説明

型締力検出部を有する射出成形機

【課題】リアプラテンの表面でタイバーとタイバーの中間部に歪センサを押し当てて歪量を測定し型締力に換算することで、正確かつ容易に型締力を測定することが可能な型締力検出部を有する射出成形機を提供すること。
【解決手段】固定プラテン32、可動プラテン30およびリアプラテン20を備え、固定プラテン32とリアプラテン20が複数本のタイバー12,14,16,18で結合され、可動プラテン30は複数本のタイバー12,14,16,18に摺動可能に支持され、リアプラテン20に設けられた、可動プラテン前後進用モータ22,ボールねじ軸26、トグル機構28などから構成される型締機構によって可動プラテン30を固定プラテン32に対して前後進可能とした射出成形機において、歪量を検知する歪センサ10を、前記リアプラテン20の表面において前記複数本のタイバーのうちの、少なくともいずれか2つの隣り合うタイバーの中間部であって、前記リアプラテン20の表面に押し当てる取り付け部材を介して取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型締力検出部を有する射出成形機械に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の型締装置の型締力を検出する方法として、タイバーの伸び量を歪ゲージを用いて測定する方法や(図5、図6参照)、型締装置の表面に歪センサを取り付け(図7参照)、該歪センサで測定された歪量より型締力に換算する方法が知られている。
タイバーの伸び量を歪ゲージを用いて測定する方法は、タイバーの表面に歪ゲージを押し当ててタイバーの伸び量を測定する。タイバーが真っ直ぐ伸びていれば歪ゲージは1個だけでよい。しかし、実際にはタイバーは、多少、曲がりながら伸びるため、図6に示されるように、丸棒の伸びをより正確に測定するには丸棒形状のタイバーの軸を中心として対称位置に歪センサを貼り付けて、測定値の平均を取る必要がある。さらに、図5に示される型締機構では、正確に型締力を測定するには4本のタイバーの伸びを測定する必要があり、歪センサは結局8個必要となり、型締力を測定するシステム全体のコストが高くなる。
そこで、特許文献1には、タイバー以外の部材であって、シングルトグル機構における一本のリンクの圧縮変形量を力が分割されることなく伝達される非分割部にセンサを取り付けて歪量を測定する技術が開示されている。特許文献2には、歪センサを型締装置のアームの外表面に貼り付けて該アームの歪量を測定する技術が開示されている。また、特許文献3には、型締装置の構成部材の表面に歪量を検知するセンサをボルトで固定し、歪量を型締力に換算する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−219924号公報
【特許文献2】特開平9−187853号公報
【特許文献3】実用新案第3097118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に開示される方法では、歪量を検知するセンサは、直接、射出成形機のリアプラテンなどの構成部材に接触していない。歪量を検知するセンサは、2本のボルトで固定されたベース上に支持されるセンサ部を有する。前記センサ部には該センサ部の伸び量を検知する歪ゲージが取り付けられている。歪量を検知するセンサは、射出成形機の型締装置が型締力を発生したときに、ベース上に支持されたセンサ部に取り付けられた歪ゲージでの歪量を測定している。構成部材(被測定物)が歪むことによりセンサ部が歪み、該センサ部の歪を歪ゲージで検出している。そのため、構成部材の歪みを間接的に検出していることとなり、構成部材の歪量と検出した歪量に乖離が生じ、正確な検出ができない場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、リアプラテンの表面でタイバーとタイバーの中間部に歪みセンサを押し当てて歪量を測定し型締力に換算することで、正確かつ容易に型締力を測定することが可能な型締力検出部を有する射出成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に係る発明は、固定プラテン、可動プラテンおよびリアプラテンを備え、該固定プラテンと該リアプラテンが複数本のタイバーで連結され、該可動プラテンは該複数本のタイバーに摺動可能に支持され、該リアプラテンに設けられた型締機構によって該可動プラテンを該固定プラテンに対して前後進可能とした射出成形機において、歪量を検知する歪センサを、前記リアプラテンの表面において前記複数本のタイバーのうちの、少なくともいずれか2つの隣り合うタイバーの中間部であって、前記リアプラテンの表面に押し当てる取り付け部材を介して取り付けたことを特徴とする型締力検出部を有する射出成形機である。
請求項2に係る発明は、前記歪センサを前記リアプラテンの表面において、前記複数のタイバーのうちの少なくともいずれか2つの隣り合う2本のタイバーを結ぶ線分の中心部から垂直に交わる線上に設けたことを特徴とする請求項1に記載の型締力検出部を有する射出成形機である。
請求項3に係る発明は、前記リアプラテンに前記歪センサの少なくとも一部が突出して収容される凹部を設け、前記歪センサが突出している部分を前記取り付け部材によりリアプラテンに押し付けたことを特徴とする請求項2に記載の型締力検出部を有する射出成形機である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、リアプラテンの表面でタイバーとタイバーの中間部に歪センサを押し当てて歪量を測定し型締力に換算することで、安価で正確かつ容易に型締力を測定することが可能な型締力検出部を有する射出成形機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】リアプラテンに歪センサが取り付けられた射出成形機の外観斜視図である。
【図2】センサの取り付け位置を説明する図である。
【図3】本発明に係る歪センサのリアプラテンへの固定方法を説明する図である。
【図4】リアプラテンに凹部を設け該凹部に歪センサの突出部分の少なくとも一部を収容させる本発明に係る歪センサのリアプラテンへの固定方法を説明する図である。
