説明

基板洗浄用治具

【課題】基板洗浄用治具を用いて電子部品が搭載された基板を回転式洗浄する場合に、基板両面の洗浄を可能としつつ回転中心からの距離に関係なく良好な洗浄品質を確保する。
【解決手段】一端側が洗浄液の入口11a、他端側が洗浄液の出口11bとされている貫通した開口部11を有するフレーム10を備え、開口部11の内面には、基板間に隙間を有しつつ基板の板面と直交する方向に沿って配列するように、複数個の基板200を取り付け、この基板取り付け状態で、洗浄液を入口11aから導入し開口部11内を流通させて出口11bから導出することにより、複数個の基板200を洗浄する基板洗浄用治具であって、開口部11内のうち隣り合う基板200間の隙間となる位置には、邪魔板20が設けられており、基板取り付け状態で、開口部11内にて、洗浄液を板材20と基板200との隙間にて流通させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が搭載された基板を洗浄するときに用いられる基板洗浄用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の基板洗浄は、両端が開口したフレームを有する治具に対して、当該治具の開口部内に基板を取り付けて固定し、この状態で、治具の開口部内に洗浄液を流通させることにより基板を洗浄する。
【0003】
ここで、一般には、基板洗浄用治具を回転式洗浄機に設置して洗浄を行う。つまり、当該治具は、洗浄液中を当該洗浄液の回転軸周りに回転することにより、洗浄液が開口部の入口から出口へ通り抜けるようにしている。それにより、たとえば基板に電子部品をはんだ付けした後の、当該はんだフラックスの洗浄などが行われる。
【0004】
一方で、治具を通り抜ける洗浄液の流速を向上させる方法としては、従来では、基板を一対の狭持部材で狭持し、基板上の電子部品の周りに微小隙間を形成して、当該電子部品周りの流域断面積を小さくするようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−74322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、基板洗浄用治具を用いて回転式洗浄を行う場合について試作検討を行った。図7は、一般的な基板洗浄用治具の構成に基づいて本発明者が試作した試作品としての基板洗浄用治具1の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は洗浄液の流れ方向と直交する断面に沿った概略断面図である。
【0007】
この基板洗浄用治具1は、一端側が洗浄液の入口11a、他端側が洗浄液の出口11bとされている貫通した開口部11を有するフレーム10を備え、開口部11の内面には、複数個の基板200を開口部11内に取り付ける基板取り付け部としての溝12が形成されている。
【0008】
そして、電子部品210が搭載された基板200を、開口部11内に取り付けるが、ここでは、溝12に、基板200の端部を挿入することで、基板200をフレーム10に支持する。そして、開口部11内にて、複数の基板200は、隣りの基板200と隙間を有しつつ基板200の板面と直交する方向に沿って配列されており、いわゆる積層された形とされている。
【0009】
このように、複数個の基板200を開口部11内に取り付けた状態で、図7(a)中の矢印に示されるように、洗浄液を入口11aから導入し開口部11内を流通させて出口11bから導出する。それにより、洗浄液は隣り合う基板200の間を通り抜け、複数個の基板200が洗浄されるようになっている。
【0010】
こうして、複数個の基板200が取り付けられた基板洗浄用治具1を、図8に示されるように、回転式洗浄機300に設置して洗浄を行う。図8は、この試作品としての基板洗浄用治具1の回転式洗浄機300による洗浄方法を模式的に示す図である。
【0011】
この回転式洗浄機300は、回転する洗浄バケット302を有する洗浄槽301を有するものである。そして、洗浄液がたたえられた洗浄槽301内にて洗浄バケット302に基板洗浄用治具1を設置した後、洗浄バケット302を回転させることにより、洗浄液が開口部11の入口11aから出口11bへ通り抜け、基板200の洗浄が行われるようになっている。
【0012】
ここで、洗浄液としては、一般には、水に界面活性剤を混合した準水系の洗浄液が用いられる。そして、この洗浄液に、基板200上のはんだフラックスなどが溶けて洗浄がなされるが、基板200近傍の洗浄液中の残留物濃度が大きくなると洗浄性が悪化する。そのため、回転式洗浄では、基板200近傍に洗浄液を流通させることで、洗浄液を置換し、洗浄性を確保するのである。
