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埋設金具および軽量気泡コンクリートパネルの製造方法
説明

埋設金具および軽量気泡コンクリートパネルの製造方法

【課題】低コストでありながらも、十分なアンカー引き抜き強度を有するALCパネルを提供する。
【解決手段】本発明の埋設金具10は、ALCパネル1に埋設される金具10であってスチレン−アクリル系樹脂からなる防錆皮膜が表面に形成されている。本発明のALCの製造方法は、埋設金具10の表面に、スチレン−アクリル系樹脂からなる防錆皮膜を形成する第1防錆処理工程と、第1防錆処理工程を経た埋設金具10を補強鉄筋2に固定する固定工程と、固定工程を経た補強鉄筋2の表面ならびに埋設金具10の表面にスチレン−アクリル系樹脂を含む第2樹脂防錆層ならびにセメント系防錆層を形成する第2防錆処理工程と、第2防錆処理工程を経た補強鉄筋を配設した型枠内に原料スラリーを打設して半硬化体を作製する半硬化体作製工程と、オートクレーブ養生工程と、を経ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設金具および軽量気泡コンクリートパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の構造躯体に取り付けるためのアンカー金具が埋設されている軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)において、アンカー金具は、錆の発生を防止するための防錆処理を施されたのちに、補強鉄筋に溶接などにより固定されてALCパネルに埋設される。
【0003】
このようなアンカー金具の防錆処理方法としては、例えば、特許文献1において、ニッケルメッキ処理を施すことが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−291128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に提案されているニッケルメッキ処理による防錆処理方法は、防錆処理に使用する材料が高価である上に、防錆処理のための設備にもコストがかかり、高コストであるという問題がある。
【0006】
ニッケルメッキ処理よりも低コストな方法として、エポキシ樹脂をカチオン電着塗装することによるアンカー金具の防錆処理方法を検討した。しかしながら、当該防錆処理を行った金具が埋設されたALCパネルでは、オートクレーブによりエポキシ樹脂を主成分とする防錆皮膜に微細な亀裂が発生することもあり、当該ALCパネルのアンカー引き抜き試験では、防錆皮膜の剥離(破断)が生じ、十分な引き抜き強度が得られないこともあった。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、低コストでありながらも、十分なアンカー引き抜き強度を有するALCパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
エポキシ樹脂を主成分とする塗料をカチオン電着塗装する方法により防錆処理を行った金具を備えるALCパネルにおいて、防錆皮膜の剥離が生じる原因としては、以下のことが考えられる。
【0009】
アンカー金具が埋設されたALCパネルを製造する際には、アンカー金具に防錆処理を行った後に補強鉄筋に溶接固定し、防錆処理後の金具が固定された補強鉄筋を配置した型枠内にALCの原料スラリーを打設して養生した後、切断工程、および約180℃のオートクレーブにおける養生工程を実行する。
【0010】
ここで、オートクレーブ養生の際に高温となることにより、防錆皮膜を構成するエポキシ樹脂が劣化して、当該防錆皮膜内に亀裂が発生しやすくなるとも考えられる。
【0011】
そこで、さらなる検討を行ったところ、埋設金具としてスチレン−アクリル系樹脂を主成分として含む防錆皮膜を形成した金具を用いたALCパネルでは、低コストでありながらも、十分なアンカー引き抜き強度を有するという知見を得た。本発明はかかる新規な知見に基づくものである。
【0012】
すなわち、本発明は、軽量気泡コンクリートパネルに埋設される埋設金具であって、スチレン−アクリル系樹脂からなる防錆皮膜が、表面に形成されている埋設金具である。
【0013】
また、本発明は、軽量気泡コンクリートパネルに埋設される埋設金具の表面に、スチレン−アクリル系樹脂からなる防錆皮膜を形成する第1防錆処理工程と、前記第1防錆処理工程を経た埋設金具を補強鉄筋に固定する固定工程と、前記固定工程を経た補強鉄筋の表面ならびに前記埋設金具の表面に、スチレン−アクリル系樹脂を含む第2樹脂防錆層、ならびに、セメントを含むセメント系防錆層を形成する第2防錆処理工程と、前記第2防錆処理工程を経た補強鉄筋を配設した型枠内に原料スラリーを打設して半硬化体を作製する半硬化体作製工程と、前記半硬化体作製工程を経て得られた半硬化体をオートクレーブ養生するオートクレーブ養生工程と、を経ることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルの製造方法である。
