説明

埋設物探査装置、目標点探査方法及びV字形目標物

【課題】比較的厚い壁でも対応可能で取扱が容易な装置であって、壁又は床の裏面となる反対面に設けられた目標点の位置を手前面からレーダ波を用いて探査する埋設物探査装置を提供する。
【解決手段】埋設物探査装置1には、表示器2、操作スイッチ3、埋設物探査装置1を保持するための取っ手部4、移動位置を検出するためにエンコーダが内蔵された車輪5が設けられている。また、埋設物探査装置1は壁の手前側で操作され、壁の反対面にV字形目標物10が配置されている。V字形目標物10は、レーダ波を反射するテープ状の金属テープであり、目標点(C点)を通る鉛直軸(重力方向)を基準として左右に角度θ/2に伸びるように壁に接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
壁又は床の裏面となる反対面に設けられた目標点の位置を手前面からレーダ波を用いて探査する埋設物探査装置、目標点探査方法及びV字形目標物に関する。
【背景技術】
【0002】
工事などで壁や床に裏面となる手前面から反対面まで貫通する穴を開ける場合、反対面に印された所望の位置に穴を開けたい、又は反対面のどこに穴が開くかを知りたい場合がある。この場合、一般的には、反対面まで貫通している柱やダクト等の構造物を基準として位置を求めることになるが、基準となる構造物が無い場合には位置を求めることが困難になる。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1には、壁体の内部に隠蔽された電気配線用ボックスの前面の開口を壁表からアクセス可能にするため壁体を切り欠く工事において、ボックスに予め金属箔や磁石等を取り付け、金属あるは磁気を探知可能な探知器によってボックスの位置を探知する技術が開示されている。
【0004】
また、非特許文献1には、X線装置等により撮影されたフィルムを基に位置を算出するものが示されている。さらに、非特許文献2には、送信機と受信機を壁や床を挟んで対向して配置し、受信強度を基に位置を特定する製品等が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−31076号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】工業用ポータブルX線装置、製品名「ラジオフレックス 300EGM2」、[online]、平成21年1月20日、株式会社リガク、インターネット(http://www.rigaku.co.jp/products/p/rf 300egm/)
【非特許文献2】芯出し装置、製品名「FRAD」、[online]、平成21年1月20日、東京理学検査株式会社、インターネット(http://www.tokyorigaku.co.jp/newpage3.htm)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されているボックスの位置を探知する技術では、磁石の磁力によって表示器が作動することから、周囲に磁気を帯びた部品がある場合には誤動作をする可能性がある。さらに、壁の厚さが増えることにより磁力が減衰して正確な位置を検出することが難しい。
【0008】
また、非特許文献1に記載されているX線を用いるものでは、放射線被曝を防止するため、探査箇所周囲の立ち入り禁止処置や専用計測器による放射線管理、及び大容量電源を用意することが必要となる等、取扱が容易ではない。さらに、非特許文献2に記載されている送受信機は、受信強度を基に位置を特定するため、送受信機一対で運用する必要があり、電力線などの妨害電波による誤検出もありえる。
【0009】
そこで、本発明では比較的厚い壁でも対応可能で取扱が容易な装置であって、壁又は床の裏面となる反対面に設けられた目標点の位置を手前面からレーダ波を用いて探査する埋設物探査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る埋設物探査装置は、壁又は床の裏面となる反対面に設けられた目標点の位置を手前面からレーダ波を用いて探査する埋設物探査装置において、反対面の目標点を通る基準線が設けられると共に、基準線を中心として両側に予め決められた角度でV字形に伸びる金属板であって、交点部が目標点である金属板が設置され、手前面にて基準線に直交する方向に装置を移動させてV字形の金属板を検出する金属板検出手段と、測定開始点からV字形に伸びる一方の金属板を検出した点の位置を記憶する第1位置記憶手段と、第1位置の記憶後、さらにV字形に伸びる他方の金属板を検出した点の位置を記憶する第2位置記憶手段と、第1位置と第2位置からV字形の交差部の位置を算出する位置算出手段と、位置算出手段によって求められた位置を表示する表示手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る目標点探査方法は、壁又は床の裏面となる反対面に設けられた目標点の位置を手前面からレーダ波を用いて探査する目標点探査方法において、反対面の目標点を通る基準線が設けられると共に、基準線を中心として両側に予め決められた角度でV字形に伸びる金属板であって、交点部が目標点となる金属板が設置され、手前面にて基準線に直交する方向に装置を移動させてV字形の金属板を検出する金属板検出工程と、測定開始点からV字形に伸びる一方の金属板を検出した点の位置を記憶する第1位置記憶工程と、第1位置の記憶後、さらにV字形に伸びる他方の金属板を検出した点の位置を記憶する第2位置記憶工程と、第1位置と第2位置からV字形の交差部の位置を算出する位置算出工程と、位置算出工程によって求められた位置を表示する表示工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る目標点探査方法において、金属板検出工程は、壁又は床の裏面である反対面までの距離に基づいて、反対面近傍の金属板を目標物として検出することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係るV字形目標物は、壁又は床の手前面より埋設物探査装置によって探査される目標点であり、壁又は床の裏面となる反対面の目標点の位置に配置されたV字形目標物において、
