022】
システムLSI220は、リード/ライトチャネル(R/Wチャネル)230、ディスクコントローラ(HDC)240及びCPU250が単一チップに集積されたSOC(System on Chip)と呼ばれるLSIである。
【0023】
R/Wチャネル230は、リード/ライトに関連する信号処理を行うデバイスである。R/Wチャネル230は、HIC150のチャネル切り替え、更にはヘッド120-0及び120-1の記録再生信号を処理する回路で構成される。R/Wチャネル230は、リードチャネル231及びライトチャネル232を有する。リードチャネル231は、HIC150から出力される再生信号(リード信号)に対するA/D(アナログ/デジタル)変換処理、リードデータの復号化処理等を行う。ライトチャネル232は、HDC240から出力される符号化されたデータにプリアンブル(PLL)を付加する処理等を行う。プリアンブル(PLL)は、予め定められた周波数の同期パターンからなるデータであり、クロック信号の生成のための同期信号や再生信号の自動ゲインコントロール(AGC)に用いられる。R/Wチャネル230はまた、HIC150から出力されるリード信号からサーボ情報を検出するサーボチャネル(図示せず)を有する。
【0024】
HDC240は、HDDと当該HDDを利用するパーソナルコンピュータのようなホストシステムとのインターフェースを構成する。HDC240は、ホストシステムから転送されたユーザデータをデータセクタに対応する一定サイズに分割し、分割されたユーザデータ、ECC及びポストアンブルを含むデータをライトチャネル232に送出する機能を有する。ここで、ユーザデータ及びECCは、HDC240によって符号化されている。つまり本実施形態では、リバースECCが適用されている。ポストアンブルには非DCパターン(非DC信号パターン)が用いられる。HDC240はまた、R/Wチャネル230のリードチャネル231によって復号されたデータ中のECCに基づいて、当該データのエラー検出・訂正を行う機能を有する。
【0025】
CPU250は、HDDの主コントローラとして用いられる。CPU250は、R/Wチャネル230中のサーボチャネルによって検出されたサーボ情報に基づいてヘッド120-i(i=0,1)を目標トラックの目標位置に位置付けるヘッド位置決め制御を行う。CPU250は、ROM(例えばフラッシュROM)、RAM、MPU(マイクロプロセッサユニット)を含む。ROMは、制御プログラム(ファームウェアプログラム)を保存する。CPU250(内のMPU)は、この制御プログラムに従ってHDDを制御する。
【0026】
図2は、図1に示されているHDC240のライト系に関する構成を示すブロック図である。HDC240は、RLLエンコーダ241と、ECC生成器242と、RLLエンコーダ243とランダムポストアンブル生成器244とを含む。
【0027】
RLLエンコーダ241は、図示せぬスクランブラを内蔵しており、データセクタに対応する一定サイズ(例えば512)のユーザデータ(DATA)を当該スクランブラによりランダム化(スクランブル)する。RLLエンコーダ241は、このランダム化(スクランブル)されたユーザデータ(DATA)をチャネル記録符号であるRLL(Run Length Limited)コードに変換(変調)する。
【0028】
ECC生成器242は、RLLエンコーダ241によって符号化(スクランブル及び符号化)されたユーザデータ(DATA)に基づき、ECC及びCRC(CRC/ECC)を生成して、当該CRC/ECCを符号化されたユーザデータ(DATA)の終端側に付加する。
RLLエンコーダ243は、CRC/ECCをRLLコードに変換する。
【0029】
ランダムポストアンブル生成器244は、符号化されたユーザデータ及びCRC/ECCの終端側に付加されるポストアンブル(PAD)として、非DCパターン、例えばランダムパターンから構成されるポストアンブル(PAD)を生成する。ポストアンブル(PAD)は、例えば最尤(Maximum Likelihood)判定(ML判定)を終了させるために付加されるデータである。ML判定は、ユーザデータをパーシャルレスポンス最尤(Partial Response Maximum Likelihood)処理(PRML処理)で復号する際に実行される。
【0030】
次に、本実施形態において、ホストシステムから転送されたユーザデータから、ディスク媒体110に書き込まれるべきライトデータを生成するまでの信号の流れについて、図3図を参照して説明する。
【0031】
まず、ホストシステムから図1のHDDに例えば1データセクタに対応するサイズ(ここでは512バイト)のユーザデータ(DATA)31が転送されたものとする。このユーザデータ(DATA)31はHDC240で受信される。
【0032】
HDC240内のRLLエンコーダ241は、このユーザデータ(DATA)31をランダム化(スクランブル)して、当該ランダム化(スクランブル)されたユーザデータ(DATA)をRLLコードに変換(変調)する。このRLLエンコーダ241によるRLLコードへの変換(つまり符号化)には、例えば200(または400)シンボルを201(または401)シンボルに符号化する高レート(High Rate: HR)変換が用いられるものとする。この符号化されたユーザデータ(Scramble and HRRLL DATA)32は、ECC生成器242に入力される。
【0033】
