説明

基材にマーキングを付けるための水性ベースで透明のコーティング

本発明は、水性ベースの溶媒を含有し、エネルギーに暴露することによって高いコントラストのマーキングを生成する無色透明コーティングを形成する組成物を提供する。本発明は、これら組成物の製造方法、これら組成物でコーティングした基材及びそれらの製造方法、これら組成物を使用した、マーキングが付いた基材の製造方法、並びに後者の方法により得られる、マーキングが付いた基材も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材にマーキングを付けるためのコーティング組成物、これら組成物の製造方法、これら組成物でコーティングした基材及びそれらの製造方法、これら組成物を使用した、マーキングが付いた基材の製造方法、並びに後者の方法により得られる、マーキングが付いた基材に関する。
【0002】
パッケージングには、通常、例えばロゴ、バーコード、使用期限又はバッチ番号等の情報を含むマーキングを付ける必要がある。これを達成する方法の一つは、組成物をパッケージングにコーティングすることであり、この組成物は、例えば熱等のエネルギーで処理することにより、目に見えるマーキングを形成する。エネルギーとしてレーザー照射を用いる場合、マーキングは非常に小さいので、ヒトの眼に見えないか又は殆ど見えない。
【0003】
WO 02/068205には、対象物にマーキングを付ける方法が記載されており、該方法では、対象物が、例えばポリヒドロキシ化合物等の官能基を有する材料、並びに金属化合物、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄酸化物又は塩及び有機金属を含有する配合物を含み、又は該配合物でコーティングされる。2種の成分がレーザーの照射により反応して、コントラストの付いた色の製品を形成する。
【0004】
WO 02/068205の水性ベースの組成物は、黄色又は灰色/緑色のマーキングのみを提供し、黒色のマーキングを提供しない欠点がある。黒色のマーキングは、有機溶媒ベースの系を用いてのみ得ることができる。加えて、記載されている組成物は、紙又はプラスチックのコーティングには適していない。
【0005】
WO 02/074548は、多価金属、例えばモリブデン酸塩又はタングステン酸塩のオキシアニオンとバインダーと水又は有機溶媒とを含有するコーティング組成物を記載している。これらの組成物は、基材、例えばボール紙上にコーティングされ、乾燥されて不透明なコーティングを形成し、IRレーザー照射に暴露されて黒色のマーキングを生成する。
【0006】
WO 02/074548のコーティング組成物の欠点は、不透明なコーティングしか得ることができない点である。
【0007】
WO 2004/043704は、発色剤とモリブデン酸、タングステン酸又はバナジウム酸のアミンと水又は有機溶媒と、及び場合によりポリマーバインダーとを含有するコーティング組成物を記載している。有機溶媒ベースの系は、透明コーティングを形成することができるが、水性ベースの系は、不透明なコーティングしか形成しない。組成物は、基材、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミニウムフォイル又はポリプロピレンパッケージングフィルムにコーティングされ、乾燥され、IRレーザー又はサーマルプリンターに暴露されて着色マーキングを生成した。
【0008】
WO 2005/012442は、顔料と水又は有機溶媒と導電性ポリマーと場合によりバインダーとを含有するコーティング組成物を記載している。顔料は、モリブデン酸塩又はタングステン酸塩のオキシアニオンであることができる。
【0009】
WO 2004/043704及びWO 2005/012442の水性ベースのコーティング組成物の欠点は、不透明なコーティングしか得ることができない。
【0010】
本発明の目的は、無色透明のコーティングを形成し、かつエネルギーに対する暴露により高いコントラストのマーキングを生成する水性ベースのコーティング組成物を提供することにある。
【0011】
この目的は、請求項1記載のコーティング組成物、請求項22、請求項24及び請求項25記載の方法、並びに請求項23及び請求項28記載の基材により解決される。
【0012】
本発明の組成物は、酸素含有遷移金属化合物と水性ベースの溶媒とを含有し、エネルギーに対する暴露により高いコントラストのマーキングを生成する無色透明のコーティングを形成する。
【0013】
マーキングは、黒色が好ましい。
【0014】
酸素含有遷移金属化合物は、酸素含有のクロム、モリブデン及びタングステン化合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0015】
酸素含有のクロム、モリブデン及びタングステン化合物の例は、クロム、モリブデン及びタングステンの酸化物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム並びにモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−C1-8−アルキルアンモニウムのモノ−、ジ−及びポリクロム酸塩、−モリブデン酸塩及び−タングステン酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム並びにモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−C1-8−アルキルアンモニウムのヘテロポリクロム酸塩、−モリブデン酸塩及び−タングステン酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム並びにモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−C1-8−アルキルアンモニウムのペルオキソクロム酸塩、−モリブデン酸塩及び−タングステン酸塩、並びにヒドロキシル含有のクロム酸塩、モリブデン酸塩及びタングステン酸塩である。
【0016】
1-8−アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル及び2−エチルヘキシルである。
【0017】
クロム、モリブデン及びタングステンの酸化物の例は、酸化クロム(III)、酸化クロム(VI)、酸化モリブデン(IV)、酸化モリブデン(VI)、酸化タングステン(IV)及び酸化タングステン(VI)である。
【0018】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、並びにモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−C1-8−アルキルアンモニウムのモノ−、ジ−及びポリクロム酸塩、−モリブデン酸塩及び−タングステン酸塩の例は、クロム酸アンモニウム、クロム酸カリウム、クロム酸マグネシウム、二クロム酸アンモニウム、二クロム酸ナトリウム、二クロム酸カリウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸カルシウム、二モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウム、八モリブデン酸アンモニウム、十モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸マグネシウム、タングステン酸カルシウム、メタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸ナトリウム及びパラタングステン酸アンモニウムである。
【0019】
ポリクロム酸塩、−モリブデン酸塩及び−タングステン酸塩は、イソポリクロメート、イソポリモリブデート及びイソポリタングステートとも称することができる。
