説明

基地局、無線通信システム及びハンドオーバ制御方法

【課題】ハンドオーバの可否判定を行う際の閾値を変動させて不適切なセルへのハンドオーバを減少させる。
【解決手段】無線通信端末1が持つ通信履歴を用いて、セル内での通信時間が閾値より短い端末が多く存在するセルを抽出する。次に、前述の抽出されたセルに対してハンドオーバ元となるセルの中で、ハンドオーバ後のセル内での通信時間が短い端末が多く存在する移動元セルを抽出する。前述の2つのセルの間で、ハンドオーバ処理の発生頻度を下げ、ハンドオーバを行わない様に、2つのセルの間のハンドオーバ可否判定閾値に補正値を設定することで無線通信端末1の移動経路を予測することなく適切なセルへのハンドオーバを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、無線通信システム及びハンドオーバ制御方法に係り、特に、無線通信システムにおいて適切な無線基地局へのハンドオーバを可能にする基地局、無線通信システム及びハンドオーバ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいては、無線通信端末が移動することにより、現在通信を行っている無線基地局からの受信電力が弱まってきた場合、周辺の隣接する無線基地局から受信電力の高い無線基地局を選択し、その無線基地局との間で通信を再設定し、無線基地局を切り替えることで連続した通信を可能としている。この切り替え技術をハンドオーバという。
近年、無線通信の高速化が進んでおり、通信容量を確保するため無線基地局のセル半径が縮小し、都心部など、ユーザーが密集する地域においては、セル半径が100m程度となる。セル半径の縮小に伴い、ハンドオーバの回数の増加およびハンドオーバ先の候補となる基地局の数も増加するため、適切なセルの選択手法、およびハンドオーバの処理に掛かる時間の短縮が求められている。なお、セルとは無線基地局と無線通信端末が通信可能な範囲を意味する
上記課題を解決するため、特許文献1では無線通信端末の位置情報を取得し、地図情報と照らし合わせることで、無線通信端末の移動経路を予測し、ハンドオーバ先に最適なセルを選択する手法がとられている。
また、特許文献2では適切なセルを通信レートの高いセルと定義し、ハンドオーバ先に高い通信レートが得られるセルを選択する手法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−228881号公報
【特許文献2】特開2008−288627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決する課題を以下に示す。
特に都市部においては、移動経路上に分岐が多く、移動方向が一意に定まる場合が少ない。そのため、GPSなどの位置情報から無線通信端末の位置を検出する前述の特許文献1における従来手法では、道路や線路の分岐が多い場合に経路を特定する事が難しく、位置検出と経路検索を行う回数が増加し、結果として遅延時間が増加するという課題がある。
以上の点に鑑み、本発明は、例えば端末の移動履歴を用いて、短時間で他のセルにハンドオーバを行なっている端末が多いセルへのハンドオーバに対して、適切なハンドオーバ先となるようにセルを選択可能とした基地局、無線通信システム及びハンドオーバ制御方法を提供することを目的とする。また、本発明は、不適切なセルへのハンドオーバ回数の減少およびハンドオーバ処理による遅延時間の減少を図ることを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における無線基地局は、自基地局のセルから該セルに隣接する隣接セルへのハンドオーバ可否を判定するためのハンドオーバ閾値が、隣接セル毎に設定されている。無線基地局は、複数の隣接セルのうちの少なくともふたつの隣接セルについて、対応するハンドオーバ閾値が異なる値であることを特徴とする。また、第1セルと第2セルについて、第1セルから第2セルへのハンドオーバ可否を判定するための第1ハンドオーバ閾値と、第2セルから第1セルへのハンドオーバ可否を判定するための第2ハンドオーバ閾値とが異なる。
本発明における無線基地局管理装置は、複数の無線基地局とそれらを管理する複数の無線基地局管理装置が存在する無線通信システムにおいて、無線基地局において収集される通信履歴を収集する統計情報管理部と前述の収集した情報を格納する統計情報データベース、前述の統計情報データベースに格納された情報を用いて、ハンドオーバの可否判定閾値補正値を計算し、隣接セルリストに登録する隣接セルリスト管理部、各無線基地局における前述の隣接セルリストを更新する装置管理部を備えることを特徴とする。
また、前述の隣接セルリスト管理部は、格納された無線通信端末の通信履歴の中で各無線基地局へのハンドオーバ履歴およびセル内での通信時間から、ハンドオーバ可否判定の際の閾値補正値を決定することを特徴とする。
また、本発明は、複数の無線基地局とそれらを管理する複数の無線基地局管理装置が存在する無線通信システムのハンドオーバ制御手法において、装置管理部より更新された隣接セルリストを用いて、無線基地局がハンドオーバ制御部を備え、前述のハンドオーバ制御部によりハンドオーバ処理が実行されることを特徴とする。
また、本発明は、複数の無線基地局とそれらを管理する複数の無線基地局管理装置が存在する無線通信システムのハンドオーバ制御手法において、装置管理部より更新された隣接セルリストを用いて、無線基地局及び無線通信端末がハンドオーバ制御部を備え、無線通信端末における前述のハンドオーバ制御部によりハンドオーバ処理が実行されることを特徴とする。
また、前述のハンドオーバ制御方式は、ハンドオーバ可否判定の際、隣接セルリストに登録された補正値を使用し、各無線基地局におけるハンドオーバ可否判定閾値を変動させることを特徴とする。
【0006】
本発明の第1の解決手段によると、
無線通信端末が通信するセルがハンドオーバにより切り替わる無線通信システムにおける前記基地局であって、
前記無線通信端末について自基地局のセルから該セルに隣接する隣接セルへのハンドオーバ可否を判定するためのハンドオーバ閾値が、隣接セル毎に設定され、前記隣接セルの識別子毎に該ハンドオーバ閾値が記憶されたメモリと、
