基地局装置及び通信方法
【課題】RFに対応する回路とPHY層に対応する回路との間の伝送遅延によるスループットの低下を軽減すること。
【解決手段】無線端末及び無線端末から受信した信号の信号処理を行う信号処理装置のそれぞれと接続され、かつ、無線端末から受信した信号を信号処理装置へ出力する基地局装置が、予め記憶した複数の信号と受信した信号とをパターンマッチングし、受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定し、第1の応答信号を送信すると判定されたた場合に、予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、第1の応答信号に設定し、第1の応答信号を送信する。
【解決手段】無線端末及び無線端末から受信した信号の信号処理を行う信号処理装置のそれぞれと接続され、かつ、無線端末から受信した信号を信号処理装置へ出力する基地局装置が、予め記憶した複数の信号と受信した信号とをパターンマッチングし、受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定し、第1の応答信号を送信すると判定されたた場合に、予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、第1の応答信号に設定し、第1の応答信号を送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)に対応するIEEE802.11などの通信プロトコルでは、例えばIFS(Inter Frame Space)などのフレーム送信に関する時間が規定されている。このような時間既定は、例えばμsecオーダーという短時間のものである。
【0003】
また、無線通信の機能を汎用のハードウェア上で動作するソフトウェアにより実現するソフトウェア無線の技術が知られている。このようなソフトウェア無線によって上記のような時間規定の条件を満足したタイミングでフレームを送信するには、RF(Radio Frequency)とPHY(Physical)層の間の伝送遅延時間を短縮する必要がある。また、PHY層とMAC(Media Access Control)層の間の処理遅延時間を短縮する必要がある。
【0004】
そこで、以下の構成を採ることが知られている。つまり、RFとPHY層に対応する回路を専用のハードウェアとして高速伝送を実現することにより、RFとPHY層の間の短縮を図ろうというものである。OSを無線通信に応じてカスタマイズして汎用CPUのプロセス間通信と割り込み処理による遅延を大幅に削減することにより、PHY層とMAC層の間の処理遅延時間を短縮する事ができる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kun Tan, 他 “Sora: High Performance Software Radio Using General Purpose Multi-core Processors”、[online]、[平成23年11月10日検索]、インターネット<http://www.usenix.org/events/nsdi09/tech/full_papers/tan/tan.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のソフトウェア無線などを応用した技術としてフレキシブルワイヤレスシステムが開発されている。フレキシブルワイヤレスシステムは、受信した無線周波数信号をソフトウェアで処理する。これにより、ソフトウェアの切り替えによって多様な無線通信方式に対応することができる。
【0007】
しかし、上記のようなフレキシブルワイヤレスシステムでは、RFに対応する回路とPHY層に対応する回路が、物理的に離れて設置される装置毎に実装される。この場合、RFの回路にて電波を受信して得られた信号は、比較的長距離の伝送路を経由してPHY層の回路に伝送される。そのため、伝送路遅延が増大してしまい、無視できない値となってしまう。このため、非特許文献1のように専用ハードウェアで構成したとしても、RFとPHY層との間で生じる伝送遅延時間の短縮を図ることは難しい。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、RFに対応する回路とPHY層に対応する回路との間の伝送遅延によるスループットの低下を軽減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、無線端末との間で通信を行う基地局装置であって、予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定部と、前記第1の応答信号を送信すると判定された場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信部と、を備える基地局装置である。
【0010】
本発明の一態様は、無線端末及び前記無線端末から受信した信号の信号処理を行う信号処理装置のそれぞれと接続され、かつ、前記無線端末から受信した信号を前記信号処理装置へ出力する基地局装置であって、予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定部と、前記第1の応答信号を送信すると判定された場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信部と、を備える基地局装置である。
【0011】
本発明の一態様は、上述した基地局装置であって、前記受信した信号を復調して取得した第2のチャネル予約期間に基づいて第3のチャネル予約期間を算出する算出部と、前記第3のチャネル予約期間が設定された第2の応答信号を、前記第1の応答信号の後に送信する第2応答信号送信部と、をさらに備える。
【0012】
本発明の一態様は、無線端末と基地局装置との間で無線通信を行うための通信方法であって、予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定ステップと、前記第1の応答信号を送信すると判定されたた場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信ステップと、を有する通信方法である。
【0013】
本発明の一態様は、上述した通信方法であって、前記基地局装置が、前記受信した信号を復調して取得した第2のチャネル予約期間に基づいて第3のチャネル予約期間を算出する算出ステップと、前記第3のチャネル予約期間が設定された第2の応答信号を、前記第1の応答信号の後に送信する第2応答信号送信ステップと、をさらに有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、RFに対応する回路とPHY層に対応する回路との間の伝送遅延によるスループットの低下を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の通信システムの構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。
【図3】第1の実施形態におけるNAV値生成部330の構成例を示す図である。
【図4】第1の実施形態に対応する無線端末装置100とアクセスポイント200と無線信号処理装置300の動作タイミングの一例を示す図である。
【図5】第1の実施形態におけるアクセスポイント200が実行する処理手順例を示す図である。
【図6】NAV値生成部330が実行する処理手順例を示す図である。
【図7】第2の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。
【図8】自己CTS生成部340の構成例を示す図である。
【図9】第2の実施形態に対応する無線端末装置100とアクセスポイント200と無線信号処理装置300の動作タイミングの一例を示す図である。
【図10】第2の実施形態におけるアクセスポイント200が実行する処理手順例を示す図である。
【図11】第2の実施形態の無線信号処理装置300において自己CTS生成部340と送信制御部323が実行する処理手順例を示す図である。
【図12】第3の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。
【図13】自己CTSを送信しない場合の動作タイミング例について示す図である。
【図14】送信可否判定部350が実行する処理手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
[通信システムの構成]
図1は、本実施形態の通信システムの構成例を示す図である。この図に示す通信システムは、複数の無線端末装置100と、アクセスポイント200と、無線信号処理装置300と、有線端末装置500と、無線端末装置600とを備える。また、アクセスポイント200と無線信号処理装置300と有線端末装置500と無線端末装置600は、光ファイバ400により相互通信可能に接続されている。なお、無線端末装置600と光ファイバ400との間の接続は、たとえばアクセスポイント200と同様の無線基地局を介してなされる。
無線端末装置100は、アクセスポイント200のセル内に設置されており、アクセスポイント200を経由して他の無線端末装置100、有線端末装置500及び無線端末装置600と無線通信を行う。有線端末装置500は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やサーバ装置などの情報処理装置であり、有線通信を行う装置である。無線端末装置600は、例えばノートパソコンやPDA、スマートフォンなどの情報処理装置に付随、内蔵され、無線通信を行う装置である。
【0017】
アクセスポイント200は、1つの無線端末装置100から送信された信号を受信して、宛先である装置(他の無線端末装置100、有線端末装置500、無線端末装置600)に送信する。このとき、宛先である装置が有線端末装置500又は無線端末装置600である場合には、アクセスポイント200は受信した信号を光ファイバ400のネットワーク内の無線信号処理装置300を介して有線端末装置500宛てに転送する。また、アクセスポイント200は、光ファイバ400のネットワーク内の無線信号処理装置300を介して有線端末装置500又は無線端末装置600から無線端末装置100宛ての信号を受信すると、受信した信号を宛先である無線端末装置100に送信する。つまり、無線端末装置100を送信元又は送信先とする通信を中継する。なお、以下の説明では上記通信のうち無線端末装置100同士の通信を例にとって説明する。
また、本実施形態におけるアクセスポイント200は、アンテナ210において送受信されるRF(Radio Frequency)信号(無線周波数信号)を対象に処理を実行するRF部を備える。これに対応して、無線信号処理装置300は、RFより上位の通信プロトコルに対応する機能部を備える。つまり、アクセスポイント200は、電波を受信して得られるRF信号をベースバンド信号に変換して無線信号処理装置300に出力する。また、無線信号処理装置300から出力されたベースバンド信号による送信信号を入力してRF信号に変換してアンテナ210から送出させる。
【0018】
そのうえで、アクセスポイント200は、応答信号を返送すべき種別の信号(フレーム)を受信した場合には、無線信号処理装置300に代わり、応答信号としての無線周波数信号を生成してアンテナ210より送出させる。
本実施形態において、上記アクセスポイント200が送信する応答信号としては、RTS(Request To Send)に対応するCTS(Clear To Send)と、データに対応するACK(Acknowledge)であることとする。
【0019】
無線信号処理装置300は、アクセスポイント200から入力されたベースバンド信号について復調などの処理を行ってフレームからデータを抽出し、このデータの種別や内容に応じた所定の処理を実行する。また、データ送信に際しては、データを格納するフレームを生成して変調を施すことにより送信用のベースバンド信号を生成し、アクセスポイント200に送信する。
【0020】
このように、本実施形態においては、アクセスポイント200においてRF信号段階での送受信が行われ、無線信号処理装置300がRFより上位の各階層(例えばOSI参照モデルの階層)に対応する処理を実行するようにされている。つまり、本実施形態のアクセスポイント200と無線信号処理装置300はフレキシブルワイヤレスシステムに対応した構成を有している。なお、アクセスポイント200と無線信号処理装置300との間の接続は、例えば他のデータインターフェースなどをはじめ、光ファイバ400以外の通信方式によるものが採用されてよい。
【0021】
[アクセスポイントと無線信号処理装置の構成]
図2は、第1の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。
アクセスポイント200は、RF部201、受信信号品質判定部202、受信信号推定部203、応答信号生成部204、送信制御部205および変調部206を備える。
【0022】
RF部201は、アンテナ210(図2においては図示せず)が電波を受信するのに応じて入力されたRF信号をベースバンド信号に変換して無線信号処理装置300に出力する。また、RF部201は、無線信号処理装置300からのベースバンド信号による送信信号を入力してRF信号に変換し、アンテナ210から送出させる。
【0023】