【0014】
本発明において、防錆皮膜の材料として用いられるスチレン−アクリル系樹脂は、ニッケルメッキに用いる材料と比較すると、安価な材料である。また、本発明においては、埋設金具の表面に防錆皮膜を形成するために、電着塗装を行う場合と比べて大型な装置を必要とせず、低コストにより埋設金具およびALCを生産可能である。
【0015】
さらに、本発明の埋設金具が埋設されたALCパネルは、後述の実施例で示すように、優れたアンカー引き抜き強度を有しており、アンカー引き抜き試験の際に、防錆皮膜の剥離(破断)は発生しない。その結果、本発明によれば、低コストでありながらも、十分なアンカー引き抜き強度を有するALCパネルを提供することができる。
【0016】
なお、本発明により、十分なアンカー引き抜き強度を有するALCパネルを提供できるという効果が得られるのは、防錆皮膜に含まれるスチレン−アクリル系樹脂がオートクレーブ養生により劣化しないことに起因すると考えられる。
【0017】
本発明において、防錆皮膜の厚みを20μm以上50μm以下とすると埋設金具の表面に防錆皮膜をムラなく形成することができ、かつ、埋設金具を補強鉄筋に溶接により固定する際に接合しやすいので好ましい。また、防錆皮膜の厚みを50μm以下とすると溶接時の発煙が少なくなり作業が容易となるという点でも好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アンカーの防錆剤及び設備に要するコストを低減するとともに、十分なアンカー引き抜き強度を有するALCパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ALCパネル内に埋設された実施形態1の埋設金具を上面から示した図
【図2】埋設金具の側面図
【図3】埋設金具の下面図
【図4】ALCパネル内に配置された補強鉄筋を上面から示した図
【図5】実施形態1の埋設金具を用いたアンカー引き抜き試験の概要を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
本発明を具体化した実施形態1の埋設金具10について図1ないし図5を参照しながら、説明する。本実施形態では、図1〜図3および図5に示すような側面視略コ字状の埋設金具10を例示して説明するが、本発明の埋設金具10の形状はこれに限定されない。以下の説明において、図2における上側を上方向とする。
【0021】
埋設金具10は、図1に示すように、補強鉄筋2に固定された状態でALCパネル1に埋設されている金属製(例えば鉄製)の部材であり、ALCパネル1を躯体(図示せず)に取り付けるための部材である。埋設金具10が取り付けられている補強鉄筋2は、ALCパネル1において、図1および図4に示すように、長手方向に沿って配される補強鉄筋2Aと、短辺方向に沿って配される補強鉄筋2Bとを格子組を形成するよう配設される。
【0022】
埋設金具10の上面10Aには、図2に示すように、埋設金具10の上面10Aとの間に長手方向に沿って配される補強鉄筋2を挟持する取付片11が2つ突出形成されている。埋設金具10の2つの取付片11,11は、補強鉄筋2の所定箇所を挟持するように取り付けられ、溶接などの方法により補強鉄筋2に固定されている。
【0023】
埋設金具10の側面10Bには、図2および図3に示すように、上下方向(ALCパネル1の厚み方向)に配される筒状体12が固着されている。筒状体12の下端部(ナット部)12A側には詳細は図示しないが雌ネジが形成されており、躯体に取り付けられるようになっている。
【0024】
本発明の埋設金具10の表面には、スチレン−アクリル系樹脂をからなる防錆皮膜(図示せず)が形成されている。本発明において、防錆皮膜の厚みを20μm以上50μm以下とすると、埋設金具10の表面に防錆皮膜をムラなく形成することができ、かつ、埋設金具10を補強鉄筋2に溶接により固定する際に接合しやすいので好ましい。また、防錆皮膜の厚みを50μm以下とすると溶接時の発煙が少なくなり作業が容易となるという点でも好ましい。防錆皮膜の厚みが20μm未満の場合には、防錆皮膜の厚みが不均一となったり十分な防錆性能が得られないことがあり、防錆皮膜の厚みが50μmを超えると補強鉄筋2に溶接する際に接合しにくくなったり、溶接時の発煙が多くなり作業が行いにくくなることがある。
【0025】
