説明

基板を接合する方法

【課題】第1の基板を第2の基板に接合するための優れた方法を提供する。
【解決手段】第1の基板を第2の基板に接合する方法が提供される。この方法は、(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された、第1の基板を提供するステップと、(b)第2の接合面を有する第2の基板を提供するステップと、(c)第1の接合面と第2の接合面を相互に、接着材を使用して接合するステップとを含む。接合中、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容され、それによって、粗面処理を回避しても接着接合強度が増大される。この方法は、半導体チップを、液体接着材を使用して接合するのに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を相互に接合する方法、および、該方法に適合された基板に関する。本発明は主として、従来の表面研磨技法を回避してもマイクロスケール基板の他の基板への接合を最大にできるように、開発されたものである。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本発明の出願人または譲受人によって出願された以下の特許または特許出願を、ここに相互参照により組み込む。
【表1】


【表2】


一部の出願は、整理番号で列挙されている。それらは、出願番号が判明した際に、置き換えられる。
【背景技術】
【0003】
表面は、最初に粗面化される場合、液体接着材の使用により、より十分に接合することがよく知られている。粗面処理を行うと、液体接着材への接合に利用できる表面積が増大し、それによって接着接合強度が大幅に増大する。
【0004】
一般に、粗面処理は、接合される表面の一方または両方を研磨することによって実現される。例えば、表面の一方を研磨布で単に研磨することによって、非研磨表面と比べると、接着強度の大幅な改善を実現することができる。
【0005】
しかし、半導体集積回路(「チップ」)などのマイクロスケール基板を接合する際、基板の表面を研磨することは一般に望ましくない。それどころか、半導体チップが非常に平滑な表面を有することが、大いに望ましい。集積回路の表面上に欠陥があればそれが、亀裂の伝搬を生じ、デバイスを著しく弱化させる恐れがある。ますます薄くなる集積回路(例えば、200ミクロン未満のIC)に向けた取り組みのある中で、それに対応して、デバイス内に許容可能な機械的強度を維持するために、表面粗さを低減させる必要がある。
【0006】
表面粗さは最も重要であるので、シリコンウェーハは一般に、2段階のプロセスを使用して薄化される。ウェーハは、フロントエンド処理後、通常まず機械的研削ツール内で裏面研削によって薄化される。ウェーハ研削ツールの例が、Strasbaugh 7AFツール、およびDisco DFG−841ツールである。機械的研削は、迅速で費用のかからないシリコン研削方法である。しかし、機械的研削はまた、比較的高い表面粗さ(例えば、約150nmのRmax)を有する裏面を残す。さらに、機械的研削は、ウェーハの裏面の中に最大約20μm広がる欠陥(例えば、亀裂または転位)を生ずる恐れがある。
【0007】
機械的強度の点から、表面粗さおよび表面欠陥は、集積回路では許容されない。したがって、バックエンドの薄化は一般に、そうした欠陥を除去し、低表面粗さをもたらす技法によって達成される。プラズマ薄化(plasma thinning)が、ウェーハ薄化の達成に使用される1つの方法である。一般に、プラズマ薄化は、所望のウェーハ厚さを実現するために、最後の20μmのシリコンを除去するのに使用される。プラズマ薄化は比較的遅いが、実質的に表面欠陥のない、極めて平滑な裏面をもたらす。一般に、プラズマ薄化は、1nm未満の最大表面粗さ(Rmax)をもたらす。したがって、プラズマ薄化は、集積回路製作でのバックエンド処理用に選択する一方法である。
【0008】
MEMSデバイスなどの集積回路はしばしば、他の基板に接合する必要がある。例えば、出願人のMEMSプリントヘッドの製作では、プリントヘッド集積回路が、成形されたインクマニホルド上に並んで接合されて、プリントヘッド組立体を形成する。(出願人のプリントヘッド製作プロセスの詳細な説明については、以下の詳細な説明、およびその内容を本明細書に相互参照により組み込む。特許文献1を参照されたい。)しかし、集積回路には、その裏面についての相反する要件があることが理解されよう。一方では、集積回路の裏面は、その機械的強度を最大にするために、低表面粗さを有するべきであり、どんな亀裂もあってはならない。これは、薄い(例えば、250μm未満の)集積回路にとって特に重要である。他方では、集積回路の裏面はしばしば、接着材または接着テープを使用して他の基板に接合するのに適している必要がある。上記で論じたように、接着強度は通常、接合される表面の表面粗さを増大させることによって最大にされ、それによって介在する接着材との接触が最大にされる。
【0009】
基板の表面粗さが増大しないようにする、接着材を使用して基板を接合する改善された方法を提供することが望ましい。接着材を使用しての接合に適した表面を有するが、許容可能な機械的強度を維持する薄い基板(例えば、<1000ミクロン厚さ基板)を提供することも望ましい。
【特許文献1】米国特許出願第10/728970号
【発明の開示】
【0010】
第1の態様では、第1の基板を第2の基板に接合する方法であって、
(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された、第1の基板を提供するステップと、
(b)第2の接合面を有する第2の基板を提供するステップと、
(c)第1の接合面と第2の接合面を相互に、接着材を使用して接合するステップと
を含み、接合中に、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される方法が提供される。
【0011】
第2の態様では、第2の基板に接着材を使用して接合するのに適した第1の基板であって、前記第1の基板は、複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定され、複数のエッチングされた溝が、接合中に接着材を収容するように構成される第1の基板が提供される。
【0012】
第3の態様では、
(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された第1の基板と、
(b)第2の接合面を有する第2の基板と、
(c)第1の接合面と第2の接合面を相互に接合する接着材と
を備え、接着材が、第1と第2の基板の間に挟まれ、複数のエッチングされた溝内に収容される、接合済み組立体が提供される。
【0013】
第4の態様では、
(a)複数のプリントヘッド集積回路であり、各プリントヘッド集積回路が、
プリントヘッド集積回路の前面上に形成された複数のノズルと、
インクをプリントヘッド集積回路の裏面から複数のノズルに供給するための、複数のインク供給チャネルと、
裏面に画定された、複数のエッチングされた溝と
を備える、複数のプリントヘッド集積回路と、
(b)取付け面を有するインクマニホルドであり、各プリントヘッド集積回路の裏面が、取付け面に接着材で接合される、インクマニホルドと
を具備し、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される、プリントヘッド組立体が提供される。
【0014】
第5の態様では、インクマニホルドの取付け面に接着材を使用して接合するのに適したプリントヘッド集積回路であって、
プリントヘッド集積回路の前面上に形成された複数のノズルと、
インクをプリントヘッド集積回路の裏面から複数のノズルに供給するための、複数のインク供給チャネルと、
裏面に画定された複数のエッチングされた溝であり、接合中に接着材を収容するように構成される複数のエッチングされた溝と
を備える、プリントヘッド集積回路が提供される。
【0015】
従来、粗面処理は、接合される基板の表面特性の改善に使用される唯一の方法であった。しかし、上記で説明したように、粗面処理は、シリコンチップなどの、1000μm未満の、任意選択で500μm未満の、または任意選択で250μm未満の厚さを有する非常に薄い基板では望ましくない。したがって、本発明では、シリコンチップ(例えばMEMSチップ)を他の基板に接合する際に使用するのに特に適した、接着接合を制御された形で改善する方法を提供する。しかし、本発明は、半導体チップと共に使用するのに限定されるのではなく、粗面処理が望ましくない任意のエッチング可能な基板(例えば、金属基板、酸化シリコン基板、窒化シリコン基板など)を接合するのに使用してもよい。
【0016】
本発明は、プリントヘッドチップの製作において使用するのに特に有利である。というのも、プリントヘッドチップは一般に、インク供給チャネルが、裏側接合面内にエッチングされるためである。したがって、本発明の溝を、製作プロセス内に任意の追加ステップを必要とすることなく、インク供給チャネルと同時にエッチングすることができる。
【0017】
第2の基板の性質は、特に限定されず、例えば、プラスチック、金属、シリコン、ガラスなどからなることができる。第2の基板は、第1の基板に関連して上述された溝を任意選択で備えることができる。
【0018】
溝は、接着材を毛管作用によって引き込むように、寸法設定することができる。必要な正確な寸法は、接着材の表面張力に依存する。必要な溝の寸法は、当業者によって、公知の毛管現象の式を使用して容易に決定することができる。あるいは溝を、第2の基板と接着材とが第1の接合面に押し付けられたときに、接着材を単に収容するように寸法設定することもできる。一般に、溝は、約10μm未満の、任意選択で約5μm未満の、または任意選択で約3μm未満の、直径(円筒形の溝の場合)または幅(非円筒形の溝の場合)を有する。
【0019】
溝は、第1の基板の全体的な頑健さを損なわずに接着性を改善するのに適した、任意の深さを有することができる。任意選択で、溝は、少なくとも10μmの、任意選択で少なくとも20μmの、任意選択で少なくとも30μmの、または任意選択で少なくとも50μmの深さまでエッチングされる。一般に、溝は、少なくとも3:1の、少なくとも5:1の、または少なくとも10:1のアスペクト比を有する。高アスペクト比の溝は、任意の既知の異方性エッチング技法(例えば、米国特許第5501893号に記載のBosch社のプロセス)によって、容易にエッチングすることができる。高アスペクト比は、全体的な機械的強度を損なわずに接着材に利用できる表面積を最大にするのに有利である。