また、アクセスポイント200において、受信信号品質判定部202、受信信号推定部203、応答信号生成部204、送信制御部205および変調部206は、無線信号処理装置300に代わって、RTSの受信に応答したCTSの送信とデータの受信に応答したACKの送信を実行するための機能部となる。
受信信号品質判定部202は、RF部201から出力された受信信号としてのベースバンド信号を入力し、例えば受信信号の電界強度などに基づいて当該受信信号の品質を判定する。
【0024】
受信信号推定部203は、品質が良好(OK)であると判定された受信信号を入力し、この入力した受信信号の波形に基づいて、当該受信信号の種別を推定する。ここでの種別とは、受信信号が格納するフレームの種別をいう。この種別推定によって、例えば受信信号がRTS、データ、または、これら以外の種別のものであるのかが推定される。
また、受信信号推定部203は、上記種別とともに、自分宛であるかどうかを送信先アドレスが自アドレスと一致するかどうかで推定し、送信元アドレス(例えば、MAC(Media Access Control)アドレス)の推定も行う。一例として、IEEE802.11のフレームフォーマットの場合、上記受信信号(フレーム)の種別、送信元アドレスおよび送信先アドレスの情報は、フレームにおけるIEEE802.11ヘッダにおける所定領域に格納されている。
【0025】
ここで、受信信号推定部203が推定対象とする受信信号の種別は、例えば通信プロトコルに基づいて知であり、かつ、有限である。また、送信元アドレスについても、アクセスポイント200のセル内に存在する無線端末装置100に対応して既知であり、かつ、有限である。
そこで、受信信号推定部203は、上記のように推定を行うにあたり、受信が想定される種別、送信元アドレスおよび送信先アドレス(=自アドレス)ごとに対応する受信信号の波形データを記憶しておく。そして、受信信号推定部203は、入力される受信信号の波形と、自己が記憶している受信信号の波形データとのパターンマッチングにより、上記フレーム種別、送信元アドレスおよび送信先アドレスを推定する。
【0026】
応答信号生成部204は、受信信号推定部203により推定された受信信号の種別が、当該受信信号の受信に応答して応答信号を送信すべき種別である場合に、この応答信号(第1の応答信号)を生成する。本実施形態において、応答信号を送信すべき受信信号の種別としては、RTSおよびデータとなる。つまり、応答信号生成部204は、推定された受信信号の種別がRTSであり、自分宛である場合には、応答信号としてCTSを生成する。また、応答信号生成部204は、推定された受信信号の種別がデータであり、自分宛である場合には、応答信号としてACKを生成する。
【0027】
上記の応答信号はそれぞれフレームとして生成される。このフレームとしての応答信号の生成には、受信信号推定部203による推定結果が反映される。つまり、応答信号生成部204は、応答信号の生成にあたり、そのフレームのヘッダにおいて、受信信号推定部203により推定された送信元アドレスなどを格納する。
そのうえで、応答信号生成部204は、CTSのように、応答信号がNAV(Network Allocation Vector)値(第1のチャネル予約期間)を格納すべきものである場合には、無線信号処理装置300のNAV値生成部330により生成されたNAV値を格納して上記応答信号を生成する。
【0028】
送信制御部205は、上記応答信号生成部204により生成された応答信号を送信させるための制御を実行する。変調部206は、送信制御部205が入力した応答信号を所定の変調方式により変調してベースバンド信号に変換し、RF部201に出力する。RF部201は、このように入力されたベースバンド信号の応答信号をRF信号に変換してアンテナ210に出力する。これにより、応答信号はアンテナ210から電波として送出される。
【0029】
また、送信制御部205は、規定されたタイミングで送信すればよいので、CSMA/CAを完全に実装する必要はない。しかしながら、無線信号処理装置300における送信制御部323と同等のメディアアクセス制御を実行してもよい。この場合、送信制御部205が対応するメディアアクセス制御方式の1つとして、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)を想定することができる。
なお、アクセスポイント200における受信信号品質判定部202、受信信号推定部203、応答信号生成部204、送信制御部205および変調部206の各部は、ソフトウェアにより構成されてもよいし、ハードウェアにより構成されてもよい。
【0030】
図2における無線信号処理装置300は、機能部のうち、OSI参照モデルにおけるPHY(Physical)層に対応する機能部であるPHY部301と、MAC層に対応する機能部であるMAC部302とを抜き出して示している。
PHY部301は、送信信号の変調と受信信号の復調を行う。このために、PHY部301は、変調部311と復調部312を備える。変調部311は、MAC部302から入力される送信信号を変調してベースバンド信号に変換してアクセスポイント200に出力する。復調部312は、アクセスポイント200から入力されるベースバンド信号の受信信号を復調してMAC部302に出力する。
なお、変調部311と復調部312が対応する変調方式の一例としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を挙げることができる。また、PHY部301は、ハードウェアにより構成されてもよいし、ソフトウェアにより構成されてもよい。
【0031】
MAC部302は、データリンク層におけるMAC層に対応して主にメディアアクセス制御に関する処理を実行する部位である。この図に示すMAC部302は、暗号化部321、信号生成部322、送信制御部323、ヘッダ解析部324、復号化部325およびNAV値生成部330を備える。
暗号化部321には、例えば、有線NW側から送信すべきパケットのデータが入力される。暗号化部321は、入力したパケットを必要に応じて暗号化する。信号生成部322は、無線通信方式に対応してパケットをフレーム化した送信信号を生成する。
【0032】
送信制御部323は、送信信号を送信するためのメディアアクセス制御を実行する部位である。なお、送信制御部323が対応するメディアアクセス制御方式として1つにはCAMA/CAを想定することができる。送信制御部323は自己の送信制御にしたがって送信タイミングに至った送信信号をPHY部301の変調部311に対して出力する。
【0033】
ヘッダ解析部324は、復調部312により復調された後の受信信号、つまりフレームに格納されるヘッダを解析する。このヘッダの解析により、受信信号であるフレームの送信元アドレス、送信先アドレスおよびパケットの種別などが特定される。また、ヘッダ解析部324は、例えばフレームに付加されたFCS(Frame Check Sequence)を利用することにより、データの誤り検出および訂正を行う。
復号化部325は、フレームから抽出されたパケットの暗号化を解くための復号化を実行する。復号化されたパケットは、例えば、図示しない有線NWに対応する回路に対して出力される。
【0034】
NAV値生成部330は、ヘッダ解析部324が受信信号として入力したRTSのフレームのヘッダから抽出したNAV値(第2のチャネル予約期間)に基づいて、アクセスポイント200の応答信号生成部204が生成するCTSに格納すべきNAV値(第3のチャネル予約期間)を生成する。
NAV値は、無線通信におけるいわゆる隠れ端末問題を回避するために、ネットワーク上で送受信されるRTSとCTSの各フレーム(第2の応答信号)のヘッダにおける所定領域に格納される。そして、このNAV値は、送信予約期間としての時間長を示すものとして格納される。
【0035】
例えば、先に図1に示した2つの無線端末装置100、100は、それぞれアクセスポイント200と通信可能ではあるが、無線端末装置100、100同士は互いの電波が到達しないような位置関係にあるものとする。この場合、一方の無線端末装置100がアクセスポイント200と通信するために電波を送出しているとしても、他方の無線端末装置100はこのことを検知できない。そして、このときに他方の無線端末装置100がアクセスポイント200と通信しようとして電波を送出してしまうと、これら2つの無線端末装置100から送出された電波がアクセスポイントで干渉することとなって通信品質が劣化する。このような状況を隠れ端末問題という。
【0036】
そこで、上記隠れ端末問題を解消するために、アクセスポイント200のセル内では、以下のようにRTSとCTSの送受信が行われる。1つの無線端末装置100がフレームを送信しようとする際には、このフレームの送信に先立って、RTSを送信する。RTSは、アクセスポイント200に対してフレームの送信の許可を要求する送信要求であり、このRTSに格納されるNAV値は、フレームの送信にあたりチャンネルを占有する時間を指定するものとなる。
アクセスポイント200は、RTSを受信したときに他の無線端末装置100のフレームを受信していなければ、RTS送信元の無線端末装置100に対して応答としてCTSを送信する。このCTSにも、受信したNAV値に基づいて求めたNAV値が格納されている。
【0037】
他の無線端末装置100は、上記RTSを受信することはできないが、アクセスポイント200が送信したCTSは受信することができる。これにより、他の無線端末装置100は、RTSの送信元の無線端末装置100とアクセスポイント200が、信号の送受信を開始しようとしていることを認識できる。そこで、他の無線端末装置100は、受信したCTSが格納するNAV値が示す時間を経過するまでフレームの送信を待機する。これにより、2つの無線端末装置100が同時に電波を送出することがなくなり、隠れ端末問題が回避される。
【0038】
前述のように、アクセスポイント200における応答信号生成部204は、RTSの受信に応答してCTSを生成する。CTSに格納するNAV値は、受信されたRTSに格納されるNAV値に基づいて一意の値が設定される。
RTSに格納されるNAV値はデータサイズ等に依存し、通信毎に異なる値となる。このために、NAV値については、復調前のベースバンド信号の波形として、信号種別、送信元アドレスおよび送信アドレスなどのようにパターン化して記憶しておくことができない。
【0039】
そこで、本実施形態においては、無線信号処理装置300のMAC部302においてNAV値生成部330を備えることとしている。NAV値生成部330は、PHY部301の復調部312により復調された後の受信信号(フレーム)のヘッダから抽出したNAV値に基づいて、CTSに格納すべきNAV値を生成する。復調後のヘッダから抽出したNAV値は正確なものであり、したがって、これに基づいて生成されるCTS格納用のNAV値についても十分な正確さを保つことが可能になる。
【0040】
[NAV値生成部の構成]
図3は、第1の実施形態におけるNAV値生成部330の構成例を示す図である。この図に示すNAV値生成部330は、NAV値取得部331、NAV値記憶部332、NAV値算出部333を備える。
NAV値取得部331は、ヘッダ解析部324によりRTSとしての受信信号のフレームから抽出されたNAV値を取得する。また、NAV値取得部331は、NAV値の統計処理用に、このNAV値を取得する処理を、一定時間または予め定めた所定数が取得されるまで実行する。
【0041】
NAV値記憶部332は、NAV値取得部331により取得された一定期間内または一定数のNAV値を記憶する。
NAV値算出部333は、NAV値記憶部332に記憶されたNAV値を統計することによりCTSに格納すべきNAV値を算出する。NAV値算出部333がNAV値を算出するための統計手法としては特に限定されないが、例えばNAV値記憶部332に記憶されたNAV値の平均値をCTSに格納すべきNAV値とすることが考えられる。また、NAV値記憶部332に記憶されたNAV値のうちの最大値をCTSに格納すべきNAV値とすることが考えられる。
【0042】
また、NAV値生成部330は、例えば所定のタイミングで上記NAV値算出部333が算出したNAV値を固定的に保持することとしてもよい。また、リアルタイムにNAV値を算出して逐次更新するようにしてもよい。NAV値を逐次更新する場合、NAV値取得部331は、例えばスライディングウィンドウなどに対応した所定期間ごとにNAV値を取得してNAV値記憶部332に記憶させる。そして、NAV値生成部330は、所定期間ごとに対応してNAV値記憶部332に記憶されたNAV値からCTSに格納すべきNAV値を算出し、この算出したNAV値により前の所定期間に対応して求めたNAV値を更新する。
【0043】
[動作タイミング例]
図4は、第1の実施形態に対応する無線端末装置100とアクセスポイント200と無線信号処理装置300の動作タイミングの一例を示す図である。ここで、1つの無線端末装置100がデータ送信に先立って、時刻t1からt2の期間においてアクセスポイント200にRTSを送信したとする。
なお、図4においては、このRTSに格納されるNAV値が示す期間を、時刻t2からt9までのRTS対応NAV期間として示している。
【0044】
アクセスポイント200は、上記のように時刻t1からt2において送信されたRTSを、無線端末装置100との間の伝搬時間に応じて遅延した時刻t1−1からt2−1のタイミングで受信する。このRTSの受信が終了した時刻t2−1から所定時間(例えばSIFS(Short Inter Frame Space)を経過した時刻t3からt4の期間において、アクセスポイント200は、CTSを送信する。
