説明

基板処理方法及び基板処理装置

【課題】希少金属を高純度で回収、再生することを可能とした基板処理方法及び基板処理
装置を提供する。
【解決手段】2枚のガラス基板を貼り合せて形成されている液晶パネルを処理して、該両
基板、及び該両基板の対向面に積層されている薄膜から金属を回収する基板処理方法にお
いて、表示パネルに対し、両基板の対向面に平行な方向へ相対移動させる外力を印加して
、該両基板を分離させる基板分離処理工程と、分離された基板から金属を回収する金属回
収処理工程と、を備え、金属回収処理工程は、金属を溶解させる金属溶解溶液を、耐薬品
性を有する液体保持部材に含浸させ、金属溶解溶液を含浸した液体保持部材を両基板の対
向面に接触させて金属を溶解させる金属溶解工程S1を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般廃棄物や産業廃棄物の量が増加の一途を辿っており、廃棄量の増加の抑制や
、廃棄物による環境の悪化を抑制するための無害化に対する要請が高まっている。
例えば、家電製品や情報機器等の表示部に用いられている液晶パネルは、省電力、省ス
ペースという利点から今後も急速に使用量が増大することが予想され、それに伴う廃棄量
の増大を抑えるためのリサイクル技術の確立は非常に重要である。
【0003】
一般的に液晶パネルは、2枚のガラス基板をそれらの間に枠状のシール材を介在させて
貼り合わせ、シール材の内側に液晶を封入した構成となっている。ガラス基板の内側(液
晶側)には、インジウムすず酸化物(Indium Tin Oxide,以下「TIO」と略記する。)
等の透光性導電材料からなる電極や、着色した樹脂材料からなるカラーフィルタ等が設け
られており、ガラス基板の間に封入された液晶は、有機物を主成分とするものである。一
方、ガラス基板の外側には、樹脂フィルムからなる偏光板や位相差板が設けられている。
【0004】
液晶パネルのカラーフィルタ基板には反射防止として金属クロムが使用されている。ま
た、透明電極には希少金属とされるインジウムが使用されている。クロムやインジウム等
の有用金属を回収して再利用することによって省資源化を図る必要がある。
【0005】
上述した構成を備える液晶パネルからクロムやインジウム等の希少金属を回収する方法
の提案が既に成されている。例えば、下記特許文献1に記載の技術は、切断したガラス基
板上に研磨材を吹き付けたり、研磨材に少量の水を供給しながら吹き付けることによって
、ガラス基板上に形成されている膜を機械的に剥離してクロムやインジウム等の希少金属
を回収するものである。
【0006】
また、下記特許文献2に記載の技術は、液晶パネルを燃焼させて有機物を除去した後、
燃え残ったガラス基板を破砕し、破砕された破砕物をボールミル内に入れて激しく振動さ
せることによって、破砕物とされたガラス基板から薄膜を機械的に除去して金属を回収す
るものである。
【特許文献1】特開2001−305502号公報
【特許文献2】特開2001−296508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献のように、ガラス基板から機械的に薄膜を除去する方法で
は、薄膜だけを剥離するのは非常に困難で、薄膜と同時にガラス基板の一部や薄膜以外の
部分も研磨されてしまう虞がある。そのため、希少金属の回収率が低下し、再利用可能な
濃度にするまでに複数の処理工程を要することになる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、希少金属を高純度で回
収、再生することを可能とした基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板処理方法は、上記課題を解決するために、基板に積層されている薄膜から
金属を回収する基板処理方法において、基板から金属を回収する金属回収処理工程は、金
属を溶解可能な溶媒を、溶媒に対する耐性を有する溶媒保持部材に含浸させ、溶媒を含浸
させた溶媒保持部材を基板に接触させて金属を溶解させる金属溶解工程を有することを特
徴とする。
【0010】
本発明の基板処理方法によれば、溶媒を含浸した溶媒保持部材を基板(薄膜が形成され
た面)に接触させることにより、金属が溶媒に反応して溶解することになる。このように
、溶媒保持部材に溶媒を含浸させることによって、高濃度且つ少ない量の溶媒で金属を溶
解させることができる。また、溶媒は金属のみに反応することから、ガラス基板等にダメ
ージを与えることなく高純度の金属を回収することが可能となる。したがって、金属のリ
サイクルが容易なものとなる。
【0011】
また、基板は表示パネルを構成する基板であり、該表示パネルは2枚の基板を貼り合せ
