説明

基板上の単結晶半導体およびその製造方法

【課題】 高品質なSiCが形成された層状基板を提供する。
【解決手段】 本発明は、基板と、基板上に形成された誘電体層と、誘電体層上に形成された単結晶層とを含む層状構造に関する。単結晶層は、約200〜20000オングストロームの厚さを有し、少なくとも第1の元素と誘電体層上の第2の元素の初期単結晶層との化学反応によって形成される。本発明の成功には、第2の元素が、約100〜10000オングストロームの初期厚さを有することが重要である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、層状半導体構造に関する。具体的には、本発明は、基板と単結晶半導体層を含む層状半導体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】炭化ケイ素(SiC)は、多数の電子装置に応用できる可能性の高いバンドギャップの大きい半導体である。その広範な用途に対する重要な障害は、直径の大きい高品質基板を経済的に成長させることができないこと、および電子装置にとって十分な品質の基板を成長させることができないことである。これらの問題を克服するために、シリコン上に炭化ケイ素を成長させる多くの試みが行われている。しかしながら、大きい格子不整合(25%)が高品質の炭化ケイ素の成長を妨げている。多形体結晶構造が現れるため、さらに事態が複雑になる。
【0003】炭化ケイ素をシリコン上に成長させるのに広く使用される1つの方法は、炭素の薄い層をシリコン上に付着させることである。炭素は、不均一気相核生成か直接炭素付着のどちらかによって付着し、次いでこの炭素を反応させてシリコン炭素層を形成する。本書では、このプロセスを炭化と呼ぶ。この炭化物層は、その後の炭化ケイ素成長用のシードの働きをする。この方法の主要な問題は、形成された炭化物テンプレート層に欠陥が多いことである。
【0004】この初期層内に欠陥があると、この層がその後の炭化ケイ素成長用のシードとなるので、この炭化の際に成長した層の欠陥密度に大きな影響を及ぼす。形成された炭化物テンプレート層は、格子不整合のためだけでなく、各種の反応気体(主に炭化水素)のクラッキングに必要な高温のために欠陥が多くなる。高温により、新しく形成された炭化ケイ素層を横切るシリコンの拡散が増加し、この臨界炭化層内に空隙が形成される。
【0005】さらに、現在では、光通信およびシリコン・ベースの論理回路が、分離処理方法を使用する明確な技術である。デバイス用の市販の材料として直接バンドギャップ半導体、例えば窒化ケイ素を開発する際の主要な問題は、適切な基板がないことである。
【0006】さらに、現在、非常に高価な炭化ケイ素の直径1インチまたは2インチの基板を使用して、炭化ケイ素ベースの高温FETが製造されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前述の従来技術の問題を克服することである。具体的には、本発明の目的は、直径の大きい(例えば8インチ)高品質の炭化ケイ素が形成された基板を提供することである。
【0008】さらに、本発明の目的は、光学材料を、例えばシリコン・ウエハ上に直接に集積することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板と、基板上に形成された誘電体層と、誘電体層上に形成された単結晶層とを含む層状構造に関する。単結晶層は、約200〜20000オングストロームの厚さを有し、少なくとも第1の元素と誘電体層上の第2の元素の初期単結晶層との化学反応によって形成される。本発明の成功には、第2の元素が、約100〜10000オングストロームの初期厚さを有することが重要である。
【0010】本発明はまた、第1の基板上に化合物の単結晶層を形成する方法に関する。この方法は、厚さ約100〜10000オングストロームの第1の元素の第2の単結晶基板の主表面を、第1の基板の主表面に結合することを含む。第2の元素を第2の基板の第1の元素と化学反応させて、化合物の単結晶層を形成する。
【0011】本発明の他の様態は、約0.01〜0.02オングストローム/秒の低い速度で、約800〜1300Kの低い温度で固体炭素源から炭素を付着させることによって、基板上に炭化物単結晶層を設けることを含む。次いで、この構造を約1200〜1300Kの温度にまで加熱し、下地の基板との化学反応によって炭素層を炭化物に変換する。
【0012】本発明の他の様態によれば、前述のように形成された構造は、さらに導電性を有する。
【0013】具体的には、本発明は、単結晶層上に半導体層を含む。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の構造の形成を概略的に表したものである。具体的には、シリコンなどの基板1が設けられており、その上に誘電体層2が設けられている。適切な誘電体層2の例は、二酸化ケイ素、窒化シリコン、ホウケイ酸塩などのガラスである。誘電体層は、一般に、厚さ約1000〜20000オングストロームであり、好ましくは約1000〜5000オングストローム、最も好ましくは約2000オングストロームである。