防錆皮膜を構成するスチレン−アクリル系樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル系樹脂の全質量に対して、構成単位としてスチレンを10質量%以上50質量%以下の割合で含むものが挙げられる。
【0026】
スチレン−アクリル系樹脂は、スチレンとアクリル系化合物とを含む単量体を重合させて得られる重合体である。スチレン−アクリル系樹脂の材料となるアクリル系化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類等、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、カプロラクトン変成ヒドロキシアクリレート、カプロラクトン変成ヒドロキシメタクリレート、ビスヒドロキシエチルフタレートのモノアクリレート、ビスヒドロキシエチルフタレートのモノメタクリレート、、2−アクリロキシエチルアシッドフォスフェート、2−メタクリロキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリロキシプロピルアシッドフォスフェート、2−メタクリロキシプロピルアシッドフォスフェート、2−アクリロキシ−3−クロロプロピルアシッドフォスフェート、2−メタクリロキシ−3−クロロプロピルアシッドフォスフェート、2−アクリロキシフェニルエチルフェニルリン酸、2−メタクリロキシフェニルエチルフェニルリン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0027】
スチレン−アクリル系樹脂を作製するために用いる上記以外の単量体としては、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体、アリルアルコール、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有単量体、ビニルエーテル類、4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記単量体のうち、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレートおよびアクリル酸から選ばれる単量体およびスチレンを用いるのが好ましい。
【0028】
次に、本発明の埋設金具10が埋設されたALCパネル1の製造方法について説明する。ALCパネル1は、埋設金具10の表面に、スチレン−アクリル系樹脂からなる防錆皮膜を形成する第1防錆処理工程と、第1防錆処理工程を経た埋設金具10を補強鉄筋2に固定する固定工程と、固定工程を経た補強鉄筋2の表面ならびに埋設金具10の表面に、スチレン−アクリル系樹脂を含む第2樹脂防錆層、ならびに、セメントを含むセメント系防錆層を形成する第2防錆処理工程と、第2防錆処理工程を経た補強鉄筋2を配設した型枠内に原料スラリーを打設して半硬化体を作製する半硬化体作製工程と、半硬化体作製工程を経て得られた半硬化体をオートクレーブ養生するオートクレーブ養生工程と、を経ることにより製造される。以下、各工程について説明する。
【0029】
まず、埋設金具10の表面に、スチレン−アクリル系樹脂からなる防錆皮膜を形成する(第1防錆処理工程)。第1防錆処理工程は、スチレン−アクリル系樹脂を含有する液状物を埋設金具10の表面に公知の手法により塗布したり、埋設金具10をスチレン−アクリル系樹脂を含有する液状物に浸漬することなどにより実行することができる。
【0030】
スチレン−アクリル系樹脂を含有する液状物は、上述した単量体(スチレンとアクリル系化合物とを含む単量体)を重合させて得られる重合体の液状物であり、スチレン−アクリル系樹脂としてスチレンを10質量%以上50質量%以下の割合、好ましくは30質量%以上50質量%以下の割合で含むエマルジョンなどがあげられる。このようなスチレン−アクリル系樹脂エマルジョンの中でも、ソープフリータイプやソープレスタイプのものが好ましい。
【0031】
次に、第1防錆処理工程を経た埋設金具10を補強鉄筋2に固定する(固定工程)。固定工程においては、図4に示すような格子状をなす補強鉄筋2の所定箇所に所定数の埋設金具10を固定する。具体的には、埋設金具10の取付片11を、当該取付片11と埋設金具10の上面10Aとの間に補強鉄筋2の所定箇所を挟持するように取り付けて、溶接などの方法により固定すると、埋設金具10が補強鉄筋2に固定される。
【0032】
固定工程を経た補強鉄筋2の表面ならびに埋設金具10の表面に、スチレン−アクリル系樹脂を含む第2樹脂防錆層、ならびに、セメントを含むセメント系防錆層を形成する(第2防錆処理工程)。
【0033】
