説明

型取り方法

【課題】本発明は、手や足、その他の型取りをする物を、朱肉や墨などで汚すことなく、また、成分が不明な専用液を使用することなく、手や手の一部、足や足の一部、その他の物の型取りが簡便にでき、長期保存性に優れた型取り用シートを用いた型取り方法を提供する。
【解決手段】シート状基体と、該基体の少なくとも一面に形成され、かつ、無色又は淡色の染料前駆体、およびこの染料前駆体と反応してこれを発色させる顕色剤を含む発色層とを有する型取りシートの表面に、型取り対象物を押し当てて、型取り対象物に含まれる発色抑制成分を転写した後、発色処理を行ない、型取りシート上に対象物の形状を記録する型取り方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手がた、足がた、その他の型取りを簡便に行なう事ができ、長期保存性に優れた、型取り用のシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、人間や動物の一部(手がた、足がた)、魚(魚拓)、あるいは、それ以外にも物品の型をとる必要性は日常生活の中にあり、例えば、物品の実際のサイズを写し取り、先方に知らせる事もできる。従来、手がた、足がたは医学的に手、足の成長過程を簡便に知る方法として用いられ、その需要は大きい。特に、足がたは偏平足判定のためや、オーダーによる靴型作成のために簡便な方法として用いられている。また、手がた、足がたは、子供の誕生記念や家族の記念、ペットの記念などの、記念の品として、用いられていることも多い。一般に手がた又は足がた等の型をとる方法として、型を取る手または足に朱肉や墨、または、専用の液体等を塗って紙などのシート基材に接触して写し取る方法がよく行われている。
【0003】
しかし、朱肉や墨などの方法は、手や足を朱肉や墨等で汚す不快感を伴い、また、型を取った後も手や足に付着した朱肉等を取り除くのが、困難であり、衣服や床などを汚す等も欠点がある。また、専用の液体を用いる場合、その中に含まれている成分が必ずしも明瞭でない事が多く、塗ることに抵抗感を伴う事が多い。特に子供の手がたや、足がたをとる場合は安全性が重要な問題となる。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するような改良手段が望まれている。この要求に応えようとするために、水を塗るだけで型をとれる、水発色層を設けた水発色性シート(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。また、簡便に型がとれる方法として、染料と顕色剤を用いた発色シートに、減感剤を付着させた物の型をとる技術(例えば、特許文献2、および特許文献3参照。)が提案されている。しかし、これらは手や足を汚さない点では、効果があるが、長期保存性は充分であると言えない。このように、手や足などを汚すことなく、長期保存性に優れた型取りシートの提案はまだされていない。
【0005】
【特許文献1】特開平3−224783号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平3−140142号公報(第1頁)
【特許文献3】特開平3−131239号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、手や足、その他の型取りをする物を、朱肉や墨などで汚すことなく、また、成分が不明な専用液を使用することなく、手や手の一部、足や足の一部、その他の物の型取りが簡便にでき、長期保存性に優れた型取り用シートを用いた型取り方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、本発明は下記の構成を採用する。
(1)シート状基体と、該基体の少なくとも一面に形成され、かつ、無色又は淡色の染料前駆体、およびこの染料前駆体と反応してこれを発色させる顕色剤を含む発色層とを有する型取りシートの表面に、型取り対象物を押し当てて、型取り対象物に含まれる発色抑制成分を転写した後、発色処理を行ない、型取り対象物の形状を型取りシート上に記録することを特徴とする型取り方法。
【0008】
(2)シート状基体と、該基体の少なくとも一面に形成され、かつ、無色又は淡色の染料前駆体、およびこの染料前駆体と反応してこれを発色させる顕色剤を含む発色層とを有する型取りシートの表面に、発色抑制剤を塗布した型取り対象物の塗布面を押し当てて発色抑制剤を転写した後、発色処理を行ない、型取り対象物の形状を型取りシート上に記録することを特徴とする型取り方法。
【0009】
(3)シート状基体と、該基体の少なくとも一面に形成され、かつ、無色又は淡色の染料前駆体、およびこの染料前駆体と反応してこれを発色させる顕色剤を含む発色層とを有する型取りシートの表面に、発色抑制剤を塗布した型取り対象物の塗布面を押し当てて発色抑制剤を転写した後、この型取りシートの上に、さらに転写用シートを重ねて発色処理を行ない、型取り対象物の形状を転写用シートに記録することを特徴とする型取り方法。
(4)前記転写用シートが、紙、コーテッド紙、ラミネート紙、合成紙、およびプラスチックフィルムから選ばれる1種である(3)項に記載の型取り方法。