【0020】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム並びにモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−C1-8−アルキルアンモニウムのヘテロポリクロム酸塩、−モリブデン酸塩及び−タングステン酸塩の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはアンモニウム又はそれらの混合物をカウンターカチオンとして有する[FeIII(Mo624)]9-、[TeVI(Mo624)]6-、[IVII(Mo624)]5-、[CrIII(Mo6246)]3-、[MnIV(Mo932)]6-、[NiIV(Mo932)]6-、[(PV(Mo1240)]3-、[(SiIV(Mo1240)]4-、[(SIV(Mo1240)]4-、[(CeIV(Mo1242)]8-、[I(W624)]5-、[Te(W624)]6-、[P(W1240)]3-及び[Si(W1240)]4-である。
【0021】
ヒドロキシル含有のクロム酸塩、モリブデン酸塩及びタングステン酸塩の例は、水酸化クロム(III)、水酸化クロム(II)及びヘキサヒドロキシモリブデン酸塩である。
【0022】
酸素含有のクロム、モリブデン又はタングステン化合物は、商業的に入手可能であり、又は当該技術分野にて公知の方法により調製することができる。
【0023】
より好ましくは、酸素含有遷移金属化合物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム並びにモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−C1-8−アルキルアンモニウムのモノ−、ジ−及びポリクロム酸塩、−モリブデン酸塩及び−タングステン酸塩からなる群より選択される。
【0024】
最も好ましくは、酸素含有遷移金属化合物は、アルカリ金属、アンモニウム並びにモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−C1-8−アルキルアンモニウムのモノ−、ジ−及びポリモリブデン酸塩及び−タングステン酸塩からなる群より選択される。アルカリ金属及びアンモニウムのモノ−、ジ−及びポリモリブデン酸塩及び−タングステン酸塩の例は、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、二モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウム、八モリブデン酸アンモニウム、十モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、メタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸ナトリウム及びパラタングステン酸アンモニウムである。
【0025】
水性ベースの溶媒は、水、又は水と水混和性有機溶媒との混合物であることができる。あらゆる適切な水混和性有機溶媒を使用することができる。水混和性有機溶媒の例は、C1-4−アルカノール、C2-4−ポリオール、C3-6−ケトン、C4-6−エーテル、C2-3−ニトリル、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びスルホランであり、それによりC1-4−アルカノール及びC2-4−ポリオールは、C1-4−アルコキシで置換されてもよい。C1-4−アルカノールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール又はブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール及びtert−ブタノールである。C1-4−アルコキシ誘導体の例は、2−エトキシエタノール及び1−メトキシ−2−プロパノールである。C2-4−ポリオールの例は、グリコール及びグリセロールである。C3-6−ケトンの例は、アセトン及びメチルエチルケトンである。C4-6−エーテルの例は、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエチル及びテトラヒドロフランである。C2-3−ニトリルの例は、アセトニトリルである。
【0026】
好ましくは、水混和性有機溶媒は、C1-4−アルカノール、C2-4−ポリオール、C3-6−ケトン、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドからなる群より選択され、それによりC1-4−アルカノール及びC2-4−ポリオールは、C1-4−アルコキシで置換されてもよい。
【0027】
好ましくは、水及び水混和性有機溶媒の混合物の水/水混和性有機溶媒の比は、少なくとも0.1/1であり、より好ましくは0.5/1であり、最も好ましくは少なくとも1/1である。
【0028】
好ましくは、水性ベースの溶媒は水である。
【0029】
エネルギーは、熱、又は本発明の組成物で形成されたコーティングに適用するとマーキングを生成する他のあらゆるエネルギーであることができる。そのようなエネルギーの例は、UV、IR、可視又はマイクロ波照射である。
【0030】
好ましくは、エネルギーはIR照射である。より好ましくは、エネルギーは、780〜1,000,000nmの範囲の波長を有するIR照射である。更に好ましくは、エネルギーは、COレーザー又はNd:YAGレーザーにより生成されるIR照射である。最も好ましくは、エネルギーは、10,600nmの波長を有する、COレーザーにより生成されるIR照射である。
【0031】
透明コーティングは、可視波長の80%を超える、好ましくは90%を超える透過率を有するコーティングとして定義することができる。透過率は、UV/Vis分光器を使用して、可視領域の特定の波長における透過率を測定することにより決定することができる。
【0032】
好ましくは、本発明の組成物はまた、有機酸、ポリヒドロキシ化合物及び塩基からなる群より選択される添加剤を含有する。
【0033】
有機酸は、式R1−COOHで示されることができるが、ここでR1は、水素、C1-13−アルキル、C2-11−アルケニル又はアリールであってもよく、それによりC1-13−アルキル及びC2-11−アルケニルは、ヒドロキシル、カルボキシ、NHCOC1-4−アルキル及び/又はアリールで一又は多置換されてもよく、かつアリールは、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-4−アルキル、C1-4−アルコキシ、ジ(C1-4−アルキル)アミノ及び/又はアリールで一又は多置換されてもよい。
【0034】
アリールの例は、フェニル及びナフチルである。ハロゲンの例は、塩素及び臭素である。C1-4アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル及びtert−ブチルである。C1-4−アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ及びtert−ブトキシである。
【0035】
1がC1-13−アルキルである式R1−COOHの有機酸の例は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸及びミリスチン酸である。
【0036】
1がC1-13−アルキルであり、これがヒドロキシル、カルボキシ及び/又はアリールで一又は多置換され、それによりアリールは、C1-4−アルキル、C1-4−アルコキシ及び/又はアリールで一又は多置換されている式R1−COOHの有機酸の例は、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、フェニル酢酸、p−トリル酢酸、4−ビフェニル酢酸、4−メトキシフェニル酢酸、3,4−ジメトキシフェニル酢酸、1−ナフチル酢酸、ヒドロ桂皮酸、3,4,5−トリメトキシヒドロ桂皮酸、4−フェニル酪酸及びマンデル酸である。
【0037】
1がC2-11−アルケニルである式R1−COOHの有機酸の例は、トランス−2−ペンテン酸、トランス−3−ヘキセン酸、2,4−ヘキサジエン酸、2,6−ヘキサジエン酸、トランス−2−オクテン酸及びウンデシレン酸である。
【0038】
1がC2-11−アルキルであり、これがヒドロキシル、カルボキシ、NHCOC1-4−アルキル及び/又はアリールで一又は多置換され、それによりアリールは、モノ−又はポリヒドロキシル、ハロゲン、C1-4−アルキル及び/又はC1-4−アルコキシで置換されている式R1−COOHの有機酸の例は、アスコルビン酸、フマル酸、マレイン酸、ムコン酸、α−アセトアミド桂皮酸、4−メチル桂皮酸、フェルラ酸、トランス−桂皮酸、トランス−3、4−ジメトキシ桂皮酸、トランス−2−クロロ桂皮酸、トランス−3,4,5−トリメトキシ桂皮酸及びトランス−スチリル酢酸である。
