基板処理方法及び基板処理装置
【課題】トレンチ、コンタクトホール、ディープパターン、或いは多孔質基板の細孔等の窪み内を確実に処理しうる処理方法を提供する。
【解決手段】基板Wの表面にアルコール類Xを接触させて、該アルコール類Xを窪みW−1内に進入させ、基板Wを収容する処理槽1内に基板Wが漬かる水位まで薬液Mを送り込んで薬液Mを窪みW−1内に進入させ、処理槽1内から薬液Mを排液し処理槽1内を減圧することにより窪みW−1内に進入してアルコール類Xと混ざった薬液Mの一部を蒸発させる処理を数回にわたって繰り返す。
【解決手段】基板Wの表面にアルコール類Xを接触させて、該アルコール類Xを窪みW−1内に進入させ、基板Wを収容する処理槽1内に基板Wが漬かる水位まで薬液Mを送り込んで薬液Mを窪みW−1内に進入させ、処理槽1内から薬液Mを排液し処理槽1内を減圧することにより窪みW−1内に進入してアルコール類Xと混ざった薬液Mの一部を蒸発させる処理を数回にわたって繰り返す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及び基板処理装置に係り、特に微細な窪みを有する基板の処理に好適な基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造において、ウエハ等の基板には、その表面の清浄化のために、洗浄処理とそれに続く減圧乾燥処理が施される場合がある。洗浄処理では、例えば、フッ酸(HF)溶液等の薬液を用いて酸化膜や汚染物等をエッチングにより除去するケミカル処理が実施され、それに次いで、温水又は冷水等の純水を用いて、付着している該薬液やエッチング残渣(有機残留物或いは無機残留物)等の付着物を洗い落とす水洗処理が実施されうる。
【0003】
また、多孔質基板の処理については、超音波エネルギーを与えながら純水によって多孔質基板の細孔内に付着した異物を除去する処理(特許文献1)や、純水にアルコールを添加した洗浄液を用いて多孔質基板の細孔内に付着した異物を除去する処理(特許文献2)がある。
【特許文献1】特許第3192610号公報
【特許文献2】特許第3245127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板の表面には、例えば線幅が10μm以下で、しかも種々の深さを有するような複雑且つ様々なトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン等の窪み構造が存在しうる。また、多孔質基板の表面には、数nmから数100nm程度の孔径を有する多数の細孔或いは窪みが数μmから数百μmの深さで存在している。
【0005】
従来のウェット式処理方法では、薬液や純水等の処理液の種類と接触面(材質)で決まる表面張力(接触角)が障害になったり、また窪み内に入っている気泡が邪魔をしたりして、処理液が窪みの奥まで確実に入り込まない場合がある。窪みの奥への液体の提供は、トレンチが小さくなるほど困難になることが示唆されている(服部毅編著 “新版シリコンウェーハ表面のクリーン化技術” 2001 リアライズ社発行 454頁左欄1行目〜17行目参照)。
【0006】
そのために、薬液によって窪み内の酸化膜や汚染物等をエッチング除去するケミカル処理、純水による不純物やエッチング残渣を洗い落とす水洗処理等の一連の洗浄処理の信頼性が低いのが現状である。
【0007】
また、窪み部分の材質や処理液の種類によっては、発生する毛細管力により窪みの奥まで処理液が提供され、処理液が窪みの全体に満たされる場合もあるが、このような場合においても窪み内の洗浄処理が良好に行なわれないことがある。
【0008】
これは、トレンチや細孔などの窪みにおいて生じる毛細管力、つまり液浸透力が、窪み内に入り込んで圧縮されている気泡の反発力よりも圧倒的に強く、一旦窪み内に入り込んだ処理液が外部に出ることなく内部に留まるためである。つまり、窪み内では処理液が流動することができず、これが洗浄不良を引き起こしうる。
【0009】
半導体デバイスの高性能化、高集積化等に伴い、半導体デバイス製造におけるトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン等の窪み内の洗浄処理が重要視されており、窪み内の酸化膜や汚染物等を確実に除去しうるような洗浄処理技術の改善が半導体製造メーカーの大きな課題となっている。同様に、多孔質基板の洗浄不良を低減することも重要である。
【0010】
因みに、前述したトレンチ等の窪み内の圧縮された気泡の反発力や該窪み内に作用する液浸透力の大きさは、窪み内の表面積、薬液や純水等の処理液の表面張力、そして窪み部分の材質による表面張力(接触角)によって決定されると考えられが、容易には特定できない。
【0011】
また、最終水洗処理後に行われる減圧乾燥処理により、活性化(完全乾燥)される基板の表面には吸着力が生じ易く、基板が大気中に曝されると、大気中の汚染されている水分(不純物や有機・無機成分等の汚染物質を含む)が基板の表面に吸着して、該表面に吸着汚染膜が形成されうる。
【0012】
吸着汚染膜が基板の表面に形成されると、その水分が毛細管力により窪み内に進入し、窪み内が汚染されることがある。したがって、大気中における汚染を最小化することが重要になっている。
【0013】
また、窪みの材質が親水性である場合と、疎水性である場合とでは、窪みへの薬液、純水等の処理液の浸透が異なり、例えば、窪みの材質が疎水性である場合、線幅が10μm以下で、しかも深さや形状が複雑な基板の場合には、窪み内への液体の浸透が全く起こらないことがある。
【0014】
多孔質基板は、シリコン等の半導体基板に陽極化成処理を施すことで形成されうる。陽極化成は、フッ酸(HF)溶液中でシリコン基板に電界をかけることにより実施されうる。陽極化成処理後のシリコン基板の洗浄が十分でない場合、細孔内にHF成分或いはHFによる副生成物が残留し、その残留したHF溶液が多孔質構造を変化させてしまったり、二次的な汚染を引き起こしたりしうる。
【0015】
本発明は、上記の種々の課題に鑑みてなされたものであり、例えば、窪みを有する基板を良好かつ安定的に処理するための好適な基板処理方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の側面は、基板処理方法に係り、該方法は、基板を処理槽内に配置し前記処理槽を密閉する密閉工程と、前記基板が処理液中に漬かった状態で、前記処理槽内の圧力を変化させる圧力制御工程とを含む。ここで、前記圧力制御工程は、前記処理槽内を減圧する減圧工程を含む。
【0017】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記圧力制御工程は、前記減圧工程による減圧の後に前記処理槽内を加圧する加圧工程を含む。
【0018】
本発明の更に好適な実施の形態によれば、前記圧力制御工程では、前記減圧工程及び前記加圧工程を含むサイクルを複数回にわたって繰り返して実施する。
【0019】
前記圧力制御工程は、前記処理槽内を大気圧以下の圧力にした後に、大気圧以下の圧力の範囲内で前記処理槽内の圧力を制御することを含むことが好ましい。
【0020】
本発明の好適な適用例によれば、処理対象の基板は窪みを有する。この場合において、前記圧力制御工程では、該窪み内の気体が該窪みから放出される条件で前記処理槽内の圧力を変化させることが好ましい。
【0021】
本発明の好適な実施の形態によれば、本発明の基板処理方法は、処理された基板を前記処理槽から取り出す前に、該基板に保護膜を形成する保護膜形成工程を更に含むことが好ましい。前記保護膜は、例えば純水からなる。
【0022】
本発明の第2の側面に係る基板処理方法は、窪みを有する基板にアルコールを提供するアルコール提供工程と、該基板に更に処理液を提供し、該窪み内に該処理液を進入させる処理液提供工程と、該窪みに入っている該アルコール及び該処理液の少なくとも一部を蒸発させる蒸発工程とを含み、前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程を含むサイクルを複数回にわたって繰り返して実施する。
【0023】
本発明の好適な実施の形態によれば、処理対象の基板を密閉された処理槽内に配置して、前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程を実施することが好ましい。
【0024】
本発明の好適な実施の形態によれば、本発明の基板処理方法は、前記処理液提供工程の後であって前記蒸発工程の前に、該処理液を前記処理槽から排出する排出工程を更に含む。
【0025】
前記処理液提供工程では、該基板が収容されている処理槽において該処理液の液面が該基板の面を横切って上昇するように、前記処理槽に該処理液を供給することが好ましい。ここで、該処理液の液面が0.001〜1.0m/sの速度で上昇するように、該処理液が前記処理槽に供給されることが好ましい。
【0026】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程は、大気圧以下の圧力下で実施されうる。
【0027】
本発明の好適な実施の形態によれば、本発明の基板処理方法は、処理された基板を前記処理槽から取り出す前に、該基板に保護膜を形成する保護膜形成工程を更に含みうる。ここで、前記保護膜は、例えば純水からなる。
【0028】
本発明の第3の側面に係る基板処理装置は、基板を収容する密閉可能な処理槽と、前記処理槽内の圧力を制御する圧力制御機構とを備え、前記圧力制御機構は、前記基板が前記処理槽内の処理液中に漬かった状態で、前記処理槽内を減圧しその後に加圧するサイクルを少なくとも1回実施するように動作する。
【0029】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記圧力制御機構は、サイクルを複数回にわたって繰り返して実施するように動作する。
【0030】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記圧力制御機構は、前記処理槽内を大気圧以下の圧力にした後に、大気圧以下の圧力の範囲内で前記処理槽内の圧力を制御するように動作する。
【0031】
本発明の好適な適用例によれば、前記圧力制御機構は、窪みを有する基板の該窪みから気体が放出される条件で前記処理槽内の圧力を制御するように動作する。
【0032】
本発明の第4の側面に係る基板処理装置は、窪みを有する基板を収容する密閉可能な処理槽と、前記処理槽内の該基板にアルコールを供給するアルコール供給機構と、前記処理槽内の該基板に処理液を供給する処理液供給機構と、前記処理槽内の該処理液を前記処理槽外に排出する排出機構と、前記処理槽内を減圧して該窪みに入っている該アルコール及び該処理液の少なくとも一部を蒸発させる圧力制御機構とを備え、前記アルコール供給機構による該アルコールの供給、前記処理液供給機構により該処理液の供給、前記排出機構による該処理液の排出及び前記圧力制御機構による減圧を含むサイクルが複数回にわたって繰り返されるように、前記アルコール供給機構、前記処理液供給機構、前記排出機構及び前記圧力制御機構が動作する。
【0033】
前記処理液供給機構は、例えば、前記処理槽内において該処理液の液面が該基板の面を横切って上昇するように、前記処理槽に該処理液を供給する。ここで、該処理液の液面が0.001〜1.0m/sの速度で上昇するように該処理液が前記処理槽に供給されることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、たとえば、窪みを有する基板を良好かつ安定的に処理するための好適な基板処理方法及び基板処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、例えば、液晶表示装置やフォトマスクのガラス基板、プリント基板、シリコンウェーハ、化合物半導体、或いはLSI等の半導体素子、多孔質基板等の種々の形態の基板を薬液や純水等の処理液を用いて処理するために好適である。本発明は、基板の表面に存在するトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン等の窪み、特に線幅が10μm以下で種々の深さを有する複雑な窪みの処理(例えば、洗浄処理)に好適である。また、本発明は、多数の細孔が表面に露出した多孔質基板の処理(例えば、洗浄処理)にも好適である。
【0036】
密閉された処理槽内を大気圧以下の減圧状態にすると、その減圧量にほぼ反比例してトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン、又は細孔等の窪み内の気泡の体積が例えば数倍から数十倍に増える。その後、処理槽内の圧力を元に戻すなど、処理槽内を加圧すると、気泡が圧縮されて体積が例えば数分の1から数十分の1に減少する。このような気体の体積変化を利用することで、窪み内の気泡を窪み外に放出させたり、窪み内で処理液を移動させたりすることができる。このような処理は、例えば、10μm以下の寸法を有するトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン、又は、細孔等の窪みを有する基板のケミカル処理、洗浄処理等の種々のウエット処理に適している。
【0037】
本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
(実施形態1)
図1は、本発明の処理方法を実施する処理システムの第1の実施形態を示す概略図で、1は処理槽、2は給水ライン、3は排液ライン、4はオーバーフローライン、5は吸引ライン、6はガスライン、7は蒸気導入ラインを示す。
【0039】
本実施形態の処理方法では、まず、密閉される処理槽1内に基板Wを収容する。ここで、基板Wは、例えば、その面が鉛直方向に沿うようにして又は斜めにして配置されうる。また、複数枚の基板Wを同時に処理する場合には、複数枚の基板Wが平行に並べて配置されうる。
【0040】
次いで、処理槽1内にフッ酸(HF)溶液等の薬液Mを送り込むことにより、基板W上から酸化膜等をエッチングによって除去するケミカル処理を行う。その後、薬液Mに換えて温水又は冷水等の純水(リンス液)Nを送り込むことにより、基板W上から薬液Mや付着物等を洗い落とす水洗処理(リンス処理)を行う。
【0041】
ここで、上記のケミカル処理及び水洗処理中において、処理槽1内の圧力を減圧し加圧する圧力制御を少なくとも1回実施すること、好ましくは複数回繰り返すことで、基板Wの表面のみならず、窪み内も確実且つ効果的にケミカル処理及び水洗処理がなされうる。このような圧力制御は、例えば、線幅が10μm以下で深さが異なる複雑且つ様々な、トレンチ、又はコンタクトホール、又はディープパターンのような窪みの内部や、多孔質基板の細孔のような窪みの内部を洗浄等する処理に有用である。ケミカル処理及び水洗処理中において、処理槽1内の圧力の制御は、例えば、大気圧以下の圧力範囲内で実施されることが好ましい。
【0042】
以下、図2(a)、図2(b)を参照しながら処理槽1内の圧力制御を伴う基板Wの処理について更に詳細に説明する。
【0043】
まず、基板Wを処理槽1に収容し、処理槽1内を大気圧以下の減圧状態にし、その後、処理液(ここでは、薬液M又は純水N)を処理槽1内に注入する。このように処理槽1内への処理液の注入に先立って処理槽1内を大気圧以下に減圧することにより、トレンチ等の窪みW−1内の気体の量(分子数)を減らした状態で基板Wに処理液を提供することができる。
【0044】
次いで、処理槽1内を更に減圧することにより、この減圧量(減圧前と減圧後の圧力の差分)にほぼ反比例して、基板Wの表面に開口している窪みW−1内の気泡Kが膨張し、図2(a)に模式的に示すように、気泡Kを構成する気体分子の大部分が窪みW−1内から溢れ出る。その後、処理槽1内を加圧(昇圧)することにより(例えば、処理槽1内の圧力を元に戻すことにより)、窪みW−1内の気泡Kが圧縮され、図2(b)に示すように、気泡Kの体積が元の体積の例えば数分の1から数十分の1(好ましい実施形態では、例えば1/2.5〜1/50)に減少する。これは、気泡K(気体)の体積変化を利用したものである。
【0045】
以上のような圧力制御により、基板Wの表面と同様に、窪みW−1の内部面にも薬液Mや純水N等の処理液を接触させることができるので、基板Wの表面と同様に、窪みW−1を確実且つ効率的に清浄化処理することができる。
【0046】
上記のケミカル処理及び水洗処理中において処理槽1内の圧力範囲は、上記のように大気圧以下の圧力範囲であることが好ましい。ここで、完全真空の圧力が0kPaで、大気圧が100kPaであると仮定した場合、上記のケミカル処理及び水洗処理中において処理槽1内の圧力範囲は、1〜99kPaであることが好ましく、30〜99kPaであることが更に好ましい。
【0047】
処理槽1内の圧力の制御は、例えば、第1段階では、処理槽1内の圧力を30〜99kPaの範囲とし、続く第2段階では、処理槽1内の圧力を更に下げて2〜70kPaの範囲(ただし、第1段階の圧力よりも低い圧力)とし、続く第3段階では、処理槽1内の圧力を上げて35〜99kPaの範囲(ただし、第2段階の圧力よりも高い圧力)とすることができる。なお、第3段階では、第1段階における圧力とほぼ等しい圧力にしてもよい。このような第2段階(減圧)及び第3段階(加圧)で構成されるサイクルは、複数回にわたって繰り返し実施されてもよい。
【0048】
窪みW−1は、種々の形状及び構造を有しうるが、トレンチの場合、典型的には、図8に示すように窪みの幅をx、深さをyとした場合にy/xで定義されるアスペクト比が0.5から100の範囲であり、入口の開口面積が0.01μm2以上である。
【0049】