【0014】
V字形目標物には目標点を通る基準線が設けられると共に、基準線を中心として両側に予め決められた角度でV字形に伸びる金属板であって、V字形の交点部が目標点となる金属板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る埋設物探査装置とV字形目標物を用いることにより、比較的厚い壁でも対応可能で取扱の容易な装置であって、壁又は床の反対面に設けられた目標点の位置を手前面からレーダ波を用いて探査する埋設物探査装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る埋設物探査装置とV字形目標物との配置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る埋設物探査装置と壁を挟んで配置されたV字形目標物を壁の断面方向からの位置関係を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る埋設物探査装置の構成を示す構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る埋設物探査装置の表示器に表示される測定結果の一例を示した模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係る目標点探査の処理の流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0018】
図1は埋設物探査装置1と当該装置で探査するV字形目標物10を示している。埋設物探査装置1には、表示器2、操作スイッチ3、埋設物探査装置1を保持するための取っ手部4、移動位置を検出するためにエンコーダが内蔵された車輪5が設けられている。また、埋設物探査装置1は壁の手前側で操作され、壁の反対面にV字形目標物10が配置されている。V字形目標物10は、レーダ波を反射するテープ状の金属板であり、目標点(C点)を通る鉛直軸(重力方向)を基準として左右に角度θ/2に伸びるように壁に接着されている。なお、V字形目標物10の交点は目標点を示している。
【0019】
壁の反対面に接着されたV字形目標物10の近傍において、壁の手前面から水平方向に探査を開始すると、埋設物探査装置1は最初にV字形目標物10のA点を発見することになる。さらに探査を進めると、次にV字形目標物10のB点を発見することになる。この時、A点からB点の距離(L)の半分の位置が目標点を通る鉛直軸になり、V字形目標物の角度θにより鉛直方向の距離が(tan-1θ/2)×L/2でC点が求まる。
【0020】
なお、壁に接着されたV字形目標物10の上側又は下側を探査した場合には、A点及びB点を発見することができないため、V字形目標物10を接着した高さを予め測定し、その高さ近傍で水平方向に探査をすることが望ましい。
【0021】
図2は埋設物探査装置1と壁を挟んで配置されたV字形目標物10を壁12の断面方向からの見た位置関係を示している。一般的に、コンクリートの壁12には鉄筋11が埋設され、壁12の反対面に接着されたV字形目標物10とでは、厚さ方向の位置が異なる。また、埋設物探査装置の表示において、壁の反対面からの反射波(エコー)は、一般的に境界面反射となるため帯状のエコーとなり、壁の反射面に接着されたV字形目標物10のエコーは帯状のエコーに重なるように表示される。このため、壁内部の鉄筋からのエコーと、V字形目標物10のエコーとを容易に識別することが可能となる。そこで、本実施形態では、埋設物探査装置1の深さ方向の情報及び表示の情報を用いて、鉄筋11とV字形目標物10との識別を行っている。また、埋設物探査装置1の側面には、測定中心を示すマーキングと、引き出し自在の定規7(例えば、巻き尺等)が設けられており、後述する目標点探査機能により表示された目標点の位置を容易にマーキング可能としている。
【0022】
図3は埋設物探査装置1の構成を示している。埋設物探査装置1は、レーダ波を送信して反射波を受信するレーダアンテナ6と、レーダ波及び反射波を送受信する送受信回路23と、送受信した信号を演算すると共に、本実施形態における目標点探査機能を処理する演算回路22と、演算回路22に情報を入力するための操作スイッチ3と、演算回路22によって演算された情報を表示する表示器2と、埋設物探査装置1の移動位置を検出するためのエンコーダ21と、を有している。
【0023】
演算回路22は、コンピュータシステムで構成されており、メモリに記憶されたプログラムにより様々な機能を実現している。本実施形態では、目標点探査機能をプログラムにより実現している。
【0024】
図4は、壁の探査において埋設物探査装置の表示器に表示される測定結果の一例を示している。なお、図4の表示例は、埋設物探査装置1を右手で握持し、矢印の方向に探査を行った結果を表示している。表示器2に表示される探査結果は、進行方向の距離に対する垂直断面図の表示であり、図中、エコー33,34は、鉄筋を示し、エコー31,32はV字形目標物のエコーを示している。また、表示器2の右下には、目標点探査結果が表示され、現在の位置から、例えば90cm戻った位置でかつ、例えば、下方向35cmの点が目標点であることを示している。
【0025】