前記無線通信端末における隣接セルからの受信電力と該隣接セルの識別子とを該無線通信端末から受信し、受信された隣接セルの識別子に基づき前記メモリを参照して対応するハンドオーバ閾値を特定し、該受信電力と該ハンドオーバ閾値を比較して該隣接セルへのハンドオーバの可否を判定するハンドオーバ制御部と
を備え、
複数の隣接セルのうちの少なくともふたつの隣接セルについて、対応するハンドオーバ閾値が異なる値である基地局が提供される。
【0007】
本発明の第2の解決手段によると、
複数の基地局を備え、無線通信端末が通信するセルがハンドオーバにより切り替わる無線通信システムであって、
前記基地局はそれぞれ、
前記無線通信端末について自基地局のセルから該セルに隣接する隣接セルへのハンドオーバ可否を判定するためのハンドオーバ閾値が、隣接セル毎に設定され、前記隣接セルの識別子毎に該ハンドオーバ閾値が記憶されたメモリと、
前記無線通信端末における隣接セルからの受信電力と該隣接セルの識別子とを該無線通信端末から受信し、受信された隣接セルの識別子に基づき前記メモリを参照して対応するハンドオーバ閾値を特定し、該受信電力と該ハンドオーバ閾値を比較して該隣接セルへのハンドオーバの可否を判定するハンドオーバ制御部と
を備え、
複数の隣接セルのうちの少なくともふたつの隣接セルについて、対応するハンドオーバ閾値が異なる値である無線通信システムが提供される。
【0008】
本発明の第3の解決手段によると、
複数の基地局を備え、無線通信端末が通信するセルがハンドオーバにより切り替わる無線通信システムにおけるハンドオーバ制御方法であって、
無線通信端末について第1基地局のセルから該セルに隣接する隣接セルへのハンドオーバ可否を判定するためのハンドオーバ閾値を、少なくともふたつの隣接セルについて対応するハンドオーバ閾値が異なる値であるように隣接セル毎に設定し、隣接セルの識別子毎に該ハンドオーバ閾値をメモリに記憶するステップと、
第1基地局のセルで通信する無線通信端末における隣接セルからの受信電力と該隣接セルの識別子とを該無線通信端末から受信するステップと、
受信された隣接セルの識別子に基づきメモリを参照して対応するハンドオーバ閾値を特定するステップと、
該受信電力と該ハンドオーバ閾値を比較して第1基地局のセルから該隣接セルへのハンドオーバの可否を判定するステップと
を含むハンドオーバ制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、例えば端末の移動履歴を用いて、短時間で他のセルにハンドオーバを行なっている端末が多いセルへのハンドオーバに対して、適切なハンドオーバ先となるようにセルを選択可能とした基地局、無線通信システム及びハンドオーバ制御方法を提供することができる。
また、本発明のハンドオーバ制御手法を用いて、セル内での通信時間が短い端末を減少させることによって、不適切なセルへのハンドオーバ回数の減少およびハンドオーバ処理による遅延時間の減少が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施例における管理システムの構成図である。
【図2】本発明における無線通信システムの構成図である
【図3】本発明における無線基地局の構成図である。
【図4】本発明における無線基地局管理装置の構成図である。
【図5】本発明における統計情報データベースの作成または更新フローチャートである。
【図6】本発明における統計情報データベースの一例である。
【図7】本発明におけるハンドオーバ可否判定閾値の補正値算出フローチャートである。
【図8】本発明の実施例におけるセル配置の一例(1)である。
【図9】本発明の実施例におけるセル配置の一例(2)である。
【図10】本発明における隣接セルリストの一例である。
【図11】本発明の第1の実施例におけるハンドオーバ可否判定のフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施例における管理システムの構成図である。
【図13】本発明の第2の実施例におけるハンドオーバ可否判定のフローチャートである。
【図14】本発明の第2の実施例における隣接セルからの信号受信電力のテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
1.第1の実施例
図2は第1の実施例における無線通信システムの構成図である。図では、一例として無線基地局10A〜Cの3台が存在し、無線通信端末1が無線基地局10Aと通信している。前述の無線基地局10A〜Cを管理する無線基地局管理装置20が有線ネットワーク30で無線基地局10A〜Cと接続されている。また、前述の無線基地局10A〜Cは有線ネットワーク30を通じてゲートウェイ50とも接続されており、ゲートウェイ50からコアネットワーク60を通じて通信が行われている。
図1は第1の実施例における管理システムの説明図である。
無線基地局10は、無線通信端末1から無線ネットワーク40を通じて通信履歴を収集し、統計情報管理部13に保存する。通信履歴には、例えば、無線通信端末1を識別する無線通信端末IDと、無線通信端末1が通信したセルを示す通信セル情報と、そのセルでの通信時間を含む。無線通信端末1の移動等により通信セル情報と通信時間の組み合わせを複数含む場合もある。通信時間を含む場合においては、各セルでの通信開示時刻及び通信終了時刻が含まれてもよい。通信履歴は、定期的に又は適宜のタイミングで無線通信端末1から、無線基地局10に送信される。なお、無線基地局10はひとつのセルを有しても良いし、ひとつの無線基地局10が複数のセルを有していてもよい。
収集された通信履歴は有線ネットワーク30を通じて、無線基地局管理装置20における統計情報管理部22に保存される。通信履歴を受信した統計情報管理部22は統計情報データベース21を更新する。統計情報データベース21の更新をうけて、隣接セルリスト管理部24は隣接セルリストデータベース23を更新する。隣接セルリストデータベース23の更新を受けて、装置管理部25は無線基地局10のハンドオーバ制御部14の隣接セルリストを更新する。また、無線基地局管理装置20は、隣接セルストや統計情報データベース21の更新タイミングを一定周期で行うためのタイマー26を併せて備えている。
なお、統計情報データベース21、隣接セルリストデータベース23および装置管理部25から無線基地局10におけるハンドオーバ制御部14への隣接セルリスト更新タイミングは、例示のため各データベース、通信履歴の更新後すぐとしたが、それに限るものではなくタイマーなどを用いて一定期間ごとに更新を行うことも可能である。