【0039】
1がアリールである式R1−COOHの有機酸の例は、安息香酸及び1−ナフトエ酸である。R1がアリールであり、これがヒドロキシル、C1-4−アルキル及び/又はジ(C1-4−アルキル)アミノで一又は多置換されている式R1−COOHの有機酸の例は、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、4−(ジメチルアミノ)安息香酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸及び1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸である。
【0040】
有機酸の混合物を使用することも可能である。
【0041】
好ましい有機酸は、式R1−COOHであり、ここでR1は水素、C1-13−アルキル又はC2-11−アルケニルであってもよく、それによりC1-13−アルキル及びC2-11−アルケニルは、ヒドロキシル、カルボキシ、NHCOC1-4−アルキル及び/又はアリールで一又は多置換されてもよく、アリールは、ヒドロキシル、C1-4−アルキル、C1-4−アルコキシ及び/又はアリールで一又は多置換されてもよい。
【0042】
好ましい有機酸の例は、ギ酸、酢酸、酪酸、ラウリン酸、乳酸、2,6−ヘキサジエン酸、ウンデシレン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、ムコン酸、フェニル酢酸、p−トリル酢酸、4−ビフェニル酢酸、4−メトキシフェニル酢酸、マンデル酸、α−アセトアミド桂皮酸、4−メチル桂皮酸、フェルラ酸、トランス−桂皮酸及びトランス−スチリル酢酸である。
【0043】
より好ましい有機酸は、ラウリン酸、乳酸、2,6−ヘキサジエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、ムコン酸、フェニル酢酸、マンデル酸、フェルラ酸及びトランス−桂皮酸からなる群より選択される。
【0044】
最も好ましい有機酸は、酒石酸又はクエン酸である。
【0045】
有機酸がD−エナンチオマー、L−エナンチオマー又はラセミ体として存在し得る場合、これら3つの全形態が含まれる。
【0046】
好ましいポリヒドロキシ化合物は、例えば単糖類、二糖類及び多糖類等の炭水化物類、並びにカルボニル基がヒドロキシル基に還元されている、いわゆる糖アルコールであるそれらの誘導体からなる群より選択される。
【0047】
単糖類の例は、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、果糖、リボース、エリトロース及びキシロースである。二糖類の例は、マルトース、セルビオース、乳糖及びショ糖である。多糖類の例は、セルロース、澱粉、アラビアゴム、デキストリン及びシクロデキストリンである。糖アルコールの例は、メソエリトリトール、ソルビトール、マンニトール及びペンタエリトリトールである。
【0048】
より好ましいポリヒドロキシ化合物は、二糖類、多糖類及び糖アルコールである。
【0049】
最も好ましいポリヒドロキシ化合物は、ショ糖、アラビアゴム及びメソエリトリトールである。
【0050】
ポリヒドロキシ化合物がD−エナンチオマー、L−エナンチオマー又はラセミ体として存在し得る場合、これら3つの全形態が含まれる。
【0051】
塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウムの水酸化物及び炭化物、並びに式(R234)Nのアミンからなる群より選択されてもよく、ここでR2、R3及びR4は、同一若しくは異なっていてもよく、かつ水素、C1-8−アルキル若しくはアリールであってもよく、又はR2は、水素、C1-8−アルキル若しくはアリールであってもよく、かつR3とR4は、それらが結合する窒素と一緒になって、5又は6員環を形成してもよく、それによりC1−8−アルキル及びアリールは、ヒドロキシル又はアミノで一又は多置換されてもよい。
【0052】
アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムの水酸化物及び炭化物の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウムである。
【0053】
式(R234)Nのアミンの例は、アンモニア、トリエチルアミン、ジ−及びトリブチルアミン、ジ−及びトリペンチルアミン、ジ−及びトリヘキシルアミン、モノ−、ジ−及びトリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、エチレンジアミン、1,2−及び1,3−ジアミノプロパン、アニリン、モルホリン、ピペリジン、ピラジン並びにピロリジンである。
【0054】
好ましい塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムの水酸化物、及び式(R234)Nのアミンであり、ここでR2、R3及びR4は、同一又は異なっていてもよく、かつ水素又はC1-8−アルキルであってもよく、それによりC1-8−アルキルは、ヒドロキシル又はアミノで一又は多置換されてもよい。
【0055】
より好ましい塩基は、アルカリ金属又はアンモニウムの水酸化物、及びアンモニアである。
【0056】
好ましくは、塩基/酸素含有遷移金属化合物のモル比は、少なくとも7:1、より好ましくは少なくとも9:1、最も好ましくは少なくとも18:1である。
【0057】
本発明の組成物の好ましい一実施態様において、添加剤は、有機酸又はポリヒドロキシ化合物である。この実施態様において、酸素含有遷移金属化合物は、好ましくはアルカリ金属及びアンモニウムのモノ−、ジ−及びポリモリブデン酸塩並びに−タングステン酸塩からなる群より選択され、より好ましくはアルカリ金属及びアンモニウムのモノ−及びジ−モリブデン酸塩並びに−タングステン酸塩、例えばモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、二モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム及びタングステン酸カリウムからなる群より選択される。酸素含有遷移金属化合物が二モリブデン酸アンモニウムであり、添加剤が有機酸であるか、又は酸素含有遷移金属化合物が、アルカリ金属のモノモリブデン酸塩又は−タングステン酸塩、例えばモリブデン酸又はタングステン酸ナトリウム又はカリウムであり、添加剤がポリヒドロキシ化合物である組成物が特に好ましい。
【0058】
本発明の組成物の別の好ましい実施態様において、添加剤は塩基である。この実施態様において、酸素含有遷移金属化合物は、好ましくはアルカリ金属及びアンモニウムのモノ−、ジ−及びポリモリブデン酸塩、より好ましくは八モリブデン酸アンモニウムである。
【0059】
本発明の組成物は、水溶性又は水分散性ポリマーバインダーを更に含有することが好ましい。
【0060】
水溶性とは、少なくともポリマーバインダー5gが、25℃で水100gに可溶であることを意味する。
【0061】
あらゆる適切な水溶性又は水分散性ポリマーバインダー、例えばアクリルポリマー、スチレンポリマー、ビニルポリマー及びそれらの誘導体、ポリオレフィン、ポリウレタン及び天然ポリマー並びにそれらの誘導体を使用することができる。
【0062】
ポリマーバインダーの混合物を使用することもできる。
【0063】
アクリルポリマーは、少なくとも一種のアクリルモノマーから、又は少なくとも一種のアクリルモノマーと、例えばスチレンモノマー、ビニルモノマー、オレフィンモノマー若しくはマレイン酸モノマー等の少なくとも一種の他のエチレン性不飽和ポリマーとから形成されたポリマーである。
【0064】