て形成されており、金属回収処理工程の前に、表示パネルの2枚の基板を分離させる基板
分離処理工程を含むことも好ましい。
このような方法によれば、貼り合わされている2枚の基板を直線方向へ応対移動させる
ことで分離させるようにしたので、この両基板に曲げ方向への応力が発生せず、両基板が
完全に分離される前に破断されてしまうようなことがない。
【0012】
また、金属溶解工程において、溶媒保持部材は、溶解した金属を保持可能であることも
好ましい。
このような方法によれば、溶媒保持部材によって金属を容易に回収することができる。
本発明においては溶媒保持部材単体で金属を溶解させると同時に回収することができるの
で効率良い。
【0013】
また、金属回収処理工程において、溶解した金属を含有した溶媒保持部材を乾燥させる
乾燥工程と、乾燥した溶媒保持部材を燃焼させる燃焼工程と、を有することも好ましい。
このような方法によれば、溶解した金属を含有した溶媒保持部材を乾燥させることによ
って、水分が蒸発して溶媒保持部材には金属が残留することになる。金属を有する溶媒保
持部材を燃焼させることによって、溶媒保持部材は燃えてなくなるので金属のみが燃え残
ることになる。これにより、高純度の金属を簡単且つ容易に回収することができるので、
金属の回収効率を向上させることができる。
【0014】
また、金属回収処理工程において、溶媒保持部材から、溶解した金属を含む溶媒を回収
する溶液回収工程と、溶媒から金属を分離する金属分離工程と、を有することも好ましい

このような方法によれば、溶媒保持部材から溶解した金属を含む溶媒を回収して所定時
間放置するなどして、金属と溶媒とを分離させる。このようにして溶媒から分離した金属
を回収することによって、高純度の金属を得ることができる。よって、効率的且つ経済的
に金属の回収及びリサイクルすることが可能となる。
【0015】
また、金属溶解工程において、溶媒保持部材を、基板に押圧することも好ましい。
このような方法によれば、溶媒を含浸した溶媒保持部材を基板に押圧することによって
、基板上に凹凸があったとしても基板に対して良好に溶媒保持部材を接触させることがで
きる。また、溶媒保持部材を押圧することによって溶媒が滲み出し、溶媒保持部材が接触
できない基板上の凹凸の隙間等に溶媒が入り込むことになる。これにより、金属の溶解速
度を速めることが可能となる。よって、処理能力が向上するので、短時間で高純度の金属
を回収することができる。
【0016】
また、金属溶解工程において、溶媒を加熱することも好ましい。
このような方法によれば、溶媒を加熱することによって、金属の溶解速度をより速める
ことが可能となる。これにより、処理能力が向上し、短時間で高純度の金属を回収するこ
とができる。
【0017】
また、金属回収処理工程では、複数枚の基板を一括で処理することも好ましい。
このような方法によれば、複数枚の基板を一括で処理することから、溶媒を含浸した溶
媒保持部材を取り替える回数を減らすことができるとともに、溶媒の使用量を削減するこ
とができる。これにより、処理効率が向上して、より経済的に高純度の金属を回収するこ
とができる。
【0018】
本発明の基板に積層されている薄膜から金属を回収する基板処理装置において、基板か
ら金属を回収する金属回収処理装置は、金属を溶解可能な溶媒を、溶媒に対する耐性を有
する溶媒保持部材に含浸させ、溶媒を含浸させた溶媒保持部材を基板に接触させて金属を
溶解させる金属溶解装置と、溶解した金属を含有した溶媒保持部材を乾燥させる乾燥装置
と、乾燥した溶媒保持部材を燃焼させる燃焼装置と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の基板処理装置における金属回収処理装置によれば、金属溶解装置により媒保持
部材を基板に接触させて金属を溶解させ、溶解した金属を含有した溶媒保持部材を乾燥装
置により乾燥させることによって、水分が蒸発して溶媒保持部材には金属が残留すること
になる。さらに、金属を有する溶媒保持部材を燃焼装置により燃焼させることによって、
溶媒保持部材は燃えてなくなるので金属のみが燃え残ることになる。よって、一連の作業
を各装置により連続して行うことが可能となり作業効率が向上する。これにより、高純度
の金属を簡単且つ容易に回収することができるので、金属の回収効率を向上させることが
できる。
【0020】
本発明の基板に積層されている薄膜から金属を回収する基板処理装置において、基板か
ら金属を回収する金属回収処理装置は、金属を溶解可能な溶媒を、溶媒に対する耐性を有
する溶媒保持部材に含浸させ、溶媒を含浸させた溶媒保持部材を基板に接触させて金属を
溶解させる金属溶解装置と、溶媒保持部材から、溶解した金属を含む溶媒を回収する溶液