【0013】
ところで、近年、電子部品210のコストダウンの要求が高まり、基板200のコストダウンの要求も高まってきている。基板200のコストダウンに対しては、基板200の大型化が有効である。
【0014】
ここで、図9は、洗浄槽301と基板200との配置関係を示す平面図である。この図9に示されるように、回転式洗浄を行った場合、たとえば100mm□程度の標準的なサイズの基板200では、十分な流速が確保された回転半径の領域にて洗浄が可能となっている。
【0015】
しかし、図9中の破線に示すように、たとえばサイズが2倍程度の大型の基板200の洗浄では、十分な流速が確保された回転半径の領域からはみ出して、流速が不足する回転半径の小さい領域でも洗浄する必要があるため、洗浄品質の確保が困難になる。
【0016】
ここで、上記特許文献1では、基板上の電子部品周りの流速は向上するものの、上記したような回転式洗浄における回転半径の小さい領域での基板の洗浄不足という問題に対しては、解決とならない。
【0017】
また、上記特許文献1の場合は、真空引きにより流速を調整しており、必要な流速を確保するためには、大型のポンプが必要となる。また、狭持部材で基板を挟む必要があるので、基板を治具に入れ替える段取りにロスが生じることや、両面実装基板には適用が難しいなどの問題がある。
【0018】
本発明は、回転式洗浄において回転中心付近で流速が不足し、洗浄液の置換効率が悪化することに鑑みてなされたものであり、基板洗浄用治具を用いて電子部品が搭載された基板を回転式洗浄により洗浄する場合に、基板両面の洗浄を可能としつつ、回転中心からの距離に関係なく良好な洗浄品質を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、洗浄液が流通する開口部(11)内のうち隣り合う基板(200)間の隙間となる位置には、板材(20)が設けられており、基板(200)の取り付けを行った状態で、開口部(11)内にて、洗浄液を板材(20)と基板(200)との隙間にて流通させるようにしたことを特徴としている。
【0020】
それによれば、基板(200)の両面に洗浄液を流通させて基板(200)の両面が洗浄できるとともに、単純に隣り合う基板の間に洗浄液を流通させる場合よりも、洗浄液の流路面積を小さくできるので、その分、流速が増加する。
【0021】
そのため、本発明の基板洗浄用治具を回転式洗浄に用いた場合でも、回転中心付近の洗浄液の流速を大きくすることができる。よって、本発明によれば、回転式洗浄を行う場合に、基板(200)両面の洗浄を可能としつつ、回転中心からの距離に関係なく良好な洗浄品質を確保することができる。
【0022】
ここで、請求項2に記載の発明のように、板材(20)を、開口部(11)の出口(11b)側に位置する部位の板厚が、開口部(11)の入口(11a)から中間部までに位置する部位の板厚よりも小さいものとすることにより、基板(200)の取り付けを行った状態における板材(20)と基板(200)との隙間については、開口部(11)の入口(11a)から中間部までに位置する部分よりも出口(11b)側に位置する部分の方が広くなるようにしてもよい。
【0023】
それによれば、洗浄時における洗浄液の圧力が、開口部(11)の入口(11a)から中間部までで大きく、それに比べて開口部(11)の出口(11b)側にて小さくなるので、開口部(11)内を流通する洗浄液の流速がより増加する。そのため、洗浄品質の向上の点で好ましい。
【0024】
また、請求項3に記載の発明のように、板材(20)を、開口部(11)の入口(11a)側および出口(11b)側に位置する部位の板厚が、開口部(11)の入口(11a)と出口(11b)の中間部の板厚よりも小さいものとすることにより、基板(200)の取り付けを行った状態における板材(20)と基板(200)との隙間については、開口部(11)の中間部に位置する部分よりも開口部(11)の入口(11a)側および出口(11b)側に位置する部分の方が広くなるようにしてもよい。
【0025】
それによれば、開口部(11)の入口(11a)の隙間を広くしているので、洗浄液を開口部(11)により大量に取り込むことが可能となるとともに、洗浄時における洗浄液の圧力が、開口部(11)の中間部にて大きく、それに比べて開口部(11)の出口(11b)側にて当該圧力が小さくなるので、開口部(11)内を流通する洗浄液の流速がより増加する。そのため、洗浄品質の向上の点で好ましい。
