説明

型枠により粗紡から繊維複合材料または繊維強化プラスチックの部品を製造する方法、および同方法を実施するための型枠

型枠(1)により粗紡(R)から繊維複合または繊維強化プラスチック部品を製造する方法。同方法は、適用装置(13)により粗紡(R)を張引することにより乾燥繊維から形成される粗紡(R)を型枠表面(3)に適用する工程において、張引力は所定の配向にて偏向装置間に作用される適用工程と、バインダー材料を張引された粗紡(R)に適用する工程と、製造される部品のためのプリフォームが形成されるように温度および圧力を作用させることにより繊維ストランドおよびバインダー材料の構造体を連結する工程と、プリフォームを偏向装置から分離し型枠(1)から取り払う工程とを含み、プリフォームが偏向装置から分離されたときに射出工程または注入工程が部品を製造すべく行われる。さらに、型枠(1)および方法を実施する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠工具を使用して粗紡からFRCまたはFRP要素を製造する方法、および方法を実施するための型枠工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エンドレスファイバーにより補強した型枠成型の高分子要素を製造する方法を開示する。この方法において、可塑化されたポリマーに浸漬されたエンドレスファイバーは、操作装置により補助型枠に位置される。エンドレスファイバーを収容すべく、補助型枠は、所望の各配向にてエンドレスファイバーを収容するための巻き軸を備える。ストリッピング装置が巻き軸に設けられ、巻き軸に巻き付けられたエンドレスファイバーを取り去る。配向されたエンドレスファイバーは、補助型枠の補助により、少なくとも2つの部品からなる開放された型枠工具内に搬送され、内部に堆積する。型枠工具が閉じられると、充填された配向エンドレスファイバーは、一体的に、或いはその他の付加されるポリマーと共に圧縮成形され、これにより、エンドレスファイバーにより補強された成型ポリマー要素が形成される。成型ポリマー要素は冷却され、型枠工具から取り外される。
【0003】
特許文献2は、フィラメント糸からヘルメットを製造する方法を開示する。フィラメント糸は、要素表面を形成すべく型枠の一部におけるランダムな曲線の通路に堆積される。フィラメント糸は、型枠の部分の表面にわたって分配され、型枠の部分の表面に位置されるピンにて偏向され、これにより、伸縮自在となる。
【0004】
特許文献3は、繊維糸の配置方法を開示する。各スレッドは、曲線状の通路に連続して供給され、曲線状の通路に位置される可変の固定点の周囲に位置される。
特許文献4は、繊維の摩擦指向の配置方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第20040077313号明細書
【特許文献2】欧州特許第0193380号明細書
【特許文献3】独国特許第4234083号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第2005034393号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、FRCまたはFRP要素の製造方法の他、方法を実施する装置を提供することにあり、これらはそれぞれ複雑なFRCまたはFRP要素の製造に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項に記載の特徴により解決される。その他の実施例は、上記独立請求項の従属請求項に開示される。
本発明による方法および装置のそれぞれにより、プリフォームの製造ができ、これにより、比較的高い精度を備えた少なくとも部分的に展開不能な形状を有する要素を製造することができる。
【0008】
本発明は、型枠工具を使用して少なくとも一つの粗紡からFRCまたはFRP要素を製造する方法を開示する。方法は特に以下の工程を含む。
少なくとも所定の領域に凸形状を有する適用面の横断方向に位置される複数の偏向装置間の所定の配向、および長手方向の配向にて、適用装置により張引下にて粗紡を堆積させることにより、乾燥繊維から形成される少なくとも1つの粗紡を型枠表面に適用する工程において、少なくとも1つの粗紡は、同粗紡がプリフォームを形成すべく少なくとも所定の領域の型枠表面を覆うように型枠表面に沿って偏向装置間にて張引される適用工程。
【0009】
バインダー材料を張引された粗紡に適用する工程。
製造される要素のためのプリフォームを形成すべく、加熱し、且つ任意により圧力を作用させることにより繊維ストランドおよびバインダー材料の構造体を連結する工程。