第2防錆処理工程では、まず、スチレン−アクリル系樹脂を含む第2樹脂防錆層を形成する。第2樹脂防錆層は、防錆皮膜の形成に用いるスチレン−アクリル系樹脂、石英粉、消石灰、炭酸カルシウム、および水等を混合してなる樹脂混合物を、埋設金具10の表面および補強鉄筋2の表面に、公知の手法により塗布したり、埋設金具10付きの補強鉄筋2を前記樹脂混合物に浸漬することなどにより形成することができる。
【0034】
樹脂混合物に含まれるスチレン−アクリル系樹脂としては、第1防錆処理工程で防錆皮膜を形成するために用いるスチレン−アクリル系樹脂の液状物に含まれるスチレン−アクリル系樹脂と同様のものを用いることができる。
【0035】
樹脂混合物中の各成分の割合(樹脂混合物の全質量に対する割合)は、スチレン−アクリル系樹脂が10質量%以上20質量%以下、石英粉が20質量%以上30質量%以下、消石灰が10質量%以上20質量%以下、炭酸カルシウムが5質量%以上15質量%以下、水などの溶媒が28質量%以上41質量%以下とするのが好ましい。
【0036】
次に、第2樹脂防錆層を形成した埋設金具10付きの補強鉄筋2の表面に、セメント系防錆層を形成する。セメント系防錆層は、埋設金具10付きの補強鉄筋2の表面に、セメントを含むセメント系防錆剤を塗布するか、あるいは、埋設金具10付きの補強鉄筋2を当該セメント系防錆剤に浸漬することにより形成される。
【0037】
セメント系防錆層を形成するセメント系防錆剤としては、セメント防錆剤の質量に対して、60質量%以上80質量%以下のセメントと、セメント防錆剤の質量に対して5質量%以上10質量%以下のスチレン−アクリル系樹脂と、セメント防錆剤の質量に対して20質量%以上30質量%以下の水とを混合してなるものが好ましい。セメント系防錆剤に含まれるスチレン−アクリル系樹脂の液状物としては、第2樹脂層を形成するときに用いる樹脂混合物に含まれるスチレン−アクリル系樹脂の液状物と同様のものを用いることができる。
【0038】
次に、第2防錆処理工程を経た埋設金具10付きの補強鉄筋2を配設した型枠内に原料スラリーを打設して半硬化体を作製する(半硬化体作製工程)。原料スラリーとしては、珪酸質原料および石灰質原料を主原料とする固形成分に水を加えて混練してなるスラリーを用いることができる。
【0039】
珪酸質原料としては、珪石、珪砂、スラグ、フライアッシュなどのSiOを含む原料として公知のものの粉末または粒状物を一種類または二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0040】
石灰質原料としては、生石灰、消石灰、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、その他の各種ポルトランドセメント等の粉末または粒状物を一種類または二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
原料スラリーの材料としては上記固形成分や水以外に、アルミニウム粉末などの発泡剤や減水剤などを用いることができる。また、原料スラリーを作製する際には、上記の主成分となる原料以外に、石膏、繰り返し原料(原料スラリーを発泡硬化させて得られる半硬化体を、ピアノ線で切断した際に発生する不要な部分)や、不要となったALCの粉末(半硬化体を養生して得られるALCを切断した際に発生する不要な部分)を添加してもよい。これらの原料を添加すると、原料スラリーの発泡が安定する上に、原料費を節約できるので、好ましい。
【0042】
原料スラリーは、上記固形成分に、全固形成分(珪酸質原料、石灰質原料などの主成分となる原料、および石膏などの固形成分)100質量部に対して50〜90質量部の水を加えて混練することにより得られる。
【0043】
上述のようにして作製した原料スラリーを、埋設金具10が取り付けられた補強鉄筋2を配設した所定形状の型枠に打設し、型枠内に打設した原料スラリーを所定の硬度(例えばピアノ線で切断可能な硬度)となるまで半硬化養生させることにより半硬化体が得られる。
【0044】
次に、半硬化体作製工程を経て得られた半硬化体を型枠から脱型し切断する(脱型・切断工程)。脱型・切断工程においては、半硬化体作製工程を経て得られた半硬化体を、型枠から脱型し、ピアノ線などで所定の厚さに切断して、不要部分(凸凹状の端部などの不要な部分)を除去して形を整えることにより、複数のパネル状の半硬化体を得ることができる。
【0045】
上述した方法により得られたパネル状の半硬化体を160℃〜200℃で4時間〜12時間オートクレーブ養生する(オートクレーブ養生工程)と、実施形態1の埋設金具10が埋設されたALCパネル1が得られる。
【0046】
<実施例>
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
1.実施例1の埋設金具、比較例1〜2の埋設金具をそれぞれ埋設したALCの作製