図3は、本実施例における無線基地局10の構成図である。無線基地局10は、例えば、無線通信端末1と無線通信を行なうためのアンテナ11と、アンテナ11から受信した信号または無線通信端末1への送信信号を処理する無線通信部12と、無線通信端末1からの通信履歴を扱う統計情報管理部13と、ハンドオーバ可否判定および隣接セルリストの管理を行うハンドオーバ制御部14と、隣接セルリストを保存するメモリ15とを有する。
【0012】
図4は、本実施例における無線基地局管理装置20の構成図である。無線基地局管理装置20は、無線基地局10から有線ネットワーク30を通じて通信履歴を受信し、統計情報データベース21を更新する統計情報管理部22と、通信履歴から隣接セルリストデータベース23を作成および更新する隣接セルリスト管理部24と、作成された隣接セルリストを無線基地局10に配信する装置管理部25と、隣接セルリストや統計情報データベース21の更新タイミングを一定周期で行うためのタイマー26を有する。また、無線基地局管理装置20は、統計情報データベース21と、隣接セルリストデータベース23を有する。
以降、無線基地局管理装置20における、それぞれの管理部の動作について詳細に説明する。
図5は統計情報管理部22が統計情報データベース21に記憶される統計情報を作成または更新する際のフローチャートである。
まず、S101にて、統計情報管理部22は、統計情報データベース21の統計情報の作成及び更新を一定周期で行うためのタイマー26を起動する。統計情報管理部22は、S102において無線基地局10からの受信データの分別を行い、通信履歴であればS103のデータ保存のフローに移り、それ以外であれば破棄し(又は受信データに応じた適宜の処理を行い)、S104のフローに移る。S103において、統計情報管理部22は、受信した通信履歴における通信セル情報とセル内での通信時間を保存する。ここで、セル内での通信時間は「当該セルでの通信終了時刻―当該セルでの通信開始時刻」で定義されるものである。
S104において、統計情報管理部22は、タイマー26を確認し、予め定められた更新周期を経過した場合、S105においてタイマーを停止し更新処理を終了する。一方、統計情報管理部22は、S104において更新周期を経過していない場合は、S102に戻り次の受信データに対する処理を行う。
続いて、S106〜S109では、統計情報データベース21の統計情報を作成及び更新する際に、通信履歴のデータ量が多い場合などには、無線通信端末1のセル内における通信時間が一定値以下の無線通信端末1の通信履歴に限ってデータベースに保存する。例えば、このようなフィルタ機能のON/OFFを予め設定しておき、統計情報管理部22はS106においてフィルタ機能のON/OFFを判定する。統計情報管理部22は、OFFであれば処理を終了する。ONであれば、統計情報管理部22は、S107において、統計情報データベース21を参照し、無線通信端末IDごとに、通信履歴において「セル内での通信時間≦予め定められた閾値」となるセルIDが存在するか否かを判定する。統計情報管理部22は、存在しなければ、S109において前述の無線通信端末IDにおける通信履歴を削除する。一方、存在すれば、前述の無線通信端末IDの通信履歴を削除せずに統計情報データベース21に蓄積したままにする。S108において、未検索の無線通信端末IDの通信履歴が存在するならば、S110において次の無線通信端末IDの通信履歴に対してS107以降の処理を実行する。全ての無線通信端末IDの通信履歴を検索終了した時点で、統計情報データベース21の作成及び更新処理は終了する。この様な手法をとることで、統計情報データベース21に格納される情報量を削減するとともに、後述する補正値を決定する際の演算量も削減可能となる。なお、本フローチャートでは、一定時間毎に、保存された通信履歴を削除しているが、通信履歴の受信時にS106、S107の処理を行い、統計情報データベース21に保存するか否かを判断してもよい。
図6は統計情報データベース21の一例である。無線通信端末ID毎に、無線通信端末1が通信したセルのIDと通信時間が対応した組が、通信順序で記録されている。図中の無線通信端末IDがaの無線通信端末を例にとると、セルID:Dにて通信を開始し、2:30(2分30秒)通信した後、B、C、Aの順にセルを移動したことを示す。また、セルBにて0:05通信、Cにて1:50通信、Aにて3:14通信をし、通信を終了している。
【0013】
図7は、ハンドオーバ可否判定の閾値補正値を決定する際のフローチャートである。このフローチャートは大きく2つの部分に分かれており、一つは補正値を決定する処理(S201〜S204)であり、もう一つは補正値を用いてハンドオーバを行った際にその効果が得られているかどうか検証を行う処理(S205〜S209)である。以降、図7、図8、図9を用いて詳細にそのフローについて説明する。
まず、補正値を決定する処理について説明する。ここでは説明の便宜上、図8のように4つのセルが存在するケースを想定する。S201において、隣接セルリスト管理部24は、統計情報データベース21に記憶された各セルID(例えば図8に示すセルに相当)が示すセルの中で、通信時間の短い無線通信端末が最も多いセルを統計情報データベースから抽出する。より具体的には、隣接セルリスト管理部24は、統計情報データベース21に記憶された各通信時間を参照し、通信時間が予め定められた閾値(第1閾値)より小さいセルを特定し、セル毎に該当数をカウントする。カウント数が最も多いセルを移動先対象セル(第1セル)とする。なお、最大カウント数が同じセルが複数存在する場合は、その全てを移動先対象セルとする。ここでは通信履歴が図6の例であるとし、セルBが移動先対象セルに該当したとする。
【0014】
次に、S202において、隣接セルリスト管理部24は、セルBの隣接セルを抽出する。より具体的には、隣接セルリスト管理部24は、移動先対象セルのセルIDに基づき隣接セル情報データベース23に記憶された隣接セルリストを参照し、対応する複数のセルIDを抽出する。