【0010】
(5)前記発色抑制剤が、脂肪族炭化水素化合物、脂肪族エステル化合物、脂肪族アルコール化合物、脂環式アルコール化合物、脂肪酸化合物、脂肪族アミン化合物、芳香族エステル化合物、芳香族アルコール化合物、芳香族アミン化合物、多価アルコール化合物、高分子シリコーン化合物、および界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である(2)項または(3)項に記載の型取り方法。
【0011】
(6)前記顕色剤が、下記の一般式(I)および一般式(II)で表される構造を少なくとも一つ有する化合物である、(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の型取り方法。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
(7)前記顕色剤が、下記の一般式(III)、構造式(IV)、および構造式(V)で表される化合物より選ばれる少なくとも1種の化合物である(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の型取り方法。
【0015】
【化3】

(ただし、式(III)において、nは1〜10の整数である。)
【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
(8)前記発色抑制剤が、市販ハンドクリーム、市販ベビークリーム、ベビーオイル、食用油、乳液、クレンジングオイル、コールドクリーム、ボディーローション、およびボディークリームから選ばれる少なくとも1種である(2)項または(3)項に記載の型取り方法。
(9)前記発色処理が、型取りシートの発色温度以上の加熱処理である(1)項〜(3)項いずれか1項に記載の型取り方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、手がた、足がた、その他型取りをする物を朱肉や墨などで汚すことなく、鮮明に型取りできる。型を取られる対象物にハンドクリームや油脂等を塗るので、体に害もなく、子供や赤ちゃんの手がた、足がたなどにも使用できる。使用する型取り用シートは、アイロンなどの熱源で発色することが可能であり、操作も簡単で、保存性の良い着色塗布層を設けているため、長期保存が必要な子供の成長記録やお誕生記念、又は、動物(ペット)の足がたの型取りにも大きな効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、シート状基体と、該基体の少なくとも一面に形成され、かつ、無色又は淡色の染料前駆体、およびこの染料前駆体と反応してこれを発色させる顕色剤を含む発色層とを有する型取りシート(発色シートとも言う。)と、型を取られる対象物(型取り対象物とも言う。)に含まれる発色抑制成分との組み合わせで、物体の像形や跡を型取ることを特徴としている。即ち、型取りシートの表面に、型取り対象物を押し当てて、型取り対象物に含まれる発色抑制成分を転写した後、発色処理を行なうことにより、型取りシート上に未発色の消色像が形成され、対象物の形状を示すものである。
【0021】
例えば、型取りシートの表面に、人間の手や足を押し当てて皮脂を転写し、その後発色処理を行なうことで、対象物の型(輪郭だけではなく、跡やしわも含む。)をシート上に残すことが可能である。人間の手(例えば、手の平や指)や足(例えば、足の裏や指)は、上記塗布剤をつけない場合でも、その形や跡を型取ることができる。それは、人間の手の平や足の裏には、分泌された皮脂の主成分としてコレステロール(脂環式アルコール)やスクワレン(炭化水素化合物)やトリグリセライド(脂肪族エステル化合物)等の油脂類が多く付着しており、発色抑制効果を有している為である。
【0022】
型取り対象物に含まれる発色抑制成分としては、型取り対象物の表面に発色抑制剤を塗布したものでもよく、例えば、以下のような方法が好ましく、より鮮明で、保存性に優れた記録が得られる。
(1)型取り対象物表面に発色抑制剤を塗布した後、この塗布面を、型取りシートの表面に押し当てて発色抑制剤を転写した後、発色処理を行ない、型取り対象物の形状を型取りシート上に記録する方法。
(2)型取り対象物表面に発色抑制剤を塗布した後、この塗布面を、型取りシートの表面に押し当てて発色抑制剤を転写した後、この型取りシートの上に、さらに転写用シートを重ねて発色処理を行ない、型取り対象物の形状を転写用シートに記録する方法。
【0023】
本発明の発色処理としては、特定の感熱発色層を有する型取りシートを用いて、発色抑制剤が転写されていない部分を、加熱処理により発色させる方法が好ましく行われる。発色処理温度としては、50〜200℃の範囲が好ましく、50℃未満では記録画像の保存性等が不十分となることがあり、一方200℃を超えると、安全面等からも好ましくない。
また、発色抑制剤の塗布方法については、特に限定するものではなく、対象物表面に発色抑制剤が均一に付着すればよく、例えば、手や刷毛などで発色抑制剤を型取り対象物の表面に塗る方法や、スプレイ等を用いることも可能である。また、バットやお皿に発色抑制剤入れて、そこに対象物を浸してもよい。
