説明

基板型アンテナ

【課題】簡単な構成で高利得化および高帯域化を実現することができるようにした基板型アンテナを提供する
【解決手段】誘電体からなる基板1の一方の基板面2に、一箇所を分断したループ状の第一の結合部パターン3を形成し、この第一の結合部パターン3の分断した位置の両端部端子にそれぞれアンテナ5を接続し、前記基板1の他方の基板面3に、第一結合部パターン3に対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第二の結合部パターン7を形成した基板型アンテナにおいて、前記基板の前記一方の基板面2に、前記第一結合部パターン3とほぼ同心的で、かつ、前記第二の結合部パターン7に対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第三の結合部パターン9と、この第三の結合部パターン9の分断した位置の両端部端子にそれぞれ他のアンテナ11を接続した構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型の基板上に構成した基板型アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の基板型アンテナとして、誘電体からなる基板と、この基板の第一基板面に形成されて一ヶ所で分断されているループ状の第一結合部パターンと、基板の第二の基板面に形成され、一ヶ所で分断されているループ状の第二結合部パターンとを有し、第一結合部パターンおよび第二結合部パターン間を静電容量結合および磁気誘導結合状態を形成した構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような構成によれば、従来のような同一平面上に形成した場合とは異なり、基板によるパターン間の静電容量結合および磁気誘導結合状態が大きく改善され、従来に比べて、広帯域で伝送特性に優れた高周波結合器を容易に得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−142666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の基板型アンテナでは、複数のアンテナを組み合わせて一層の利得向上を図ろうとすると、構成が複雑になってしまう。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成で高利得化および高帯域化を実現することができるようにした基板型アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、誘電体からなる基板の一方の基板面に、一箇所を分断したループ状の第一の結合部パターンを形成し、この第一の結合部パターンの分断した位置の両端部端子にそれぞれアンテナを接続し、前記基板の他方の基板面に、第一結合部パターンに対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第二の結合部パターンを形成した基板型アンテナにおいて、前記基板の前記一方の基板面に、前記第一結合部パターンとほぼ同心的で、かつ、前記第二の結合部パターンに対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第三の結合部パターンと、この第三の結合部パターンの分断した位置の両端部端子にそれぞれ他のアンテナを接続したことを特徴とする。
【0007】
この構成によって、他方の基板面に形成した第二の結合部パターンの給電点を共用しながら薄型の基板上に複数のアンテナを簡単に構成することができ、アンテナ単体では得られない高利得で広帯域化を実現することができる。
【0008】
また本発明は、上述の構成に加えて、前記基板の前記第二の結合部パターン側に他の基板を一体化して配置し、この他の基板における前記第二の結合部パターンと反対側の基板面に、前記第二の結合部パターンに対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第四の結合部パターンと、この第四の結合部パターンの分断した位置の両端部端子にさらに他のアンテナを接続したため、新たに一つのアンテナを追加することになり、合計三つのアンテナによって利得の合成を行うことができ、さらに一層細やかに高利得化および広帯域化を図ることができる。しかも、基板の他方の基板面に形成した給電点を共通にして3つのアンテナを構成することができ、全体の構成を簡略化することができる。
【0009】
さらに本発明は、上述の構成に加えて、前記基板の前記第二の結合部パターン側に他の基板を一体化して配置し、この他の基板における前記第二の結合部パターンと反対側の基板面に、前記第二の結合部パターンに対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第四の結合部パターンと、この第四の結合部パターンとほぼ同心的で、かつ前記第二結合部パターンに対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第五の結合部パターンと、前記第四の結合部パターンおよび前記第五の結合部パターンの分断した位置の両端部端子にそれぞれ異なるさらに他のアンテナを接続したため、新たに二つのアンテナを追加することになり、一層細やかに高利得化および広帯域化を図ることができる。しかも、基板の他の基板面に形成した給電点を共通にして4つのアンテナを構成することができ、全体の構成を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による基板型アンテナによれば、他方の基板面に形成した第二の結合部パターンの給電点を共用しながら薄型の基板上に複数のアンテナを簡単に構成することができ、アンテナ単体では得られない高利得で広帯域化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態による基板型アンテナの一方の基板面を示す平面図である。
【図2】図1の基板型アンテナの他方の基板面を示す平面図である。
【図3】図1に示した一方のアンテナの利得特性図である。
【図4】図1に示した他方のアンテナの利得特性図である。