アクリルモノマーの例は、(メタ)アクリル酸又はその塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、C1-6−アルキル(メタ)アクリレート、例えばエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート又はヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジ(C1-4−アルキルアミノ)−C1-6−アルキル(メタ)アクリレート、例えばジメチルアミノエチルアクリレート又はジエチルアミノエチルアクリレート、ジ(C1-4−アルキルアミノ)C1-6−アルキルアミン及び(メタ)アクリル酸から形成されたアミドである。
【0065】
スチレンモノマーの例は、スチレン、4−メチルスチレン及び4−ビニルビフェニルである。ビニルモノマーの例は、ビニルアルコール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルイソブチルエーテル及び酢酸ビニルである。オレフィンモノマーの例は、エチレン、プロピレン、ブタジエン及びイソプレン、並びにそれらの塩素化又はフッ素化誘導体、例えばテトラフルオロエチレンである。マレイン酸モノマーの例は、マレイン酸、無水マレイン酸及びマレイミドである。
【0066】
アクリルポリマーの例は、例えばCiba(登録商標)Glascol(登録商標)LE15、LS20及びLS24の商品名の下でCibaから販売されているカルボキシル化アクリルコポリマー、例えばCiba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26の商品名の下でCibaから販売されているカルボキシル化スチレンアクリルコポリマー、例えばCiba(登録商標)Glascol(登録商標)C44の商品名の下でCibaから販売されているスチレンアクリルコポリマー、並びに例えばCiba(登録商標)Glascol(登録商標)E11の商品名の下でCibaから販売されているポリアクリル酸ポリマーである。
【0067】
スチレンポリマーは、少なくとも一種のスチレンモノマーと、少なくとも一種のビニルモノマー、オレフィンモノマー及び/又はマレイン酸モノマーとから形成されたポリマーである。スチレンポリマーの例は、スチレンブタジエンスチレンブロックポリマー、スチレンエチレンブタジエンブロックポリマー、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロックポリマー及びスチレン−無水マレイン酸コポリマーである。
【0068】
ビニルポリマーは、少なくとも一種のビニルモノマーから、又は少なくとも一種のビニルモノマーと少なくとも一種のオレフィンモノマー若しくはマレイン酸モノマーとから形成されたポリマーである。ビニルポリマーの例は、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、部分加水分解された酢酸ポリビニル及びメチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマーである。それらの誘導体の例は、カルボキシ修飾ポリビニルアルコール、アセトアセチル修飾ポリビニルアルコール、ジアセトン修飾ポリビニルアルコール及びケイ素修飾ポリビニルアルコールである。
【0069】
ポリオレフィンは、少なくとも一種のオレフィンモノマー、又は少なくとも一種のオレフィンモノマー若しくはマレイン酸モノマーから形成されたポリマーである。ポリオレフィンの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン及びイソプロピレン−無水マレイン酸コポリマーである。
【0070】
ポリウレタンは、少なくとも一種のジイソシアネートモノマーと、少なくとも一種のポリオールモノマー及び/又はポリアミンモノマーとから形成されたポリマーである。ジイソシアネートモノマーの例は、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0071】
天然ポリマーの例は、澱粉、セルロース、ゼラチン、カゼイン(caesin)及び天然ゴムである。誘導体の例は、酸化澱粉、澱粉−酢酸ビニルグラフトコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びアセチルセルロースである。
【0072】
ポリマーバインダーは、当該技術分野において公知であり、例えば適切なモノマーから出発した重合等の公知の方法により製造することができる。
【0073】
好ましくは、ポリマーバインダーは、アクリルポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、部分加水分解された酢酸ポリビニル、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー、カルボキシ修飾ポリビニルアルコール、アセトアセチル修飾ポリビニルアルコール、ジアセトン修飾ポリビニルアルコール及びケイ素修飾ポリビニルアルコール、イソプロピレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリウレタン、セルロース、ゼラチン、カゼイン(caesin)、酸化澱粉、澱粉−酢酸ビニルグラフトコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース並びにアセチルセルロースからなる群より選択される。
【0074】
より好ましくは、ポリマーバインダーはアクリルポリマーである。
【0075】
最も好ましくは、ポリマーバインダーは、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)の商品名の下で、Cibaから販売されているアクリルポリマー、例えばCiba(登録商標)Glascol(登録商標)LE15、LS20、LS24、LS26、E11及びC44である。
【0076】
好ましくは、本発明の組成物は、更なる成分を含むことができる。
【0077】
コーティング組成物中に含まれることができる更なる成分は、組成物の性能を改善するのに適切な任意の成分であることができる。更なる成分の例は、IR吸収剤、UV吸収剤、顔料、発色剤、安定剤、酸化防止剤、及び製品に添加されて、その製造源を示す様々な物質であるタガントである。
【0078】
IR吸収剤の例は、例えばCiba(登録商標)Irgalube(登録商標)211の商品名の下で販売されているアルキル化トリフェニルホスホロチオネートである。UV吸収剤の例は、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンである。
【0079】
像非形成領域と像形成領域間のコントラストを高めるために、又は偽造防止対策として、顔料を添加することができる。
【0080】
像非形成領域と像形成領域間のコントラストを高めるために添加し得る顔料の例は、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、水酸化アルミニウム、タルク、酸化亜鉛、非晶質シリカ、硫酸バリウム、ポリスチレン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、中空プラスチック顔料及びそれらの混合物である。
【0081】
偽造防止対策として添加し得る顔料の例は、蛍光顔料又は磁性顔料である。
【0082】
発色剤の例は、フタリド、フルオラン、トリアリールメタン、ベンゾオキサジン、キナゾリン、スピロピラン、キノン、チアジン及びオキサジン、又はそれらの混合物である。
【0083】
フタリドの例は、クリスタルバイオレットラクトン(3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチル−アミノフタリド)、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、7−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3−メチル−1−フェニルスピロ[4H−クロメノ[2,3−c]ピラゾール−4(1H)−3’フタリド、3,3−ビス−[2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル−4,5,6,7−テトラブロモフタリド及び3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリドである。
