説明

基材強度評価装置及び基材強度評価方法

【課題】基材の捻れと当該基材に対する引張力を考慮して、基材の強度の評価を適正に行う。
【解決手段】基材強度評価装置において、試験片Fの延在方向の一端部F1が取り付け固定された一端固定部13に延在方向に沿った軸周りの回動駆動力を付与する駆動モーター11と、一端固定部の回動に応じて試験片の他端部F2に対し捻れるように回動する一端部に生じる捻れの反発力に係る反発力情報を一端部の回動角度に応じて取得する反発力取得部3と、試験片の捻れに応じて当該試験片の他端部に生じる引張力に係る引張力情報を取得する引張力取得部4と、反発力取得部により取得された回動角度に応じた反発力情報と、引張力取得部により取得された引張力情報とに基づいて、基材の強度を評価する制御部6と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスなどの基材の強度を評価する基材強度評価装置及び基材強度評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)を利用したフラットパネルディスプレイなどに用いられるガラス基板等の基材の強度を評価する各種の方法が知られている。とりわけ、有機EL素子では、その製造としてロール・ツー・ロール方式にて行う手法が知られているが、所定の張力が負荷された状態で連続して搬送される長尺な基材は、蛇行や当該蛇行が修正装置により修正されることにより基材に捻れが生じるため、当該基材の捻れの大きさによっては破断してしまう虞がある。このような破断を防止するために、基材の強度を予め評価しておくことが求められている。
この強度評価方法としては、例えば、基材の一部を試験片として、支点間距離を所定の大きさに設定して曲げ荷重を負荷する3点曲げ試験を行う方法(例えば、特許文献1参照)や、基材の延在方向や当該延在方向に略直交する方向に沿った所定の一方向の引張荷重を付加する引張試験を行う方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−308001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の強度評価方法を適用して、基材に対する曲げ荷重や引張荷重の負荷を別個に行っただけでは当該基材の強度の評価を適正に行うことができないといった問題がある。特に、ガラス製の基材は、薄型化に伴って機械的強度が低下してしまうものの、引張強度に対しては相対的に強いため、当該引張試験における基材の端部の固定の仕方によっては出力データがバラついてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、基材の捻れと当該基材に対する引張力を考慮して、基材の強度の評価を適正に行うことができる基材強度評価装置及び基材強度評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の基材強度評価装置は、
所定方向に延在する基材の延在方向の一端部が取り付け固定され、前記延在方向に対する移動が規制された一端固定部と、
前記基材の前記延在方向の前記一端部と反対側の他端部が取り付け固定され、前記延在方向に沿った軸周りの回動が規制された他端固定部と、
前記一端固定部に前記延在方向に沿った軸周りの回動駆動力を付与する回動駆動部と、
前記回動駆動部による前記一端固定部の回動に応じて前記他端部に対し捻れるように回動する前記一端部に生じる捻れの反発力に係る反発力情報を前記一端部の回動角度に応じて取得する第1取得部と、
前記基材の捻れに応じて当該基材の前記他端部に生じる引張力に係る引張力情報を取得する第2取得部と、
前記第1取得部により取得された前記回動角度に応じた前記反発力情報と、前記第2取得部により取得された前記引張力情報とに基づいて、前記基材の強度を評価する評価部と、
を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基材強度評価装置において、
前記評価部は、更に、
前記基材が破断した際に、前記第1取得部により取得された前記回動角度と前記第2取得部により取得された前記引張力情報とをグラフ化して表示部に表示させることを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の基材強度評価装置において、
前記基材の前記他端部に前記延在方向に沿って前記一端部から離れる方向に所定の引張荷重を付与する引張部を更に備えることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の基材強度評価装置において、