【0015】誘電体層は、CVD(化学気相付着法)などの周知の技法によって提供でき、一酸化ケイ素や二酸化ケイ素の場合は、シリコン基板の熱酸化によって提供できる。
【0016】結晶材料の比較的薄い層3を、誘電体層2の上に形成する。この層3は、約100〜10000オングストロームの厚さを有し、好ましくは約200〜1000オングストローム、最も好ましくは約200〜300オングストロームの厚さを有する。本発明の成功には、層3が比較的薄く、結晶質であることが重要である。層は、シリコンが好ましい。この層3は、ボンド・エッチバック技法(BESOI)またはサイモックス法、またはラテラル・エピタキシャル成長法によって形成できる。
【0017】次いで、この層3を、第2の異なる元素との化学反応によって化合物の単結晶層に変換する。
【0018】図1は、第2の元素4として炭素を付着することを示す。他の第2の元素としては、ゲルマニウム、コバルト、チタンおよびタンタルでもよい。炭素は、固体炭素源からか、またはあまり好ましくないが不均一気相核生成によって付着できる。
【0019】層4の厚さは、欠陥の核生成なしに均一な単結晶層を形成するのに十分薄い厚さである層3の厚さに等しいか、または少なくとも±10%の誤差でほぼ等しくする。
【0020】次いで、層3/層4の二分子層(例えば、C/Si)を、一般に約900〜1770K、好ましくは1070〜1170Kの温度で反応させて、均一な単結晶層5を形成する。反応速度は、温度に直接関係し、層5の品質を制御するために、温度をできるだけ低く(例えば1070K)維持することが好ましい。シリコンや炭素の場合、そのような層は、炭化ケイ素、通常は3c−SiCである。次いで、この層5は、その後の炭化ケイ素またはその他の半導体の付着用のテンプレートとして使用される。
【0021】図2は、本発明の構造を得るための他の方法を示す。具体的には、薄い層3を、例えばアセチレンC22など炭素を含む気体と反応させる。反応は、薄い層3の炭化を実現するのに十分高い温度で行われる。これらの温度は、一般に、少なくとも約1200〜1600Kである。
【0022】本発明により形成される炭化ケイ素などの層4は、高温用電子装置、マイクロ波装置、自動車用電子装置、高電力装置、オプトエレクトロニクス、放射線耐性電子装置など、各種の分野において広範囲の目的に使用できる。さらに、本発明では、直径8インチなど、最新技術の直径の大きいシリコン処理手段を使用できる。したがって、経済的な処理技法が使用できる。
【0023】層3は、比較的薄く、プロセス中に完全に消費されるので、アモルファス基板上に単結晶層が提供される。体積変化に起因して生じる歪みは、単結晶層と誘電体の間の界面における滑動によって解消される。
【0024】本発明の他の様態によれば、炭化物単結晶層が基板上に提供される。このプロセスは、固体炭素源からの炭素を、約0.01〜0.02オングストローム/秒、好ましくは約0.015オングストローム/秒の比較的低い速度で、約800〜1300K、好ましくは約1200〜1300Kの比較的低い温度で付着させるステップを含む。付着の速度および温度は、表面全体に炭素の均一な層が付着するように選択される。
【0025】次いで、この構造を、約1000〜1300K、好ましくは1200〜1250Kの温度に加熱して、それを炭化物に変換する。この温度は、シリコンなどの下地の材料の拡散が固体源からの炭素の付着速度と適切に合致するように選択し、またできるだけ低くする必要がある。これにより、炭化物の反応を十分に制御でき、したがって空隙の形成が減り、また成長した炭化物の炭化層の品質が大幅に改善される。炭化物層が形成されると、シリコンの拡散速度が炭化ケイ素層を横切って減少し、成長の温度を上げるかまたは炭素の流束を小さくするかあるいはその両方によって均一な成長を維持することができる。
【0026】代表的な例では、5インチ(100)シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板上に、厚さ約10〜100オングストロームの緩衝Si層を約923Kの温度で付着させる。次いで、このウエハを約473Kの温度にまで冷却し、炭素の薄い層をウエハ全体に均一に付着させる。この炭素層を、基板の温度を約950Kにまで上げて、SiC層に変換する。炭素は、昇華温度すなわち約3000K以上に加熱した元素状黒鉛フィラメントによって実施される固体源から得られる。炭素源温度は、したがってその流束は、黒鉛フィラメントを通る電流を0.01アンペア/秒未満の率に制限することによって制御される。ウエハを炭素流束に当てながら、制御された速度で950〜1223Kの温度にまで加熱する。次いで、それをこの温度で約10〜30分間アニールし、約10〜30K/分の速度で室温にまで徐々に冷却する。