(1)第1防錆処理工程
図2に示す形態の埋設金具の表面に、スチレン−アクリル系樹脂のエマルジョンを塗布することにより、30μmの防錆皮膜を表面に形成して実施例1の埋設金具を得た。スチレン−アクリル系樹脂中のスチレン量は樹脂の質量に対して30質量%である。
【0047】
(2)固定工程
実施例1の埋設金具を、図1に示すように、格子状をなす補強鉄筋2の所定箇所に固定した。具体的には、埋設金具10の取付片11を、当該取付片11と埋設金具10の上面10Aとの間に補強鉄筋2の所定箇所を挟持するように取り付けて、溶接を行うことにより、埋設金具10を補強鉄筋2に固定した。
【0048】
(3)第2防錆処理工程
(i)第2樹脂層の形成
スチレン−アクリル系樹脂を含む樹脂混合物を調製した。
樹脂混合物中の各成分の割合は、樹脂中のスチレン量が50質量%のスチレン−アクリル系樹脂が15質量%、石英粉が25質量%、消石灰が15質量%、炭酸カルシウムが10質量%、水35質量%である。
調製した樹脂混合物を、固定工程を経た埋設金具の表面と補強鉄筋の表面とにそれぞれ塗布して第2樹脂層を形成した。
【0049】
(ii)セメント系防錆層の形成
樹脂中のスチレン量が43質量%のスチレン−アクリル系樹脂を7質量%、セメント(普通ポルトランドセメント)を70質量%、および水を23質量%混合してセメント系防錆剤を調製した。
セメント防錆剤を第2樹脂層を形成した埋設金具と補強鉄筋の表面に塗布して、セメント防錆層を形成した。
【0050】
(3)半硬化体の作製工程
珪石粉末65質量部、早強セメント20質量部、生石灰粉末11質量部、石膏4質量部、これらの固形成分100質量部に対して70質量部の水、アルミニウム粉末0.06質量部、および減水剤0.1質量部を混合して原料スラリーを作製し、埋設金具付きの補強鉄筋を配設した型枠内に注入し、発泡・硬化させた。3時間経過後の半硬化体を脱型して、0.9mmのピアノ線でパネル形状に切断し、型枠周辺の非製品部分ならびに端部の凸凹部分などを取り除きパネル状の半硬化体を作製した。
【0051】
(4)オートクレーブ養生工程
(3)で得られた半硬化体を、180℃、10時間オートクレーブで養生することにより実施例1の埋設金具が埋設されたALCパネルを作製した。
【0052】
(5)比較例1の埋設金具が埋設されたALCパネルの作製
第1防錆処理工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の埋設金具が埋設されたALCパネルを作製した。
【0053】
(6)比較例2の埋設金具が埋設されたALCパネルの作製
第1防錆処理工程において、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョンに代えてエポキシ樹脂をカチオン電着塗装したこと以外は実施例1と同様にして比較例2の埋設金具が埋設されたALCパネルを作製した。
詳しくは、比較例2においては、固形分質量に対し、変形エポキシ樹脂を55質量%、硬化樹脂を25質量%、カーボンブラックを3質量%、体質顔料を7質量%、防錆顔料5質量%、硬化触媒を3質量%、添加材を2質量%含む電着塗料を使用し、170℃で30分間加熱して硬化させることで防錆皮膜を形成した。
【0054】
2.評価試験
(1)防錆性能
(試験法)
実施例1の埋設金具が埋設されたALCパネル2枚と、比較例1の埋設金具が埋設されたALCパネル2枚、および比較例2の埋設金具が埋設されたALCパネル2枚について、それぞれ、JIS A 5416の「ALCパネルの9.4防せい剤の防せい性能試験」(JIS法)を行い、防せい試験後のALCパネルを用いて各パネルに埋設された埋設金具の防錆性能試験を行った。
【0055】
JIS法による防せい試験後のALCパネルを、木槌により解体し、各埋設金具の発錆部分を透明シートを当てて写しとりその面積比率を算出して発錆率を求めた。発錆率が5.0以下であれば十分な防錆性能を有していると判断した。
【0056】
(結果)
JIS法による防せい試験を経た実施例1の埋設金具および比較例2の埋設金具においては、ともに発錆率が1.0%以下であった。
比較例1の埋設金具においては、補強鉄筋への溶接を行う前にすでに錆が発生しており、JIS法による防せい試験を経た後においては、発錆率が20%以上であった。
【0057】
これらの結果から、実施例1の埋設金具および比較例2の埋設金具は、ともに十分な防錆性能を有しているが、防錆皮膜を備えない比較例1の埋設金具は保管中にも発錆して、十分な防錆性能を有していないということがわかった。
【0058】
(2)アンカー引き抜き試験
(試験法)
JIS A 5416(ALCパネルの9.6埋設部品の引き抜き強さ試験)に準拠し、以下の手順により試験を行った(図5を参照)。