前記引張部は、更に、
前記回動駆動部による前記一端固定部の回動を停止させた状態で、前記基材の前記他端部に対して付与する前記所定の引張荷重の大きさを変化可能に構成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の基材強度評価装置において、
前記基材は、所定の厚さのガラス製の基材であることを特徴としている。
【0011】
請求項6に記載の発明の基材強度評価方法は、
所定方向に延在する基材の延在方向の一端部が取り付け固定され、前記延在方向に対する移動が規制された一端固定部と、前記基材の前記延在方向の前記一端部と反対側の他端部が取り付け固定され、前記延在方向に沿った軸周りの回動が規制された他端固定部と、を備える基材強度評価装置を用いた基材強度評価方法であって、
前記一端固定部に前記延在方向に沿った軸周りの回動駆動力を付与する付与工程と、
前記一端固定部の回動に応じて前記他端部に対し捻れるように回動する前記基材の前記一端部に生じる捻れの反発力に係る反発力情報を前記一端部の回動角度に応じて取得する第1取得工程と、
前記基材の捻れに応じて当該基材の前記他端部に生じる引張力に係る引張力情報を取得する第2取得工程と、
前記第1取得工程により取得された前記回動角度に応じた前記反発力情報と、前記第2取得工程により取得された前記引張力情報とに基づいて、前記基材の強度を評価する評価工程と、
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材が所定の角度捻れた状態での当該基材に対する引張力を考慮して、基材の強度の評価を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した一実施形態の基材強度評価装置の全体構成を模式的に示す正面図である。
【図2】図1の基材強度評価装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図1の基材強度評価装置による基材強度評価処理における基材の状態を模式的に示す図である。
【図4】図3の基材強度評価処理の結果の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態の基材強度評価装置100の全体構成を模式的に示す正面図であり、図2は、基材強度評価装置100の要部構成を示す機能ブロック図である。
【0015】
本実施形態の基材強度評価装置100は、例えば、薄板状の基材の一部を試験片Fとして、その強度を評価する装置である。
具体的には、図1及び図2に示すように、基材強度評価装置100は、試験片Fの一端部(例えば、右端部)F1側を所定方向に回動させる回動機構部1と、試験片Fの他端部(例えば、左端部)F2の位置を規制する位置規制部2と、回動機構部1による回動の際に試験片Fの一端部F1に生じる捻れの反発力を取得する反発力取得部3と、試験片Fの捻れに応じて当該試験片Fの他端部F2に生じる引張力を取得する引張力取得部4と、表示部5と、当該各部を制御する制御部6とを備えている。
なお、以下の説明では、試験片Fの回動軸方向となる当該試験片Fの延在方向を左右方向とし、正面視にて、位置規制部2側を左側とするとともに回動機構部1側を右側とする。
【0016】
先ず、試験片Fについて説明する。
試験片Fは、例えば、ガラスなどの脆性材料から構成された薄板状の基材(例えば、薄膜ガラス等)の一部分から構成される。当該基材は、例えば、有機EL素子を構成する各種の有機層、即ち、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等の形成に用いられるものである。
また、薄膜ガラスとしては、例えば、ケイ酸塩ガラスが用いられ、好ましくはシリカガラス、ホウ珪酸ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。また、薄膜ガラスは、例えば、オーバーフローダウンドロー法により長尺形状で肉薄(例えば、厚さが30μm〜200μm程度)に成形される。
なお、試験片Fとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルムを適用しても良い。
【0017】
試験片Fの左右方向(延在方向)の長さは、特に限定されるものではないが、回動機構部1と位置規制部2の配置間隔に応じて規定されている。同様に、試験片Fの左右方向に直交する幅方向の長さも、特に限定されるものではないが、回動機構部1の一端固定部13(後述)と位置規制部2の他端固定部21(後述)の大きさに応じて規定され、例えば、20〜50mm程度となっている。
【0018】
