説明

基地局装置

【課題】高速移動中は移動速度が速いことからハンドオーバ開始から完了までの間に、干渉領域に入ってしまうことが多い。干渉領域では無線通信における信号品質が悪いことでハンドオーバの失敗率が高くなっている。
【解決手段】無線端末の移動速度を予測するための無線端末からの基地局装置の無線品質を報告させる機能と、報告された無線品質から無線端末の移動速度を、低速移動か高速移動かを判断する機能を備え、高速移動する無線端末用に高速移動用ネイバーリストを報知し、予め高速移動用に調整されたハンドオーバテーブルにより、ハンドオーバを起動させる基地局装置

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置に係り、特に高速移動する移動体端末の円滑なハンドオーバを実現する基地局装置に関する
【背景技術】
【0002】
移動体無線通信システムは、複数の基地局装置と、その基地局装置と無線通信を行なう複数の移動体端末(無線端末)とで構成される。複数の基地局装置は、分散して配置される。複数の基地局装置は、それぞれの基地局装置から送信される電波が到達する範囲に、セルと呼ばれる無線通信可能な領域を形成している。基地局装置は、指向性アンテナを用いることにより、セルを角度で分割して、セクターと呼ばれる複数の電波到達範囲を持つ場合もある。セクター構成としては、セルを3つに分割する3セクター構成、セルを6つに分割する6セクター構成などが一般的である。セクターは、アンテナの指向性を利用して空間を角度で分割して構成されるセルと見なすこともできる。したがって、本明細書においては、両方の概念を含めてセルと称する場合がある。
【0003】
無線通信システムは、移動体端末の移動に応じて、基地局装置間で次々にハンドオーバを行ない通信を継続する。このように、無線通信システムが、端末が移動していても、無線通信を維持することができるように、複数の基地局装置がそれぞれ形成するセルは重なり合っている。この重なり合った領域で、移動体端末が基地局装置と無線通信を行なうと、その通信は領域が重なりあっている別の基地局装置にとっては干渉となる。干渉は、他の移動体端末の通信にとって妨害波であり、無線通信における信号品質の劣化、スループットの劣化などの要因になる。このことから、ハンドオーバを行なう周辺では無線品質が必ずしも良い状態ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−050281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のセルが重なり合うセル境界領域における干渉領域でのハンドオーバは、ハンドオーバタイミングの遅れおよび複数回のハンドオーバを起すピンポン現象によって、ハンドオーバの失敗が起きやすい。ハンドオーバの失敗は、通信の切断を伴う。このため、通信の継続性を維持できない。実際の運用では、低速移動中では干渉領域に入る前にハンドオーバが開始され、ハンドオーバ完了までに干渉領域に入ることは無い。
【0006】
しかし、高速移動中の移動体端末は、移動速度が速いことからハンドオーバ開始から完了までの間に、干渉領域に入ってしまうことが多い。干渉領域では無線通信における信号品質が悪いことでハンドオーバの失敗率が高くなっている。また、高速移動中の移動体端末は、周辺セルの通信品質も変動が大きいため、不要にハンドオーバを繰り返すこととなる。この結果、ハンドオーバの回数増加によって、切断回数も増加する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、個々の無線端末の移動速度を判断し、適切な位置で適切なハンドオーバ先にハンドオーバを実現する。本発明は、また、高速移動中のハンドオーバ失敗率を下げることで、無線端末のスループットを向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
高速移動中の無線端末においては、前述のような問題があるためハンドオーバ失敗が増えることとなる。この場合、干渉領域に入る前のハンドオーバと不要なハンドオーバを減らすことで、ハンドオーバの失敗は減らせる。
【0009】
高速移動中の無線端末を基地局装置側が識別できれば、高速移動中の無線端末向けに適切なネイバーリストの送付を行ない、無駄なハンドオーバ候補のサーチを行なわせないことができる。無駄なハンドオーバサーチを行なわないことで、ハンドオーバ候補をより早期にサーチすることが可能となり、結果、干渉領域に入る前にハンドオーバを実現させることができる。
