説明

基板洗浄ブラシ及びその装置

【課題】 ブラシの回転力により洗浄液を引き込んで洗浄し、同時に洗浄後の洗浄液を引き出す基板洗浄ブラシとその装置を提供する。
【解決手段】 基板洗浄ブラシ1は、円形の台座2にブラシの毛が植毛されて成り、ブラシの毛は、円形の台座2の円周から中心方向へ向けて弧を描き、且つ左右対称になるように植毛されて配列され、洗浄液が、基板洗浄ブラシ1の回転方向に応じてブラシに流入し、且つブラシから流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程において、各種基板の洗浄を行う基板洗浄ブラシに係り、詳しくは、ブラシの回転力により洗浄液を引き込み且つ引き出す基板洗浄ブラシとその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の基板洗浄ブラシの植毛の配列と、使用例を示す模式図である。図4−bにおいて、ブラシの毛の植毛の単位3が、円形の台座2に同心円状に配列されて植毛されている。図4−bにおいて、基板4上の洗浄液5は、基板4が左から右へ搬送されることにより、一緒に左から右へ移動している。基板洗浄ブラシ10は、基板4に接触して右回りに回転している。
【0003】
基板4と共に移動している洗浄液5は、基板4に接触しているブラシの毛の間と、植毛の単位3の配列間隔に浸透しようとするが、基板洗浄ブラシ10の回転力により遠心力が働き、浸透することが困難となる。そのため洗浄液5は、基板洗浄ブラシ10と基板4との接触部に効率よく供給されなかった。また基板4から離れた異物の一部は、洗浄液5の流れにより基板洗浄ブラシ10の外へ排出されることができず、ブラシに再付着していた。さらに洗浄液5は、基板洗浄ブラシ1の遠心力の影響で、図面左側の上流の液量に対し、図面右側の下流の液量が少ないため、基板4から離れた異物の一部は、洗浄液5と共に基板4上に滞留して再付着し、次の工程に持ち込まれていた。ブラシへの異物の再付着は、時間と共に付着量が累積され、基板4への再付着が増加する原因となる。そのため基板洗浄ブラシ10を定期的に取り外して洗浄する必要があり、メンテナンス上でも問題があった。特許文献1には、ブラシ本体の内側から流体を供給し、その流体でブラシ本体を回転させるとともに、ブラシ本体に形成された流体通路から外表面に排出する洗浄用ブラシに関する記載がされている。
【特許文献1】特開2001−104052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ブラシの回転力により洗浄液を引き込んで洗浄し、同時に洗浄後の洗浄液を引き出す基板洗浄ブラシとその装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の基板洗浄ブラシは、製造工程において、各種基板の洗浄を行う基板洗浄ブラシであって、前記基板洗浄ブラシは、円形の台座にブラシの毛が植毛されて成り、前記ブラシの毛は、前記円形の台座の円周から中心方向へ向けて弧を描き、且つ左右対称になるように植毛されて配列され、前記左右対称になるように植毛されて配列された一方の前記ブラシの毛が、前記基板洗浄ブラシの回転方向の回転力に応じて、洗浄液を前記円形の台座の中心方向に向けて流入するように求心力を生じ、さらに、前記左右対称になるように植毛されて配列されたもう一方の前記ブラシの毛が、前記基板洗浄ブラシの前記回転方向の回転力に応じて、前記洗浄液を前記円形の台座の円周方向に向けて流出するように遠心力を生じ、前記洗浄液が、前記基板洗浄ブラシの前記回転方向に応じて流入し、且つ流出することを特徴とする。
【0006】
本発明の基板洗浄ブラシの前記円形の台座の中心部は、前記ブラシの毛が植毛されず、前記洗浄液の洗浄液一時溜り部を形成することを特徴とする。
【0007】
本発明の基板洗浄ブラシにおいて、前記円形の台座の円周から中心方向へ向けて弧を描き、且つ左右対称になるように植毛された前記ブラシの毛の配列により形成される前記洗浄液の水路部の幅が、等間隔か又は前記円周から前記中心に向けて次第に狭くなることを特徴とする。
【0008】
