説明

基板の冷却装置

【考案の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本考案は、半導体基板やガラス基板等の処理工程において用いられる基板の冷却装置に関するものであり、例えば基板を洗浄した後基板表面の水分を完全に除去するために基板を加熱した後に、これを常温まで冷却するのに使用する冷却装置に関する。
〔従来技術〕
通常、基板の乾燥工程では基板は200℃以上に加熱される。一方、基板の各処理工程を連続して行う場合、各工程での処理時間がほぼ同一の時間となるようにするのが望ましく、加熱後に自然に放熱させたのでは時間を要するので、通常は強制的に20秒以内で常温まで冷却するようにしている。そしてこの種の冷却装置としては、従来より例えば第5図に示すものが本出願人により提案されている(特開昭59−48925号公報)。
それは基板を上面に接触載置して冷却する冷却板102と冷却板102内に冷媒を流通させるべく貫設した複数の冷媒流通孔103と、冷媒流通孔103が直列をなすようにこれらの流通孔103を接続する連結管104と、これらの冷媒流路の入口側へ電磁開閉弁106を介して接続された図外の熱交換式冷却源と、冷却板102に埋設した温度センサ107と、温度センサ107からの検知温度に基づいて電磁開閉弁106を開閉制御する制御装置108とを備えて成り、温度センサ107の検知温度により冷媒の流量を制御するように構成したものである。
〔考案が解決しようとする問題点〕
しかるに上記従来例によれば、冷却板102に埋設した温度センサ107の検知温度に基づいて冷媒の流路を制御するものであるため、第4図の破線のカーブGで示すように設定温度Tに対して過不足が生じることになる。その上冷却板102内に複数の冷媒流通孔103を貫設して冷媒を流通させるものであるため、冷却板102の温度分布が十分に均一とならない。
本考案は従来技術のこのような欠点を解消することにより、基板の品質をより一層向上させることを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
上記問題点を解決するために、本考案が採用した手段は、基板を上面に接触載置して冷却する冷却板と、冷却板の下面に設けられ恒温液を冷却板の下面側に沿って放流する放流タンクと、放流タンクの入口と出口に接続された熱交換式循環手段とを備え、基板を冷却すべき設定温度と等しい温度の恒温液を熱交換式循環手段により連続して放流タンクに供給するように恒温液循環閉ループを形成し、上記放流タンク内の入口側に、当該入口を囲ってこの入口から流入した恒温液を冷却板下面側に沿って放射方向へ拡散するように多数のオリフィスを有する整流部材を設け、上記放流タンクの出口管の内端部開口を傾斜状に形成するとともに、その出口管を放流タンク内に突入して設け、当該内端部開口を冷却板の下面側に近接させて配置したことを要旨とするものである。
〔作用〕
恒温液は放流タンク内を冷却板の下面に沿って流れ、冷却板全体をほぼ均一に冷却する。
即ち、恒温液の循環閉ループを形成する熱交換式循環手段は、基板を冷却すべき設定温度と等しい温度の恒温液を断続することなく連続して放流タンクに供給する。これにより、冷却板全体が均一に、過不足なく設定温度に安定して維持され、図4の実線のカーブG2で示すように、基板は冷却板によって均一に冷却されて上記設定温度T0になる。
このとき、上記放流タンク内の入口から流入した恒温液は、当該入口に設けられた多数のオリフィスを有する整流部材によって放射方向へ拡散され、放流タンク内の全域にわたって流れ、冷却板全体を均一に冷却する。
一方、放流タンク内の全域にわたって流れた恒温液は、上記放流タンク内に突入する出口管内端部の開口に集中し、この開口から流下する。この出口管の内端部開口は傾斜状に形成され、かつ、冷却板の下面側に近接されており、放流タンク内に空気溜りができるのを防止する。
つまり、循環供給される恒温液中に気泡などが含まれている場合において、当該気泡は上記放流タンク内で浮上して、冷却板の下面近傍に集まろうとするが、熱交換式循環手段によって強制的に供給される恒温液は、当該気泡をも取り込んで上記内端部開口に集中させて、この開口から流下する。従って、放流タンク内に気泡が蓄積されて空気溜りができるおそれはない。
これにより、空気溜りの影響で冷却板の冷却効果が減殺されることもなく、冷却板全体を一層均一に冷却する。
〔実施例〕
以下、本考案に係る冷却装置の実施例を図面に基づいて説明する。
第1図は冷却装置の縦断面図、第2図はその底面図、第3図3図は同平面図である。
この冷却装置は基板1を載置吸着して冷却する冷却板2と、この冷却板2の下面に固定ボルト7で固定された放流タンク8と放流タンク8の入口10と出口12とに循環閉ループ16を形成するように接続した熱交換式循環手段17とを備えて成る。
冷却板2は、その上面に基板1を搬送する一対の搬送ベルト3・3が没入する切り溝4・4と、基板1を吸着する多数の吸着孔5とを有し、加熱乾燥された基板1を搬送ベルト3・3で搬入してその上面に吸着し、所定の常温例えば23±0.2℃に冷却するようになっている。基板1を吸着保持した状態では搬送ベルト3・3はこれら搬送ベルト3・3を巻回支持しているプーリ(図示せず)を降下させることにより切り溝4・4内に没入する。
放流タンク8は冷却板2の下面に密接して設けられ、一定温度に制御された恒温水を冷却板2の下面側に沿って放流するように構成されている。
即ち、放流タンク8内の入口10側には、その入口10を囲うように多数のオリフィス11aを有する整流部材11を設け、入口10から流入した恒温水を整流部材11により放射方向へ拡散せしめ、放流タンク8内の全域に亘って放流するようになっている。なお、オリフィス11aの形状は、整流部材11の内側に空気溜りが出来ないように縦長のスリット状にするのが望ましく、またなるべく乱流を生じさせないように、オリフィスの全開口面積をそれぞれ入口及び出口の流路面積とほぼ同一にするのが望ましい。