【0010】
定期的に無線端末から報告される無線品質情報の変動を確認することで無線端末のフェージング状況を観測し、フェージングによる受信品質の変化速度から移動速度を推測する。これによって、低速移動の無線端末か高速移動の無線端末かを判別することができる。
【0011】
無線端末の移動速度を予想することで、高速移動中の無線端末に対して、高速移動に特化したネイバーリストを報知することが可能となる。高速移動中の無線端末は、新幹線乗車中内での通信および高速道路を移動している車内での通信を想定する。このような高速移動中の無線端末は、線路または高速道路といった一定のルートを移動することになり、ハンドオーバ先は限定される。高速移動中の無線端末用に特化したネイバーリストは、通常のネイバーリストより限定されることにより、ネイバーリスト内のハンドオーバ候補局の数は減る。このことにより、無線端末は、ハンドオーバ先として無線品質を確認する候補が減り、ハンドオーバ先のサーチ時間が短くなる。サーチ時間の短縮は、結果として、ハンドオーバのタイミングを早める結果となることから、高速移動中のハンドオーバにおいて干渉領域でのハンドオーバの回数が減る。また、ハンドオーバ成功率が向上する。
【0012】
無線端末が報告してくるハンドオーバ候補局の中から、最適なハンドオーバ先を決定するためのハンドオーバ先候補の無線品質を閾値として持ったテーブルを有し、テーブル内に設定したハンドオーバ先に円滑にハンドオーバさせる基地局装置が提供できる。
【0013】
上述した課題は、無線端末の移動速度を判断するために前記無線端末から近傍の複数の基地局装置の無線品質を報告させる機能と、報告された無線品質から無線端末の移動速度を判断する機能とを備え、高速移動する無線端末に高速移動用ネイバーリストを報知し、予め高速移動用に調整されたハンドオーバテーブルのハンドオーバ条件に基づいて、前記高速移動無線端末を他の基地局装置にハンドオーバさせる基地局装置により、達成できる。
【0014】
また、予め高速移動の軌道を予想して、ハンドオーバ先の基地局装置を選定し、且つ、ハンドオーバ先の基地局装置の無線品質を指定するハンドオーバテーブルを有し、指定されたハンドオーバ先基地局装置に指定された無線品質でハンドオーバを行なう基地局装置により、達成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば高速移動時の不必要なハンドオーバ発生を抑制し、適切なハンドオーバ先基地局を提供することで、スループットレート低下および切断数を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】移動体通信システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】基地局のシステム構成を説明するブロック図である。
【図3】無線端末の移動時のフェージングを説明する図である。
【図4】複数の基地局で構成されるエリアでの高速移動を説明する図である。
【図5】高速移動中の無線品質の変化を説明する図である。
【図6】7基地局で構成されるエリアの位置関係を説明する図である。
【図7】ハンドオーバシーケンス図である。
【図8A】通常のネイバーリストである。
【図8B】高速移動用のネイバーリストである。
【図9】Route Updateテーブルを説明する図である。
【図10】高速移動用のハンドオーバテーブルを説明する図である。
【図11】高速移動中のハンドオーバシーケンス図である。
【図12】基地局の高速移動中の端末に対するハンドオーバ処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
【0018】
図1を参照して、移動体通信システム(無線通信システム)の構成を説明する。図1において、移動体通信システム1000は、基地局装置(単に基地局とも称する)100と、スイッチ40と、コア装置50とから構成される。
【0019】
基地局装置100−0、100−1、100−3は、コア装置50と通信を行なう。基地局装置100は、コア装置50を介して図示しないコアネットワークに接続する。コア装置50からの信号は、スイッチ40を介して基地局装置100−0に入力される。基地局装置100−0は、コア装置50からの信号を高周波信号に変換し、無線信号(矢印A)により移動体端末(又は無線端末)200に送信する。移動体端末200は、基地局装置100−0から送信された無線信号を受信し、信号処理を行ない無線信号を情報に変換することで、コア装置50との通信を行なう。