回動機構部1及び位置規制部2は、図1に示すように、左右方向に延在する支持台7に搭載され、この支持台7の右側に回動機構部1が配設されるとともに、支持台7の左側に位置規制部2が配設されている。
【0019】
回動機構部1は、駆動源をなす駆動モーター11と、この駆動モーター11のトルクを測定するトルク測定部12と、試験片Fの一端部F1が取り付け固定される一端固定部13とを備え、駆動モーター11の駆動に基づいて一端固定部13を所定方向(例えば、図1における手前方向等)に回転駆動させる。
【0020】
駆動モーター11は、制御部6のCPU61の制御下にて駆動し、回動駆動部として、一端固定部13に左右方向(試験片Fの延在方向)に沿った軸周りの回動駆動力を付与する。即ち、試験片Fの一端部F1が試験片固定部13bに固定された状態で、一端固定部13は、駆動モーター11から付与される回動駆動力に基づいて所定方向(例えば、図1における手前方向等)に回動する。
また、駆動モーター11は、例えば、支持台7の最も右側に配設されている。具体的には、駆動モーター11は、支持台7に配設されたモーター支持部14に、当該駆動モーター11の出力軸11aがモーター支持部14を左右方向に貫通して、試験片Fの延在方向と略等しい方向に延在するように配設されている。
また、駆動モーター11としては、所定の速度で回転駆動する各種のモーターを適用することができ、例えば、サーボモーターやDCブラシレスモーター等が挙げられる。
【0021】
トルク測定部12は、支持台7の駆動モーター11と一端固定部13の間の所定位置に配設されている。また、トルク測定部12は、例えば、トルク計などから構成され、その回転軸12aに第1カップリング15を介して駆動モーター11の出力軸11aが接続されている。そして、トルク測定部12は、試験片Fを捻ることで回転軸12a(駆動モーター11の出力軸11a)に所定の負荷が与えられた際に、電流値、回転軸12aの角速度(回転速度)、トルク値等を測定してトルク情報として取得する。
そして、トルク測定部12は、取得されたトルク情報を反発力取得部3(詳細後述)に出力する。
【0022】
なお、駆動モーター11として、例えば、サーボモーターを適用した場合には、比較的高い精度でトルク測定を行うことができるため、必ずしもトルク測定部12を備える必要はない。
また、第1カップリング15及び後述する第2カップリング16としては、例えば、リジッド型、スリット型、ディスク型、ベローズ型等の各種のものを適用することができる。
【0023】
一端固定部13は、例えば、支持台7のトルク測定部12の左側に配設されている。具体的には、一端固定部13は、トルク測定部12の回転軸12aが第2カップリング16を介して接続された軸部13aを有している。この軸部13aは、支持台7に配設された一端固定部支持部17に軸支され、当該軸部13aが一端固定部支持部17を左右方向に貫通して、試験片Fの延在方向と略等しい方向に延在するように配設されている。
また、軸部13aが第2カップリング16を介して接続された回転軸12aを有するトルク測定部12が支持台7に左右方向に位置決めされた状態で配設されていることにより、当該一端固定部13の左右方向に対する移動が規制されている。
【0024】
また、一端固定部13の軸部13aと反対側(例えば、左側)の端部には、試験片Fの一端部F1が取り付け固定される試験片固定部13bが設けられている。
試験片固定部13bは、試験片Fの一端部F1を取付け固定可能なものであれば如何なる構成であっても良く、例えば、試験片Fの表裏面を把持する把持機構や両面テープを介して貼着される平面部等から構成されている。
【0025】
なお、一端固定部13の試験片固定部13b及び後述する他端固定部21の試験片固定部21aに試験片Fを取付け固定する際には、当該試験片Fを支持台7側から支持する試験片支持用治具(図示略)や一端固定部13の回動を規制する回動規制用治具(図示略)等を用いても良い。
【0026】
位置規制部2は、試験片Fの他端部F2が取り付け固定される他端固定部21と、この他端固定部21に接続された試験片Fの他端部F2に生じる引張力を測定する引張力測定部22と、他端固定部21及び引張力測定部22を左右方向に移動させる移動機構部23と、この移動機構部23により移動可能な引張力測定部22及び他端固定部21を左右方向に位置決めする位置決め部24とを備えている。
【0027】
移動機構部23は、支持台7上に左右方向に延在するように配設されたスライドレール23aを有し、このスライドレール23aに一端固定部13及び引張力測定部22が左右方向にスライド移動自在にそれぞれ配設されている。具体的には、スライドレール23aの右側に一端固定部13が配設され、その左側に引張力測定部22の測定部本体22aを支持する本体支持部22bが配設されている。