【0026】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3に記載の基板洗浄用治具において、板材(20)における基板(200)と対向する面には、当該面より基板(200)の方向に突出する凸部(21)が設けられており、この凸部(21)によって、入口(11a)から出口(11b)へ向かう洗浄液の流れとは異なる方向の流れを洗浄液に発生させるようにしたことを特徴としている。
【0027】
それによれば、開口部(11)の入口(11a)から出口(11b)へ向かう流れとは異なる方向の流れを洗浄液に発生させるから、基板(200)上の凹凸の細部まで洗浄液が行き渡りやすくなり、さらなる洗浄品質の向上が期待できる。
【0028】
請求項5に記載の発明においては、洗浄液が流通する開口部(11)内のうち隣り合う基板(200)間の隙間となる位置には、開口部(11)の入口(11a)から出口(11b)へ向かう洗浄液の流れを乱す乱流発生部材(30)が設けられていることを特徴としている。
【0029】
それによれば、基板(200)の両面に洗浄液を流通させて基板(200)の両面が洗浄できるとともに、隣り合う基板(200)の間に洗浄液を流通させる場合に、乱流発生部材(30)によって当該基板(200)間を流れる洗浄液が乱流となるので、その分、洗浄液の置換性が向上する。よって、本発明によれば、回転式洗浄を行う場合に、基板(200)両面の洗浄を可能としつつ、回転中心からの距離に関係なく良好な洗浄品質を確保することができる。
【0030】
ここで、請求項6に記載の発明のように、請求項5の基板洗浄用治具においては、乱流発生部材(30)を、開口部(11)の入口(11a)から出口(11b)へ向かう洗浄液の流れに対して直角方向且つ基板(200)の板面に対して平行方向に延びる複数の柱状部材より構成し、これら複数の柱状部材を、開口部(11)の入口(11a)から出口(11b)へ向かって間隔をあけて配列したものにできる。
【0031】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板洗浄用治具を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は洗浄液の流れ方向と直交する断面に沿った概略断面図、(c)は洗浄液の流れ方向と平行な断面に沿った概略断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る基板洗浄用治具の要部の概略断面図である。
【図3】第2実施形態の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る基板洗浄用治具の要部の概略断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る基板洗浄用治具の要部の概略断面図である。
【図6】第4実施形態の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明者の試作品としての基板洗浄用治具の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は概略断面図である。
【図8】上記試作品としての基板洗浄用治具の回転式洗浄機による洗浄方法を模式的に示す図である。
【図9】図8における洗浄槽と基板との配置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板洗浄用治具100の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は洗浄液の流れ方向と直交する断面に沿った概略断面図、(c)は洗浄液の流れ方向と平行な断面に沿った概略断面図である。
【0035】
本実施形態の基板洗浄用治具100は、大きくは、当該治具100の本体を区画構成するフレーム10を備え、このフレーム10の開口部11内に基板200を取り付けるようになっており、基板200を取り付けた状態で当該開口部11に洗浄液を流通させることで基板200の洗浄を行うように構成されたものである。
【0036】
フレーム10は、一端側が洗浄液の入口11a、他端側が洗浄液の出口11bとされている貫通した開口部11を有する。この開口部11は、治具100において洗浄液が流通する流通路として構成されている。
【0037】