ECC生成器242は、符号化されたユーザデータ(Scramble and HRRLL DATA)32に基づいてECC及びCRC(CRC/ECC)33を生成する。ECC生成器242は、生成されたECC及びCRC(CRC/ECC)33を符号化されたユーザデータ(Scramble and HRRLL DATA)32の終端側に付加する。ユーザデータ(Scramble and HRRLL DATA)32の終端側に付加されたECC及びCRC(CRC/ECC)33はRLLエンコーダ243に入力される。ECC及びCRCの生成は一例であり、例えばECCのみが生成される構成であっても構わない。
【0034】
RLLエンコーダ243は、符号化されたユーザデータ(Scramble and HRRLL DATA)32及び生成されたECC及びCRC(CRC/ECC)33のうちの、符号化されていないECC及びCRC(CRC/ECC)33のみをRLLコードに変換(符号化)する。このRLLエンコーダ243によるRLLコードへの変換には、例えば30(または60)シンボルを31(または61)シンボルに符号化する低レート(Low Rate: LR)変換が用いられるものとする。
【0035】
RLLエンコーダ243によって符号化されたECC及びCRC(CRC/ECC)34は、RLLエンコーダ241によって先に符号化されているユーザデータ(Scramble and HRRLL DATA)32の終端側に連結される。連結されたデータ(ユーザデータ32及びCRC/ECC34から構成される符号化データ)35はランダムポストアンブル生成器244に入力される。
【0036】
ランダムポストアンブル生成器244は、符号化されたユーザデータ(Scramble and HRRLL DATA)32及び符号化されたECC及びCRC(CRC/ECC)34が連結された符号化データ35の終端側に付加されるべきポストアンブルを生成する。本実施形態においてランダムポストアンブル生成器244は、このポストアンブルとして、ランダムパターンから構成されるポストアンブル(Random PAD)36を生成する。ランダムパターン(ランダム信号パターン)は、当該パターンがディスク媒体110に記録された場合に、磁化反転がランダムに繰り返される非DCパターン(非DC信号パターン)である。ランダムポストアンブル生成器244は、生成されたポストアンブル(Random PAD)36を、符号化データ35の終端側に付加する。なお、ポストアンブル(Random PAD)36を符号化データ35に付加する動作を、ランダムポストアンブル生成器244とは別の専用の回路で行うようにしても良い。例えば、ユーザデータ(Scramble and HRRLL DATA)32、ECC及びCRC(CRC/ECC)33及びポストアンブル(Random PAD)36を順に連結してライトチャネル232に送出する回路を用いても良い。
【0037】
符号化データ35とポストアンブル(Random PAD)36とから構成されるデータ37は、HDC240からR/Wチャネル230のライトチャネル232に送られる。リバースECCが適用される本実施形態では、ライトチャネル232は以下に述べるようにデータ37に対する符号化を行わない。
【0038】
ライトチャネル232は、単に、例えばデータ37中の符号化データ35の一定ビット数を単位にパリティ生成回路(図示せず)によりパリティビットを付加する。このパリティビットが付加されたデータ38は、符号化されたランダムパターンデータ(Random pattern data)である。このデータ(Random pattern data)38の終端側にはポストアンブル(Random PAD)36が付加されている。ライトチャネル232は、データ(Random pattern data)38及びポストアンブル(Random PAD)36から構成されるデータ39の始端側にプリアンブル(PLL)40を付加する。ライトチャネル232は、このプリアンブル(PLL)40、データ(Random pattern data)38及びポストアンブル(Random PAD)36から構成されるデータ(セクタデータ)をライトデータ41として出力する。このライトデータ41は、HIC150を介してヘッド120-iに供給されて、当該ヘッド120-iによりディスク媒体110上の目標データセクタに記録される。
【0039】
本実施形態において、ライトデータ41中のポストアンブル36には、非DCパターンであるランダムパターンが用いられている。このため、ライトチャネル232において符号化(或いはスクランブル)が行われなくても、ディスク媒体110に記録されるポストアンブル36のDCパターン化を防ぐことができる。
【0040】
ディスク媒体110に記録されたデータ(セクタデータ)はヘッド120-iにより読み出される(再生される)。ヘッド120-iにより読み出されたデータ(セクタデータ)は、HIC150により増幅されてR/Wチャネル230のリードチャネル231に送られる。リードチャネル231は、HIC150によって増幅されたデータ(リード信号)に対するA/D(アナログ/デジタル)変換処理、A/D変換されたデータ(リードデータ)の復号化処理等を行う。これによりリードチャネル231は、復号されたユーザデータ並びにECC及びCRC(CRC/ECC)を取得して、当該ユーザデータ及びCRC/ECCをHDC240に送出する。HDC240は、CRC/ECCに基づきユーザデータの誤り検出・訂正を行う。
【0041】
ヘッド120-iにより読み出されたデータ(セクタデータ)の波形(再生波形)の一例を図4(a)に示す。また、リバースECCを適用する従来の磁気ディスク装置におけるセクタデータの再生波形の例を、長手記録方式及び垂直記録方式の各々について、それぞれ図4(b)及び図4(c)に示す。