【図5】タイバーの伸びで型締力を測定する従来技術の方法を説明する図である。
【図6】タイバーの伸びを測定する従来の方法を説明する図である。
【図7】歪センサを構成部材に取り付ける従来の方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、射出成形機の型締部に歪みセンサを貼り付ける本発明の一実施形態を説明する図である。射出成形機は、図示しない基台上に、型締部Mc、図示しない射出部を備えている。型締部Mcは、リアプラテン20、可動プラテン30、固定プラテン32を有する。リアプラテン20には、歪センサ10、可動プラテン30を固定プラテン32に対して前後進させる可動プラテン前後進用モータ22、型締位置調整用モータ24、タイバー12,14,16,18が取り付けられている。歪センサ10はリアプラテン20の歪量を測定するセンサである。タイバー12,14,16,18は、リアプラテン20と固定プラテン32とを連結し、型締め・型閉じの際に伸長することによって可動プラテン30と固定プラテン32に取り付けられる金型(図示せず)に対して型締力を発生させる。可動プラテン30はタイバー12,14,16,18の軸方向に摺動可能に支持されている。
【0010】
可動プラテン前後進用モータ22の回転力がベルトなどの動力伝達機構によりボールねじ軸26に伝達され、該ボールねじ軸26を回転させることによって、該ボールねじ軸26に取り付けられた図示しないクロスヘッドによってトグル機構28を伸縮させることができる。また、トグル機構28は可動プラテン30と連結されている。トグル機構28を伸ばすと、可動プラテン30は固定プラテン32方向に前進し、トグル機構28を縮ませると、可動プラテン30は固定プラテン32から後退する。型締め・型閉じの際には可動プラテン30を固定プラテン32の方向に前進させ、型開きの際には可動プラテン30を固定プラテン32から離れる方向に後退させる。
【0011】
射出成形機において型締め・型閉じによる型締力発生の際にリアプラテン20の変形量が大きいことが知られているが、特に、タイバーとタイバーの中間部における歪量が大きい。そこで、リアプラテン20のタイバー12とタイバー14の中間部、最適には中心線上で、リアプラテン20の表面に歪センサ10を押し当てる。歪センサ10のリアプラテン20への取り付け方法は図3,図1を用いて後述して説明する。図1では歪センサ10の取り付け位置がリアプラテン20の側面であるが、上面であってもよい。
【0012】
図2はセンサの取り付け位置を説明する図である。図2に示されるように、本発明の実施形態では、リアプラテン20の表面であって、タイバー12,14,16,18のうちの少なくともいずれか2つの隣り合う2本のタイバーを結ぶ線分の中心部から該線分に垂直に交わる中心線40,42に歪センサ10を設ける。縦方向の中心線40の線上では符号40a,40b、横方向の中心線42の線上では符号42a,42bが、歪センサ10のリアプラテン20への設置可能な部位である。
【0013】
使用する歪センサ10は1個で済むので、安価に型締力を検出することができる。また、歪センサ10に用いられる歪ゲージをリアプラテン20の表面に直接押し当てるため、構成部材(被測定物)であるリアプラテン20の歪みを正確に検出することができ、正確な歪量の測定が可能である。
【0014】
図1では、リアプラテン20に取り付けられた歪センサ10は1個だけであるが、さらに、歪センサ10をリアプラテン20の上,下の2箇所(40a,40b)、あるいは、左,右の2箇所(42a,42b)、または、上,下,左,右の4箇所(40a,40b,42a,42b)に設置することにより、歪センサ10を1箇所に設置する場合に比べてより正確に型締力の検出が可能となる。
【0015】
次に、図3,図4により歪センサ10のリアプラテン20への固定方法を説明する。
図3(a)は歪センサ10の上面図,(b)は正面図である。歪センサ10はセンサ部50の先端部に測定対象物であるリアプラテン20の歪量を測定するための歪ゲージ60が取り付けられ、該センサ部50から信号線58を介して検出信号が別置の増幅器を介して射出成形機の制御装置(図示せず)に出力される。
【0016】
歪センサ10は例えば、ボルト貫通孔が設けられた取り付け部材52を用い、ボルト54,56で該取り付け部材52をリアプラテン20に固定することにより、リアプラテン20の表面に歪センサ10を押し当てる。取り付け部材52は2つのボルト貫通孔の間に、歪センサ10を配置し、取り付け部材52をボルト54,56でリアプラテン20に固定することにより、歪センサ10をリアプラテン20の表面に押し当てることができる。押し付け力はボルト54,56の締め付け力により調節できる。歪ゲージ60を直接リアプラテンに接触させる構成であるので、リアプラテン20の歪みを感度良く検出できる。
【0017】
図4はリアプラテンに凹部を設け該凹部に歪センサの突出部分の少なくとも一部を収容させる本発明に係る歪センサのリアプラテンへの固定方法を説明する図である。歪センサ10を設けるリアプラテン20の表面には、たとえばリアプラテン20に穴加工を行った場合の穴の内壁面も含まれる。歪センサ10はセンサ部50,歪ゲージ60を有し、リアプラテン20に取り付けた歪センサ10によって、型締力が発生したときの歪みを歪ゲージ60で検知し、型締力に換算し、型締力を検出する。取り付け部材62により歪ゲージ60を取り付けたセンサ部50はリアプラテン20に設けられた凹部の底平面に押し付けられる。押し付け力はボルト64,66の締め付け力で調節することができる。この実施形態では防油、防滴、防塵効果が高い。
【0018】
本発明の実施形態により、リアプラテンの表面でタイバーとタイバーの中間部に歪センサを押し当てて歪量を測定し型締力に換算することで、安価で正確かつ容易に型締力を測定することが可能となり、この型締力の測定結果を射出成形機の制御部にフィードバックすることで、型締位置調整用モータ24を駆動することによって、自動型厚調整時の型締力の調整を正確に行うことが可能な型締力検出部を有する射出成形機を提供できる。
【符号の説明】
【0019】
Mc 型締部