処理槽1は、例えば、石英やふっ素樹脂、或いは金属板の表面にふっ素樹脂等からなるコーティング膜を施してなる耐圧容器として構成されうる。図1に例示的に示す実施形態においては、処理槽1は、多数枚の基板Wを垂直又は斜めの状態で平行に並べて収容し得る大きさを有し、上部に開口を有し、下部に底部壁を有する箱形状を有する。底部壁は、例えば中央に設けられた給・排液口8に向かって傾斜している。給・排液口8には、給液ライン2と排液ライン3とが分岐して接続されている。
【0050】
そして、給液ライン2には、その途中部位から分岐される薬液バルブ9と純水バルブ10とを夫々介して薬液供給ユニット11と純水供給ユニット12とが接続されている。これにより、給・排液口8から処理槽1内に薬液M又は純水Nを所定の流速(m/s)で供給することができる。
【0051】
また、排液ライン3には、排液バルブ13と、排液ライン3の端部に接続されるヘッダ14とを介して排液・真空吸引ユニット15が接続されている。これにより、ケミカル処理後や水洗処理後等において、処理槽1内から薬液M又は純水Nを所定の流速(m/s)で吸引して排液することができる。
【0052】
また、処理槽1の上部開口には密閉蓋16が開閉自在に装備されている。密閉蓋16を閉じることにより処理槽1が密閉される。薬液Mを用いたケミカル処理時や純水Nを用いた水洗処理時において、密閉蓋16により処理槽1を密閉し、処理槽1内を大気圧以下の圧力にすること、更には、吸引口17に吸引ライン5を介して接続される排液・真空吸引ユニット15による減圧(真空引き)と、ガス供給口18、ガスライン6を介して接続されるガス供給ユニット19によるガス(例えばN2等)の供給による処理槽1内の加圧(例えば、元の圧力に戻す)とを数回(N回)にわたって繰り返し実施することができる。
【0053】
また、処理槽1の上部側壁部には、処理液の液面Lを規定するオーバーフロー口20が設けられている。オーバーフロー口20は、オーバーフローライン4、オーバーフローバルブ21、そしてオーバーフローライン4の端部に接続されるヘッダ14を介して排液・真空吸引ユニット15に接続されている。これにより、ケミカル処理中又は水洗処理中において、給・排液口8から処理槽1内に所定の流速(m/s)で送り込まれて基板Wの表面に接触しながら上昇(浮上)する薬液M又は純水Nが、基板Wの上部から処理槽1外にオーバーフローされる。
【0054】
また、処理槽1の上部側壁部には、吸引口17が設けられている。吸引口17は、吸引ライン5、吸引バルブ22、そして吸引ライン5の端部に接続されるヘッダ14を介して排液・真空吸引ユニット15に接続されている。これにより、ケミカル処理中や水洗処理中において、密閉された処理槽1内を減圧することができる。
【0055】
また、処理槽1の上部側壁部にはガス供給口18が設けられている。ガス供給口18は、ガスライン6とガスバルブ23とを介してガス供給ユニット19に接続されている。これにより、ケミカル処理中や水洗処理中において、減圧された処理槽1内を、例えば減圧前の圧力状態に戻す等、処理槽1内を加圧することができる。
【0056】
また、処理槽1の上部側壁部には蒸気導入口24が設けられている。蒸気導入口24は、蒸気導入ライン7と蒸気バルブ25とを介してアルコール供給ユニット26に接続されている。純水Nによる基板Wの水洗処理が終了し、純水が排液・真空吸引ユニット15により底部の給・琲液口8から所定の流速(m/s)で吸引排液された後に、蒸気バルブ25を開くことにより、大気圧以下の処理槽1内に、蒸気化されたイソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類Xが吸い込まれて導入される。
【0057】
ここで、アルコール類Xとしては、イソプロピルアルコールの他、例えばメチルアルコール、エチルアルコール等が好適である。
【0058】
次に、以上のように構成された図1に示す処理システムによる基板の処理方法の一例を図3に示すフローチャートを参照しながらに説明する。
【0059】
基板Wを処理槽1内に搬入し、垂直又は斜め並列状に配置し、密閉蓋16を閉じる(ステップ27)。ここで、処理槽1内が薬液Mにより満たされた状態で処理槽1内に基板Wが搬入されてもよいし、処理槽1内が空の状態で処理槽1内に基板が搬入され、その後に薬液Mが処理槽1内に供給されてもよい。次に示す処理手順は、前者の例である。
【0060】
密閉蓋16が閉じられた後に、排液・真空吸引ユニット15を作動させると共に吸引バルブ22を開いて、処理槽1内を大気圧以下の圧力、例えば10〜99kPaまで真空引きする減圧処理を開始する(ステップ28)。
【0061】
処理槽1内が大気圧以下の圧力、例えば10〜99kPaの範囲内の目標圧力値まで減圧された時点で、吸引バルブ22が閉じられて減圧動作が停止される。また、オーバーフローバルブ21が開かれ(減圧動作の停止)、薬液供給ユニット11の動作が開始される共に薬液バルブ9が開かれる。
【0062】
薬液バルブ9が開くことにより、薬液バルブ9が閉じられるまで、底部の給・排液口8から処理槽1内へ薬液Mが所定の流速(m/s)で継続して送り込まれる。薬液Mの継続給水により、基板Wの表面に接触しながら流れる薬液Mの上昇流が処理槽1内に形成される。図1に示す処理槽1上部の液面Lまで上昇した薬液Mは、オーバーフロー口20から処理槽1外にオーバーフローされる。このような薬液Mの供給によって、基板W上の酸化膜や汚染物質等をエッチングによって除去するケミカル処理が開始される(ステップ29)。
【0063】
薬液Mの循環供給によるケミカル処理が開始されてから所定の時間が経過した後に吸引バルブ22を開いて、処理槽1内の圧力値を10〜99kPaの範囲内の第1圧力値から2〜70kPaの範囲内の第2圧力値(第1圧力値よりも低い圧力値)までに更に下げる減圧動作を開始させる(ステップ30)。
【0064】
処理槽1内の圧力値が2〜70kPaの範囲内の第2圧力値まで低下した後に、吸引バルブ22が閉じられ(減圧の停止)、ガス供給ユニット19が動作を開始すると共にガスバルブ23が開かれる。
【0065】
ガスバルブ23が開くことにより、ガス供給口18から処理槽1内にガスが送り込まれ、処理槽1内の圧力値を第2圧力値から第3圧力値(第2圧力値よりも高い圧力値、例えば第1圧力値)まで上昇させる加圧動作が開始される(ステップ31)。
【0066】
処理槽1内の圧力値が第3圧力値(例えば、85〜99kPaの範囲内の圧力値)に達した後に、ガス供給ユニット19が止められ、ガスバルブ23が閉じられる。また、吸引バルブ22が開いて処理槽1内の減圧を再開するステップ30に戻る。ステップ30からステップ31における減圧及び加圧は、数回(N回)繰り返されうる。
【0067】
ステップ30からステップ31が予め設定された回数(N回)にわたって繰り返されて、基板Wの表面の他、コンタクトホール、ディープパターン等の窪みW−1内の薬液Mによるケミカル処理が終了する処理時間が経過すると(ステップ32でYes)、薬液供給ユニット11、廃液・吸引ユニット15が止められ、薬液バルブ9、オーバーフローバルブ21が閉じられる。
【0068】
薬液Mによる基板Wのケミカル処理が終了した後に、基板Wを次の工程へ搬送する場合にはガス供給ユニット19の動作が開始されると共にガスバルブ23が開かれ、これにより処理槽1内にガスが送り込まれて外処理槽1内の大気圧に戻される(ステップ33)。
【0069】
処理槽1内が大気圧に戻された時点で、ガス供給ユニット19の動作が停止されるとともにガスバルブ23が閉じられる。また、処理槽1の上部の密閉蓋16が開かれて、基板Wが処理槽1内から搬出される(ステップ34)。
【0070】
この搬出は、処理槽1内の薬液Mを排液しない状態で実施されてもよいし、排液・真空吸引ユニット15を動作させると共に排水バルブ13を開いて、処理槽1底部の給・排液口8から排液ライン3を通して薬液Mを吸引により排液した後に行なう等、任意である。
【0071】
また、ケミカル処理が終了した後に、引き続いて純水Nによる水洗処理を実行する場合には、前述したように、薬液供給ユニット11が止められ、薬液バルブ9が閉じられた後に、ステップ29に戻る。そして、ステップ29〜31において、薬液Mに代えて純水Nを使って処理する。具体的には、ステップ29において、純水供給ユニット12を作動させると共に純水バルブ10を開いて、給・排液口8から処理槽1内へ純水Nを所定の流速(m/s)で送り込んで薬液Mを純水Nで置換する。その後、前述したケミカル処理と同様に、ステップ30〜ステップ31を数回(N回)繰り返す。
【0072】
ここで、薬液Mから純水Nに切り替えて水洗処理を行なう場合、処理槽1内の薬液Mが排液された後に、給・排液口8から処理槽1内へ純水Nを供給してもよい。
【0073】
本実施形態の処理方法によれば、処理槽1内に基板Wを入れて処理槽1を密閉した後に、処理槽1内を大気圧以下まで減圧することにより、基板Wの窪みW−1内の正味の気体量(分子量)を減らすことができる。
【0074】
また、処理槽1内の圧力値をケミカル処理及び水洗処理等の処理中において減圧すると、処理液M中に浸漬された基板W表面の窪みW−1内に閉じ込められている気泡Kが膨張し(例えば、元の体積の2〜50倍に膨張する)、気泡Kを構成する気体の一部が窪みW−1から溢れ出る。この減少を模式的に説明すると、処理槽1内の圧力の低下に従って、当初は図5(a)に示すように毛細管力つまり液浸透力により窪みW−1内に押し込まれている気泡Kが図5(b)に示すように膨張し、更には図5(c)に示すように気泡Kの一部が窪みW−1から溢れ出て処理液中に放出される。これにより、窪みW−1内に存在する気泡Kを構成する気体の量(分子数)が減少する。そして、減圧動作に次いで加圧動作が行われると、図5(d)に示すように、気泡Kの体積が圧力にほぼ反比例して数分の1から数十分の1(例えば、1/2.5〜1/50)に縮小する。
【0075】
以上のような減圧動作及び加圧動作を繰り返さえされると、窪みW−1内の気泡Kを構成する気体が更に確実に窪みW−1外に排出される。
【0076】
更に、以上のような気泡Kの体積の増減に応じて薬液M又は純水Nのような処理液が窪みW−1内において往復移動(ピストン運動)を繰り返す(図5(a)の状態から(d)の状態)。そして、最後には、処理液が完全に窪みW−1内の最深部まで提供される。
【0077】
以上のように、本実施形態の処理方法によれば、処理槽1内を減圧し加圧する圧力制御を少なくとも1回、好ましくは複数回にわたって実施することにより、気泡Kを膨張させて窪みW−1内から溢れさせ、気泡Kの縮小により窪みW−1内に薬液M又は純水N等の処理液を進入させ、しかも気泡Kの膨張及び収縮によって処理液を窪みW−1内で往復移動させることができる。これにより、窪みW−1内をケミカル処理及び/又は水洗処理を確実に行なうことができる。なお、このような効果は、ウエット処理において使用される処理液の種類に関わらず得られるものである。
【0078】
従って、本実施の形態の処理方法によれば、基板Wの表面は勿論、基板Wの表面に存在する、例えば線幅が10μm以下で深さが異なる複雑且つ様々なコンタクトホール、ディープパターン、又は多孔質基板の細孔のような窪みW−1内の深部に薬液M又は純水Nのような処理液を確実に供給することができる。また、窪みW−1内における処理液の往復移動により、窪みW−1内の不要物を効果的に窪みW−1外に排出することができる。これにより、高性能化、高集積化等の半導体デバイスの製作プロセスにおいて課題とされていた薬液Mによるケミカル処理から純水Nによる水洗処理までの一連の洗浄処理を確実に行なうことができる。また、多孔質基板の細孔についても、同様に、一連の洗浄処理等の処理を確実に行なうことができる。
【0079】
純水Nによる基板Wの表面及び窪みW−1内の最終水洗処理が終了し、純水バルブ10が閉じられた後に、図9に例示的に示すように基板Wの表面に保護膜Fを形成することが好ましい。保護膜Fは、大気中の汚染されている水分(例えば、有機汚染等がされた水分)が基板Wの表面に吸着することを防ぐ効果がある。保護膜Fは、例えば、図4に示すフローチャートに従って形成することができる。以下、図4のフローチャートに従って保護膜Fの形成処理を説明する。
【0080】
トレンチW−1内の最終水洗処理が終了し、純水バルブ10が閉じられた後に、アルコール供給ユニット26を作動させると共にアルコールバルブ25を開く。
【0081】
すると、図1に示す処理槽1内の液面L上部の空間35に、蒸気導入口24から蒸気化されたアルコール類Xが処理槽1内に吸い込まれるように導入される(ステップ36)。このアルコール類Xの供給は、液面L上部の空間35がアルコール類Xの蒸気雰囲気により満たされるまで行われる。
【0082】
液面L上部の空間35がアルコール類Xの蒸気により満たされると、アルコール供給ユニット26が止められ、アルコールバルブ25が閉じられる。その後、排液・真空吸引ユニット15を動作させると共に排水バルブ13開いて、処理槽1底部の給・排液口8から純水Nの排液を開始する(ステップ37)。
【0083】
純水Nの排液が開始されて、液面Lが降下し始めると、処理槽1内の上部空間35に導入されていたアルコール類Xは基板Wの表面に接触する。この接触によりアルコール類Xが凝縮し、基板Wの表面に付着している水滴との蒸気置換(混合置換)が成されると共に、窪みW−1内の液体とも蒸気置換が成される。これにより、基板Wの表面及び窪みW−1内が乾燥される(ステップ38)。
【0084】
そして、処理槽1内の純水Nが全て排液された後においても継続運転されている排液・真空吸引ユニット15によって処理槽1内の真空引きが行なわれ、この真空引きにより、基板Wの表面及び窪みW−1内、そして処理槽1内に残るアルコール類Xと湿気が強制排気される(ステップ39)。このような減圧乾燥処理において、排液・真空吸引ユニット15を断続的に運転したり、該ユニット15の吸引力を調節したりすることで、処理槽1内の減圧度を任意に調整することができる。
【0085】
この時、処理槽1内の真空引き開始と同時に吸引バルブ22を開いて、吸引口17からも処理槽1内に残るアルコール類Xと湿気を強制排気することにより、減圧乾燥処理(ステップ39)を例えば半分程度の時間に短縮することが可能となる。
【0086】
排液・真空吸引ユニット15による処理槽1内の減圧乾燥処理が終了すると、排液・真空吸引ユニット15が止められ、排水バルブ13が閉じられる。その後、純水供給ユニット12を動作させると共に純水バルブ10を僅かに開いて、給・排液口8から処理槽1内に少量の純水Nを送り込む(ステップ40)。純水Nの供給は、処理槽1内が純水Nの蒸気雰囲気により満たされるまで行なわれる。
【0087】
大気圧以下の減圧雰囲気の処理槽1内に送り込まれた純水Nは蒸気化されて、処理槽1内に、基板W表面に保護膜Fを成膜する膜生成雰囲気を作る。
【0088】
すると、図9に示したように、蒸気化された純水Nが基板Wの表面に吸着され、これにより同表面には純水Nの保護膜Fが成膜される。
【0089】
また、同時に基板Wの表面に吸着された純水Nの一部が窪みW−1内に進入する。この保護膜Fは、典型的には、大気中に曝されても蒸発することがないとされている水分子量1〜50分子と言う超薄の膜厚から成る。
【0090】
保護膜Fが基板Wの表面に形成されるために必要な処理時間が経過すると(ステップ41)、純水バルブ10が閉じられる。その後、ガス供給ユニット19を動作させると共にガスバルブ23が開かれて、処理槽1内にガスが送り込まれて、同処理槽1内が大気圧に戻される(ステップ42)。
【0091】
処理槽1内が大気圧に戻された時点で、ガス供給ユニット19を止め、ガスバルブ23を閉じると共に処理槽1の上部開口を密閉する密閉蓋16を開き、保護膜Fが形成された基板Wが処理槽1内から取り出される(ステップ43)。
【0092】
従って、大気圧以下で処理槽1内の減圧と加圧とを繰り返しながらケミカル処理及び水洗処理により清浄化された基板Wは、その後に処理槽1内で形成された純水Nからなる保護膜Fにより、クリーンルーム内等の大気中の汚染物から保護される。
【0093】
つまり、清浄化された基板Wを処理槽1から搬出する前に基板Wに保護膜Fを形成することにより、大気中の汚染されている水分(有機汚染等を含む)が基板Wの表面に吸着することを防ぎ、処理槽1外においても基板Wを清浄な状態に維持することができる。
【0094】
処理槽1内を減圧した後に元の圧力値に戻す際(ステップ31)や、減圧による置換乾燥処理後に処理槽1内を大気圧に戻す際(ステップ33、42)際に、N2ガスを送り込む手段以外に、例えば、純水等を混合させた湿気を有する湿度制御ガスを処理槽1内に送り込む手段、又はクリーンルームの空気をフィルターを通して不純物や有機・無機成分を取り除いた後に処理槽1内に送り込む等の手段を用いて、処理槽1内を加圧したり、大気圧に戻したりすることも可能である。
【0095】
(実施形態2)
次に、本発明の処理方法を実施する処理システムの第2の実施形態について説明する。
【0096】
尚、この処理システムを実施する処理システムは、前述の第1の実施形態において詳述した処理システムと基本的な構成が同一である。第2の実施形態として特に言及しない事項については、第1の実施形態に従うものとする。
【0097】
第2の実施形態の処理システムにおいては、吸引口17、吸引ライン5、吸引バルブ22は必ずしも必要とされない。しかし、処理槽1内の薬液M又は純水Nを排液した後の処理槽1内を減圧する場合に、処理槽1底部の給・排液口8からの吸引と並行して吸引口17からも吸引することで、減圧の時間を短縮することが可能となり、槽内減圧を短時間で効率的に実行することができる。
【0098】
第2の実施形態の処理方法は、図6に示す工程図のように、液接触工程44、液供給工程45、液蒸発工程46を含み、これら液接触工程44、液供給工程45、液蒸発工程46を少なくとも1回、好ましくは数回にわたって繰り返す。この処理により、基板Wの表面のみならず、例えば線幅が10μm以下で深さが異なる複雑且つ様々なコンタクトホール、ディープパターン等のトレンチのような窪み内をも確実にケミカル処理及び/又は水洗処理することができる。また、同様に、多孔質基板の細孔内をも確実に洗浄処理し得る。
