説明

埋設装置

【課題】廃棄物処分場に通気パイプを埋設する場合などに用いられる、先端が脱着可能な埋設装置において、先端部の鋼管への取り付け及び取り外しが容易な埋設装置を提供する。
【解決手段】鋼管30と蓋体10とを備えた埋設装置において、鋼管30の先端に、該先端より略逆L字形に切れ込む切り込み部31を形成し、蓋体10を、底部を有する筒状の本体10と、該本体10の開口部外周に所定の間隙を介して配置した外筒12とを有する構成とし、該本体10と外筒12との間隙に鋼管30の先端を挿入し、該間隙内において蓋体10と鋼管30とを互いに係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場において投棄された廃棄物を安定化するために廃棄物層内に通気パイプや通水パイプを埋設する場合に用いられる、鋼管の先端に脱着可能な蓋体を取り付けてなる埋設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を投棄して処分する処理場や埋立地では、有害なガスが大気中に拡散することを防止するために、早期に安定化する方法が開発されている。例えば、特許文献1には、廃棄物層内に通気パイプを埋設し、該通気パイプを介して廃棄物層内から有害なガスを吸引排除する方法が開示されている。
【0003】
このような廃棄物層内に通気パイプを埋設する方法としては、削孔式のボーリングマシーンを使用して廃棄物層を削孔して通気パイプを挿入する方法が採られていた。
【0004】
最近では、中空の鋼管の先端に脱着可能な蓋体を取り付け、該蓋体に通気パイプなどの先端を取り付けた埋設装置を廃棄物層にねじ込み、先端の蓋体が所定の深さまで到達した時点で蓋体を鋼管から取り外し、鋼管のみを引き抜くことで蓋体と通気パイプとを廃棄物層内に埋設する方法がとられている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−269640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、廃棄物処分場に通気パイプを埋設する場合などに用いられる、先端が脱着可能な埋設装置において、先端部の鋼管への取り付け及び取り外しが容易な埋設装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、中空の鋼管と、該鋼管の先端に脱着可能に取り付けられる蓋体とを少なくとも備えた埋設装置であって、上記蓋体が、底部を有する筒状の本体と、該本体の開口部側の外周に、所定の間隙を介して同心円状に配置した外筒を有し、上記本体と外筒との間隙が、少なくとも底部側において塞がれており、上記鋼管の内径が上記本体の外径よりも大で、且つ、該鋼管の外径が上記外筒の内径よりも小であり、該鋼管の先端を本体と外筒との間隙に挿入して、該間隙内において該鋼管と蓋体とを互いに係止することを特徴とする。
【0008】
本発明において、上記蓋体が、本体と外筒との間隙を部分的に埋める係止片を有し、鋼管が、下方先端から略逆L字形に切れ込む切り欠き部を有し、該鋼管の切り欠き部に蓋体の係止片を通過させることで、鋼管と蓋体とを係止することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鋼管と蓋体との係止部分が蓋体の外筒で覆われており、且つ、外筒と蓋体の本体との間隙は先端方向において塞がれているため、本発明の埋設装置を土壌や廃棄物層内に埋設する際に、該係止部分が土壌や廃棄物層に直接接することがなく、該係止部分に廃棄物がからまったり、土砂などが付着する恐れがない。よって、これら廃棄物や土砂などによる、埋設効率の低下や、蓋体と鋼管との脱離不良が防止され、効率よく埋設して、蓋体を容易に脱離することができる。その結果、所定の深さに通気パイプや通水パイプを効率よく埋設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態を挙げて本発明を具体的に且つ詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の埋設装置の好ましい一例である、揚水井戸埋設装置の一例を示す分解斜視図である。また、図2は、図1の揚水井戸埋設装置の先端部分の断面概略図であり、図3は、図1の蓋体を上方から見た図である。図中、10は蓋体、11は本体、12は外筒、13a,13bは螺旋翼、14a,14bは先端羽根、15は貫通孔、18はワイヤー、19は係止片、20は通水パイプ、21は硬質樹脂部材、22は有孔樹脂パイプ、30は鋼管、31は切り欠き部、32は係止部、33はテーパー部である。以下、各部材について説明する。