【0027】本発明の他の様態では、前述の方法によって得られる層状構造は、追加の炭化ケイ素、シリコンゲルマニウム、炭化シリコンゲルマニウム、窒化ガリウムなどの半導体層用のテンプレートとして使用される。シリコン・ベースの論理回路を備える直接バンドギャップ半導体に基づく発光構造および光検出構造を一体化した構造が特に重要である。
【0028】例えば、直接バンドギャップ半導体を、C−SiCなどの単結晶層に格子整合させ、その上に成長させる。図3は、C−SiCを整合させるためにC−AlN緩衝層を使用する、GaNベースの発光ダイオードの概略図である。図3では、番号1はシリコンやサファイアなどの基板を示し、番号2は誘電体層を、番号3は前述のように調製したC−SiCなどの単結晶層を示す。
【0029】AlNなどの格子整合層4をSiC層3上に成長させる。AlNは、格子定数と熱膨張係数が共にSiCに合致する。この層4は、一般に、約100〜2000オングストロームであり、代表的な例は、約500オングストロームである。層4は、約10〜100マイクロモル/分の流量のトリエチルアルミニウムおよび約1〜2標準リットル/分の流量のNH3を全圧約100トールで用いるMOCVD(有機金属化学気相付着法)を使用して、約800〜1300K、典型的には約1000Kの温度で成長させることができる。次いで、半導体層5を層4の上部に成長させる。層5の代表的な例は、GaNである。この層5は、一般に厚さ約500〜10000オングストローム、典型的には約5000オングストロームである。
【0030】層5は、例えば、ガリウム・クヌーセン・セルと、磁気電流17アンペアで動作する、窒素分子を活性化させ解離させるための70ワットECR光源とを備えたEPI GEN II MBE(分子線エピタキシ)システムを使用して、約973Kで600オングストローム/時の速度で成長させることができる。あるいは、層5は、約10〜100マイクロモル/分の流量のトリエチルガリウムおよび約1〜2標準リットル/分の流量のNH3を全圧約100トルで用いて、OMCVDによって1300Kの温度で成長させることができる。
【0031】このように形成された層5は、青色および紫外線LED、光検出器、可視光レーザ、ディスプレイ用小形LEDアレイ、およびその他のオプトエレクトロニクス装置など、各種の装置を製造する場合に広範囲の目的に使用できる。
【0032】図3では、一般に約1019/cm3の濃度のシリコンを用いたドーピング層5を含む青色発光ダイオード構造が用意されている。入力インジウム接点6を層5に接続する。次いで、約1018〜1020/cm3、典型的には約1019/cm3の濃度でシリコンをドープした、厚さ約200〜10000オングストロームのAl0.13GaNなどのアルミニウムガリウム炭化物の層7を層5の上に付着させる。
【0033】厚さ約200〜2000オングストロームのIn0.8GaNの層8を層7の上に付着させる。
【0034】厚さ約200〜10000オングストロームのAl0.13GaNの第2の層9を層8の上に付着させる。層9には、層7のシリコン・ドーパントと導電型が反対のドーパントをドープする。典型的なドーパントは、約1018〜1020/cm3、典型的には約1019/cm3の用量のマグネシウムである。
【0035】厚さ約500〜10000オングストロームの窒化ガリウムの第2の層10を層9の上に付着させる。
【0036】次いで、インジウム電気接点11を層10の上に設ける。
【0037】層7、8、9および10は、6および11に接触し、ドーピングは、当業者に周知の技法によって行うことができる。
【0038】図4は、光ファイバ通信用のスペクトル範囲が赤外線から近紫外線にわたる直接バンドギャップ放射源と下地のシリコン基板との一体化の概略図である。
【0039】具体的には、厚さ約200〜20000オングストロームのc−ガリウムヒ素の層12を窒化c−ガリウム層5の上に設ける。
【0040】まとめとして、本発明の構成に関して以下の事項を開示する。
【0041】(1)基板と、前記基板上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された化合物の単結晶層とを含む層状構造であって、前記単結晶層が、約200〜20000オングストロームの厚さを有し、少なくとも第1の元素と、約100〜10000オングストロームの初期厚さを有する前記誘電体層上の第2の元素の初期単結晶層との化学反応により形成される、層状構造。
(2)前記誘電体層が、二酸化ケイ素、窒化シリコンおよびホウケイ酸塩からなるグループから選択されることを特徴とする、上記(1)に記載の層状構造。
(3)前記第1の元素が、炭素、ゲルマニウム、コバルト、チタンおよびタングステンからなるグループから選択されることを特徴とする、上記(1)に記載の層状構造。
(4)前記第2の元素がシリコンであることを特徴とする、上記(1)に記載の層状構造。