【0084】
フルオランの例は、3−ジ(エチル)アミノ−6−メチル−7−(tert−ブトキシカルボニル)アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチル−アミノ−6−メチル−7−(ジベンジルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−ベンゾ[a]フルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル−アミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン及び2−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオランである。
【0085】
ベンゾオキサジンの例は、EP 0187329A1に記載されているように調製し得る2−フェニル−4−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−6−メチル−7−ジメチルアミノ−3,1−ベンゾオキサジン、及び2−フェニル−4−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−8−メチル−7−ジメチルアミノ−3,1−ベンゾオキサジンである。
【0086】
キナゾリンの例は、4,4’−[1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシ−4,2−キナゾリンジイル]ビス[N,N−ジエチルベンゼンアミン]である。トリアリールメタンの例は、GB1,548,059に記載されているように調製し得るビス(N−メチルジフェニルアミン)−4−イル−(N−ブチルカルバゾール)−3−イル−メタンである。
【0087】
スピロピランの例は、1’,3’,3’−トリメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン]、1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b][1,4]オキサジン]及び1’,3’,3’−トリメチルスピロ−[2H−1−ベンゾチオピラン−2,2’−インドリン]である。
【0088】
キノンの例は、ヘマトキシリンである。オキサジンの例は、3,7−ビス(ジメチル−アミノ)−10−ベンゾイルフェノキサジンである。チアジンの例は、3,7−ビス(ジメチルアミノ)−10−ベンゾイルフェノチアジンである。
【0089】
好ましくは、発色剤はフタリド若しくはフルオラン又はそれらの混合物である。
【0090】
好ましくは、場合による他の成分は、水不溶性IR吸収剤、例えばBaytron P及び/又は発色剤を含まない。
【0091】
本発明のコーティング組成物で形成されたコーティングは、ラミネート層又はオーバープリントワニスでコーティングすることができる。ラミネート層又はオーバープリントワニスの材料が、像を形成するレーザーの波長を吸収しないように選択される場合、レーザー感受性コーティングは、ラミネートを損傷するか又はラミネートにマーキングを付けることなく、ラミネート層を通して像を形成することができる。またラミネート又はオーバープリントワニスは、エネルギー処理前にコーティングを着色させないように、理想的に選択される。
【0092】
本発明の組成物は、全組成物の重量に基づき、10〜95重量%、好ましくは10〜90重量%の水性ベースの溶媒を含有することができる。
【0093】
本発明の組成物は、全組成物の重量に基づき、10〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%、最も好ましくは1〜20重量%の酸素含有遷移金属化合物を含有することができる。
【0094】
本発明の組成物は、全組成物の重量に基づき、10〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%、最も好ましくは1〜20重量%の添加剤を含有することができる。
【0095】
本発明の組成物は、全組成物の重量に基づき、10〜80重量%、好ましくは1〜70重量%、より好ましくは1〜60重量%、最も好ましくは1〜50重量%の水溶性又は水分散性ポリマーバインダーを含有することができる。
【0096】
本発明の組成物は、全組成物の重量に基づき、0〜30重量%、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10重量%、最も好ましくは0重量%の更なる成分を含有することができる。
【0097】
本発明の組成物は、すべて全組成物の重量に基づき、水性ベースの溶媒10〜95重量%、酸素含有遷移金属化合物1〜50重量%、添加剤1〜50重量%、水溶性又は水分散性ポリマーバインダー1〜80重量%、更なる成分0〜30重量%からなることができる。
【0098】
好ましくは、本発明の組成物は、すべて全組成物の重量に基づき、水性ベースの溶媒10〜95重量%、酸素含有遷移金属化合物1〜40重量%、添加剤1〜40重量%、水溶性又は水分散性ポリマーバインダー1〜70重量%、更なる成分0〜20重量%からなることができる。
【0099】
より好ましくは、本発明の組成物は、すべて全組成物の重量に基づき、水性ベースの溶媒10〜90重量%、酸素含有遷移金属化合物1〜30重量%、添加剤1〜30重量%、水溶性又は水分散性ポリマーバインダー1〜60重量%、更なる成分0〜10重量%からなることができる。
【0100】
最も好ましくは、本発明の組成物は、すべて全組成物の重量に基づき、水性ベースの溶媒10〜90重量%、酸素含有遷移金属化合物1〜20重量%、添加剤1〜20重量%、水溶性又は水分散性ポリマーバインダー1〜50重量%、更なる成分0重量%からなることができる。
【0101】
本発明の一部はまた、水性ベースの溶媒を酸素含有遷移金属化合物と混合する工程を含む、本発明の組成物の製造方法である。
【0102】
好ましくは、方法は、水性ベースの溶媒を酸素含有遷移金属化合物及び添加剤と混合する工程を含む。
【0103】
好ましい一実施態様において、方法は、水性ベースの溶媒を、酸素含有遷移金属化合物、添加剤及び水溶性又は水分散性ポリマーバインダーと混合する工程を含む。更なる成分が存在することができる。
【0104】
別の好ましい実施態様において、方法は、(i)水性ベースの溶媒を酸素含有遷移金属化合物及び添加剤と混合する工程、並びに(ii)工程(i)で得られた混合物の存在下、適切なモノマーの重合により水溶性又は水分散性ポリマーバインダーを形成する工程を含む。更なる成分が工程(i)で存在することができるか、又は重合後に添加することができる。
【0105】
本発明の一部はまた、本発明のコーティング組成物でコーティングした基材である。
【0106】
基材は、シート又は他のあらゆる三次元物体であることができ、透明又は不透明であってもよく、また平坦な又は平坦でない表面を有することができる。平坦でない表面を有する基材の例は、充填した紙袋、例えばセメントの紙袋である。基材は、紙、ボール紙、金属、木材、布地、ガラス、セラミック及び/又はポリマーから形成することができる。ポリマーの例は、ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、二軸配向ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニルポリエステル及びポリスチレンである。好ましくは、基材は、紙、ボール紙又はポリマーから形成される。
【0107】
コーティングの厚さは、通常、0.1〜1,000μmの範囲で選択される。好ましくは、1〜500μmの範囲である。より好ましくは、1〜200μmの範囲である。最も好ましくは、1〜20μmの範囲である。
【0108】
本発明の別の態様は、本発明の組成物を基材にコーティングする工程を含む、コーティング基材の製造方法である。
【0109】