【0012】
〔蓋体10〕
蓋体10は、鋼管30の先端に取り付けて該鋼管30を閉塞し、鋼管30内に廃棄物層内の廃棄物や土砂が入り込むのを防止する部材であり、該蓋体10の内側に取水用の通水パイプ20の先端を取り付ける。
【0013】
本例の蓋体10は、底部を有する筒状の本体11を有しており、該本体11の開口部の外側には所定の間隙を介して外筒12が同心円状に配置しており、後述するように鋼管30の先端が該間隙内に挿入され、該間隙内において鋼管30と蓋体10とが係止される。本例においては、該間隙を部分的に埋めるように係止片19が取り付けられており、後述する鋼管30の先端に形成された切り欠き部31に該係止片19を通過させて係止する。尚、外筒12と本体11との間隙は、先端側で塞がれており、当該埋設装置を廃棄物層内に埋設する際に該間隙に廃棄物層内の廃棄物や土砂が入り込むのを防止している。
【0014】
また、本例の蓋体10は、先端の底部に先端羽根14a,14bが付設されている他、本体11の先端外周に同じ高さの同じ位置で同じ螺旋方向で長さが本体11の外周の半周分の螺旋翼13a,13bが互いに相対的に不連続に付設されている。
【0015】
尚、本発明に用いる蓋体10に付設される羽根や翼は特に限定されるものではなく、図4に示すように、V字羽根41a,41bも好ましく用いられる。図4のV字羽根41a,41bはそれぞれ、蓋板10の本体11底部の中央を貫く法線より放射状に取り付けられ、先端から本体11底部に向かってテーパー状に広がる直角三角形状を呈している。本例では、該三角形の底辺が外筒12の外周より飛び出した41aと、外筒12内に収まった41bとを横断面が十字形になるように組み合わせて用いていられており、必要に応じて枚数や横断面の形状(互いに隣接する2枚の羽根のなす角度)が適宜変更される。
【0016】
〔通水パイプ20〕
本例の通水パイプ20は、係る埋設装置を廃棄物層内に埋設後、廃棄物層内の地下水を採取するための部材である。従って、素材は良好な通水性を有していれば特に限定されるものではないが、可撓性を有するものが取り扱いが容易である。特に、蓋体10への取り付け、及び、鋼管30内への挿入時に扱いが容易で作業性が良く、好ましい。具体的には、例えば塩化ビニル管にまんべんなく孔を形成した有孔パイプや不織布からなるパイプの外側に螺旋状の弾性体を取り付けたものなどが挙げられるが、特に好ましくは、本例に示すように、筒状の可撓性を有する有孔樹脂パイプ22の外側に螺旋状の硬質樹脂部材21を巻き付けた構成であり、具体的には、カナフレックスコーポレーション社製の「カナネット(登録商標)」が挙げられる。本例の通水パイプ20は可撓性を有する有孔樹脂パイプ22で構成されているため、ロール状に巻き取った状態にすることができるため、廃棄物処理場へはロール状で供給し、埋設作業時に引き出して必要な長さに切断して用いることもできる。また、作業時に切断する場合には、埋設長さの変更も容易である。
【0017】
本例では、係る通水パイプ20は、後述するように一部を廃棄物層内に露出させて用いるが、露出させる領域が狭いため、埋設装置に取り付ける長さは短くて良い。具体的には、地下水を採取する領域の高さよりも若干長く、鋼管30を引き上げた際に、上方の先端部が廃棄物層内に露出しない程度であればよく、鋼管30の先端から50〜100cm程度上方に該通水パイプ20の先端が位置すればよい。
【0018】
さらに、該通水パイプ20は、蓋体10の本体11内に沿うように、外径が本体11の内径よりも若干小さい程度であることが好ましい。具体的には、本体11の内径が305mmに対して、通水パイプ20の外径が300mm程度が好ましい。
【0019】
当該通水パイプ20は先端部付近の有孔樹脂パイプ22に穴をあけてワイヤー18を取り付け、該ワイヤー18を本体11に設けた貫通孔15に通して蓋体10に取り付ける。
【0020】
〔鋼管30〕