【0010】
偏向装置からプリフォームを分離し、型枠成型工具からプリフォームを取り払う工程。
プリフォームを偏向装置から分離した後に要素を製造すべく射出工程または注入工程を実施する工程。
【0011】
本発明において、少なくとも1つの粗紡は、特に少なくとも1つの粗紡がプリフォームを形成すべく少なくとも所定の領域において型枠表面を覆い、且つ少なくとも30ニュートンの張引力が保持されるように粗紡が偏向装置によって保持されるように、偏向装置間にて張引される。
【0012】
少なくとも1つの粗紡が所定の引張応力にて、或いは所定の最小限の引張応力にて型枠表面にわたって張引されるため、型枠表面を横断する粗紡区域は、直線的に延びる。すなわち、統合されたプリフォームは極めて正確に直線的に延びる粗紡区域から形成される。したがって、プリフォームから製造される各要素も、最適な要素の品質が確実に得られるように直線的に延びる粗紡、すなわち繊維から形成される。
【0013】
所定の引張応力または所定の最小引張応力により型枠表面にわたって少なくとも1つの粗紡を張引することにより、粗紡の堆積した構造体は、バインダー材料と一体的に予め圧縮される。したがって、圧縮工程、すなわち通常繊維ストランドおよびバインダー材料の連結時に、繊維ストランドおよびバインダー材料の構造体に圧力を作用させる工程を行う必要はない。したがって、繊維や粗紡の配向、特に繊維や粗紡の直線的な配向が圧縮工程により変化することない。この手段はさらに要素の品質の最適化に効果的である。
【0014】
したがって、堆積した粗紡とバインダー材料との構造体を予め圧縮させる工程は、熱処理の態様によってのみ行われる。この点において、粗紡およびバインダー材料の堆積した構造体にマイクロ波や赤外線を照射することができる。これに代えて、または付加的に、繊維は、抵抗加熱により加熱されてもよい。すなわち、繊維は、電流により帯電され、これにより所定の方法にて加熱される。粗紡とバインダー材料との一体的な構造体は、特に60℃乃至100℃の範囲にて加熱される。
【0015】
本発明による方法において、型枠成型工具の型枠表面は、偏向装置が型枠表面に位置されると偏向装置および型枠表面が少なくとも所定の領域において展開不能な表面形状を備えた適用面を形成する。
【0016】
本発明において、展開不能な適用面なる用語は、2次元に湾曲する適用面の形状を示す。この例において、適用面は、少なくとも所定の領域において、例えば球状、楕円状や、鞍状の面の形状である。これとは逆に、本明細書において、展開可能な面なる用語は、特に内的な形状変化を伴わずに、すなわちその長さが変化せずに平面に変形可能な3次元の面を示す。
【0017】
本発明により得られる偏向装置は、型枠成形工具の型枠表面からピン状に突出する。
プリフォームは、それぞれが型枠表面の粗紡区域から偏向装置を中心として延びる粗紡区域を切断することにより偏向装置から分離される。
【0018】
プリフォームは、型枠成型工具に移動自在に位置される偏向装置を後退させることにより、且つ/または偏向装置の近傍にて偏向装置の少なくとも一部によって偏向される粗紡を切断することにより、偏向装置から分離される。
【0019】
本発明の別例における方法が開示される。
少なくとも1つの粗紡は、型枠成型工具の型枠表面に適用されるに先立って工具支持装置に位置される。工具支持装置は、型枠成型工具が収容装置の補助により工具支持装置に収容される場合に、型枠表面に沿って長手方向に延びる複数の偏向領域を備える。偏向領域には、複数の偏向装置が設けられる。偏向領域は、相互に対向して配置される型枠表面の両面に延びる。
【0020】
バインダー材料の適用工程、繊維ストランドおよびバインダー材料の構造体の連結工程、ならびに型枠成型工具からのプリフォームの分離工程は、偏向装置の補助によりエンドレスファイバーを偏向させることにより型枠成型工具の型枠表面に粗紡を適用する工程の後に行われる。
【0021】
偏向装置が、収容装置の横断方向且つ型枠成型工具の横断方向に位置される工具支持装置の領域にそれぞれ設けられることにより、製造装置のその他の部分を交換することなく様々な型枠成型工具を使用することができる。すなわち、例えば同じ収容装置におけるその形状よりむしろその形状や寸法に関してほとんど差異のない異なる胴体区域の航空機の骨組みのためのプリフォームを製造することができる。本発明による方法は、上述したように費用対効果を改善することができる。
【0022】