回収装置と、溶媒から金属を分離する金属分離装置と、を有することを特徴とする。
【0021】
本発明の基板処理装置における金属回収処理装置によれば、金属溶解装置により媒保持
部材を基板に接触させて金属を溶解させ、溶解した金属を含有した溶媒保持部材から、溶
液回収装置により溶解した金属を含む溶媒を回収する。さらに、回収した溶媒から金属分
離装置により金属を分離することによって、金属と溶媒とを分離させる。このようにして
溶媒から分離した金属を回収することで高純度の金属を得ることができる。このように、
一連の作業を各装置により連続して行うことが可能となり作業効率が向上する。よって、
効率的且つ経済的に金属の回収及びリサイクルすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
[第1実施形態]
図1〜図4に本発明の第1実施形態を示す。図1は基板処理方法を示す工程図、図2は
廃液晶パネルとなる一般的な液晶パネルの縦断面図、図3は金属回収工程における処理内
容を示す工程図、図4は金属溶解工程を示す説明図である。なお、本実施形態では廃液晶
パネルの一例として液晶表示装置(LCD)に組み込まれている液晶パネルを示す。図8
は、図1に示す基板処理方法を行う基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【0023】
(液晶パネルの構成)
まず、図2を参照して一般的な液晶パネル10の構成について説明する。廃液晶パネル
となる液晶パネル10は、腕時計、携帯電話、情報端末機、テレビ受像機、プロジェクタ
等の表示装置付き製品の表示部に組み込まれている。以下、表示部に液晶パネルが組み込
まれている製品を液晶製品と称する。なお、この液晶製品には液晶パネル単体も含まれる

【0024】
液晶パネル10は、所定の間隔で対向配置された2枚のガラス基板1a,1bを有し、
この両ガラス基板1a,1bの対向面間がエポキシ樹脂等のシール材7を介して貼り合わ
されているとともに、両ガラス基板1a,1bの間隔がスペーサー8により維持されてい
る。
【0025】
一方のガラス基板1aの対向面にはカラーフィルタ3、インジウム錫酸化物(以下、「
ITO」と略す)等の透明導電性薄膜6が形成されたオーバーコート4、配向膜5が配設
されている。また、他方のガラス基板1bの対向面にも透明導電性薄膜(ITO膜)6と
配向膜5とが配設されている。さらに、両ガラス基板1a,1bとシール材7とで密閉さ
れた空間に有機溶媒からなる液晶9が充填されている。また、両ガラス基板1a,1bの
外面に偏光板2がそれぞれ粘着材により貼着されている。この偏光板2は、染色された偏
光フィルム(PVA:ポリビニルアルコール)の両面に保護フィルム(TAC:トリアセ
テート)が貼り合わされた三層構造をなしている。また、透明導電性薄膜6にはインジウ
ムを代表とする希少金属が含まれている。なお、符号111は、スイッチ素子で金属類を
素材としている。
【0026】
(基板処理方法)
図1に示すように、本実施形態に係る基板処理方法は、腕時計、携帯電話、パーソナル
コンピューターのモニタ、テレビ電話機、或いはプロジェクタ装置等の廃液晶製品を解体
して液晶パネル10を取り出す解体処理工程M1と、取り出した液晶パネル10から2枚
のガラス基板1a,1bを分離させるガラス基板分離処理工程M2と、分離された各ガラ
ス基板1a,1bを再資源化すべく、ガラス自体、及び各ガラス基板1a,1bに積層さ
れている薄膜から希少金属、貴金属等を回収する金属回収処理工程M3とを備えている。
【0027】
図1に示すガラス基板分離処理工程M2及び金属回収処理工程M3は、図8(a)に示
す基板処理装置30Aを用いて行われる。基板処理装置30Aは、基板分離装置31と、
金属溶解装置32、乾燥装置33、燃焼装置34を有する金属回収処理装置35とから構
成される。そして、ガラス基板分離処理工程M2は基板分離装置31を用いて行われる。
また、金属回収処理工程M3は金属回収処理装置35の金属溶解装置32、乾燥装置33
、燃焼装置34を用いて行われる。
【0028】
解体処理工程M1では、廃液晶製品を解体して、廃液晶パネル10を取り出すとともに
、金属、プラスチック、ガラス等の資源を回収する。なお、廃液晶パネル10とは別に回
収された資源は、図示しない処理工程において処理されて再資源化が図られる。
【0029】
ガラス基板分離処理工程M2では、廃液晶パネル10における互いに接合されている2
枚のガラス基板1a,1bを分離させる。例えば、基板分離装置31における一対のベル
トコンベア間に廃液晶パネル10を配置してこれらベルトコンベアを互いに逆回転させ、