【0024】
上記の発色抑制剤としては、脂肪族炭化水素化合物、脂肪族エステル化合物、脂肪族アルコール化合物、脂環式アルコール化合物、脂肪酸化合物、脂肪族アミン化合物、芳香族エステル化合物、芳香族アルコール化合物、芳香族アミン化合物、多価アルコール化合物、高分子シリコーン化合物、および界面活性剤から選ばれる少なくとも1種が好ましく使用される。
【0025】
例えば、脂肪族炭化水素化合物としては、ワセリン、スクワレン、流動パラフィン等。脂肪族エステル化合物としては、トリグリセライド、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、2−メチル酪酸イソブチル、2−メチル酪酸、2−メチル酪参イソアミル、イソアミルエステル、ステアリン酸ブチル、イソ吉草酸ブチルイソアミル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル等。
【0026】
脂肪族アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、クロチルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ラウリルアルコール、ヘキシルデカノール、べへニルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール等。脂環式アルコール化合物としては、コレステロール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、4−メチル−シクロヘキサノール等。
【0027】
脂肪酸化合物としては、オレイン酸、リノール酸、バルミチン酸、ステアリン酸、ラノリン脂肪酸、コハク酸、ウンデシレン酸等。脂肪族アミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、N−メチル−ジエチルアミン、N−エチル−ジメチルアミン、N−エチル−ジアミルアミン、ドデシルアミン、トリエチノールアミン、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)エチルアミン、ポリオキシプロピレンジエチルアミン付加物等。
【0028】
芳香族エステル化合物としては、パラアミノ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、フタル酸ジエチル等。芳香族アルコール化合物としては、ベンジルアルコール、p−クロル−ベンジルアルコール、シクロペンタノール等。芳香族アミン化合物としては、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、アニリン、o−トルイジン、2−エチルアニリン、2−フルオロアニリン等。
【0029】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトールポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、ジプロピレングリコール等。高分子シリコーン化合物としては、メチルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸等。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
【0030】
さらに、本発明の発色抑制剤としては、市販ハンドクリーム、市販ベビークリーム、ベビーオイル、食用油、乳液、クレンジングオイル、コールドクリーム、ボディーローション、およびボディークリームから選ばれる少なくとも1種を使用することも可能で、当然のことながら、使用感が良好であり、好ましく用いられる。
【0031】
本発明の型取りシートに用いられるシート状基材又は転写用シート基材としては、紙(酸性抄紙紙、中性抄紙紙を含む)、板紙、表面に顔料、ラテックスなどを塗工したコーテッド紙、ラミネート紙、ポリオレフィン系樹脂から作られた合成紙、プラスチックフィルム、などから選ぶことができる。このようなシート状基体の少なくとも一面上に、上記所要成分の混合物を含む塗布液を塗布し、乾燥して型取りシートを製造する。塗布量は、塗布液層が乾燥した状態で1〜15g/mが好ましく、2〜10g/mがより好ましい。
本発明の発色シートの支持体として、上記発色層との間に、顔料と接着剤を含有する下塗り層を設けることもできる。
【0032】
本発明の型取りシートの発色層において、無色ないし淡色の染料前駆体として使用されるロイコ染料としては、トリフェニルメタン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系化合物等が挙げられ、従来公知のものから選ぶことができる。例えば、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、クリスタルバイオレットラクトン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−7,8−ベンゾフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−7−N−メチルアニリノフルオラン、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノ−ベンゾ〔a〕フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o、p−ジメチルアニリノ)フルオラン、