本発明の鋼管30は、係る埋設装置を廃棄物層内に埋設する際には杭として作用する。また、本例においては、埋設後、所定の高さだけ引き上げた後、廃棄物層内に配置した鋼管をそのまま残して揚水井戸の外壁として用いる部材でもある。
【0021】
本発明に用いられる鋼管30は、内径が蓋体10の本体11の外径よりも大きく、且つ、外径が外筒12の内径よりも小さく、先端を蓋体10の本体11と外筒12との間隙に挿入し、該間隙内で蓋体10と互いに係止する。本例においては、鋼管30の先端に該先端より略逆L字形に切れ込む切り欠き部31を形成し、蓋体10には、この切り欠き部31の内側に突出する係止部32が係止しうる係止片19が形成されている。鋼管30の取り付けの際には、鋼管30の切り欠き部31内に係止片19が進入するように位置を確認しながら、鋼管30の先端を蓋体10の本体11と外筒12との間に差し込み、次いで鋼管30を回転させることで係止部32が係止片19の下方の隙間に入り込み、蓋体10と鋼管30とが一体化する。尚、蓋体10を鋼管30から取り外す際には、鋼管30を逆に回転させてから鋼管30を引き上げれば容易に脱離する。また、本例においては、鋼管30の切り欠き部31の開口端の一方(係止部32とは逆側)にテーパー部33を設けていることから、蓋体10を鋼管30から取り外す際には、係止片19が該テーパー部33に沿って滑るため、取り外しがスムーズに行われる。
【0022】
本発明においては、図2,図3に示すように、鋼管30と蓋体10との係止領域が外筒12で覆われ、且つ、外筒12と本体11との間隙は先端部において塞がれているため、係る埋設装置を廃棄物層内に埋設する際に上記係止領域が廃棄物層に直接接することがなく、該係止領域に廃棄物がからんだり、土砂が付着するなどにより、埋設装置の埋設を妨げたり、蓋体10の鋼管30からの取り外しを妨げるなどの不都合を生じる恐れがない。
【0023】
〔埋設方法〕
次に、図1の埋設装置を用いた揚水井戸埋設方法について説明する。図5は埋設工程を示す模式図である。図中、51は廃棄物層、52は固定部材である。
【0024】
図1の埋設装置において、蓋体10に通水パイプ20の先端を取り付けて固定し〔図5(a)〕、次いで通水パイプ20を鋼管30内に挿入し、鋼管30を蓋体10に係止する〔図5(b)〕。尚、通水パイプ20を鋼管30内に先に挿入してから、通水パイプ20の先端を蓋体10に取り付け、次いで鋼管30を蓋体10に係止してもかまわない。
【0025】
本発明においては、蓋体10と鋼管30との取り付けが、鋼管30の切り欠き部31に蓋体10に設けた係止片19を係止するだけでよいため、他の部材や工具を必要とせず、容易に取り付けることができる。
【0026】
さらに、本例では通水パイプ20が樹脂製で十分な可撓性を有しているため、通気パイプ3を蓋体10に取り付けてからでも、通水パイプ20のしなりを利用して鋼管30内に通水パイプ20を容易に挿入することができる。よって、予め鋼管30の先端を下方に向けて傾けた状態で埋設用重機に取り付け、該鋼管30の下方の先端から通水パイプ20を挿入することもできる。
【0027】
次いで、重機により鋼管30に回転を与えながら廃棄物層51内に係る埋設装置をねじ込む〔図5(c)〕。この時、本例では鋼管30の先端に螺旋翼13a,13b及び先端羽根14a,14bを有する蓋体10が取り付けてあるため、これらによって廃棄物や土砂が押しのけられ、廃棄物や土砂を外部に排出することなく容易に所定の深さまで鋼管30を埋設することができる。また、中空の鋼管30は蓋体10によって先端が閉塞されているため、鋼管30内に廃棄物や土砂が入り込むこともない。
【0028】
蓋体10を鋼管30から取り外し、所定の高さだけ鋼管30を軸方向上方に引き上げる〔図5(d)〕。本発明では、蓋体10と鋼管30とが鋼管30に設けた切り欠き部31に蓋体10に設けた係止片19が係止しているだけであり、該切り欠き部31の開口端にテーパー部33が形成されていることから、鋼管30を蓋体10に取り付ける時とは逆方向に回転させながら引き上げることにより、係止片19が切り欠き部31を抜けて蓋体10が鋼管30から容易に脱離する。
【0029】