上記CTSは、応答信号生成部204により生成されたものである。このCTSが格納するNAV値が示す期間の例として、図4においては、時刻t4からt10までのCTS対応NAV期間として示している。
【0045】
無線端末装置100は、上記のように送信されたCTSを、アクセスポイント200との間の伝搬時間に応じて遅延した時刻t3−1からt4−1のタイミングで受信する。これに応じて、無線端末装置100は、CTSの受信が終了した時刻t4−1から所定時間(例えばDISFとこれに続くバックオフ期間)を経過した時刻t5から時刻t6の期間においてデータを送信する。
【0046】
上記のように送信されたデータは、アクセスポイント200において時刻t5−1からt6−1の期間において受信される。アクセスポイント200は、データの受信が終了した時刻t6−1から一定時間(例えばSIFS)を経過した時刻t7からt8の期間においてACKを送信する。なお、このACKも、応答信号生成部204により生成されたものである。このACKは、時刻t7から伝搬時間を経過した時刻t7−1からt8−1において無線端末装置100により受信される。 なお、全ての実施形態に共通する事項であるが、無線信号処理装置300がデータ(RTS)を正常に受信した後に生成・送信すべきAck(CTS)は、既にアクセスポイント200によって無線端末装置100に送信されているため、無線信号処理装置300はAck(CTS)を生成・送信しない。
【0047】
本実施形態においてアクセスポイント200と無線信号処理装置300は物理的に異なる装置であり光ファイバ400により接続されている。これに応じて、アクセスポイント200と無線信号処理装置300の間の伝送遅延(すなわち、RF部201とPHY部301の間の伝送遅延)が大きいことを想定している。このようなシステム構成において、無線信号処理装置300のMAC部302においてCTSやACKの送信を実行させることとした場合には、上記アクセスポイント200と無線信号処理装置300の間の伝送遅延により、例えばSIFSなどの短時間の制約条件を満足する適切なタイミングでCTSやACKを送信できない可能性がある。
【0048】
そこで、本実施形態のようにCTSやACKをアクセスポイント200により生成して送信するように構成すれば、上記のRF部201とPHY部301の間の伝送遅延は関係なくなる。これにより、例えばSIFSなどの短時間の制約条件を満たす適切なタイミングでCTSやACKを送信できることになる。
そのうえで、CTSを送信する際、応答信号生成部204は、NAV値生成部330により生成したNAV値を格納してCTSを生成することとしている。前述のように、NAV値生成部330により生成されるNAV値は、受信されたRTSが格納するNAV値を統計化したものであるためにその精度は高い。
【0049】
仮に、上記のように受信したRTSに基づくことなく適当にNAV値を設定することとした場合、上記のように高い精度は得られない。このために、NAV値が短すぎたり長すぎたりしてしまう可能性が高くなる。NAV値が短ければ他の無線端末装置100の待機時間も短くなるために送信電波が干渉する可能性が高くなり、スループットの低下を招く原因となる。また、NAV値が長ければ他の無線端末装置100の待機時間も無駄に長くなり、これによってもセルにおけるスループットの低下を招くことになる。
【0050】
これに対して、本実施形態において生成されるNAV値は上記のように高い精度を有している。これにより、本実施形態においては、適切なNAV期間が設定されることとなり、スループットの低下を有効に抑制することが可能になる。
また、元来ハードウェアで実施していた処理をソフトウェアで実施する構成に変更すると、処理遅延が増大してしまうことが一般的である。具体的には、PHY層及びMAC層における処理時間が増大してしまうことが一般的である。しかしながら、本実施形態によれば、このようなソフトウェア化に伴うスループットの低下も有効に抑制することが可能となる。
また、本実施形態におけるRTSまたはデータの受信に応答した応答信号(CTS、ACK)の送信は、アクセスポイント200において行われる。つまり、RF部201のみを介して、RTSまたはデータの受信に応答した応答信号の送信が行われる。これにより、本実施形態では応答信号の送信にあたり、アクセスポイント200のRF部201と無線信号処理装置300のPHY部301との伝送遅延を考慮する必要がない。このことは、RF部201とPHY部301を専用のハードウェアにより構成して高速化を図る必要がなくなることを意味している。これにより、本実施形態においては、RF部201とPHY部301について、汎用のハードウェアを採用することができ、例えばコストアップを抑えることができる。
【0051】
[処理手順例]
図5は、第1の実施形態におけるアクセスポイント200が実行する処理手順例を示す図である。この図に示す処理は、図2に示した受信信号品質判定部202、受信信号推定部203、応答信号生成部204、送信制御部205の何れかが適宜実行する。
【0052】
受信信号品質判定部202は、信号が受信されるのを待機している(ステップS101−NO)。そして、受信信号がRF部201より出力されたことにより信号が受信されたことを判定すると(ステップS101−YES)、受信信号品質判定部202は、前述のように、例えば受信電界強度などに基づいて受信信号の品質を判定する(ステップS102)。
【0053】
受信信号品質判定部202は、上記ステップS102により判定した受信信号の品質が良好(OK)であるか否かについて判定する(ステップS103)。ここで、品質は良好ではないと判定した場合(ステップS103−NO)、受信信号品質判定部202は、受信信号を破棄して(ステップS104)、ステップS101に戻る。
これに対して、品質は良好であると判定した場合(ステップS103−YES)、受信信号推定部203は、前述のパターンマッチングにより自分宛であるか、受信信号の種別、送信元アドレスなどを推定する(ステップS105)。
【0054】
次に、応答信号生成部204は、上記ステップS105により推定された信号の種別がRTSであるか否かについて判定する(ステップS106)。RTSであると判定した場合(ステップS106−YES)、応答信号生成部204は、無線信号処理装置300のNAV値生成部330からCTS格納用のNAV値を入力する(ステップS107)。そして、この入力したNAV値をフレームヘッダに格納してCTSを生成する(ステップS108)。送信制御部205は、上記のように生成されたCTSを送信させるための制御を実行し(ステップS109)、ステップS101に戻る。
【0055】
また、推定した信号の種別がRTSではないと判定した場合(ステップS106−NO)、推定された信号の種別はデータであることになる。この場合、応答信号生成部204は、データの受信完了に応じたACKの送信タイミングとなるのを待機する(ステップS110−NO)。そして、ACKの送信タイミングに至ると(ステップS110−YES)、応答信号生成部204はACKを生成する(ステップS111)。送信制御部205は、生成されたACKを送信させるための制御を実行し(ステップS112)、ステップS101に戻る。
【0056】
図6は、NAV値生成部330が実行する処理手順例を示す図である。この図に示す処理は、NAV値取得部331とNAV値算出部333のいずれかが適宜実行するものとしてみることができる。なお、この図の説明にあたり、NAV値生成部330は、アクセスポイント200と通信が確立されている無線端末装置100ごとに対応してNAV値を算出するものとする。
【0057】
NAV値取得部331は、RTSの受信に応じてヘッダ解析部324によりフレームのヘッダから抽出されたNAV値を取得する(ステップS201)。次に、NAV値取得部331は、この取得したNAV値を、RTSの送信元の無線端末装置100のアドレスに対応付けてNAV値記憶部332に記憶させる(ステップS202)。
【0058】
NAV値取得部331は、上記NAV値の取得と記憶を、一定期間が経過するまで、RTSが受信されるごとに実行する。そして、一定期間が経過するのに応じて(ステップS203−YES)、NAV値算出部333は、無線端末装置100のアドレスごとに、NAV値記憶部332に記憶されているNAV値の統計値を算出する(ステップS204)。具体的に、この統計値は、前述のように平均値または最大値などとなる。
そして、NAV値算出部333は、上記のように求めた統計値をCTSに格納すべきNAV値として、アクセスポイント200の応答信号生成部204に対して出力する(ステップS205)。
【0059】
<第2の実施形態>
[アクセスポイントと無線信号処理装置の構成]
図7は、第2の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。
第2の実施形態の無線信号処理装置300においては、自己CTS生成部340が備えられる。自己CTS生成部340は、RTSの受信に応答して自己CTSを生成する。この自己CTSは、無線LAN規格におけるIEEE802.11gで規定されるCTS-to-selfに相当する。
【0060】
図8は、自己CTS生成部340の構成例を示す図である。この図に示す自己CTS生成部340は、NAV値取得部341、更新NAV値算出部342と自己CTS信号生成部343を備える。
【0061】
NAV値取得部341は、受信されたRTSのヘッダからヘッダ解析部324により抽出されたNAV値を取得する。更新NAV値算出部342は、NAV値取得部341が取得したNAV値から更新NAV値を算出する。この更新NAV値は、一例として以下のように算出される。つまり、MAC部302における今回のRTSの入力タイミングから自己CTSを送信するまでの時間(自己CTS送信準備期間)に対応する値をNAV値取得部341が取得したNAV値から減算することにより算出される。このように求められる更新NAV値は、RTSのフレームのヘッダから抽出したNAV値と、既知の自己CTS送信準備期間とに基づくものであるために正確なものとなっている。
【0062】
自己CTS信号生成部343は、上記のように算出された更新NAV値と、受信したRTSのフレームのヘッダからヘッダ解析部324が抽出した送信元アドレスや送信先アドレスを入力する。そして、これらの入力した情報をヘッダに含めるようにして自己CTSとしてのフレームを生成する。
上記のように自己CTS信号生成部343が生成した自己CTSは、送信制御部323が入力する。送信制御部323は、自己CTSがしかるべきタイミングで変調部311からRF部201を介してアクセスポイント200から送信されるように制御する。
【0063】
本実施形態においてはCTSの送信後のタイミングにおいて自己CTSをアクセスポイント200から送信させるが、このときに、アクセスポイント200が無線端末装置100から送信されてくるデータを受信中である可能性がある。このままでは、自己CTSを送信するための電波の影響でデータを正常に受信できない可能性がある。
【0064】
そこで、第2の実施形態のアクセスポイント200には、図7に示すように干渉抑制部207を備える。干渉抑制部207は、RF部201とアンテナ(図示せず)の間に挿入される。干渉抑制部207は、RF部201から出力される送信用RF信号を入力してキャンセル信号を生成し、RF部201への入力RF信号に対して印加する。これにより、RF部201への入力信号に重畳している送信信号成分が除去される。したがって、アクセスポイント200において自己CTSの送信とデータの受信が同時に行われているときには、RF部201への入力信号から自己CTSの信号成分が除去されることとなり、データを正常に受信することが可能になる。
【0065】
[動作タイミング例]
図9は、第2の実施形態に対応する無線端末装置100とアクセスポイント200と無線信号処理装置300の動作タイミングの一例を示す図である。ここで、1つの無線端末装置100がデータ送信に先立って、時刻t1からt2の期間においてアクセスポイント200にRTSを送信したとする。
【0066】
アクセスポイント200は、時刻t1から無線端末装置100との伝搬時間に応じて遅延した時刻t1−1からt2−1において上記RTSを受信する。そこで、アクセスポイント200は、RTSの受信が完了した時刻t2−1から一定時間を経過した時刻t3からt4の期間においてCTSを送信する。このCTSは、第1の実施形態と同様に、応答信号生成部204が生成したものである。また、このCTSが格納するNAV値もNAV値生成部330が第1の実施形態と同様に生成すればよい。
【0067】
ただし、第2の実施形態におけるCTSのNAV値は、自己CTSにより正確なNAV値が設定されるまでの暫定的なものであるため、自己CTSが送信されるまでの時間を超えるように設定されればよい。一例として、自己CTS生成部340が自己CTSを生成するために要する処理時間と、アクセスポイント200と無線信号処理装置300の間(RF部201とPHY部301の間)の往復の伝送時間を加算した時間を設定することが考えられる。
【0068】
無線端末装置100は、上記のように送信されたCTSを、アクセスポイント200との間の伝搬時間に応じて遅延した時刻t3−1からt4−1のタイミングで受信する。これに応じて、無線端末装置100は、CTSの受信が終了した時刻t4−1から所定時間を経過した時刻t5から時刻t6の期間においてデータを送信する。
【0069】
また、RTSは、アクセスポイント200にて時刻t1−1からt2−1の期間において受信されたRTSは、RF部201とPHY部301との間の伝送時間に応じて遅延した時刻t1−2からt2−2の期間において、無線信号処理装置300に入力される。