(5)前記化合物が炭化ケイ素であることを特徴とする、上記(1)に記載の層状構造。
(6)さらに、前記単結晶層上にある半導体層を含むことを特徴とする、上記(1)に記載の層状構造。
(7)前記半導体が、前記化合物に格子整合し、SiC、SiGe、SiGeC、AlNおよびGaNからなるグループから選択されることを特徴とする、上記(6)に記載の層状構造。
(8)前記半導体がGaNであり、さらに前記半導体と前記単結晶層の中間にC−AlN層を含むことを特徴とする、上記(6)に記載の層状構造。
(9)厚さ約100〜10000オングストロームの第1の元素からなる第2の単結晶基板の主表面を、前記第1の基板の主表面に結合するステップと、第2の元素を、前記第2の基板の前記第1の元素と化学反応させて、化合物の単結晶層を形成するステップとを含む、第1の基板上に化合物の単結晶層を形成する方法。
(10)さらに、前記第1の基板を選択するステップを含み、前記第2の基板の前記主表面が、化学反応による前記第2の基板から前記化合物の前記単結晶層への変換の間の格子不整合を解消するために、接着テープ試験の接着力よりも大きいが前記第2の基板が前記第1の基板との界面において滑動するのに十分小さい所定の接着力を有することを特徴とする、上記(9)に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構造を形成するための反応を示す図である。
【図2】本発明の構造を形成するための他の反応を示す図である。
【図3】本発明の層状構造上の青色LED構造を示す図である。
【図4】赤外線LED構造を製造するのに適した本発明の層状構造を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 誘電体層
3 層
4 元素
5 単結晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】基板と、前記基板上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された化合物の単結晶層とを含む層状構造であって、前記単結晶層が、約200〜20000オングストロームの厚さを有し、少なくとも第1の元素と、約100〜10000オングストロームの初期厚さを有する前記誘電体層上の第2の元素の初期単結晶層との化学反応により形成される、層状構造。
【請求項2】前記誘電体層が、二酸化ケイ素、窒化シリコンおよびホウケイ酸塩からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の層状構造。
【請求項3】前記第1の元素が、炭素、ゲルマニウム、コバルト、チタンおよびタングステンからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の層状構造。
【請求項4】前記第2の元素がシリコンであることを特徴とする、請求項1に記載の層状構造。
【請求項5】前記化合物が炭化ケイ素であることを特徴とする、請求項1に記載の層状構造。
【請求項6】さらに、前記単結晶層上にある半導体層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の層状構造。
【請求項7】前記半導体が、前記化合物に格子整合し、SiC、SiGe、SiGeC、AlNおよびGaNからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項6に記載の層状構造。
【請求項8】前記半導体がGaNであり、さらに前記半導体と前記単結晶層の中間にC−AlN層を含むことを特徴とする、請求項6に記載の層状構造。
【請求項9】厚さ約100〜10000オングストロームの第1の元素からなる第2の単結晶基板の主表面を、前記第1の基板の主表面に結合するステップと、第2の元素を、前記第2の基板の前記第1の元素と化学反応させて、化合物の単結晶層を形成するステップとを含む、第1の基板上に化合物の単結晶層を形成する方法。
【請求項10】さらに、前記第1の基板を選択するステップを含み、前記第2の基板の前記主表面が、化学反応による前記第2の基板から前記化合物の前記単結晶層への変換の間の格子不整合を解消するために、接着テープ試験の接着力よりも大きいが前記第2の基板が前記第1の基板との界面において滑動するのに十分小さい所定の接着力を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平8−236445
【公開日】平成8年(1996)9月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−7976
【出願日】平成8年(1996)1月22日
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレイション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION