説明

基材上に架橋した有機コーティングを製造する方法

本発明は、有機コーティング組成物の重合及び/又は架橋のための新規の方法、より詳細には、短波紫外線(UV−C)照射下での支持体上における架橋した有機コーティングの製造に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機コーティング組成物の重合及び/又は架橋のための新規の方法に関する。より詳細には、本発明は、短波紫外(UV−C)放射線照射下での支持体(基材)上における架橋した有機コーティングの製造に関する。これらのコーティングは、接着剤、保護ワニス、ラッカー、インク及び塗料の分野において用いるのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
接着剤、保護ワニス、ラッカー、インク及び塗料の分野において広く用いられている表面処理技術の1つは、「UV硬化」と称される技術である。
【0003】
この技術は、ベース材料(基材)の当初の特性を維持し且つ物理的連続性を提供しながら、材料に新たな表面特性を付与するので、広く用いられている。
【0004】
「UV硬化」技術は、電磁放射線(UV放射線)を用いて有機材料(ベース材料又は基材)の表面に架橋したポリマーネットワークを形成させることによって化学的変化及び物理的変化をもたらす表面処理技術である。
【0005】
この技術は、特に接着剤、保護ワニス、ラッカー、インク及び塗料のようなUV放射線で硬化(架橋)させることができる加工製品について、広く普及している。と言うのも、有機溶剤又は水性溶剤をベースとする慣用の製品と比較して、これらの製品は技術レベルにおいて利点(架橋が迅速であり、材料の収縮が少ないという利点)を示すからである。
【0006】
現実には、ラジカル開裂によって活性プロタゴニスト(protagonistes)の生成を可能にし、架橋及び/又は重合の引き金となり且つこれを継続させることができるのは、UV放射線の光エネルギーである。
【0007】
UV放射線によって架橋する物質の大部分はラジカル系である。配合物は、プレポリマー、反応性希釈剤及び添加剤のようなベース化学成分に加えて、光開始剤を含む。この光開始剤は、UV放射線の作用下でフリーラジカルを発生し、これがラジカル重合反応を開始させる。
【0008】
一般的に、照射は100〜400nmの範囲の波長のUV放射線下で実施される。通常用いられるUVランプは、高圧水銀蒸気UVランプと称されるものである。これらは、水銀原子の励起をもたらし、水銀原子が基底状態に戻る時に放射線の放射をもたらす電気アークランプである。高圧UVランプは、2バールより高い内部圧力及び約80〜240W/cmのアーク出力で作動し、これは、UV−C放射線への変換度が低いことを考慮に入れると、約2〜10W/cmのUV−C出力に相当する。
【0009】
アーク高圧水銀蒸気ランプは、バーナー(これが光を発生する)、反射板(リフレクター)及び端子(ターミナル)を含む。バーナーは、出発ガス及び痕跡量の水銀を充填されて両端をシールされた中空石英管から成る。シールされた管の端部から金属電極が通されていて、アークのための小さい空隙を形成している。作動中に、前記電極にピーク電圧が印加されて、出発ガス中で火花(スパーク)が発生して水銀を蒸発させる。ひとたびガス中でこの火花が発生したら、このガスにより一層低電圧で電流が通されて、光出力をもたらす。
【0010】
第2のタイプの高圧水銀蒸気ランプも存在し、これは高電圧の供給の代わりのマイクロ波供給源を含む系を電極の代わりに用いる。マイクロ波は、反射板の後ろに置かれたマグネトロンによって発生せしめられ、水銀をイオン化するのに必要なエネルギーを供給する。これらのランプは、電極がないこと及び管直径がより狭いことを除いて、前出のランプと同じ外観を有する。
【0011】
これらのUVランプによって発生する光の分散スペクトルは、短波紫外線(UV−C)の領域に限定されず、可視領域(多色スペクトルの放射)にさえ及ぶ。従って、実用の際には熱の発生によって多量のエネルギーが失われる。
【0012】
重合のための従来のUV技術は、うまく機能するが、用いるランプの性状のせいで次のような多くの欠点を有する:
・これらのランプによって放出される熱は高く(約900℃のランプ下温度)、
・有意のオゾン発生が起こり、そして
・この技術は複雑で実施しにくく、特に電気供給システム(約380V)及びこれらのランプの冷却システムがけっこう嵩張り、扱いにくく、高い資本コスト及び比較的高い運転コストを必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
かくして、本発明の1つの目的は、有機コーティング組成物の重合及び/又は架橋のための新規の方法であって、上記の欠点をもはや示さないものを開発することにある。
【0014】
この目的を達成するために、本発明者らは、全く驚くべきことに、そして予期しなかったことに、短波紫外(UV−C)領域において擬似単色光を発する少なくとも1つの低圧ランプを使用することによって、短波紫外線タイプの放射線の照射下で架橋及び/又は重合可能な有機コーティング組成物を、支持体上で、工業的な速度(600m/分又は実際にはさらにそれ以上の速度)の連続コーティングの場合にさえ、重合させることが可能であることを実証するという功績をあげた。短波紫外線は、200〜280nmの範囲のスペクトル領域をカバーする。