【0042】
図4(a)に示すように、本実施形態では、セクタデータの再生波形は、ポストアンブル(PAD)部においてDCパターン化されていない。したがって本実施形態においては、ポストアンブル(PAD)部でDCオフセットが発生するおそれはない。つまり、ポストアンブル(PAD)が、後続のセクタデータの再生波形に影響を及ぼすおそれはなく、このため再生波形の品質が向上する。
【0043】
これに対して、従来の磁気ディスク装置では、ポストアンブル(PAD)にDCパターンが用いられている。このため、従来の磁気ディスク装置のうち、垂直記録方式の磁気ディスク装置では、図4(c)に示すように、再生波形のポストアンブル部分にDCオフセットが生じる。このDCオフセットは、ポストアンブル部の終端に近づくほど増加(上昇)する。このポストアンブル部のDCオフセットは、後続のセクタデータの再生波形に影響を及ぼす。
【0044】
なお、上記実施形態では、ポストアンブル生成器244により、ランダムパターンから構成されるポストアンブルが生成される。しかし、ポストアンブルが非DCパターン(非DC信号パターン)であればランダムパターン(ランダム信号パターン)に限らない。例えば、ACパターン(AC信号パターン)から構成されるポストアンブルが生成されても構わない。ACパターンは、当該パターンがディスク媒体110に記録された場合に、磁化反転が周期的に繰り返される非DCパターンである。
【0045】
[変形例]
次に、上記実施形態の変形例について図面を参照して説明する。
図5は、上記実施形態の変形例においてHDC240に代えて適用されるHDC340のライト系に関する構成を示すブロック図である。図5において、図3と同様の要素には同一符号を付してある。必要ならば、図1において、HDC240をHDC340に置き換えられたい。このHDC340の構成がHDC240のそれと異なる点は、ランダムポストアンブル生成器244に代えてポストアンブル生成器245a及びポストアンブルスクランブラ245bが用いられていることにある。
【0046】
ポストアンブル生成器245aは、符号化されたユーザデータ及びCRC/ECCの終端側に付加されるポストアンブル(PAD)として、従来の磁気ディスク装置におけるのと同様に、DCパターンを生成する。ポストアンブルスクランブラ245は、DCパターンをランダム化することによりランダム化されたポストアンブル(ランダムポストアンブル)(PAD)を生成する。
【0047】
次に、上記実施形態の変形例において、ホストシステムから転送されたユーザデータから、ディスク媒体110に書き込まれるべきライトデータを生成するまでの信号の流れについて、図6を参照して説明する。図6において図2と同様の部分には同一符号を付してある。
【0048】
まず、ホストシステムから転送されたユーザデータ(DATA)31がHDC340で受信されてから、符号化されたユーザデータ(Scramble and HRRLL DATA)32に基づいてECC及びCRC(CRC/ECC)33が生成されるまでの流れは、上記実施形態と同様である。
【0049】
ポストアンブル生成器245aは、符号化されたユーザデータ(Scramble and HRRLL DATA)32及び符号化されたECC及びCRC(CRC/ECC)34が連結されたデータ35の終端側に付加されるべきポストアンブルを生成する。本実施形態においてポストアンブル生成器245aは、このポストアンブル(PAD)として、DCパターンから構成されるポストアンブル(PAD)360を生成する。ポストアンブル生成器245aは、生成されたポストアンブル(PAD)360を、符号化されたデータ35の終端側に付加する。ここまでの動作は、従来の磁気ディスク装置のHDCにおける動作と同様である。
【0050】
ポストアンブルスクランブラ245bは、符号化されたデータ35に付加されているポストアンブル(PAD)360をスクランブル(ランダム化)することにより、当該ポストアンブル(PAD)360をランダムパターン(つまり非DCパターン)から構成されるポストアンブル(Random PAD)36に変換する。このようにポストアンブルスクランブラ245bは、DCパターンから構成されるポストアンブル(PAD)360を非DCパターン(ここではランダムパターン)に変換する変換手段として機能する。
【0051】
符号化されたデータ35とポストアンブル(Random PAD)36とから構成されるデータ37は、HDC340からR/Wチャネル230のライトチャネル232に送られる。以降の信号の流れは上記実施形態と同様である。即ち、プリアンブル(PLL)40、データ(Random pattern data)38及びポストアンブル(Random PAD)36から構成されるデータ(セクタデータ)がライトデータ41としてライトチャネル232から出力される。このライトデータ41は、HIC150を介してヘッド120-iに供給されて、当該ヘッド120-iによりディスク媒体110上の目標データセクタに記録される。
【0052】