【0033】
3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、および3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン等から選ばれた1種以上を用いることができる。
【0034】
本発明の型取りシートの発色層において、顕色剤としては、前記一般式(I)、あるいは一般式(II)で表される構造を少なくとも一つ有する化合物が使用される。
一般式(I)で表される構造を有する顕色剤としては、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、4−ヒドロキシ−4’−イソプロピルオキシジフェニルスルホン(特開昭60−13852号公報)、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、3,3’−ジアリル−4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(特開昭60−208286号公報)、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール(特開平8−269000号公報)、2、4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、あるいは下記一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化6】

(ただし、式(III)において、nは1〜10の整数であり、好ましくは1〜8の整数である。さらに好ましくは、n=1の化合物を主成分して、少なくともn=2、n=3の化合物を含む。)
【0036】
さらに、下記化学式で示されるウレア・ウレタン化合物(例えば、国際公開WO00−14058号公報参照。)等が挙げられる。
【0037】
【化7】

【0038】
一般式(II)で表される構造を有する顕色剤としては、特開平5−32061号公報に開示されている、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニル尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(p−メトキシフェニル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(o−トリル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(m−トリル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(p−トリル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(o−クロロフェニル)尿素、N−(ベンゼンスルホニル)−N’−フェニル尿素、N−(p−クロロベンゼンスルホニル)−N’−フェニル尿素など、特開2000−355167号公報に開示されている、ブチル 4−(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ベンゾエートなどの一分子中に一つのスルホニルウレア基を有する化合物、または、一分子中に2つ以上のスルホニルウレア基を有する化合物としては、特開平5−147353号公報に開示されている、4,4′−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)−ジフェニルメタンや、4,4′−ビス〔4−(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)フェニルメチル〕ジフェニルウレア(特開平07−267918号公報)、4,4′−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルスルフィド、3,4′−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらの化合物は、併用することができる。
【0039】
又、本発明の型取りシートの発色層においては、所望の効果を阻害しない範囲でフェノール類、又は、ウレア基およびウレタン基をもつウレア・ウレタン化合物有機酸からなる化合物などの従来公知の顕色剤を、本発明の一般式(I)および(II)で表される構造を有する化合物と併用することができる。