【0028】
他端固定部21は、スライドレール23aに配設されることで、左右方向(試験片Fの延在方向)に沿った軸周りの回動が規制されている。即ち、他端固定部21は、左右方向に沿った軸周りの回動が規制された状態で、左右方向に対して移動自在となるようにスライドレール23aに配設されている。
【0029】
また、他端固定部21は、試験片Fの他端部F2が取り付け固定される試験片固定部21aが設けられている。この試験片固定部21aは、例えば、支持台7の表面からの距離が一端固定部13の試験片固定部13bと略等しくなるように配設され、これらの試験片固定部21a、13bによって、回動前にて平板状態の試験片Fが左右方向と略平行に支持される。
また、試験片固定部21aは、一端固定部13の試験片固定部13bと同様に、試験片Fの他端部F2を取付け固定可能なものであれば如何なる構成であっても良く、例えば、試験片Fの表裏面を把持する把持機構や両面テープを介して貼着される平面部等から構成されている。
【0030】
引張力測定部22は、測定部本体22aを支持する本体支持部22bがスライドレール23aに配設されることで、左右方向(試験片Fの延在方向)に沿った軸周りの回動が規制されている。即ち、引張力測定部22は、左右方向に沿った軸周りの回動が規制された状態で、左右方向に対して移動自在となるようにスライドレール23aに配設されている。
【0031】
測定部本体22aは、例えば、プッシュプルゲージ、ロードセルなどから構成され、その接続軸22cに他端固定部21が接続されて固定されている。
また、測定部本体22aは、試験片Fの他端部F2に対する一端部F1の捻れに応じて当該試験片Fの他端部F2に生じる引張力を測定して引張力情報を生成する。即ち、引張力測定部22及び他端固定部21は、位置決め部24により左右方向の位置が位置決めされた状態となっている。このため、回動機構部1による回動の際に試験片Fの他端部F2に対する一端部F1の捻れに応じて左右方向の両縁部どうしが近付く方向に当該試験片Fが引っ張られても、引張力測定部22及び他端固定部21が一端固定部13側に移動することなく、測定部本体22aは、他端固定部21に固定された試験片Fの他端部F2に生じる引張力を測定可能となっている。
そして、測定部本体22aは、生成された引張力情報を引張力取得部4(後述)に出力する。
【0032】
位置決め部24は、測定部本体22aを支持する本体支持部22bの他端固定部21と反対型の端部に接続され、当該本体支持部22bを左右方向に位置決めすることで引張力測定部22及び他端固定部21を左右方向に位置決めする。
即ち、位置決め部24は、スライドレール23aの左側に配設され、ユーザによる位置決め操作部24aの所定操作に基づいて、本体支持部22bの左右方向の位置を調節する。位置決め操作部24aは、例えば、位置決め本体部24bに螺子込まれ、先端が本体支持部22bに取り付け固定された位置決め用ネジであり、当該位置決め用ネジの位置決め本体部24bに対する螺子込み量の変化に伴って本体支持部22bが左右方向に移動する。そして、位置決め部24は、例えば、試験片Fが左右方向に沿って略平板状に配置されるように、ユーザによる位置決め操作部24aの操作量(例えば、位置決め用ネジの螺子込み量)に応じて本体支持部22b及び他端固定部21の左右方向の位置を調節する。
【0033】
また、位置決め部24は、試験片Fの他端部F2に左右方向に沿って一端部F1から離れる方向に所定の引張荷重を付与する引張部を構成している。即ち、位置決め部24は、ユーザによる位置決め操作部24aの所定操作に基づいて本体支持部22bの左右方向の位置を調節して、他端固定部21を回動機構部1の一端固定部13から離れる方向に移動させる。これにより、位置決め部24は、試験片Fの他端部F2に対して、左右方向に沿って一端部F1から離れる方向に所定の大きさの引張荷重を付与することができる。つまり、位置決め部24は、本体支持部22bを介して他端固定部21の左右方向の位置を変化させることで、試験片Fの他端部F2に対して付与する引張荷重の大きさを変化可能となっている。
なお、このとき付与される引張荷重は、引張力測定部22により測定されて引張力取得部4に出力される。
【0034】
反発力取得部3は、第1取得部として、トルク測定部12から出力され入力されたトルク情報に基づいて、回動機構部1による回動の際に試験片Fの一端部F1に生じる捻れの反発力を取得する。
