説明

培養細胞照明装置、及び培養細胞照明方法

【課題】簡易な光学構成で、且つ迅速に、3次元的に形成された培養細胞の立体的な情報を定量性よく抽出することが可能な培養細胞照明装置、及び培養細胞照明方法を提供する。
【解決手段】培養細胞の画像を取得する画像取得装置と画像取得装置を介して得られた画像に対して所定の解析処理を行う画像解析手段を備えた培養細胞測定装置において、3次元的に形成された培養細胞を照明するために用いる培養細胞照明装置であって、画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿1上の3次元的に形成された培養細胞3に対し、斜めの方向から散乱光を照明する光源8を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養細胞照明装置、及び培養細胞照明方法に関し、より詳しくは、培養細胞の画像を取得する画像取得装置と得られた画像を解析する画像解析手段を備えた培養細胞測定装置において、3次元的に形成された培養細胞の立体的な情報を効果的に抽出し、得られた輝度分布などの情報から培養細胞の特徴量を定量測定するのに有用な培養細胞照明装置、及び培養細胞照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、培養細胞などの生細胞の観察・測定を行うための装置が、例えば、次の非特許文献1、2、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「顕微鏡フル活用術イラストレイテッド基礎から応用まで」P34-36 株式会社秀潤杜
【非特許文献2】IN Cell Analyzer1000カタログ GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社
【特許文献1】特開平9−197289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な培養細胞、つまり生きた状態の細胞を観察、測定するには、蛍光色素などで細胞を染色することができない。しかし、無染色の生細胞は透明であるので、一般的な明視野観察では像を認識することが難しい。このため、無染色の生細胞に対しては、位相差光学系と、位相差光学系に適合させた照明系を用いて観察、測定する手法が一般的に用いられている。
【0005】
図8は非特許文献1に記載の生細胞の観察装置である、位相差顕微鏡における位相差観察の一般的な原理を示す説明図である。
図8に示す位相差顕微鏡は、図示省略した光源と、位相差観察用コンデンサレンズ51を備えた照明系と、位相差観察用対物レンズ52を備えた観察系を有する。位相差観察用コンデンサレンズ51は、リングスリット51aを備えている。位相差観察用対物レンズ52は、位相版52aを備えている。
【0006】
このように構成された位相差顕微鏡においては、光源からの照明光は、位相差観察用コンデンサレンズ51内のリングスリット51aを通過して観察面60を照明する。観察面60を通過した光は、位相差観察用対物レンズ52内の位相板52a上に集光した後、位相差観察用対物レンズ52の像面53を照明する。
【0007】
ここで、観察面60に透明な無染色の標本61が存在する場合、位相差観察用コンデンサレンズ51内のリングスリット51aを通過した光が透明な標本61に入射したときに回折が生じ、入射した光は、進行方向を変えずに透明な無染色の標本61を透過する0次回折光と、進行方向を変えて透明な無染色の標本61を透過する±1次回折光に分かれる。ここで、±1次回折光は進行方向が変わるため、位相板52a上には集光しない。一方、0次回折光は、進行方向が変わらないため、位相板52a上に集光する。また、これらの光は、位相差観察用対物レンズ52の像面53上で干渉する。このため、相差観察用対物レンズ52の像面53上では、観察面60における透明な標本61が存在する箇所を通過した光と存在しない箇所を通過した光とでは光の明暗のコントラストが生じる。
【0008】
ここで、位相板52aは、0次回折光と±1次回折光とが干渉したときの光の強度が最小、或いは最大になるように、0次回折光の位相を±1次回折光よりも進ませる、或いは遅らせる性質を有している。
例えば、0次回折光と±1次回折光とが干渉したときの光の強度が最小になるように0次回折光の位相を±1次回折光よりも進ませたときには、明るいバックグランドに対して標本像が暗く見える。一方、0次回折光と±1次回折光とが干渉したときの光の強度が最大になるように0次回折光の位相を±1次回折光よりも遅らせたときには、暗いバックグランドに対して標本像が明るく見える。
このため、透明な無染色の標本であってもバックグランドと明暗のコントラストをつけて観察できる。
【0009】
そして、非特許文献2には、GEヘルスケア・バイオサイエンス社製「IN Cell Analyzer」を用いて、コロニー状でない、厚さの薄い細胞を対象として、位相差画像を取得、画像解析することが記載されている。
【0010】
しかし、非特許文献1、2に記載の装置では、観察系及び照明系に、位相差観察による適切な画像を得るために、位相板、リングスリットなどの複雑な光学素子を組み合わせて、精密に制御する必要があり、部材が複雑化するとともに調整操作が煩雑化する。また、非特許文献2に記載の装置では、焦点面として平面的に広がった物体を対象としているため、培養皿の上に撒かれたフィーダー細胞の上に形成されたコロニーなどの3次元的な構造を観察、測定する場合には、フィーダー細胞がノイズとなって検出されて画像の品質が低下し、コロニーの解析精度が低下してしまう。このため、コロニーに関する所望の特徴量を精度よく抽出するためには、画像解析をするためのソフトウェアにおいて、予めフィーダー細胞の画像情報を認識し、ノイズ分となるフィーダー細胞の画像情報を除去するための計算等をしなければならず、画像解析のための処理が複雑化するともに処理時間の増大を招くという欠点があった。