【0099】
液接触工程44は、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類Xを基板Wの表面に接触させることにより、該表面の窪みW−1内にアルコール類Xを進入させて、その後の該窪みW−1内への薬液M又は純水Nの供給を容易にする。
【0100】
即ち、薬液M又は純水N単体では、自身の表面張力(接触角)等が障害となるために、線幅が10μm以下トレンチのような窪み内に進入しにくい。そこで、窪みW−1内に薬液M又は純水Nを確実に進入させるために、本実施形態では、アルコール類Xを基板Wの表面に接触(付着又は凝着)させる。
【0101】
アルコール類Xを基板Wの表面へ接触させる方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、基板Wが垂直又は斜め並列状に収容される密閉された処理槽1内に、アルコール類Xの蒸気雰囲気を作ることで、基板Wの表面にアルコール類Xを接触させ、該表面でアルコール類Xを凝縮させる方法が好適である。この方法は、処理槽1内を大気圧以下の減圧雰囲気として実施することが望ましい。
【0102】
液供給工程45は、液接触工程44においてアルコール類Xが窪みW−1内に進入した基板Wを収容した処理槽1内に、該基板Wが完全に漬かる液面Lまで薬液M又は純水Nを送り込み、該薬液M又は純水Nを窪みW−1内に進入させる。
【0103】
具体的には、フッ酸(HF)溶液等の薬液M又は温水又は冷水としての純水Nを処理槽1底部の給・排液口8から所定の流速(m/s)で送り込みながら、処理槽1の上部側壁部に設けたオーバーフロー口20から薬液M又は純水Nをオーバーフローさせて、処理槽1内に上昇流を形成する。この薬液M又は純水Nによって基板W上の酸化膜等をエッチングし除去するケミカル処理、又は基板W上から付着物等を洗い落とす水洗処理が行なわれる。この際、薬液M又は純水Nは、アルコール類Xとの混合しながら窪みW−1内に進入する。
【0104】
液蒸発工程46は、処理槽1内から薬液M又は純水Nを吸引排液した後に、窪みW−1内にアルコール類Xと混ざり合った薬液M又は純水Nの一部をアルコール類Xと共に蒸発(揮発)させる。
【0105】
窪みW−1内に進入した薬液M又は純水Nをアルコール類Xと共に蒸発させる方法としては、例えば、処理槽1内を減圧若しくは加熱する等の方法が考えられる。以下に示す実施形態では、処理槽1内を減圧する方法を採用している。
【0106】
従って、前述の液供給工程45において窪みW−1内に薬液M又は純水Nを進入させ、この薬液M又は純水Nを処理槽1内の減圧により蒸発させることを繰り返すことで、窪みW−1内に液体の移動(液のピストン運動)が起り、この移動により窪みW−1内を確実にケミカル処理及び/又は水洗処理し、表面と同様に、窪みW−1内をも清浄化処理し得る。
【0107】
次に、第2の実施形態に係る処理方法を図7に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0108】
基板Wを処理槽1内に垂直又は斜めの状態で平行に並べて配置し、密閉蓋16を閉じる(ステップ47)。
【0109】
密閉蓋16が閉じられた後に、排液・真空吸引ユニット15を作動させると共に吸引バルブ22を開いて、処理槽1内を大気圧以下の例えば10〜99kPaの範囲の圧力まで減圧する処理を開始する(ステップ48)。
【0110】
処理槽1内の減圧雰囲気が10〜99kPaの範囲内の目標圧力値まで減圧された時点で、吸引バルブ22を閉じる。その後、アルコール供給ユニット26を作動させると共にアルコールバルブ25を開く。これにより、アルコール供給ユニット26で生成されたアルコール類Xの蒸気が蒸気導入ライン7を通って処理槽1の上部側壁部の蒸気導入口24から処理槽1内に吸い込まれるように導入される(ステップ49)。これにより、処理槽1内にはアルコール類Xの蒸気により満たされた蒸気雰囲気が作られる。
【0111】
このアルコール類Xの供給は、例えば、処理槽1内に蒸気雰囲気が作られた時点で止めてもよいし、基板Wの表面との接触による温度差により該表面に凝縮されて窪みW−1内にアルコール類Xが進入する間継続してもよい。
【0112】
処理槽1内に満たされたアルコール類Xが基板Wの表面のコンタクトホール、ディープパターン等の窪みW−1内に進入した時点(実際には、実験結果等に基づいて予め決定された時間が経過した時点)で、アルコールバルブ25を閉じ、オーバーフローバルブ21を開き、薬液供給ユニット11を作動させると共に薬液バルブ9を開く。これにより、給・排液口8から処理槽1内に薬液Mが所定の流速(m/s)で送り込まれる。
【0113】
処理槽1内への薬液Mの供給が開始されると、基板Wの表面に接触しながら流れる薬液Mの上昇流が処理槽1内に形成され、基板W上の酸化物や汚染物質等をエッチングして除去するケミカル処理が開始される。処理槽1内で上昇した薬液Mがオーバーフロー口20からオーバーフローしてオーバーフローバルブ21を通して排出される。薬液Mは、窪みW−1内のアルコール類Xと混ざり合いながら窪みW−1内に進入し、窪みW−1の内部をケミカル処理する(ステップ50)。
【0114】
薬液Mの供給を開始してから所定の時間が経過したら、オーバーフローバルブ21が閉じられ、薬液供給ユニット11が止められると共に薬液バルブ9が閉じられる。また、排水バルブ13が開かれて、処理槽1底部の給・排液口8からの薬液Mの吸引排液が開始される(ステップ51)。
【0115】
そして、処理槽1内の薬液Mが全て吸引により排液された後においても継続運転する排液・真空吸引ユニット15による処理槽1内の真空引きが行なわれ、槽内の減圧が開始される(ステップ52)。この時、排液・真空吸引ユニット15を断続的に運転させたり、該ユニット15の吸引力を調節したりすることで、槽内の減圧度を調節することができる。
【0116】
処理槽1内の減圧が開始されると、窪みW−1内でアルコール類Xと混ざり合っている薬液Mが、窪みW−1の入口側から徐々に蒸発する(図10(c)の状態から(f)の状態)。この時、蒸気圧の高いアルコール類Xが優先的に蒸発する。
【0117】
そして、処理槽1内の減圧を開始してから所定時間が経過した後に、排液・真空吸引ユニット15が止められ、排水バルブ13が閉じられる。そして、ステップ49に戻り、アルコール供給ユニット26を再び作動させると共に蒸気バルブ25を開く。これにより、減圧された処理槽1内に蒸気化されたアルコール類Xが吸い込まれるように導入され、該処理槽1内にアルコール類Xの蒸気雰囲気が作られる。ステップ49からステップ52の処理は、数回(N回)にわたって繰り返されうる。
【0118】
ステップ49からステップ52が予め設定された回数(N回)にわたって繰り返されて基板Wのケミカル処理のための時間として予め設定された処理時間が経過すると(ステップ53においてYes)、排液・真空吸引ユニット15が止められ、排水バルブ13が閉じられる。また、ガス供給ユニット19を作動させると共にガスバルブ23を開く。これにより、ガス供給口18から処理槽1内にガスが送りこまれて該処理槽1内が大気圧に戻される(ステップ54)。
【0119】
処理槽1内が大気圧に戻された時点で、ガス供給ユニット19を止め、ガスバルブ23を閉じると共に処理槽1の上部開口を密閉する密閉蓋16を開き、基板Wを処理槽1内から取り出される(ステップ55)。
【0120】
そして、薬液Mによる基板Wのケミカル処理が終了した後に、引き続いて、純水Nによる水洗処理を実行する場合には、ステップ49に戻り、アルコールバルブ25を開いて減圧状態にある処理槽1内に蒸気化されたアルコール類Xを導入する。
【0121】
次に、アルコールバルブ25を閉じ、オーバーフローバルブ21を開き、純水供給ユニット12を作動させると共に純水バルブ10を開く。これにより、給・排液口8から処理槽1内へ純水Nが所定の流速(m/s)で送り込まれる。以降は、薬液Mの代わりに純水Nを使って、ステップ49からステップ52までを数回(N回)にわたって繰り返す。
【0122】
従って、本実施形態の処理方法によれば、基板Wの表面は勿論、該表面に存在する線幅が10μm以下のような小さいコンタクトホール、ディープパターン等の窪みW−1内に、アルコール類Xとの混合により薬液M又は純水Nを確実に進入させることができる。また、窪みW−1内に進入した薬液M又は純水Nの一部が処理槽1内の真空引きにより徐々に蒸発される減圧乾燥を数回(N回)繰り返すことで、窪みW−1の内部で処理液を移動させることができる。これにより、窪みW−1内の酸化膜をエッチング除去するケミカル処理又は薬液やエッチング残渣を洗い落とす水洗処理が確実且つ効果的に行なわれる。多孔質基板の細孔についても同様に良好な洗浄処理が可能である。
【0123】
また、第2の実施形態に係る処理方法によって基板Wの表面及び窪みW−1内の純水Nを用いた最終洗浄処理が終了した後に、基板Wの表面に保護膜Fを形成することが好ましい。保護膜Fの形成については、図4を参照して第1の実施形態において説明した方法を採用しうる。
【0124】
第1の実施形態及び第2の実施形態に係る処理方法を組み合わせて、基板Wの表面及び窪みW−1内のケミカル処理及び水洗処理等の一連の洗浄処理を行なってもよい。
【0125】
この場合、第1の実施形態に係る処理方法を実行した後に、継続して第2の実施形態に係る処理方法を実行することを大気圧以下の処理槽1内で繰り返すことができる。或いは、第2の実施形態において説明した液接触工程44を行い、次に液供給工程45中に第1の実施形態において説明したように処理槽1内の大気圧以下での減圧と加圧とを数回(N回)にわたって繰り返し、その後、処理槽1内から薬液M又は純水Nを排液して第2の実施形態において説明したように減圧による液蒸発工程46を実行することができる。
【0126】
(実施形態3)
次に、本発明の処理方法を実施する処理システムの第3の実施形態について説明する。
【0127】
尚、この処理システムを実施する処理システムは、前述の第1の実施形態において詳述した処理システムと基本的な構成が同一である。第3の実施形態として特に言及しない事項については、第1の実施形態に従うものとする。
【0128】
第3の実施形態の処理方法は、図11に示す工程図のように、液接触工程56、液供給工程57、液蒸発工程58を含む。
【0129】
これら液接触工程56、液供給工程57、液蒸発工程58を少なくとも1回、好ましくは数回にわたって繰り返す。この処理により、基板Wの表面のみならず、例えば線幅が10μm以下で深さが異なる複雑且つ様々なコンタクトホール、ディープパターン、トレンチ等のような窪み内をも確実にケミカル処理及び/又は水洗処理することができる。また、同様に、多孔質基板の細孔内をも確実に洗浄処理し得る。
【0130】
即ち、薬液M又は純水Nがアルコール類Xに接触して溶解し合う際に起る大きな運動エネルギーを利用して、図13の(a)に示すように、窪みW−1の入口を塞ぐように凝縮しているアルコール類Xの表面張力に打ち勝って、アルコール類Xと薬液M又は純水Nとを窪みW−1内に進入させて、窪みW−1内を確実にケミカル処理又は水洗処理し、清浄化する(図13(b)〜(e)の状態)。
【0131】
液接触工程56では、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類Xを基板Wの表面に接触させることにより、該表面に所望の厚さでアルコール類Xを凝縮させる。
【0132】
この液接触工程56において、密閉された処理槽1に垂直又は斜めの状態で並べて収容されている基板Wの表面には表面張力(接触角)等が障害となって窪みW−1内に進入せずに、窪みW−1の入口を塞ぐようにアルコール類Xが凝縮し、凝縮膜が基板Wの表面全体に形成される場合がありうる。
【0133】
アルコール類Xを基板Wの表面へ接触させる方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、基板Wが垂直又は斜め並列状に収容される密閉された処理槽1内に、アルコール類Xの蒸気雰囲気を作ることで、基板Wの表面にアルコール類Xを接触させ、該表面でアルコール類Xを凝縮させる方法が好適である。この方法は、処理槽1内を大気圧以下の減圧雰囲気として実施することが望ましい。
【0134】
液供給工程57では、処理槽1の底部に設けられている給・排液口8から処理槽1内に送り込まれて上部側に向けて所定の速度で薬液M又は純水Nの液面Lを上昇させる。この際、液面Lにおいて液接触工程56において基板Wの表面に凝縮されたアルコール類Xに薬液M又は純水Nが接触して、アルコール類Xと薬液M又は純水Nが混ざり合う際に発生する大きな運動エネルギーにより、窪みW−1の入口を塞ぐアルコール類Xの表面張力を打ち破って、窪みW−1内にアルコール類Xと薬液M又は純水Nとを進入させる。
【0135】
この液供給工程57において、薬液M又は純水Nを処理槽1底部の給・排液口8から処理槽1内上部側へ向けて送り込んで上昇させる際の該薬液M又は純水Nの液面Lの上昇速度は、0.001〜1.0m/sの範囲に設定することが好ましい。
【0136】
その理由は、液面速度が0.001m/s以下では大気圧以下の減圧雰囲気の処理槽1内に送り込まれた薬液M又は純水Nの液面Lが、基板W表面に存在する窪みW−1に到達する前に、蒸気化された薬液M又は純水Nの蒸気とアルコール類とが接触によりアルコール類が蒸発していまうからである。これは、薬液M又は純水Nを窪み内に進入させるためにアルコール類を使用するという趣旨に反する。
【0137】
一方、液面速度が1.0m/sを超えると、薬液M又は純水Nの液面Lとアルコール類Xとが接触して混ざり合う前に、窪みW−1が存在する部位が液中に漬かってしまう。つまり、この場合、アルコール類Xとの薬液M又は純水Nとの反応速度よりも上昇する液面速度が速いために、アルコール類Xと薬液M又は純水Nとが混ざり合う前に窪みW−1が存在する部位が上昇する薬液M又は純水Nの液中に漬かってしまう。
【0138】
従って、処理槽1底部の給・排水口8から送り込まれて上昇する薬液M又は純水Nの液面速度を、0.001〜1.0m/sの範囲に設定することが好ましく、0.01〜0.05m/sの範囲が更に好ましい。
【0139】
液蒸発工程57では、処理槽1内から薬液M又は純水Nを吸引排液した後、窪みW−1内に進入する際にアルコール類Xと混ざり合った薬液M又は純水Nの一部をアルコール類Xと共に蒸発(揮発)させる。
【0140】
トレンチW−1内に進入する際にアルコール類Xと混ざり合った薬液M又は純水Nをアルコール類Xと共に蒸発させる方法としては、例えば、処理槽1内の圧力を、例えば大気圧以下の圧力範囲内で、変化させる方法が好ましい。
【0141】
この実施の形態では、液供給工程57において、窪みW−1内に薬液M又は純水Nを進入させ、この薬液M又は純水Nを処理槽1内を減圧し加圧する処理を繰り返して蒸発させる。これにより、窪みW−1内で液体の往復移動が起り、窪みW−1内を確実にケミカル処理又は水洗処理することができる。したがって、この方法によれば、基板Wの表面と同様に窪みW−1内をも確実に且つ効率的に清浄化することができる。
【0142】
次に、第3の実施形態に係る処理方法を図12に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0143】
基板Wを処理槽1内に垂直又は斜めの状態で平行に並べて配置し、密閉蓋16を閉じる(ステップ59)。
【0144】
密閉蓋16が閉じられた後に、排液・真空吸引ユニット15を作動させると共に吸引バルブ22を開いて、処理槽1内の大気圧以下の例えば10〜99kPaの範囲の圧力まで減圧する処理を開始する(ステップ60)。
【0145】
処理槽1内の減圧雰囲気が10〜99kPaの範囲内の目標圧力まで減圧された時点で、吸引バルブ22を閉じる。その後、アルコール供給ユニット26を作動させると共にアルコールバルブ25を開く。これにより、アルコール供給ユニット26で生成されたアルコール類Xの蒸気が蒸気導入ライン7を通って処理槽1の上部側壁部の蒸気導入口24から処理槽1内に吸い込まれるように導入される(ステップ61)。これにより、処理槽1内のアルコール類Xの蒸気により満たされた蒸気雰囲気が作られる。
【0146】
このアルコール類Xの供給は、例えば、処理槽1内に蒸気雰囲気が作られた時点で止めてもよいし、基板Wの表面との接触による温度差により該表面にアルコール類Xが所望の厚さで凝縮されるまでの間継続してもよい。
【0147】
そして、アルコール類Xが基板Wの表面に凝縮された時点(実際には、実験結果等に基づいて予め決定された時間が経過した時点)で、アルコールバルブ25を閉じ、オーバーフローバルブ21を開き、薬液供給ユニット11を作動させると共に薬液バルブ9を開く。これにより、給・排液口8から処理槽1内に薬液Mが送り込まれる。ここで、薬液Mの供給速度は、薬液Mの液面Lが0.001〜1.0m/sの速度で処理槽1の底部から上部へ向けて上昇するように制御される。
【0148】
処理槽1内への薬液Mの供給が開始されると、基板Wの表面に接触しながら薬液Mの液面Lが上昇する。処理槽1内で上昇した薬液Mがオーバーフロー口20からオーバーフローしてオーバーフローバルブ21を通して排出される。この薬液Mにより、基板W上の酸化膜や汚染物等を薬液Mによりエッチングして除去するケミカル処理が実施される(ステップ62)。
【0149】
この時、処理槽1の底部から上部に向けて上昇する薬液Mの液面Lが、図13の(b)から(e)に示すように、基板Wの表面に凝縮(付着)しているアルコール類Xと接触して、該アルコール類Xと混ざり合う際に発生する運動エネルギーにより、窪みW−1の入口を塞ぐアルコール類Xの表面張力を打ち破って、アルコール類Xと薬液Mが混ざり合って窪みW−1内に進入する。これにより、窪みW−1内のエッチングが基板Wの表面と並行して起こる。