本発明の基板洗浄ブラシにおいて、前記円形の台座の円周から中心方向へ向けて弧を描き、且つ左右対称になるように植毛された前記ブラシの毛の配列は、植毛の単位が点状であって、連続して植毛されて形成されるか、又は植毛の単位が線状であって、連続して植毛されて形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の基板洗浄ブラシの前記ブラシの毛の材質が、ナイロンであることを特徴とする。
【0010】
本発明の基板洗浄装置は、前記基板洗浄ブラシを装着することを特徴とする。
【0011】
本発明の基板洗浄装置は、前記基板洗浄ブラシの回転速度は、300rpm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の基板洗浄ブラシ及びその装置によれば、異物のブラシ及び基板への再付着が防止され、ブラシの洗浄性能及び基板上のリンス性能が向上し、ブラシのメンテナンス負担を軽減することができると共に、ブラシの寿命が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明の基板洗浄ブラシの植毛の配列と、使用例を示す模式図である。図1−bにおいて、ブラシの毛の植毛の単位3が、円形の台座2の円周から中心方向へ向けて弧を描き、かつ左右対称となるように配列されて植毛されている。基板洗浄ブラシ1の円形の台座2の中心部は、ブラシの毛が植毛されず、洗浄液の洗浄液一時溜り部6を形成している。図4−bにおいて、基板4上の洗浄液5は、基板4が左から右へ搬送されることにより、一緒に左から右へ移動している。基板洗浄ブラシ1は、基板4に接触して右回りに回転している。
【0014】
基板4と共に移動している洗浄液5は、基板4に接触しているブラシの毛の間と、植毛の単位3の配列間隔に浸透しようとする。このとき洗浄液5には、基板洗浄ブラシ1の左側の植毛の配列と回転力とにより求心力が働き、中心部へ向けて流れ込む。この様子を流線8で示している。基板洗浄ブラシ1の左側の植毛の配列に沿って流入した洗浄液5は、洗浄液一時溜り部6で一時的に停流する。
【0015】
洗浄液一時溜り部6で一時的に停流している洗浄液5には、基板洗浄ブラシ1の右側の植毛の配列と回転力とにより遠心力が働き、円周へ向けて流れ出す。この様子を流線8で示している。この場合、基板洗浄ブラシ1の求心力と遠心力との影響で、図面左側の上流の液量、基板洗浄ブラシ1内の液量、および図面右側の下流の液量がほぼ等しくなる。したがって、基板4から離れた異物は、洗浄液5と共に下流へ流れ、基板洗浄ブラシ1及び基板4上に滞留して再付着することがない。
【0016】
図2は、本発明の基板洗浄ブラシの植毛の配列を示す植毛配列パターン図である。基板洗浄ブラシ1の植毛の配列は、円形の台座2の円周から中心方向へ向けて弧を描き、且つ左右対称になるように植毛されている。この植毛の配列は、植毛の単位3が点状であって、連続して植毛されて形成されるか、又は植毛の単位3が線状であって、連続して植毛されて形成される。また、円形の台座2の円周から中心方向へ向けて弧を描き、且つ左右対称になるように植毛された前記ブラシの毛の配列により形成される洗浄液の水路部7の幅は、等間隔か又は円周から前記中心に向けて次第に狭くなるように形成される。基板洗浄ブラシ1の円形の台座2の中心部は、ブラシの毛が植毛されず、洗浄液の洗浄液一時溜り部6が形成される。ブラシの毛の材質は、ナイロンであることが好ましい。
【0017】
図4において、従来の基板洗浄装置に装着された複数の基板洗浄ブラシ10の回転方向が同一であると、ブラシに取り込まれない上流側の多量の洗浄液5が、回転方向に沿って流れ出し、その力で基板4が搬送方向から外れるトラブルがあった。本発明の基板洗浄ブラシ1を装着した基板洗浄装置においては、図1の洗浄液5の液量が、上流、基板洗浄ブラシ1内、および下流においてほぼ等しいため、搬送方向から外れることがない。
【0018】
従来の基板洗浄装置は、このトラブルを避けるため、基板の搬送方向に垂直な方向の流れが発生しないよう、複数の基板洗浄ブラシ10の回転方向を変えて調節していた。このため基板洗浄ブラシ10の駆動系の制御が複雑となっていた。本発明の基板洗浄装置の基板洗浄ブラシ1の回転方向は同一方向でも良いため、駆動系の制御が簡単になる。
【0019】