【0020】
一般に、第1の接合面は、20nm未満の最大表面粗さ(Rmax)、任意選択で5nm未満のRmax、または任意選択で1nm未満のRmaxを有する。本発明は、そうした表面と共に使用すると特に有利である。というのも、そうした表面は通常、その並外れた平滑さのために、接着材を使用して十分に接合されないためである。
【0021】
あるいは、第1の接合面が、20nm未満の平均表面粗さ(R)、任意選択で5nm未満のR、または任意選択で1nm未満のRを有してもよい。
【0022】
接着材は一般に、液体ベースの接着材、または接合用に加熱されたときに液体になる接着材である。任意選択で、接着材は、接着材を一方または両方の面に備える接着テープである。両面接着フィルムまたはテープが、半導体分野で公知である。
【0023】
任意選択で、接合プロセス中に第1の基板が冷却する。これは通常、第1の基板を加熱し(それにより、接着材も溶融させることができる)、次いで第1の基板が、第2の基板に接合する間に冷却するのを可能にすることによって実現される。この任意選択の利点は、溝内の接着材の上に部分的な真空が形成され、それが、接合中に基板を一緒に保持する助けとなるという点である。別の態様では、第1の基板が、第2の基板に接着材を使用して接合するのに適しており、前記第1の基板は、複数のエッチングされた溝が、第1の接合面に画定され、複数のエッチングされた溝が、接合中に接着材を収容するように構成される方法が提供される。
【0024】
別の態様では、
(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された、第1の基板と、
(b)第2の接合面を有する第2の基板であり、第2の接合面が第1の接合面に接着材で接合される、第2の基板と
を備え、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される、接合済み組立体が提供される。
【0025】
別の態様では、
(a)複数のプリントヘッド集積回路であり、各プリントヘッド集積回路が、
プリントヘッド集積回路の前面上に形成された、複数のノズルと、
インクをプリントヘッド集積回路の裏面から複数のノズルに供給するための、複数のインク供給チャネルと、
裏面に画定された複数のエッチングされた溝と
を備える、複数のプリントヘッド集積回路と、
(b)取付け面を有するインクマニホルドであり、各プリントヘッド集積回路の裏面が、取付け面に接着材で接合される、インクマニホルドと
を具備し、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される、プリントヘッド組立体が提供される。
【0026】
別の態様では、インクマニホルドの取付け面に接着材を使用して接合するのに適したプリントヘッド集積回路であって、
プリントヘッド集積回路の前面上に形成された、複数のノズルと、
インクをプリントヘッド集積回路の裏面から複数のノズルに供給するための、複数のインク供給チャネルと、
裏面に画定された複数のエッチングされた溝であり、接合中に接着材を収容するように構成される複数のエッチングされた溝と
を備える、プリントヘッド集積回路が提供される。
【0027】
別の態様では、第1の基板を第2の基板に接合する方法であって、
(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された、第1の基板を提供するステップと、
(b)第2の接合面を有する第2の基板を提供するステップと、
(c)第1の接合面と第2の接合面を相互に、接着材を使用して接合するステップと
を含み、接合中に、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される方法が提供される。
【0028】
別の態様では、
(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された、第1の基板と、
(b)第2の接合面を有する第2の基板であり、第2の接合面が、第1の接合面に接着材で接合される第2の基板と
を備え、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される、接合済み組立体が提供される。
【0029】
別の態様では、第1の基板を第2の基板に接合する方法であって、
(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された、第1の基板を提供するステップと、
(b)第2の接合面を有する第2の基板を提供するステップと、
(c)第1の接合面と第2の接合面を相互に、接着材を使用して接合するステップと
を含み、接合中に、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される方法が提供される。
【0030】
別の態様では、第2の基板に接着材を使用して接合するのに適した第1の基板であって、前記第1の基板は、複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定され、複数のエッチングされた溝が、接合中に接着材を収容するように構成される、第1の基板が提供される。
【0031】
別の態様では、第1の基板を第2の基板に接合する方法であって、
(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された、第1の基板を提供するステップと、
(b)第2の接合面を有する第2の基板を提供するステップと、
(c)第1の接合面と第2の接合面を相互に、接着材を使用して接合するステップと
を含み、接合中に、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される方法が提供される。
【0032】
別の態様では、第2の基板に接着材を使用して接合するのに適した第1の基板であって、前記第1の基板は、複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定され、複数のエッチングされた溝が、接合中に接着材を収容するように構成される、第1の基板が提供される。
【0033】
別の態様では、
(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された、第1の基板と、
(b)第2の接合面を有する第2の基板であり、第2の接合面が第1の接合面に接着材で接合される、第2の基板と
を備え、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される、接合済み組立体が提供される。
【0034】
別の態様では、インクマニホルドの取付け面に接着材を使用して接合するのに適したプリントヘッド集積回路であって、
プリントヘッド集積回路の前面上に形成された、複数のノズルと、
インクをプリントヘッド集積回路の裏面から複数のノズルに供給するための、複数のインク供給チャネルと、
裏面に画定された複数のエッチングされた溝であり、接合中に接着材を収容するように構成される複数のエッチングされた溝と
を備える、プリントヘッド集積回路が提供される。
【0035】
別の態様では、第1の基板を第2の基板に接合する方法であって、
(a)請求項1に記載のプリントヘッド集積回路を提供するステップと、
(b)第2の接合面を有する第2の基板を提供するステップと、
(c)第1の接合面と第2の接合面を相互に、接着材を使用して接合するステップと
を含み、接合中に、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される方法が提供される。
【0036】
別の態様では、第2の基板に接着材を使用して接合するのに適した第1の基板であって、前記第1の基板は、複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定され、複数のエッチングされた溝が、接合中に接着材を収容するように構成され、第1の基板が、請求項1に記載のプリントヘッド集積回路である、第1の基板が提供される。
【0037】
別の態様では、
(a)請求項1に記載のプリントヘッド集積回路と、
(b)第2の接合面を有する第2の基板であり、第2の接合面が第1の接合面に接着材で接合される、第2の基板と
を備え、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される、接合済み組立体が提供される。
【0038】
別の態様では、
(a)複数のプリントヘッド集積回路であり、各プリントヘッド集積回路が、
プリントヘッド集積回路の前面上に形成された、複数のノズルと、
インクをプリントヘッド集積回路の裏面から複数のノズルに供給するための、複数のインク供給チャネルと、
裏面に画定された複数のエッチングされた溝とを備え、各プリントヘッド集積回路が、請求項1に記載のものである、複数のプリントヘッド集積回路と、
(b)取付け面を有するインクマニホルドであり、各プリントヘッド集積回路の裏面が、取付け面に接着材で接合される、インクマニホルドと
を具備し、接着材が少なくとも部分的に、複数のエッチングされた溝内に収容される、プリントヘッド組立体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の特定の形態を、以下にインクジェットプリンタ用のプリントヘッド組立体を製作する文脈において説明する。しかし、本発明は、任意の2つの基板の相互の接合に関して使用することができ、プリントヘッドの製作についての特定の実施形態に、いかなる形であれ限定されないことが理解されよう。
【0040】
インクジェットプリンタユニット
図1は、(プリンタケーシング内に隠されている)印刷エンジンによって印刷される媒体8を支持および供給する媒体供給トレイ3を備える、プリンタユニット2を示す。媒体8の印刷後のシートが、印刷エンジンから媒体出力トレイ4に収集のために送られる。ユーザインターフェース5は、LCDタッチスクリーンであり、ユーザがプリンタユニット2の動作を制御するのを可能にするものである。
【0041】