ここでは、フレーム10は、前面と背面が開口した本棚の如く、入口11a側である前面側と上記出口11b側である背面側がともに開口した矩形箱状をなしている。そして、このフレーム10における左右の側板10aの板面に沿った方向に、洗浄液が流通するようになっている。
【0038】
フレーム10の開口部11の内面には、複数個の基板200が取り付けられる基板取り付け部としての溝12が設けられている。ここでは、フレーム10の側板10aの内面に溝12が形成されており、この溝12は、洗浄液の流通方向に沿って延びている。各基板200は、当該基板200の端部を溝12に挿入することで、フレーム10に支持されるようになっている。
【0039】
そして、複数の基板200は、隣り合う基板200との間に隙間を有しつつ基板200の板面と直交する方向に沿って配列するように、開口部11内に取り付けられている。なお、基板取り付け部としては、この溝12以外にも、たとえば開口部11の内面から突出する棚などであってもよい。
【0040】
ここで、基板200は、特に限定されるものではなく、セラミック基板、プリント基板などの樹脂基板などでもよいし、また、多層基板でも単層基板でもよい。また、基板200には、各種の電子部品210が搭載されている。
【0041】
このような電子部品210としては、一般的な回路基板に搭載されるICチップやミニモールドパッケージ、コンデンサ、ダイオードなど、各種の部品が挙げられる。その実装方法としては、はんだ付け、接着剤、ワイヤボンディングなどが挙げられる。また、電子部品210は、基板200の一面のみに実装されていてもよいし、両面に実装されていてもよい。
【0042】
そして、この基板洗浄用治具100においては、複数個の基板200を開口部11内に取り付けた状態で、洗浄液を入口11aから導入し開口部11内を流通させて出口11bから導出することにより、複数個の基板200を洗浄するようにしている。
【0043】
ここで、本実施形態においては、開口部11内のうち隣り合う基板200間の隙間となる位置に、板材としての邪魔板20が設けられている。具体的には、図1に示されるように、複数個の基板200を開口部11内に取り付けたときに、隣り合う両基板200の隙間に位置する邪魔板20と基板200とが接触せずに離れた状態となるように、邪魔板20が配置されている。
【0044】
ここでは、邪魔板20の板面と基板200の板面とが平行となるように、邪魔板20が配置されている。そして、この基板洗浄用治具100においては、基板200の取り付けを行った状態で、図1(c)に示されるように、開口部11内における邪魔板20と基板200との隙間に、洗浄液が流通するようになっている。
【0045】
言い換えれば、本実施形態の基板洗浄用治具100は、矩形箱状のフレーム10における矩形の開口部11の内部に、邪魔板20によって複数段の棚を形成するように複数の邪魔板20を設け、各邪魔板20の間に基板200を配置するスペースが形成された構成とされている。
【0046】
なお、このようなフレーム10および邪魔板20より構成される基板洗浄用治具100は、樹脂の一体成形により形成されたものでもよいし、樹脂や金属などよりなる各部を接着や溶接などにより接合して組み立てたものであってもよい。つまり、邪魔板20は、フレーム10の開口部11の内面に接合されたものであってもよいし、フレーム10と一体成形されたものであってもよい。
【0047】
そして、この基板洗浄用治具100は、基板200を取り付けた後、上記図8に示したのと同様に、回転式洗浄機に設置されて、回転式洗浄を行うものである。それにより、洗浄液は、隣り合う基板200の間隔よりも更に狭くなっている基板200と邪魔板20との隙間を通って、開口部11内を流れていき、基板200の両面が洗浄されるようになっている。
【0048】
ここで、洗浄液の置換を効率良く行うには、上述したように、回転流速を確保することが重要である。回転流速を大きくする方法としては、流量を維持したまま洗浄物付近の流路面積を小さくする方法がある。現行の回転洗浄機では、たとえば流速60m/分以上の流速が必要である。
【0049】
しかし、上記図9にも示したように、大型の基板200を洗浄すると、回転半径の大きい領域ではたとえば約120m/分の流速となっているが、回転半径の小さな回転中心付近の領域ではたとえば40m/分程度の流速となってしまう。そのため、この例において、必要な流速を確保するためには、流路断面積をたとえば2/3にする必要がある。
【0050】