本発明の別の態様において、複数のエンドレスファイバーからFRCまたはFRP要素を製造する型枠成型工具が開示される。型枠成型工具は、少なくとも所定の領域において凸状である型枠表面と、型枠表面の外側に位置され型枠表面に沿って長手方向に延びる2つの偏向領域と、複数の偏向装置とを備える。偏向領域は、相互に対向して配置される型枠表面の両面に延びる。偏向領域に位置される偏向装置は、同偏向装置が型枠表面にわたって張引される少なくとも1つの粗紡を好適に偏向することができるように長手方向に沿って偏向領域にわたって分配される。
【0023】
本発明の別例における型枠成型工具において、偏向装置は、プリフォームを分離すべく調整装置により型枠成型工具内、すなわち型枠表面内に引き込み可能であり、引き込み時において偏向されたエンドレスのスレッドを取り払うように設計されている。
【0024】
本発明の別例における型枠成型工具において、型枠成型工具の型枠表面は所定の領域において展開不能な表面形状を有する。
本発明の別例における型枠成型工具において、偏向装置は、型枠成型工具の型枠表面から突出するピンを備える。
【0025】
本発明の別例における型枠成型工具において、各偏向装置は、駆動ユニットにより調整装置にそれぞれ連結され、駆動ユニットは制御装置によって個別に制御される。
本発明の別例において、少なくとも1つの粗紡(R)からFRCまたはFRP要素を製造するために、型枠成型工具と工具支持装置を備えた製造装置が開示される。
【0026】
製造装置は、少なくとも1つの粗紡を分配する分配装置を備える。
型枠成型工具は外側に湾曲した型枠表面を有する。
工具支持装置は、型枠成型工具を収容する収容装置と、型枠成型工具が収容装置の補助により工具支持装置に収容される場合に、型枠表面に沿って長手方向に延びる複数の偏向領域とを備える。偏向領域には、複数の偏向装置が設けられている。偏向領域は、相互に対向して配置される型枠表面の両面に延びる。
【0027】
偏向領域に位置される偏向装置は、偏向装置が型枠表面にわたって張引される粗紡を好適に偏向できるように長手方向に沿って偏向領域にわたって分配される。
本発明の別例において、製造装置は、予め張引するユニットを備えた堆積装置を備え、これによりエンドレスファイバーは、偏向装置の補助によりエンドレスファイバーを偏向させることにより、所定の最小引張応力により型枠表面にわたって張引可能である。したがって、粗紡の張引された堆積は、部分的に行われる、すなわち型枠表面に線形に堆積する。
【0028】
本発明の別例において、堆積装置は、少なくとも1つの粗紡を内部に案内するための入口装置と、3次元的に移動可能な端部に位置される粗紡を外部に案内するための出口装置とを備えるロボットアームを備える。ロボットアームにより、各偏向装置の周囲に粗紡の輪を形成することによって、偏向装置間に少なくとも1つの粗紡を張引して堆積させ、張引することができる。
【0029】
本発明の別例において、ロボットアームは、ロボットアームによって収容される粗紡の繊維の長手方向に移動可能な端部の後方に位置され、偏向装置に対する運動を補償する運動システムを備える。
【0030】
本発明の別例において、製造装置は、粗紡を収容するためのロールをさらに備え、同粗紡収容ロールは、引張応力を制限する摩擦クラッチによって固定され、これにより、粗紡は、最大値まで型枠表面にわたって張引される。
【0031】
本発明の別例において、製造装置は、構台システムであり、堆積装置を備えた移動可能な構台ユニット、特にロボットアームを備える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例において、相互に角度をなして延び且つピンの形態の偏向装置を備える複数の部分的な適用面から構成される、展開可能な型枠表面によりFRCまたはFRPを製造する方法を実施するための製造工具、および張引力を作用させることにより型枠表面に沿った偏向ピン間にて粗紡を張引する管状案内装置を示す斜視図。
【図2】本発明の別例において、曲面を備えたFRCまたはFRP要素を製造すべく、製造工具の型枠面と適用面が展開不能な表面形状を有しその長手方向にて湾曲している製造工具、すなわち型枠成形工具を示す斜視図。
【図3】図2に示す製造工具を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面を参照して本発明の実施例を後述する。
本発明の方法において、繊維強化複合材料(FRC)要素または繊維強化プラスチック(FRP)要素(図示しない)は、型枠表面3を備えた型枠成型工具1の補助により、粗紡から製造される。
【0034】
