説明

埋込形標識灯

【課題】雪、砂や土などの遮蔽物の堆積を防止し、窓部から出射される光の視認性を確保することができる埋込形標識灯を提供する。
【解決手段】埋込形標識灯11は、灯体14、および送風装置51を備える。灯体14は、光源およびこの光源からの光を導く出射溝35を有する。送風装置51は、灯体14の出射溝35に送風することで、遮蔽物が堆積してしまう前に送風装置51から吐出される空気によってその遮蔽物を出射溝35の外へ吹き飛ばす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、路面に埋め込み設置される埋込形標識灯に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空港の滑走路や誘導路などに、航空機を誘導するための航空標識灯が設置されている。この空港標識灯には、路面に埋め込み設置される埋込形標識灯や、地上に突出して設置される地上形標識灯などがある。
【0003】
埋込形標識灯は、灯体を備え、この灯体の上部が路面から少し突出した状態で路面に埋め込み設置され、その灯体の上部に側方へ向けて設けられている窓部から出射溝を経由して光を出射し、航空機の操縦者から視認できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−223253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、埋込形標識灯は、路面に埋め込み設置されるために、例えば地上形標識灯などに比べて、雪、砂や土などの遮蔽物が出射溝に付着する事象が発生しやすい。そして、遮蔽物が出射溝に堆積してしまうと、窓部から出射される光が遮られてしまい、その視認性が低下する問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、遮蔽物の堆積を防止し、窓部から出射される光の視認性を確保することができる埋込形標識灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の埋込形標識灯は、灯体、および送風装置を備える。灯体は、光源およびこの光源からの光を導く出射溝を有する。送風装置は、灯体の出射溝に送風する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態を示す埋込形標識灯の平面図である。
【図2】同上埋込形標識灯を示し、図1のA−O−Bに沿った断面図である。
【図3】同上図1のC−Dに沿った断面図である。
【図4】第2の実施形態を示す埋込形標識灯を用いた標識灯システムの構成図である。
【図5】同上標識灯システムの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、第1の実施形態を、図1ないし図3を参照して説明する。
【0010】
図1および図2に示すように、埋込形標識灯11は、空港の滑走路や誘導路などの路面(地面)12に埋め込み設置される設置体13、およびこの設置体13上に取り付けられて路面12に埋め込み設置される灯体14を備えている。
【0011】
設置体13は、有底で円筒状の基台17、この基台17上に取り付けられた埋め込み深さ調整用の円筒状の間座18、およびこの間座18上に取り付けられた水平軸調整のための円環状の調整リング19を備えている。そして、設置体13は、調整リング19の上面周辺部が路面12と略同一高さとなるように埋め込み設置される。
【0012】
調整リング19の中央には灯体14を上方から嵌め込む開口部20が上下に貫通して形成され、この開口部20の周縁には灯体14を支える段部21が形成されている。段部21の上面からは灯体14を固定するための複数のボルト22が立設されている。
【0013】
調整リング19の上面には、調整リング19の中心部から互いに逆向きに拡開するように出射溝23が形成されている。これら出射溝23は、その底面が調整リング19の内周部から外周部へ向けて斜めに上昇するように傾斜状に形成され、両側面の面積が調整リング19の外周部へ向かうに従って大きくなるように形成されている。
【0014】
調整リング19の周辺部の複数箇所には、周方向に沿って孔設けされた長孔24が上下に貫通して形成されている。
【0015】
そして、調整リング19は、環状のパッキング25を介して間座18上に配置され、各長孔24に上方から挿入するボルト26を間座18に螺着し、締め付けることにより固定されている。また、各ボルト26を締め付ける際には、ボルト26が長孔24内を移動できる範囲内で、座間18に対して調整リング19を中心O周りに回転させることにより、灯体14の向きを調整可能としている。
【0016】
また、灯体14は、灯体本体28、一対の光源29、一対の窓部30、および点灯ユニット31を備えている。