このように入力されたRTSは、復調部312からヘッダ解析部324に出力される。ヘッダ解析部324は、RTSが受信されたことを自己CTS生成部340に通知する。
【0070】
自己CTS生成部340は、上記の通知に応じて自己CTSを生成する。そして、生成された自己CTSは、送信制御部323により、時刻t5−3からt5−4の期間においてアクセスポイント200に出力される。
このように出力された自己CTSは、RF部201とPHY部301との間の伝送時間に応じて遅延した時刻t5−5からt5−6の期間においてアクセスポイント200に入力され、さらにRF部201から送信される。
【0071】
上記のようにアクセスポイント200から自己CTSが送信されることにより、時刻t3からt4の期間において送信されたCTSにより設定されたNAV期間は無効となる。そして、自己CTSに格納される更新NAV値により、時刻t5−6以降における更新NAV期間が再設定される。このように更新NAV値により再設定される更新NAV期間は、前述のように正確なものとなっている。したがって、自己CTSが格納する更新NAV値により設定された更新NAV期間の終了タイミングは、RTSが格納していたNAV値により設定されたRTS対応NAV期間の終了タイミングである時刻t9と一致することになる。
【0072】
このように、第2の実施形態においては、まず、アクセスポイント200によりCTSを送信させた後に、無線信号処理装置300において正確な更新NAV値を格納する自己CTSを生成して送信させることとしている。これにより、RTSが格納していたNAV値に対して正確に対応するNAV値を他の無線端末装置100に通知することが可能になる。
【0073】
また、時刻t6−1におけるデータの受信完了に応じて、アクセスポイント200は、時刻t7からt8のタイミングでACKを送信する。この図では、時刻t7から伝送時間に応じて遅延した時刻t7−1からt9の期間において無線端末装置100がACKを受信している。
【0074】
なお、図9には反映されていないが、上記の通信時においては干渉抑制部207が動作している。これにより、時刻t5−5からt5−6の期間のようにアクセスポイント200において自己CTSの送信とデータの受信が同時に行われる状態となっても、互いの干渉を排除して正常にデータを受信することが可能である。
【0075】
[処理手順例]
図10は、第2の実施形態におけるアクセスポイント200が実行する処理手順例を示す図である。図10において、ステップS101からS109と、ステップS110からS112の処理は、図5のステップS101からS109と、ステップS110からS112と同様となる。
【0076】
そのうえで、アクセスポイント200のRF部201は、ステップS109によりCTSを送信した後、自己CTSが無線信号処理装置300から入力されるのを待機する(ステップS109A)。そして、自己CTSが入力されると、この自己CTSを送信する(ステップS109B)。
【0077】
図11は、第2の実施形態の無線信号処理装置300において自己CTS生成部340と送信制御部323が実行する処理手順例を示す図である。この図に示す処理は、図8に示したNAV値取得部341、更新NAV値算出部342および自己CTS信号生成部343のいずれかが適宜実行するものとしてみることができる。
【0078】
まず、NAV値取得部341は、RTSの入力がヘッダ解析部324から通知されるのを待機している(ステップS301−NO)。NAV値取得部341は、RTSの入力が通知されるのに応じて(ステップS301−YES)、入力されたRTSが格納していたNAV値をヘッダ解析部324から取得する(ステップS302)。
次に、更新NAV値算出部342は、例えば前述のように、今回入力したRTSが格納していたNAV値から自己CTS送信準備期間を減算することにより更新NAV値を算出する(ステップS303)。
【0079】
次に、自己CTS信号生成部343は、上記のように算出された更新NAV値と、ヘッダ解析部324から取得した送信元アドレスと送信先アドレスなどをヘッダに格納してフレームを生成する(ステップS304)。送信制御部323は、上記のように生成された自己CTSのフレームがアクセスポイント200から送信されるように制御する(ステップS305)。
【0080】
<第3の実施形態>
図12は、第3の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。なお、この図において図7と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。アクセスポイント200は、図7と同様の構成であることから、ここでの説明は省略する。
第3の実施形態の無線信号処理装置300は、送信可否判定部350を備える。送信可否判定部350は、自己CTSの送信可否を判定する。送信可否判定部350による送信可否判定のための処理については後述する。
【0081】
第3の実施形態における自己CTS生成部340が自己CTSを生成するための処理については第2の実施形態と同様である。ただし、第3の実施形態における自己CTS生成部340は、送信可否判定部350の判定結果に応じて自己CTSを生成する動作の可否が設定される。つまり、送信可否判定部350が自己CTSの送信を許可すべきと判定した場合、自己CTS生成部340は、RTSの受信に応じて自己CTSを生成する動作を実行する。これにより、アクセスポイント200からはCTSと、この後の自己CTSの送信が実行される。つまり、第2の実施形態と同様の動作が実行される。
【0082】
これに対して、送信可否判定部350が自己CTSの送信を禁止すべきであると判定した場合、自己CTS生成部340は、自己CTSを生成する動作を停止する。これにより、アクセスポイント200はCTSを送信するが、自己CTSは送信しないことになる。つまり、第1の実施形態と同様の動作となる。
【0083】
[自己CTSを送信すべきでない場合の動作タイミング]
図13は、自己CTSを送信しない場合の動作タイミング例について示す図である。時刻t1からt2の期間において無線端末装置100が送信したRTSは、無線信号処理装置300において時刻t1−2からt2−2の期間にて受信される。時刻t1−2とt2−2は、時刻t1とt2に対して、アクセスポイント200までの伝搬時間と、アクセスポイント200から無線信号処理装置300までの伝達時間に応じて遅延した時刻となる。
【0084】
無線信号処理装置300における自己CTS生成部340は、時刻t2−2においてRTSの受信が完了するのに応じて自己CTSを生成し、送信制御部323が送信を行う。図においては、RTSの受信が完了してから自己CTSの送信が開始されるまでに要する時間(時刻t2−2からt7)を、自己CTS送信準備期間Tbとして示している。しかし、例えば通信システムにおける転送速度、トラフィックの状況、また、自己CTS生成部340の処理機能などの条件によっては、上記自己CTS送信準備期間Tbが長くなる場合がある。
【0085】
具体的には以下の通りである。図13の時刻t7からt8の期間において無線信号処理装置300が出力した自己CTSは、アクセスポイント200により時刻t7−1からr8−1の期間において送信されている。しかし、アクセスポイント200におけるデータの受信は、自己CTSの送信が完了する時刻t8−1より前の時刻t6−1において完了している。このようにデータの受信が完了するまでに自己CTSを送信できないようなときには、自己CTSを送信せずにACKを送信する必要がある。
【0086】
そこで、第3の実施形態における送信可否判定部350は、アクセスポイント200におけるデータの受信が完了するまでに自己CTSを送信できるか否かに応じて、以下のように自己CTSを送信可否について判定する。
【0087】
[処理手順例]
図14は、送信可否判定部350が実行する処理手順例を示す図である。送信可否判定部350は、NAV期間Taを算出する(ステップS401)。このために、送信可否判定部350は、ヘッダ解析部324によりRTSのフレームのヘッダから抽出されたNAV値を取得し、このNAV値からNAV期間Taとしての時間を求める。
【0088】
上記のように求められるNAV期間Taは、図13に示すように、無線信号処理装置300においてRTSの受信が完了した時刻t2−2からt10までの期間に相当する。このNAV期間Taは、受信されたRTSに格納されたNAV値に対応した時間長による期間となる。
【0089】
次に、送信可否判定部350は、送信可否判定に用いる自己CTS送信準備期間Tbを算出する(ステップS402)。自己CTS送信準備期間Tbが処理負荷などに応じて変化することを前提とした場合には、例えば、過去の一定期間における自己CTS送信準備期間Tbの実測値の平均や正規分布などを用いて算出することにより求めることができる。
次に、送信可否判定部350は、上記ステップS401にて求めたNAV期間TaとステップS402にて求めた自己CTS送信準備期間Tbと予め定められた閾値thについて、
Ta−Tb≧th
が成立するか否かについて判定する(ステップS403)。
【0090】
上式が成立する場合には、アクセスポイント200においてデータの受信が完了するまでに確実に自己CTSを送信できることを意味する。この場合、送信可否判定部350は、自己CTSの送信を許可する(ステップS404)。これに応じて、自己CTS生成部340は、自己CTSを生成し、送信制御部323は自己CTSを送信する制御を実行する。
【0091】
これに対して、上式が成立しない場合には、アクセスポイント200においてデータの受信が完了するまでに自己CTSを送信できない可能性があることを意味する。この場合、送信可否判定部350は、自己CTSの送信を禁止する(ステップS405)。
【0092】
なお、上記図14に示した処理は、処理負荷に応じて自己CTS送信準備期間Tbが変化することを前提として、RTSの受信ごとに実行することとしている。しかし、例えば処理環境や処理状況に対して自己CTS送信準備期間Tbが一定となる条件の場合には、初期設定時において図14に示す判定処理を実行することとしてもよい。この場合の初期設定後の動作としては、判定結果に応じて、RTSの受信ごとに自己CTSを送信する動作または自己CTSを送信しない動作のいずれか一方が定常的に行われることになる。
【0093】
また、図2、図7および図12などにおける機能部を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより通信に関連する処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0094】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0095】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0096】
100…無線端末装置, 200…アクセスポイント, 201…RF部, 202…受信信号品質判定部(判定部), 203…受信信号推定部(判定部), 204…応答信号生成部(判定部、応答信号送信部), 205…送信制御部(応答信号送信部), 206…変調部, 207…干渉抑制部, 210…アンテナ, 300…無線信号処理装置, 301…PHY部, 302…MAC部, 311…変調部, 312…復調部, 321…暗号化部, 322…信号生成部, 323…送信制御部, 324…ヘッダ解析部, 325…復号化部, 330…NAV値生成部(算出部), 331…NAV値取得部, 332…NAV値記憶部, 333…NAV値算出部, 340…自己CTS生成部, 341…NAV値取得部, 342…更新NAV値算出部, 343…自己CTS信号生成部, 350…送信可否判定部, 500…有線端末装置, 600…無線端末装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)に対応するIEEE802.11などの通信プロトコルでは、例えばIFS(Inter Frame Space)などのフレーム送信に関する時間が規定されている。このような時間既定は、例えばμsecオーダーという短時間のものである。
【0003】
また、無線通信の機能を汎用のハードウェア上で動作するソフトウェアにより実現するソフトウェア無線の技術が知られている。このようなソフトウェア無線によって上記のような時間規定の条件を満足したタイミングでフレームを送信するには、RF(Radio Frequency)とPHY(Physical)層の間の伝送遅延時間を短縮する必要がある。また、PHY層とMAC(Media Access Control)層の間の処理遅延時間を短縮する必要がある。
【0004】
そこで、以下の構成を採ることが知られている。つまり、RFとPHY層に対応する回路を専用のハードウェアとして高速伝送を実現することにより、RFとPHY層の間の短縮を図ろうというものである。OSを無線通信に応じてカスタマイズして汎用CPUのプロセス間通信と割り込み処理による遅延を大幅に削減することにより、PHY層とMAC層の間の処理遅延時間を短縮する事ができる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kun Tan, 他 “Sora: High Performance Software Radio Using General Purpose Multi-core Processors”、[online]、[平成23年11月10日検索]、インターネット<http://www.usenix.org/events/nsdi09/tech/full_papers/tan/tan.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のソフトウェア無線などを応用した技術としてフレキシブルワイヤレスシステムが開発されている。フレキシブルワイヤレスシステムは、受信した無線周波数信号をソフトウェアで処理する。これにより、ソフトウェアの切り替えによって多様な無線通信方式に対応することができる。