【0150】
薬液Mによるケミカル処理が開始されてから所定の時間が経過したら、薬液供給ユニット11が止められると共に薬液バルブ9が閉じられる。また、排水バルブ13が開かれて、処理槽1底部の給・排液口8からの薬液Mの吸引排液が開始される(ステップ63)。
【0151】
そして、処理槽1内の薬液Mが全て吸引排液された後においても継続運転する排液・真空吸引ユニット15より処理槽1内の真空引きが行なわれ、槽内の減圧が開始される(ステップ64)。この時、排液・真空吸引ユニット15を断続的に運転させたり、該ユニット15の吸引力を調節したりすることで、槽内の減圧度を調節することができる。
【0152】
処理槽1内の減圧が開始されると、アルコール類Xと混ざり合って窪みW−1内に進入した薬液Mが、窪みW−1の入口側から徐々に減圧されて行く(図10(c)の状態から(f)の状態)。この時、蒸気圧の高いアルコール類Xが優先的に蒸発する。
【0153】
そして、処理槽1内の減圧を開始してから所定時間が経過した後に、排液・真空吸引ユニット15が止められ、排水バルブ13が閉じられる。そして、アルコール供給ユニット26を再び差動させると共に蒸気バルブ25を開く。これにより、減圧された処理槽1内に蒸気化されたアルコール類Xが吸い込まれるように導入される、該処理槽1内にアルコール類Xの蒸気雰囲気が作られる。ステップ61からステップ64は、数回(N回)にわたって繰り返されうる。
【0154】
ステップ61からステップ64が予め設定された回数(N回)にわたって繰り返されて基板Wのケミカル処理のための時間として予め設定された処理時間が経過すると(ステップ65においてYes)、排液・真空吸引ユニット15が止められ、排水バルブ13が閉じられる。また、ガス供給ユニット19を作動させると共にガスバルブ23を開く。これにより、ガス供給口18から処理槽1内にガスが送り込まれて、該処理槽1内が大気圧に戻される(ステップ66)。
【0155】
処理槽1内が大気圧に戻された時点で、ガス供給ユニット19を止め、ガスバルブ23を閉じると共に処理槽1の上部開口を密閉する密閉蓋16を開き、基板Wを処理槽1内から取り出される(ステップ67)。
【0156】
そして、薬液Mによる基板Wのケミカル処理が終了した後に、引き続いて純水Nによる水洗処理を実行する場合には、ステップ61に戻り、薬液バルブ25を開いて大気圧以下の減圧状態にある処理槽1内にアルコール類Xを導入する。
【0157】
次に、アルコールバルブ25を閉じ、オーバーフローバルブ21を開き、純水供給ユニット12を作動させると共に純水バルブ10を開く。これにより、給・排液口8から処理槽1内へ純水Nが、液面速度が0.001〜1.0m/sの範囲になるように送り込まれる。以降は、薬液Mの代わりに純水Nを漬かって、ステップ61からステップ64までを数回(N回)にわたって繰り返す。
【0158】
従って、本実施形態の処理方法によれば、基板Wの表面は勿論、該表面に存在する線幅が10μm以下のようなコンタクトホール、ディープパターン等の窪みW−1の入口を塞ぐアルコール類Xの表面張力を、薬液M又は純水Nとアルコール類Xとの混ざり合いによる運動エネルギーを利用して打ち破ることができる。これにより、窪みW−1内にアルコール類Xと混ざり合った薬液Mを確実に進入させ、その後、窪みW−1内に進入した該薬液Mの一部が処理槽1内の減圧により徐々に蒸発させる減圧を数回(N回)繰り返すことで、窪みW−1の内部で処理液を移動させることができる。これにより、窪みW−1内の酸化膜をエッチング除去するケミカル処理又は薬液Mやエッチング残渣を洗い落とす水洗処理が確実且つ効果的に行われる。多孔質基板の細孔についても同様に良好な洗浄処理が可能である。
【0159】
また、前述の第3の実施形態に係る処理方法によって基板Wの表面及び窪みW−1内の純水Nを用いた最終洗浄処理が終了した後に、基板Wの表面に保護膜Fを形成することが好ましい。保護膜Fの形成については、図4を参照して第1の実施形態において説明した方法を採用しうる。
【0160】
液接触工程56を行なった後の液供給工程57中に第1の実施形態において説明した処理槽1内の大気圧以下での減圧と加圧とを数回(N回)繰り返し、その後、処理槽1内から薬液M又は純水Nを吸引排液して第3の実施形態において説明した液蒸発工程46を実行しながら基板Wの表面及び窪みW−1内のケミカル処理と水洗処理等の一連の洗浄処理を行うこともできる。
【0161】
また、第2の実施形態と第3の実施形態では、液供給工程45、57においては、薬液M又は純水Nを継続的に送り込みながら基板Wの表面及び窪みW−1内部のケミカル処理又は水洗処理を行なう。しかし、処理時間が短いものにおいては、処理槽1の底部から送り込まれる薬液M又は純水Nの液面Lが基板Wが完全に漬かる水位に達した時点で、薬液M又は純水Nの供給を一旦止めて処理槽1内を大気圧以下で更に減圧し、その後に加圧する処理を数回(N回)にわたって繰り返してもよい。
【0162】
尚、上記の処理槽1は一槽構造であるが、基板Wを垂直又は斜め並列状に収容する内槽と、密閉蓋16を備えた外槽からなる二槽構造としてもよい。或いは、そのような内槽と、この内槽の外側に設ける中間槽、そして、この中間槽の外側に設ける密閉蓋を有する外槽からなる三槽構造、更に四槽や五槽構造にすることもできる。すなわち、基板Wが配置される空間を密閉空間として該密閉空間内の圧力を制御することができる限り、槽構造は如何なる形態であってもよい。
【0163】
例えば、二槽構造の処理槽を採用する場合には、内槽の底部に給・排液口8を設け、この給・排液口8から内槽内に上昇水流を形成するように薬液M又は純水Nが継続的に供給し、該薬液M又は純水Nを内槽の上部開口から外槽側にオーバーフローさせて、該外槽の底部に設けられる排水口から槽外に排液されるように処理槽を採用することができる。
【0164】
以下、本発明の好適な実施の形態における有用性を例示的に説明する。
【0165】
本発明の好適な実施の形態によれば、処理槽内の減圧及び加圧を、例えば大気圧以下で、繰り返すことにより、窪み内に進入している処理液が、減圧により窪み内の気泡の膨張により窪み内から押し出され、加圧による気泡の圧縮により窪み内に処理液が進入する。これにより、窪み内で処理液の往復移動が起り、窪み内が確実に処理されうる。
【0166】
従って、基板の表面は勿論のこと、該表面に存在する線幅が10μm以下で深さが異なる複数且つ様々な窪み内に処理液を確実に進入させ、往復移動させることができる。これにより、窪み内の酸化膜等をエッチングするケミカル処理から該窪み内の薬液やエッチング残渣等の付着等を洗い流す水洗処理までの一連の洗浄処理を確実且つ効果的に行なうことができる。つまり、本発明の好適な実施形態によれば、高性能化、高集積化等の半導体デバイスの製作プロセスにおいて課題とされていた洗浄処理が良好に実施することができる。
【0167】
また、本発明の好適な実施形態によれば、基板の表面は勿論のこと、該表面に存在する線幅が10μm以下で深さが異なる複雑且つ様々なトレンチ等の窪み内に、液接触工程によりアルコール類を進入させ、その後に行なわれる液供給工程により処理槽内に送り込まれてくる薬液や純水等の処理液を前記アルコール類と混ざり合わせるこことにより、窪み内に確実に進入させることができる。その後、窪み内に進入させた処理液の一部を液蒸発工程において処理槽内を減圧することにより蒸発させることを繰り返すことで、窪みの内部で処理液を往復移動させることができる。これにより、窪み内の酸化膜等をエッチング除去するケミカル処理から該窪みから薬液やエッチング残渣等の付着物を洗い流す水洗処理までの一連の洗浄処理を確実且つ効率的に行なうことができる。
【0168】
また、本発明の好適な実施形態によれば、液接触工程により基板の表面にアルコール類を凝縮させ、その後に行なわれる液供給工程による処理液の供給において、処理液とアルコール類とが混ざりある際に発生する大きな運動エネルギーにより上記のような微細な窪み内の入口を塞ぐアルコール類の表面張力を打ち破って、該窪み内に処理液を確実に進入させることができる。そして、その後に行なわれる液蒸発工程による処理槽内の減圧により、窪み内に進入させた該処理液の一部を蒸発させることを繰り返すことで、窪みの内部で薬液や純水等の処理液の往復移動を生じさせて該窪み内の酸化膜等をエッチング除去するケミカル処理から同トレンチ内の薬液やエッチング残渣等の付着物を洗い流す水洗処理までの一連の洗浄処理を確実且つ効率的に行なうことができる。
【0169】
従って、本発明の好適な実施形態によれば、被処理基板の表面と同じく、例えば10μm以下の寸法を有するトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン、多孔質基板の細孔を確実に処理(例えば、ケミカル処理、水洗洗浄処理等)することができる。つまり、高性能化、高集積化等の半導体デバイスの製作プロセスにおいて課題とされていたコンタクトホール、ディープパターン、トレンチ等の窪みや多孔質基板の細孔の洗浄等の処理が可能となる。
【0170】
また、本発明の好適な実施形態によれば、洗浄処理された後に行われる減圧乾燥処理による基板表面の活性化に伴い、基板の表面に生じている吸着作用により該表面に純水の保護膜を形成することができる。洗浄処理された基板にこのような保護膜を形成することにより、例えば、クリーンルーム内等の大気中に該基板が曝されても基板の清浄な面が保護される。つまり、大気中の汚染されている水分(有機汚染等を含む)が基板の表面に吸着することを防ぐことができる。換言すれば、基板の清浄な面を、該基板が処理槽から搬出された後においても保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明好適な実施形態の処理システムの概略的な構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の処理方法における処理(洗浄)プロセスの一例を示した工程概略図である。(a)は、密閉処理槽内を減圧してトレンチ内の気体(気泡)を膨張させた状態を示し、(b)は、密閉処理槽内にガスを送り込んで該処理槽を加圧してトレンチ内の気体を圧縮した状態を示している。
【図3】本発明の第1の実施形態の処理プロセスの手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の好適な実施の形態の保護膜の形成プロセスを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態の処理方法におけるトレンチ(窪み)内での気体(気泡)と処理液との動きを示した拡大断面図である。(a)は、密閉された処理槽内に給水された処理液がトレンチ内に毛細管力により進入した状態、(b)は、槽内の減圧によりトレンチ内の気体が膨張し、処理液がトレンチから溢れ出ている状態、(c)は、トレンチから溢れ出した気体の一部が処理液中に法主出される状態、(d)は、槽内の加圧によりトレンチ内の気体が圧縮され、処理液がトレンチ内に進入した状態、(e)は、トレンチ内の気体が完全に排除されてトレンチ内の奥まで処理液が進入した状態を示している。
【図6】本発明に係る第2の実施形態の処理プロセスを示す工程図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の処理プロセスの手順を示すフローチャートである。
【図8】窪みの特徴を説明するための図である。
【図9】基板表面に純水の吸着膜が形成された状態を示す拡大断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の処理方法におけるトレンチ内に進入しているアルコール類と混ざり合った処理液がトレンチ内で移動する様子を示す拡大断面図である。(a)は、密閉された処理槽内に導入されたアルコール類の蒸気がトレンチ内に進入した状態、(b)は、処理槽内に送り込まれた処理液がトレンチ内のアルコール類と混ざり合いながらトレンチ内に進入する状態、(c)は、処理槽内から処理液が排液され、槽内の減圧によりトレンチの入口近傍の処理液がアルコール類と共に蒸発を開始した状態、(d)から(f)は、トレンチ内の処理液の蒸発が徐々に進行している状態を示している。
【図11】本発明の第3の実施形態の洗浄処理方法の工程図である。
【図12】本発明の第3の実施形態の処理プロセスの手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3の実施形態の処理方法においてアルコール類と処理液とが混ざり合ってトレンチ内に進入する様子を示す拡大断面図である。(a)は、密閉された処理槽内に導入されたアルコール類の蒸気が基板の表面に凝縮した状態、(b)は、液面が上昇する処理液が、基板表面の凝縮したアルコール類と混ざり合う状態、(c)は、アルコール類と処理液との溶解の際に起こる運動エネルギーにより、トレンチの入口を塞ぐアルコール類の表面張力が打ち破られて、アルコール類と混ざり合って処理液がトレンチ内への進入を開始した直後の状態、(d)は、アルコール類と混ざり合った処理液のトレンチ内への進入が更に進行した状態、(e)はアルコール類と混ざり合った処理液がトレンチ内の奥まで進入し、該トレンチ内が処理液により完全に満たされた状態を示している。
【符号の説明】
【0172】
1:処理槽
2:給水ライン
3:排水ライン
4:オーバーフローライン
5:吸引ライン
6:ガスライン
7:蒸気導入ライン
8:給・排水口
11:薬液供給ユニット
12:純水供給ユニット
15:真空吸引ユニット
16:密閉蓋
17:吸引口
18:ガス供給口
19:ガス供給ユニット
20:オーバーフロー口
24:蒸気導入口
44,56:液接触工程
45,57:液供給工程
46,58:液蒸発工程
M:薬液(処理液)
N:純水(処理液)
X:アルコール類
W:基板(被処理媒体)
W−1:窪み
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及び基板処理装置に係り、特に微細な窪みを有する基板の処理に好適な基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造において、ウエハ等の基板には、その表面の清浄化のために、洗浄処理とそれに続く減圧乾燥処理が施される場合がある。洗浄処理では、例えば、フッ酸(HF)溶液等の薬液を用いて酸化膜や汚染物等をエッチングにより除去するケミカル処理が実施され、それに次いで、温水又は冷水等の純水を用いて、付着している該薬液やエッチング残渣(有機残留物或いは無機残留物)等の付着物を洗い落とす水洗処理が実施されうる。
【0003】
また、多孔質基板の処理については、超音波エネルギーを与えながら純水によって多孔質基板の細孔内に付着した異物を除去する処理(特許文献1)や、純水にアルコールを添加した洗浄液を用いて多孔質基板の細孔内に付着した異物を除去する処理(特許文献2)がある。
【特許文献1】特許第3192610号公報
【特許文献2】特許第3245127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板の表面には、例えば線幅が10μm以下で、しかも種々の深さを有するような複雑且つ様々なトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン等の窪み構造が存在しうる。また、多孔質基板の表面には、数nmから数100nm程度の孔径を有する多数の細孔或いは窪みが数μmから数百μmの深さで存在している。
【0005】
従来のウェット式処理方法では、薬液や純水等の処理液の種類と接触面(材質)で決まる表面張力(接触角)が障害になったり、また窪み内に入っている気泡が邪魔をしたりして、処理液が窪みの奥まで確実に入り込まない場合がある。窪みの奥への液体の提供は、トレンチが小さくなるほど困難になることが示唆されている(服部毅編著 “新版シリコンウェーハ表面のクリーン化技術” 2001 リアライズ社発行 454頁左欄1行目〜17行目参照)。
【0006】
そのために、薬液によって窪み内の酸化膜や汚染物等をエッチング除去するケミカル処理、純水による不純物やエッチング残渣を洗い落とす水洗処理等の一連の洗浄処理の信頼性が低いのが現状である。
【0007】
また、窪み部分の材質や処理液の種類によっては、発生する毛細管力により窪みの奥まで処理液が提供され、処理液が窪みの全体に満たされる場合もあるが、このような場合においても窪み内の洗浄処理が良好に行なわれないことがある。
【0008】
これは、トレンチや細孔などの窪みにおいて生じる毛細管力、つまり液浸透力が、窪み内に入り込んで圧縮されている気泡の反発力よりも圧倒的に強く、一旦窪み内に入り込んだ処理液が外部に出ることなく内部に留まるためである。つまり、窪み内では処理液が流動することができず、これが洗浄不良を引き起こしうる。
【0009】
半導体デバイスの高性能化、高集積化等に伴い、半導体デバイス製造におけるトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン等の窪み内の洗浄処理が重要視されており、窪み内の酸化膜や汚染物等を確実に除去しうるような洗浄処理技術の改善が半導体製造メーカーの大きな課題となっている。同様に、多孔質基板の洗浄不良を低減することも重要である。
【0010】
因みに、前述したトレンチ等の窪み内の圧縮された気泡の反発力や該窪み内に作用する液浸透力の大きさは、窪み内の表面積、薬液や純水等の処理液の表面張力、そして窪み部分の材質による表面張力(接触角)によって決定されると考えられが、容易には特定できない。
【0011】