本明細書において、用語「粗紡」は、よりを戻され、且つ/または張引可能なエンドレスファイバーまたはフィラメントの束を示す。個々のフィラメントは、ガラス、アラミド、炭素からなる。本発明による粗紡Rは、特にエンドレスの粗紡から構成され、スプールやドラムに巻かれる。粗紡Rは、特に、マトリックス材料を備えないように乾燥繊維のみにて構成される。フィラメントは、本例において、炭素繊維により構成される。本発明によれば、通常粗紡をエンドレスの粗紡、エンドレスの糸、エンドレスのより糸、エンドレスのストリング、エンドレスのレース糸、エンドレスの不織布や、エンドレスのニット生地の形態にて使用可能である。
【0035】
型枠表面3は通常型枠表面3の少なくとも一部を形成する1つ以上の適用面3a、3b、3cを備える。図1乃至3に示す型枠成型工具1は、適用面と型枠表面3の一部を形成する合計3つの部分的な適用面3a、3b、3cを備え、部分的な適用面は、特に、それぞれ断面において相互に対して延びる。部分的な適用面3a、3b、3cや適用面の表面区域は、通常端部により、且つ/または半径領域や曲面領域により連結される。これに代えて、或いはこれに対して付加的に、適用面は平面および/または湾曲した上側面を有する1つ以上の表面区域により形成されてもよい。本例において、表面は型枠から取り払う方向に配向される僅かなアンダーカットを更に備え、このアンダーカットは、製造されたプリフォームが損傷することなく型枠成型工具1から取り払われるように設計される。型枠表面は通常少なくとも部分的に凸状または湾曲した領域を有する。
【0036】
型枠表面、特に部分的な適用面3a,3b,3cを備えた適用面は、通常展開可能な、または展開不能な形状を有する。実施例において、図1に示す製造工具、すなわち型枠成型工具は、展開可能な表面形状を有する部分的な適用面3a,3b,3cを備えた型枠表面3を備える。図2および3は、別例において、展開不能な形状を備えた適用面を備える製造工具を示す。本発明による方法は、所定の領域において展開不能な表面形状を備えた型枠成型工具を要する形状を有するプリフォームの製造に特に好適である。
【0037】
適用面の展開不能な表面形状を使用する場合に、本発明において乾燥繊維からなる粗紡Rを使用することは、適用時において粗紡に作用される張引力が最小限となるように適用時に粗紡が相互に摺動可能となるため好適である。しかしながら、樹脂、すなわちプラスチックにより予め浸漬された粗紡が使用される場合に、隣接して位置される粗紡区域は相互に固着し、樹脂、すなわちプラスチックは多かれ少なかれ粗紡区域が相互に摺動することを妨害するため、付加的な張引力がこの粗紡区域間に生じてしまい、この粗紡区域は、特に展開不能な表面等の複雑な表面に十分に適用できなくなる。
【0038】
複数の偏向装置10は、粗紡が偏向装置間にて型枠表面3に適用され得るように、型枠表面3の様々な位置に配置される。偏向装置10は、横断方向に沿って一列に並べられて型枠表面3の一部を形成する部分的な適用面3a、3b、3cを備えた適用面を形成する。この例において、粗紡Rは、張引され、張引力下にて偏向装置10の周囲に位置され、これにより、張引力に対応する圧力により部分的な適用面3a、3b、3cに押圧される。粗紡Rは、粗紡Rが少なくとも所定の領域にて型枠表面を覆うように、偏向装置10間にて型枠表面に沿って張引される。この目的のために、粗紡Rは、適用装置13によって張引することによる張引力下にて偏向装置10の周囲に位置される。
【0039】
したがって、部分的な適用面3a、3b、3cは、粗紡Rが偏向装置10間にて張引された後に粗紡Rが位置される領域を形成する。これにより、部分的な適用面3a、3b、3cの位置は、偏向装置10の位置によって決定され、部分的な適用面は少なくとも偏向装置10間を延びる。型枠成型工具1の型枠表面3a、3b、3cは、この偏向装置による張引力にさらされる粗紡Rが、製造される要素の粗紡や繊維の複数の配向を決定する配向を有し、さらにある程度同一であるように偏向装置10が型枠表面3に位置されるように設計される。
【0040】
本発明において、型枠成型工具1の少なくとも1つの適用面3a、3b、3c、すなわち型枠表面3は、所定の領域において展開不能な表面形状を有するため、粗紡Rはさらにこの領域を覆い、製造される要素も所定の領域において展開不能な表面形状を有する。
【0041】