両ガラス基板1a,1bの対向面に相対移動による平行な方向の引き裂き応力を発生させ
ることによって、両ガラス基板1a,1bを分離させるという方法を用いる。この方法に
よれば、ガラス基板1a,1bに対して曲げ方向への応力が発生せず、ガラス基板1a,
1bが完全に分離される前に破断してしまうことがない。そのため、この後行われる処理
をスムーズに行うことができる。なお、この方法に限らず、その他両ガラス基板1a,1
bを良好に分離させる手段であれば用いることができる。
【0030】
金属回収処理工程M3では、金属回収処理装置35により、分離された両ガラス基板1
a,1bを各々洗浄した後、両ガラス基板1a,1bから透明導電性薄膜6等の金属薄膜
を除去し、除去した金属薄膜から、この金属薄膜に含まれているインジウム等の希少金属
、及び貴金属を回収する。さらに、金属薄膜が除去されたガラス基板1a,1bを洗浄し
て、ガラス基板1a,1b自体も回収する。
【0031】
ガラス基板1a,1bから金属薄膜を除去する手段として、本実施形態においては、酸
性液等の溶媒を用いた化学的な手段を適用する。このとき、2枚のガラス基板1a,1b
は既に分離されており、従って、両ガラス基板1a,1bの、金属薄膜が積層されている
対向面が露呈されているため、廃液晶パネル10を粉砕或いは切断することなく、ガラス
基板1a,1bの表面から透明導電性薄膜6等の金属薄膜を容易に回収することができる

【0032】
以下、本実施形態の金属回収処理工程M3について詳しく説明する。
本実施形態の金属回収処理工程M3は、図3及び図4に示すように、希少金属を溶解可
能とする金属溶解溶液20(溶媒)を含んだ液体保持部材21(溶媒保持部材)を両ガラ
ス基板1a,1bの素子形成面11(対向面)に接触させて希少金属を溶解させる金属溶
解工程S1と、溶解した希少金属を含有した液体保持部材21を乾燥させる乾燥工程S2
と、乾燥した液体保持部材21を燃焼させる燃焼工程S3と、を有する。
【0033】
金属溶解工程S1では、図4(a)に示すように、金属溶解装置32の液体吸収率の良
好な構造をなす液体保持部材21に所望の希少金属(本実施形態においては例えばインジ
ウム22)を溶解可能とする金属溶解溶液20を含浸させて、ガラス基板1a,1bの素
子形成面11側に所定時間接触させる。液体保持部材21としては、耐薬品性(特に、耐
酸性)を有するろ紙やスポンジ等が挙げられ、ガラス基板1a,1bの素子形成面11全
域を被覆可能な大きさを有し、その全体に金属溶解溶液20を均等に保持することのでき
る部材を用いる。ろ紙の枚数やスポンジの厚み等は、素子形成面11に形成された全ての
希少金属(透明導電性薄膜6)を溶解可能とする溶液量を保持可能とするよう適宜設定さ
れる。
【0034】
金属溶解溶液20としては、透明導電性薄膜6が多結晶のインジウムティンオキサイド
(poly−ITO)からなる場合、硝酸、硝酸(HNO3)、塩酸(HCl)、塩化鉄
−塩酸(FeCl2−HCl)、亜鉛−塩酸(Zn−HCl)等が挙げられ、さらに希塩
酸や濃硫酸、或いはこれらの混合液であってもよい。
【0035】
透明導電性薄膜6が非結晶のアモルファスインジウムティンオキサイド(a−ITO)
からなる場合には、シュウ酸(C2H2O4)、酢酸(CH3COOH)、及びその混合
液等が挙げられる。
【0036】
近年においては、透明導電性薄膜6を構成する材料として、poly−ITOから有機
酸等の弱酸による剥離が可能なa−ITOに移行する傾向にある。弱酸はインジウムのみ
に作用するため、例えば、モリブデン(Mo)合金やアルミニウム(Al)合金からなる
画像信号線、ゲート配線等にダメージを与えることなくインジウムを溶解させることが可
能となる。そのため、金属溶解溶液20として弱酸性の溶液を用いれば、他の干渉成分を
抑えることができてインジウム22の回収に有利である。
【0037】
このように、金属溶解溶液20として用いる溶液を、回収したい金属の種類に応じて変
えることによって、所望とする金属のみを反応(溶解)させることができる。
【0038】
金属溶解溶液20を含浸した液体保持部材21をガラス基板1a,1bの素子形成面1
1に接触させておく時間は、金属溶解溶液20やインジウム22等の条件により適宜設定
されるものとする。また、金属溶解溶液20を含浸した液体保持部材21をガラス基板1
a,1bの素子形成面11に接触させておく間、押圧装置等を用いてガラス基板1a,1
bに液体保持部材21を押圧させるとともに、ヒーター等の加熱装置等を用いて熱を加え
る。こうすることによって、金属溶解溶液20によるインジウム22の溶解速度を速める
ことができるので、処理能力が向上する。
【0039】
液体保持部材21に保持されている金属溶解溶液20は、上記のように溶解したインジ