また、最終水洗処理後に行われる減圧乾燥処理により、活性化(完全乾燥)される基板の表面には吸着力が生じ易く、基板が大気中に曝されると、大気中の汚染されている水分(不純物や有機・無機成分等の汚染物質を含む)が基板の表面に吸着して、該表面に吸着汚染膜が形成されうる。
【0012】
吸着汚染膜が基板の表面に形成されると、その水分が毛細管力により窪み内に進入し、窪み内が汚染されることがある。したがって、大気中における汚染を最小化することが重要になっている。
【0013】
また、窪みの材質が親水性である場合と、疎水性である場合とでは、窪みへの薬液、純水等の処理液の浸透が異なり、例えば、窪みの材質が疎水性である場合、線幅が10μm以下で、しかも深さや形状が複雑な基板の場合には、窪み内への液体の浸透が全く起こらないことがある。
【0014】
多孔質基板は、シリコン等の半導体基板に陽極化成処理を施すことで形成されうる。陽極化成は、フッ酸(HF)溶液中でシリコン基板に電界をかけることにより実施されうる。陽極化成処理後のシリコン基板の洗浄が十分でない場合、細孔内にHF成分或いはHFによる副生成物が残留し、その残留したHF溶液が多孔質構造を変化させてしまったり、二次的な汚染を引き起こしたりしうる。
【0015】
本発明は、上記の種々の課題に鑑みてなされたものであり、例えば、窪みを有する基板を良好かつ安定的に処理するための好適な基板処理方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の側面は、基板処理方法に係り、該方法は、基板を処理槽内に配置し前記処理槽を密閉する密閉工程と、前記基板が処理液中に漬かった状態で、前記処理槽内の圧力を変化させる圧力制御工程とを含む。ここで、前記圧力制御工程は、前記処理槽内を減圧する減圧工程を含む。
【0017】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記圧力制御工程は、前記減圧工程による減圧の後に前記処理槽内を加圧する加圧工程を含む。
【0018】
本発明の更に好適な実施の形態によれば、前記圧力制御工程では、前記減圧工程及び前記加圧工程を含むサイクルを複数回にわたって繰り返して実施する。
【0019】
前記圧力制御工程は、前記処理槽内を大気圧以下の圧力にした後に、大気圧以下の圧力の範囲内で前記処理槽内の圧力を制御することを含むことが好ましい。
【0020】
本発明の好適な適用例によれば、処理対象の基板は窪みを有する。この場合において、前記圧力制御工程では、該窪み内の気体が該窪みから放出される条件で前記処理槽内の圧力を変化させることが好ましい。
【0021】
本発明の好適な実施の形態によれば、本発明の基板処理方法は、処理された基板を前記処理槽から取り出す前に、該基板に保護膜を形成する保護膜形成工程を更に含むことが好ましい。前記保護膜は、例えば純水からなる。
【0022】
本発明の第2の側面に係る基板処理方法は、窪みを有する基板にアルコールを提供するアルコール提供工程と、該基板に更に処理液を提供し、該窪み内に該処理液を進入させる処理液提供工程と、該窪みに入っている該アルコール及び該処理液の少なくとも一部を蒸発させる蒸発工程とを含み、前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程を含むサイクルを複数回にわたって繰り返して実施する。
【0023】
本発明の好適な実施の形態によれば、処理対象の基板を密閉された処理槽内に配置して、前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程を実施することが好ましい。
【0024】
本発明の好適な実施の形態によれば、本発明の基板処理方法は、前記処理液提供工程の後であって前記蒸発工程の前に、該処理液を前記処理槽から排出する排出工程を更に含む。
【0025】
前記処理液提供工程では、該基板が収容されている処理槽において該処理液の液面が該基板の面を横切って上昇するように、前記処理槽に該処理液を供給することが好ましい。ここで、該処理液の液面が0.001〜1.0m/sの速度で上昇するように、該処理液が前記処理槽に供給されることが好ましい。
【0026】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程は、大気圧以下の圧力下で実施されうる。
【0027】
本発明の好適な実施の形態によれば、本発明の基板処理方法は、処理された基板を前記処理槽から取り出す前に、該基板に保護膜を形成する保護膜形成工程を更に含みうる。ここで、前記保護膜は、例えば純水からなる。
【0028】
本発明の第3の側面に係る基板処理装置は、基板を収容する密閉可能な処理槽と、前記処理槽内の圧力を制御する圧力制御機構とを備え、前記圧力制御機構は、前記基板が前記処理槽内の処理液中に漬かった状態で、前記処理槽内を減圧しその後に加圧するサイクルを少なくとも1回実施するように動作する。
【0029】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記圧力制御機構は、サイクルを複数回にわたって繰り返して実施するように動作する。
【0030】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記圧力制御機構は、前記処理槽内を大気圧以下の圧力にした後に、大気圧以下の圧力の範囲内で前記処理槽内の圧力を制御するように動作する。
【0031】
本発明の好適な適用例によれば、前記圧力制御機構は、窪みを有する基板の該窪みから気体が放出される条件で前記処理槽内の圧力を制御するように動作する。
【0032】
本発明の第4の側面に係る基板処理装置は、窪みを有する基板を収容する密閉可能な処理槽と、前記処理槽内の該基板にアルコールを供給するアルコール供給機構と、前記処理槽内の該基板に処理液を供給する処理液供給機構と、前記処理槽内の該処理液を前記処理槽外に排出する排出機構と、前記処理槽内を減圧して該窪みに入っている該アルコール及び該処理液の少なくとも一部を蒸発させる圧力制御機構とを備え、前記アルコール供給機構による該アルコールの供給、前記処理液供給機構により該処理液の供給、前記排出機構による該処理液の排出及び前記圧力制御機構による減圧を含むサイクルが複数回にわたって繰り返されるように、前記アルコール供給機構、前記処理液供給機構、前記排出機構及び前記圧力制御機構が動作する。
【0033】
前記処理液供給機構は、例えば、前記処理槽内において該処理液の液面が該基板の面を横切って上昇するように、前記処理槽に該処理液を供給する。ここで、該処理液の液面が0.001〜1.0m/sの速度で上昇するように該処理液が前記処理槽に供給されることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、たとえば、窪みを有する基板を良好かつ安定的に処理するための好適な基板処理方法及び基板処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、例えば、液晶表示装置やフォトマスクのガラス基板、プリント基板、シリコンウェーハ、化合物半導体、或いはLSI等の半導体素子、多孔質基板等の種々の形態の基板を薬液や純水等の処理液を用いて処理するために好適である。本発明は、基板の表面に存在するトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン等の窪み、特に線幅が10μm以下で種々の深さを有する複雑な窪みの処理(例えば、洗浄処理)に好適である。また、本発明は、多数の細孔が表面に露出した多孔質基板の処理(例えば、洗浄処理)にも好適である。
【0036】
密閉された処理槽内を大気圧以下の減圧状態にすると、その減圧量にほぼ反比例してトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン、又は細孔等の窪み内の気泡の体積が例えば数倍から数十倍に増える。その後、処理槽内の圧力を元に戻すなど、処理槽内を加圧すると、気泡が圧縮されて体積が例えば数分の1から数十分の1に減少する。このような気体の体積変化を利用することで、窪み内の気泡を窪み外に放出させたり、窪み内で処理液を移動させたりすることができる。このような処理は、例えば、10μm以下の寸法を有するトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン、又は、細孔等の窪みを有する基板のケミカル処理、洗浄処理等の種々のウエット処理に適している。
【0037】
本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
(実施形態1)
図1は、本発明の処理方法を実施する処理システムの第1の実施形態を示す概略図で、1は処理槽、2は給水ライン、3は排液ライン、4はオーバーフローライン、5は吸引ライン、6はガスライン、7は蒸気導入ラインを示す。
【0039】
本実施形態の処理方法では、まず、密閉される処理槽1内に基板Wを収容する。ここで、基板Wは、例えば、その面が鉛直方向に沿うようにして又は斜めにして配置されうる。また、複数枚の基板Wを同時に処理する場合には、複数枚の基板Wが平行に並べて配置されうる。
【0040】
次いで、処理槽1内にフッ酸(HF)溶液等の薬液Mを送り込むことにより、基板W上から酸化膜等をエッチングによって除去するケミカル処理を行う。その後、薬液Mに換えて温水又は冷水等の純水(リンス液)Nを送り込むことにより、基板W上から薬液Mや付着物等を洗い落とす水洗処理(リンス処理)を行う。
【0041】
ここで、上記のケミカル処理及び水洗処理中において、処理槽1内の圧力を減圧し加圧する圧力制御を少なくとも1回実施すること、好ましくは複数回繰り返すことで、基板Wの表面のみならず、窪み内も確実且つ効果的にケミカル処理及び水洗処理がなされうる。このような圧力制御は、例えば、線幅が10μm以下で深さが異なる複雑且つ様々な、トレンチ、又はコンタクトホール、又はディープパターンのような窪みの内部や、多孔質基板の細孔のような窪みの内部を洗浄等する処理に有用である。ケミカル処理及び水洗処理中において、処理槽1内の圧力の制御は、例えば、大気圧以下の圧力範囲内で実施されることが好ましい。
【0042】
以下、図2(a)、図2(b)を参照しながら処理槽1内の圧力制御を伴う基板Wの処理について更に詳細に説明する。
【0043】
まず、基板Wを処理槽1に収容し、処理槽1内を大気圧以下の減圧状態にし、その後、処理液(ここでは、薬液M又は純水N)を処理槽1内に注入する。このように処理槽1内への処理液の注入に先立って処理槽1内を大気圧以下に減圧することにより、トレンチ等の窪みW−1内の気体の量(分子数)を減らした状態で基板Wに処理液を提供することができる。
【0044】
次いで、処理槽1内を更に減圧することにより、この減圧量(減圧前と減圧後の圧力の差分)にほぼ反比例して、基板Wの表面に開口している窪みW−1内の気泡Kが膨張し、図2(a)に模式的に示すように、気泡Kを構成する気体分子の大部分が窪みW−1内から溢れ出る。その後、処理槽1内を加圧(昇圧)することにより(例えば、処理槽1内の圧力を元に戻すことにより)、窪みW−1内の気泡Kが圧縮され、図2(b)に示すように、気泡Kの体積が元の体積の例えば数分の1から数十分の1(好ましい実施形態では、例えば1/2.5〜1/50)に減少する。これは、気泡K(気体)の体積変化を利用したものである。
【0045】
以上のような圧力制御により、基板Wの表面と同様に、窪みW−1の内部面にも薬液Mや純水N等の処理液を接触させることができるので、基板Wの表面と同様に、窪みW−1を確実且つ効率的に清浄化処理することができる。
【0046】
上記のケミカル処理及び水洗処理中において処理槽1内の圧力範囲は、上記のように大気圧以下の圧力範囲であることが好ましい。ここで、完全真空の圧力が0kPaで、大気圧が100kPaであると仮定した場合、上記のケミカル処理及び水洗処理中において処理槽1内の圧力範囲は、1〜99kPaであることが好ましく、30〜99kPaであることが更に好ましい。
【0047】
処理槽1内の圧力の制御は、例えば、第1段階では、処理槽1内の圧力を30〜99kPaの範囲とし、続く第2段階では、処理槽1内の圧力を更に下げて2〜70kPaの範囲(ただし、第1段階の圧力よりも低い圧力)とし、続く第3段階では、処理槽1内の圧力を上げて35〜99kPaの範囲(ただし、第2段階の圧力よりも高い圧力)とすることができる。なお、第3段階では、第1段階における圧力とほぼ等しい圧力にしてもよい。このような第2段階(減圧)及び第3段階(加圧)で構成されるサイクルは、複数回にわたって繰り返し実施されてもよい。
【0048】
窪みW−1は、種々の形状及び構造を有しうるが、トレンチの場合、典型的には、図8に示すように窪みの幅をx、深さをyとした場合にy/xで定義されるアスペクト比が0.5から100の範囲であり、入口の開口面積が0.01μm2以上である。
【0049】
処理槽1は、例えば、石英やふっ素樹脂、或いは金属板の表面にふっ素樹脂等からなるコーティング膜を施してなる耐圧容器として構成されうる。図1に例示的に示す実施形態においては、処理槽1は、多数枚の基板Wを垂直又は斜めの状態で平行に並べて収容し得る大きさを有し、上部に開口を有し、下部に底部壁を有する箱形状を有する。底部壁は、例えば中央に設けられた給・排液口8に向かって傾斜している。給・排液口8には、給液ライン2と排液ライン3とが分岐して接続されている。
【0050】
そして、給液ライン2には、その途中部位から分岐される薬液バルブ9と純水バルブ10とを夫々介して薬液供給ユニット11と純水供給ユニット12とが接続されている。これにより、給・排液口8から処理槽1内に薬液M又は純水Nを所定の流速(m/s)で供給することができる。
【0051】
また、排液ライン3には、排液バルブ13と、排液ライン3の端部に接続されるヘッダ14とを介して排液・真空吸引ユニット15が接続されている。これにより、ケミカル処理後や水洗処理後等において、処理槽1内から薬液M又は純水Nを所定の流速(m/s)で吸引して排液することができる。
【0052】
また、処理槽1の上部開口には密閉蓋16が開閉自在に装備されている。密閉蓋16を閉じることにより処理槽1が密閉される。薬液Mを用いたケミカル処理時や純水Nを用いた水洗処理時において、密閉蓋16により処理槽1を密閉し、処理槽1内を大気圧以下の圧力にすること、更には、吸引口17に吸引ライン5を介して接続される排液・真空吸引ユニット15による減圧(真空引き)と、ガス供給口18、ガスライン6を介して接続されるガス供給ユニット19によるガス(例えばN2等)の供給による処理槽1内の加圧(例えば、元の圧力に戻す)とを数回(N回)にわたって繰り返し実施することができる。
【0053】
また、処理槽1の上部側壁部には、処理液の液面Lを規定するオーバーフロー口20が設けられている。オーバーフロー口20は、オーバーフローライン4、オーバーフローバルブ21、そしてオーバーフローライン4の端部に接続されるヘッダ14を介して排液・真空吸引ユニット15に接続されている。これにより、ケミカル処理中又は水洗処理中において、給・排液口8から処理槽1内に所定の流速(m/s)で送り込まれて基板Wの表面に接触しながら上昇(浮上)する薬液M又は純水Nが、基板Wの上部から処理槽1外にオーバーフローされる。
【0054】
また、処理槽1の上部側壁部には、吸引口17が設けられている。吸引口17は、吸引ライン5、吸引バルブ22、そして吸引ライン5の端部に接続されるヘッダ14を介して排液・真空吸引ユニット15に接続されている。これにより、ケミカル処理中や水洗処理中において、密閉された処理槽1内を減圧することができる。
【0055】
また、処理槽1の上部側壁部にはガス供給口18が設けられている。ガス供給口18は、ガスライン6とガスバルブ23とを介してガス供給ユニット19に接続されている。これにより、ケミカル処理中や水洗処理中において、減圧された処理槽1内を、例えば減圧前の圧力状態に戻す等、処理槽1内を加圧することができる。
【0056】
また、処理槽1の上部側壁部には蒸気導入口24が設けられている。蒸気導入口24は、蒸気導入ライン7と蒸気バルブ25とを介してアルコール供給ユニット26に接続されている。純水Nによる基板Wの水洗処理が終了し、純水が排液・真空吸引ユニット15により底部の給・琲液口8から所定の流速(m/s)で吸引排液された後に、蒸気バルブ25を開くことにより、大気圧以下の処理槽1内に、蒸気化されたイソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類Xが吸い込まれて導入される。
【0057】
ここで、アルコール類Xとしては、イソプロピルアルコールの他、例えばメチルアルコール、エチルアルコール等が好適である。
【0058】
次に、以上のように構成された図1に示す処理システムによる基板の処理方法の一例を図3に示すフローチャートを参照しながらに説明する。
【0059】
基板Wを処理槽1内に搬入し、垂直又は斜め並列状に配置し、密閉蓋16を閉じる(ステップ27)。ここで、処理槽1内が薬液Mにより満たされた状態で処理槽1内に基板Wが搬入されてもよいし、処理槽1内が空の状態で処理槽1内に基板が搬入され、その後に薬液Mが処理槽1内に供給されてもよい。次に示す処理手順は、前者の例である。
【0060】
密閉蓋16が閉じられた後に、排液・真空吸引ユニット15を作動させると共に吸引バルブ22を開いて、処理槽1内を大気圧以下の圧力、例えば10〜99kPaまで真空引きする減圧処理を開始する(ステップ28)。
【0061】
処理槽1内が大気圧以下の圧力、例えば10〜99kPaの範囲内の目標圧力値まで減圧された時点で、吸引バルブ22が閉じられて減圧動作が停止される。また、オーバーフローバルブ21が開かれ(減圧動作の停止)、薬液供給ユニット11の動作が開始される共に薬液バルブ9が開かれる。