たとえば、上記図7に示した本発明者の試作品としての基板洗浄用治具1においては、隣り合う基板200と基板200との間には7mm程度のギャップがあるが、本実施形態の基板洗浄用治具100では、基板200と基板200の間に邪魔板20を形成することで、洗浄液の流れる面積を小さくし、流速を大きくするようにしている。この例では、邪魔板20の厚みはたとえば4.5mm以上の厚さがあれば十分である。
【0051】
こうして、本実施形態では、邪魔板200が設けられていることにより、邪魔板20と基板200との空隙に洗浄液が入り込むため、洗浄物近辺の流速を大きくすることができ、回転中心付近においても必要な流速を確保することができる。そして、基板200間において、邪魔板20と基板200とは隙間を有するので、両面実装の基板200も洗浄可能である。
【0052】
また、本実施形態の基板洗浄用治具100では、多数の基板200を一括して収納できるので、基板200を治具100に入れるときに、上記特許文献1のように、狭持部材に1個ずつ基板を取り付けるというような手間がかからない。
【0053】
また、洗浄液の流れ方向と平行な方向における邪魔板20の厚さは、当該平行な方向の全体にわたって一定の厚さであってもよいが、本実施形態では、図1(c)に示されるように、当該方向において部分的に厚さを異ならせている。
【0054】
具体的には、邪魔板20は、開口部11の出口11b側に位置する部位の板厚が、開口部11の入口11aから中間部までに位置する部位の板厚よりも小さいものである。そうすることで、基板200の取り付けを行った状態における邪魔板20と基板200との隙間については、開口部11の入口11aから中間部までに位置する部分よりも出口11b側に位置する部分の方が広くなっている。
【0055】
それによれば、洗浄時における洗浄液の圧力が、開口部11の入口11aから中間部までで大きく、それに比べて開口部11の出口11b側にて小さくなる。そのため、開口部11内を流通する洗浄液の流速がより増加することから、洗浄品質の向上の点で好ましいものとなる。
【0056】
以上述べてきたように、本実施形態によれば、基板200の両面に洗浄液を流通させて基板200の両面が洗浄できるとともに、上記図7に示す試作品のように、単純に隣り合う基板200の間に洗浄液を流通させる場合よりも、洗浄液の流路面積を小さくできるので、その分、流速が増加する。
【0057】
そのため、本実施形態の基板洗浄用治具100を回転式洗浄に用いた場合でも、回転中心付近の洗浄液の流速を大きくすることができる。よって、本実施形態によれば、回転式洗浄を行う場合に、基板200両面の洗浄を可能としつつ、回転中心からの距離に関係なく良好な洗浄品質を確保することができる。
【0058】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る基板洗浄用治具の要部の概略断面構成を示す図であり、洗浄液の流れ方向と平行な断面に沿った概略断面図である。
【0059】
本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、洗浄液の流れ方向と平行な方向における邪魔板20の厚さに変更を加えた点が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0060】
図2に示されるように、邪魔板20は、開口部11の入口11a側および出口11b側に位置する部位の板厚が、開口部11の入口11aと出口11bの中間部の板厚よりも小さいものとされている。
【0061】
それによって、基板200の取り付けを行った状態においては、邪魔板20と基板200との隙間については、開口部11の中間部に位置する部分よりも入口11a側および出口11b側に位置する部分の方が広くなっている。
【0062】
つまり、上記第1実施形態(上記図1参照)における邪魔板20においては、開口部11の出口11b側に位置する部位の板厚をそれ以外の部位の板厚よりも薄くし、当該部位における邪魔板20と基板200との隙間を広くしたが、本実施形態では、さらに、開口部11の入口11a側に位置する部位の板厚も薄くし、当該部位における邪魔板20と基板200との隙間も広くしたものである。
【0063】
このように、上記隙間を開口部11入口11aにて広がった状態とすれば、上記図1のような邪魔板20の厚さが開口部11の入口11a側から中間部に渡って一定である場合に比べて、洗浄液を開口部11により大量に取り込むことができる。
【0064】