【0015】
このことは極めて注目すべきことである。と言うのも、低圧ランプは、
・標準的な低圧水銀蒸気ランプについてはUV−C放射線において約0.5W/cm(入力時の電力:約60W)、及び
・低圧アマルガムランプについてはUV−C放射線において約2W/cm(入力時の電力:約300W)
のアーク出力を示すことが知られているからである。
【0016】
これに対して、これまでの慣行では連続塗布又はコーティング用途については高いアーク出力の中庸圧又は高圧水銀蒸気ランプが用いられてきており、このアーク出力は高圧蒸気ランプについて約80〜240W/cm(約14000Wの入力時の電力)である。
【0017】
さらに、低圧蒸気ランプは、UV−C領域における照射出力が低いせいで、主として水の殺菌の分野において用いられている。この技術は、処理すべき水を、水中に沈めた一連のランプを含む通路に通しながら、UV−C放射線源に曝すことから成る。いずれにしても、それらの技術的特徴から見て、これらの低圧蒸気ランプは、低いUV−C照射出力を必要とする水処理の分野においてのみ用いられてきた。
【0018】
これらの様々な理由で、重合及び/又は架橋による支持体上での有機コーティングの製造に低圧蒸気ランプを使用することは、当業者には好ましくないという先入観を持たれ続けてきた。
【0019】
本発明は、前記の先入観を解消すること及び支持体上での有機コーティングの生産において示されていた特定の問題を解決することの両方が可能な解決策を提供するものである。
【0020】
本発明の第2の目的は、短波紫外(UV−C)放射線の照射下で支持体上に架橋した有機コーティングを調製するための新規の方法を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、本発明の第1の主題は、
(a)200〜280nmの範囲の波長の短波紫外(UV−C)放射線の照射下で架橋及び/又は重合可能な有機コーティング組成物を調製する工程;並びに
(c)前記組成物を前記UV−C領域で擬似単色光を発する少なくとも1つの低圧ランプで照射して該組成物を重合及び/又は架橋させる工程:
を含む、有機コーティング組成物の重合及び/又は架橋方法にある。
【0022】
特に有利な実施形態に従えば、工程(a)と工程(c)との間に、前記有機コーティング組成物を支持体上に塗布又はコーティングすることを含む追加の工程(b)を実施する。
【0023】
好ましい実施形態に従えば、支持体は紙、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエステルタイプのものである。
【0024】
別の好ましい実施形態に従えば、コーティングされた支持体を、工程(c)の間及び/又は後に、少なくとも40℃、好ましくは40℃〜170℃の範囲の温度に加熱する。
【発明の効果】
【0025】
当業者は、本発明をよく知った後には、上記の従来技術を上回る本発明の利点を、そのコンテキストの如何に拘らず、認識するだろう。ここですでに、本発明の方法の有効性及びその実施のために必要な装置の占めるスペースが狭くてすむことを強調することができる。また、次の利点を挙げることもできる:
・これらのランプによって放出される熱が少ない(ランプ表面の温度は約40〜50℃である);
・オゾンの発生が抑制される;
・この技術は単純であり、より経済的に実施される;
・得られるコーティングは無臭である;
・架橋後に得られるコーティングの剥離力が従来の方法によって得られるものと匹敵するものである。
【0026】
かくして、本発明に従う方法は、工業的に用いた時にもたらす収益及び節約に関して、極めて傑出したものであることがわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に従って有用な低圧UV−Cランプとしては、2つのタイプのもの、即ち、低圧蒸気ランプ、特に低圧水銀蒸気ランプ、並びに低圧アマルガムランプ(金、銀、水銀及びイリジウム混合物)がある。
【0028】
低圧アマルガムランプは、同じレベルの電気エネルギーに対して、従来の低圧水銀蒸気放出ランプより3〜5倍多くのUV−Cエネルギーを提供するという利点を示す。低圧アマルガムランプは、約300Wの作動電力に対して約2W/cmのUV−C照射出力を示す。
【0029】
低圧水銀蒸気ランプは、石英管を通して253.7nmにおいて擬似単色光を発する。この石英管(ランプのケーシング)は185nmからフィルターとしての働きをし、オゾンの生成を抑制する。
【0030】
これらは、直径1.5〜2cmの長い管の形で提供される。発光強度は、電圧、ランプ周囲の温度及びその稼動期間(低圧ランプは約8000時間の寿命を有する)に依存する。これらは、約60Wの作動電力に対して約0.2W/cmのUV−C照射出力を示す。
【0031】
本発明の方法に従えば、低圧蒸気ランプ、特に低圧水銀蒸気ランプは、温度を20〜70℃の範囲、好ましくは30〜65℃の範囲、より一層好ましくは35〜55℃の範囲に保った環境(チャンバー)に置くのが有利である。
【0032】
その理由は、低圧水銀蒸気ランプについては温度がランプ内で保つことができる圧力に影響を及ぼすからである。温度が低すぎると圧力の低下をもたらし、その中で圧縮される水銀原子が少なくなり、従って励起が難しくなり、従って変換される電気の量の減少をもたらす。逆に、温度が高くなると圧力が高くなり、水銀原子の電子の励起が増すが、しかし光エネルギーは253.7nmよりはるかに広いスペクトルで放出される(これは特に高圧及び中庸圧ランプの場合に当てはまる)。
【0033】
低圧蒸気ランプの数は、コーティング速度及び重合させるべき有機配合物に応じて選択される。
【0034】
低圧水銀蒸気ランプの製造業者は多数存在する。例えばPhilips社より販売されているTUV、TUV PL-S又はTUV PL-Lタイプのランプ(18〜60Wの電力)、特にTUV PL-LタイプのUVランプ(60Wの電力)を挙げることができる。
【0035】
照射時間は短くてよく、即ち1秒未満、薄いコーティングについては0.数秒程度であることができる。硬化時間は、
(a)用いるUVランプの数、
(b)UV−C放射線への露光時間、及び/又は
(c)組成物とUVランプとの間の間隔
によって制御される。
【0036】
支持体上に付着させるコーティングの量は、様々であることができる。支持体の前進速度は様々であることができ、約600m/分の速度に達することができ、それ以上であることさえできる。
【0037】
組成物は、少量の液体を均一に付着させることができる装置を用いて塗布される。
【0038】
この目的で、例えば、特に2つの重なり合ったロールを含む「Helio glissant」と称される装置を用いることができる。その下側のロールは組成物を含むコーティング槽中に浸漬され、その役割は上側のロールを非常に薄い層で含浸させることである。そして、上側のロールの役割は、含浸された組成物を所望の量で支持体上に付着させることである。この所望量は、互いに対して逆方向に回転する2本のロールのそれぞれの速度を調節することによって得られる。
【0039】
また、ロール間で異なる回転速度を調節することによって付着量が調節される「マルチロールコーティングヘッド」の名前で知られた装置(4、5又は6本ロール)を用いることもできる。
【0040】
有機コーティングの量は一般的に処理表面1m2当たり0.1〜5gの範囲とする。この量は、支持体の性状に依存する。
【0041】
支持体は、ブリキのような金属材料、又は好ましくは例えば紙若しくは厚紙タイプのセルロース材料、又はビニルタイプのポリマーであることができる。ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエステルのような熱可塑性ポリマーフィルム、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)タイプの支持体が特に有利である。
【0042】
本発明の1つの実施形態に従えば、200〜280nmの範囲の波長の紫外−C(UV−C)放射線の照射下で架橋及び/又は重合可能な前記有機コーティング組成物は、
(a)カチオンルート又はラジカルルートで架橋及び/又は重合可能な少なくとも1つの官能基Faを有する少なくとも1種の架橋及び/又は重合可能な有機モノマー、オリゴマー及び/又はポリマーA、並びに
(b)有効量の、UV−C放射線下で活性な少なくとも1種のカチオン性光開始剤又は少なくとも1種のラジカル光開始剤(特に少なくとも1種のオニウムホウ酸塩から成るもの)
を含む。
【0043】
前記有機コーティング組成物は、液体又はゲルの形で提供することができる。
【0044】
本発明の好ましい形態に従えば、カチオンルートで架橋及び/又は重合可能な前記官能基Faは、アルケニル、エポキシ、(メタ)アクリレート、アルケニルオキシ、オキセタン、ウレタン及び/又はジオキソラン官能基より成る群から選択される。
【0045】
カチオンルートで架橋及び/又は重合可能な少なくとも1つの官能基Faを有する架橋及び/又は重合可能な有機モノマー、オリゴマー及び/又はポリマーAに関しては、次の有機分子を挙げることができる。
【0046】
・モノ−、ジ−又はポリアクリレート及びメタクリレート、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸アリル、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス[1−(2−アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、分子量200〜500g/モルのポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビスメタクリレート、アクリルモノマーの混合物、例えば米国特許第4652274号明細書に記載されたもの、並びに米国特許第4642126号明細書に記載されたアクリルオリゴマー;
【0047】
・不飽和アミド、例えばメチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド及び5−(β−メタクリルアミノエチル)メタクリレート;
【0048】
・ビニル誘導体、例えばスチレン、フタル酸ジアリル、コハク酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール及びアクロレイン;
【0049】
・ビニルエーテル類、例えばメチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル及びエチレングリコールジビニルエーテル;環状ビニルエーテル類;