ウム22を含むことになる。このように、ガラス基板1a,1b上のインジウム22を液
体保持部材21内に回収した後、インジウム22のみを回収する(図4(b)参照)。こ
こで、溶解したインジウム22を含む金属溶解溶液20を金属溶解溶液20’とする。
【0040】
乾燥工程S2では、インジウム22を含む金属溶解溶液20’を保持している液体保持
部材21を乾燥装置33により乾燥させて水分を充分に蒸発させる。すると、液体保持部
材21にはインジウム22のみが残留することになる。
【0041】
燃焼工程S3では、インジウム22を有した液体保持部材21を図8(a)に示す燃焼
装置34により燃焼させる。すると、ろ紙やスポンジ等からなる液体保持部材21は加熱
分解されてインジウム22のみが燃え残ることになる。このようにしてインジウム22の
みが回収される。液体保持部材21を燃焼させることにより、有機物が完全に分解除去さ
れるので高純度のインジウム22を回収することができる。
【0042】
[第2実施形態]
本実施形態の液体パネル処理方法は、上記実施形態と基本構成を同様とする液晶装置を
用いた液体パネルの処理方法であって、解体処理工程M1、ガラス基板分離処理工程M2
は同様の処理を行い、金属回収処理工程M3にて異なる処理を行なうものである。そのた
め、以下の説明においては金属回収処理工程M3のみを説明する。
【0043】
図1に示すガラス基板分離処理工程M2及び金属回収処理工程M3は、図8(b)に示
す基板処理装置30Bを用いて行われる。基板処理装置30Bは、基板分離装置31と、
金属溶解装置32、溶液回収装置36、金属分離装置37を有する金属回収処理装置38
とから構成される。
【0044】
図5は第2実施形態に係る基板処理方法を示す工程図、図6は溶液回収工程における処
理内容を示す説明図、図7は第2実施形態に係る金属分離工程を示す説明図である。
【0045】
本実施形態の金属回収処理工程M3は、図5及び図6に示すように、希少金属を溶解可
能とする金属溶解溶液20を含んだ液体保持部材21を両ガラス基板1a,1bの対向面
に接触させて希少金属を溶解させる金属溶解工程S1と、液体保持部材21から、溶解し
た希少金属を含む金属溶解溶液20’を回収する溶液回収工程S2’と、回収した金属溶
解溶液20’から希少金属を分離する金属分離工程S3’と、を有する。
【0046】
金属溶解工程S1では、上記第1実施形態同様、ろ紙やスポンジ等からなる液体保持部
材21に所望の希少金属(インジウム22)を溶解可能とする弱酸性の金属溶解溶液20
を含浸させて、ガラス基板1a,1bの素子形成面11に所定時間接触させる。すると、
素子形成面11上のインジウム22が充分に溶解して、金属溶解溶液20とともに液体保
持部材21に保持される。
【0047】
溶液回収工程S2’では、インジウム22を含む金属溶解溶液20’を液体保持部材2
1から回収するべく、図6に示すように、液体保持部材21を例えば溶液回収装置36の
一対のローラーで挟み込み、インジウム22が溶け込んだ金属溶解溶液20’を絞り出す
。このようにして、液体保持部材21から金属溶解溶液20’を回収容器23に回収する

【0048】
金属分離工程S3’では、回収したインジウム22を含む金属溶解溶液20’を図8(
b)に示した金属分離装置37にて減圧下で蒸留する等して金属溶解溶液20を分離除去
する。金属溶解溶液20が除去されると、回収容器23内にはインジウム22のみが残留
することになる。こうすることで高純度のインジウム22を回収することができる。
【0049】
また、図7に示すように、金属溶解溶液20とインジウム22との比重の違いを利用し
て分離させても良い。液体保持部材21から回収した金属溶解溶液20’を所定時間放置
しておくと、回収容器23の底部に溶解したインジウム22が金属溶解溶液20と分離し
て沈殿することになる。このように、比重分離など、種々の物理的分離によって金属溶解
溶液20に溶け込んだ希少金属を分離回収してもよい。
【0050】
なお、上記実施形態における金属溶解工程S1では、複数枚のガラス基板の処理を行な
うようにしてもよい。この場合、処理枚数に応じて金属溶解溶液20及び液体保持部材2
1の諸条件を設定するようにして、インジウム22の溶解を良好に行なえるようにする。
これにより、インジウム22を含む金属溶解溶液20’を含浸した液体保持部材21を取
り替える回数を減らすことができるとともに、金属溶解溶液20’の使用量を削減するこ
とができる。これにより、処理効率が向上して、より経済的に高純度の金属を回収するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る廃液晶パネルとなる一般的な液晶パネルの縦断面図で ある。