また、当該工程で鋼管30を引き上げる高さは、地下水を採取する領域分のみであり、鋼管30の引き上げによって通水パイプ20の上方端部が廃棄物層51内に露出しないように留意する必要がある。また、鋼管30は通常、所定の長さの鋼管を複数本、溶接或いは継ぎ手によって連結して用いるため、上方先端の鋼管を当該工程で引き上げる高さに対応する長さに設定しておけば、引き上げた鋼管30の高さを容易に判別することができる。
【0030】
鋼管30を引き上げた後、不要な上方先端の鋼管を取り外し、鋼管30の上方先端にコンクリートを打設するなどして、固定部材52を付設し、鋼管30を廃棄物層51内に残したまま該廃棄物層51に固定する〔図5(e)〕。廃棄物層51内に残された鋼管30はそのまま揚水井戸の外壁として作用する。
【0031】
尚、図5の埋設工程においては、通水パイプ20と蓋体10とを取り付けた鋼管30を直接廃棄物層51に埋設しているが、予め鋼管30よりも小径の削孔用鋼管を廃棄物層51にねじ込んで、必要深度まで先端が到達することを確認することにより、作業効率の向上を図っても良い。
【0032】
〔揚水方法〕
図5(e)の如く埋設された揚水井戸においては、該井戸先端部の、廃棄物層51内に露出した通水パイプ20内に地下水が浸出してくる。よって、ホースの先端を通水パイプ20内に挿入し、他端をポンプに連結して汲み上げることにより、該揚水井戸先端部の領域の地下水のみを採取することができる。また、この時、廃棄物や土砂は通水パイプ20によって遮断されるため、地下水の採取中にホース内に廃棄物や土砂が詰まって地下水の採取が妨げられる心配がない。
【0033】
本例の揚水井戸は、埋設時に用いた鋼管30をそのまま廃棄物層51内に残しているため、地上に露出した鋼管30の上方先端に新たな鋼管を連結することにより、上方に延長することができ、新たに廃棄物を投棄する場合であっても、別途揚水井戸を埋設する必要がなく、半永久的に用いることができる。
【0034】
上記の説明においては、本発明の埋設装置を揚水井戸を埋設する場合を例に挙げて説明したが、本発明が当該用途に限定されるものではなく、埋設後に鋼管を全て引き上げてしまい、通水パイプや通気パイプのみを廃棄物層内或いは土壌内に残す場合などにも好ましく適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の埋設装置の一例である揚水井戸埋設装置の分解斜視図である。
【図2】図1の揚水井戸埋設装置の先端部断面概略図である。
【図3】図1の蓋体を上方から見た図である。
【図4】本発明に用いる蓋体の別の形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の埋設装置を用いた揚水井戸の埋設方法の工程図である。
【符号の説明】
【0036】
10 蓋体
11 本体
12 外筒
13a,13b 螺旋翼
14a,14b 先端羽根
15 貫通孔
18 ワイヤー
19 係止片
20 通水パイプ
21 硬質樹脂部材
22 有孔樹脂パイプ
30 鋼管
31 切り欠き部
32 係止部
33 テーパー部
41a,41b V字羽根
51 廃棄物層
52 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の鋼管と、該鋼管の先端に脱着可能に取り付けられる蓋体とを少なくとも備えた埋設装置であって、上記蓋体が、底部を有する筒状の本体と、該本体の開口部側の外周に、所定の間隙を介して同心円状に配置した外筒を有し、上記本体と外筒との間隙が、少なくとも底部側において塞がれており、上記鋼管の内径が上記本体の外径よりも大で、且つ、該鋼管の外径が上記外筒の内径よりも小であり、該鋼管の先端を本体と外筒との間隙に挿入して、該間隙内において該鋼管と蓋体とを互いに係止することを特徴とする埋設装置。
【請求項2】
上記蓋体が、本体と外筒との間隙を部分的に埋める係止片を有し、鋼管が、下方先端から略逆L字形に切れ込む切り欠き部を有し、該鋼管の切り欠き部に蓋体の係止片を通過させることで、鋼管と蓋体とを係止する請求項1に記載の埋設装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−270528(P2007−270528A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97868(P2006−97868)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】