基材には、標準的なコーティング塗布、例えばバーコーター塗布、回転塗布、噴霧塗布、カーテン塗布、浸漬塗布、エアー塗布、ナイフ塗布、ブレード塗布又はロール塗布を用いて、本発明の組成物をコーティングすることができる。組成物はまた、様々なマーキング刷方法、例えばシルクスクリーンマーキング刷、グラビアマーキング刷、オフセットマーキング刷及びフレキソマーキング刷により、基材に塗布することができる。基材が紙の場合、組成物は、サイズプレス又は抄紙機のウェットエンドにも適用することができる。
【0110】
コーティング組成物は、例えば周囲温度又は高温で乾燥することができる。高温は、エネルギー暴露前の像の形成を避けるように理想的に選択される。
【0111】
本発明の一部はまた、i)本発明の組成物を基材にコーティングする工程、及びii)マーキングが意図されるコーティング基材の部分をエネルギーに暴露して、マーキングを生成させる工程を含む、マーキングが付いた基材の製造方法である。
【0112】
好ましくは、マーキングは黒色である。
【0113】
エネルギーは、熱、又は本発明の組成物でコーティングされた基材に適用されるときにマーキングを生成する、他のあらゆるエネルギーであることができる。そのようなエネルギーの例は、UV、IR、可視又はマイクロ波照射である。
【0114】
エネルギーは、あらゆる適切な方法でコーティング基材に適用することができる。例えば、熱はサーマルプリンターを使用して適用することができ、UV、可視及びIR照射は、UV又はIRレーザーを使用して適用することができる。IRレーザーの例は、COレーザー、Nd:YAGレーザー及びIR半導体レーザーである。
【0115】
好ましくは、エネルギーはIR照射である。より好ましくは、エネルギーは780〜1,000,000nmの範囲の波長を有するIR照射である。更に好ましくは、エネルギーはCOレーザー又はNd:YAGレーザーにより生成されるIR照射である。最も好ましくは、エネルギーは10,600nmの波長を有するCOレーザーにより生成されるIR照射である。
【0116】
一般に、IRレーザーの正確な出力及びライン速度は、用途により決定され、また像の生成に十分であるように選択され、例えばIRレーザーの波長が10,600nmであり、レーザービーム径が0.35mmのとき、出力は通常0.5〜4Wであり、ライン速度は、一般に300〜1,000mm/sである。
【0117】
本発明の更なる別の態様は、上記の方法により得ることができるマーキングが付いた基材である。
【0118】
本発明のコーティング組成物は、水性ベースであるために、揮発性有機化学物質が全く生成されないか又は少量しか生成されず、透明コーティングを生成し、高いコントラストの黒色像を生成するという利点を有する。加えて、コーティング組成物は、エネルギー暴露前には着色されず、形成されたマーキングは、高い安定性、特に高い耐光堅牢性を有する。
【0119】
実施例
実施例1
モリブデン酸ナトリウム(3g、12.4mmol)を水(8.8g)に溶解した後、混合物をショ糖(3g、4.4mmol)で処理して、無色溶液を得た。次に、固形分42重量%、及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)200mPa×sを有するスチレンアクリルコポリマーベースの自己架橋性水性エマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)C44(5.2g)を加え、撹拌を30分間継続した。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0120】
実施例2
タングステン酸ナトリウム(3g、9.1mmol)及びショ糖(3g、8.8mmol)を水(8.5g)に加え、混合物を10分間撹拌して、無色溶液を生成した。固形分46重量%、pH8.5及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)700mPa×sを有するカルボキシル化スチレンアクリルコポリマーの水性マイクロエマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(9.5g)を加え、混合物を撹拌して白色エマルジョンを形成した。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0121】
実施例3
タングステン酸ナトリウム(4g、12.1mmol)及びショ糖(4g、11.7mol)を水(6.5g)に加え、混合物を10分間撹拌して、無色溶液を生成した。固形分46重量%、pH8.5及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)700mPa×sを有するカルボキシル化スチレンアクリルコポリマーの水性マイクロエマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(9.5g)を加え、混合物を撹拌して白色エマルジョンを形成した。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0122】
実施例4
タングステン酸ナトリウム(3g、9.1mol)及びメソエリトリトール(3g、24.6mol)を水(8.5g)に加え、混合物を10分間撹拌して、無色溶液を生成した。固形分46重量%、pH8.5及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)700mPa×sを有するカルボキシル化スチレンアクリルコポリマーの水性マイクロエマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(9.5g)を加え、混合物を撹拌して白色エマルジョンを形成した。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0123】
実施例5
タングステン酸ナトリウム(3g、9.1mol)及びアラビアゴム(3g)を水(8.5g)に加え、混合物を10分間撹拌して、薄茶色の縣濁液を生成した。固形分46重量%、pH8.5及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)700mPa×sを有するカルボキシル化スチレンアクリルコポリマーの水性マイクロエマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(9.5g)を加え、混合物を撹拌して薄茶色の縣濁液を形成した。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0124】
実施例6
モリブデン酸ナトリウム(3g、12.4mmol)及びショ糖(3g、8.8mmol)を、固形分60重量%、pH3〜4及び20℃での粘度(Brookfield 20rpm)200mPa×sを有するカルボキシル化アクリルコポリマーの水性エマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LE15溶液(11g)に加えた。次に、混合物を10分間撹拌して、コーティングエマルジョンを生成した。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0125】
実施例7
二モリブデン酸アンモニウム(1g、2.95mmol)を水(10g)に溶解し、D,L−酒石酸(0.5g、3.33mmol)を加え、混合物を撹拌して、無色溶液を生成した。次に、ポリビニルアルコール(Mw〜47,000)(1g)を加え、撹拌を更に約30分間継続した。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0126】
実施例8
二モリブデン酸アンモニウム(1g、2.95mmol)を水(10g)に溶解し、クエン酸(0.5g、2.38mmol)を加え、混合物を撹拌して、無色溶液を生成した。次に、pH2〜2.5及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)2,000〜4,000mPa×sを有するポリアクリル酸ベースの溶液であるCiba(登録商標)Glascol(登録商標)E11(1g)を加え、撹拌を更に30分間継続した。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0127】
実施例9