試験体となる各ALCパネル1を、アンカー引き抜き試験用の反力架台(図示せず)に、埋設金具10が埋設されている端部を支持部Sから300mm持ち出し、片持ち状態で設置した。その後、アンカーに油圧ジャッキJを用いてALCパネル1のアンカー部3が破壊するまで荷重を載荷した。載荷速度は毎秒100N〜200Nとし、最大荷重を測定した。試験体となるALCパネルの大きさは、100mm×600mm×1800mm(厚さ、幅、長さ)であり、補強鉄筋の直径は5mmである。なお、本試験法に供するALCパネルとしては防錆性能試験に用いたALCパネルとは別のものを用いた。
【0059】
図5中、矢線Kは荷重の方向、Bはパネル幅以上の長さの鋼製の反力板、Rは荷重計、Dは荷重による変形が無視できる程度の十分な強度を持つ加力鋼棒である。図5にはALCパネルの一端側の埋設金具の試験の様子を示しているが、ALCパネルの他端側の埋設金具についても同様の試験を行った。
また各実施例及び比較例につき、それぞれ2枚のALCパネルについて本試験を行った。表1には各ALCパネル(パネル1、パネル2と記載)における最大荷重(N)と、ALCの表面から厚み方向において何mmのところにナットの上面が存在するか(かぶり厚)、最大荷重の平均値を併せて示した。さらに、表1には、1枚のALCパネルにつき2か所の、最大荷重およびかぶり厚を、aおよびbとしてそれぞれ記載した。
【0060】
【表1】

【0061】
(結果と考察)
実施例1の埋設金具が埋設されたALCパネルでは、最大荷重の平均値が15783Nであり比較例2と比べても、優れた引き抜き強度を有するということがわかった。
さらに、比較例1の埋設金具が埋設されたALCパネルでは、最大荷重の平均値が15074Nであるが、(1)で述べたように防錆性能が不十分である。
比較例2の埋設金具が埋設されたALCパネルでは最大荷重の平均値が12095Nであり、実施例1および比較例1と比較すると、引き抜き強度が顕著に低かった。
【0062】
(3)まとめ
スチレン−アクリル系樹脂からなる防錆皮膜が形成された実施例1の埋設金具は十分な防錆性能を有し、当該埋設金具が埋設されたALCパネルは、アンカーの防錆剤及び設備に要するコストを低減可能でありながらも、優れた引っ張り強度を有することがわかった。
防錆皮膜が形成されていない比較例1の埋設金具が埋設されたALCパネルでは、優れた引き抜き強度を有してはいるが防錆性能が不十分である。
また、エポキシ樹脂をカチオン電着塗装した防錆皮膜が形成された比較例2の埋設金具は防錆性能は十分であるものの、引っ張り強度は不十分であるということがわかった。
【符号の説明】
【0063】
1…ALCパネル
2…補強鉄筋
2A…長手方向に沿って配される補強鉄筋
2B…短辺方向に沿って配される補強鉄筋
3…アンカー部
10…埋設金具
10A…(埋設金具の)上面
10B…(埋設金具の)側面
11…取付片
12…筒状体
12A…下端部(ナット部)
B…反力板
D…加力鋼棒
J…油圧ジャッキ
K…荷重
R…荷重計
S…支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量気泡コンクリートパネルに埋設される埋設金具であって、
スチレン−アクリル系樹脂からなる防錆皮膜が、表面に形成されている埋設金具。
【請求項2】
前記防錆皮膜の厚みが20μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の埋設金具。
【請求項3】
軽量気泡コンクリートパネルに埋設される埋設金具の表面に、スチレン−アクリル系樹脂からなる防錆皮膜を形成する第1防錆処理工程と、
前記第1防錆処理工程を経た埋設金具を補強鉄筋に固定する固定工程と、
前記固定工程を経た補強鉄筋の表面ならびに前記埋設金具の表面に、スチレン−アクリル系樹脂を含む第2樹脂防錆層、ならびに、セメントを含むセメント系防錆層を形成する第2防錆処理工程と、
前記第2防錆処理工程を経た補強鉄筋を配設した型枠内に原料スラリーを打設して半硬化体を作製する半硬化体作製工程と、
前記半硬化体作製工程を経て得られた半硬化体をオートクレーブ養生するオートクレーブ養生工程と、を経ることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−187813(P2012−187813A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53214(P2011−53214)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000185949)クリオン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】