即ち、試験片Fの他端部F2が取り付け固定された他端固定部21は、左右方向に沿った軸周りの回動が規制されているため、回動機構部1により一端固定部13を回動させると、当該回動に応じて試験片Fの一端部F1が他端部F2に対して捻れていく。このとき、トルク測定部12は、その回転軸12a(駆動モーター11の出力軸11a)に与えられた所定の負荷をトルク情報として反発力取得部3に出力する。
反発力取得部3は、入力されたトルク情報に基づいて、回転軸12a(駆動モーター11の出力軸11a)に与えられた所定の負荷を試験片Fの一端部F1に生じる捻れの反発力として、当該反発力に係る反発力情報を、一端部F1の回動角度と略等しい一端固定部13の回動角度に応じて逐次取得する。
【0035】
なお、反発力取得部3は、例えば、データロガー等から構成されるが、トルク測定部12から出力される反発力情報を一端部F1の回動角度に応じて取得可能な構成であれば如何なる構成であっても良い。
【0036】
引張力取得部4は、第2取得部として、引張力測定部22から出力され入力された試験片Fの他端部F2に生じる引張力に係る引張力情報を取得する。
即ち、回動機構部1の一端固定部13が、左右方向に位置決めされているとともに、引張力測定部22及び他端固定部21が、左右方向に位置決めされているため、回動機構部1による回動の際に試験片Fの他端部F2に対する一端部F1の捻れに応じて左右方向の両縁部どうしが近付く方向に当該試験片Fが引っ張られていく。このとき、引張力測定部22の測定部本体22aは、試験片Fの他端部F2に生じる引張力を測定して引張力情報として引張力取得部4に出力する。
引張力取得部4は、試験片Fの一端部F1が他端部F2に対して捻れる際に当該他端部F2に生じる引張力に係る引張力情報を逐次取得する。
【0037】
なお、引張力取得部4は、例えば、データロガー等から構成されるが、引張力測定部22から出力される引張力情報を取得可能な構成であれば如何なる構成であっても良い。
【0038】
表示部5は、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネルなどから構成されている。そして、表示部5は、制御部6のCPU61の制御下にて、基材強度評価処理の結果を表示画面に表示する。具体的には、表示部5は、制御部6から出力され入力された表示制御データに基づいて、基材強度評価処理の結果をグラフ化して表示する(後述;図4参照)。
【0039】
制御部6は、基材強度評価装置100の各部を制御するものであり、図2に示すように、CPU61と、RAM62と、ROM63等を備えている。
【0040】
CPU(Central Processing Unit)61は、ROM63に記憶されている基材強度評価装置100としての各種機能に関る各種のアプリケーションプログラムを読み出してRAM62内の作業領域に展開し、当該プログラムに従って当該基材強度評価装置100を統括的に制御する。
【0041】
RAM(Random Access Memory)62は、例えば、CPU61により実行される処理プログラム等を展開するためのプログラム格納領域や、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等を格納するデータ格納領域などを備える。
【0042】
ROM(Read Only Memory)63は、例えば、ハードディスクドライブ等により構成され、基材強度評価装置100で実行可能なシステムプログラム、当該システムプログラムで実行可能な各種処理プログラム、これら各種処理プログラムを実行する際に使用されるデータ等を記憶する。
具体的には、ROM63は、回動制御プログラム63a、基材強度評価プログラム63b等を記憶している。
【0043】
回動制御プログラム63aは、回動機構部1の一端固定部13を回動させて試験片Fの一端部F1を他端部F2に対して捻る処理を行う際に、CPU61により実行されるプログラムである。
即ち、回動制御プログラム63aは、駆動モーター11の駆動を制御して、試験片Fの一端部F1が固定される一端固定部13を所定方向(例えば、図1における手前方向等)に所定の回転速度(例えば、2rpm)で回動させる機能をCPU61に実現させるためのプログラムである。
ここで、一端固定部13の回転速度は、試験片(基材)Fの種類、組成、形状、位置決め部24により他端部F2に付与される引張荷重の大きさ等に応じて適宜任意に変更可能である。さらに、一端固定部13の回転速度は、ロール・ツー・ロール方式にて巻き取られる長尺な基材の蛇行修正装置(例えば、EPC:Edge Position Controller;図示略)による蛇行修正を考慮して設定されても良い。
【0044】