二モリブデン酸アンモニウム(1g、2.95mmol)を水(10g)に溶解し、ショ糖(0.5g、1.46mmol)を加え、混合物を撹拌して、無色溶液を生成した。次に、pH2〜2.5及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)2,000〜4,000mPa×sを有するポリアクリル酸ベースの溶液である、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)E11(1g)を加え、撹拌を更に30分間継続した。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0128】
実施例10
モリブデン酸ナトリウム(1g、4.13mmol)を水(4.5g)に溶解し、D,L−酒石酸(0.5g、3.33mmol)を加え、混合物を撹拌して、無色溶液を生成した。次に、固形分42重量%、及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)200mPa×sを有するスチレンアクリルコポリマーベースの自己架橋性水性エマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)C44(0.5g)を加え、撹拌を更に30分間継続した。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0129】
実施例11
八モリブデン酸アンモニウム(3g、2.39mmol)を水(10g)と25%(w/w)アンモニア水溶液(1.5g、22.0mmol)との混合物に加え、この混合物を45分間撹拌して、無色溶液を生成した。固形分46重量%、pH8.5及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)700mPa×sを有するカルボキシル化スチレンアクリルコポリマーの水性マイクロエマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(9.5g)を加えた。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0130】
実施例12
八モリブデン酸アンモニウム(6g、4.78mmol)を水(12g)とN,N−ジメチルエタノールアミン(4.5g、50.5mmol)との混合物に加え、この混合物を45分間撹拌して、無色溶液を生成した。次に、水(4.9g)と、固形分46重量%、pH8.5及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)700mPa×sを有するカルボキシル化スチレンアクリルコポリマーの水性マイクロエマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(44.6g)とを加えた。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0131】
実施例13
八モリブデン酸アンモニウム(3g、2.39mmol)を水(7g)と25%(w/w)アンモニア水溶液(3g、44.0mmol)との混合物に加え、この混合物を45分間撹拌して、無色溶液を生成した。次に、固形分48重量%、pH9.0及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)1,000mPa×sを有するカルボキシル化アクリルコポリマーの水性マイクロエマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS24と、固形分42重量%、及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)200mPa×sを有するスチレンアクリルコポリマーベースの自己架橋性水性エマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)C44との混合物(比2:1)(50g)を加えた。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,000nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0132】
実施例14
八モリブデン酸アンモニウム(3g、2.39mmol)を水(7g)及び25%(w/w)アンモニア水溶液(3g、44mmol)に加え、混合物を45分間撹拌して、無色溶液を生成した。固形分46重量%、pH8.5及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)700mPa×sを有するカルボキシル化アクリルコポリマーの水性マイクロエマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS20と、固形分42重量%、及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)200mPa×sを有するスチレンアクリルコポリマーベースの自己架橋性水性エマルジョンである、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)C44との混合物(比2:1)(50g)を加えた。次に、コーティング配合物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0133】
実施例15
分子量1,000g/mol、固形分29.8%及びpH9.0を有する水性スチレン無水マレイン酸コポリマーのアンモニウム塩である、Elf Atochemにより販売されているSMA(登録商標)1000(59.05g)と、水(3.55g)とを容器に入れ、85℃に加熱した。次に、3%(w/w)過硫酸アンモニウム水溶液(2.75g)を加えた。モノマー、スチレン(14.52g)及び2−エチルヘキシルアクリレート(11.88g)と、開始剤、3%(w/w)過硫酸アンモニウム水溶液(8.25g)とを、各々3時間及び3.5時間かけて加えた。次に、反応を85℃で更に1時間保持して、重合を完了させた。反応混合物を40℃に冷却し、活性成分として2−メチル−3(2H)−イソチアゾロン及び5−クロロ−2−メチル−3(2H)−イソチアゾロンを含有する殺生物剤であるActicide(登録商標)LGを加え、63μm篩を通して濾過した。次に、得られた分散ポリマーを機械式混合機に加えた。水(2.20g)、続いて35%(w/w)アンモニア水溶液(7.0g、144mmol)を、機械式混合機により形成された渦中に加えた。次に、八モリブデン酸アンモニウム(10.0g、7.9mmol)を徐々に加え、混合を30分間継続して、均質な混合物を確実に得た。得られたコーティング組成物は、固形分45重量%、pH9.0及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)250mPa×sであった。次に、コーティング組成物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。
【0134】
実施例16