【0011】
また、特許文献1には、標本に対し、結像光学系の光軸に対して異なる少なくとも2つの斜め方向から切替えて照明する斜光照明手段を有し、斜光照明手段によるそれぞれの照明光から得られた画像を一枚に合成してコントラストの良い無染色画像を得る顕微鏡が記載されている。
【0012】
しかし、特許文献1に記載の装置では、一枚の細胞画像を得るのに複数の方向から時系列的に照明、撮像し、なおかつ画像合成をする手段が必要となるため、装置構成の複雑化と、撮像に要する時間の増大化を招く。また、特許文献1の記載には、従来、培養皿の上に形成されたフィーダー細胞上に形成された3次元的なコロニーなどを観察するような場合にフィーダー細胞のノイズが発生する問題についての着目が全くない。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、簡易な光学構成で、且つ迅速に、3次元的に形成された培養細胞の立体的な情報を定量性よく抽出することが可能な培養細胞照明装置、及び培養細胞照明方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明による培養細胞照明装置は、培養細胞の画像を取得する画像取得装置と前記画像取得装置を介して得られた画像に対して所定の解析処理を行う画像解析手段を備えた培養細胞測定装置において、3次元的に形成された培養細胞を照明するために用いる培養細胞照明装置であって、前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、斜めの方向から散乱光を照明する光源を有することを特徴としている。
【0015】
また、本発明の培養細胞照明装置においては、前記光源が、前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し散乱光を照明する照明光軸の角度を調整可能に構成されているのが好ましい。
【0016】
また、本発明の培養細胞照明装置においては、前記光源が、白色光源であるのが好ましい。
【0017】
また、本発明の培養細胞照明装置においては、前記画像取得装置が、顕微鏡撮像光学系と、固体撮像素子よりなるのが好ましい。
【0018】
また、本発明の培養細胞照明装置においては、前記3次元的に形成された培養細胞が、フィーダー細胞上に形成されたコロニーであるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の培養細胞照明装置においては、前記コロニーを生じるサンプルが、細菌、植物、及び動物由来の細胞又は組織であるのが好ましい。
【0020】
また、本発明の培養細胞照明装置においては、前記光源がLEDであるのが好ましい。
【0021】
また、本発明の培養細胞照明装置においては、前記光源が、前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、30〜45度の角度で照明可能に構成されているのが好ましい。
【0022】
また、本発明の培養細胞照明装置においては、前記光源の出射側に、散乱光の分布を最適化するための光学素子を備えるのが好ましい。
【0023】
また、本発明の培養細胞照明装置においては、前記画像解析手段が、前記画像取得装置を介して得られた画像から、所望の3次元的に形成された培養細胞を認識し、その特徴量を解析する画像解析ソフトウェアを有するのが好ましい。
【0024】
また、本発明による培養細胞照明方法は、培養細胞の画像を取得する画像取得装置と前記画像取得装置を介して得られた画像に対して所定の解析処理を行う画像解析手段を備えた培養細胞測定装置において、3次元的に形成された培養細胞を照明するために用いる培養細胞照明方法であって、前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、散乱光を出射する光源を用いて斜めの方向から照明することを特徴としている。
【0025】
また、本発明の培養細胞照明方法においては、前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、前記光源による散乱光を照明する角度を調整するのが好ましい。
【0026】
また、本発明の培養細胞照明方法においては、前記光源として、白色光の散乱光を出射する光源を用いるのが好ましい。
【0027】
また、本発明の培養細胞照明方法においては、前記画像取得装置が、顕微鏡撮像光学系と、固体撮像素子よりなるのが好ましい。
【0028】
また、本発明の培養細胞照明方法においては、前記3次元的に形成された培養細胞が、フィーダー細胞上に形成されたコロニーであるのが好ましい。
【0029】
また、本発明の培養細胞照明方法においては、前記コロニーを生じるサンプルが、細菌、植物、及び動物由来の細胞又は組織であるのが好ましい。
【0030】
また、本発明の培養細胞照明方法においては、前記光源として、LEDを用いるのが好ましい。
【0031】
また、本発明の培養細胞照明方法においては、前記光源を用いて、前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、30〜45度の角度で照明するのが好ましい。
【0032】
また、本発明の培養細胞照明方法においては、前記光源の出射側に、散乱光の分布を最適化するための光学素子を備えるのが好ましい。
【0033】