基材強度評価プログラム63bは、試験片Fとしての基材の強度を評価する処理を行う際に、CPU61により実行されるプログラムである。
即ち、基材強度評価プログラム63bは、反発力取得部3により取得された試験片Fの一端部F1の回動角度に応じた反発力情報と、引張力取得部4により取得された引張力情報とに基づいて、試験片F(基材)の強度を評価する評価部としての機能をCPU61に実現させるためのプログラムである。
具体的には、CPU61は、基材強度評価プログラム63bを実行することで、反発力取得部3により取得された反発力情報に基づいて、捻れの反発力が0「ゼロ」となったか否かに応じて試験片Fが破断したか否かを判定する。そして、CPU61は、当該試験片Fが破断したと判定した場合に、反発力取得部3により取得された一端部F1の回動角度に応じた反発力情報と、引張力取得部4により取得された引張力情報とに基づいて、評価結果データを生成する。即ち、CPU61は、基材が破断した際に、反発力取得部3により取得された試験片Fの一端部F1の回動角度(°)を横軸とし、引張力取得部4により取得された引張力情報に係る引張力(N)を縦軸とするグラフ(図4参照)を表示部5に表示させるための表示制御データを生成する。
また、CPU61は、基材強度評価プログラム63bを実行することで、試験片Fの一端部F1の回動角度に応じた反発力情報と引張力情報とに基づいて、試験片Fの一端部F1の回動角度(試験片Fの捻れ角度)に応じた引張力、即ち、試験片Fの捻れ角度に応じた当該試験片Fの張力変動を特定して、当該試験片Fの張力変動を表すグラフを表示部5に表示させるための表示制御データを生成しても良い。このとき、CPU61は、反発力取得部3により取得された反発力情報に基づいて、試験片Fの一端部F1に生じる捻れの反発力を当該試験片Fの張力変動とともに表すグラフを表示部5に表示させるための表示制御データを生成しても良い。
【0045】
次に、試験片Fの強度を評価する基材強度評価処理について、図3(a)及び図3(b)を参照して説明する。
図3(a)及び図3(b)は、基材強度評価処理における基材の状態を模式的に示す図であり、試験片Fが図3(a)の状態から図3(b)の状態となるように回動する。
なお、基材強度評価処理を行う場合には、回動機構部1の一端固定部13及び位置規制部2の他端固定部21に固定された試験片Fの破片の飛び散りを防止するため、防護カバー8(図1参照)により当該試験片Fやその周囲の各部(例えば、一端固定部13や位置規制部2等)を被覆するようにしても良い。
【0046】
図3(a)に示すように、先ず、ユーザは、所定の厚さの試験片Fの一端部F1を回動機構部1の一端固定部13に取り付け固定するとともに、試験片Fの他端部F2を位置規制部2の他端固定部21に取り付け固定する。その後、ユーザは、位置決め部24の位置決め操作部24aを所定操作して、試験片Fが左右方向に沿って略平板状に配置されるように他端固定部21の左右方向の位置を調節する。
このとき、他端固定部21の左右方向の位置を調節することで、試験片Fの他端部F2に対して所定の大きさの引張荷重を初期値として付与しても良い。なお、付与される引張荷重の調整は、引張力測定部22により測定され表示部5に表示された引張力をユーザが視認しながら行うようにしても良い。
【0047】
次に、制御部6のCPU61は、ROM63から回動制御プログラム63aを読み出して実行し、駆動モーター11の駆動を制御して、一端固定部13に回動駆動力を付与して当該一端固定部13を所定方向に所定の回転速度(例えば、2rpm)で回動させる(付与工程;図3(b)参照)。これにより、試験片Fの一端部F1が他端部F2に対して捻れていき、これに伴って、左右方向の両縁部どうしが近付く方向に当該試験片Fが引っ張られる。
このとき、回動機構部1のトルク測定部12は、電流値、回転軸12aの角速度(回転速度)、トルク値等を測定してトルク情報を反発力取得部3に出力する。反発力取得部3は、入力されたトルク情報に基づいて、回転軸12aに与えられた所定の負荷を試験片Fの一端部F1に生じる捻れの反発力として、当該反発力に係る反発力情報を一端部F1の回動角度(一端固定部13の回動角度)に応じて逐次取得する(第1取得工程)。当該第1取得工程とともに、引張力測定部22の測定部本体22aは、左右方向の両縁部どうしが近付く方向に引っ張られる試験片Fの他端部F2に生じる引張力(図3(b)中、白抜きの矢印で示す)を測定して引張力情報を引張力取得部4に出力し、引張力取得部4は、当該試験片Fが捻られる際に他端部F2に生じる引張力に係る引張力情報を逐次取得する(第2取得工程)。
なお、上記した第1取得工程と第2取得工程の処理の順序は、一例であってこれに限られるものではなく、適宜任意に変更可能である。