S203において、隣接セルリスト管理部24は、抽出したセルの中から、セルBにハンドオーバし、セルB内での通信時間が短い端末が最も多いセルを移動元対象セルに選択する。ここでは、S201で選択されたセルについて、どのセルから移動してきた場合に通信時間が短いかを特定する。より具体的には、隣接セルリスト管理部24は、統計情報データベースを参照して、S202で抽出されたセルIDのセル(以下ハンドオーバ元セルと称する)から、S201で選択された移動先対象セルへのハンドオーバについて、移動先対象セルに対応する通信時間が予め定められた閾値(第2閾値)より小さいハンドオーバを特定し、ハンドオーバ元セル毎に該当数をカウントする。カウントされた値が最も大きいハンドオーバ元セルを、移動元対象セル(第2セル)とする。ここでは通信履歴が図6の例であるとし、セルDが該当したとする。
この場合、セルDからセルBへのハンドオーバがセルB内での通信時間が短い端末数を多く発生させていると考えられる。そこで、S204にて、隣接セルリスト管理部24は、セルDからセルBへのハンドオーバ可否判定の閾値補正値を予め定められた値(例えば0.5dB)上昇させる。補正値は例えば隣接セルリストに、ハンドオーバ元のセルID及びハンドオーバ先のセルIDに対応して記憶され、隣接セルリスト管理部24は、移動元対象セル及び移動先対象セルに対応する補正値(設定情報)を、予め定められた値上昇させる。なお、ここで示す補正値の変動値は、セル境界付近に存在する無線通信端末に対して影響を与えるものであることを考慮し、0.5dB単位での制御とした。なお、これ以外の変動幅でもよい。その後、装置管理部25は、変更された補正値を含む隣接リストに従い、無線基地局10のハンドオーバ制御部14の隣接セルリストを更新する。例えば、装置管理部25は、図10のハンドオーバ元セルをカバーする無線基地局10へ、該ハンドオーバ元セルに対応する隣接セルリストを通知する。
なお、上述の例では補正値を設定情報として送信しているが、補正値に対応する識別情報、ハンドオーバ閾値、その他ハンドオーバを定めるための適宜の情報を設定情報として送信してもよい。
【0015】
次に、本制御(補正値変更)による効果検証の処理について説明する。
例えば、隣接セルリスト管理部24は、前述の閾値補正値を変更終了後に、S205にて基地局管理装置20のタイマー26を起動する。タイマー起動後、隣接セルリスト管理部24は、一定期間(予め定められた時間)経過したかどうかをS206にて判定し、経過していた場合、判定処理に入る。ここで示す一定期間とは、無線通信端末の移動分布の変動がある程度均一になるような時間になることを考慮し、例えば24時間程度の間隔で制御することが望ましい。但し、前述の期間を24時間と設定したのはあくまで一例であり、周辺エリアの状況や、変動の期間を考慮し、判定周期を変更することを可能とする。S207の判定処理は下記の数式1を満たすかどうかで、効果の有無を判定する。
【数1】

ここで、数式1に示したパラメータは以下の通りである。
SNCont_old:移動元対象セルからハンドオーバした端末のうち、制御前の移動先対象セルにおける通信時間が閾値より短い端末数
SNCont_new:移動元対象セルからハンドオーバした端末のうち、制御後の移動先対象セルにおける通信時間が閾値より短い端末数
SNi_old:移動元対象セルからハンドオーバした端末のうち、制御前のセルID”i”における通信時間が閾値より短い端末数
SNi_new:移動元対象セルからハンドオーバした端末のうち、制御後のセルID”i”における通信時間が閾値より短い端末数
なお、この式の概念については、具体例をあげて後に詳述する。
【0016】
隣接セルリスト管理部24は、数式1を満たさない、すなわち効果がないと判断した場合、S208にて、移動元対象セル(セルD)から移動先対象セル(セルB)へのハンドオーバ判定における閾値を0.5dB下げる。数式1を満たす、すなわち効果があると判断された場合は、閾値をそのままにする(又はさらに上げる)。最後にS209にてタイマーを停止して、一連の処理を終了する。
以下、図7のフローチャートに関して、図8、図9に示したセル配置を例に取り説明する。ここでは、図8のようにセルA〜Dが存在するエリアを想定して説明する。セルA〜Dに対して、セル内での通信時間が短い端末が多く存在するセルを抽出する。本例ではセルBが該当したとする。次に、隣接セルリストを参照してBの隣接セルを特定し、その中から、セルBへハンドオーバを実施し、ハンドオーバ後のセル内での通信時間が短い端末をカウントし、このような端末が最も多く存在するハンドオーバ元のセルを選択する。なお、セル内での通信時間が短い端末が最も多く存在するセルが複数存在する場合、その全てのセルを移動元対象セルとする。本例ではDが対象のセルとする。この場合、セルDからセルBへのハンドオーバ可否判定の閾値補正値を0.5dB上げる。以降は判定処理に移る。
判定処理においては、セルDからセルBへのハンドオーバ可否判定の閾値補正値を0.5dB上げたことにより、周辺セルへのハンドオーバが増加すると考えられる。中でも、セルBとセルDが共通に隣接する隣接セルへの移動が増加すると考えられる。例えば、補正値変更後にセルDからセルBへハンドオーバした無線通信端末の中でセル内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数は減少すると考えられるが、セルDから隣接セルC及びセルEへハンドオーバした無線通信端末の中でセルC、E内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数の増加量が多いと、エリア全体として、セル内での通信時間が閾値より短い端末の数が増加する。そこで、このような状況が起きてなく、本制御の効果が得られているか確認する。
【0017】
まず、セルBとセルDが共に隣接する隣接セル(本例の図9においてはセルCとセルEが該当)において、補正値変更後にセルDからハンドオーバした無線通信端末の中でセルC、E内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数をそれぞれカウントする。この数をそれぞれSNC_newとSNE_newと定義する(上述の数式1でのSNi_new、i=セルC、セルEに相当)。また、補正値変更前のセルDからセルCとセルEにハンドオーバを行い、セル内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数を統計情報データベース21における通信履歴から読み出し、この数をSNC_oldとSNE_oldと定義する(上述の数式1でのSNi_old、i=セルC、セルEに相当)。次に、補正値変更後にセルDからセルBへハンドオーバした無線通信端末の中でセルB内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数をカウントする。この数をSNB_newと定義する(上述の数式1でのSNCont_newに相当)。また、補正値変更前のセルDからセルBへハンドオーバした無線通信端末の中でセルB内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数を統計情報データベース21における通信履歴から読み出し、この数をSNB_oldと定義する(上述の数式1でのSNCont_oldに相当)。