【0020】
一方、移動体端末200が生成する情報は、移動体端末200において高周波信号に変換され、無線信号(矢印B)により基地局装置100−0に送信される。移動体端末200から送信され、基地局装置100−0が受信した無線信号は、基地局装置100−0の内部で信号処理によって情報に変換され、スイッチ40を介してコア装置50に送信される。複数の基地局装置100−0〜100−2のそれぞれは、スイッチ40を介してコア装置50と接続し、それぞれ異なる信号を送受信している。
【0021】
ここで、図1に示すように、移動体端末200が基地局装置100−0と、基地局装置100−0に隣接する基地局装置100−1および100−2の境界付近に存在するとする。このような状況下では、移動体端末200へ向けて基地局装置100−0から送信される無線信号は、基地局装置100−1、100−2から送信される無線信号(矢印C、D)と干渉してしまう。移動体端末200は、この干渉波を受信する。干渉波は、基地局装置100から移動体端末200へ送信される希望波(矢印A)の受信にとっては、妨害波として働いてしまう。このような干渉が多いエリアではハンドオーバの失敗率が高いため、なるべく干渉の影響の少ないエリアでハンドオーバを行なう必要がある。
【0022】
適切なハンドオーバを行なうために、基地局装置100は、移動体端末200の移動速度を把握する必要がある。基地局装置100は、移動体端末200の移動速度を予測するために移動体端末200から定期的に受信電界を報告させ、フェージング状況を観測し移動速度を予想することができる。
【0023】
図2を参照して、基地局装置100の機能ブロックを説明する。図2において、基地局装置100は、基地局装置100全体の制御を行なう装置制御部104と、アンテナ101と、回線IF108と、セクター制御部109を備える。装置制御部104は、CPU105と、メモリ106と、記憶装置107を有する。セクター制御部109は、無線IF102と、通信処理部103とを有する。
【0024】
装置制御部104のCPU105は、メモリ106に蓄積された制御プログラムや記憶装置107に蓄積された各種データ(例えばネイバー情報など)を用いて、基地局装置100全体を制御する。セクター制御部109は、セクターから送信する制御メッセージの送信処理を行なう。セクター制御部109は、また、移動通信端末からの各種制御メッセージの受信処理を行なう。これからのユニットは、内部バス110で接続され、基地局装置100の呼制御を行なう。基地局装置100は、コア装置50とに通信について、回線IF108を通して行なう。
【0025】
図3を参照して、基地局装置100の受信電波のフェージング状況を説明する。ここで、図3(a)は、移動体端末200が低速移動中のフェージングである。一方、図3(b)は、移動体端末200が高速移動中のフェージングである。図3において、縦軸はRSSI(Received Signal Strength Indication)、横軸のスパンは500msである。
【0026】
図3(a)において、低速移動中のフェージングの特徴は、時間に対してフェージングの影響が緩やかになっており、瞬時の変化量は少ない。図3(b)において、高速移動中のフェージングの特徴は、時間に対してフェージングの影響が大きく、瞬時の変化量が大きい。基地局装置100は、この特徴を踏まえて移動体端末の移動速度が低速移動中なのか高速移動中なのかを判断する。
【0027】
図4を参照して、高速移動中のハンドオーバについて説明する。図4において、基地局装置4局(100−A、−B、−C、−D)で構成されるエリアを移動端末200が高速移動する場合、基地局装置100−Aから基地局装置100−D、基地局装置100−B、基地局装置100−Cとハンドオーバしていくことになるが、基地局装置100−Aから基地局装置100−Dのハンドオーバポイントは、基地局装置100−Aと基地局装置100−B、基地局装置100−Dの局間にあたり、干渉の強いエリア305といえる。このような場所でのハンドオーバは前述した通り、ハンドオーバの失敗率が高いエリアと言える。このエリアの各局の無線品質Ec/Io(パイロット信号エネルギーと総エネルギーの比)を示したグラフが図5である。
【0028】