【0050】
・エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、n−ブチルグリシジルエーテル、n−オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル又はクレシルグリシジルエーテル;
【0051】
・エポキシ樹脂、例えば1,2−、1,3−及び1,4−環状エーテル(1,2−、1,3−及び1,4−エポキシと称される)。
【0052】
「Encyclopedia of Polymer Science and Technology」第6巻(1986年)、第322頁には、本発明にとって好適な数多くのエポキシ樹脂が記載されている。例えば、次のものを挙げることができる:Dow Chemical社より提供される「ERL(登録商標)」の名称で示される商品であるビニルシクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド(「ERL 4206(登録商標)」)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキセンカルボン酸3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル(「ERL 4201(登録商標)」)、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル(「ERL 0400(登録商標)」)、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(「ERL 4221(登録商標)」)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(「ERL 4289(登録商標)」)、ポリプロピレングリコールから誘導される脂肪族エポキシ化合物(「ERL 4050(登録商標)」及び「ERL 4052(登録商標)」)、ジペンテンジオキシド(「ERL 4269(登録商標)」)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキセン−メタ−ジオキサン(「ERL 4234(登録商標)」)、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、例えばプロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド、グリシドール、Shell Chemical社より提供される「EPON(登録商標)」の名称で商品として入手できるエポキシ樹脂「EPON 828(登録商標)」、「EPON 1001(登録商標)」、「EPON 1004(登録商標)」、「EPON 1007(登録商標)」、「EPON 1009(登録商標)」及び「EPON 2002(登録商標)」;ジシクロペンタジエンジオキシド、エポキシ化植物油、例えばElf Atochem North America社より提供される「VIKOLOX(登録商標)」及び「VIKOFLEX(登録商標)」の名称で販売されているもの、「KRATON(登録商標)」の名称で商品として入手できる液状エポキシ化ポリマー、例えばShell Chemical社より販売されている製品「L-207(登録商標)」;エポキシ化ポリブタジエン、例えばElf Atochem社より提供される「POLY BD(登録商標)」の名称で販売されているもの;1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、フェノール/ホルムアルデヒドポリグリシジルエーテル;エポキシ化フェノール性ノボラック樹脂、例えばDow Chemicalより提供される「DEN 431(登録商標)」及び「DEN 438(登録商標)」の名称で商品として入手できるもの;Vantico社より「ARALDITE ECN 1299(登録商標)」の名称で商品として販売されている製品;レゾルシノールジグリシジルエーテル;エポキシ化ポリスチレン/ポリブタジエンブレンド、例えばDaicel USA社から「EPOFRIEND(登録商標)」の名称で商品として入手できるもの、例えば製品「EPOFRIEND A1010(登録商標)」;Shell Chemical社より「HELOXY(登録商標)」の名称で商品として販売されているアルキルグリシジルエーテル誘導体、例えばC8〜C10アルキルグリシジルエーテル(「HELOXY MODIFIER 7(登録商標)」)、C12〜C14アルキルグリシジルエーテル(製品「HELOXY MODIFIER 8(登録商標)」)、ブチルグリシジルエーテル(製品「HELOXY MODIFIER 61(登録商標)」)、クレシルグリシジルエーテル(製品「HELOXY MODIFIER 62(登録商標)」)、p−(t−ブチル)フェニルグリシジルエーテル(製品「HELOXY MODIFIER 65(登録商標)」)、多官能性グリシジルエーテル、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(製品「HELOXY MODIFIER 67(登録商標)」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(「HELOXY