ここで、補正値変更に伴って、セルDからセルBへハンドオーバした無線通信端末の中でセルB内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数の変動(第1変動):SND_old−SND_newと、セルDからセルC、セルEへハンドオーバした無線通信端末の中でセルC、E内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数の変動(第2変動):(SNC_old−SNC_new)+(SNE_old−SNE_new)を比較する。(SND_old−SND_new)≧{(SNC_old−SNC_new)+(SNE_old−SNE_new)}、すなわち、補正値変更後にセルDからセルBへハンドオーバした無線通信端末の中でセルB内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数の減少量が、セルDからセルC及びセルEへハンドオーバした無線通信端末の中でセルC、E内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数の増加量以上であれば、エリア全体として、セル内での通信時間が短い端末の数が減少しており、本制御の効果があるとして補正値を維持する。逆に、補正値変更後にセルDからセルBへハンドオーバした無線通信端末の中でセルB内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数の減少量が、セルDからセルC及びセルEへハンドオーバした無線通信端末の中でセルC、E内での通信時間が閾値より短い無線通信端末の数の増加量未満であれば、エリア全体として、セル内での通信時間が閾値より短い端末の数が増加しており、エリア全体としてみると本制御の効果が無かったと判断し、補正値を元に戻す(0.5dB下げる)。なお、ここで示す補正値の変動値は、セル境界付近に存在する無線通信端末に対して影響を与えるものであることを考慮し、0.5dB単位での制御とした。但し、前述の変動値を0.5dBと設定したのはあくまで一例であり、周辺エリアの状況や、無線通信端末への影響を考慮し、変動値を変更することを可能とする。
【0018】
図10は、本実施例における隣接セルリストの一例である。ハンドオーバ元のセルIDとハンドオーバ先のセルIDが1対1に対応して補正値を与えている。そのため、ハンドオーバ元のセルとハンドオーバ先のセルが逆になった場合必ずしも補正値が同じになるとは限らない。
最後に、第1の実施例におけるハンドオーバ可否判定手法について説明する。
図11は第1の実施例におけるハンドオーバ可否判定のフローチャートである。図11は、無線通信端末1のフローチャートと、無線基地局10のフローチャートをあわせて示す。無線基地局10の処理は、例えば、ハンドオーバ制御部14で実行される。
無線通信端末1と通信を行っている無線基地局10は、無線通信端末1からの報知情報により、受信状態が悪くなると、S301において無線通信端末1に対して隣接セル信号電力測定要求を送信する。S302において無線基地局10からの隣接セル信号電力測定要求を受信した無線通信端末1は、S303において隣接セルにおける基準信号(パイロット信号)の受信電力を測定する。その後、無線通信端末1は、S304において測定したセルのセルIDと測定した受信電力の報告値を無線基地局10に送信する。
S305において報告値等を受信した無線基地局10は、S306においてメモリ15に記憶された隣接セルリストを参照し、報告されたセルIDに対応する補正値を参照する。無線基地局10は、S307において報告されたセルの基準信号受信電力と閾値の比較を行い、報告されたセルの基準信号受信電力が、受信電力≧予め定められたハンドオーバのための基準閾値+参照されるセルの補正値の条件を満たす場合、ハンドオーバ処理を実行する。前述の式の条件を満たさない場合ハンドオーバ処理を開始せず、現在通信を行っている無線基地局10との通信を継続する。なお、上記条件を満たすセルが複数ある場合は、そのうちのひとつを選択してハンドオーバ処理を行う。例えば、「信号受信電力−(基準閾値+補正値)」の値が最も大きくなるセルを選択してもよい。
【0019】
2.第2の実施例
続いて、無線通信端末がハンドオーバ可否判定処理を行う、第2の実施例について、図面を用いて詳細に説明する。
図12は、第2の実施例における管理システムの構成図である。無線基地局10及び無線基地局管理装置20は図1のものと同様であり、本実施例においては、無線通信端末1は無線基地局10と無線通信を行なうアンテナ2と、アンテナ2からの受信信号または無線基地局10への送信信号を処理する無線通信部3と、ハンドオーバ制御部4とを有する。
本実施例においても、統計情報データベース21および隣接セルリストデータベース23の作成方法については第1の実施例と同様である。隣接セルリストの更新は、無線基地局10が無線ネットワーク40を介して、無線通信端末1に送信することで行なわれる。無線通信端末1では、例えば、ハンドオーバ制御部4で隣接セルリストを格納する。なお、更新のタイミングについては、例えば一定期間で無線通信端末1に送付する。この場合の周期も、前述の第1の実施例と同じく、無線通信端末の移動分布の変動がある程度均一になるような時間になることを考慮し、例えば24時間程度の間隔で制御することが望ましい。但し、前述の期間を24時間と設定したのはあくまで一例であり、周辺エリアの状況や、変動の期間を考慮し、判定周期を変更することを可能とする。例えば、無線基地局管理装置20から最新の隣接セルリストが無線基地局10に送信された時点で、無線通信端末1に送信してもよい。
【0020】
次に、第2の実施例におけるハンドオーバ可否判定手法について説明する。