また、本発明の培養細胞照明方法においては、前記画像解析手段として、前記画像取得装置を介して得られた画像から、所望の3次元的に形成された培養細胞を認識し、その特徴量を解析する画像解析ソフトウェアを備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、簡易な光学構成で、且つ迅速に、3次元的に形成された培養細胞の立体的な情報を定量性よく抽出することが可能な培養細胞照明装置、及び培養細胞照明方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1にかかる培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置の全体構成を示す概念図である。
【図2】図1に示した実施例1の培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置で撮像した画像の写真である。
【図3】比較例1の培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置で撮像した画像の写真である。
【図4】図2に示した画像を、画像解析ソフトウェアとして、本発明者が開発した所定の細胞画像認識ソフトウェアを介して、所定の解析パラメータを用いてコロニーを自動認識させたときの実際の画像を示す写真である。
【図5】図3に示した画像を、画像解析ソフトウェアとして、本発明者が開発した所定の細胞画像認識ソフトウェアを介して、所定の解析パラメータを用いてコロニーを自動認識させたときの実際の画像を示す写真である。
【図6】図2に示した画像からコロニーを正確に認識するために必要な画像解析処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】図3に示した画像からコロニーを正確に認識するために必要な画像解析処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】非特許文献1に記載の生細胞の観察装置である、位相差顕微鏡における位相差観察の一般的な原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
実施形態の説明に先立ち、本発明の作用効果について説明する。
本発明の培養細胞照明装置は、培養細胞の画像を取得する画像取得装置と前記画像取得装置を介して得られた画像に対して所定の解析処理を行う画像解析手段を備えた培養細胞測定装置において、3次元的に形成された培養細胞を照明するために用いる培養細胞照明装置であって、画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、斜めの方向から散乱光を照明する光源を有する。
【0037】
本発明者は、上述した課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定角度の斜めの方向から散乱光を培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に照明すると、3次元的に展開した構造体の立体的な情報を定量性よく抽出することが可能であることを見出した。
本発明によれば、簡易な光学構成で、且つ迅速に、バックグランドからのノイズの影響を受けにくい培養細胞の画像が得られ、所望の特徴量を抽出、計算することができる。
【0038】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
図1は本発明の実施例1にかかる培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置の全体構成を示す概念図である。
図1の培養細胞測定装置は、画像取得装置と、画像解析手段と、実施例1の培養細胞照明装置を備えている。
画像取得装置は、対物レンズ5と結像レンズ6とを有する顕微鏡撮像光学系と、CCDやCMOSなどの固体撮像素子7とを組み合わせて構成されている。対物レンズ5は、不図示の電動制御機構により、焦点合わせのために上下動可能になっている。結像レンズ6は、培養皿1上の3次元的に形成された培養細胞3の像を固体撮像素子7の撮像面に結像させる。そして、画像取得装置は、測定位置に配置された、培養皿1上の3次元的に形成された培養細胞3の画像を取得する。
画像解析手段は、パーソナルコンピュータ12の中央演算処理装置及びそれにインストールされた画像解析ソフトウェアを有して構成されており、画像取得装置を介して得られた画像に対して所定の解析処理を行う。
【0039】
実施例1の培養細胞照明装置は、光源8と、照明角度可変機構9を有している。
光源8は、3Wの白色LEDで構成され、画像取得装置による画像取得位置(即ち、培養細胞測定装置における測定位置)に配置された、培養皿1上の3次元的に形成された培養細胞3に対し、斜めの方向から散乱光を照明するように、照明角度可変機構9に取り付けられている。また、光源8は、コントローラ10から電源供給を受け、その照明輝度を変化させたり、点滅させることができる。照明角度可変機構9は、コントローラ10からの指示により、光源8が、画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿1の上の3次元的に形成された培養細胞3に対し、散乱光を照明する照明角度を任意の角度に制御可能に構成されている。また、この照明角度の制御は、パーソナルコンピュータ12の中央演算処理装置にインストールされている撮像ソフトウェアを介して、操作者がコロニーの照明状態をモニター13で確認しながら、30度〜45度の範囲の任意の角度に設定することができるようになっている。本発明者の実験では、画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿1の上の3次元的に形成された培養細胞3に対し、30度程度の角度で散乱光を照明したときに、コロニーとフィーダー細胞とのコントラストが明瞭となる画像が得られることが判った。