これら従来の顕色剤としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス(1−メチル−1−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル)ベンゼン、1,3ービス(1−メチル−1−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル)ベンゼン、ジヒドロキシジフェニルエーテル(特開平1−180382号公報)、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル(特開昭52−140483号公報)、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,7−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン(特開昭59−52694号公報)や、下記化合物等が挙げられる。
【0040】
【化8】

【0041】
更に本発明の型取りシートの発色層において、所望の効果を損なわない範囲内で従来公知の熱可融性物質(増感剤)を併用することもできる。それらの代表的な例としては、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル(特開昭57−191089号公報)、p−ベンジルビフェニル(特開昭60−82382号公報)、ベンジルナフチルエーテル(特開昭58−87094号公報)、ジベンジルテレフタレート(特開昭58−98285号公報)、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル(特開昭57−201691号公報)、炭酸ジフェニル、炭酸ジトリル(特開昭58−136489号公報)、m−ターフェニル(特開昭57−89994号公報)、1,2−ビス(m−トリルオキシ)エタン(特開昭60−56588号公報)、1,5−ビス(p−メトキシフェノキシ)−3−オキサペンタン(特開昭62−181183号公報)、シュウ酸ジエステル類(特開昭64−1583号公報)、1,4−ビス(p−トリルオキシ)ベンゼン(特開平2−153783号公報)などが挙げられる。
【0042】
本発明の型取りシートの発色層は、さらにワックス類を含むことができ、また、有機又は無機顔料類を含んでいることが好ましい。発色塗被層は、更に、これらの成分を支持体に固着するためのバインダーを含むものである。
【0043】
発色層における上記ロイコ染料の発色層中の含有率は、一般に発色層の乾燥質量の5〜30質量%であることが好ましい。本発明の顕色剤の含有率は一般に5〜50重量%であることが好ましい。含有率が5質量%未満では顕色能力に不足をきたすことがあり、50質量%を超えて入れても顕色能力が飽和して格別の改善は見られず、経済的に不利となることがある。また、発色層に増感剤を含有させる場合、50質量%を超えて添加しても増感効果は飽和し、さらなる感度の上昇は望めないため、50質量%以内が好ましい。
【0044】
発色層に従来公知のフェノール系あるいは有機酸系顕色剤が含まれる場合、その含有率は、5〜40質量%であることが好ましい。ワックス類、白色顔料が発色層に含まれる場合、各々の発色層中の含有率は、それぞれ2〜20質量%、2〜70質量%であることが好ましく、またバインダーの含有率は一般に5〜20質量%である。
【0045】
上記の有機又は無機の顔料としては、例えば炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、焼成クレー、タルク、および表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機系微粉末の他、並びに、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体、およびポリスチレン樹脂等の有機系の微粉末などを挙げることができる。
またワックス類としては、例えば、パラフィン、アミド系ワックス、ビスイミド系ワックス、高級脂肪酸の金属塩など公知のものを用いることができる。
【0046】
前記バインダーについては、種々の分子量のポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸3元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、およびカゼインなどの水溶性高分子材料、並びに、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびスチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等の各々のラテックスを用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0048】
実施例1
下記操作により型取り用シートを作成した。
(1)分散液Aの調製
成 分 量(部)
3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン 20
ポリビニルアルコール 10%水溶液 10
水 70
上記組成物を、サンドグラインダーを用いて、平均粒径が1μm以下になるまで粉砕した。
【0049】
(2)分散液Bの調製