図13は本実施例におけるハンドオーバ可否判定のフローチャートである。S401において、無線通信端末1における、現在通信を行っている無線基地局10からの信号受信電力が、「通信中の無線基地局からの受信電力≦予め定められた閾値a」の条件を満たす場合、S402において、無線通信端末1は無線基地局10に対してハンドオーバ開始要求を送信する。なお、本フローチャートにおける無線通信端末1の処理は、例えばハンドオーバ制御部4が実行する。一方、前述の条件を満たさなかった場合、無線通信端末1はハンドオーバ処理を行わず、本フローを終了する。S403において、ハンドオーバ開始要求を受けた無線基地局10(例えばハンドオーバ制御部14)は、S404において無線通信端末1に対して応答を返す。S405において無線基地局10からの応答を受けた無線通信端末1は、S406において、ハンドオーバ制御部4にて管理されている隣接セルリストを参照して、測定対象となる隣接セルを決定する。S407において、無線通信端末1は、前述の測定対象の隣接セルからの信号受信電力を測定し、S408において、測定された信号受信電力と閾値の比較を行う。この際、隣接セルリストに保存されている対応する補正値を参照し比較を行い、「信号受信電力≧予め定められた基準閾値b+補正値」を満たすセルを抽出する。S409において、前述の抽出したセルの中で最も通信状態の良いセルを選択し、ハンドオーバ処理(通信の再設定)を開始する。本例における最も通信状態の良いセルとは、例えば「信号受信電力−(閾値b+補正値)」の値が最も大きくなるセルを指す。
次に、図面を用いて第2の実施例における動作の一例を示す。図8のようなセル配置を想定し、現在端末がセルBにおいて通信を行っているとして説明する。このとき隣接セルリストは図10の通りでありセルBから各隣接セルに対する補正値は、A:0.5dB、C:0dB、D:1dB、E:−0.5dB、F:−1.5dB、G:−1dBとなっている。このとき、図13におけるハンドオーバ可否判定の基準閾値bが−40dBmであったとする。また、無線通信端末1における隣接セルの信号受信電力が、図14の通りであったとすると、無線通信端末1がハンドオーバ可能と判定するセル(上述のS408で抽出されるセル)は、セルAとセルGである。この時、受信電力はセルGの方がセルAより高いものの、補正値を用いることで、「信号受信電力−(閾値b+補正値)」の値はセルAの方がセルGより大きくなるため、セルAがハンドオーバ先のセルとして選択される。
【0021】
3.基地局の構成例
上述の各実施例においては、主にシステム全体について説明したが、無線基地局10の観点から説明すると、例えば、以下の構成とすることができる。
例えば、無線基地局10は、無線通信端末1が通信するセルがハンドオーバにより切り替わる無線通信システムにおける基地局であって、
無線通信端末1について自基地局のセルから該セルに隣接する隣接セルへのハンドオーバ可否を判定するためのハンドオーバ閾値が、隣接セル毎に設定され、隣接セルの識別子毎に該ハンドオーバ閾値が記憶されたメモリ15と、
無線通信端末1における隣接セルからの受信電力と該隣接セルの識別子とを該無線通信端末から受信し、受信された隣接セルの識別子に基づき前記メモリを参照して対応するハンドオーバ閾値を特定し、該受信電力と該ハンドオーバ閾値を比較して該隣接セルへのハンドオーバの可否を判定するハンドオーバ制御部14と
を有する。
複数の隣接セルのうちの少なくともふたつの隣接セルについて、対応するハンドオーバ閾値が異なる値である。
ハンドオーバ閾値は、上述の実施例のように、通信履歴を用いて無線基地局管理装置20により設定されることができる。
例えば、上述の無線基地局10は、無線通信端末1が過去に通信したセルの識別子と、該セルでの通信時間とを含む通信履歴を無線通信端末1から受信し、無線基地局管理装置20へ送信する統計情報管理部13をさらに備え、ハンドオーバ制御部14は、該通信履歴に基づいて定められた、ハンドオーバ閾値の設定情報を無線基地局管理装置20から取得して、該ハンドオーバ閾値を設定する。
また、少なくとも上記隣接セルのふたつについて、通信履歴のうち自基地局のセルから各隣接セルへハンドオーバした場合の、無線通信端末1と各隣接セルとの通信時間が短い端末数の統計値の大小関係と、各隣接セルに対するハンドオーバ閾値の大小関係とが、反転する関係にある。例えば、上記隣接セルのふたつについて、該セルでの通信時間が予め定められた閾値より短い端末数が多い一方のセルは、上記ハンドオーバ閾値が他方のセルよりも小さい。これ以外にも適宜の統計値であってもよい。
また、少なくとも上記隣接セルのふたつについて、通信履歴のうち自基地局のセルから隣接セルへハンドオーバした場合の、該隣接セルでの通信時間が予め定められた閾値より短い端末の数が増加するにつれて、該隣接セルに対するハンドオーバ閾値が増加する関係にある。
【0022】
4.システム構成例
例えば、無線基地局管理装置は、ハンドオーバにより、無線基地局を切り替えて通信する無線通信端末と、前述の無線通信端末が通信する複数の無線基地局と、前述の無線基地局を管理する無線基地局管理装置が存在する無線通信システムにおいて、前述の無線通信端末の通信時間と無線基地局の接続履歴を収集する手段を備えた統計情報管理部、前述の通信時間と接続履歴から、セル毎のハンドオーバ可否判定における閾値補正値を決定する手段を備え、各無線基地局における隣接セルリストに登録を行う隣接セルリスト管理部、各無線基地局に対して隣接セルリストを配布する装置管理部を備える。
前述の無線基地局における隣接セルリストの更新は、一定期間ごと、もしくは隣接セルリストが更新されるたびに、前述の装置制御部により更新されてもよい。
また、例えば、前述の無線基地局にハンドオーバ制御部を備え、前述の装置管理部によって更新された隣接セルリストを用いて、無線基地局主導でハンドオーバを行なうことができる。
または、前述の無線基地局および、無線通信端末にハンドオーバ制御部を備え、前述の装置管理部から無線基地局のハンドオーバ制御部を通じて更新された隣接セルリストを用いて移動通信端末主導でハンドオーバを行なうこともできる。
前述の無線通信システムでは、セル毎に登録されたハンドオーバ可否判定の閾値を変化させる補正値を用いて、ハンドオーバの可否判定を行う。