【0062】
薬液バルブ9が開くことにより、薬液バルブ9が閉じられるまで、底部の給・排液口8から処理槽1内へ薬液Mが所定の流速(m/s)で継続して送り込まれる。薬液Mの継続給水により、基板Wの表面に接触しながら流れる薬液Mの上昇流が処理槽1内に形成される。図1に示す処理槽1上部の液面Lまで上昇した薬液Mは、オーバーフロー口20から処理槽1外にオーバーフローされる。このような薬液Mの供給によって、基板W上の酸化膜や汚染物質等をエッチングによって除去するケミカル処理が開始される(ステップ29)。
【0063】
薬液Mの循環供給によるケミカル処理が開始されてから所定の時間が経過した後に吸引バルブ22を開いて、処理槽1内の圧力値を10〜99kPaの範囲内の第1圧力値から2〜70kPaの範囲内の第2圧力値(第1圧力値よりも低い圧力値)までに更に下げる減圧動作を開始させる(ステップ30)。
【0064】
処理槽1内の圧力値が2〜70kPaの範囲内の第2圧力値まで低下した後に、吸引バルブ22が閉じられ(減圧の停止)、ガス供給ユニット19が動作を開始すると共にガスバルブ23が開かれる。
【0065】
ガスバルブ23が開くことにより、ガス供給口18から処理槽1内にガスが送り込まれ、処理槽1内の圧力値を第2圧力値から第3圧力値(第2圧力値よりも高い圧力値、例えば第1圧力値)まで上昇させる加圧動作が開始される(ステップ31)。
【0066】
処理槽1内の圧力値が第3圧力値(例えば、85〜99kPaの範囲内の圧力値)に達した後に、ガス供給ユニット19が止められ、ガスバルブ23が閉じられる。また、吸引バルブ22が開いて処理槽1内の減圧を再開するステップ30に戻る。ステップ30からステップ31における減圧及び加圧は、数回(N回)繰り返されうる。
【0067】
ステップ30からステップ31が予め設定された回数(N回)にわたって繰り返されて、基板Wの表面の他、コンタクトホール、ディープパターン等の窪みW−1内の薬液Mによるケミカル処理が終了する処理時間が経過すると(ステップ32でYes)、薬液供給ユニット11、廃液・吸引ユニット15が止められ、薬液バルブ9、オーバーフローバルブ21が閉じられる。
【0068】
薬液Mによる基板Wのケミカル処理が終了した後に、基板Wを次の工程へ搬送する場合にはガス供給ユニット19の動作が開始されると共にガスバルブ23が開かれ、これにより処理槽1内にガスが送り込まれて外処理槽1内の大気圧に戻される(ステップ33)。
【0069】
処理槽1内が大気圧に戻された時点で、ガス供給ユニット19の動作が停止されるとともにガスバルブ23が閉じられる。また、処理槽1の上部の密閉蓋16が開かれて、基板Wが処理槽1内から搬出される(ステップ34)。
【0070】
この搬出は、処理槽1内の薬液Mを排液しない状態で実施されてもよいし、排液・真空吸引ユニット15を動作させると共に排水バルブ13を開いて、処理槽1底部の給・排液口8から排液ライン3を通して薬液Mを吸引により排液した後に行なう等、任意である。
【0071】
また、ケミカル処理が終了した後に、引き続いて純水Nによる水洗処理を実行する場合には、前述したように、薬液供給ユニット11が止められ、薬液バルブ9が閉じられた後に、ステップ29に戻る。そして、ステップ29〜31において、薬液Mに代えて純水Nを使って処理する。具体的には、ステップ29において、純水供給ユニット12を作動させると共に純水バルブ10を開いて、給・排液口8から処理槽1内へ純水Nを所定の流速(m/s)で送り込んで薬液Mを純水Nで置換する。その後、前述したケミカル処理と同様に、ステップ30〜ステップ31を数回(N回)繰り返す。
【0072】
ここで、薬液Mから純水Nに切り替えて水洗処理を行なう場合、処理槽1内の薬液Mが排液された後に、給・排液口8から処理槽1内へ純水Nを供給してもよい。
【0073】
本実施形態の処理方法によれば、処理槽1内に基板Wを入れて処理槽1を密閉した後に、処理槽1内を大気圧以下まで減圧することにより、基板Wの窪みW−1内の正味の気体量(分子量)を減らすことができる。
【0074】
また、処理槽1内の圧力値をケミカル処理及び水洗処理等の処理中において減圧すると、処理液M中に浸漬された基板W表面の窪みW−1内に閉じ込められている気泡Kが膨張し(例えば、元の体積の2〜50倍に膨張する)、気泡Kを構成する気体の一部が窪みW−1から溢れ出る。この減少を模式的に説明すると、処理槽1内の圧力の低下に従って、当初は図5(a)に示すように毛細管力つまり液浸透力により窪みW−1内に押し込まれている気泡Kが図5(b)に示すように膨張し、更には図5(c)に示すように気泡Kの一部が窪みW−1から溢れ出て処理液中に放出される。これにより、窪みW−1内に存在する気泡Kを構成する気体の量(分子数)が減少する。そして、減圧動作に次いで加圧動作が行われると、図5(d)に示すように、気泡Kの体積が圧力にほぼ反比例して数分の1から数十分の1(例えば、1/2.5〜1/50)に縮小する。
【0075】
以上のような減圧動作及び加圧動作を繰り返さえされると、窪みW−1内の気泡Kを構成する気体が更に確実に窪みW−1外に排出される。
【0076】
更に、以上のような気泡Kの体積の増減に応じて薬液M又は純水Nのような処理液が窪みW−1内において往復移動(ピストン運動)を繰り返す(図5(a)の状態から(d)の状態)。そして、最後には、処理液が完全に窪みW−1内の最深部まで提供される。
【0077】
以上のように、本実施形態の処理方法によれば、処理槽1内を減圧し加圧する圧力制御を少なくとも1回、好ましくは複数回にわたって実施することにより、気泡Kを膨張させて窪みW−1内から溢れさせ、気泡Kの縮小により窪みW−1内に薬液M又は純水N等の処理液を進入させ、しかも気泡Kの膨張及び収縮によって処理液を窪みW−1内で往復移動させることができる。これにより、窪みW−1内をケミカル処理及び/又は水洗処理を確実に行なうことができる。なお、このような効果は、ウエット処理において使用される処理液の種類に関わらず得られるものである。
【0078】
従って、本実施の形態の処理方法によれば、基板Wの表面は勿論、基板Wの表面に存在する、例えば線幅が10μm以下で深さが異なる複雑且つ様々なコンタクトホール、ディープパターン、又は多孔質基板の細孔のような窪みW−1内の深部に薬液M又は純水Nのような処理液を確実に供給することができる。また、窪みW−1内における処理液の往復移動により、窪みW−1内の不要物を効果的に窪みW−1外に排出することができる。これにより、高性能化、高集積化等の半導体デバイスの製作プロセスにおいて課題とされていた薬液Mによるケミカル処理から純水Nによる水洗処理までの一連の洗浄処理を確実に行なうことができる。また、多孔質基板の細孔についても、同様に、一連の洗浄処理等の処理を確実に行なうことができる。
【0079】
純水Nによる基板Wの表面及び窪みW−1内の最終水洗処理が終了し、純水バルブ10が閉じられた後に、図9に例示的に示すように基板Wの表面に保護膜Fを形成することが好ましい。保護膜Fは、大気中の汚染されている水分(例えば、有機汚染等がされた水分)が基板Wの表面に吸着することを防ぐ効果がある。保護膜Fは、例えば、図4に示すフローチャートに従って形成することができる。以下、図4のフローチャートに従って保護膜Fの形成処理を説明する。
【0080】
トレンチW−1内の最終水洗処理が終了し、純水バルブ10が閉じられた後に、アルコール供給ユニット26を作動させると共にアルコールバルブ25を開く。
【0081】
すると、図1に示す処理槽1内の液面L上部の空間35に、蒸気導入口24から蒸気化されたアルコール類Xが処理槽1内に吸い込まれるように導入される(ステップ36)。このアルコール類Xの供給は、液面L上部の空間35がアルコール類Xの蒸気雰囲気により満たされるまで行われる。
【0082】
液面L上部の空間35がアルコール類Xの蒸気により満たされると、アルコール供給ユニット26が止められ、アルコールバルブ25が閉じられる。その後、排液・真空吸引ユニット15を動作させると共に排水バルブ13開いて、処理槽1底部の給・排液口8から純水Nの排液を開始する(ステップ37)。
【0083】
純水Nの排液が開始されて、液面Lが降下し始めると、処理槽1内の上部空間35に導入されていたアルコール類Xは基板Wの表面に接触する。この接触によりアルコール類Xが凝縮し、基板Wの表面に付着している水滴との蒸気置換(混合置換)が成されると共に、窪みW−1内の液体とも蒸気置換が成される。これにより、基板Wの表面及び窪みW−1内が乾燥される(ステップ38)。
【0084】
そして、処理槽1内の純水Nが全て排液された後においても継続運転されている排液・真空吸引ユニット15によって処理槽1内の真空引きが行なわれ、この真空引きにより、基板Wの表面及び窪みW−1内、そして処理槽1内に残るアルコール類Xと湿気が強制排気される(ステップ39)。このような減圧乾燥処理において、排液・真空吸引ユニット15を断続的に運転したり、該ユニット15の吸引力を調節したりすることで、処理槽1内の減圧度を任意に調整することができる。
【0085】
この時、処理槽1内の真空引き開始と同時に吸引バルブ22を開いて、吸引口17からも処理槽1内に残るアルコール類Xと湿気を強制排気することにより、減圧乾燥処理(ステップ39)を例えば半分程度の時間に短縮することが可能となる。
【0086】
排液・真空吸引ユニット15による処理槽1内の減圧乾燥処理が終了すると、排液・真空吸引ユニット15が止められ、排水バルブ13が閉じられる。その後、純水供給ユニット12を動作させると共に純水バルブ10を僅かに開いて、給・排液口8から処理槽1内に少量の純水Nを送り込む(ステップ40)。純水Nの供給は、処理槽1内が純水Nの蒸気雰囲気により満たされるまで行なわれる。
【0087】
大気圧以下の減圧雰囲気の処理槽1内に送り込まれた純水Nは蒸気化されて、処理槽1内に、基板W表面に保護膜Fを成膜する膜生成雰囲気を作る。
【0088】
すると、図9に示したように、蒸気化された純水Nが基板Wの表面に吸着され、これにより同表面には純水Nの保護膜Fが成膜される。
【0089】
また、同時に基板Wの表面に吸着された純水Nの一部が窪みW−1内に進入する。この保護膜Fは、典型的には、大気中に曝されても蒸発することがないとされている水分子量1〜50分子と言う超薄の膜厚から成る。
【0090】
保護膜Fが基板Wの表面に形成されるために必要な処理時間が経過すると(ステップ41)、純水バルブ10が閉じられる。その後、ガス供給ユニット19を動作させると共にガスバルブ23が開かれて、処理槽1内にガスが送り込まれて、同処理槽1内が大気圧に戻される(ステップ42)。
【0091】
処理槽1内が大気圧に戻された時点で、ガス供給ユニット19を止め、ガスバルブ23を閉じると共に処理槽1の上部開口を密閉する密閉蓋16を開き、保護膜Fが形成された基板Wが処理槽1内から取り出される(ステップ43)。
【0092】
従って、大気圧以下で処理槽1内の減圧と加圧とを繰り返しながらケミカル処理及び水洗処理により清浄化された基板Wは、その後に処理槽1内で形成された純水Nからなる保護膜Fにより、クリーンルーム内等の大気中の汚染物から保護される。
【0093】
つまり、清浄化された基板Wを処理槽1から搬出する前に基板Wに保護膜Fを形成することにより、大気中の汚染されている水分(有機汚染等を含む)が基板Wの表面に吸着することを防ぎ、処理槽1外においても基板Wを清浄な状態に維持することができる。
【0094】
処理槽1内を減圧した後に元の圧力値に戻す際(ステップ31)や、減圧による置換乾燥処理後に処理槽1内を大気圧に戻す際(ステップ33、42)際に、N2ガスを送り込む手段以外に、例えば、純水等を混合させた湿気を有する湿度制御ガスを処理槽1内に送り込む手段、又はクリーンルームの空気をフィルターを通して不純物や有機・無機成分を取り除いた後に処理槽1内に送り込む等の手段を用いて、処理槽1内を加圧したり、大気圧に戻したりすることも可能である。
【0095】
(実施形態2)
次に、本発明の処理方法を実施する処理システムの第2の実施形態について説明する。
【0096】
尚、この処理システムを実施する処理システムは、前述の第1の実施形態において詳述した処理システムと基本的な構成が同一である。第2の実施形態として特に言及しない事項については、第1の実施形態に従うものとする。
【0097】
第2の実施形態の処理システムにおいては、吸引口17、吸引ライン5、吸引バルブ22は必ずしも必要とされない。しかし、処理槽1内の薬液M又は純水Nを排液した後の処理槽1内を減圧する場合に、処理槽1底部の給・排液口8からの吸引と並行して吸引口17からも吸引することで、減圧の時間を短縮することが可能となり、槽内減圧を短時間で効率的に実行することができる。
【0098】
第2の実施形態の処理方法は、図6に示す工程図のように、液接触工程44、液供給工程45、液蒸発工程46を含み、これら液接触工程44、液供給工程45、液蒸発工程46を少なくとも1回、好ましくは数回にわたって繰り返す。この処理により、基板Wの表面のみならず、例えば線幅が10μm以下で深さが異なる複雑且つ様々なコンタクトホール、ディープパターン等のトレンチのような窪み内をも確実にケミカル処理及び/又は水洗処理することができる。また、同様に、多孔質基板の細孔内をも確実に洗浄処理し得る。
【0099】
液接触工程44は、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類Xを基板Wの表面に接触させることにより、該表面の窪みW−1内にアルコール類Xを進入させて、その後の該窪みW−1内への薬液M又は純水Nの供給を容易にする。
【0100】
即ち、薬液M又は純水N単体では、自身の表面張力(接触角)等が障害となるために、線幅が10μm以下トレンチのような窪み内に進入しにくい。そこで、窪みW−1内に薬液M又は純水Nを確実に進入させるために、本実施形態では、アルコール類Xを基板Wの表面に接触(付着又は凝着)させる。
【0101】
アルコール類Xを基板Wの表面へ接触させる方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、基板Wが垂直又は斜め並列状に収容される密閉された処理槽1内に、アルコール類Xの蒸気雰囲気を作ることで、基板Wの表面にアルコール類Xを接触させ、該表面でアルコール類Xを凝縮させる方法が好適である。この方法は、処理槽1内を大気圧以下の減圧雰囲気として実施することが望ましい。
【0102】
液供給工程45は、液接触工程44においてアルコール類Xが窪みW−1内に進入した基板Wを収容した処理槽1内に、該基板Wが完全に漬かる液面Lまで薬液M又は純水Nを送り込み、該薬液M又は純水Nを窪みW−1内に進入させる。
【0103】
具体的には、フッ酸(HF)溶液等の薬液M又は温水又は冷水としての純水Nを処理槽1底部の給・排液口8から所定の流速(m/s)で送り込みながら、処理槽1の上部側壁部に設けたオーバーフロー口20から薬液M又は純水Nをオーバーフローさせて、処理槽1内に上昇流を形成する。この薬液M又は純水Nによって基板W上の酸化膜等をエッチングし除去するケミカル処理、又は基板W上から付着物等を洗い落とす水洗処理が行なわれる。この際、薬液M又は純水Nは、アルコール類Xとの混合しながら窪みW−1内に進入する。
【0104】
液蒸発工程46は、処理槽1内から薬液M又は純水Nを吸引排液した後に、窪みW−1内にアルコール類Xと混ざり合った薬液M又は純水Nの一部をアルコール類Xと共に蒸発(揮発)させる。
【0105】
窪みW−1内に進入した薬液M又は純水Nをアルコール類Xと共に蒸発させる方法としては、例えば、処理槽1内を減圧若しくは加熱する等の方法が考えられる。以下に示す実施形態では、処理槽1内を減圧する方法を採用している。
【0106】
従って、前述の液供給工程45において窪みW−1内に薬液M又は純水Nを進入させ、この薬液M又は純水Nを処理槽1内の減圧により蒸発させることを繰り返すことで、窪みW−1内に液体の移動(液のピストン運動)が起り、この移動により窪みW−1内を確実にケミカル処理及び/又は水洗処理し、表面と同様に、窪みW−1内をも清浄化処理し得る。
【0107】
次に、第2の実施形態に係る処理方法を図7に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0108】
基板Wを処理槽1内に垂直又は斜めの状態で平行に並べて配置し、密閉蓋16を閉じる(ステップ47)。
【0109】
密閉蓋16が閉じられた後に、排液・真空吸引ユニット15を作動させると共に吸引バルブ22を開いて、処理槽1内を大気圧以下の例えば10〜99kPaの範囲の圧力まで減圧する処理を開始する(ステップ48)。
【0110】
処理槽1内の減圧雰囲気が10〜99kPaの範囲内の目標圧力値まで減圧された時点で、吸引バルブ22を閉じる。その後、アルコール供給ユニット26を作動させると共にアルコールバルブ25を開く。これにより、アルコール供給ユニット26で生成されたアルコール類Xの蒸気が蒸気導入ライン7を通って処理槽1の上部側壁部の蒸気導入口24から処理槽1内に吸い込まれるように導入される(ステップ49)。これにより、処理槽1内にはアルコール類Xの蒸気により満たされた蒸気雰囲気が作られる。
【0111】
このアルコール類Xの供給は、例えば、処理槽1内に蒸気雰囲気が作られた時点で止めてもよいし、基板Wの表面との接触による温度差により該表面に凝縮されて窪みW−1内にアルコール類Xが進入する間継続してもよい。
【0112】
処理槽1内に満たされたアルコール類Xが基板Wの表面のコンタクトホール、ディープパターン等の窪みW−1内に進入した時点(実際には、実験結果等に基づいて予め決定された時間が経過した時点)で、アルコールバルブ25を閉じ、オーバーフローバルブ21を開き、薬液供給ユニット11を作動させると共に薬液バルブ9を開く。これにより、給・排液口8から処理槽1内に薬液Mが所定の流速(m/s)で送り込まれる。