MODIFIER 68(登録商標)」)、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(「HELOXY MODIFIER 107(登録商標)」)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(「HELOXY MODIFIER 44(登録商標)」)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(「HELOXY MODIFIER 48(登録商標)」)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(「HELOXY MODIFIER 84(登録商標)」)、ポリグリコールジエポキシド(「HELOXY MODIFIER 32(登録商標)」)、並びにビスフェノールFエポキシド。
【0053】
光活性化による重合及び/又は架橋は一般的に、有機組成物中に組み込まれた光開始剤(ラジカル光開始剤を含む)の存在下で開始される。
【0054】
当業者であれば、本発明に従って用いられる波長のUV−Cランプの下で光触媒系を活性にするために随意に光増感剤と組み合わせて用いることができる好適なラジカル光開始剤(λmax<280nm)を難なく選択することができるだろう。
【0055】
ラジカル光開始剤の例としては、次の物質を挙げることができる:9−キサンテノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2,2’−ビス(3−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン)、2,6−ジヒドロキシアントラキノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1,5−ジヒドロキシアントラキノン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、5,7−ジヒドロキシフラボン、過酸化ジベンゾイル、2−ベンゾイル安息香酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、アントロン、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ポリ[1,4−ベンゼンジカルボニル−alt−ビス(4−フェノキシフェニル)メタノン]。
【0056】
好ましくは、前記ラジカル光開始剤(群)は、4,4’−ジメトキシベンゾイン;フェナントレンキノン;2−エチルアントラキノン;2−メチルアントラキノン;1,8−ジヒドロキシアントラキノン;過酸化ジベンゾイル;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン;ベンゾイン;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン;ベンズアルデヒド;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルケトン;ベンゾイルアセトン;及びそれらの混合物:より成る群から選択される。
【0057】
商品としてのラジカル光開始剤製品の例としては、Ciba-Geigy社より販売されている製品であるIrgacure 369(登録商標)、Irgacure 651(登録商標)、Irgacure 907(登録商標)、Darocure 1173(登録商標)等を挙げることができる。
【0058】
慣用的には、光開始剤(一般的にカチオン性光開始剤)によるUV−C放射線下での架橋の間に、光開始剤は照射下で強酸を放出する。この強酸が官能基のカチオン重合反応を触媒する。
【0059】
UV−C放射線下で活性な任意のカチオン性光活性剤は本発明に従って好適であることができ、そして当業者であればUV−C放射線下で活性なカチオン性光活性剤を難なく選択することができるであろう。
【0060】
UV−C放射線下で活性なカチオン性光活性剤の非限定的な例としては、オニウムホウ酸塩を挙げることができる。本発明の第1の好ましい別形態に従えば、このホウ酸塩の特に好適なアニオン性部分は、次の通りである。
1’:[B(C65)4]-
2’:[(C65)2BF2]-
3’:[B(C64CF3)4]-
4’:[B(C64OCF3)4]-
5’:[B(C63(CF3)2)4]-
6’:[B(C632)4]-
7’:[C65BF3]-
【0061】
本発明の第2の好ましい別形態に従えば、用いることができるオニウム塩は、数多くの文献、特に米国特許第4026705号明細書、米国特許第4032673号明細書、米国特許第4069056号明細書、米国特許第4136102号明細書、米国特許第4173476号明細書及びヨーロッパ特許公開第562897号公報に記載されている。これらの中でも、次のカチオンが特に好ましい。
[(Φ−CH3)2I]+
[(C817−O−Φ)2I]+
[(C1225−Φ)2I]+
[CH3−Φ−I−Φ−C1225]+
[(HO−CH2−CH2)2S−CH2−Φ]+
[(C1225−CH(OH)−CH2−O−Φ)2I]+
[(HO−CH2−CH2−O−Φ)3S]+
[(HO−CH2−CH2−O−Φ)2−S−Φ−O−C817]+