【0007】
しかし、上記のようなフレキシブルワイヤレスシステムでは、RFに対応する回路とPHY層に対応する回路が、物理的に離れて設置される装置毎に実装される。この場合、RFの回路にて電波を受信して得られた信号は、比較的長距離の伝送路を経由してPHY層の回路に伝送される。そのため、伝送路遅延が増大してしまい、無視できない値となってしまう。このため、非特許文献1のように専用ハードウェアで構成したとしても、RFとPHY層との間で生じる伝送遅延時間の短縮を図ることは難しい。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、RFに対応する回路とPHY層に対応する回路との間の伝送遅延によるスループットの低下を軽減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、無線端末との間で通信を行う基地局装置であって、予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定部と、前記第1の応答信号を送信すると判定された場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信部と、を備える基地局装置である。
【0010】
本発明の一態様は、無線端末及び前記無線端末から受信した信号の信号処理を行う信号処理装置のそれぞれと接続され、かつ、前記無線端末から受信した信号を前記信号処理装置へ出力する基地局装置であって、予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定部と、前記第1の応答信号を送信すると判定された場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信部と、を備える基地局装置である。
【0011】
本発明の一態様は、上述した基地局装置であって、前記受信した信号を復調して取得した第2のチャネル予約期間に基づいて第3のチャネル予約期間を算出する算出部と、前記第3のチャネル予約期間が設定された第2の応答信号を、前記第1の応答信号の後に送信する第2応答信号送信部と、をさらに備える。
【0012】
本発明の一態様は、無線端末と基地局装置との間で無線通信を行うための通信方法であって、予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定ステップと、前記第1の応答信号を送信すると判定されたた場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信ステップと、を有する通信方法である。
【0013】
本発明の一態様は、上述した通信方法であって、前記基地局装置が、前記受信した信号を復調して取得した第2のチャネル予約期間に基づいて第3のチャネル予約期間を算出する算出ステップと、前記第3のチャネル予約期間が設定された第2の応答信号を、前記第1の応答信号の後に送信する第2応答信号送信ステップと、をさらに有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、RFに対応する回路とPHY層に対応する回路との間の伝送遅延によるスループットの低下を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の通信システムの構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。
【図3】第1の実施形態におけるNAV値生成部330の構成例を示す図である。
【図4】第1の実施形態に対応する無線端末装置100とアクセスポイント200と無線信号処理装置300の動作タイミングの一例を示す図である。
【図5】第1の実施形態におけるアクセスポイント200が実行する処理手順例を示す図である。
【図6】NAV値生成部330が実行する処理手順例を示す図である。
【図7】第2の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。
【図8】自己CTS生成部340の構成例を示す図である。
【図9】第2の実施形態に対応する無線端末装置100とアクセスポイント200と無線信号処理装置300の動作タイミングの一例を示す図である。
【図10】第2の実施形態におけるアクセスポイント200が実行する処理手順例を示す図である。
【図11】第2の実施形態の無線信号処理装置300において自己CTS生成部340と送信制御部323が実行する処理手順例を示す図である。
【図12】第3の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。
【図13】自己CTSを送信しない場合の動作タイミング例について示す図である。
【図14】送信可否判定部350が実行する処理手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
[通信システムの構成]
図1は、本実施形態の通信システムの構成例を示す図である。この図に示す通信システムは、複数の無線端末装置100と、アクセスポイント200と、無線信号処理装置300と、有線端末装置500と、無線端末装置600とを備える。また、アクセスポイント200と無線信号処理装置300と有線端末装置500と無線端末装置600は、光ファイバ400により相互通信可能に接続されている。なお、無線端末装置600と光ファイバ400との間の接続は、たとえばアクセスポイント200と同様の無線基地局を介してなされる。
無線端末装置100は、アクセスポイント200のセル内に設置されており、アクセスポイント200を経由して他の無線端末装置100、有線端末装置500及び無線端末装置600と無線通信を行う。有線端末装置500は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やサーバ装置などの情報処理装置であり、有線通信を行う装置である。無線端末装置600は、例えばノートパソコンやPDA、スマートフォンなどの情報処理装置に付随、内蔵され、無線通信を行う装置である。
【0017】
アクセスポイント200は、1つの無線端末装置100から送信された信号を受信して、宛先である装置(他の無線端末装置100、有線端末装置500、無線端末装置600)に送信する。このとき、宛先である装置が有線端末装置500又は無線端末装置600である場合には、アクセスポイント200は受信した信号を光ファイバ400のネットワーク内の無線信号処理装置300を介して有線端末装置500宛てに転送する。また、アクセスポイント200は、光ファイバ400のネットワーク内の無線信号処理装置300を介して有線端末装置500又は無線端末装置600から無線端末装置100宛ての信号を受信すると、受信した信号を宛先である無線端末装置100に送信する。つまり、無線端末装置100を送信元又は送信先とする通信を中継する。なお、以下の説明では上記通信のうち無線端末装置100同士の通信を例にとって説明する。
また、本実施形態におけるアクセスポイント200は、アンテナ210において送受信されるRF(Radio Frequency)信号(無線周波数信号)を対象に処理を実行するRF部を備える。これに対応して、無線信号処理装置300は、RFより上位の通信プロトコルに対応する機能部を備える。つまり、アクセスポイント200は、電波を受信して得られるRF信号をベースバンド信号に変換して無線信号処理装置300に出力する。また、無線信号処理装置300から出力されたベースバンド信号による送信信号を入力してRF信号に変換してアンテナ210から送出させる。
【0018】
そのうえで、アクセスポイント200は、応答信号を返送すべき種別の信号(フレーム)を受信した場合には、無線信号処理装置300に代わり、応答信号としての無線周波数信号を生成してアンテナ210より送出させる。
本実施形態において、上記アクセスポイント200が送信する応答信号としては、RTS(Request To Send)に対応するCTS(Clear To Send)と、データに対応するACK(Acknowledge)であることとする。
【0019】
無線信号処理装置300は、アクセスポイント200から入力されたベースバンド信号について復調などの処理を行ってフレームからデータを抽出し、このデータの種別や内容に応じた所定の処理を実行する。また、データ送信に際しては、データを格納するフレームを生成して変調を施すことにより送信用のベースバンド信号を生成し、アクセスポイント200に送信する。
【0020】
このように、本実施形態においては、アクセスポイント200においてRF信号段階での送受信が行われ、無線信号処理装置300がRFより上位の各階層(例えばOSI参照モデルの階層)に対応する処理を実行するようにされている。つまり、本実施形態のアクセスポイント200と無線信号処理装置300はフレキシブルワイヤレスシステムに対応した構成を有している。なお、アクセスポイント200と無線信号処理装置300との間の接続は、例えば他のデータインターフェースなどをはじめ、光ファイバ400以外の通信方式によるものが採用されてよい。
【0021】
[アクセスポイントと無線信号処理装置の構成]
図2は、第1の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。
アクセスポイント200は、RF部201、受信信号品質判定部202、受信信号推定部203、応答信号生成部204、送信制御部205および変調部206を備える。
【0022】
RF部201は、アンテナ210(図2においては図示せず)が電波を受信するのに応じて入力されたRF信号をベースバンド信号に変換して無線信号処理装置300に出力する。また、RF部201は、無線信号処理装置300からのベースバンド信号による送信信号を入力してRF信号に変換し、アンテナ210から送出させる。
【0023】
また、アクセスポイント200において、受信信号品質判定部202、受信信号推定部203、応答信号生成部204、送信制御部205および変調部206は、無線信号処理装置300に代わって、RTSの受信に応答したCTSの送信とデータの受信に応答したACKの送信を実行するための機能部となる。
受信信号品質判定部202は、RF部201から出力された受信信号としてのベースバンド信号を入力し、例えば受信信号の電界強度などに基づいて当該受信信号の品質を判定する。
【0024】
受信信号推定部203は、品質が良好(OK)であると判定された受信信号を入力し、この入力した受信信号の波形に基づいて、当該受信信号の種別を推定する。ここでの種別とは、受信信号が格納するフレームの種別をいう。この種別推定によって、例えば受信信号がRTS、データ、または、これら以外の種別のものであるのかが推定される。
また、受信信号推定部203は、上記種別とともに、自分宛であるかどうかを送信先アドレスが自アドレスと一致するかどうかで推定し、送信元アドレス(例えば、MAC(Media Access Control)アドレス)の推定も行う。一例として、IEEE802.11のフレームフォーマットの場合、上記受信信号(フレーム)の種別、送信元アドレスおよび送信先アドレスの情報は、フレームにおけるIEEE802.11ヘッダにおける所定領域に格納されている。
【0025】
ここで、受信信号推定部203が推定対象とする受信信号の種別は、例えば通信プロトコルに基づいて知であり、かつ、有限である。また、送信元アドレスについても、アクセスポイント200のセル内に存在する無線端末装置100に対応して既知であり、かつ、有限である。
そこで、受信信号推定部203は、上記のように推定を行うにあたり、受信が想定される種別、送信元アドレスおよび送信先アドレス(=自アドレス)ごとに対応する受信信号の波形データを記憶しておく。そして、受信信号推定部203は、入力される受信信号の波形と、自己が記憶している受信信号の波形データとのパターンマッチングにより、上記フレーム種別、送信元アドレスおよび送信先アドレスを推定する。
【0026】
応答信号生成部204は、受信信号推定部203により推定された受信信号の種別が、当該受信信号の受信に応答して応答信号を送信すべき種別である場合に、この応答信号(第1の応答信号)を生成する。本実施形態において、応答信号を送信すべき受信信号の種別としては、RTSおよびデータとなる。つまり、応答信号生成部204は、推定された受信信号の種別がRTSであり、自分宛である場合には、応答信号としてCTSを生成する。また、応答信号生成部204は、推定された受信信号の種別がデータであり、自分宛である場合には、応答信号としてACKを生成する。
【0027】
上記の応答信号はそれぞれフレームとして生成される。このフレームとしての応答信号の生成には、受信信号推定部203による推定結果が反映される。つまり、応答信号生成部204は、応答信号の生成にあたり、そのフレームのヘッダにおいて、受信信号推定部203により推定された送信元アドレスなどを格納する。
そのうえで、応答信号生成部204は、CTSのように、応答信号がNAV(Network Allocation Vector)値(第1のチャネル予約期間)を格納すべきものである場合には、無線信号処理装置300のNAV値生成部330により生成されたNAV値を格納して上記応答信号を生成する。