【図3】第1実施形態に係る金属回収工程における処理内容を示す工程図である。
【図4】金属溶解工程を示す説明図である。
【図5】第2実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【図6】溶液回収工程における処理内容を示す説明図である。
【図7】第2実施形態に係る金属分離工程を示す説明図である。
【図8】本実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
10…液晶パネル、20…金属溶解溶液、20’…金属溶解溶液(インジウムを含む)、
21…液体保持部材、22…インジウム(希少金属)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に積層されている薄膜から金属を回収する基板処理方法において、
前記基板から前記金属を回収する金属回収処理工程は、前記金属を溶解可能な溶媒を
、前記溶媒に対する耐性を有する溶媒保持部材に含浸させ、前記溶媒を含浸させた前記溶
媒保持部材を前記基板に接触させて金属を溶解させる金属溶解工程を有することを特徴と
する基板処理方法。
【請求項2】
前記基板は表示パネルを構成する基板であり、該表示パネルは2枚の基板を貼り合せ
て形成されており、
前記金属回収処理工程の前に、前記表示パネルの前記2枚の基板を分離させる基板分
離処理工程を含むことを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記金属溶解工程において、
前記溶媒保持部材は、溶解した前記金属を保持可能であることを特徴とする請求項1
または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記金属回収処理工程において、
溶解した前記金属を含有した前記溶媒保持部材を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥した前記溶媒保持部材を燃焼させる燃焼工程と、を有することを特徴とする請求
項1乃至3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記金属回収処理工程において、
前記溶媒保持部材から、溶解した金属を含む前記溶媒を回収する溶液回収工程と、
前記溶媒から前記金属を分離する金属分離工程と、を有することを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記金属溶解工程において、
前記溶媒保持部材を、前記基板に押圧することを特徴とする請求項1乃至5のいずれ
か一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記金属溶解工程において、
前記溶媒を加熱することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基板処
理方法。
【請求項8】
前記金属回収処理工程では、複数枚の前記基板を一括で処理することを特徴とする請
求項1乃至7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
基板に積層されている薄膜から金属を回収する基板処理装置において、
前記基板から前記金属を回収する金属回収処理装置は、
前記金属を溶解可能な溶媒を、前記溶媒に対する耐性を有する溶媒保持部材に含浸さ
せ、前記溶媒を含浸させた前記溶媒保持部材を前記基板に接触させて金属を溶解させる金
属溶解装置と、
溶解した前記金属を含有した前記溶媒保持部材を乾燥させる乾燥装置と、
乾燥した前記溶媒保持部材を燃焼させる燃焼装置と、を有することを特徴とする基板
処理装置。
【請求項10】
基板に積層されている薄膜から金属を回収する基板処理装置において、
前記基板から前記金属を回収する金属回収処理装置は、
前記金属を溶解可能な溶媒を、前記溶媒に対する耐性を有する溶媒保持部材に含浸さ
せ、前記溶媒を含浸させた前記溶媒保持部材を前記基板に接触させて金属を溶解させる金
属溶解装置と、
前記溶媒保持部材から、溶解した金属を含む前記溶媒を回収する溶液回収装置と、
前記溶媒から前記金属を分離する金属分離装置と、を有することを特徴とする基板処理
装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−138272(P2008−138272A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327883(P2006−327883)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】