前述の補正値は、無線通信端末の移動履歴を用いて、セル内において通信時間が短い端末が多く存在するセルを制御対象とし、前述の制御対象のセルに対してハンドオーバを行った隣接セルのうち、最も多く通信時間の短い端末がハンドオーバしてきた隣接セルを抽出した後、前述の隣接セルから前述の制御対象無線基地局へのハンドオーバ可否判定の閾値を変化させる。
また、前述のハンドオーバ可否判定の閾値を変化させる補正値を、隣接セルリストに持つことができる。
無線基地局内にハンドオーバ制御部を備え、ハンドオーバ制御部において前述の隣接セルリストに登録されたハンドオーバ可否判定閾値の補正値を用いて、ハンドオーバの可否判定することができる。
【0023】
5.変形
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、例えば、無線通信システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 無線通信端末
2 アンテナ
3 無線通信部
4 ハンドオーバ処理部
10 無線基地局
11 アンテナ
12 無線通信部
13 統計情報管理部
14 ハンドオーバ処理部
15 メモリ
20 無線基地局管理装置
21 統計情報データベース
22 統計情報管理部
23 隣接セルリストデータベース
24 隣接セルリスト管理部
25 装置管理部
26 タイマー部
30 有線ネットワーク
40 無線ネットワーク
50 ゲートウェイ
60 コアネットワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信端末が通信するセルがハンドオーバにより切り替わる無線通信システムにおける前記基地局であって、
前記無線通信端末について自基地局のセルから該セルに隣接する隣接セルへのハンドオーバ可否を判定するためのハンドオーバ閾値が、隣接セル毎に設定され、前記隣接セルの識別子毎に該ハンドオーバ閾値が記憶されたメモリと、
前記無線通信端末における隣接セルからの受信電力と該隣接セルの識別子とを該無線通信端末から受信し、受信された隣接セルの識別子に基づき前記メモリを参照して対応するハンドオーバ閾値を特定し、該受信電力と該ハンドオーバ閾値を比較して該隣接セルへのハンドオーバの可否を判定するハンドオーバ制御部と
を備え、
複数の隣接セルのうちの少なくともふたつの隣接セルについて、対応するハンドオーバ閾値が異なる値である基地局。
【請求項2】
前記無線通信端末が過去に通信したセルの識別子と、該セルでの通信時間とを含む通信履歴を前記無線通信端末から受信し、基地局管理装置へ送信する統計情報管理部
をさらに備え、
前記ハンドオーバ制御部は、該通信履歴に基づいて定められた、ハンドオーバ閾値の設定情報を前記基地局管理装置から取得して、該ハンドオーバ閾値を設定する請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
少なくとも前記隣接セルのふたつについて、通信履歴のうち自基地局のセルから各隣接セルへハンドオーバした場合の、前記無線通信端末と各隣接セルとの通信時間が短い端末数の統計値の大小関係と、各隣接セルに対するハンドオーバ閾値の大小関係とが、反転する関係にあることを特徴とする請求項2に記載の基地局。
【請求項4】
少なくとも前記隣接セルのふたつについて、通信履歴のうち自基地局のセルから隣接セルへハンドオーバした場合の、該隣接セルでの通信時間が予め定められた閾値より短い端末の数が増加するにつれて、該隣接セルに対するハンドオーバ閾値が増加する請求項2に記載の基地局。
【請求項5】
複数の基地局を備え、無線通信端末が通信するセルがハンドオーバにより切り替わる無線通信システムであって、
前記基地局はそれぞれ、
前記無線通信端末について自基地局のセルから該セルに隣接する隣接セルへのハンドオーバ可否を判定するためのハンドオーバ閾値が、隣接セル毎に設定され、前記隣接セルの識別子毎に該ハンドオーバ閾値が記憶されたメモリと、
前記無線通信端末における隣接セルからの受信電力と該隣接セルの識別子とを該無線通信端末から受信し、受信された隣接セルの識別子に基づき前記メモリを参照して対応するハンドオーバ閾値を特定し、該受信電力と該ハンドオーバ閾値を比較して該隣接セルへのハンドオーバの可否を判定するハンドオーバ制御部と
を備え、
複数の隣接セルのうちの少なくともふたつの隣接セルについて、対応するハンドオーバ閾値が異なる値である無線通信システム。
【請求項6】
第1セルと第2セルについて、
第1セルから第2セルへのハンドオーバ可否を判定するための第1ハンドオーバ閾値と、第2セルから第1セルへのハンドオーバ可否を判定するための第2ハンドオーバ閾値とが異なる請求項5に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記無線通信端末が過去に通信したセルの識別子と、該セルでの通信時間とを含む通信履歴に基づきハンドオーバ閾値を定める基地局管理装置
をさらに備え、
前記基地局は、
前記無線通信端末から通信履歴を受信し、前記基地局管理装置へ送信する統計情報管理部をさらに有し、
前記ハンドオーバ制御部は、該通信履歴に基づいて定められた、ハンドオーバ閾値の設定情報を前記基地局管理装置から取得して、該ハンドオーバ閾値を設定する請求項5に記載の無線通信システム。
【請求項8】
所定の基地局において、少なくとも前記隣接セルのふたつについて、通信履歴のうち該基地局のセルから各隣接セルへハンドオーバした場合の、前記無線通信端末と各隣接セルとの通信時間の統計値の大小関係と、各隣接セルに対するハンドオーバ閾値の大小関係とが、反転する関係にあることを特徴とする請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項9】
所定の基地局において、少なくとも前記隣接セルのふたつについて、通信履歴のうち該基地局のセルから隣接セルへハンドオーバした場合の、該隣接セルでの通信時間が予め定められた閾値より短い端末の数が増加するにつれて、該隣接セルに対するハンドオーバ閾値が増加する請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記基地局管理装置は、
前記無線通信端末の通信履歴を用いて、セル毎に、該セル内での通信時間が予め定められた第1閾値より短い端末の数を求め、該端末の数が最も多いセル又は予め定められた第2閾値より多いセルを移動先対象とし、