図2は、プリンタユニット2の蓋7が開いて、内部キャビティ6内に配置された印刷エンジン1を露出させた様子を示す。ピッカ機構9が、入力トレイ3内の媒体(見やすいように図示せず)を引っかからせて、個々のシートを印刷エンジン1に送る。印刷エンジン1は、個々のシートを受け取り、それを、印刷および後続の媒体出力トレイ4(図では格納されている)への送出のために、プリントヘッド組立体(以下に説明する)を通り越して送る、媒体輸送手段を含む。
【0042】
印刷エンジン
印刷エンジン1を、図3および4に詳細に示す。印刷エンジン1は、カートリッジユニット10およびクレードルユニット12の2つの主要部分からなる。
【0043】
カートリッジユニット10は、クレードルユニット12内に収容されて、クレードルユニットに取り付けられたカバー組立体11によって適所に固定されるように形状設定およびサイズ設定される。クレードルユニット12は、プリンタユニット2内に固定されるように構成されて、上記で論じたように印刷を促進する。
【0044】
図4は、カートリッジユニット10がクレードルユニット12内に固定され、カバー組立体11が閉じられて、組み立てられた形にある印刷エンジン1を示す。印刷エンジン1は、プリンタユニット2のユーザインターフェース5からのユーザ入力に応答して、印刷に関連するさまざまな側面を制御する。そうした側面は、媒体をプリントヘッドを通り越して制御された形で輸送すること、および通過する媒体の表面上へのインクの制御された噴射を含む。
【0045】
カートリッジユニット
カートリッジユニット10を、図5および6に詳細に示す。図6の分解図を参照すると、カートリッジユニット10は全体的に、本体20と、インク貯蔵モジュール組立体21と、プリントヘッド組立体22と、メンテナンス組立体23とからなる。
【0046】
これらの部分はそれぞれ、一緒に組み立てられて、インク貯蔵手段をインク噴射手段と共に組み合わせる一体型ユニットが形成される。そうした構成は、インクが、必要に応じて、印刷のためにプリントヘッド組立体22に直接供給されることを確実にし、またインク貯蔵またはプリントヘッド組立体の一方あるいは両方を置き換える必要がある場合には、カートリッジユニット10全体を置き換えることによってそれを容易に行うことができるようにする。
【0047】
しかし、プリントヘッドの動作寿命は、インクの供給によって制限されない。カートリッジユニット10の上面42に、必要なときにインクの補充供給とドッキングしてインク貯蔵モジュール45を補充するための、インターフェース61がある。プリントヘッドの寿命をさらに延ばすために、カートリッジユニットは、プリントヘッドを覆い、ぬぐい、湿らせる、一体型プリントヘッドメンテナンス組立体23を備える。
【0048】
プリントヘッド組立体
プリントヘッド組立体22を、図7〜10により詳細に示す。プリントヘッド組立体22は、本体20の下面に取り付けられて、出口成形物27からインクを受け取るように適合される。
【0049】
プリントヘッド組立体22は全体的に、本体20の下でポスト26同士の間に延びるように構成された細長い上部部材62を備える。複数のU字形クリップ63が、上部部材62から突き出す。これらは、剛性プレート34内に設けられた陥凹37の中を通過し、本体20内に形成された耳部(図示せず)によって捕らえられた状態になることによって、プリントヘッド組立体22を固定する。
【0050】
上部要素62は、プリントヘッド組立体22が本体20に固定されたときに出口成形物27内の出口内に収容される、複数の供給管64を有する。供給管64に、インク漏洩から保護するための外部被覆を設けることができる。
【0051】
上部部材62は、いくつかの利点をもたらす液晶ポリマー(LCP)から形成される。LCPは、その熱膨張係数(CTE)が、シリコンの熱膨張係数と類似するように成形することができる。プリントヘッド集積回路74(以下に論じる)のCTEと、下にある成形物のCTEに大きな差があればそれが、全体の構造を曲げる恐れがあることが理解されよう。しかし、成形方向におけるLCPのCTEは、非成形方向におけるLCPのCTEよりもずっと小さい(〜20ppm/℃に比べて〜5ppm/℃)ので、LCP成形物の成形方向が、プリントヘッド集積回路(IC)74の長手方向の広がりと単一の方向を向くように注意しなければならない。LCPはまた、ポリカーボネート、スチレン、ナイロン、PET、およびポリプロピレンなど、「標準的なプラスチック」の一般に5倍の係数をもつ、比較的高いスチフネスも有する。
【0052】
図8で最も良く分かるように、上部部材62は、下部部材65を収容するための開チャネル構成を有し、下部部材65は上部部材62に、接着フィルム66を介して接合される。下部部材65もLCPから形成され、下部部材65には、複数のインクチャネル67がその長さに沿って形成される。インクチャネル67はそれぞれ、供給管64の1つからインクを受け取り、プリントヘッド組立体22の長さに沿ってインクを分配する。これらのチャネルは、1mm幅であり、0.75mm厚さの壁によって分離される。
【0053】
図示の実施形態では、下部部材65が、その長さに沿って延びる5つのチャネル67を有する。異なる色のインクが混合するリスクを低減するために、各チャネル67は、インクを5つの供給管64のうち1つだけから受け取り、供給管64の1つは、インクをインク貯蔵モジュール45(図6を参照されたい)のうち1つから受け取る。この点に関して、接着フィルム66は、下部部材65が上部部材62に組み立てられたとき、インクがチャネルを横切って混合しないようにするために、個々のインクチャネル67を密閉する働きもする。
【0054】
各チャネル67の底面には、5列の穴69を下部部材65の底面にもたらすための、一連の等間隔に離隔された穴69(図9で最も良く分かる)がある。穴69の中央の列は、下部部材65の中央線に沿って、プリントヘッドIC74の真上に延びる。図15で最も良く分かるように、中央列の両側にある穴69の他の列は、インクをプリントヘッドIC74に供給することができるように、各穴69から中央への管路70を必要とする。
【0055】
図10を参照すると、プリントヘッドIC74が、下部部材65の下面に、ポリマー密閉フィルム71によって取り付けられている。このフィルムは、PETまたはポリスルホンフィルムなどの熱可塑性フィルムでも、AL Technologies社やRogers Corporation社により製造されたような、熱硬化性フィルムの形をとってもよい。ポリマー密閉フィルム71は、接着材層が中央のフィルムの両側にある積層物であり、下部部材65の下面上に積層される。図9、14および15に示すように、プリントヘッドIC74とチャネル67との間で流体連通することができるように、複数の穴72が、中央に配設されたインク吐出点(ink delivery point)(穴69の中央の列および管路70の端部)と一致するように接着フィルム71を貫通してレーザで穴あけされる。
【0056】
ポリマー密閉フィルム71の厚さは、それがもたらすインクの密閉の有効性に決定的に重大である。図13および15で最も良く分かるように、ポリマー密閉フィルムは、プリントヘッドIC74の裏面にあるエッチングされたチャネル77、およびフィルムの他方の側にある管路70を密閉する。しかし、フィルム71は、管路70の開端全体にわたって密閉するので、管路内に膨れるまたは弛むこともある。管路70内に弛んだフィルムの部分が、プリントヘッドIC74内のいくつかのエッチングされたチャネル77を横切って延びる。弛みは、エッチングされたチャネル77をそれぞれ分離する壁の間に、間隙を生ずる恐れがある。明らかにこれは密閉を破綻させて、インクがプリントヘッドIC74から外に漏洩および/またはエッチングされたチャネル77同士の間で漏洩するのが可能になる。
【0057】
インク漏洩から守るために、ポリマー密閉フィルム71は、エッチングされたチャネル77を覆って密閉を維持しながら、管路70内へのどんな弛みも打ち消すのに十分なほど厚くなければならない。ポリマー密閉フィルム71の最小厚さは、
1 ポリマー密閉フィルム71が弛み込む管路の幅、
2 フィルムの積層構造内の接着材層の厚さ、
3 プリントヘッドIC74が接着材層に押し込まれているときの接着材層の「スチフネス」、
4 積層物の中央のフィルム材料の係数
に依存する。
【0058】
25ミクロンというポリマー密閉フィルム71の厚さが、図示のプリントヘッド組立体22に適当である。しかし、厚さを50、100、または200ミクロンまでも増大させると、それに対応して、もたらされる密閉の信頼性が増大する。
【0059】
インク吐出入口73が、プリントヘッドIC74の「前」面に形成される。入口73はインクを、入口上に配置されたそれぞれに対応するノズル801(以下に図16〜31を参照して説明する)に供給する。インクは、どの個々の入口73にもインクを供給するようにICに吐出されなければならない。したがって、個々のプリントヘッドIC74内の入口73は、インク供給の複雑さおよび配線の複雑さを低減するために、物理的にグループ化される。入口73は、電力消費を最小限に抑え、またさまざまな印刷速度を可能にするために、論理的にもグループ化される。
【0060】
各プリントヘッドIC74は、5種の異なる色のインク(C、M、Y、KおよびIR)受け取って印刷するように構成され、また1色あたり1280個のインク入口を収容し、それらのノズルが、偶数および奇数ノズル(各640個)に分割される。各色用の偶数および奇数ノズルは、プリントヘッドIC74上の異なる列上に設けられ、真の1600dpi印刷を実施するために縦に整合される。これは、図11に明らかに示すように、ノズル801が10列に配列されることを意味する。単一列上の2つの隣接するノズル801間の横の距離は、31.75ミクロンであり、ノズルの列間の縦の距離は、ノズルの発射順序に基づくが、列は一般に、ドットラインの正確な数に、列発射時間の間に紙が移動する距離に対応するドットラインの何分の一かを加えた分だけ分離される。また、所与の色に関するノズルの偶数列および奇数列の間隔は、以下に説明するように、それらがインクチャネルを共有できるようでなければならない。
【0061】