本発明の一実施例において、エンドレスファイバーからFRCまたはFRP要素を製造するための型枠成型工具1は、所定の領域において展開不能な表面形状を備える型枠表面3を有する。複数の偏向装置は、型枠表面3に位置され、型枠表面3から突出し、型枠表面に引き込まれてもよく、特に型枠表面に対してプリフォームを分離すべく調整装置により型枠成型工具1の型枠表面3内に引き込まれてもよい。偏向装置は、型枠成型工具1の型枠表面3から突出するピンからなる。この目的のために、各偏向装置は、それぞれ駆動ユニットにより調整装置に連結される。駆動ユニットは、個別に制御装置に機能的に連結され、制御装置は、型枠表面3に対して偏向装置を調整すべく、すなわち偏向装置を伸縮させるべく、駆動ユニットを制御できるように設けられる。
【0042】
粗紡Rの2つ以上の層を適用面に適用することができる。この例において、粗紡の層は、相互に対して粗紡の異なる配向により適用される。さらに粗紡の異なる層は、異なる材料からなる。
【0043】
本発明において、粗紡Rが張引された後に、バインダー材料は、張引された粗紡Rに適用され、繊維ストランドおよびバインダー材料の構造体は、熱および圧力の影響下において、同時に、或いは連続して連結され、すなわち操作可能となる。製造される要素のプリフォームは、連結により形成されるが、これは、少なくとも構造体の3次元形状が型枠成型工具1からの取り払い時、且つ別の工具への搬送時に安定する程度まで、すなわちプリフォームの形状がその所定の方法による処理中に変化しない程度まで、製造される構造体が固着されることによる。
【0044】
本発明による方法において、プリフォームは、偏向装置から分離され、プリフォームは型枠成型工具1から取り払われる。偏向装置から、および型枠成形工具1からのプリフォームの分離後、要素を製造すべく本発明による射出工程または注入工程が実施される。射出工程または注入工程は、特に引き抜き成形工程である。繊維強化複合材料(FRC)要素や繊維強化プラスチック(FRP)要素は、樹脂、すなわちプラスチックが使用されたかどうかに応じて上述したように製造される。
【0045】
連結に先立って、粗紡Rの少なくとも一部は、繊維ストランドおよびバインダー材料の構造体を固定すべく相互に縫合されてもよい。
粗紡Rの適用およびバインダー材料の適用は、連続して、同時に、或いはこれに代えて数回にわたって行われてもよい。
【0046】
バインダー材料は、適用時に粗紡間に、且つ/または粗紡に案内される連結粉であってもよい。バインダー材料は通常液体または粉末であり、特にスプレーにより適用される。
これに代えて、或いは付加的に不織布がバインダー材料として使用されてもよく、不織布は繊維ストランドの工具型枠への適用後に繊維ストランドに位置されるか適用される。この例において、偏向装置のいくつかに不織布をピン留めまたは固定することができる。
【0047】
本発明の別例において、1つ以上のバインダースレッドがバインダー材料として使用されてもよく、バインダースレッドは、各エンドレスファイバーストランドに一体的に適用される。
【0048】
繊維ストランドの形態の繊維マットの適用後に、多軸多層織物(MAG)、織物、編み込まれた織物、ガセットフィラー、編み組織物、ニットウェア、不織布や、織り合わされた糸を適用することができる。別の処理工程において、プリフォームを形成すべく、繊維マット、MAG、織物、編み込まれた織物、ガセットフィラー、編み組織物、ニットウェア、不織布や、織り合わされた糸を固定することができる。繊維マット、MAG、織物、編み込まれた織物、ガセットフィラー、編み組織物、ニットウェア、不織布や、織り合わされた糸は、特に適用時に粗紡Rと一体的に固定される。
【0049】
粗紡Rは、適用後に樹脂により浸漬されてもよい。乾燥繊維ストランドの少なくとも一部の適用後に、本例においてプリプレグを適用してもよい。
さらに、粗紡Rの少なくとも一部の適用後に、プリフォームを安定化させるべく、且つ/またはプリフォームにより製造される要素に所定の特徴を得るべく、その上に複数の金属インサート、完全に、あるいは部分的に硬化したFRPまたはFRCの補強材、腔のためのコア材料、プラスチックまたは金属発泡体や、蜂の巣状構造体を適用することができる。この例において、金属インサート、完全に、あるいは部分的に硬化したFRP、および/またはFRCの補強材、腔のためのコア材料、発泡体や、蜂の巣状構造体の適用時にこれらを粗紡Rと一体的に固定することができる。
【0050】
偏向装置10は型枠表面3に対して引き込まれるように型枠成型工具1に位置され、プリフォームの偏向装置からの分離は、型枠成型工具1に移動自在に位置される偏向装置10を引き込むことによって行われる。
【0051】
これに代えて、プリフォームは、偏向装置の近傍にて偏向装置の少なくとも一部によって偏向される粗紡Rを切断することにより偏向装置から分離されてもよい。