図3は、本発明の基板洗浄装置と従来の基板洗浄装置との洗浄効果を比較した洗浄効果の比較図である。実線が本発明の基板洗浄装置、破線が従来の基板洗浄装置を示している。ブラシに対して、基板の搬送速度から生じる洗浄液の流速は、ブラシの回転速度が基板の搬送速度より極めて高速であるため無視され、洗浄効果は、ブラシの回転速度律速となる。従来の基板洗浄装置の洗浄効果は、ブラシの回転数を漸次上げていくと、緩やかな直線で上昇している。本発明の基板洗浄装置は、従来の基板洗浄装置に対し、広範囲にわたって洗浄効果が高く、且つある回転数でその効果が最大となることが分かる。この効果が最大となる基板洗浄ブラシ1の回転速度は、150〜200rpmであるため、使用においては、300rpm以下で使用することが好ましい。
【0020】
以上説明したように、本発明の基板洗浄ブラシ及びその装置によれば、異物のブラシ及び基板への再付着が防止され、ブラシの洗浄性能及び基板上のリンス性能が向上し、ブラシのメンテナンス負担を軽減することができると共に、ブラシの寿命が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による基板洗浄ブラシの植毛の配列と、使用例を示す模式図。
【図2】本発明による基板洗浄ブラシの植毛の配列を示す植毛配列パターン図。
【図3】本発明と従来の基板洗浄装置との洗浄効果を比較した洗浄効果の比較図。
【図4】従来の基板洗浄ブラシの植毛の配列と、使用例を示す模式図。
【符号の説明】
【0022】
1 基板洗浄ブラシ
2 円形の台座
3 ブラシの毛の植毛単位
4 基板
5 洗浄液
6 洗浄液一時溜り部
7 1つの水路部
8 水路部を流れる洗浄液の1つの流線
10 基板洗浄ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造工程において、各種基板の洗浄を行う基板洗浄ブラシであって、
前記基板洗浄ブラシは、円形の台座にブラシの毛が植毛されて成り、
前記ブラシの毛は、前記円形の台座の円周から中心方向へ向けて弧を描き、且つ左右対称になるように植毛されて配列され、
前記左右対称になるように植毛されて配列された一方の前記ブラシの毛が、前記基板洗浄ブラシの回転方向の回転力に応じて、洗浄液を前記円形の台座の中心方向に向けて流入するように求心力を生じ、
さらに、前記左右対称になるように植毛されて配列されたもう一方の前記ブラシの毛が、前記基板洗浄ブラシの前記回転方向の回転力に応じて、前記洗浄液を前記円形の台座の円周方向に向けて流出するように遠心力を生じ、
前記洗浄液が、前記基板洗浄ブラシの前記回転方向に応じて流入し、且つ流出することを特徴とする基板洗浄ブラシ。
【請求項2】
前記基板洗浄ブラシの前記円形の台座の中心部は、前記ブラシの毛が植毛されず、前記洗浄液の洗浄液一時溜り部を形成することを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄ブラシ。
【請求項3】
前記円形の台座の円周から中心方向へ向けて弧を描き、且つ左右対称になるように植毛された前記ブラシの毛の配列により形成される前記洗浄液の水路部の幅が、等間隔か又は前記円周から前記中心に向けて次第に狭くなることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板洗浄ブラシ。
【請求項4】
前記円形の台座の円周から中心方向へ向けて弧を描き、且つ左右対称になるように植毛された前記ブラシの毛の配列は、植毛の単位が点状であって、連続して植毛されて形成されるか、又は植毛の単位が線状であって、連続して植毛されて形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板洗浄ブラシ。
【請求項5】
前記ブラシの毛の材質が、ナイロンであることを特徴とする請求項1又は4のいずれかに記載の基板洗浄ブラシ。
【請求項6】
前記基板洗浄ブラシを装着することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項7】
前記基板洗浄ブラシの回転速度は、300rpm以下であることを特徴とする請求項6に記載の基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−54310(P2007−54310A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243336(P2005−243336)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】