成 分 量(部)
2,2’−[4,(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ジエチルエーテル重縮合混合物(組成比:重合度(n=1)42.8%、(n=2)22.2%、(n=3)10.8%、(n=4〜7)11.8%) 20
ポリビニルアルコ―ル 10%水溶液 10
水 70
上記組成物を、サンドグラインダーを用いて、平均粒径が1μm以下になるまで粉砕した。
【0050】
(3)分散液Cの調製
成 分 量(部)
シュウ酸ジp−メチルベンジルエステル 20
ポリビニルアルコール 10%水溶液 10
水 70
上記組成物を、サンドグラインダーを用いて、平均粒径が1μm以下になるまで粉砕した。
【0051】
(4)発色層の形成
上記A液75部、B液140部、C液70部、カオリナイト顔料(商品名:HGクレー、Huber社製)33部、および10%ポリビニルアルコール水溶液100部を混合、撹拌し、塗布液とした。この塗布液を、100g/mの原紙の片面に、乾燥後の塗布量が4.0g/mとなるように塗布、乾燥して発色層を形成し、型取りシートを作成した。
【0052】
(5)型取り方法
市販のハンドクリームを足の裏に塗り、上記で作成した型取りシートを踏んだ。そしてシートの上に当て紙を乗せ、当て紙の上からアイロンで加熱すると、しわも明瞭に判読できる足がたの消色像(地は黒色)が得られた。
足の裏に塗ったハンドクリームは、そのままにしていても害がなく、異物が付着したような不快感もなかった。
【0053】
実施例2
実施例1と同様の操作を行なった。但し、分散液Bの調製にあたり、2,2’−[4,(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ジエチルエーテル等の重合物の代わりに、4,4−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタンを用い、型取りシートを得た。このシート上に実施例1と同様な型取り方法で、足の代わりに、手の平を押し当て、シートの上に当て紙を乗せ、当て紙の上からアイロンで加熱すると、手のしわも明瞭に判読できる手がたの消色像が得られた。
【0054】
実施例3
実施例1と同様の操作で型取りシートを作成した。但し、型取り方法として、実施例1で作成した型取りシートを、市販のハンドクリームを塗った足で踏んだ。そのシート上に転写用シートとして坪量100g/mの上質紙を重ね、上からアイロンで加熱した後、転写用シートをゆっくり外すと、足のしわも明瞭に判読できる足がたが、転写用シートに転写された。
足の裏に塗ったハンドクリームはそのままにしても害がなく、異物が付着したような不快感もなかった。
【0055】
実施例4
実施例2と同様の操作で型取りシートを作成した。但し、型とり方法として、ハンドクリームを塗った手を押しつけた型取りシート上に、転写用シートとして坪量100g/mの上質紙を重ね、上からアイロンで加熱した後、転写用シートをゆっくり外すと手のしわも明瞭に判読できる手がたが転写用シートに転写された。
【0056】
実施例5
実施例3と同様な操作を行なった。但し、転写用シートとして白色PET(厚さ188μm)を重ね、上からアイロンで加熱することにより、足がたが白色PETに転写した。
【0057】
実施例6
実施例1と同様の操作を行なった。但し、分散液Aの調製にあたり、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランの代わりに、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリドを用い、型取りシートを得た。このシート上に実施例1と同様な型取り方法で、足の裏を押し当てた後、シートの上に当て紙を乗せ、当て紙の上からアイロンで加熱することにより、足のしわも明瞭に判読できる足がたの消色像(地は青色)が得られた。
【0058】
実施例7
実施例6の型取りシートに、実施例2と同様な型取り方法で、手の平を押し当て、シートの上に当て紙を乗せ、当て紙の上からアイロンで加熱することで、手のしわも明瞭に判読できる手がたの消色像(地は青色)が得られた。
【0059】
実施例8
実施例6の型取りシートに、市販のハンドクリームを塗った手の平を押し当て、シートの裏からアイロンで加熱することで、手のしわも明瞭に判読できる手がたの消色像(地は青色)が得られた。
【0060】
実施例9
実施例1と同様の操作を行なった。但し、分散液Bの調製の際に、2,2’−[4,(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ジエチルエーテル等の重合物の代わりに、ウレア・ウレタン系化合物(構造式(V))を用い、型取りシートを得た。このシート上に実施例1と同様な型取り方法で、足の代わりに、手の平を押し当て、シートの上に当て紙を乗せ、当て紙の上からアイロンで加熱すると、手のしわも明瞭に判読できる手がたの消色像が得られた。
【0061】
実施例10