【0048】
その後、制御部6のCPU61は、ROM63から基材強度評価プログラム63bを読み出して実行し、反発力取得部3により取得された反発力情報に基づいて試験片Fが破断したと判定した場合に、反発力取得部3により取得された一端部F1の回動角度に応じた反発力情報と、引張力取得部4により取得された引張力情報とに基づいて、評価結果データを生成する(評価工程)。
また、上記した基材強度評価処理は、例えば、試験片Fの厚さや試験片Fの他端部F2に対して初期値として付与される引張荷重の大きさを変えて実行される。
【0049】
評価工程では、CPU61は、例えば、試験片Fが破断した際の一端部F1の回動角度(°)を横軸とし、引張力(N)を縦軸とするグラフ(図4参照)を表示部5に表示させるための表示制御データを生成する。図4に示すグラフでは、試験片Fの厚さ(板厚)を0.1mm、0.15mm、0.5mmとし、それぞれの試験片Fについて破断した際の回動角度(°)と引張力(N)との対応関係を表している。
これにより、例えば、ロール・ツー・ロール方式にて所定の厚さの基材に対して所定の引張力を付与した状態で当該基材を巻き取る場合に、蛇行修正装置により蛇行の修正を行う際の基材に係る各種条件の算出が可能となる。即ち、基材の厚さ、当該基材に対して付与される引張力の大きさ及び基材の捻り角度(回動角度)を目安として、基材の蛇行修正量を規定することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態の基材強度評価装置100によれば、試験片F(例えば、所定の厚さのガラス製の基材等)の延在方向の一端部F1が取り付け固定された一端固定部13の回動に応じて、試験片Fの他端部F2に対し捻れるように回動する一端部F1に生じる捻れの反発力に係る反発力情報を一端部F1の回動角度に応じて取得するとともに、試験片Fの捻れに応じて当該試験片Fの他端部F2に生じる引張力に係る引張力情報を取得して、回動角度に応じた反発力情報と引張力情報とに基づいて、試験片Fの強度を評価するので、基材に対する曲げ荷重や引張荷重の負荷を別個に行って評価するのではなく、試験片Fが所定の角度捻れた状態での当該試験片Fに対する引張力を当該試験片Fの捻れ角度に応じて逐次取得したり、試験片Fが破断した際の当該試験片Fの捻れ角度及び引張力を取得することができる。つまり、試験片Fの捻れ角度に応じた当該試験片Fの張力変動の検出や破断点の特定を行うことができ、試験片Fの捻れと当該試験片Fに対する引張力を考慮して、試験片Fの強度の評価を適正に行うことができる。
特に、有機EL素子の製造をロール・ツー・ロール方式にて行う場合にて、例えば、所定の厚さの基材に対して付与される引張力の大きさ及び基材の捻り角度(回動角度)から、EPC等の蛇行修正装置により蛇行の修正を行う際の基材に係る各種条件を算出することができる。
【0051】
また、試験片Fが破断した際に、反発力取得部3により取得された一端部F1の回動角度と引張力取得部4により取得された引張力情報とをグラフ化して表示部5に表示させるので、試験片Fが破断した際の試験片Fの捻り角度(回動角度)と引張力との関係の把握が容易になり、試験片Fの強度の評価をより簡便に行うことができる。
【0052】
さらに、試験片Fの他端部F2に延在方向(左右方向)に沿って一端部F1から離れる方向に所定の引張荷重を付与することができるので、基材強度評価処理にて、当該試験片Fの他端部F2に初期値として付与される引張荷重を設定することで、当該試験片Fに所定の引張荷重が付与された状態での強度試験を行うことができる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、上記実施形態における回動機構部1の駆動(一端固定部13の回動)を停止した状態で、試験片Fの他端部F2に対して付与する所定の引張荷重の大きさを変化させることで、通常の引張試験を行うようにしても良い。具体的には、位置決め部24の位置決め操作部24aを制御部6のCPU61の制御下にて自動的に駆動させるように構成し、引張力測定部22の測定部本体22aを支持する本体支持部22bの位置を、単位時間あたり所定量ずつ左方向に移動させることで、試験片Fの他端部F2に対して付与する引張荷重の大きさを変化させていく。
なお、一端固定部13の回動角度(°)は、初期値(例えば、0「ゼロ」)であっても良いし、当該初期値から所定の角度回動させた(試験片Fの一端部F1を所定の角度捻った)後に固定された角度であっても良い。
【0054】