【0028】
送信制御部205は、上記応答信号生成部204により生成された応答信号を送信させるための制御を実行する。変調部206は、送信制御部205が入力した応答信号を所定の変調方式により変調してベースバンド信号に変換し、RF部201に出力する。RF部201は、このように入力されたベースバンド信号の応答信号をRF信号に変換してアンテナ210に出力する。これにより、応答信号はアンテナ210から電波として送出される。
【0029】
また、送信制御部205は、規定されたタイミングで送信すればよいので、CSMA/CAを完全に実装する必要はない。しかしながら、無線信号処理装置300における送信制御部323と同等のメディアアクセス制御を実行してもよい。この場合、送信制御部205が対応するメディアアクセス制御方式の1つとして、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)を想定することができる。
なお、アクセスポイント200における受信信号品質判定部202、受信信号推定部203、応答信号生成部204、送信制御部205および変調部206の各部は、ソフトウェアにより構成されてもよいし、ハードウェアにより構成されてもよい。
【0030】
図2における無線信号処理装置300は、機能部のうち、OSI参照モデルにおけるPHY(Physical)層に対応する機能部であるPHY部301と、MAC層に対応する機能部であるMAC部302とを抜き出して示している。
PHY部301は、送信信号の変調と受信信号の復調を行う。このために、PHY部301は、変調部311と復調部312を備える。変調部311は、MAC部302から入力される送信信号を変調してベースバンド信号に変換してアクセスポイント200に出力する。復調部312は、アクセスポイント200から入力されるベースバンド信号の受信信号を復調してMAC部302に出力する。
なお、変調部311と復調部312が対応する変調方式の一例としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を挙げることができる。また、PHY部301は、ハードウェアにより構成されてもよいし、ソフトウェアにより構成されてもよい。
【0031】
MAC部302は、データリンク層におけるMAC層に対応して主にメディアアクセス制御に関する処理を実行する部位である。この図に示すMAC部302は、暗号化部321、信号生成部322、送信制御部323、ヘッダ解析部324、復号化部325およびNAV値生成部330を備える。
暗号化部321には、例えば、有線NW側から送信すべきパケットのデータが入力される。暗号化部321は、入力したパケットを必要に応じて暗号化する。信号生成部322は、無線通信方式に対応してパケットをフレーム化した送信信号を生成する。
【0032】
送信制御部323は、送信信号を送信するためのメディアアクセス制御を実行する部位である。なお、送信制御部323が対応するメディアアクセス制御方式として1つにはCAMA/CAを想定することができる。送信制御部323は自己の送信制御にしたがって送信タイミングに至った送信信号をPHY部301の変調部311に対して出力する。
【0033】
ヘッダ解析部324は、復調部312により復調された後の受信信号、つまりフレームに格納されるヘッダを解析する。このヘッダの解析により、受信信号であるフレームの送信元アドレス、送信先アドレスおよびパケットの種別などが特定される。また、ヘッダ解析部324は、例えばフレームに付加されたFCS(Frame Check Sequence)を利用することにより、データの誤り検出および訂正を行う。
復号化部325は、フレームから抽出されたパケットの暗号化を解くための復号化を実行する。復号化されたパケットは、例えば、図示しない有線NWに対応する回路に対して出力される。
【0034】
NAV値生成部330は、ヘッダ解析部324が受信信号として入力したRTSのフレームのヘッダから抽出したNAV値(第2のチャネル予約期間)に基づいて、アクセスポイント200の応答信号生成部204が生成するCTSに格納すべきNAV値(第3のチャネル予約期間)を生成する。
NAV値は、無線通信におけるいわゆる隠れ端末問題を回避するために、ネットワーク上で送受信されるRTSとCTSの各フレーム(第2の応答信号)のヘッダにおける所定領域に格納される。そして、このNAV値は、送信予約期間としての時間長を示すものとして格納される。
【0035】
例えば、先に図1に示した2つの無線端末装置100、100は、それぞれアクセスポイント200と通信可能ではあるが、無線端末装置100、100同士は互いの電波が到達しないような位置関係にあるものとする。この場合、一方の無線端末装置100がアクセスポイント200と通信するために電波を送出しているとしても、他方の無線端末装置100はこのことを検知できない。そして、このときに他方の無線端末装置100がアクセスポイント200と通信しようとして電波を送出してしまうと、これら2つの無線端末装置100から送出された電波がアクセスポイントで干渉することとなって通信品質が劣化する。このような状況を隠れ端末問題という。
【0036】
そこで、上記隠れ端末問題を解消するために、アクセスポイント200のセル内では、以下のようにRTSとCTSの送受信が行われる。1つの無線端末装置100がフレームを送信しようとする際には、このフレームの送信に先立って、RTSを送信する。RTSは、アクセスポイント200に対してフレームの送信の許可を要求する送信要求であり、このRTSに格納されるNAV値は、フレームの送信にあたりチャンネルを占有する時間を指定するものとなる。
アクセスポイント200は、RTSを受信したときに他の無線端末装置100のフレームを受信していなければ、RTS送信元の無線端末装置100に対して応答としてCTSを送信する。このCTSにも、受信したNAV値に基づいて求めたNAV値が格納されている。
【0037】
他の無線端末装置100は、上記RTSを受信することはできないが、アクセスポイント200が送信したCTSは受信することができる。これにより、他の無線端末装置100は、RTSの送信元の無線端末装置100とアクセスポイント200が、信号の送受信を開始しようとしていることを認識できる。そこで、他の無線端末装置100は、受信したCTSが格納するNAV値が示す時間を経過するまでフレームの送信を待機する。これにより、2つの無線端末装置100が同時に電波を送出することがなくなり、隠れ端末問題が回避される。
【0038】
前述のように、アクセスポイント200における応答信号生成部204は、RTSの受信に応答してCTSを生成する。CTSに格納するNAV値は、受信されたRTSに格納されるNAV値に基づいて一意の値が設定される。
RTSに格納されるNAV値はデータサイズ等に依存し、通信毎に異なる値となる。このために、NAV値については、復調前のベースバンド信号の波形として、信号種別、送信元アドレスおよび送信アドレスなどのようにパターン化して記憶しておくことができない。
【0039】
そこで、本実施形態においては、無線信号処理装置300のMAC部302においてNAV値生成部330を備えることとしている。NAV値生成部330は、PHY部301の復調部312により復調された後の受信信号(フレーム)のヘッダから抽出したNAV値に基づいて、CTSに格納すべきNAV値を生成する。復調後のヘッダから抽出したNAV値は正確なものであり、したがって、これに基づいて生成されるCTS格納用のNAV値についても十分な正確さを保つことが可能になる。
【0040】
[NAV値生成部の構成]
図3は、第1の実施形態におけるNAV値生成部330の構成例を示す図である。この図に示すNAV値生成部330は、NAV値取得部331、NAV値記憶部332、NAV値算出部333を備える。
NAV値取得部331は、ヘッダ解析部324によりRTSとしての受信信号のフレームから抽出されたNAV値を取得する。また、NAV値取得部331は、NAV値の統計処理用に、このNAV値を取得する処理を、一定時間または予め定めた所定数が取得されるまで実行する。
【0041】
NAV値記憶部332は、NAV値取得部331により取得された一定期間内または一定数のNAV値を記憶する。
NAV値算出部333は、NAV値記憶部332に記憶されたNAV値を統計することによりCTSに格納すべきNAV値を算出する。NAV値算出部333がNAV値を算出するための統計手法としては特に限定されないが、例えばNAV値記憶部332に記憶されたNAV値の平均値をCTSに格納すべきNAV値とすることが考えられる。また、NAV値記憶部332に記憶されたNAV値のうちの最大値をCTSに格納すべきNAV値とすることが考えられる。
【0042】
また、NAV値生成部330は、例えば所定のタイミングで上記NAV値算出部333が算出したNAV値を固定的に保持することとしてもよい。また、リアルタイムにNAV値を算出して逐次更新するようにしてもよい。NAV値を逐次更新する場合、NAV値取得部331は、例えばスライディングウィンドウなどに対応した所定期間ごとにNAV値を取得してNAV値記憶部332に記憶させる。そして、NAV値生成部330は、所定期間ごとに対応してNAV値記憶部332に記憶されたNAV値からCTSに格納すべきNAV値を算出し、この算出したNAV値により前の所定期間に対応して求めたNAV値を更新する。
【0043】
[動作タイミング例]
図4は、第1の実施形態に対応する無線端末装置100とアクセスポイント200と無線信号処理装置300の動作タイミングの一例を示す図である。ここで、1つの無線端末装置100がデータ送信に先立って、時刻t1からt2の期間においてアクセスポイント200にRTSを送信したとする。
なお、図4においては、このRTSに格納されるNAV値が示す期間を、時刻t2からt9までのRTS対応NAV期間として示している。
【0044】
アクセスポイント200は、上記のように時刻t1からt2において送信されたRTSを、無線端末装置100との間の伝搬時間に応じて遅延した時刻t1−1からt2−1のタイミングで受信する。このRTSの受信が終了した時刻t2−1から所定時間(例えばSIFS(Short Inter Frame Space)を経過した時刻t3からt4の期間において、アクセスポイント200は、CTSを送信する。
上記CTSは、応答信号生成部204により生成されたものである。このCTSが格納するNAV値が示す期間の例として、図4においては、時刻t4からt10までのCTS対応NAV期間として示している。
【0045】
無線端末装置100は、上記のように送信されたCTSを、アクセスポイント200との間の伝搬時間に応じて遅延した時刻t3−1からt4−1のタイミングで受信する。これに応じて、無線端末装置100は、CTSの受信が終了した時刻t4−1から所定時間(例えばDISFとこれに続くバックオフ期間)を経過した時刻t5から時刻t6の期間においてデータを送信する。
【0046】
上記のように送信されたデータは、アクセスポイント200において時刻t5−1からt6−1の期間において受信される。アクセスポイント200は、データの受信が終了した時刻t6−1から一定時間(例えばSIFS)を経過した時刻t7からt8の期間においてACKを送信する。なお、このACKも、応答信号生成部204により生成されたものである。このACKは、時刻t7から伝搬時間を経過した時刻t7−1からt8−1において無線端末装置100により受信される。 なお、全ての実施形態に共通する事項であるが、無線信号処理装置300がデータ(RTS)を正常に受信した後に生成・送信すべきAck(CTS)は、既にアクセスポイント200によって無線端末装置100に送信されているため、無線信号処理装置300はAck(CTS)を生成・送信しない。
【0047】
本実施形態においてアクセスポイント200と無線信号処理装置300は物理的に異なる装置であり光ファイバ400により接続されている。これに応じて、アクセスポイント200と無線信号処理装置300の間の伝送遅延(すなわち、RF部201とPHY部301の間の伝送遅延)が大きいことを想定している。このようなシステム構成において、無線信号処理装置300のMAC部302においてCTSやACKの送信を実行させることとした場合には、上記アクセスポイント200と無線信号処理装置300の間の伝送遅延により、例えばSIFSなどの短時間の制約条件を満足する適切なタイミングでCTSやACKを送信できない可能性がある。
【0048】
そこで、本実施形態のようにCTSやACKをアクセスポイント200により生成して送信するように構成すれば、上記のRF部201とPHY部301の間の伝送遅延は関係なくなる。これにより、例えばSIFSなどの短時間の制約条件を満たす適切なタイミングでCTSやACKを送信できることになる。
そのうえで、CTSを送信する際、応答信号生成部204は、NAV値生成部330により生成したNAV値を格納してCTSを生成することとしている。前述のように、NAV値生成部330により生成されるNAV値は、受信されたRTSが格納するNAV値を統計化したものであるためにその精度は高い。
【0049】
仮に、上記のように受信したRTSに基づくことなく適当にNAV値を設定することとした場合、上記のように高い精度は得られない。このために、NAV値が短すぎたり長すぎたりしてしまう可能性が高くなる。NAV値が短ければ他の無線端末装置100の待機時間も短くなるために送信電波が干渉する可能性が高くなり、スループットの低下を招く原因となる。また、NAV値が長ければ他の無線端末装置100の待機時間も無駄に長くなり、これによってもセルにおけるスループットの低下を招くことになる。