【図5】図3および図4に示したアンテナの合成利得特性図である。
【図6】図1に示した一方のアンテナの他の利得特性図である。
【図7】図1に示した他方のアンテナの他の利得特性図である。
【図8】図6および図7に示したアンテナの合成利得特性図である。
【図9】本発明の他の実施の形態による基板型アンテナの側面図である。
【図10】図9に示した基板型アンテナにおける一方の基板の上面を示す平面図である。
【図11】図10に示した基板の底面図である。
【図12】図9に示した基板型アンテナにおける他方の基板の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1および図2は、本発明の一実施の形態による基板型アンテナの上面および下面を示すそれぞれ平面図である。
【0014】
誘電体からなる基板1の一方の基板面である上面2には、図1に示したように一箇所を分断したループ状の第一の結合部パターン3を形成し、この第一の結合部パターン3の分断した位置の両端部端子にそれぞれ電路4を介してダイポールアンテナ5を接続し、図2に示した基板1の他方面である下面6には、一箇所を分断したループ状の第二の結合部パターン7を形成しており、この第二の結合部パターン7の分断した端部に給電点8を形成している。
【0015】
また図1に示した基板1の上面2には、第一の結合部パターン3とほぼ同心的で、かつ、分断された位置を第一の結合部パターン3とほぼ合致させて一箇所を分断したループ状の第三の結合部パターン9と、この第三の結合部パターン9の分断した位置の両端部端子にそれぞれ電路10を介して接続した第二のダイポールアンテナ11とが形成されている。従って、ダイポールアンテナ5とダイポールアンテナ11とは並列に構成されている。
【0016】
ここで、下面6側に形成した第二の結合部パターン7は、上面2側に形成した第一の結合部パターン3および第三の結合部パターン9よりも幅広で形成され、内側縁は第一の結合部パターン3に沿って形成され、また外側縁は第三の結合部パターン9に沿って形成されている。
【0017】
基板1の上下面では、第一の結合部パターン3と第二の結合部パターン7が対向配置され、また第三の結合部パターン9と第二の結合部パターン7が対向配置されることになり、各対向部で静電容量結合および磁気誘導結合が形成されている。これら複数の結合によって両アンテナ5,11の利得を取り出すことができる構成となっている。
【0018】
図示の各結合部パターン3,7,9の形状は円環状としているが、それ以外に、楕円形、多角形、これらの組み合わせなどの各種の形状を採用することができる。また、基板1の上下面側では多少形状が異なっていても良い。さらには、基板1は一定厚さの平坦な基板としているが、これに限るものではない。
【0019】
次に、上述した基板型アンテナを用いての高利得化について説明する。
【0020】
ここで、基板1は図1の幅方向が100mm、高さ方向が20mmであり、第一の結合部パターン3は同幅方向が内径10mm、外径12mm、第三の結合部パターン9は同幅方向の内径が14mm、外径16mm、第二の結合部パターン7は図2における同幅方向の内径が 10mm、外径16mm、アンテナ5の同幅方向が34mm、高さ方向が5mm、アンテナ11の同幅方向が40mm、高さ方向が5mmとして構成している。
【0021】
このような構成において、アンテナ5単体での周波数利得特性曲線19を図3に示しており、アンテナ5の共振周波数を950MHzに調整したときの利得は約1.7dBである。一方、アンテナ11単体での周波数利得特性曲線20を図4に示しており、アンテナ11の共振周波数を950MHzに調整したときの利得は約1.0dBである。
【0022】
しかし、両アンテナ5,11の利得を第二の結合部パターン7の給電点8から50オームの特性インピーダンスで受け取れるように各結合部パターン3,7,9の大きさなどを設計すると、図5に示す周波数合成利得特性曲線21のように共振周波数は950MHzで約2.5dBの高利得が得られる。このような結果は、アンテナ5,11の結合部パターン3と9を一体化した場合には得られない。
【0023】
次に、上述した基板型アンテナを用いての広帯域化について説明する。
【0024】
図6はアンテナ5単体での周波数利得特性曲線22を示しており、アンテナ5の共振周波数を948MHzに調整したときの利得は約1.0dBである。一方、図7はアンテナ11単体での周波数利得特性曲線23を示しており、アンテナ11の共振周波数を956MHzに調整したときの利得は約0.7dBである。
【0025】
しかし、両アンテナ5,11の利得を第二の結合部パターン7の給電点8から50オームの特性インピーダンスで受け取れるように各結合部パターン3,7,9の大きさなどを設計すると、図8に示す周波数合成利得特性曲線24のように共振周波数は948〜956MHzの広帯域で約1.2dBの高利得が得られる。
【0026】
このように基板1の一方の基板面に、ほぼ同心的に二重の第一の結合部パターン3と第三の結合部パターン9を形成し、各結合部パターン3,9の分断部にそれぞれ異なるアンテナ5,11を接続したため、他方の基板面に形成した第二の結合部パターン7の給電点8を共用しながら薄型の基板1上に簡単に構成することができ、アンテナ単体では得られない高利得で広帯域化を実現することができる。
【0027】
図9は、本発明の他の実施の形態による基板型アンテナを示す側面図である。
【0028】
先の実施の形態の場合と同様に基板1の上面2と下面6には詳細を後述するパターンが形成され、さらに下面6側には新たに他の基板12を追加し、この基板12の下面13に新たなパターンを形成している。基板1の上面2には、図10に示すように図1に示した構成と全く同様に、ループ状の第一の結合部パターン3と、この第一の結合部パターン3とほぼ同心的な構成のループ状の第三の結合部パターン9と、アンテナ5,11が形成されている。また基板1の下面6には、図11に示すように図2に示した構成と全く同様にループ状の第二の結合部パターン7と給電点8が形成されている。
【0029】