プリントヘッドIC74は、プリントヘッド組立体22の幅全体にわたって横に延びるように配列される。これを実現するために、個々のプリントヘッドIC74は、図8および9に示すように、接着材層71の表面全体にわたって、隣接した配列で相互に連結される。プリントヘッドIC74を、ICを接着材層の融点より高く加熱して、次いでICを密閉フィルム71に押し付ける、またはICの下の接着材層をレーザで溶融してからICをフィルムに押し付けることによって、ポリマー密閉フィルム71に取り付けることができる。別の選択肢は、IC(接着材の融点より高くなく)と接着材層の両方を加熱してから、ICをフィルム71に押し付けることである。
【0062】
図13および14を参照すると、複数の溝85が、各プリントヘッドIC74の裏面にエッチングされている。これらの溝は、接着材がプリントヘッドIC74と接合するための追加の表面積をもたらす。フィルム71が接着材の融点より高く加熱された後、プリントヘッドIC74がフィルムに押し付けられると、接着材が溝85に流れ込む。接着材は、接着材の表面張力および溝の寸法に応じて、毛管作用によって溝に引き込まれても、接合中に溝に単に押し込まれてもよい。溝85は、ウェーハ段階で、チャネル77がエッチングされるのと同時にプリントヘッドIC74の裏面にエッチングされる。
【0063】
プリントヘッドIC74が接合前に加熱される場合、プリントヘッドICが冷却したとき、溝85内の溝内に収容された接着材の上に部分的な真空が形成される。この部分的な真空は、プリントヘッドIC74をフィルム71に対して適所に保持するのを助け、接合中にプリントヘッドIC74を適切に整合した形で維持する。
【0064】
個々のプリントヘッドIC74の長さは、約20〜22mmである。A4/USレターサイズのページを印刷するには、11〜12個の個々のプリントヘッドIC74が、連続して相互に連結される。個々のプリントヘッドIC74の数は、他の幅のシートに対応するように変えることができる。
【0065】
プリントヘッドIC74を、さまざまな様式で相互に連結することができる。IC74を連結するための1つの特定の様式を、図12に示す。この構成では、IC74がそれらの端部で、隣接するIC間に垂直方向のオフセットなしに、相互に連結してICからなる水平な線を形成するように形状設定される。ほぼ45°の角度を有する傾斜した接合箇所が、IC間に設けられる。接合縁部は一直線ではなく、位置決めを容易にするための、のこぎり歯状の輪郭を有し、IC74は、接合縁部に垂直に測定して約11ミクロン離隔されるものとする。この構成では、各列上にある最も左のインク吐出ノズル73が、10ラインピッチだけ欠かれ、三角形構成として構成される。この構成は、接合箇所にノズルのある程度のオーバーラップを設け、インク滴が印刷ゾーンに沿って一定に吐出されるのを確実にするために、ノズルのピッチを維持するものである。この構成はまた、十分な連結を確実にするために、より多くのシリコンがIC74の縁部に設けられるようにもするものである。ノズルの動作の制御は、SoPECデバイス(本説明において後に論じる)によって実施されるが、ノズルの補償は、貯蔵要件に応じて、プリントヘッド内で実施しても、SoPECデバイスによって実施してもよい。この点に関して、IC74の一端に配設されたノズルの欠落した三角形構成は、プリントヘッド上の最小の貯蔵要件をもたらすことが理解されよう。しかし、貯蔵要件がより決定的に重要でない場合には、三角形以外の形状を使用することができ、例えば欠落した列は、台形の形をとることができる。
【0066】
プリントヘッドICの上面には、ノズル73の動作を制御するためのデータおよび/または電力をSoPECデバイスから受け取る手段を提供する、いくつかのボンディングパッド75がその縁部に沿って設けられる。接着材層71の表面上にIC74を正しく位置決めし、IC74を、接着材層71に形成された穴72と正しく整合するように位置合わせするのを助けるために、フィデューシャル76もIC74の表面上に設けられる。フィデューシャル76は、IC74の隣接するICおよび接着材層71の表面に対する真の位置を示すために、適当な位置決め装置によって容易に識別可能なマーカの形をとり、IC74の縁部および接着材層71の長さに沿ったところに効果的に配置される。
【0067】
インクをポリマー密閉フィルム71内に形成された穴72から受け取るために、またインクをインク入口73に分配するために、各プリントヘッドIC74の下面が、図13に示すように構成される。いくつかのエッチングされたチャネル77が設けられ、各チャネル77は、1つの特定の色またはタイプのインクの吐出専用である、入口73の1対の列と流体連通する。チャネル77は、ポリマー密閉フィルム71内の穴72の幅に等しい約80ミクロン幅であり、IC74の長さに及ぶ。チャネル77は、シリコン壁78によって区画に分割される。各区画には、入口73への流路を減らし、個々のノズル801に対してインクが枯渇する可能性を低減するために、インクが直接供給される。この点に関して、各区画は、約128個のノズル801に、それらのそれぞれに対応する入口73を介して供給する。
【0068】
図15Bは、インクが、ノズル801に供給するために、IC74の下面に形成されたエッチングされたチャネル77にどのように供給されるかについてより明確に示す。図示のように、ポリマー密閉フィルム71を貫通して形成された穴72が、チャネル77のうち1つと、シリコン壁78がチャネル77を区画に分離する点で整合される。穴72は、約80ミクロン幅であり、これは、1つの穴72がインクをチャネル77の2つの区画に供給するように、チャネル77とほぼ同じ幅である。このため、ポリマー密閉フィルム71内に必要な穴72の密度が半分になることが理解されよう。
【0069】
各プリントヘッドIC74の、ポリマー密閉フィルム71の表面への取付けおよび整合に続いて、フレックスPCB79が、ノズル801を制御し動作させるために制御信号および電力をボンディングパッド75に供給することができるように、IC74の縁部に沿って取り付けられる。図15により明確に示されるように、フレックスPCB79は、プリントヘッド組立体22から延びて、プリントヘッド組立体22に巻きつく。
【0070】
フレックスPCB79には、受け取った電力およびデータ信号を制御するために、複数のデカップリングコンデンサ81が、その長さに沿って配置されてもよい。図8で最も良く分かるように、フレックスPCB79には、電力および/またはデータ信号をクレードルユニット12の制御回路から受け取るために、複数の電気接点180が、その長さに沿って形成される。フレックスPCBを本体20の剛性プレート34のフランジ部分40に取り付けるための手段を提供する複数の穴80も、フレックスPCB79の末端縁部に沿って形成される。フレックスPCB79の電気接点が、クレードルユニット12の電力接点およびデータ接点にどのように接触するかについては、後に説明する。
【0071】
図10に示すように、媒体シールド82がプリントヘッドIC74を、通過する媒体との接触のために生ずる恐れのある損傷から保護する。媒体シールド82は、適当なクリップロック(clip−lock)構成または接着材によって、プリントヘッドIC74の上流側で上部部材62に取り付けられる。このようにして取り付けられたとき、プリントヘッドIC74は、媒体シールド82の表面の下方の、通過する媒体の経路の外に位置する。
【0072】
圧縮空気を空気圧縮機などから受け取ることができるスペース83が、媒体シールド82と、上部62および下部65部材との間に設けられる。このスペース83は、プリントヘッド組立体22の長さに沿って延びるので、圧縮空気を、プリントヘッド組立体22のどちらか一方の端部からスペース56に供給して、組立体に沿って均等に分配することができる。媒体シールド82の内面には、一連のフィン84が設けられ、フィン84は、媒体シールド82の長さに沿って均等に分配された複数の空気出口を画定し、圧縮空気がそれを通って移動し、プリントヘッドIC74をまたいで媒体送出方向に向けられる。この構成は、媒体と共に運ばれるほこり、および他の粒子状物質が、プリントヘッドICの表面上に積もる(ノズルに対して閉塞および損傷を引き起こす恐れがある)のを防ぐ働きをする。
【0073】
インク吐出ノズル
ここで、プリントヘッドIC74に適したインク吐出ノズル構成のタイプの例を、図16〜25を参照して説明する。図25は、シリコン基板8015上に形成されたインク吐出ノズル構成801のアレイを示す。ノズル構成801はそれぞれ同一のものであるが、ノズル構成801のグループに、異なる色のインクまたは定着剤が供給されるように構成される。この点に関して、ノズル構成は、列をなして構成され、相互に食い違いに並べられ、それによって印刷中に、インクドットを、単一列のノズルを用いて可能であるよりも近くに離隔するのが可能になる。そうした構成にすると、高密度のノズル、例えば、それぞれが各列内のノズル間に約32ミクロンの、また隣接する列間に約80ミクロンの隙間を有する、複数の食い違いに並べられた列内にアレイされた5000個を超えるノズルを設けることが可能になる。複数列は、冗長構成(希望するなら)も可能にし、それによって、ノズルあたりの所定の故障率が可能になる。
【0074】
各ノズル構成801は、集積回路製作技法の産物である。具体的には、ノズル構成801は、微小電気機械システム(MEMS)を画定する。
【0075】
説明を明確および簡単にするために、単一のノズル構成801の製作および動作について、図16〜24を参照して説明する。
【0076】
インクジェットプリントヘッド集積回路74は、シリコンウェーハ基板8015を含み、シリコンウェーハ基板8015は、その上に配置された0.35ミクロンの1P4M 12ボルトCMOSマイクロプロセッシング電子回路を有する。
【0077】
二酸化シリコン(または、代替としてガラス)層8017が、基板8015上に配置される。二酸化シリコン層8017は、CMOS誘電体層を画定する。CMOS最上位メタルが、二酸化シリコン層8017上に配置された、1対の整合されたアルミニウム電極接点層8030を画定する。シリコンウェーハ基板8015と二酸化シリコン層8017は両方共、エッチングされて、概して円形の断面(平面図として)を有するインク入口チャネル8014を画定する。CMOSメタル1、CMOSメタル2/3、およびCMOS最上位メタルのアルミニウム拡散障壁8028が、二酸化シリコン層8017内の、インク入口チャネル8014の周囲に配置される。拡散障壁8028は、ヒドロキシルイオンがドライブエレクトロニクス(drive electronics)層8017のCMOS酸化物層を通って拡散するのを妨げる働きをする。