図5において、縦軸はEc/Io、横軸は時間でスパンは60sである。グラフを見てみるとハンドオーバポイント305では一時的ではあるが各基地局装置のEc/Ioが拮抗しており、且つ、どれも良い品質の局は存在しない。このような場合に通常のハンドオーバを行なうと最初にサービスを提供していた基地局装置A局の無線品質とハンドオーバ候補の基地局装置D局の無線品質が逆転しているため、ハンドオーバが発生する。ただし、無線品質が逆転している時間は短時間で、基地局装置D局の無線品質は、すぐに基地局装置B局の無線品質と逆転して基地局装置D局から基地局装置B局へのハンドオーバが発生する。これは、干渉エリアでのハンドオーバが頻繁に行なわれることによる呼切断や、スループットの低下を招く一因となる。
【0029】
図4にもどって、図4のエリアで考えると、高速移動中の移動端末200は、線路上を基地局装置100−Aのエリアから基地局装置100−Dのエリアを一瞬通った後、基地局装置100−Bのエリアに移動することが予め分かっている。ハンドオーバポイント305での基地局装置100−Aと基地局装置100−B、基地局装置100−Dの無線品質は、図5のグラフが示す通りハンドオーバポイント305で通常のハンドオーバ先の基地局装置D局の無線品質と基地局装置B局の無線品質に大きな差が無いことから、基地局装置A局から直接基地局装置B局へハンドオーバを試行した場合でも、品質に大きな影響を与えない。且つ、ハンドオーバの試行回数が減る結果となる。このことにより高速移動中の移動端末に対して安定したハンドオーバを提供することが可能となる。
【0030】
図6を参照して、他の基地局装置の配置を説明する。図6は、7つの基地局装置100−A〜100−Gの配置を示している。それぞれ基地局装置100は、一つのセクターから構成され、それぞれのセクターは中心の基地局装置から円形のエリアをカバーする。セクターとはアンテナの指向性を利用して、空間を角度で分割して構成されるセルの名称であり、セルと称する場合もある。
【0031】
中央にある基地局装置100−Aに注目する。一般的には一つの基地局装置の周辺には今回のモデルのように約6基地局装置が配置される。この場合、基地局装置100−Aと通信中の移動端末200は、移動や無線環境の変化に伴い、周辺基地局100−B〜100−Gとハンドオーバをすることで、通信を継続しようとする。ハンドオーバを実現するために、基地局装置100−Aは、ネイバーリストを移動端末200に報知し、移動端末200はネイバーリストの情報を基に周辺基地局装置のサーチを行ない、サーチ結果を基地局装置100−Aに報告する。基地局装置100−Aは報告結果を基にハンドオーバを指示する。
【0032】
図7を参照して、EVDOシステムにおける通常のハンドオーバシーケンスを説明する。図7において、移動端末200は、基地局装置100−Gからの報知情報としてネイバーリストを受信する(S301)。移動端末200は、基地局装置100−Gと通信する(S302)。移動端末200は、基地局装置100−Gの無線品質が劣化した際に、ネイバーリスト内の基地局装置の無線品質を測定して、Route Updateメッセージで測定値を基地局装置100−Gに報告する(S303)。基地局装置100−Gはハンドオーバを実行するかを判断し、ハンドオーバが必要な場合には基地局装置100−Fに対してHandoff Requestメッセージを発出する(S304)。Handoff Requestメッセージを受信した基地局装置100−Fは、基地局内のリソースを確保し、Handoff Responseメッセージを基地局装置100−Gに対して発出する(S306)。Handoff Responseメッセージを受信した基地局装置100−Gは、無線端末200に対してTraffic ch Assignmentメッセージでハンドオフ先の基地局装置情報を発出する(S307)。Traffic ch Assignmentメッセージを受信した無線端末200は、Traffic ch Completeメッセージを基地局装置100−Gに発出する(S308)。移動端末200は、ハンドオーバ先の基地局装置100−Fと通信を開始する(S309)。
【0033】
図8を参照して、基地局装置が報知するネイバーリストを説明する。図6で説明した基地局装置100−Aの周辺には6つの基地局装置100−B〜100−Gが配置されている。このため、図8Aのネイバーイスト700は、AP−ID701と、Sector702と、PN703とから構成される。AP−ID701は、基地局装置を特定する。Sector情報702は、基地局装置のセクターを特定する。PN番号703は、セクター単位で決められた値である。ネイバーリスト700は、基地局装置100−Aのネイバーリストであり、周辺には6つの基地局装置100−B〜100−Gがすべて記録されている。
【0034】