実施例1と同様の操作を行なった。但し、実施例1と同様な型取り方法で、足の代わりに、プラスチックカード(横8.5cm×縦5.3cm×厚さ1mm)の表面にハンドクリームを塗布し、その塗布面を押し当てた後、シートの上に当て紙(上質紙)を乗せ、当て紙の上からアイロンで加熱することで、実寸と同様のサイズのプラスチックカードの消色像が得られた。
【0062】
実施例11
実施例1の型取りシートに、指(手の一部)を押し当て、シートの裏からアイロンで加熱することで、しわが判読できる手がたの消色像(地は黒色)が得られた。
【0063】
実施例12
実施例2の型取りシートに、指(手の一部)を押し当て、シートの表からアイロンで加熱することで、しわが判読できる手がたの消色像(地は黒色)が得られた。
【0064】
比較例1
実施例1と同様の型取りシートを作成した。型取り方法としては、加熱処理を行って全面を(黒色に)発色させた後に、市販のハンドクリーム塗った手の平を押し当てた。しかし、発色した部分はそのまま残り、手がたの消色像は得られなかった。
【0065】
比較例2
実施例2と同様の型取りシートを用いた。型取り方法としては、加熱処理を行って全面を(黒色に)発色させた後に、市販のハンドクリーム塗った手の平を押し当てた。しかし、発色した部分はそのまま残り、手がたの消色像は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の型取りシートは、手や足、その他の型取りをする物を朱肉や墨などで汚すことなく、また、成分が不明な専用液を使用することなく、手がた、足がた、物品等の型取りが簡便にでき、長期保存性にも優れているために、偏平足の調査などの医学的な用途、オーダーによる靴型作成、または、子供の成長記録、お誕生記念、家族の記念、動物(ペット)の足がたなどに使用可能である。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基体と、該基体の少なくとも一面に形成され、かつ、無色又は淡色の染料前駆体、およびこの染料前駆体と反応してこれを発色させる顕色剤を含む発色層とを有する型取りシートの表面に、型取り対象物を押し当てて、型取り対象物に含まれる発色抑制成分を転写した後、発色処理を行ない、型取り対象物の形状を型取りシート上に記録することを特徴とする型取り方法。
【請求項2】
シート状基体と、該基体の少なくとも一面に形成され、かつ、無色又は淡色の染料前駆体、およびこの染料前駆体と反応してこれを発色させる顕色剤を含む発色層とを有する型取りシートの表面に、発色抑制剤を塗布した型取り対象物の塗布面を押し当てて発色抑制剤を転写した後、発色処理を行ない、型取り対象物の形状を型取りシート上に記録することを特徴とする型取り方法。
【請求項3】
シート状基体と、該基体の少なくとも一面に形成され、かつ、無色又は淡色の染料前駆体、およびこの染料前駆体と反応してこれを発色させる顕色剤を含む発色層とを有する型取りシートの表面に、発色抑制剤を塗布した型取り対象物の塗布面を押し当てて発色抑制剤を転写した後、この型取りシートの上に、さらに転写用シートを重ねて発色処理を行ない、型取り対象物の形状を転写用シートに記録することを特徴とする型取り方法。
【請求項4】
前記転写用シートが、紙、コーテッド紙、ラミネート紙、合成紙、およびプラスチックフィルムから選ばれる1種である請求項3に記載の型取り方法。
【請求項5】
前記発色抑制剤が、脂肪族炭化水素化合物、脂肪族エステル化合物、脂肪族アルコール化合物、脂環式アルコール化合物、脂肪酸化合物、脂肪族アミン化合物、芳香族エステル化合物、芳香族アルコール化合物、芳香族アミン化合物、多価アルコール化合物、高分子シリコーン化合物、および界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である請求項2または3に記載の型取り方法。
【請求項6】
前記顕色剤が、下記の一般式(I)および一般式(II)で表される構造を少なくとも一つ有する化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の型取り方法。
【化1】

【化2】

【請求項7】
前記顕色剤が、下記の一般式(III)、構造式(IV)、および構造式(V)で表される化合物より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の型取り方法。
【化3】

(ただし、式(III)において、nは1〜10の整数である。)
【化4】

【化5】

【請求項8】
前記発色抑制剤が、市販ハンドクリーム、市販ベビークリーム、ベビーオイル、食用油、乳液、クレンジングオイル、コールドクリーム、ボディーローション、およびボディークリームから選ばれる少なくとも1種である請求項2または3に記載の型取り方法。
【請求項9】
前記発色処理が、型取りシートの発色温度以上の加熱処理である請求項1〜3のいずれかに記載の型取り方法。




【公開番号】特開2007−62113(P2007−62113A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250182(P2005−250182)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】