分子量1,000g/mol、固形分29.8重量%及びpH9.0を有する水性スチレン無水マレイン酸コポリマーのアンモニウム塩である、Elf Atochemにより販売されているSMA(登録商標)1000(46.98g)、水(9.17g)、八モリブデン酸アンモニウム(10.0g、7.9mmol)並びに35%(w/w)アンモニア水溶液(7.0g、144mmol)を容器に入れ、85℃に加熱した。次に、3%(w/w)過硫酸アンモニウム水溶液(1.35g)を加えた。モノマー、スチレン(11.55g)及び2−エチルヘキシルアクリレート(9.45g)と、開始剤、3%(w/w)過硫酸アンモニウム水溶液(4.05g)とを、各々3時間及び3.5時間かけて加えた。次に、反応混合物を85℃で更に1時間保持して、重合を完了させた。反応混合物を40℃に冷却し、活性成分として2−メチル−3(2H)−イソチアゾロン及び5−クロロ−2−メチル−3(2H)−イソチアゾロンを含有する殺生物剤であるActicide(登録商標)LGを加え、63μm篩を通して濾過して、固形分45重量%(スチレン2−エチルヘキシルアクリレートコポリマー21重量%(55:45(w/w))、SMA(登録商標)1000 14重量%、八モリブデン酸アンモニウム10重量%)、pH9.0及び25℃での粘度(Brookfield 20rpm)50mPa×sを有するコーティング組成物を得た。次に、コーティング組成物を普通紙、コーティング紙及びポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングして、COレーザー(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザービーム径:0.35mm、ライン速度300〜1,000mm/s)を使用したIRレーザー照射により直ちにマーキングを付けて黒色のマーキングを生成する透明コーティングを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素含有遷移金属化合物及び水性ベースの溶媒を含有し、エネルギーに暴露することによって高いコントラストのマーキングを生成する無色透明コーティングを形成する、組成物。
【請求項2】
酸素含有遷移金属化合物が、酸素含有のクロム、モリブデン及びタングステン化合物からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
酸素含有遷移金属化合物が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム並びにモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−C1-8−アルキルアンモニウムのモノ−、ジ−及びポリクロム酸塩、−モリブデン酸塩及び−タングステン酸塩からなる群より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
酸素含有遷移金属化合物が、アルカリ金属、アンモニウム並びにモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−C1-8−アルキルアンモニウムのモノ−、ジ−及びポリモリブデン酸塩及び−タングステン酸塩からなる群より選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
有機酸、ポリヒドロキシ化合物及び塩基からなる群より選択される添加剤を更に含有する、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
有機酸が、式R1−COOHで示され、ここでR1は水素、C1-13−アルキル、C2-11−アルケニル又はアリールであってもよく、それによりC1-13−アルキル及びC2-11−アルケニルは、ヒドロキシル、カルボキシ、NHCOC1-4−アルキル及び/又はアリールで一又は多置換されてもよく、かつアリールは、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-4−アルキル、C1-4−アルコキシ、ジ(C1-4−アルキル)アミノ及び/又はアリールで一又は多置換されてもよい、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
ポリヒドロキシ化合物が、炭水化物類及びカルボニル基がヒドロキシル基に還元されているその誘導体からなる群より選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
塩基が、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウムの水酸化物並びに炭酸化物、並びに式(R234)Nのアミンからなる群より選択され、ここでR2、R3及びR4は、同一若しくは異なっていてもよく、かつ水素、C1-8−アルキル若しくはアリールであってもよく、又はR2は水素、C1-8−アルキル若しくはアリールであり、かつR3とR4は、それらが結合する窒素と一緒になって、5若しくは6員環を形成してもよく、それによりC1-8−アルキル及びアリールは、ヒドロキシル又はアミノで一又は多置換されてもよい、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
添加剤が、有機酸又はポリヒドロキシ化合物である、請求項5記載の組成物。
【請求項10】
酸素含有遷移金属化合物がジモリブデン酸アンモニウムであり、添加剤が有機酸である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
酸素含有遷移金属化合物が、アルカリ金属のモノモリブデン酸塩又は−タングステン酸塩であり、添加剤がポリヒドロキシ化合物である、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
添加剤が塩基である、請求項5記載の組成物。
【請求項13】
酸素含有遷移金属化合物が、八モリブデン酸アンモニウムである、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
塩基/酸素含有遷移金属化合物のモル比が、少なくとも7:1である、請求項5記載の組成物。
【請求項15】
水溶性又は水分散性ポリマーバインダーを更に含有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
更なる成分を含有する、請求項1〜15のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
全組成物の重量に基づき、10〜95重量%の水性ベースの溶媒を含有する、請求項1〜16のいずれか一項記載の組成物。
【請求項18】
全組成物の重量に基づき、10〜50重量%の酸素含有遷移金属化合物を含有する、請求項1〜17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項19】
全組成物の重量に基づき、10〜50重量%の添加剤を含有する、請求項5〜18のいずれか一項記載の組成物。
【請求項20】
全組成物の重量に基づき、10〜80重量%の水溶性又は水分散性ポリマーバインダーを含有する、請求項15〜19のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
全組成物の重量に基づき、0〜30重量%の更なる成分を含有する、請求項16〜20のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
水性ベースの溶媒を酸素含有遷移金属化合物と混合することを含む、請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物でコーティングした基材。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物で基材をコーティングすることを含む、コーティング基材の製造方法。
【請求項25】
i)請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物で基材をコーティングすること、及びii)マーキングが意図されるコーティング基材の部分をエネルギーに暴露して、マーキングを生成することを含む、マーキングが付いた基材の製造方法。
【請求項26】
エネルギーが、熱又はUV、IR、可視若しくはマイクロ波照射である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
エネルギーがIR照射である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれか一項記載の方法により得られる、マーキングが付いた基材。

【公表番号】特表2009−503170(P2009−503170A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523308(P2008−523308)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064299
【国際公開番号】WO2007/012578
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】