型枠表面3に適用される粗紡Rの供給は、様々な方法により行われる。粗紡Rは、粗紡収容ロールから直接所望の繊維の配向にて型枠成型工具1に適用される。これに代えて、粗紡は管状案内手段により堆積または適用されてもよく、管状案内手段を通して型枠成型工具1に適用される粗紡Rは、案内される。管状案内部13aは、管状案内部を通して案内される粗紡Rの方向が所定の方法により変更できるように、特にその長手方向において湾曲する。これにより、所定の配向および所定の引張力にて偏向装置間に粗紡を適用または張引することができる。管状案内部13a自体は、好適な運動機構および対応する調整装置により型枠成型工具に対して3次元的に移動することができるように位置される。粗紡供給は、型枠成型工具1に対して移動可能なロボットやロボットアームにより行われてもよい。ロボットアームの運動や調整装置の作動は制御装置によって制御または規制することができる。
【0052】
繊維ストランドの構造体の連結は、真空工程により行われる。繊維ストランドの構造体の連結は、堆積工程の終了後、或いは粗紡が型枠成型工具1に適用される個別の堆積工程間において行われてもよい。
【0053】
繊維ストランドの構造体の連結はさらに、粗紡Rとバインダー材料とを備える型枠成型工具1と、係合面との間に真空マットを位置させ、粗紡Rとバインダー材料とからなる構造体が加熱される間に係合面と真空マットとの間に負圧を生じさせることによって行われてもよい。
【0054】
繊維ストランドの構造体の連結は、加熱されたラムを使用して実施される加熱または押圧工程により行われてもよい。
エンドレスファイバーからFRCまたはFRP要素を製造するための本発明による型枠成型工具1は、所定の領域において展開不能な表面形状を備える型枠表面3を備える。型枠表面3に位置される偏向装置は、型枠表面3から突出し、プリフォームを分離すべく調整装置により型枠成型工具1の型枠表面3内に引き込まれてもよい。
【0055】
偏向装置は、特に型枠成型工具1の型枠表面3から突出するピンを備えてもよい。
駆動ユニットを備えた調整装置が各偏向装置に連結される。本例において、特に駆動ユニットは制御装置によって個別に制御可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠表面(3)を備えた型枠成型工具(1)により粗紡(R)からFRCまたはFRP要素を製造する方法であって、
少なくとも所定の領域に凸形状を有する適用面の横断方向に位置される複数の偏向装置(10)間の配向、および長手方向(L)の配向にて、適用装置(13)により張引下にて粗紡(R)を堆積させることにより、乾燥繊維から形成される少なくとも1つの粗紡(R)を型枠表面(3)に適用する工程において、該粗紡(R)は、同粗紡(R)が少なくとも所定の領域の型枠表面(3)を覆うように型枠表面(3)に沿って偏向装置間にて張引される適用工程と、
バインダー材料を張引された粗紡(R)に適用する工程と、
製造される要素のためのプリフォームを形成すべく、加熱することにより繊維ストランドおよびバインダー材料の構造体を連結する工程と、
該偏向装置からプリフォームを分離し、型枠成型工具(1)からプリフォームを取り払う工程と、
プリフォームを偏向装置から分離した後に要素を製造すべく射出工程または注入工程を実施する工程とを含むことを特徴とするFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項2】
前記型枠成型工具(1)の型枠表面(3)は、偏向装置が型枠表面(3)に位置されると偏向装置および型枠表面(3)が所定の領域において展開不能な表面形状を備えた適用面を形成するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項3】
前記偏向装置は、型枠成型工具(1)の型枠表面(3)からピン状に突出していることを特徴とする請求項1または2に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項4】
前記粗紡(R)は、エンドレスな粗紡(R)であり、乾燥繊維のみにより形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項5】
前記粗紡(R)は炭素繊維やガラスから形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項6】
前記粗紡(R)の少なくとも一部は、ストランドとバインダー材料との構造体を固定すべく、相互に縫合されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項7】