【0050】
これに対して、本実施形態において生成されるNAV値は上記のように高い精度を有している。これにより、本実施形態においては、適切なNAV期間が設定されることとなり、スループットの低下を有効に抑制することが可能になる。
また、元来ハードウェアで実施していた処理をソフトウェアで実施する構成に変更すると、処理遅延が増大してしまうことが一般的である。具体的には、PHY層及びMAC層における処理時間が増大してしまうことが一般的である。しかしながら、本実施形態によれば、このようなソフトウェア化に伴うスループットの低下も有効に抑制することが可能となる。
また、本実施形態におけるRTSまたはデータの受信に応答した応答信号(CTS、ACK)の送信は、アクセスポイント200において行われる。つまり、RF部201のみを介して、RTSまたはデータの受信に応答した応答信号の送信が行われる。これにより、本実施形態では応答信号の送信にあたり、アクセスポイント200のRF部201と無線信号処理装置300のPHY部301との伝送遅延を考慮する必要がない。このことは、RF部201とPHY部301を専用のハードウェアにより構成して高速化を図る必要がなくなることを意味している。これにより、本実施形態においては、RF部201とPHY部301について、汎用のハードウェアを採用することができ、例えばコストアップを抑えることができる。
【0051】
[処理手順例]
図5は、第1の実施形態におけるアクセスポイント200が実行する処理手順例を示す図である。この図に示す処理は、図2に示した受信信号品質判定部202、受信信号推定部203、応答信号生成部204、送信制御部205の何れかが適宜実行する。
【0052】
受信信号品質判定部202は、信号が受信されるのを待機している(ステップS101−NO)。そして、受信信号がRF部201より出力されたことにより信号が受信されたことを判定すると(ステップS101−YES)、受信信号品質判定部202は、前述のように、例えば受信電界強度などに基づいて受信信号の品質を判定する(ステップS102)。
【0053】
受信信号品質判定部202は、上記ステップS102により判定した受信信号の品質が良好(OK)であるか否かについて判定する(ステップS103)。ここで、品質は良好ではないと判定した場合(ステップS103−NO)、受信信号品質判定部202は、受信信号を破棄して(ステップS104)、ステップS101に戻る。
これに対して、品質は良好であると判定した場合(ステップS103−YES)、受信信号推定部203は、前述のパターンマッチングにより自分宛であるか、受信信号の種別、送信元アドレスなどを推定する(ステップS105)。
【0054】
次に、応答信号生成部204は、上記ステップS105により推定された信号の種別がRTSであるか否かについて判定する(ステップS106)。RTSであると判定した場合(ステップS106−YES)、応答信号生成部204は、無線信号処理装置300のNAV値生成部330からCTS格納用のNAV値を入力する(ステップS107)。そして、この入力したNAV値をフレームヘッダに格納してCTSを生成する(ステップS108)。送信制御部205は、上記のように生成されたCTSを送信させるための制御を実行し(ステップS109)、ステップS101に戻る。
【0055】
また、推定した信号の種別がRTSではないと判定した場合(ステップS106−NO)、推定された信号の種別はデータであることになる。この場合、応答信号生成部204は、データの受信完了に応じたACKの送信タイミングとなるのを待機する(ステップS110−NO)。そして、ACKの送信タイミングに至ると(ステップS110−YES)、応答信号生成部204はACKを生成する(ステップS111)。送信制御部205は、生成されたACKを送信させるための制御を実行し(ステップS112)、ステップS101に戻る。
【0056】
図6は、NAV値生成部330が実行する処理手順例を示す図である。この図に示す処理は、NAV値取得部331とNAV値算出部333のいずれかが適宜実行するものとしてみることができる。なお、この図の説明にあたり、NAV値生成部330は、アクセスポイント200と通信が確立されている無線端末装置100ごとに対応してNAV値を算出するものとする。
【0057】
NAV値取得部331は、RTSの受信に応じてヘッダ解析部324によりフレームのヘッダから抽出されたNAV値を取得する(ステップS201)。次に、NAV値取得部331は、この取得したNAV値を、RTSの送信元の無線端末装置100のアドレスに対応付けてNAV値記憶部332に記憶させる(ステップS202)。
【0058】
NAV値取得部331は、上記NAV値の取得と記憶を、一定期間が経過するまで、RTSが受信されるごとに実行する。そして、一定期間が経過するのに応じて(ステップS203−YES)、NAV値算出部333は、無線端末装置100のアドレスごとに、NAV値記憶部332に記憶されているNAV値の統計値を算出する(ステップS204)。具体的に、この統計値は、前述のように平均値または最大値などとなる。
そして、NAV値算出部333は、上記のように求めた統計値をCTSに格納すべきNAV値として、アクセスポイント200の応答信号生成部204に対して出力する(ステップS205)。
【0059】
<第2の実施形態>
[アクセスポイントと無線信号処理装置の構成]
図7は、第2の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。
第2の実施形態の無線信号処理装置300においては、自己CTS生成部340が備えられる。自己CTS生成部340は、RTSの受信に応答して自己CTSを生成する。この自己CTSは、無線LAN規格におけるIEEE802.11gで規定されるCTS-to-selfに相当する。
【0060】
図8は、自己CTS生成部340の構成例を示す図である。この図に示す自己CTS生成部340は、NAV値取得部341、更新NAV値算出部342と自己CTS信号生成部343を備える。
【0061】
NAV値取得部341は、受信されたRTSのヘッダからヘッダ解析部324により抽出されたNAV値を取得する。更新NAV値算出部342は、NAV値取得部341が取得したNAV値から更新NAV値を算出する。この更新NAV値は、一例として以下のように算出される。つまり、MAC部302における今回のRTSの入力タイミングから自己CTSを送信するまでの時間(自己CTS送信準備期間)に対応する値をNAV値取得部341が取得したNAV値から減算することにより算出される。このように求められる更新NAV値は、RTSのフレームのヘッダから抽出したNAV値と、既知の自己CTS送信準備期間とに基づくものであるために正確なものとなっている。
【0062】
自己CTS信号生成部343は、上記のように算出された更新NAV値と、受信したRTSのフレームのヘッダからヘッダ解析部324が抽出した送信元アドレスや送信先アドレスを入力する。そして、これらの入力した情報をヘッダに含めるようにして自己CTSとしてのフレームを生成する。
上記のように自己CTS信号生成部343が生成した自己CTSは、送信制御部323が入力する。送信制御部323は、自己CTSがしかるべきタイミングで変調部311からRF部201を介してアクセスポイント200から送信されるように制御する。
【0063】
本実施形態においてはCTSの送信後のタイミングにおいて自己CTSをアクセスポイント200から送信させるが、このときに、アクセスポイント200が無線端末装置100から送信されてくるデータを受信中である可能性がある。このままでは、自己CTSを送信するための電波の影響でデータを正常に受信できない可能性がある。
【0064】
そこで、第2の実施形態のアクセスポイント200には、図7に示すように干渉抑制部207を備える。干渉抑制部207は、RF部201とアンテナ(図示せず)の間に挿入される。干渉抑制部207は、RF部201から出力される送信用RF信号を入力してキャンセル信号を生成し、RF部201への入力RF信号に対して印加する。これにより、RF部201への入力信号に重畳している送信信号成分が除去される。したがって、アクセスポイント200において自己CTSの送信とデータの受信が同時に行われているときには、RF部201への入力信号から自己CTSの信号成分が除去されることとなり、データを正常に受信することが可能になる。
【0065】
[動作タイミング例]
図9は、第2の実施形態に対応する無線端末装置100とアクセスポイント200と無線信号処理装置300の動作タイミングの一例を示す図である。ここで、1つの無線端末装置100がデータ送信に先立って、時刻t1からt2の期間においてアクセスポイント200にRTSを送信したとする。
【0066】
アクセスポイント200は、時刻t1から無線端末装置100との伝搬時間に応じて遅延した時刻t1−1からt2−1において上記RTSを受信する。そこで、アクセスポイント200は、RTSの受信が完了した時刻t2−1から一定時間を経過した時刻t3からt4の期間においてCTSを送信する。このCTSは、第1の実施形態と同様に、応答信号生成部204が生成したものである。また、このCTSが格納するNAV値もNAV値生成部330が第1の実施形態と同様に生成すればよい。
【0067】
ただし、第2の実施形態におけるCTSのNAV値は、自己CTSにより正確なNAV値が設定されるまでの暫定的なものであるため、自己CTSが送信されるまでの時間を超えるように設定されればよい。一例として、自己CTS生成部340が自己CTSを生成するために要する処理時間と、アクセスポイント200と無線信号処理装置300の間(RF部201とPHY部301の間)の往復の伝送時間を加算した時間を設定することが考えられる。
【0068】
無線端末装置100は、上記のように送信されたCTSを、アクセスポイント200との間の伝搬時間に応じて遅延した時刻t3−1からt4−1のタイミングで受信する。これに応じて、無線端末装置100は、CTSの受信が終了した時刻t4−1から所定時間を経過した時刻t5から時刻t6の期間においてデータを送信する。
【0069】
また、RTSは、アクセスポイント200にて時刻t1−1からt2−1の期間において受信されたRTSは、RF部201とPHY部301との間の伝送時間に応じて遅延した時刻t1−2からt2−2の期間において、無線信号処理装置300に入力される。
このように入力されたRTSは、復調部312からヘッダ解析部324に出力される。ヘッダ解析部324は、RTSが受信されたことを自己CTS生成部340に通知する。
【0070】
自己CTS生成部340は、上記の通知に応じて自己CTSを生成する。そして、生成された自己CTSは、送信制御部323により、時刻t5−3からt5−4の期間においてアクセスポイント200に出力される。
このように出力された自己CTSは、RF部201とPHY部301との間の伝送時間に応じて遅延した時刻t5−5からt5−6の期間においてアクセスポイント200に入力され、さらにRF部201から送信される。
【0071】
上記のようにアクセスポイント200から自己CTSが送信されることにより、時刻t3からt4の期間において送信されたCTSにより設定されたNAV期間は無効となる。そして、自己CTSに格納される更新NAV値により、時刻t5−6以降における更新NAV期間が再設定される。このように更新NAV値により再設定される更新NAV期間は、前述のように正確なものとなっている。したがって、自己CTSが格納する更新NAV値により設定された更新NAV期間の終了タイミングは、RTSが格納していたNAV値により設定されたRTS対応NAV期間の終了タイミングである時刻t9と一致することになる。
【0072】
このように、第2の実施形態においては、まず、アクセスポイント200によりCTSを送信させた後に、無線信号処理装置300において正確な更新NAV値を格納する自己CTSを生成して送信させることとしている。これにより、RTSが格納していたNAV値に対して正確に対応するNAV値を他の無線端末装置100に通知することが可能になる。
【0073】
また、時刻t6−1におけるデータの受信完了に応じて、アクセスポイント200は、時刻t7からt8のタイミングでACKを送信する。この図では、時刻t7から伝送時間に応じて遅延した時刻t7−1からt9の期間において無線端末装置100がACKを受信している。
【0074】
なお、図9には反映されていないが、上記の通信時においては干渉抑制部207が動作している。これにより、時刻t5−5からt5−6の期間のようにアクセスポイント200において自己CTSの送信とデータの受信が同時に行われる状態となっても、互いの干渉を排除して正常にデータを受信することが可能である。
【0075】
[処理手順例]
図10は、第2の実施形態におけるアクセスポイント200が実行する処理手順例を示す図である。図10において、ステップS101からS109と、ステップS110からS112の処理は、図5のステップS101からS109と、ステップS110からS112と同様となる。
【0076】
そのうえで、アクセスポイント200のRF部201は、ステップS109によりCTSを送信した後、自己CTSが無線信号処理装置300から入力されるのを待機する(ステップS109A)。そして、自己CTSが入力されると、この自己CTSを送信する(ステップS109B)。
【0077】
図11は、第2の実施形態の無線信号処理装置300において自己CTS生成部340と送信制御部323が実行する処理手順例を示す図である。この図に示す処理は、図8に示したNAV値取得部341、更新NAV値算出部342および自己CTS信号生成部343のいずれかが適宜実行するものとしてみることができる。