上記実施形態の変形例においても、ライトデータ41中のポストアンブル36には、非DCパターンであるランダムパターンが用いられる。このため、ライトチャネル232において符号化(或いはスクランブル)が行われなくても、ディスク媒体110に記録されるポストアンブル36のDCパターン化を防ぐことができる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態またはその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態またはその変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態またはその変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る垂直記録方式の磁気ディスク装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示されているHDCのライト系に関する構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態において、ホストシステムから転送されたユーザデータからライトデータを生成するまでの信号の流れを示す図。
【図4】同実施形態における再生波形の例を、リバースECCを適用する従来の長手記録方式及び垂直記録方式の磁気ディスク装置におけるそれぞれの再生波形と対比して示す図。
【図5】同実施形態の変形例で適用されるHDCのライト系に関する構成を示すブロック図。
【図6】同変形例において、ホストシステムから転送されたユーザデータからライトデータを生成するまでの信号の流れを示す図。
【符号の説明】
【0055】
110…ディスク媒体、120-0,120-1…ヘッド、150…ヘッドIC(HIC)、220…システムLSI、230…リード/ライトチャネル(R/Wチャネル)、231…リードチャネル、232…ライトチャネル、240,340…ディスクコントローラ(HDC)、241…RLLエンコーダ、242…ECC生成器、243…RLLエンコーダ、244…ランダムポストアンブル生成器、245a…ポストアンブル生成器、245b…ポストアンブルスクランブラ(変換手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直記録方式の磁気ディスク装置において、
前記磁気ディスク装置とホストシステムとのインタフェースをなすディスクコントローラであって、前記ホストシステムから転送されたユーザデータを符号化すると共に、当該符号化されたユーザデータの誤り訂正のための誤り訂正符号を符号化し、当該符号化されたユーザデータ及び誤り訂正符号から構成される符号化データの終端側に非DCパターンから構成されるポストアンブルパターンを付加して出力するディスクコントローラと、
前記ポストアンブルパターンが付加された前記符号化データの始端側にプリアンブルパターンを付加することにより、ヘッドによりディスク媒体に書き込まれるべきライトデータを生成するリード/ライトチャネルと
を具備することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記ディスクコントローラは、
DCパターンから構成されるポストアンブルパターンを生成するポストアンブル生成器と、
前記ポストアンブル生成器によって生成されるポストアンブルパターンを前記非DCパターンから構成されるポストアンブルパターンに変換する変換手段と
を含むことを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記変換手段は、前記ポストアンブル生成器によって生成されるポストアンブルパターンをスクランブルすることにより、当該ポストアンブルパターンを前記非DCパターンから構成されるポストアンブルパターンに変換することを特徴とする請求項2記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
垂直記録方式の磁気ディスク装置においてポストアンブルパターンが付加されたライトデータを生成するためのライトデータ生成方法であって、
ホストシステムから転送されたユーザデータを当該ホストシステムと前記磁気ディスク装置とのインタフェースをなすディスクコントローラで符号化するステップと、
前記符号化されたユーザデータの誤り訂正のための誤り訂正符号を前記ディスクコントローラで生成するステップと、
前記生成された誤り訂正符号を前記ディスクコントローラで符号化するステップと、
符号化されたユーザデータ及び誤り訂正符号から構成される符号化データの終端側に非DCパターンから構成されるポストアンブルパターンを付加するステップと、
前記ポストアンブルパターンが付加された符号化データを前記ディスクコントローラからリード/ライトチャネルが受けて、当該ポストアンブルパターンが付加された符号化データの始端側にプリアンブルパターンを付加することにより、ヘッドによりディスク媒体に書き込まれるべきライトデータを生成するステップと
を具備することを特徴とするライトデータ生成方法。
【請求項5】
前記ポストアンブルパターンを付加するステップは、
DCパターンから構成されるポストアンブルパターンを生成するステップと、
前記生成されたポストアンブルパターンを前記非DCパターンから構成されるポストアンブルパターンに変換するステップと
を含むことを特徴とする請求項4記載のライトデータ生成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−10104(P2008−10104A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182055(P2006−182055)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】