図8Bにおいて、高速移動端末向けに報知するネイバーリスト710は、項目はネイバーリスト700と同じである。しかし、図6の高速移動中の移動端末200は、線路上のみを移動するので、ハンドオーバ先が限定される。したがって、ネイバーリスト710は、ハンドオーバ先として、基地局装置100−Gと基地局装置100−Dを設定すれば良い。
【0035】
図9を参照して、無線端末が報告してくる基地局装置の無線品質を説明する。図9において、Route Updateテーブル800は、無線端末200が捕捉した基地局について、リストの左から測定した無線品質の良い順にPN番号801、804、806と、無線品質802、805、807と、最も無線品質の良い基地局装置について測定した際のPNチップディレイ803を一纏まりとしたテーブルである。なお、Route Updateテーブル800は、基地局装置100が保持し、Route Updateテーブル800のレコードは、配下の無線端末に相当する。
【0036】
図10を参照して、基地局装置のハンドオーバテーブルを説明する。図10において、ハンドオーバテーブル900は、Source ID901と、Sector902と、Target ID903と、Sector904と、Target Ec/Io905とから構成されている。
【0037】
Source ID901は、ハンドオーバ元基地局装置のIDである。Sector902は、ハンドオーバ元基地局装置のセクター番号である。Target ID903は、ハンドオーバ先基地局装置のIDである。Sector904は、ハンドオーバ先基地局装置のセクター番号である。Target Ec/Io905は、ハンドオーバ先基地局装置のハンドオーバ条件である。
【0038】
図11を参照して、高速移動中の無線端末に対するハンドオーバシーケンスを説明する。図11において、低速移動中の移動端末と、高速移動中の移動端末では最適なハンドオーバが異なる。このため、まず初めに移動端末の移動速度を予想する必要がある。具体的には、EVDOシステムでは、無線端末200に対して無線品質を定期的に報告させるために、Route Update Requestメッセージを使用する。
【0039】
具体的には、基地局装置100−Gは、無線端末200にRoute Update Requestメッセージを発出する(S351)。Route Update Requestメッセージを受信した無線端末200は、通信中の基地局装置100−Gを含む無線品質をRoute Updateメッセージで基地局装置100−Gに報告する(S352)。Route Updateメッセージを受信した基地局装置100−Gは、先に図3で説明した時間で変化するフェージング状況を確認するために、繰り返し、Route Update Requestメッセージを発出する(S353)。無線端末200は、再度、基地局装置100−Gを含む無線品質をRoute Updateメッセージで基地局装置100−Gに報告する(S354)。報告を受けた基地局装置100−Gは無線端末200から報告を受けた無線品質の時間当たりの変化量を確認して、移動速度を判定する(S356)。ここまでが無線端末の移動速度を算出するシーケンスとなる。今回はEVDOシステムを説明をしたが、WiMAX、LTEシステムにおいては定期的に無線品質を報告し、基地局装置で移動速度を検出する機能を具備しているため、同様に無線端末の移動速度を検出できる。
【0040】
基地局装置100−Gは、ここでは無線端末200の移動速度を高速移動中と判定し、高速移動用ネイバーリストを無線端末200に対して発出する(S357)。新規に高速移動用ネイバーリストを受信した無線端末200は、ネイバーリスト内の基地局装置の無線品質を確認し、Route Updateメッセージで測定値を基地局装置100−Gに報告する(S358)。基地局装置100−Gは、ハンドオーバを実行するかを判断するために、報告された基地局装置の無線品質を図10のハンドオーバテーブル900に設定されている通信中の基地局装置のAP−ID901とセクター番号902に関連づけられているハンドオーバ候補の基地局AP−ID903、セクター904のハンドオーバ閾値となる無線品質905と比較する(S359)。比較した結果、ここではハンドオーバの条件を満たしているので、基地局装置100−Gは、基地局装置100−Aに対してHandoff Requestメッセージを発出する(S361)。高速移動するルートはあらかじめ想定することができるため、事前に理想のハンドオーバ先を抽出し、ハンドオーバの条件となるハンドオーバテーブル900内のハンドオーバ閾値905を適切に設定することで高速移動中のハンドオーバを最適にすることができる。