【0078】
まず、NAV値取得部341は、RTSの入力がヘッダ解析部324から通知されるのを待機している(ステップS301−NO)。NAV値取得部341は、RTSの入力が通知されるのに応じて(ステップS301−YES)、入力されたRTSが格納していたNAV値をヘッダ解析部324から取得する(ステップS302)。
次に、更新NAV値算出部342は、例えば前述のように、今回入力したRTSが格納していたNAV値から自己CTS送信準備期間を減算することにより更新NAV値を算出する(ステップS303)。
【0079】
次に、自己CTS信号生成部343は、上記のように算出された更新NAV値と、ヘッダ解析部324から取得した送信元アドレスと送信先アドレスなどをヘッダに格納してフレームを生成する(ステップS304)。送信制御部323は、上記のように生成された自己CTSのフレームがアクセスポイント200から送信されるように制御する(ステップS305)。
【0080】
<第3の実施形態>
図12は、第3の実施形態におけるアクセスポイント200と無線信号処理装置300の構成例を示す図である。なお、この図において図7と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。アクセスポイント200は、図7と同様の構成であることから、ここでの説明は省略する。
第3の実施形態の無線信号処理装置300は、送信可否判定部350を備える。送信可否判定部350は、自己CTSの送信可否を判定する。送信可否判定部350による送信可否判定のための処理については後述する。
【0081】
第3の実施形態における自己CTS生成部340が自己CTSを生成するための処理については第2の実施形態と同様である。ただし、第3の実施形態における自己CTS生成部340は、送信可否判定部350の判定結果に応じて自己CTSを生成する動作の可否が設定される。つまり、送信可否判定部350が自己CTSの送信を許可すべきと判定した場合、自己CTS生成部340は、RTSの受信に応じて自己CTSを生成する動作を実行する。これにより、アクセスポイント200からはCTSと、この後の自己CTSの送信が実行される。つまり、第2の実施形態と同様の動作が実行される。
【0082】
これに対して、送信可否判定部350が自己CTSの送信を禁止すべきであると判定した場合、自己CTS生成部340は、自己CTSを生成する動作を停止する。これにより、アクセスポイント200はCTSを送信するが、自己CTSは送信しないことになる。つまり、第1の実施形態と同様の動作となる。
【0083】
[自己CTSを送信すべきでない場合の動作タイミング]
図13は、自己CTSを送信しない場合の動作タイミング例について示す図である。時刻t1からt2の期間において無線端末装置100が送信したRTSは、無線信号処理装置300において時刻t1−2からt2−2の期間にて受信される。時刻t1−2とt2−2は、時刻t1とt2に対して、アクセスポイント200までの伝搬時間と、アクセスポイント200から無線信号処理装置300までの伝達時間に応じて遅延した時刻となる。
【0084】
無線信号処理装置300における自己CTS生成部340は、時刻t2−2においてRTSの受信が完了するのに応じて自己CTSを生成し、送信制御部323が送信を行う。図においては、RTSの受信が完了してから自己CTSの送信が開始されるまでに要する時間(時刻t2−2からt7)を、自己CTS送信準備期間Tbとして示している。しかし、例えば通信システムにおける転送速度、トラフィックの状況、また、自己CTS生成部340の処理機能などの条件によっては、上記自己CTS送信準備期間Tbが長くなる場合がある。
【0085】
具体的には以下の通りである。図13の時刻t7からt8の期間において無線信号処理装置300が出力した自己CTSは、アクセスポイント200により時刻t7−1からr8−1の期間において送信されている。しかし、アクセスポイント200におけるデータの受信は、自己CTSの送信が完了する時刻t8−1より前の時刻t6−1において完了している。このようにデータの受信が完了するまでに自己CTSを送信できないようなときには、自己CTSを送信せずにACKを送信する必要がある。
【0086】
そこで、第3の実施形態における送信可否判定部350は、アクセスポイント200におけるデータの受信が完了するまでに自己CTSを送信できるか否かに応じて、以下のように自己CTSを送信可否について判定する。
【0087】
[処理手順例]
図14は、送信可否判定部350が実行する処理手順例を示す図である。送信可否判定部350は、NAV期間Taを算出する(ステップS401)。このために、送信可否判定部350は、ヘッダ解析部324によりRTSのフレームのヘッダから抽出されたNAV値を取得し、このNAV値からNAV期間Taとしての時間を求める。
【0088】
上記のように求められるNAV期間Taは、図13に示すように、無線信号処理装置300においてRTSの受信が完了した時刻t2−2からt10までの期間に相当する。このNAV期間Taは、受信されたRTSに格納されたNAV値に対応した時間長による期間となる。
【0089】
次に、送信可否判定部350は、送信可否判定に用いる自己CTS送信準備期間Tbを算出する(ステップS402)。自己CTS送信準備期間Tbが処理負荷などに応じて変化することを前提とした場合には、例えば、過去の一定期間における自己CTS送信準備期間Tbの実測値の平均や正規分布などを用いて算出することにより求めることができる。
次に、送信可否判定部350は、上記ステップS401にて求めたNAV期間TaとステップS402にて求めた自己CTS送信準備期間Tbと予め定められた閾値thについて、
Ta−Tb≧th
が成立するか否かについて判定する(ステップS403)。
【0090】
上式が成立する場合には、アクセスポイント200においてデータの受信が完了するまでに確実に自己CTSを送信できることを意味する。この場合、送信可否判定部350は、自己CTSの送信を許可する(ステップS404)。これに応じて、自己CTS生成部340は、自己CTSを生成し、送信制御部323は自己CTSを送信する制御を実行する。
【0091】
これに対して、上式が成立しない場合には、アクセスポイント200においてデータの受信が完了するまでに自己CTSを送信できない可能性があることを意味する。この場合、送信可否判定部350は、自己CTSの送信を禁止する(ステップS405)。
【0092】
なお、上記図14に示した処理は、処理負荷に応じて自己CTS送信準備期間Tbが変化することを前提として、RTSの受信ごとに実行することとしている。しかし、例えば処理環境や処理状況に対して自己CTS送信準備期間Tbが一定となる条件の場合には、初期設定時において図14に示す判定処理を実行することとしてもよい。この場合の初期設定後の動作としては、判定結果に応じて、RTSの受信ごとに自己CTSを送信する動作または自己CTSを送信しない動作のいずれか一方が定常的に行われることになる。
【0093】
また、図2、図7および図12などにおける機能部を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより通信に関連する処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0094】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0095】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0096】
100…無線端末装置, 200…アクセスポイント, 201…RF部, 202…受信信号品質判定部(判定部), 203…受信信号推定部(判定部), 204…応答信号生成部(判定部、応答信号送信部), 205…送信制御部(応答信号送信部), 206…変調部, 207…干渉抑制部, 210…アンテナ, 300…無線信号処理装置, 301…PHY部, 302…MAC部, 311…変調部, 312…復調部, 321…暗号化部, 322…信号生成部, 323…送信制御部, 324…ヘッダ解析部, 325…復号化部, 330…NAV値生成部(算出部), 331…NAV値取得部, 332…NAV値記憶部, 333…NAV値算出部, 340…自己CTS生成部, 341…NAV値取得部, 342…更新NAV値算出部, 343…自己CTS信号生成部, 350…送信可否判定部, 500…有線端末装置, 600…無線端末装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末との間で通信を行う基地局装置であって、
予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定部と、
前記第1の応答信号を送信すると判定された場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信部と、
を備える基地局装置。
【請求項2】
無線端末及び前記無線端末から受信した信号の信号処理を行う信号処理装置のそれぞれと接続され、かつ、前記無線端末から受信した信号を前記信号処理装置へ出力する基地局装置であって、
予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定部と、
前記第1の応答信号を送信すると判定された場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信部と、
を備える基地局装置。
【請求項3】
前記受信した信号を復調して取得した第2のチャネル予約期間に基づいて第3のチャネル予約期間を算出する算出部と、
前記第3のチャネル予約期間が設定された第2の応答信号を、前記第1の応答信号の後に送信する第2応答信号送信部と、
をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
無線端末と基地局装置との間で無線通信を行うための通信方法であって、
予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定ステップと、
前記第1の応答信号を送信すると判定されたた場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信ステップと、
を有する通信方法。
【請求項5】
前記基地局装置が、
前記受信した信号を復調して取得した第2のチャネル予約期間に基づいて第3のチャネル予約期間を算出する算出ステップと、
前記第3のチャネル予約期間が設定された第2の応答信号を、前記第1の応答信号の後に送信する第2応答信号送信ステップと、
をさらに有する請求項4に記載の通信方法。
【請求項1】
無線端末との間で通信を行う基地局装置であって、
予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定部と、
前記第1の応答信号を送信すると判定された場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信部と、
を備える基地局装置。
【請求項2】
無線端末及び前記無線端末から受信した信号の信号処理を行う信号処理装置のそれぞれと接続され、かつ、前記無線端末から受信した信号を前記信号処理装置へ出力する基地局装置であって、
予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定部と、
前記第1の応答信号を送信すると判定された場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信部と、
を備える基地局装置。
【請求項3】
前記受信した信号を復調して取得した第2のチャネル予約期間に基づいて第3のチャネル予約期間を算出する算出部と、
前記第3のチャネル予約期間が設定された第2の応答信号を、前記第1の応答信号の後に送信する第2応答信号送信部と、
をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
無線端末と基地局装置との間で無線通信を行うための通信方法であって、
予め記憶した複数の信号と前記受信した信号とをパターンマッチングし、前記受信した信号に対する第1の応答信号を送信するか否かを判定する判定ステップと、
前記第1の応答信号を送信すると判定されたた場合に、前記予め記憶した複数の信号ごとに定められた第1のチャネル予約期間を、前記第1の応答信号に設定し、前記第1の応答信号を送信する第1応答信号送信ステップと、
を有する通信方法。
【請求項5】
前記基地局装置が、
前記受信した信号を復調して取得した第2のチャネル予約期間に基づいて第3のチャネル予約期間を算出する算出ステップと、
前記第3のチャネル予約期間が設定された第2の応答信号を、前記第1の応答信号の後に送信する第2応答信号送信ステップと、
をさらに有する請求項4に記載の通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−110637(P2013−110637A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254963(P2011−254963)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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