【0078】
窒化シリコン層の形をとるパッシベーション層8031が、アルミニウム接点層8030および二酸化シリコン層8017上に配置される。接点層8030上に配置されたパッシベーション層8031の各部分には、接点8030へのアクセスを提供するために、その中に開口8032が画定される。
【0079】
ノズル構成801は、ノズルルーフ8034内の上端で終わる、環状のノズル壁8033と、平面図として円形の径方向内側のノズルリム(nozzle rim)804とによって画定されるノズル室8029を含む。インク入口チャネル8014は、ノズル室8029と流体連通する。ノズル壁の下端に、可動シールリップ8040を含む可動リム8010が配設される。包囲壁8038が、可動ノズルを取り囲み、包囲壁8038は、ノズルが図19に示すように静止しているときに可動リム8010に隣接する、固定シールリップ8039を含む。固定シールリップ8039と可動シールリップ8040の間に閉じ込められたインクの表面張力のため、流体シール(fluidic seal)8011が形成される。これにより、インクが室から漏洩するのが防止されるとともに、包囲壁8038とノズル壁8033の間に低抵抗結合がもたらされる。
【0080】
図23で最も良く分かるように、複数の径方向に延びる陥凹8035が、ルーフ8034内のノズルリム804の周囲に画定される。陥凹8035は、インクがノズルリム804を通り越して漏れたことによる径方向のインクの流れを収容する働きをする。
【0081】
ノズル壁8033は、基部8037が窒化シリコン層8031に取り付けられた、概してU字形の輪郭を有するキャリア8036に取り付けられたレバー構成の一部分を形成する。
【0082】
レバー構成は、ノズル壁から延び、また横方向の補強ばり(stiffening beam)8022を組み込むレバーアーム8018も含む。レバーアーム8018は、1対の受動ばり(passive beam)806に取り付けられ、受動ばり806は、窒化チタン(TiN)から形成され、図19および24で最も良く分かるように、ノズル構成の両側に配置される。受動ばり806の他方の端部が、キャリア8036に取り付けられる。
【0083】
レバーアーム8018は、TiNから形成されるアクチュエータばり(actuator beam)807にも取り付けられる。アクチュエータばりへのこの取付けは、受動ばり806への取付けよりもわずかだが決定的に重大な距離だけ高い、ある点で行われることに留意されよう。
【0084】
図16および22で最も良く分かるように、アクチュエータばり807は、平面図としてほぼU字形であり、電極809と対向する電極8041の間の電流経路を画定する。電極809および8041はそれぞれ、接点層8030内のそれぞれに対応する点に電気的に接続される。アクチュエータばりは、接点809を介して電気的に結合されるだけでなく、アンカー808に機械的にも固定される。アンカー808は、ノズル構成が動作中であるとき、アクチュエータばり807の運動を、図19〜21の左側に対して制限するように構成される。
【0085】
アクチュエータばり807内のTiNは、導電性であるが、電流が電極809と8041の間に流れるときに、それが自己加熱を受けるのに十分高い電気抵抗を有する。電流は受動ばり806を通って流れないので、受動ばり806は膨張しない。
【0086】
使用の際には、静止しているデバイスがインク8013で充填され、インク8013は、表面張力の影響を受けてメニスカス803を画定する。インクは、メニスカスによって室8029内に保持され、他の何らかの物理的な影響がない場合、一般に漏出しない。
【0087】
図17に示すように、ノズルからインクを発射するために、接点809と8041の間に電流が流されて、アクチュエータばり807内を通る。はり807のその抵抗に起因する自己加熱が、はりを膨張させる。アクチュエータばり807の寸法および設計は、図16〜18に対して水平方向に膨張の大部分を結果としてもたらす。膨張は、アンカー808によって左側に対して制限されるので、アクチュエータばり807のレバーアーム8018に隣接する端部が、右側に押しやられる。
【0088】
受動ばり806の相対的な水平方向の不撓性が、受動ばり806がレバーアーム8018の大きな水平方向の運動を可能にするのを妨げる。しかし、受動ばりおよびアクチュエータばりそれぞれのレバーアームへの取付け点の相対的な変位が、ねじれ運動を引き起こし、それがレバーアーム8018を、一般に下方に移動させる。この運動は、事実上、回転またはヒンジ運動である。しかし、真の回転中心がないことは、回転が、受動ばり806が曲がることによって画定される回転領域を中心とすることを意味する。
【0089】
レバーアーム8018の下方の運動(およびわずかな回転)は、ノズル壁8033の受動ばり806からの距離によって増幅される。ノズル壁およびルーフが下方に運動すると、室8029内に圧力増加を引き起こし、図17に示すように、メニスカスを膨らませる。インクの表面張力が、流体シール8011がその運動によってインクを漏出させずに引き伸ばされるという結果を生ずることに留意されよう。
【0090】
図18に示すように、適当な時間に駆動電流が停止され、アクチュエータばり807が、迅速に冷却して収縮する。この収縮によって、レバーアームがその静止位置へと戻るのが始まり、それが室8029内の圧力を減少させる。膨れたインクの運動量およびその固有の表面張力と、ノズル室8029の上向きの運動によって引き起こされた負圧との相互作用により、膨れたメニスカスが薄くなり、最終的に切れてインク滴802を画定し、インク滴802が、隣接する印刷媒体に接触するまで上向きに存続する。
【0091】
滴802が切り離された直後、メニスカス803が、図18に示す凹形状を成す。表面張力が、室8029内の圧力を、インクが上向きに入口8014を通って吸い込まれてしまうまで比較的低いままにとどめ、それによって、ノズル構成およびインクが、図16に示す静止状態に戻る。
【0092】
次に、プリントヘッドIC74に適した別のタイプのプリントヘッドノズル構成について、図26を参照して説明する。この場合もやはり、説明を明確および簡単にするために、単一のノズル構成1001の製作および動作について説明する。
【0093】
ノズル構成1001は、気泡形成用加熱要素アクチュエータタイプのものであり、ノズル1003がその中にあるノズルプレート1002を備え、ノズルは、ノズルリム1004と、ノズルプレートを貫通して延びる開口1005とを有する。ノズルプレート1002は、後にエッチングされる犠牲材料上に化学気相成長(CVD)によって配設された窒化シリコン構造からプラズマエッチングされる。
【0094】
このノズル構成は、各ノズル1003に関して、ノズルプレートがその上に支持される側壁1006と、壁およびノズルプレート1002によって画定される室1007と、多層基板1008と、多層基板を貫通して基板の向こう側(図示せず)まで延びる入口通路1009とを含む。輪状の細長い加熱要素1010が、室1007内に吊り下げられ、したがって要素は、吊り下げられたはりの形をとる。図示のノズル構成は、リソグラフィプロセスによって形成される微小電気機械システム(MEMS)構造である。
【0095】
このノズル構成が使用中であるとき、リザーバ(図示せず)からのインク1011が、室1007に入口通路1009を経由して入り、その結果室が充満する。その後、加熱要素1010が、1マイクロ秒にいくらか満たない間加熱され、したがってこの加熱は、熱パルスの形をとる。加熱要素1010は、室1007内でインク1011と熱接触し、したがって要素が加熱されると、それがインク中に蒸気泡の発生を引き起こすことが理解されよう。したがって、インク1011は、気泡形成用液体である。
【0096】
気泡1012は、発生後、室1007内に圧力の増加を引き起こし、それがインク1011の滴1016の、ノズル1003を通る噴射を引き起こす。リム1004が、滴1016が噴射されるときそれを、誤った方向を向く可能性を最小限に抑えるように誘導するのを助ける。
【0097】
入口通路1009ごとにノズル1003および室1007が1つしかない理由は、要素1010の加熱および気泡1012の形成のすぐ後で、室内に発生する圧力波が、隣接する室およびそれらに対応するノズルに影響を及ぼさないようにするためである。
【0098】
室1007内の圧力の増加は、インク1011をノズル1003を通って押し出すだけでなく、一部のインクを入口通路1009を通って押し戻しもする。しかし、入口通路1009は、約200〜300ミクロンの長さであり、約16ミクロンの直径しかない。したがって、かなりの粘性抵抗がある。その結果、室1007内での圧力上昇の主な影響は、インクを、入口通路1009を通って戻すのではなく、噴射された滴1016としてノズル1003を通って外へ押しやることである。
【0099】
図26に示されるように、滴が分離する前の「ネッキング段階(necking phase)」中に噴射されているインク滴1016が示されている。この段階で、気泡1012はすでにその最大サイズに達しており、次いで、崩壊点1017に向かって崩壊し始めている。
【0100】
崩壊点1017に向かって気泡1012が崩壊すると、一部のインク1011が、ノズル1003内から(滴の側面1018から)、また一部が、入口通路1009から、崩壊点に向かって引き込まれる。このようにして引き込まれるインク1011の大部分は、ノズル1003から引き込まれて、環状の首部1019を、滴1016が分離する前にその基部に形成する。
【0101】
滴1016は、分離するために、表面張力に打ち勝つためのある程度の運動量を必要とする。気泡1012の崩壊によって、インク1011がノズル1003から引き込まれるとき、首部1019の直径が減少し、それによって、滴を保持している表面張力全体の量が減少し、したがって滴がノズルから外に噴射されるときのその運動量が、滴を分離させるのに十分になる。
【0102】
滴1016が分離するとき、気泡1012が崩壊点1017に向かって崩壊するので、矢印1020で示すように、キャビテーション力が生ずる。キャビテーションが影響を及ぼし得る崩壊点1017の付近には、固体面がないことに留意されよう。
【0103】