【0113】
処理槽1内への薬液Mの供給が開始されると、基板Wの表面に接触しながら流れる薬液Mの上昇流が処理槽1内に形成され、基板W上の酸化物や汚染物質等をエッチングして除去するケミカル処理が開始される。処理槽1内で上昇した薬液Mがオーバーフロー口20からオーバーフローしてオーバーフローバルブ21を通して排出される。薬液Mは、窪みW−1内のアルコール類Xと混ざり合いながら窪みW−1内に進入し、窪みW−1の内部をケミカル処理する(ステップ50)。
【0114】
薬液Mの供給を開始してから所定の時間が経過したら、オーバーフローバルブ21が閉じられ、薬液供給ユニット11が止められると共に薬液バルブ9が閉じられる。また、排水バルブ13が開かれて、処理槽1底部の給・排液口8からの薬液Mの吸引排液が開始される(ステップ51)。
【0115】
そして、処理槽1内の薬液Mが全て吸引により排液された後においても継続運転する排液・真空吸引ユニット15による処理槽1内の真空引きが行なわれ、槽内の減圧が開始される(ステップ52)。この時、排液・真空吸引ユニット15を断続的に運転させたり、該ユニット15の吸引力を調節したりすることで、槽内の減圧度を調節することができる。
【0116】
処理槽1内の減圧が開始されると、窪みW−1内でアルコール類Xと混ざり合っている薬液Mが、窪みW−1の入口側から徐々に蒸発する(図10(c)の状態から(f)の状態)。この時、蒸気圧の高いアルコール類Xが優先的に蒸発する。
【0117】
そして、処理槽1内の減圧を開始してから所定時間が経過した後に、排液・真空吸引ユニット15が止められ、排水バルブ13が閉じられる。そして、ステップ49に戻り、アルコール供給ユニット26を再び作動させると共に蒸気バルブ25を開く。これにより、減圧された処理槽1内に蒸気化されたアルコール類Xが吸い込まれるように導入され、該処理槽1内にアルコール類Xの蒸気雰囲気が作られる。ステップ49からステップ52の処理は、数回(N回)にわたって繰り返されうる。
【0118】
ステップ49からステップ52が予め設定された回数(N回)にわたって繰り返されて基板Wのケミカル処理のための時間として予め設定された処理時間が経過すると(ステップ53においてYes)、排液・真空吸引ユニット15が止められ、排水バルブ13が閉じられる。また、ガス供給ユニット19を作動させると共にガスバルブ23を開く。これにより、ガス供給口18から処理槽1内にガスが送りこまれて該処理槽1内が大気圧に戻される(ステップ54)。
【0119】
処理槽1内が大気圧に戻された時点で、ガス供給ユニット19を止め、ガスバルブ23を閉じると共に処理槽1の上部開口を密閉する密閉蓋16を開き、基板Wを処理槽1内から取り出される(ステップ55)。
【0120】
そして、薬液Mによる基板Wのケミカル処理が終了した後に、引き続いて、純水Nによる水洗処理を実行する場合には、ステップ49に戻り、アルコールバルブ25を開いて減圧状態にある処理槽1内に蒸気化されたアルコール類Xを導入する。
【0121】
次に、アルコールバルブ25を閉じ、オーバーフローバルブ21を開き、純水供給ユニット12を作動させると共に純水バルブ10を開く。これにより、給・排液口8から処理槽1内へ純水Nが所定の流速(m/s)で送り込まれる。以降は、薬液Mの代わりに純水Nを使って、ステップ49からステップ52までを数回(N回)にわたって繰り返す。
【0122】
従って、本実施形態の処理方法によれば、基板Wの表面は勿論、該表面に存在する線幅が10μm以下のような小さいコンタクトホール、ディープパターン等の窪みW−1内に、アルコール類Xとの混合により薬液M又は純水Nを確実に進入させることができる。また、窪みW−1内に進入した薬液M又は純水Nの一部が処理槽1内の真空引きにより徐々に蒸発される減圧乾燥を数回(N回)繰り返すことで、窪みW−1の内部で処理液を移動させることができる。これにより、窪みW−1内の酸化膜をエッチング除去するケミカル処理又は薬液やエッチング残渣を洗い落とす水洗処理が確実且つ効果的に行なわれる。多孔質基板の細孔についても同様に良好な洗浄処理が可能である。
【0123】
また、第2の実施形態に係る処理方法によって基板Wの表面及び窪みW−1内の純水Nを用いた最終洗浄処理が終了した後に、基板Wの表面に保護膜Fを形成することが好ましい。保護膜Fの形成については、図4を参照して第1の実施形態において説明した方法を採用しうる。
【0124】
第1の実施形態及び第2の実施形態に係る処理方法を組み合わせて、基板Wの表面及び窪みW−1内のケミカル処理及び水洗処理等の一連の洗浄処理を行なってもよい。
【0125】
この場合、第1の実施形態に係る処理方法を実行した後に、継続して第2の実施形態に係る処理方法を実行することを大気圧以下の処理槽1内で繰り返すことができる。或いは、第2の実施形態において説明した液接触工程44を行い、次に液供給工程45中に第1の実施形態において説明したように処理槽1内の大気圧以下での減圧と加圧とを数回(N回)にわたって繰り返し、その後、処理槽1内から薬液M又は純水Nを排液して第2の実施形態において説明したように減圧による液蒸発工程46を実行することができる。
【0126】
(実施形態3)
次に、本発明の処理方法を実施する処理システムの第3の実施形態について説明する。
【0127】
尚、この処理システムを実施する処理システムは、前述の第1の実施形態において詳述した処理システムと基本的な構成が同一である。第3の実施形態として特に言及しない事項については、第1の実施形態に従うものとする。
【0128】
第3の実施形態の処理方法は、図11に示す工程図のように、液接触工程56、液供給工程57、液蒸発工程58を含む。
【0129】
これら液接触工程56、液供給工程57、液蒸発工程58を少なくとも1回、好ましくは数回にわたって繰り返す。この処理により、基板Wの表面のみならず、例えば線幅が10μm以下で深さが異なる複雑且つ様々なコンタクトホール、ディープパターン、トレンチ等のような窪み内をも確実にケミカル処理及び/又は水洗処理することができる。また、同様に、多孔質基板の細孔内をも確実に洗浄処理し得る。
【0130】
即ち、薬液M又は純水Nがアルコール類Xに接触して溶解し合う際に起る大きな運動エネルギーを利用して、図13の(a)に示すように、窪みW−1の入口を塞ぐように凝縮しているアルコール類Xの表面張力に打ち勝って、アルコール類Xと薬液M又は純水Nとを窪みW−1内に進入させて、窪みW−1内を確実にケミカル処理又は水洗処理し、清浄化する(図13(b)〜(e)の状態)。
【0131】
液接触工程56では、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類Xを基板Wの表面に接触させることにより、該表面に所望の厚さでアルコール類Xを凝縮させる。
【0132】
この液接触工程56において、密閉された処理槽1に垂直又は斜めの状態で並べて収容されている基板Wの表面には表面張力(接触角)等が障害となって窪みW−1内に進入せずに、窪みW−1の入口を塞ぐようにアルコール類Xが凝縮し、凝縮膜が基板Wの表面全体に形成される場合がありうる。
【0133】
アルコール類Xを基板Wの表面へ接触させる方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、基板Wが垂直又は斜め並列状に収容される密閉された処理槽1内に、アルコール類Xの蒸気雰囲気を作ることで、基板Wの表面にアルコール類Xを接触させ、該表面でアルコール類Xを凝縮させる方法が好適である。この方法は、処理槽1内を大気圧以下の減圧雰囲気として実施することが望ましい。
【0134】
液供給工程57では、処理槽1の底部に設けられている給・排液口8から処理槽1内に送り込まれて上部側に向けて所定の速度で薬液M又は純水Nの液面Lを上昇させる。この際、液面Lにおいて液接触工程56において基板Wの表面に凝縮されたアルコール類Xに薬液M又は純水Nが接触して、アルコール類Xと薬液M又は純水Nが混ざり合う際に発生する大きな運動エネルギーにより、窪みW−1の入口を塞ぐアルコール類Xの表面張力を打ち破って、窪みW−1内にアルコール類Xと薬液M又は純水Nとを進入させる。
【0135】
この液供給工程57において、薬液M又は純水Nを処理槽1底部の給・排液口8から処理槽1内上部側へ向けて送り込んで上昇させる際の該薬液M又は純水Nの液面Lの上昇速度は、0.001〜1.0m/sの範囲に設定することが好ましい。
【0136】
その理由は、液面速度が0.001m/s以下では大気圧以下の減圧雰囲気の処理槽1内に送り込まれた薬液M又は純水Nの液面Lが、基板W表面に存在する窪みW−1に到達する前に、蒸気化された薬液M又は純水Nの蒸気とアルコール類とが接触によりアルコール類が蒸発していまうからである。これは、薬液M又は純水Nを窪み内に進入させるためにアルコール類を使用するという趣旨に反する。
【0137】
一方、液面速度が1.0m/sを超えると、薬液M又は純水Nの液面Lとアルコール類Xとが接触して混ざり合う前に、窪みW−1が存在する部位が液中に漬かってしまう。つまり、この場合、アルコール類Xとの薬液M又は純水Nとの反応速度よりも上昇する液面速度が速いために、アルコール類Xと薬液M又は純水Nとが混ざり合う前に窪みW−1が存在する部位が上昇する薬液M又は純水Nの液中に漬かってしまう。
【0138】
従って、処理槽1底部の給・排水口8から送り込まれて上昇する薬液M又は純水Nの液面速度を、0.001〜1.0m/sの範囲に設定することが好ましく、0.01〜0.05m/sの範囲が更に好ましい。
【0139】
液蒸発工程57では、処理槽1内から薬液M又は純水Nを吸引排液した後、窪みW−1内に進入する際にアルコール類Xと混ざり合った薬液M又は純水Nの一部をアルコール類Xと共に蒸発(揮発)させる。
【0140】
トレンチW−1内に進入する際にアルコール類Xと混ざり合った薬液M又は純水Nをアルコール類Xと共に蒸発させる方法としては、例えば、処理槽1内の圧力を、例えば大気圧以下の圧力範囲内で、変化させる方法が好ましい。
【0141】
この実施の形態では、液供給工程57において、窪みW−1内に薬液M又は純水Nを進入させ、この薬液M又は純水Nを処理槽1内を減圧し加圧する処理を繰り返して蒸発させる。これにより、窪みW−1内で液体の往復移動が起り、窪みW−1内を確実にケミカル処理又は水洗処理することができる。したがって、この方法によれば、基板Wの表面と同様に窪みW−1内をも確実に且つ効率的に清浄化することができる。
【0142】
次に、第3の実施形態に係る処理方法を図12に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0143】
基板Wを処理槽1内に垂直又は斜めの状態で平行に並べて配置し、密閉蓋16を閉じる(ステップ59)。
【0144】
密閉蓋16が閉じられた後に、排液・真空吸引ユニット15を作動させると共に吸引バルブ22を開いて、処理槽1内の大気圧以下の例えば10〜99kPaの範囲の圧力まで減圧する処理を開始する(ステップ60)。
【0145】
処理槽1内の減圧雰囲気が10〜99kPaの範囲内の目標圧力まで減圧された時点で、吸引バルブ22を閉じる。その後、アルコール供給ユニット26を作動させると共にアルコールバルブ25を開く。これにより、アルコール供給ユニット26で生成されたアルコール類Xの蒸気が蒸気導入ライン7を通って処理槽1の上部側壁部の蒸気導入口24から処理槽1内に吸い込まれるように導入される(ステップ61)。これにより、処理槽1内のアルコール類Xの蒸気により満たされた蒸気雰囲気が作られる。
【0146】
このアルコール類Xの供給は、例えば、処理槽1内に蒸気雰囲気が作られた時点で止めてもよいし、基板Wの表面との接触による温度差により該表面にアルコール類Xが所望の厚さで凝縮されるまでの間継続してもよい。
【0147】
そして、アルコール類Xが基板Wの表面に凝縮された時点(実際には、実験結果等に基づいて予め決定された時間が経過した時点)で、アルコールバルブ25を閉じ、オーバーフローバルブ21を開き、薬液供給ユニット11を作動させると共に薬液バルブ9を開く。これにより、給・排液口8から処理槽1内に薬液Mが送り込まれる。ここで、薬液Mの供給速度は、薬液Mの液面Lが0.001〜1.0m/sの速度で処理槽1の底部から上部へ向けて上昇するように制御される。
【0148】
処理槽1内への薬液Mの供給が開始されると、基板Wの表面に接触しながら薬液Mの液面Lが上昇する。処理槽1内で上昇した薬液Mがオーバーフロー口20からオーバーフローしてオーバーフローバルブ21を通して排出される。この薬液Mにより、基板W上の酸化膜や汚染物等を薬液Mによりエッチングして除去するケミカル処理が実施される(ステップ62)。
【0149】
この時、処理槽1の底部から上部に向けて上昇する薬液Mの液面Lが、図13の(b)から(e)に示すように、基板Wの表面に凝縮(付着)しているアルコール類Xと接触して、該アルコール類Xと混ざり合う際に発生する運動エネルギーにより、窪みW−1の入口を塞ぐアルコール類Xの表面張力を打ち破って、アルコール類Xと薬液Mが混ざり合って窪みW−1内に進入する。これにより、窪みW−1内のエッチングが基板Wの表面と並行して起こる。
【0150】
薬液Mによるケミカル処理が開始されてから所定の時間が経過したら、薬液供給ユニット11が止められると共に薬液バルブ9が閉じられる。また、排水バルブ13が開かれて、処理槽1底部の給・排液口8からの薬液Mの吸引排液が開始される(ステップ63)。
【0151】
そして、処理槽1内の薬液Mが全て吸引排液された後においても継続運転する排液・真空吸引ユニット15より処理槽1内の真空引きが行なわれ、槽内の減圧が開始される(ステップ64)。この時、排液・真空吸引ユニット15を断続的に運転させたり、該ユニット15の吸引力を調節したりすることで、槽内の減圧度を調節することができる。
【0152】
処理槽1内の減圧が開始されると、アルコール類Xと混ざり合って窪みW−1内に進入した薬液Mが、窪みW−1の入口側から徐々に減圧されて行く(図10(c)の状態から(f)の状態)。この時、蒸気圧の高いアルコール類Xが優先的に蒸発する。
【0153】
そして、処理槽1内の減圧を開始してから所定時間が経過した後に、排液・真空吸引ユニット15が止められ、排水バルブ13が閉じられる。そして、アルコール供給ユニット26を再び差動させると共に蒸気バルブ25を開く。これにより、減圧された処理槽1内に蒸気化されたアルコール類Xが吸い込まれるように導入される、該処理槽1内にアルコール類Xの蒸気雰囲気が作られる。ステップ61からステップ64は、数回(N回)にわたって繰り返されうる。
【0154】
ステップ61からステップ64が予め設定された回数(N回)にわたって繰り返されて基板Wのケミカル処理のための時間として予め設定された処理時間が経過すると(ステップ65においてYes)、排液・真空吸引ユニット15が止められ、排水バルブ13が閉じられる。また、ガス供給ユニット19を作動させると共にガスバルブ23を開く。これにより、ガス供給口18から処理槽1内にガスが送り込まれて、該処理槽1内が大気圧に戻される(ステップ66)。
【0155】
処理槽1内が大気圧に戻された時点で、ガス供給ユニット19を止め、ガスバルブ23を閉じると共に処理槽1の上部開口を密閉する密閉蓋16を開き、基板Wを処理槽1内から取り出される(ステップ67)。
【0156】
そして、薬液Mによる基板Wのケミカル処理が終了した後に、引き続いて純水Nによる水洗処理を実行する場合には、ステップ61に戻り、薬液バルブ25を開いて大気圧以下の減圧状態にある処理槽1内にアルコール類Xを導入する。
【0157】
次に、アルコールバルブ25を閉じ、オーバーフローバルブ21を開き、純水供給ユニット12を作動させると共に純水バルブ10を開く。これにより、給・排液口8から処理槽1内へ純水Nが、液面速度が0.001〜1.0m/sの範囲になるように送り込まれる。以降は、薬液Mの代わりに純水Nを漬かって、ステップ61からステップ64までを数回(N回)にわたって繰り返す。
【0158】
従って、本実施形態の処理方法によれば、基板Wの表面は勿論、該表面に存在する線幅が10μm以下のようなコンタクトホール、ディープパターン等の窪みW−1の入口を塞ぐアルコール類Xの表面張力を、薬液M又は純水Nとアルコール類Xとの混ざり合いによる運動エネルギーを利用して打ち破ることができる。これにより、窪みW−1内にアルコール類Xと混ざり合った薬液Mを確実に進入させ、その後、窪みW−1内に進入した該薬液Mの一部が処理槽1内の減圧により徐々に蒸発させる減圧を数回(N回)繰り返すことで、窪みW−1の内部で処理液を移動させることができる。これにより、窪みW−1内の酸化膜をエッチング除去するケミカル処理又は薬液Mやエッチング残渣を洗い落とす水洗処理が確実且つ効果的に行われる。多孔質基板の細孔についても同様に良好な洗浄処理が可能である。
【0159】
また、前述の第3の実施形態に係る処理方法によって基板Wの表面及び窪みW−1内の純水Nを用いた最終洗浄処理が終了した後に、基板Wの表面に保護膜Fを形成することが好ましい。保護膜Fの形成については、図4を参照して第1の実施形態において説明した方法を採用しうる。
【0160】
液接触工程56を行なった後の液供給工程57中に第1の実施形態において説明した処理槽1内の大気圧以下での減圧と加圧とを数回(N回)繰り返し、その後、処理槽1内から薬液M又は純水Nを吸引排液して第3の実施形態において説明した液蒸発工程46を実行しながら基板Wの表面及び窪みW−1内のケミカル処理と水洗処理等の一連の洗浄処理を行うこともできる。
【0161】