従って、基材強度評価処理にて、試験片Fの捻れと当該試験片Fに対する引張力を考慮した強度試験だけでなく、試験片Fの他端部F2に一方向の引張荷重を付加する通常の引張試験も行うことができ、使い勝手の良い基材強度評価装置100を提供することができる。
【0055】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0056】
さらに、上記の各処理を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な媒体として、ROM63やハードディスク等の他、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することも可能である。また、プログラムのデータを所定の通信回線を介して提供する媒体としては、キャリアウェーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0057】
100 基材強度評価装置
1 回動機構部
11 駆動モーター(回動駆動部)
13 一端固定部
2 位置規制部
21 他端固定部
22 引張力測定部
24 位置決め部(引張部)
3 反発力取得部(第1取得部)
4 引張力取得部(第2取得部)
5 表示部
6 制御部
61 CPU(評価部)
F 試験片(基材)
F1 一端部
F1 他端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延在する基材の延在方向の一端部が取り付け固定され、前記延在方向に対する移動が規制された一端固定部と、
前記基材の前記延在方向の前記一端部と反対側の他端部が取り付け固定され、前記延在方向に沿った軸周りの回動が規制された他端固定部と、
前記一端固定部に前記延在方向に沿った軸周りの回動駆動力を付与する回動駆動部と、
前記回動駆動部による前記一端固定部の回動に応じて前記他端部に対し捻れるように回動する前記一端部に生じる捻れの反発力に係る反発力情報を前記一端部の回動角度に応じて取得する第1取得部と、
前記基材の捻れに応じて当該基材の前記他端部に生じる引張力に係る引張力情報を取得する第2取得部と、
前記第1取得部により取得された前記回動角度に応じた前記反発力情報と、前記第2取得部により取得された前記引張力情報とに基づいて、前記基材の強度を評価する評価部と、
を備えることを特徴とする基材強度評価装置。
【請求項2】
前記評価部は、更に、
前記基材が破断した際に、前記第1取得部により取得された前記回動角度と前記第2取得部により取得された前記引張力情報とをグラフ化して表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の基材強度評価装置。
【請求項3】
前記基材の前記他端部に前記延在方向に沿って前記一端部から離れる方向に所定の引張荷重を付与する引張部を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の基材強度評価装置。
【請求項4】
前記引張部は、更に、
前記回動駆動部による前記一端固定部の回動を停止させた状態で、前記基材の前記他端部に対して付与する前記所定の引張荷重の大きさを変化可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の基材強度評価装置。
【請求項5】
前記基材は、所定の厚さのガラス製の基材であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の基材強度評価装置。
【請求項6】
所定方向に延在する基材の延在方向の一端部が取り付け固定され、前記延在方向に対する移動が規制された一端固定部と、前記基材の前記延在方向の前記一端部と反対側の他端部が取り付け固定され、前記延在方向に沿った軸周りの回動が規制された他端固定部と、を備える基材強度評価装置を用いた基材強度評価方法であって、
前記一端固定部に前記延在方向に沿った軸周りの回動駆動力を付与する付与工程と、
前記一端固定部の回動に応じて前記他端部に対し捻れるように回動する前記基材の前記一端部に生じる捻れの反発力に係る反発力情報を前記一端部の回動角度に応じて取得する第1取得工程と、
前記基材の捻れに応じて当該基材の前記他端部に生じる引張力に係る引張力情報を取得する第2取得工程と、
前記第1取得工程により取得された前記回動角度に応じた前記反発力情報と、前記第2取得工程により取得された前記引張力情報とに基づいて、前記基材の強度を評価する評価工程と、
を含むことを特徴とする基材強度評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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