次に、プリントヘッドICに適した、さらに別のタイプのプリントヘッドノズル構成について、図27〜29を参照して説明する。このタイプは一般に、インクを含むノズル室と、室内に配置されたパドルに接続された熱曲げアクチュエータとを有するインク吐出ノズル構成を実現するものである。熱アクチュエータデバイスは、ノズル室からインクを噴射するように作動される。この好ましい実施形態は、導電性トレースの導電加熱をもたらすための一連のテーパ状部分を含む、特定の熱曲げアクチュエータを含む。アクチュエータはパドルに、ノズル室のスロット付きの壁を貫通して受けられたアームを介して接続される。アクチュエータアームは、実質的にノズル室壁内のスロットの表面とかみ合うようにかみ合い形状を有する。
【0104】
初めに図27(a)〜(c)に移ると、本実施形態のノズル構成の基本動作についての概略図が示されている。インク入口チャネル503によってインク502で充填されたノズル室501が設けられ、インク入口チャネル503は、ノズル室501がその上に載っているウェーハ基板を貫通してエッチングすることができる。ノズル室501はさらに、インクメニスカスがその周囲に生ずるインク噴射ポート504を含む。
【0105】
ノズル室501の内側に、パドルタイプデバイス507があり、それが、ノズル室501の壁内のスロットを貫通してアクチュエータ508に相互接続される。アクチュエータ508は、ポスト510の端部に隣接して配置されたヒータ手段、例えば509を含む。ポスト510は、基板に固定される。
【0106】
ノズル室501から滴を噴射することが望まれるとき、図27(b)に示すように、ヒータ手段509が、熱膨張を受けるように加熱される。好ましくは、ヒータ手段509自体、またはアクチュエータ508の他の部分が、高い曲げ効率(bend efficiency)を有する材料から製作され、ここで曲げ効率は次のように定義される。
曲げ効率=(ヤング率×(熱膨張係数))/(密度×比熱容量)
ヒータ要素に適した材料は、銅ニッケル合金であり、これは、ガラス材料を曲げるように形成することができる。
【0107】
ヒータ手段509は、理想的には、作動の影響がパドル端部507で強められ、したがってポスト510付近の小さな熱膨張が、パドル端部の大きな運動をもたらすように、ポスト510の端部に隣接して配置される。
【0108】
ヒータ手段509およびその結果として生ずるパドルの運動が、インクメニスカス505の周囲に全体的な圧力増加を引き起こし、インクメニスカス505が、図27(b)に示すように、迅速に膨張する。ヒータ電流がパルス状にされ、インクが、インクチャネル503から流れ込むのに加えてポート504から外に噴射される。
【0109】
その後、パドル507が非アクティブにされて、その静止位置に再度戻る。非アクティブ化は、ノズル室内へのインクの全体的な逆流を引き起こす。ノズルリムの外側でのインクの順方向の運動量およびそれに対応する逆流が、滴512の全体的なネッキングおよび分離を生じ、滴512が印刷媒体に向かって進む。メニスカス505の崩壊によって、インクが、インク流チャネル503を介してノズル室502内に全体的に吸い込まれる。最終的に、ノズル室501が、図27(a)の位置に再度達するように再充填され、ノズル室はその後、別のインク滴を噴射する準備が整う。
【0110】
図28は、このノズル構成の側面斜視図である。図29は、図28のノズル構成のアレイ全体にわたる断面図である。これらの図では、先に導入された要素の番号付けが維持される。
【0111】
まず、アクチュエータ508は、一連のテーパ状アクチュエータユニット、例えば515を含み、これらは、窒化チタン層517の上面上に形成された上部ガラス部分(非晶質二酸化シリコン)516を備える。あるいは、より高い曲げ効率を有する銅ニッケル合金層(以後、キュプロニッケルと呼ぶ)を利用することもできる。
【0112】
窒化チタン層517はテーパ状であり、したがって抵抗加熱が、ポスト510の端部付近で生ずる。隣接する窒化チタン/ガラス部分515が、アクチュエータ508に機械的構造支持も提供するブロック部分519で相互接続される。
【0113】
ヒータ手段509は、理想的には、加熱するとすぐ、アクチュエータ508の軸に沿って示される曲げ力が最大にされるように、細長く離隔された複数のテーパ状アクチュエータユニット515を含む。隣接するテーパ状ユニット515同士の間にスロットが画定され、スロットは、各アクチュエータ508が、隣接するアクチュエータ508に対してわずかに異なる動作をするのを可能にする。
【0114】
ブロック部分519が、アーム520に相互接続される。アーム520は、ノズル室501の内側で、ノズル室501の側面に形成されたスロット、例えば522によって、パドル507に接続される。スロット522は、インクがアーム520の周囲に流出する可能性を最小限に抑えるように、全体的にアーム520の表面とかみ合うように設計される。インクは、スロット522の周囲の表面張力効果によって、全体的にノズル室501内に保持される。
【0115】
アーム520を作動させることが望まれるとき、伝導電流が、ノズル構成に必要な電力および制御回路を提供する下部CMOS層506に接続するブロック部分519内で、窒化チタン層517に流される。伝導電流は、ポスト510に隣接する窒化物層517の加熱を生じ、それが、アーム520を全体的に上向きに曲げて、その結果、インクをノズル504から外に噴射させる。噴射された滴が、前述のインクジェットプリンタに通常の様式で、ページ上に印刷される。
【0116】
ノズル構成のアレイを、単一のプリントヘッドを製作するように形成することができる。例えば、図29では、一部分が断面にされた多様なアレイの図が示してあり、図は、プリントヘッドアレイを形成するように交互配置されたライン内にレイアウトされた複数のインク噴射ノズル構成を備える。もちろん、フルカラーアレイなどを含む、さまざまなタイプのアレイを案出することができる。
【0117】
説明したプリントヘッドシステムの製作は、標準的なMEMS技法を、その内容を相互参照により完全に組み込む、本出願人の「Image Creation Method and Apparatus(IJ 41)」という名称の米国特許第6243113号に記載のステップの適切な変更を通じて利用することによって、進めることができる。
【0118】
集積回路74を、集積回路の長さおよび必要な所望の印刷特性に応じて、5000〜100,000個の上述したインク吐出ノズルがその表面に沿って配列されるように構成することができる。例えば、狭い媒体の場合、所望の印刷結果を実現するために、プリントヘッド組立体の表面に沿って配列された5000個のノズルしか必要としないことが可能である場合があり、より幅広い媒体の場合、所望の印刷結果を実現するために、最低限10,000、20,000または50,000個のノズルを、プリントヘッド組立体の長さに沿って設ける必要がある場合がある。1600dpiまたはその付近での、A4またはUSレターサイズの媒体上のフルカラー写真品質画像の場合、集積回路74は、1色あたり13824個のノズルを有する場合がある。したがって、プリントヘッド組立体22が、4色(C、M、Y、K)で印刷することができる場合、集積回路74には、約53396個のノズルが、その表面に沿って配設される場合がある。さらに、プリントヘッド組立体22が、6つの印刷液(C、M、Y、K、IRおよび定着剤)を印刷することができる場合、そのために集積回路74の表面上に82944個のノズルが設けられる場合がある。かかる全ての構成では、各ノズルをサポートする電子回路は同じものである。
【0119】
以上、本発明を、その例示的諸実施形態例に即して図示し説明してきたが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、さまざまな変更が当業者には明らかとなり、またさまざまな変更を当業者の手で容易に行うことができよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書に記載の説明に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲は、広義に解釈されることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】紙が入力トレイ内にあり、収集トレイが突き出したプリンタの前面斜視図である。
【図2】ケーシングが開いて内部を露出させた(入力トレイ内に紙がなく、収集トレイが格納された状態の)図1のプリンタユニットを示す図である。
【図3】クレードルユニットおよび開いたカバー組立体、ならびにクレードルユニットから取り出されたカートリッジユニットの斜視図である。
【図4】カバー組立体が閉じた位置にある、図3のクレードルユニットを示す図である。
【図5】図3のカートリッジユニットの前面斜視図である。
【図6】図5のカートリッジユニットの分解斜視図である。
【図7】図6に示すプリントヘッド組立体の上面斜視図である。
【図8】図7に示すプリントヘッド組立体の分解図である。
【図9】図7に示すプリントヘッド組立体の上下逆さにした分解図である。
【図10】図7のプリントヘッド組立体の端部断面図である。
【図11】図8〜10に示すプリントヘッド集積回路モジュールの、欠落(drop)三角形端部の拡大部分斜視図である。
【図12】図8〜11に示すプリントヘッド集積回路モジュール2つの間の接合箇所の拡大斜視図である。
【図13】図11に示すプリントヘッド集積回路の下面図である。
【図14】図13に示すインク供給チャネルの横断面斜視図である。
【図15A】図7のプリントヘッド組立体の、特にインクをプリントヘッド集積回路に供給するためのインク管路を示す、上面透視図である。
【図15B】図15Aの部分拡大図である。
【図16】本発明と共に使用する、単一のインク噴射用ノズルの、静止状態における垂直断面図である。
【図17】図16のノズルの、初期作動段階中の垂直断面図である。
【図18】図17のノズルの、作動段階後期の垂直断面図である。
【図19】図16のノズルの、図18に示す作動状態における、部分垂直断面斜視図である。
【図20】インクが省略された図16のノズルの垂直断面斜視図である。
【図21】図20のノズルの垂直断面図である。
【図22】図16のノズルの、図17に示す作動状態における、部分垂直断面斜視図である。
【図23】図16のノズルの平面図である。