【0017】
灯体本体28は、円盤状の上部灯体32、およびこの上部灯体32の下面に取り付けられた灯体カバー33を備えている。上部灯体32には、上部灯体32の中心部から互いに逆向きに拡開する窓孔34が形成されているとともに、この窓孔34から上部灯体32の外周に向かって連続した形状をなすように出射溝35が形成されている。さらに、出射溝35の底面には、上部灯体32の外周部側から窓部30の方向へ向けて略水平に拡開した送風用溝35aが形成されている。
【0018】
光源29には、例えばLED素子やEL素子などの半導体発光素子が用いられている。LED素子の場合には、複数のLED素子を基板に実装して蛍光体を含む封止部材で覆うCOB(Chip On Board)方式、LED素子が搭載された接続端子付きのSMD(Surface Mount Device)パッケージを基板に実装する方式など、いずれを用いてもよい。光源29はブラケット36によって支持され、このブラケット36は灯体カバー33の支持台37に取り付けられている。さらに、光源29は、リード線38によって点灯ユニット31の出力端子に電気的に接続されている。
【0019】
窓部30は、透光性を有するレンズやプリズムによって形成されており、上部灯体32の窓孔34に図示しないパッキングを介して嵌め込まれて配置されている。窓部30は、光源29に対向し、光源29からの光が入射する入射面30a、および灯体14の外部に光を出射する出射面30bを有している。
【0020】
点灯ユニット31は、例えば、定電流制御装置から供給される交流定電流を整流し、所定の定電圧に変換して光源29に供給し、光源29を点灯させる。
【0021】
そして、灯体14は、灯体カバー33の周囲に配置される環状のパッキング41を介して調整リング19の開口部20に嵌め込まれている。このとき、調整リング19の段部21から突出する複数のボルト22が灯体14を貫通し、これらボルト22の上端にナット42を螺着して締め付けることにより、灯体14が調整リング19上に取り付けられている。
【0022】
また、図1ないし図3に示すように、設置体13の調整リング19には、灯体14の窓部30の方向に向かって出射溝35に送風する送風装置51が組み込まれている。本実施形態では、灯体14に一対の出射溝35が設けられているため、出射溝35毎にそれぞれ送風装置51を設けている。
【0023】
送風装置51は、調整リング19の上面に設けられた吸気口52、灯体14の窓部30の出射面30bに対向するように調整リング19に設けられた送風口53、これら吸気口52と送風口53とを連通する送風通路54、および送風通路54を通じて吸気口52から外気を吸気して送風口53から吐出させる送風機55を有している。
【0024】
吸気口52は、調整リング19の上面で出射溝35や長孔24から離間した位置に開口形成されている。吸気口52には、通気を許容し、塵などを捕獲する防塵網56が取り付けられている。なお、防塵網56の上方には、周囲からの通気性を確保しながら防塵網56の上方域を覆う防塵カバーを取り付けてもよい。
【0025】
送風口53は、調整リング19の出射溝23の下側位置で、開口部20に臨む内周面に開口形成されており、灯体14の窓部30の出射面30bを向いている。送風口53は、送風通路54から送風口53の開口端へ向けて水平方向に広がるように形成されており、調整リング19の周方向に沿って細長いスリット状に開口している。
【0026】
送風通路54は、吸気口52に連通して調整リング19に設けられた通気孔57、送風口53に連通して調整リング19に設けられた通気孔58、これら通気孔57と通気孔58とに連通する通気パイプ59によって形成されている。通気パイプ59の途中には送風機55が接続されている。通気パイプ59および送風機55は、調整リング19の下面に開口するとともに周方向に沿って形成されている溝部60に挿入配置されている。通気パイプ59の一端が通気孔57に接続され、他端が通気孔58に接続されている。溝部60は通気パイプ59および送風機55の配置後に、例えば樹脂製の充填材61が充填されて閉塞されている。
【0027】
送風機55は、送風羽根、およびこの送風羽根を回転駆動するモータなどを備え、モータの駆動による送風羽根の回転時に、吸気口52から外気を吸気して送風口53から吐出させる。モータに接続されている送風用配線62が調整リング19の下面から引き出され、この送風用配線62の先端にコネクタ63が取り付けられている。
【0028】
また、基台17には、図示しない定電流制御装置(CCR)からの点灯用ケーブル66および図示しない交流電源装置からの送風用ケーブル67が引き込まれている。点灯用ケーブル66の先端に取り付けられているコネクタ68が灯体14から引き出されている点灯用配線39のコネクタ40に接続され、送風用ケーブル67の先端に取り付けられているコネクタ69が送風装置51から引き出されている送風用配線62のコネクタ63に接続されている。