これに対して、基板12の下面13には、図12に示すように一箇所を分断したループ状の第四の結合部パターン14と、この第四の結合部パターン14とほぼ同心的な構成でほぼ同箇所を分断したループ状の第五の結合部パターン15とがそれぞれ形成されている。第四の結合部パターン14および第五の結合部パターン15の両側には、並列型の2つのアンテナ16,17が構成されている。つまり、第四の結合部パターン14の両端部端子にそれぞれ電路18を介して接続したアンテナ16が接続され、また、同様に第五の結合部パターン15の両端部端子にそれぞれ電路19を介してアンテナ17が接続されている。
【0030】
このような基板1と基板12とを図9に示したように積層し、両基板1,12間を接着剤やその他の手段で一体化している。
【0031】
このとき、両アンテナ5,11については先の実施の形態の場合と同様に構成される他に、第四の結合部パターン14と第五の結合部パターン15間は基板12の下面13で対向配置され、対向部での静電容量結合および磁気誘導結合されている。また、回路基板12の上下面側では、第四の結合部パターン14と第二の結合部パターン7間が対向配置され、また第五の結合部パターン15と第二の結合部パターン7間が対向配置されることになり、これらの各対向部では静電容量結合および磁気誘導結合され、これら複数の結合によって両アンテナ16,17の利得を取り出すことができる。
【0032】
このような構成の基板型アンテナによれば、新たにアンテナ16,17を追加しているため、先の実施の形態の場合に比べて一層細やかに高利得化および広帯域化を図ることができる。しかも、先の実施の形態での構成を二重化しているが、基板1の下面6に給電点8を有する第二の結合部パターン7を構成し、かつ、この基板1の下方に配置した他の基板12の下面13には第四の結合部パターン14と第五の結合部パターン15を形成しているため、給電点8を共通にして4つのアンテナ5,11,16,17を構成することができ、全体の構成を簡略化することができる。
【0033】
また、本発明のさらに他の実施の形態として、図12に示した基板12の下面13は他の異なる構成とすることもできる。例えば、第四の結合部パターン14および第五の結合部パターン15のいずれか一方とし、これに合わせてアンテナ16およびアンテナ17のいずれか一方とすることもできる。
【0034】
このような構成の基板型アンテナによれば、新たに一つのアンテナを追加することになり、合計三つのアンテナによって利得の合成を行うことができ、図1に示した実施の形態の場合に比べて一層細やかに高利得化および広帯域化を図ることができる。しかも、基板1の下面6に給電点8を有する第二の結合部パターン7を構成し、かつ、この基板1の下方に配置した他の基板12の下面13には第四の結合部パターン14または第五の結合部パターン15を形成するため、給電点8を共通にして3つのアンテナを構成することができ、全体の構成を簡略化することができる。
【0035】
なお、上記実施の形態では、上面のアンテナパターンの本数及び下面13のアンテナの本数を左右2本に限定したが、アンテナの本数は、結合部パターン7に全てが対向配置できれば本数の制限はない。
【符号の説明】
【0036】
1 回路基板
2 上面
3 結合部パターン
4 電路
5 アンテナ
6 下面
7 結合部パターン
8 給電点
9 結合部パターン
10 電路
11 アンテナ
12 回路基板
13 下面
14 結合部パターン
15 結合部パターン
16 アンテナ
17 アンテナ
18 電路
19 電路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体からなる基板の一方の基板面に、一箇所を分断したループ状の第一の結合部パターンを形成し、この第一の結合部パターンの分断した位置の両端部端子にそれぞれアンテナを接続し、前記基板の他方の基板面に、第一結合部パターンに対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第二の結合部パターンを形成した基板型アンテナにおいて、前記基板の前記一方の基板面に、少なくとも前記第一結合部パターンとほぼ同心的で、かつ、前記第二の結合部パターンに対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第三の結合部パターンと、この第三の結合部パターンの分断した位置の両端部端子にそれぞれ他のアンテナを接続したことを特徴とする基板型アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載の基板型アンテナにおいて、前記基板の前記第二の結合部パターン側に他の基板を一体化して配置し、この他の基板における前記第二の結合部パターンと反対側の基板面に、少なくとも前記第二の結合部パターンに対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第四の結合部パターンと、この第四の結合部パターンの分断した位置の両端部端子にさらに他のアンテナを接続したことを特徴とする基板型アンテナ。
【請求項3】
請求項1に記載の基板型アンテナにおいて、前記基板の前記第二の結合部パターン側に他の基板を一体化して配置し、この他の基板における前記第二の結合部パターンと反対側の基板面に、少なくとも前記第二の結合部パターンに対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第四の結合部パターンと、この第四の結合部パターンとほぼ同心的で、かつ前記第二結合部パターンに対応する位置に形成されて一箇所を分断したループ状の第五の結合部パターンと、前記第四の結合部パターンおよび前記第五の結合部パターンの分断した位置の両端部端子にそれぞれ異なるさらに他のアンテナを接続したことを特徴とする基板型アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−4812(P2012−4812A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137468(P2010−137468)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000227043)日精株式会社 (68)
【出願人】(504327340)株式会社フェイバライツ (5)
【Fターム(参考)】