また、本実施形態によっても、邪魔板20と基板200との隙間が、開口部11の中間部よりも出口11b側にて広くなっているので、上記第1実施形態と同様、洗浄時における洗浄液の圧力が、開口部11の中間部にて大きく、出口11b側にて小さくなる。そのため、上記同様、開口部11内を流通する洗浄液の流速がより増加するので、洗浄品質の向上の点で好ましい。
【0065】
また、図3は、本第2実施形態の他の例を示す概略断面図である。上記図2では、邪魔板20の板厚を、開口部11の中間部と入口11a側および出口11b側とで、段差をもって変化させていた。
【0066】
それに対して、図3に示されるように、邪魔板20を、開口部11の入口11a側から中間部に向かって板厚が連続的に増加し、当該中間部から開口部11の出口11b側に向かって板厚が連続的に減少していくものとしてもよい。この場合も、上記図2の邪魔板20と同様の作用効果が得られる。
【0067】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る基板洗浄用治具の要部の概略断面構成を示す図であり、洗浄液の流れ方向と平行な断面に沿った概略断面図である。
【0068】
本実施形態の基板洗浄用治具は、上記第1実施形態に比べて、基板200に対向する邪魔板20の面に変更を加えた点が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0069】
図4に示されるように、本実施形態では、邪魔板20における基板200と対向する面には、凸部21が設けられている。この凸部21は、邪魔板20における基板200と対向する面より基板200の方向に突出しており、エッチングやプレスなどにより形成される。また、この凸部21は、基板200の取り付けを行った状態で基板200とは離れた状態となることはもちろんである。
【0070】
ここで、図4中の白抜き矢印は、開口部11の入口11aから出口11bへ向かう洗浄液の流れである。そして、本実施形態では、凸部21によって、図4中の円弧状矢印に示されるように、入口11aから出口11bへ向かう流れとは異なる方向の流れを洗浄液に発生させるものである。
【0071】
洗浄液の流れは回転洗浄機の回転方向に応じて一方向であるため、基板200に実装された電子部品210の下や、当該流れ方向に対する電子部品210の後方部分では、洗浄液の置換性が悪くなり、洗浄性が低くなりやすい。
【0072】
そこで、本実施形態では、開口部11の入口11aから出口11bへ向かう流れとは異なる方向の流れ、具体的には渦や乱流を洗浄液に発生させることで、基板200上の凹凸の細部まで洗浄液が行き渡りやすくしている。その結果、洗浄性が低い箇所での洗浄液の置換性が向上し、さらなる洗浄品質の向上がなされる。
【0073】
なお、本実施形態は、上記第1実施形態に示した邪魔板20だけでなく、上記第2実施形態の各図に示した邪魔板20に対しても組み合わせて適用が可能であることはもちろんである。つまり、上記第2実施形態の邪魔板20における基板200と対向する面に、上記凸部21を設ければよい。
【0074】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係る基板洗浄用治具の要部の概略断面構成を示す図であり、洗浄液の流れ方向と平行な断面に沿った概略断面図である。
【0075】
本実施形態は、上記第1実施形態に示した邪魔板20に代えて、基板200の間に、乱流発生部材30を設けた点が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0076】
図示しないが、本実施形態の基板洗浄用治具も、上記図1に示したような洗浄液の入口11aと出口11bを備える貫通した開口部11を有するフレーム10を備え、開口部11の内面に、複数個の基板200を上記積層状態で取り付けるようにしたものである。
【0077】
より具体的には、本実施形態の治具も、左右の側面を有し前面と背面が開口した矩形箱状のフレーム10を備え、且つ、フレーム10の左右の側板10aに溝12が設けられたものとして構成される。
【0078】
そして、図5に示されるように、本実施形態では、開口部11内のうち隣り合う基板200間の隙間となる位置に、乱流発生部材30が設けられている。ここでは、乱流発生部材30は、開口部11の入口11aから出口11bへ向かう洗浄液の流れに対して直角方向且つ基板200の板面に対して平行方向に延びる柱状部材より構成されている。
【0079】
つまり、この柱状をなす乱流発生部材30は、図5の紙面垂直方向に延びるものであり、ここでは、断面円形の柱状をなしている。そして、図5に示されるように、複数個の乱流発生部材30が、開口部11の入口11aから出口11bへ向かって間隔をあけて配列されている。