一般的に、埋設物探査装置1には探査結果を表示する複数の表示モードが用意され、例えば、受信反射波形表示(Aモード)や垂直断面図表示(Bモード)表示等がある。特に、AモードとBモードにおけるオフセット階調において、コンクリート、空気及び金属製のV字形目標物の誘電率の違いにより反射波の位相が逆転する現象を観測することができるため、反対面に接着したV字形目標物の識別が容易となる。
【0026】
図5は目標点探査の処理の流れを示している。処理を開始すると、図1の埋設物探査装置1は、レーダ波を送信して反射波を受信する測定に移ると共に、ステップS10において、車輪5に接続されたエンコーダの値を測定開始位置として記憶する。次に、予め入力されているコンクリート反対面までの深さから該当するエコー信号を探査することになる。ステップS12において、反対面の信号であると判定すると、ステップS14に移る。ステップS14では、V字形目標物10の第1位置を記憶する。次に、第2位置を探査するために、ステップS16に移り、ステップS16では、反対面の信号を判定する。もし、反対面の信号であると判定すると、ステップS18に移り、ステップS18において、第2位置を記憶する。
【0027】
上記、第1位置及び第2位置が探査されると、埋設物探査装置1は、ステップS20において、目標点の位置を演算によって算出し、ステップS22において、目標点までの位置を表示する。この状態で、埋設物探査装置1を後退させると、表示器2の目標点までのX位置が減少し、「X=0」となった点が目標点を通る鉛直軸となる。さらに、埋設物探査装置1の側面に取り付けられている引き出し自在の定規7を用いてY位置を壁面にマーキングすることにより、目標点の位置を知ることができる。なお、本実施形態では、壁の目標点探査について説明したが、床の目標点探査も予め決められた方位を基準として同様な方法で探査が可能であることはいうまでもない。
【0028】
以上、上述したように、本実施形態に係る埋設物探査装置とV字形目標物を用いることにより、比較的厚い壁でも対応可能で取扱の容易な装置であって、壁又は床の反対面に設けられた目標点の位置を手前面からレーダ波を用いて探査することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る埋設物探査装置は、壁又は床の裏面となる反対面に設けられた目標点の位置を手前面からレーダ波を用いて探査するアプリケーションに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 埋設物探査装置、2 表示器、3 操作スイッチ、4 取っ手部、5 車輪、6 レーダアンテナ、7 定規、10 V字形目標物、11 鉄筋、12 壁、21 エンコーダ、22 演算回路、23 送受信回路、31,32,33,34 エコー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁又は床の裏面となる反対面に設けられた目標点の位置を手前面からレーダ波を用いて探査する埋設物探査装置において、
反対面の目標点を通る基準線が設けられると共に、基準線を中心として両側に予め決められた角度でV字形に伸びる金属板であって、交点部が目標点である金属板が設置され、手前面にて基準線に直交する方向に装置を移動させてV字形の金属板を検出する金属板検出手段と、
測定開始点からV字形に伸びる一方の金属板を検出した点の位置を記憶する第1位置記憶手段と、
第1位置の記憶後、さらにV字形に伸びる他方の金属板を検出した点の位置を記憶する第2位置記憶手段と、
第1位置と第2位置からV字形の交差部の位置を算出する位置算出手段と、
位置算出手段によって求められた位置を表示する表示手段と、
を有することを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項2】
壁又は床の裏面となる反対面に設けられた目標点の位置を手前面からレーダ波を用いて探査する目標点探査方法において、
反対面の目標点を通る基準線が設けられると共に、基準線を中心として両側に予め決められた角度でV字形に伸びる金属板であって、交点部が目標点となる金属板が設置され、手前面にて基準線に直交する方向に装置を移動させてV字形の金属板を検出する金属板検出工程と、
測定開始点からV字形に伸びる一方の金属板を検出した点の位置を記憶する第1位置記憶工程と、
第1位置の記憶後、さらにV字形に伸びる他方の金属板を検出した点の位置を記憶する第2位置記憶工程と、
第1位置と第2位置からV字形の交差部の位置を算出する位置算出工程と、
位置算出工程によって求められた位置を表示する表示工程と、
を有することを特徴とする目標点探査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の目標点探査方法において、
金属板検出工程は、壁又は床の裏面である反対面までの距離に基づいて、反対面近傍の金属板を目標物として検出することを特徴とする目標点探査方法。
【請求項4】
壁又は床の手前面より埋設物探査装置によって探査される目標点であり、壁又は床の裏面となる反対面の目標点の位置に配置されたV字形目標物において、
V字形目標物には目標点を通る基準線が設けられると共に、基準線を中心として両側に予め決められた角度でV字形に伸びる金属板であって、V字形の交点部が目標点となる金属板であることを特徴とするV字形目標物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−181162(P2010−181162A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22426(P2009−22426)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】