[CH3−Φ−I−Φ−CH(CH3)2]+及び
[(CH3)3C−Φ−I−Φ−C(CH3)3]+
【0062】
これら2つの好ましい別形態に従って、オニウムホウ酸塩タイプの光開始剤の例としては、次の物質を挙げることができる。
[(C1225−CH(OH)−CH2−O−Φ)2I]+[B(C65)4]-
[(C817−O−Φ)2I]+[B(C65)4]-
[(CH3)3C−Φ−I−Φ−C(CH3)3]+[B(C65)4]-
[(C1225−Φ)2I]+[B(C65)4]-
[(Φ−CH3)2I]+[B(C65)4]-
[(Φ−CH3)2I]+[B(C64OCF3)4]-
[CH3−Φ−I−Φ−CH(CH3)2]+[B(C65)4]-
[(HO−CH2−CH2)2S−CH2−Φ]+[B(C65)4]-
[CH3−Φ−I−Φ−CH(CH3)2]+[B(C63(CF3)2)4]-及び
[(C1225Φ)2I]+[B(C63(CF3)2)4]-
【0063】
この開始剤は、もちろん、光重合及び/又は架橋を活性化するのに充分且つ有効な量で存在させる。
【0064】
用語「開始剤の有効量」とは、本発明に従えば、重合及び/又は架橋を開始させるのに充分な量を意味するものとする。この量は、有機コーティング組成物100重量部を重合及び/又は架橋させるためには、一般的に0.001〜1重量部の範囲、大抵の場合0.005〜0.5重量部の範囲とする。
【0065】
本発明の最後の主題事項は、支持体上に架橋した有機コーティングを調製するに当たって、UV−C領域において擬似単色光を発する少なくとも1つの低圧ランプを使用することにある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)200〜280nmの範囲の波長の短波紫外(UV−C)放射線の照射下で架橋及び/又は重合可能な有機コーティング組成物を調製する工程;並びに
(c)前記組成物を前記UV−C領域で擬似単色光を発する少なくとも1つの低圧ランプで照射して該組成物を重合及び/又は架橋させる工程:
を含む、有機コーティング組成物の重合及び/又は架橋方法。
【請求項2】
工程(a)と工程(c)との間に、前記有機コーティング組成物を支持体上に塗布又はコーティングすることを含む追加の工程(b)を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低圧ランプが低圧水銀蒸気ランプである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記低圧ランプが低圧アマルガムランプである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記低圧蒸気ランプを20〜70℃の範囲、好ましくは30〜65℃の範囲、より一層好ましくは35〜55℃の範囲に保った温度を有するチャンバー内に置く、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
コーティングされた支持体を工程(c)の間及び/又は後に少なくとも40℃、好ましくは40℃〜170℃の範囲の温度に加熱する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
200〜280nmの範囲の波長の紫外線C(UV−C)の照射下で架橋及び/又は重合可能な前記有機コーティング組成物が、
(a)カチオンルート又はラジカルルートで架橋及び/又は重合可能な少なくとも1つの官能基Faを有する少なくとも1種の架橋及び/又は重合可能な有機モノマー、オリゴマー及び/又はポリマーA、並びに
(b)有効量の、前記UV−C放射線下で活性な少なくとも1種のカチオン性光開始剤又は少なくとも1種のラジカル光開始剤、特に少なくとも1種のオニウムホウ酸塩から成るもの
を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記官能基Faがアルケニル、エポキシ、アクリレート、アルケニルオキシ、オキセタン及びジオキソラン官能基より成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記支持体が紙、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエステルタイプのものである、請求項2〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
支持体上での架橋した有機コーティングの製造における、UV−C領域において擬似単色光を放射する少なくとも1つの低圧ランプの使用。

【公表番号】特表2009−511239(P2009−511239A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530520(P2008−530520)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066329
【国際公開番号】WO2007/031541
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(507421304)ブルースター シリコーン フランス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】