該移動先対象のセルへのハンドオーバについて、ハンドオーバ元のセル毎に移動先対象のセルでの通信時間が第1閾値より短い端末数をカウントして、該端末数が最も多いセル又は予め定められた第2閾値より多いセルを移動元対象とし、
特定された移動元対象のセルから移動先対象のセルへのハンドオーバ閾値を変化させるための設定情報を生成して、移動元対象のセルに対応する前記基地局へ送信する請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項11】
ハンドオーバ閾値を定めるための基準値が予め設定され、
前記基地局管理装置は、補正量を増減させて前記設定情報として前記基地局に送信することで、該基準値と該補正量とから得られるハンドオーバ閾値を変化させる請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項12】
前記基地局管理装置は、ハンドオーバ閾値を変化させた後に、ハンドオーバ閾値を変化させた前後の通信履歴を用いて、
移動元対象のセルから移動先対象のセルへハンドオーバした無線通信端末の中で移動先対象のセル内での通信時間が第1閾値より短い無線通信端末の数の、ハンドオーバ閾値の変化させた前後の第1変動と、移動元対象のセルから移動先対象のセル以外の隣接セルへハンドオーバした無線通信端末の中で該隣接セル内での通信時間が第1閾値より短い無線通信端末の数の、ハンドオーバ閾値の変化させた前後の第2変動とを比較し、
第1変動における減少量が、第2変動における増加量以上であれば、変化させたハンドオーバ閾値を維持し又はさらに上げ、
第1変動における減少量が、第2変動における増加量未満であれば、変化させたハンドオーバ閾値を元に戻す又は下げる請求項10に記載の無線通信システム。
【請求項13】
前記基地局管理装置は、
前記基地局を介して前記無線通信端末から受信した通信履歴について、該通信履歴内のセルでの通信時間が第1閾値より短いデータを有する無線通信端末の通信履歴のみを記憶する請求項10に記載の無線通信システム。
【請求項14】
前記基地局は、
自基地局のセルに隣接する前記隣接セルの識別子と、該隣接セルに対するハンドオーバ閾値を定めるための設定情報を含む隣接セルリストを有する請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項15】
前記基地局の隣接セルリストを用いて、基地局主導でハンドオーバを行なうことを特徴とする請求項14に記載の無線通信システム。
【請求項16】
前記無線通信端末が、所定のセルに隣接する隣接セルの識別子と、該所定のセルから該隣接セルへのハンドオーバ閾値を定めるための設定情報を含む隣接セルリストを有し、
前記基地局管理装置から前記基地局を介して更新される該隣接セルリストを用いて無線通信端末主導でハンドオーバを行なうことを特徴とする請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項17】
複数の基地局を備え、無線通信端末が通信するセルがハンドオーバにより切り替わる無線通信システムにおけるハンドオーバ制御方法であって、
無線通信端末について第1基地局のセルから該セルに隣接する隣接セルへのハンドオーバ可否を判定するためのハンドオーバ閾値を、少なくともふたつの隣接セルについて対応するハンドオーバ閾値が異なる値であるように隣接セル毎に設定し、隣接セルの識別子毎に該ハンドオーバ閾値をメモリに記憶するステップと、
第1基地局のセルで通信する無線通信端末における隣接セルからの受信電力と該隣接セルの識別子とを該無線通信端末から受信するステップと、
受信された隣接セルの識別子に基づきメモリを参照して対応するハンドオーバ閾値を特定するステップと、
該受信電力と該ハンドオーバ閾値を比較して第1基地局のセルから該隣接セルへのハンドオーバの可否を判定するステップと
を含むハンドオーバ制御方法。
【請求項18】
基地局管理装置が、基地局を介して無線通信端末から、該無線通信端末が過去に通信したセルの識別子と、該セルでの通信時間とを含む通信履歴を受信し、該通信履歴に基づきハンドオーバ閾値を定めるステップと、
第1基地局が、該通信履歴に基づいて定められた、ハンドオーバ閾値の設定情報を基地局管理装置から取得して、該ハンドオーバ閾値を設定するステップと
をさらに含む請求項17に記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項19】
基地局管理装置が、
通信履歴を用いて、セル毎に、該セル内での通信時間が予め定められた第1閾値より短い端末の数を求め、該端末の数が最も多いセル又は予め定められた第2閾値より多いセルを移動先対象とするステップと、
該移動先対象のセルへのハンドオーバについて、ハンドオーバ元のセル毎に移動先対象のセルでの通信時間が第1閾値より短い端末数をカウントして、該端末数が最も多いセル又は予め定められた第2閾値より多いセルを移動元対象とするステップと、
特定された移動元対象のセルから移動先対象のセルへのハンドオーバ閾値を変化させるための設定情報を生成して、移動元対象のセルに対応する基地局へ送信するステップと
をさらに含む請求項18に記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項20】
基地局管理装置が、ハンドオーバ閾値を変化させた後に、ハンドオーバ閾値を変化させた前後の通信履歴を用いて、
移動元対象のセルから移動先対象のセルへハンドオーバした無線通信端末の中で移動先対象のセル内での通信時間が第1閾値より短い無線通信端末の数の、ハンドオーバ閾値の変化させた前後の第1変動と、移動元対象のセルから移動先対象のセル以外の隣接セルへハンドオーバした無線通信端末の中で該隣接セル内での通信時間が第1閾値より短い無線通信端末の数の、ハンドオーバ閾値の変化させた前後の第2変動とを比較するステップと、
第1変動における減少量が、第2変動における増加量以上であれば、変化させたハンドオーバ閾値を維持し又はさらに上げるステップと、
第1変動における減少量が、第2変動における増加量未満であれば、変化させたハンドオーバ閾値を元に戻す又は下げるステップと
をさらに含む請求項19に記載のハンドオーバ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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