前記粗紡(R)の適用工程、および前記バインダー材料の適用工程は、連続して、同時に、或いは交互に複数回にわたって行われることを特徴とする請求項1乃至6ののいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項8】
前記バインダー材料は不織布により形成されることと、同不織布は、工具型枠への適用後に繊維ストランドに適用されることとを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項9】
前記不織布は偏向装置のいくつかにピン止めされるか、固定されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項10】
前記バインダー材料は、バインダーのスレッドによって形成されることと、同バインダーのスレッドは、各粗紡と一体的に適用されることとを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項11】
前記粗紡(R)は適用後に樹脂により浸漬されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項12】
プリプレグが、適用後の前記粗紡(R)の少なくとも一部に位置されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項13】
前記偏向装置からのプリフォームの分離は、型枠成型工具(1)に移動自在に位置される偏向装置を後退させることにより行われることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項14】
前記偏向装置からのプリフォームの分離は、偏向装置の近傍にて偏向装置の少なくとも一部によって偏向される粗紡(R)を切断することにより行われることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項15】
前記粗紡(R)の構造体の連結工程は、真空法により行われることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項16】
前記粗紡(R)の構造体の連結工程は、堆積工程の終了後、或いは粗紡が型枠成型工具(1)に適用される個別の堆積工程間において行われることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項17】
前記粗紡(R)の構造体の連結工程は、粗紡(R)とバインダー材料との構造体を備える型枠成型工具(1)と、係合面との間に真空マットを位置させ、粗紡(R)と結合材との構造体が加熱される間に係合面と真空マットとの間に負圧を生じさせることによって行われることを特徴とする請求項15に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項18】
繊維ストランドの構造体の連結工程は、加熱されたラムにより加熱または押圧工程により行われることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項19】
前記射出または注入工程は、引き抜き成型工程であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの粗紡(R)は、型枠成型工具(1)の型枠表面(3)に適用されるに先立って工具支持装置に位置されることと、同工具支持装置は、型枠成型工具(1)が収容装置の補助により工具支持装置に収容される場合に、型枠表面(3)に沿って長手方向(L)に延びる複数の偏向領域(U)を備えることと、同偏向領域には、複数の偏向装置(10)が設けられていることと、同偏向領域(U)は、相互に対向して配置される型枠表面(3)の両面に延びることと、
バインダー材料の適用工程、繊維ストランドおよびバインダー材料の構造体の連結工程、ならびに型枠成型工具(1)からのプリフォームの分離工程は、偏向装置(10)の補助によりエンドレスファイバーを偏向させることにより型枠成型工具(1)の型枠表面(3)に粗紡(R)を適用する工程の後に行われることとを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造方法。
【請求項21】
少なくとも所定の領域において凸状である型枠表面(3)を備え、複数のエンドレスファイバーからFRCまたはFRP要素を製造する型枠成型工具(1)であって、同型枠成型工具(1)は、型枠表面(3)の外側に位置され型枠表面(3)に沿って長手方向(L)に延びる2つの偏向領域(U)と、複数の偏向装置(10)とを備えることと、該偏向領域(U)は、相互に対向して配置される型枠表面(3)の両面に延びることと、偏向領域(U)に位置される偏向装置(10)は、同偏向装置(10)が型枠表面にわたって張引される少なくとも1つの粗紡(R)を好適に偏向することができるように長手方向(L)に沿って偏向領域(U)にわたって分配されることとを特徴とするFRCまたはFRP要素を製造する型枠成型工具(1)。