【0040】
なお、図1中、2は培養皿1の上に撒かれたフィーダー細胞である。4は電動XYステージであり、培養皿1を載置し、コントローラ10から電源供給及び動作指示を受けて動作する。11はカメラコントローラで、固体撮像素子7とパーソナルコンピュータ12とに接続され、パーソナルコンピュータ12からの指示により撮像制御やパーソナルコンピュータ12への撮像画像情報の転送を行う。
【0041】
比較例1
比較例1の培養細胞測定装置は、画像取得装置が、図1に示した対物レンズ5の代わりに図8に示した位相差観察用対物レンズ52と同様の対物レンズを備えている。また、培養細胞照明装置は、図8に示した位相差観察用コンデンサレンズ51と同様のコンデンサレンズと図示省略した光源を備えて構成されている。
【0042】
実験
培養皿1の上にフィーダー細胞2として繊維芽細胞(TIG7)を撒き、その上に培養細胞3として乳がん細胞(MCF7)を撒き、マトリジェルを添加して乳がん細胞(MCF7)が3次元的なコロニーを形成したサンプルを、図1に示した実施例1の培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置、図8に示した位相差光学系を備えた比較例1の培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置のそれぞれ用いて撮像した。次いで、撮像したそれぞれの画像から、画像解析ソフトウェアとして、本発明者が開発した所定の細胞画像認識ソフトウェアを介して、解析パラメータを同じにしてコロニーを自動認識させた。
【0043】
図2は上記3次元的なコロニーを形成したサンプルを図1に示した実施例1の培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置で撮像した画像の写真、図3は上記3次元的なコロニーを形成したサンプルを比較例1の培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置で撮像した画像の写真である。図4、図5は、それぞれ図2、図3に示した画像を、画像解析ソフトウェアとして、本発明者が開発した所定の細胞画像認識ソフトウェアを介して、解析パラメータを同じにしてコロニーを自動認識させたときの実際の画像を示す写真である。
【0044】
図1の実施例1の細胞培養照明装置を備えた培養細胞測定装置で撮像することによって得られた画像は、図2に示すように、フィーダー細胞であるバックグランドの輝度が非常に小さく、測定対象であるコロニーとバックグランドとの輝度差が明瞭になった。
【0045】
これに対し、図8の位相差光学系を備えた比較例1の培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置で撮像することによって得られた画像は、図3に示すように、全体が明るく、測定対象であるコロニーとバックグランドとの輝度差が明瞭ではなく、しかも、バックグランドにフィーダー細胞の構造が輝度差の明瞭な状態で筋状に映っており、これがノイズとなって全体的に不明瞭な画像となった。
【0046】
そして、実施例1の細胞培養照明装置を備えた培養細胞測定装置で撮像した画像を、上記細胞画像認識ソフトウェアを介してコロニーを自動認識させた場合は、図4に示すように、画像の中心部分に存在するコロニーを正確に認識することができた。
【0047】
これに対し、比較例1の細胞培養照明装置を備えた培養細胞測定装置で撮像した画像を、上記細胞画像認識ソフトウェアを介してコロニーを自動認識させた場合は、図5に示すように、画像の中心部分に存在するコロニーを正確に認識することができず、周囲のフィーダー細胞部分を誤認識した。
【0048】
図6は実施例1の培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置で撮像した図2の画像からコロニーを正確に認識するために必要な画像解析処理手順の一例を示すフローチャート、図7は比較例1の培養細胞照明装置を備えた培養細胞測定装置で撮像した図3の画像からコロニーを正確に認識するために必要な画像解析処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0049】
図2に示したようにコロニーとバックグランドとの輝度差が明瞭な画像が得られれば、例えば、図6に示すように、後述する図7に示したローパスフィルター処理やバックグランドの輝度を低下させるための処理は不要となるので、画像解析ソフトウェアにおける処理を単純化して、処理時間を短縮することができる。
これに対し、図3に示したようにコロニーとバックグランドとの輝度差が不明瞭な画像からコロニーを正確に認識することができるようにするには、例えば、図7に示すように、フィーダー細胞によるノイズを除去するためのローパスフィルター処理(ステップS1)や、バックグランドの輝度を低下させるための処理(ステップS2)が必要となり、画像解析ソフトウェアによる処理の複雑化と処理時間の増大を招くことになる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の培養細胞照明装置及び培養細胞照明方法は、コロニーを形成する生細胞を観察、測定、解析することが求められる生物学、医療、医学の分野に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 培養皿
2 フィーダー細胞
3 3次元的に形成された培養細胞
4 電動XYステージ
5 対物レンズ
6 結像レンズ
7 固体撮像素子
8 光源
9 照明角度可変機構