10 歪センサ
12,14,16,18 タイバー
20 リアプラテン
22 可動プラテン前後進用モータ
24 型締位置調整用モータ
26 ボールねじ軸
28 トグル機構
30 可動プラテン
32 固定プラテン

40,42 中心線

50 センサ部
52 取り付け部材
54,56 ボルト
58 信号線
60 歪ゲージ
62 取り付け部材
64,66 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プラテン、可動プラテンおよびリアプラテンを備え、該固定プラテンと該リアプラテンが複数本のタイバーで連結され、該可動プラテンは該複数本のタイバーに摺動可能に支持され、該リアプラテンに設けられた型締機構によって該可動プラテンを該固定プラテンに対して前後進可能とした射出成形機において、
歪量を検知する歪センサを、前記リアプラテンの表面において前記複数本のタイバーのうちの、少なくともいずれか2つの隣り合うタイバーの中間部であって、前記リアプラテンの表面に押し当てる取り付け部材を介して取り付けたことを特徴とする型締力検出部を有する射出成形機。
【請求項2】
前記歪センサを前記リアプラテンの表面において、前記複数のタイバーのうちの少なくともいずれか2つの隣り合う2本のタイバーを結ぶ線分の中心部から垂直に交わる線上に設けたことを特徴とする請求項1に記載の型締力検出部を有する射出成形機。
【請求項3】
前記リアプラテンに前記歪センサの少なくとも一部が突出して収容される凹部を設け、前記歪センサが突出している部分を前記取り付け部材によりリアプラテンに押し付けたことを特徴とする請求項2に記載の型締力検出部を有する射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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