一方、放流タンク8の出口12は出口管13の内端部の開口14を傾斜状に形成するとともに、この出口管13を下方より放流タンク8内に突入して設け、傾斜状の内端部開口14を冷却板2の下面側に近接させて配置し、放流タンク内に前述した空気溜りができないようにしてある。
なお符号15は冷却板2に埋設した温度確認用のセンサであり、恒温水の制御とは無関係である。
熱交換式循環手段17は放流タンク8からの恒温水を所定温度、例えば23±0.2℃に維持する熱交換器18と、その恒温水を放流タンク8内に圧送して循環させる圧送ポンプ20とを備えている。
次にこの装置における作用について説明する。
熱交換式循環手段17によって基板1を冷却すべき設定温度と等しい所定温度に制御された恒温水は、放流タンク8を含む循環閉ループ16を断続することなく連続して還流する。
放流タンク8内の入口10から流入した恒温水は、この入口に設けられた多数のオリフィス11aを有する整流部材11によって放射方向へ拡散され、放流タンク8内の全域にわたって流れ、冷却板2全体を均一に冷却する。
一方、放流タンク8内の全域にわたって流れた恒温水は、上記放流タンク8内に突入する出口管13の内端部開口14に集中し、この開口14から流下する。この出口管13の内端部開口14は傾斜状に形成され、かつ、冷却板2の下面側に近接されており、放流タンク8内に前述した空気溜りができるのを防止する。これにより冷却板2は温度ムラを生ずることなく全体がほぼ均一に冷却され、所定の常温に維持されている。
そこへ基板1が搬送ベルト3・3によって搬入され、冷却板2の上面に吸着載置される。およそ20秒で基板1は冷却板と同等の設定温度T(23±0.2℃)になる。次いで吸着を解除し、搬送ベルト3・3を切り溝4・4内から出るよう上昇させることにより基板を押し上げ、搬送ベルト3・3で次の工程へ搬出する。以下同様にして次々と基板の冷却が行われる。
なお、基板1の熱量を所定の時間内で吸収放熱させるべく、冷却板2の熱容量は十分大きくしてある。
また、熱交換器18の前または後に、放流タンク8よりも大容量の恒温タンクを付設して、恒温水の温度をよりいっそう一定に保つようにしてもよい。
なお、上記実施例では恒温水の温度を23±0.2℃としたが、これは基板を冷却する設定温度が23℃のためかかる温度としたのであって、基板を冷却する設定温度が10℃であるならば恒温液の温度を10±0.2℃とし、あるいは設定温度が40℃であるならば恒温液の温度を40±0.2℃とするように、基板の設定温度に応じて、それと同じ温度にすればよい。恒温液の許容温度幅も、前記のように±0.2℃とするに限らず、必要に応じて、もっと厳密にあるいは、もう少し幅を許すようにしてもよいことは当然である。さらに、本考案における恒温液は上記実施例のように水を使用するものに限定せず、例えば塩化カルシウム溶液のように水よりも熱容量の大きな液体を使用してもよい。
〔考案の効果〕
本考案では、基板を冷却すべき設定温度と等しい温度の恒温液を断続することなく連続して放流タンクに供給することにより、冷却板全体を均一に、過不足なく設定温度に安定して維持することができる。
このとき、上記放流タンク内の入口から流入した恒温液は、前記整流部材によって放射方向へ拡散され、放流タンク内の全域にわたって流れるので、冷却板全体を均一に冷却することができる。
しかも、放流タンク内の全域にわたって流れた恒温液は、恒温液中に含まれる気泡をも取り込んで前記出口管の内端部開口から流下するので、冷却板の下面側に気泡が蓄積されて空気溜りができるおそれはない。従って、空気溜りの影響で冷却板の冷却効果が減殺されることもなく、冷却板全体を一層均一に冷却することができる。
以上により、基板をムラなく均一に冷却することができ、後工程における基板の塗膜形成等に好結果を与え、基板の品質を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案に係る冷却装置の縦断面図、第2図はその底面図、第3図は同じく平面図、第4図は基板の冷却効果を示すグラフ、第5図は従来例に係る冷却装置の平面図である。
1…基板、2…冷却板、8…放流タンク、10…入口、11…整流部材、11a…オリフィス、12…出口、13…出口管、14…出口管の内端部開口、16…循環閉ループ、17…熱交換式循環手段。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】基板を上面に接触載置して冷却する冷却板と、冷却板の下面に設けられ恒温液を冷却板の下面側に沿って放流する放流タンクと、放流タンクの入口と出口に接続された熱交換式循環手段とを備え、基板を冷却すべき設定温度と等しい温度の恒温液を熱交換式循環手段により連続して放流タンクに供給するように恒温液循環閉ループを形成し、上記放流タンク内の入口側に、当該入口を囲ってこの入口から流入した恒温液を冷却板下面側に沿って放射方向へ拡散するように多数のオリフィスを有する整流部材を設け、上記放流タンクの出口管の内端部開口を傾斜状に形成するとともに、その出口管を放流タンク内に突入して設け、当該内端部開口を冷却板の下面側に近接させて配置したことを特徴とする基板の冷却装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第3図】
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【公告番号】実公平6−2262
【公告日】平成6年(1994)1月19日
【考案の名称】基板の冷却装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願昭61−139555
【出願日】昭和61年(1986)9月10日
【公開番号】実開昭63−46840
【公開日】昭和63年(1988)3月30日
【出願人】(999999999)大日本スクリ−ン製造株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭58−176936(JP,A)
【文献】実開昭59−149630(JP,U)