【0029】
そして、このように構成された埋込形標識灯11において、光源29が点灯することにより、光源29から発生した光が、窓部30の入射面30aを介して出射面30bから出射し、灯体14の出射溝35および調整リング19の出射溝23を経て埋込形標識灯11の側方へ向けて照射する。
【0030】
また、送風装置51の稼動により、送風機55が吸気口52から外気を吸い込み、送風通路54を通じて送風口53へ送り、送風口53から吐出する。送風口53から吐出した空気は、出射面30bに向かって灯体14の出射溝35をその底面に沿って流れる。出射溝35の底面には送風用溝35aが形成されているため、空気の流れが阻害されることなく、また、吐出される空気の流量を確保することができる。
【0031】
窓部30の出射面30bに到達した空気は、出射溝35の開放されている上方へ向けて流れる。このとき、窓部30の出射面30bは上方へ向けて傾斜されているため、空気の流れに滞留が生じることなく、上方へ向けてスムーズな気流が維持される。
【0032】
そのため、例えば、雪、砂や土などの遮蔽物が出射溝35内や出射面30bに落下し、停滞したとしても、その遮蔽物が堆積してしまう前に送風装置51から吐出される空気によって出射溝35の外へ吹き飛ばすことができる。これにより、出射面30bから出射する光の視認性を確保することができる。
【0033】
なお、送風装置51は常時稼動させても、降雪時などの必要なときに稼動させてもよく、状況に応じて適宜設定することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態の埋込形標識灯11によれば、灯体14の出射溝35に送風することにより、光源29から出射される光の視認性を確保することができる。
【0035】
また、送風装置51は、灯体14を取り付ける設置体13側である調整リング19内に設けているため、気密状態が求められる灯体14の内部に空気を導く必要もない。
【0036】
なお、本実施形態では、灯体14に一対の窓部30が設けられているため、窓部30毎にそれぞれ送風装置51を設けたが、1つの送風装置51から複数の出射溝35に対して送風するようにしてもよい。
【0037】
図4および図5は埋込形標識灯11を用いた標識灯システムの第2の実施形態である。第1の実施形態と同一構成については同一符号を用いてその説明を省略する。
【0038】
本実施形態では、送風装置51の電源を、専用電源ではなく、点灯用電源から得るように構成したものである。
【0039】
定電流制御装置CCRから出力する交流定電流が一次ケーブル81を通じてゴムトランス(ゴム被覆絶縁変圧器)82に入力され、このゴムトランス82で変換された交流定電流が二次ケーブル83を通じて埋込形標識灯11に供給される。
【0040】
二次ケーブル83は、埋込形標識灯11の基台17内に引き込まれ、先端が2つに分岐され、そのうちの一方は灯体14の点灯ユニット31に接続され、他方は送風機用電源部84に接続され、この送風機用電源部84がケーブル85で送風装置51のモータに接続されている。
【0041】
送風機用電源部84では、ゴムトランス82から供給される交流定電流が絶縁カレントトランスCT1を通じて整流器86に入力され、この整流器86で整流された後に負荷調整回路87に入力され、この負荷調整回路87で一定の電圧に調整された定電圧が平滑器88で平滑され、平滑された電圧をパルス変換回路89で制御して送風装置51のモータに印加する。パルス変換回路89は、電圧検出器90が検出する送風装置51に出力する電圧に基づき、送風装置51のモータに印加する電圧を制御する。
【0042】
このように、本実施形態では、送風装置51の電源を、点灯用電源から得るように構成したため、専用電源を別に設置する必要がなく、送風装置51を容易に導入することができる。
【0043】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
11 埋込形標識灯
14 灯体
29 光源
35 出射溝
51 送風装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源およびこの光源からの光を導く出射溝を有する灯体と;
灯体の出射溝に送風する送風装置と;
を具備していることを特徴とする埋込形標識灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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