【請求項22】
前記偏向装置(10)は、プリフォームを分離すべく調整装置によって型枠表面(3)内に引き込まれ、その引き込み時に偏向されたエンドレスのスレッドを取り除くことを特徴とする請求項21に記載の型枠成形工具(1)。
【請求項23】
前記型枠成型工具(1)の型枠表面(3)は、所定の領域において展開不能な表面形状を有することを特徴とする請求項21または22に記載の型枠成形工具(1)。
【請求項24】
前記偏向装置は、型枠成形工具(1)の型枠表面(3)から突出するピンを備えることを特徴と請求項21乃至23のいずれか一項に記載の型枠成形工具(1)。
【請求項25】
前記偏向装置はそれぞれ駆動ユニットを備えた調整装置に連結されることと、同駆動ユニットは制御装置により個別に制御可能であることとを特徴とする請求項21乃至24のいずれか一項に記載の型枠成形工具(1)。
【請求項26】
型枠成型工具(1)と工具支持装置を使用して、少なくとも1つの粗紡(R)からFRCまたはFRP要素を製造するための製造装置であって、
同製造装置は、少なくとも1つの粗紡を分配する分配装置を備えることと、
該型枠成型工具(1)は外側に湾曲した型枠表面(3)を有することと、
前記工具支持装置は、型枠成型工具(1)を収容する収容装置と、型枠成型工具(1)が収容装置の補助により工具支持装置に収容される場合に、型枠表面(3)に沿って長手方向(L)に延びる複数の偏向領域(U)とを備えることと、同偏向領域には、複数の偏向装置(10)が設けられていることと、同偏向領域(U)は、相互に対向して配置される型枠表面(3)の両面に延びることと、
該偏向領域(U)に位置される偏向装置(10)は、同偏向装置(10)が型枠表面にわたって張引される粗紡(R)を好適に偏向できるように長手方向(L)に沿って偏向領域(U)にわたって分配されることとを特徴とするFRCまたはFRP要素を製造するための製造装置。
【請求項27】
予め張引するユニットを備えた堆積装置を更に備え、これによりエンドレスファイバーは、偏向装置(10)の補助によりエンドレスファイバーを偏向させることにより、所定の最小引張応力にて型枠表面(3)にわたって張引可能であることを特徴とする請求項26に記載のFRCまたはFRP要素の製造装置。
【請求項28】
前記堆積装置は、少なくとも1つの粗紡(R)を内部に案内するための入口装置と、3次元的に移動可能な端部に位置される粗紡を外部に案内するための出口装置とを備えるロボットアームを備えていることを特徴とする請求項26または27に記載のFRCまたはFRP要素の製造装置。
【請求項29】
前記ロボットアームは、ロボットアームによって収容される粗紡の繊維の長手方向に移動可能な端部の後方に位置され、偏向装置(10)に対する運動を補償する運動システムを備えることを特徴とする請求項28に記載のFRCまたはFRP要素の製造装置。
【請求項30】
前記粗紡を収容するためのロールをさらに備え、同粗紡収容ロールは、引張応力を制限する摩擦クラッチによって固定され、これにより、粗紡は、最大値まで型枠表面(3)にわたって張引されることを特徴とする請求項26乃至29のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造装置。
【請求項31】
前記製造装置は、ガントリシステムであり、蒸着装置を備えた変位可能なガントリ部を備えることを特徴とする請求項26乃至29のいずれか一項に記載のFRCまたはFRP要素の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−516301(P2011−516301A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502303(P2011−502303)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002568
【国際公開番号】WO2009/124724
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(509203120)エアバス オペラツィオンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (67)
【Fターム(参考)】