【0041】
次にHandoff Requestメッセージを受信した基地局装置100−Aは、基地局内のリソースを確保し、Handoff Responseメッセージを基地局装置100−Gに対して発出する(S362)。Handoff Responseメッセージを受信した基地局装置100−Gは、無線端末200に対してTraffic ch Assignmentメッセージでハンドオフ先の基地局装置情報を発出する(S363)。Traffic ch Assignmentメッセージを受信した無線端末200はTraffic ch Completeメッセージを基地局装置100−Gに発出し(S364)、ハンドオーバ先の基地局装置100−Aと通信を開始する。ここまでが高速移動中の無線端末向けのハンドオーバシーケンスとなる。
【0042】
図12を参照して、基地局装置のハンドオーバの処理を説明する。図12において、基地局装置100は、まず初めに無線端末200の移動速度を把握するために、無線端末200に対して通信中の基地局装置の無線品質を報告させる。基地局装置100は、無線品質報告を2度受信したか判定する(S401)。基地局装置100は、報告値から無線端末のフェージング状況を算出し、無線端末が高速移動か判定する(S402)。判定で低速移動と判断された場合(S402:NO)、基地局装置100は、ハンドオーバターゲット報告を受信する(S408)。基地局装置100は、ハンドオーバ指示を無線端末200に送信して(S409)、終了する。
【0043】
ステップ402で高速移動と判断された場合、基地局装置100は、高速移動用ネイバーリストを無線端末に対して報知する(S403)。高速移動用ネイバーリストを受信した無線端末200は、ネイバーリスト内の基地局装置に対して無線品質の測定を行ない、ハンドオーバ候補局として報告を行ない、基地局装置100は、ハンドオーバターゲット報告を受信する(S404)。基地局装置100は、報告された無線品質を、高速移動用テーブルに設定された品質情報と比較し、ハンドオーバの実行を行なうか判断する(S406)。高速移動用テーブルに設定された品質以上の値であれば(S406:YES)、基地局装置100は、ハンドオーバを指示して(S407)、終了する。ステップ406で高速移動用テーブルに設定された品質未満の値であれば(NO)、基地局装置100は、ステップ404に遷移する。
【0044】
上述した実施例によれば、高速移動時の不必要なハンドオーバ発生を抑制し、適切なハンドオーバ先基地局を提供することで、スループットレート低下および切断数を抑えることができる。
【符号の説明】
【0045】
40…スイッチ、50…コアスイッチ、100…基地局装置、101…アンテナ、102…無線IF、103…通信処理部、104…装置制御部、105…CPU、106…メモリ、107…記憶装置、108…回線IF、109…セクター制御部、110…内部バス、200…端末、700…通常ネイバーリスト、710…高速移動用ネイバーリスト、800…Route Updateテーブル、900…ハンドオーバテーブル、1000…移動体通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末の移動速度を判断するために前記無線端末から近傍の複数の基地局装置の無線品質を報告させる機能と、報告された無線品質から無線端末の移動速度を判断する機能とを備え、
高速移動する無線端末に高速移動用ネイバーリストを報知し、
予め高速移動用に調整されたハンドオーバテーブルのハンドオーバ条件に基づいて、前記高速移動無線端末を他の基地局装置にハンドオーバさせることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局装置であって、
前記報告された無線品質から、フェージング状況解析を行ない、無線端末の移動速度を判断することを特徴とする基地局装置。
【請求項3】
予め高速移動の軌道を予想して、ハンドオーバ先の基地局装置を選定し、且つ、ハンドオーバ先の基地局装置の無線品質を指定するハンドオーバテーブルを有し、指定されたハンドオーバ先基地局装置に指定された無線品質でハンドオーバを行なうことを特徴とする基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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