【図24】見やすくするためにレバーアームおよび可動ノズルを除いた、図16のノズルの平面図である。
【図25】図16に示すタイプの複数のノズル構成を組み込んだ、プリントヘッドチップの一部分の垂直断面斜視図である。
【図26】気泡形成用加熱要素(bubble forming heater element)アクチュエータタイプのインクを噴射するための単一のノズルの、インク室全体にわたる概略断面図である。
【図27A】熱曲げアクチュエータの基本的な動作原理を示す図である。
【図27B】熱曲げアクチュエータの基本的な動作原理を示す図である。
【図27C】熱曲げアクチュエータの基本的な動作原理を示す図である。
【図28】図27A〜図27Cに従って製作された、単一のインクジェットノズル構成の3次元図である。
【図29】図28に示すノズル構成のアレイを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板を第2の基板に接合する方法であって、
(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された第1の基板を提供するステップと、
(b)第2の接合面を有する第2の基板を提供するステップと、
(c)接着材を使用して前記第1の接合面と前記第2の接合面とを接合するステップと
を含み、
接合中に、前記接着材が少なくとも部分的に、前記複数のエッチングされた溝内に収容される、方法。
【請求項2】
前記第1の基板が、1000ミクロン未満の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の基板が、約250ミクロン未満の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の基板が集積回路である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の基板が、プリントヘッド集積回路である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の基板が、複数のプリントヘッド集積回路を前記第2の基板上に取り付けるように構成された成形インクマニホルドである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のエッチングされた溝が、液体接着材を毛管作用によって引き込むのに十分な直径または幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のエッチングされた溝が、約10ミクロン未満の直径または幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のエッチングされた溝が、少なくとも20ミクロンの深さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のエッチングされた溝が、少なくとも3:1のアスペクト比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のエッチングされた溝が、前記第1の接合面の有効表面積を少なくとも20%増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の接合面が、約20nm未満の最大表面粗さRmaxを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の接合面が、約5nm未満の最大表面粗さRmaxを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の接合面が、約20nm未満の平均表面粗さRを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の接合面が、約5nm未満の平均表面粗さRを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の基板が、約5ミクロン未満のTTV(Total Thickness Variation)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記接着材が、液体ベースの接着材である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記接着材が、液体ベースの接着材を備える接着テープである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
接合中に、少なくとも前記第1の基板が冷却し、それによって、前記複数のエッチングされた溝内の前記接着材の上に部分的な真空が発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも前記第1の基板が接合前に加熱され、接合中に冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
接合中に、前記部分的な真空が、少なくとも部分的に、前記第1および第2の基板を一緒に保持する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
第2の基板に接着材を使用して接合するのに適した第1の基板であって、前記第1の基板は、複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定され、前記複数のエッチングされた溝が、接合中に前記接着材を収容するように構成される、第1の基板。
【請求項23】
1000ミクロン未満の厚さを有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項24】
250ミクロン未満の厚さを有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項25】
半導体集積回路である、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項26】
MEMS集積回路である、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項27】
プリントヘッド集積回路である、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項28】
前記複数のエッチングされた溝が、液体接着材を毛管作用によって引き込むのに十分な直径または幅を有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項29】
前記複数のエッチングされた溝が、約10ミクロン未満の直径または幅を有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項30】
前記複数のエッチングされた溝が、少なくとも20ミクロンの深さを有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項31】
前記複数のエッチングされた溝が、少なくとも3:1のアスペクト比を有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項32】
前記複数のエッチングされた溝が、前記第1の接合面の有効表面積を少なくとも20%増大させる、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項33】
前記第1の接合面が、約20nm未満の最大表面粗さRmaxを有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項34】
前記第1の接合面が、約5nm未満の最大表面粗さRmaxを有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項35】
前記第1の接合面が、約20nm未満の平均表面粗さRを有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項36】
前記第1の接合面が、約5nm未満の平均表面粗さRを有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項37】
前記第1の基板が、約5ミクロン未満のTTV(Total Thickness Variation)を有する、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項38】
前記接着材が液体ベースの接着材である、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項39】
前記接着材が、液体ベースの接着材を備える接着テープである、請求項22に記載の第1の基板。
【請求項40】
(a)複数のエッチングされた溝が第1の接合面に画定された、第1の基板と、
(b)第2の接合面を有する第2の基板であり、前記第2の接合面が、前記第1の接合面に接着材で接合される、前記第2の基板と
を備え、
前記接着材が少なくとも部分的に、前記複数のエッチングされた溝内に収容される、接合済み組立体。
【請求項41】
前記第1の基板が、1000ミクロン未満の厚さを有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項42】
前記第1の基板が、250ミクロン未満の厚さを有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項43】
前記第1の基板が、半導体集積回路である、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項44】
前記第1の基板が、MEMS集積回路である、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項45】
前記第1の基板が、プリントヘッド集積回路である、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項46】
前記第2の基板がポリマーである、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項47】
前記第2の基板が、複数のプリントヘッド集積回路を前記第2の基板上に取り付けるように構成された成形インクマニホルドである、請求項45に記載の接合済み組立体。