また、第2の実施形態と第3の実施形態では、液供給工程45、57においては、薬液M又は純水Nを継続的に送り込みながら基板Wの表面及び窪みW−1内部のケミカル処理又は水洗処理を行なう。しかし、処理時間が短いものにおいては、処理槽1の底部から送り込まれる薬液M又は純水Nの液面Lが基板Wが完全に漬かる水位に達した時点で、薬液M又は純水Nの供給を一旦止めて処理槽1内を大気圧以下で更に減圧し、その後に加圧する処理を数回(N回)にわたって繰り返してもよい。
【0162】
尚、上記の処理槽1は一槽構造であるが、基板Wを垂直又は斜め並列状に収容する内槽と、密閉蓋16を備えた外槽からなる二槽構造としてもよい。或いは、そのような内槽と、この内槽の外側に設ける中間槽、そして、この中間槽の外側に設ける密閉蓋を有する外槽からなる三槽構造、更に四槽や五槽構造にすることもできる。すなわち、基板Wが配置される空間を密閉空間として該密閉空間内の圧力を制御することができる限り、槽構造は如何なる形態であってもよい。
【0163】
例えば、二槽構造の処理槽を採用する場合には、内槽の底部に給・排液口8を設け、この給・排液口8から内槽内に上昇水流を形成するように薬液M又は純水Nが継続的に供給し、該薬液M又は純水Nを内槽の上部開口から外槽側にオーバーフローさせて、該外槽の底部に設けられる排水口から槽外に排液されるように処理槽を採用することができる。
【0164】
以下、本発明の好適な実施の形態における有用性を例示的に説明する。
【0165】
本発明の好適な実施の形態によれば、処理槽内の減圧及び加圧を、例えば大気圧以下で、繰り返すことにより、窪み内に進入している処理液が、減圧により窪み内の気泡の膨張により窪み内から押し出され、加圧による気泡の圧縮により窪み内に処理液が進入する。これにより、窪み内で処理液の往復移動が起り、窪み内が確実に処理されうる。
【0166】
従って、基板の表面は勿論のこと、該表面に存在する線幅が10μm以下で深さが異なる複数且つ様々な窪み内に処理液を確実に進入させ、往復移動させることができる。これにより、窪み内の酸化膜等をエッチングするケミカル処理から該窪み内の薬液やエッチング残渣等の付着等を洗い流す水洗処理までの一連の洗浄処理を確実且つ効果的に行なうことができる。つまり、本発明の好適な実施形態によれば、高性能化、高集積化等の半導体デバイスの製作プロセスにおいて課題とされていた洗浄処理が良好に実施することができる。
【0167】
また、本発明の好適な実施形態によれば、基板の表面は勿論のこと、該表面に存在する線幅が10μm以下で深さが異なる複雑且つ様々なトレンチ等の窪み内に、液接触工程によりアルコール類を進入させ、その後に行なわれる液供給工程により処理槽内に送り込まれてくる薬液や純水等の処理液を前記アルコール類と混ざり合わせるこことにより、窪み内に確実に進入させることができる。その後、窪み内に進入させた処理液の一部を液蒸発工程において処理槽内を減圧することにより蒸発させることを繰り返すことで、窪みの内部で処理液を往復移動させることができる。これにより、窪み内の酸化膜等をエッチング除去するケミカル処理から該窪みから薬液やエッチング残渣等の付着物を洗い流す水洗処理までの一連の洗浄処理を確実且つ効率的に行なうことができる。
【0168】
また、本発明の好適な実施形態によれば、液接触工程により基板の表面にアルコール類を凝縮させ、その後に行なわれる液供給工程による処理液の供給において、処理液とアルコール類とが混ざりある際に発生する大きな運動エネルギーにより上記のような微細な窪み内の入口を塞ぐアルコール類の表面張力を打ち破って、該窪み内に処理液を確実に進入させることができる。そして、その後に行なわれる液蒸発工程による処理槽内の減圧により、窪み内に進入させた該処理液の一部を蒸発させることを繰り返すことで、窪みの内部で薬液や純水等の処理液の往復移動を生じさせて該窪み内の酸化膜等をエッチング除去するケミカル処理から同トレンチ内の薬液やエッチング残渣等の付着物を洗い流す水洗処理までの一連の洗浄処理を確実且つ効率的に行なうことができる。
【0169】
従って、本発明の好適な実施形態によれば、被処理基板の表面と同じく、例えば10μm以下の寸法を有するトレンチ、コンタクトホール、ディープパターン、多孔質基板の細孔を確実に処理(例えば、ケミカル処理、水洗洗浄処理等)することができる。つまり、高性能化、高集積化等の半導体デバイスの製作プロセスにおいて課題とされていたコンタクトホール、ディープパターン、トレンチ等の窪みや多孔質基板の細孔の洗浄等の処理が可能となる。
【0170】
また、本発明の好適な実施形態によれば、洗浄処理された後に行われる減圧乾燥処理による基板表面の活性化に伴い、基板の表面に生じている吸着作用により該表面に純水の保護膜を形成することができる。洗浄処理された基板にこのような保護膜を形成することにより、例えば、クリーンルーム内等の大気中に該基板が曝されても基板の清浄な面が保護される。つまり、大気中の汚染されている水分(有機汚染等を含む)が基板の表面に吸着することを防ぐことができる。換言すれば、基板の清浄な面を、該基板が処理槽から搬出された後においても保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明好適な実施形態の処理システムの概略的な構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の処理方法における処理(洗浄)プロセスの一例を示した工程概略図である。(a)は、密閉処理槽内を減圧してトレンチ内の気体(気泡)を膨張させた状態を示し、(b)は、密閉処理槽内にガスを送り込んで該処理槽を加圧してトレンチ内の気体を圧縮した状態を示している。
【図3】本発明の第1の実施形態の処理プロセスの手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の好適な実施の形態の保護膜の形成プロセスを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態の処理方法におけるトレンチ(窪み)内での気体(気泡)と処理液との動きを示した拡大断面図である。(a)は、密閉された処理槽内に給水された処理液がトレンチ内に毛細管力により進入した状態、(b)は、槽内の減圧によりトレンチ内の気体が膨張し、処理液がトレンチから溢れ出ている状態、(c)は、トレンチから溢れ出した気体の一部が処理液中に法主出される状態、(d)は、槽内の加圧によりトレンチ内の気体が圧縮され、処理液がトレンチ内に進入した状態、(e)は、トレンチ内の気体が完全に排除されてトレンチ内の奥まで処理液が進入した状態を示している。
【図6】本発明に係る第2の実施形態の処理プロセスを示す工程図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の処理プロセスの手順を示すフローチャートである。
【図8】窪みの特徴を説明するための図である。
【図9】基板表面に純水の吸着膜が形成された状態を示す拡大断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の処理方法におけるトレンチ内に進入しているアルコール類と混ざり合った処理液がトレンチ内で移動する様子を示す拡大断面図である。(a)は、密閉された処理槽内に導入されたアルコール類の蒸気がトレンチ内に進入した状態、(b)は、処理槽内に送り込まれた処理液がトレンチ内のアルコール類と混ざり合いながらトレンチ内に進入する状態、(c)は、処理槽内から処理液が排液され、槽内の減圧によりトレンチの入口近傍の処理液がアルコール類と共に蒸発を開始した状態、(d)から(f)は、トレンチ内の処理液の蒸発が徐々に進行している状態を示している。
【図11】本発明の第3の実施形態の洗浄処理方法の工程図である。
【図12】本発明の第3の実施形態の処理プロセスの手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3の実施形態の処理方法においてアルコール類と処理液とが混ざり合ってトレンチ内に進入する様子を示す拡大断面図である。(a)は、密閉された処理槽内に導入されたアルコール類の蒸気が基板の表面に凝縮した状態、(b)は、液面が上昇する処理液が、基板表面の凝縮したアルコール類と混ざり合う状態、(c)は、アルコール類と処理液との溶解の際に起こる運動エネルギーにより、トレンチの入口を塞ぐアルコール類の表面張力が打ち破られて、アルコール類と混ざり合って処理液がトレンチ内への進入を開始した直後の状態、(d)は、アルコール類と混ざり合った処理液のトレンチ内への進入が更に進行した状態、(e)はアルコール類と混ざり合った処理液がトレンチ内の奥まで進入し、該トレンチ内が処理液により完全に満たされた状態を示している。
【符号の説明】
【0172】
1:処理槽
2:給水ライン
3:排水ライン
4:オーバーフローライン
5:吸引ライン
6:ガスライン
7:蒸気導入ライン
8:給・排水口
11:薬液供給ユニット
12:純水供給ユニット
15:真空吸引ユニット
16:密閉蓋
17:吸引口
18:ガス供給口
19:ガス供給ユニット
20:オーバーフロー口
24:蒸気導入口
44,56:液接触工程
45,57:液供給工程
46,58:液蒸発工程
M:薬液(処理液)
N:純水(処理液)
X:アルコール類
W:基板(被処理媒体)
W−1:窪み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理方法であって、
窪みを有する基板にアルコールを提供するアルコール提供工程と、
該基板に更に処理液を提供し、該窪み内に該処理液を進入させる処理液提供工程と、
該窪みに入っている該アルコール及び該処理液の少なくとも一部を蒸発させる蒸発工程と、
を含み、前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程を含むサイクルを複数回にわたって繰り返して実施することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
処理対象の基板を密閉された処理槽内に配置して、前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程を実施することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記処理液提供工程の後であって前記蒸発工程の前に、該処理液を前記処理槽から排出する排出工程を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記処理液提供工程では、該基板が収容されている処理槽において該処理液の液面が該基板の面を横切って上昇するように、前記処理槽に該処理液を供給することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記処理液提供工程では、該処理液の液面が0.001〜1.0m/sの速度で上昇するように該処理液を前記処理槽に供給することを特徴とする請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程を大気圧以下の圧力下で実施することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
処理された基板を前記処理槽から取り出す前に、該基板に保護膜を形成する保護膜形成工程を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記保護膜は、純水からなることを特徴とする請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
基板処理装置であって、
窪みを有する基板を収容する密閉可能な処理槽と、
前記処理槽内の該基板にアルコールを供給するアルコール供給機構と、
前記処理槽内の該基板に処理液を供給する処理液供給機構と、
前記処理槽内の該処理液を前記処理槽外に排出する排出機構と、
前記処理槽内を減圧して該窪みに入っている該アルコール及び該処理液の少なくとも一部を蒸発させる圧力制御機構と、
を備え、前記アルコール供給機構による該アルコールの供給、前記処理液供給機構により該処理液の供給、前記排出機構による該処理液の排出及び前記圧力制御機構による減圧を含むサイクルが複数回にわたって繰り返されるように、前記アルコール供給機構、前記処理液供給機構、前記排出機構及び前記圧力制御機構が動作することを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
前記処理液供給機構は、前記処理槽内において該処理液の液面が該基板の面を横切って上昇するように、前記処理槽に該処理液を供給することを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記処理液供給機構は、該処理液の液面が0.001〜1.0m/sの速度で上昇するように該処理液を前記処理槽に供給することを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項1】
基板処理方法であって、
窪みを有する基板にアルコールを提供するアルコール提供工程と、
該基板に更に処理液を提供し、該窪み内に該処理液を進入させる処理液提供工程と、
該窪みに入っている該アルコール及び該処理液の少なくとも一部を蒸発させる蒸発工程と、
を含み、前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程を含むサイクルを複数回にわたって繰り返して実施することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
処理対象の基板を密閉された処理槽内に配置して、前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程を実施することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記処理液提供工程の後であって前記蒸発工程の前に、該処理液を前記処理槽から排出する排出工程を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記処理液提供工程では、該基板が収容されている処理槽において該処理液の液面が該基板の面を横切って上昇するように、前記処理槽に該処理液を供給することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記処理液提供工程では、該処理液の液面が0.001〜1.0m/sの速度で上昇するように該処理液を前記処理槽に供給することを特徴とする請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記アルコール提供工程、前記処理液提供工程及び前記蒸発工程を大気圧以下の圧力下で実施することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
処理された基板を前記処理槽から取り出す前に、該基板に保護膜を形成する保護膜形成工程を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記保護膜は、純水からなることを特徴とする請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
基板処理装置であって、
窪みを有する基板を収容する密閉可能な処理槽と、
前記処理槽内の該基板にアルコールを供給するアルコール供給機構と、
前記処理槽内の該基板に処理液を供給する処理液供給機構と、
前記処理槽内の該処理液を前記処理槽外に排出する排出機構と、
前記処理槽内を減圧して該窪みに入っている該アルコール及び該処理液の少なくとも一部を蒸発させる圧力制御機構と、
を備え、前記アルコール供給機構による該アルコールの供給、前記処理液供給機構により該処理液の供給、前記排出機構による該処理液の排出及び前記圧力制御機構による減圧を含むサイクルが複数回にわたって繰り返されるように、前記アルコール供給機構、前記処理液供給機構、前記排出機構及び前記圧力制御機構が動作することを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
前記処理液供給機構は、前記処理槽内において該処理液の液面が該基板の面を横切って上昇するように、前記処理槽に該処理液を供給することを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記処理液供給機構は、該処理液の液面が0.001〜1.0m/sの速度で上昇するように該処理液を前記処理槽に供給することを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−93740(P2006−93740A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359478(P2005−359478)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【分割の表示】特願2003−169819(P2003−169819)の分割
【原出願日】平成15年6月13日(2003.6.13)
【出願人】(592073938)株式会社ケミカルアートテクノロジー (4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【分割の表示】特願2003−169819(P2003−169819)の分割
【原出願日】平成15年6月13日(2003.6.13)
【出願人】(592073938)株式会社ケミカルアートテクノロジー (4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
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