10 コントローラ
11 カメラコントローラ
12 パーソナルコンピュータ
13 モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養細胞の画像を取得する画像取得装置と前記画像取得装置を介して得られた画像に対して所定の解析処理を行う画像解析手段を備えた培養細胞測定装置において、3次元的に形成された培養細胞を照明するために用いる培養細胞照明装置であって、
前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、斜めの方向から散乱光を照明する光源を有することを特徴とする培養細胞照明装置。
【請求項2】
前記光源が、前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し散乱光を照明する照明光軸の角度を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の培養細胞照明装置。
【請求項3】
前記光源が、白色光源であることを特徴とする請求項1又は2に記載の培養細胞照明装置。
【請求項4】
前記画像取得装置が、顕微鏡撮像光学系と、固体撮像素子よりなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の培養細胞照明装置。
【請求項5】
前記3次元的に形成された培養細胞が、フィーダー細胞上に形成されたコロニーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の培養細胞照明装置。
【請求項6】
前記コロニーを生じるサンプルが、細菌、植物、及び動物由来の細胞又は組織であることを特徴とする請求項5に記載の培養細胞照明装置。
【請求項7】
前記光源がLEDであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の培養細胞照明装置。
【請求項8】
前記光源が、前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、30〜45度の角度で照明可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の培養細胞照明装置。
【請求項9】
前記光源の出射側に、散乱光の分布を最適化するための光学素子を備えたことを特徴とする請求項6に記載の培養細胞照明装置。
【請求項10】
前記画像解析手段が、前記画像取得装置を介して得られた画像から、所望の3次元的に形成された培養細胞を認識し、その特徴量を解析する画像解析ソフトウェアを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の培養細胞照明装置。
【請求項11】
培養細胞の画像を取得する画像取得装置と前記画像取得装置を介して得られた画像に対して所定の解析処理を行う画像解析手段を備えた培養細胞測定装置において、3次元的に形成された培養細胞を照明するために用いる培養細胞照明方法であって、
前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、散乱光を出射する光源を用いて斜めの方向から照明することを特徴とする培養細胞照明方法。
【請求項12】
前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、前記光源による散乱光を照明する角度を調整することを特徴とする請求項11に記載の培養細胞照明方法。
【請求項13】
前記光源として、白色光の散乱光を出射する光源を用いることを特徴とする請求項11又は12に記載の培養細胞照明方法。
【請求項14】
前記画像取得装置が、顕微鏡撮像光学系と、固体撮像素子よりなることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の培養細胞照明方法。
【請求項15】
前記3次元的に形成された培養細胞が、フィーダー細胞上に形成されたコロニーであることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の培養細胞照明方法。
【請求項16】
前記コロニーを生じるサンプルが、細菌、植物、及び動物由来の細胞又は組織であることを特徴とする請求項15に記載の培養細胞照明方法。
【請求項17】
前記光源として、LEDを用いることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の培養細胞照明方法。
【請求項18】
前記光源を用いて、前記画像取得装置による画像取得位置に配置された、培養皿上の3次元的に形成された培養細胞に対し、30〜45度の角度で照明することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の培養細胞照明方法。
【請求項19】
前記光源の出射側に、散乱光の分布を最適化するための光学素子を備えることを特徴とする請求項16に記載の培養細胞照明方法。
【請求項20】
前記画像解析手段として、前記画像取得装置を介して得られた画像から、所望の3次元的に形成された培養細胞を認識し、その特徴量を解析する画像解析ソフトウェアを備えることを特徴とする請求項11〜19のいずれかに記載の培養細胞照明方法。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−213582(P2010−213582A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61134(P2009−61134)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】