【請求項48】
前記複数のエッチングされた溝が、液体接着材を毛管作用によって引き込むのに十分な直径または幅を有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項49】
前記複数のエッチングされた溝が、約10ミクロン未満の直径または幅を有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項50】
前記複数のエッチングされた溝が、少なくとも20ミクロンの深さを有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項51】
前記複数のエッチングされた溝が、少なくとも3:1のアスペクト比を有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項52】
前記複数のエッチングされた溝が、前記第1の接合面の有効表面積を少なくとも20%増大させる、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項53】
前記第1の接合面が、約20nm未満の最大表面粗さRmaxを有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項54】
前記第1の接合面が、約5nm未満の最大表面粗さRmaxを有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項55】
前記第1の接合面が、約20nm未満の平均表面粗さRを有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項56】
前記第1の接合面が、約5nm未満の平均表面粗さRを有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項57】
前記第1の基板が、約5ミクロン未満のTTV(Total Thickness Variation)を有する、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項58】
前記接着材が、液体ベースの接着材である、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項59】
前記接着材が、液体ベースの接着材を備える接着テープである、請求項40に記載の接合済み組立体。
【請求項60】
(a)複数のプリントヘッド集積回路であり、各プリントヘッド集積回路が、
前記プリントヘッド集積回路の前面上に形成された複数のノズルと、
インクを前記プリントヘッド集積回路の裏面から前記複数のノズルに供給するための、複数のインク供給チャネルと、
前記裏面に画定された、複数のエッチングされた溝と
を備える前記複数のプリントヘッド集積回路と、
(b)取付け面を有するインクマニホルドであり、各プリントヘッド集積回路の前記裏面が、前記取付け面に接着材で接合される、前記インクマニホルドと
を具備し、
前記接着材が少なくとも部分的に、前記複数のエッチングされた溝内に収容される、プリントヘッド組立体。
【請求項61】
各プリントヘッド集積回路が、250ミクロン未満の厚さを有する、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項62】
前記インクマニホルドが、ポリマーから形成される成形インクマニホルドである、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項63】
前記複数のエッチングされた溝が、液体接着材を毛管作用によって引き込むのに十分な直径または幅を有する、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項64】
前記複数のエッチングされた溝が、約10ミクロン未満の直径または幅を有する、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項65】
前記複数のエッチングされた溝が、少なくとも20ミクロンの深さを有する、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項66】
前記複数のエッチングされた溝が、少なくとも3:1のアスペクト比を有する、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項67】
前記複数のエッチングされた溝が、各裏面の有効表面積を少なくとも20%増大させる、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項68】
各裏面が、約20nm未満の最大表面粗さRmaxを有する、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項69】
各裏面が、約5nm未満の最大表面粗さRmaxを有する、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項70】
各裏面が、約20nm未満の平均表面粗さRを有する、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項71】
各裏面が、約5nm未満の平均表面粗さRを有する、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項72】
各プリントヘッド集積回路が、約5ミクロン未満のTTV(Total Thickness Variation)を有する、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項73】
前記接着材が、液体ベースの接着材である、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項74】
前記接着材が、液体ベースの接着材を備える接着テープである、請求項60に記載のプリントヘッド組立体。
【請求項75】
請求項60に記載のプリントヘッド組立体を備えるプリンタ。
【請求項76】
ページ幅インクジェットプリンタである、請求項75に記載のプリンタ。
【請求項77】
インクマニホルドの取付け面に接着材を使用して接合するのに適したプリントヘッド集積回路であって、
前記プリントヘッド集積回路の前面上に形成された複数のノズルと、
インクを前記プリントヘッド集積回路の裏面から前記複数のノズルに供給するための、複数のインク供給チャネルと、
前記裏面に画定された、複数のエッチングされた溝であり、接合中に前記接着材を収容するように構成される、前記複数のエッチングされた溝と
を備える、プリントヘッド集積回路。
【請求項78】
250ミクロン未満の厚さを有する、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項79】
前記複数のエッチングされた溝が、液体接着材を毛管作用によって引き込むのに十分な直径または幅を有する、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項80】
前記複数のエッチングされた溝が、約10ミクロン未満の直径または幅を有する、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項81】
前記複数のエッチングされた溝が、少なくとも20ミクロンの深さを有する、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項82】
前記複数のエッチングされた溝が、少なくとも3:1のアスペクト比を有する、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項83】
前記複数のエッチングされた溝が、第1の接合面の有効表面積を少なくとも20%増大させる、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項84】
第1の接合面が、約20nm未満の最大表面粗さRmaxを有する、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項85】
第1の接合面が、約5nm未満の最大表面粗さRmaxを有する、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項86】
第1の接合面が、約20nm未満の平均表面粗さRを有する、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項87】
第1の接合面が、約5nm未満の平均表面粗さRを有する、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項88】
約5ミクロン未満のTTV(Total Thickness Variation)を有する、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項89】
前記接着材が、液体ベースの接着材である、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。
【請求項90】
前記接着材が、液体ベースの接着材を備える接着テープである、請求項77に記載のプリントヘッド集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27(A)】
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【図27(B)】
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【図27(C)】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2008−530316(P2008−530316A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555421(P2007−555421)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000269
【国際公開番号】WO2006/089337
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】