【0080】
たとえば上記フレーム10の左右の側板10aの内面に、柱状の乱流発生部材30の両端部を、接着や溶接または一体成形などにより固定することにより、乱流発生部材30は、フレーム10に一体化される。
【0081】
そして、本実施形態によれば、この乱流発生部材30によって、図5中の円弧状矢印に示されるように、入口11aから出口11bへ向かう流れとは異なる方向の流れ、具体的には渦や乱流を洗浄液に発生させるものである。
【0082】
それにより、基板200上の凹凸の細部まで洗浄液が行き渡りやすくなり、洗浄性が低い箇所での洗浄液の置換性が向上するため、回転式洗浄を行う場合に、基板200両面の洗浄を可能としつつ、回転中心からの距離に関係なく良好な洗浄品質を確保することができる。
【0083】
また、図6は、本第4実施形態の他の例を示す概略断面図である。上記図5に示した乱流発生部材30は、断面円形の柱状をなすものであったが、この例のように、断面多角形の柱状をなすものであってもよい。そして、この場合も、上記図5の場合と同等の効果が期待できる。
【0084】
なお、上記各実施形態については、基板に電子部品を搭載した後、基板を基板洗浄用治具に取り付けて、洗浄するようにした基板の製造方法において、基板洗浄用治具として、上記各実施形態の基板洗浄用治具を用いるようにした製造方法が提供される。
【0085】
(他の実施形態)
なお、上記第1及び第2実施形態では、洗浄液の流れ方向と平行な方向における邪魔板20の厚さを部分的に異ならせた例を示したが、洗浄時の回転方向の半径方向における邪魔板20の厚さを部分的に異ならせることで、洗浄液の流速を適宜、部分的に調整するようにしてもよい。
【0086】
また、上記各実施形態に示した基板洗浄用治具は、洗浄液の流れが層流のものであれば適用することができ、洗浄能力が改善される。たとえば、回転式洗浄以外にも、ポンプで層流を作る層流式洗浄機に用いた場合でも、洗浄品質の向上が期待される。
【符号の説明】
【0087】
10 フレーム
11 開口部
11a 開口部の入口
11b 開口部の出口
12 基板取り付け部としての溝
20 板材としての邪魔板
21 凸部
30 乱流発生部材
200 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が洗浄液の入口(11a)、他端側が前記洗浄液の出口(11b)とされている貫通した開口部(11)を有するフレーム(10)を備え、
前記開口部(11)の内面には、複数個の基板(200)を、隣り合う前記基板(200)間に隙間を有しつつ前記基板(200)の板面と直交する方向に沿って配列するように、前記開口部(11)内に取り付ける基板取り付け部(12)が設けられており、
前記複数個の基板(200)を前記開口部(11)内に取り付けた状態で、前記洗浄液を前記入口(11a)から導入し前記開口部(11)内を流通させて前記出口(11b)から導出することにより、前記複数個の基板(200)を洗浄する基板洗浄用治具であって、
前記開口部(11)内のうち前記隣り合う前記基板(200)間の隙間となる位置には、板材(20)が設けられており、
前記基板(200)の取り付けを行った状態で、前記開口部(11)内にて、前記洗浄液を前記板材(20)と前記基板(200)との隙間にて流通させるようにしたことを特徴とする基板洗浄用治具。
【請求項2】
前記板材(20)は、前記開口部(11)の前記出口(11b)側に位置する部位の板厚が、前記開口部(11)の前記入口(11a)から中間部までに位置する部位の板厚よりも小さいものであり、
前記基板(200)の取り付けを行った状態における前記板材(20)と前記基板(200)との隙間については、前記開口部(11)の前記入口(11a)から中間部までに位置する部分よりも前記出口(11b)側に位置する部分の方が広くなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄用治具。
【請求項3】
前記板材(20)は、前記開口部(11)の前記入口(11a)側および前記出口(11b)側に位置する部位の板厚が、前記開口部(11)の前記入口(11a)と前記出口(11b)の中間部の板厚よりも小さいものとされており、
前記基板(200)の取り付けを行った状態における前記板材(20)と前記基板(200)との隙間については、前記開口部(11)の前記中間部に位置する部分よりも前記開口部(11)の前記入口(11a)側および前記出口(11b)側に位置する部分の方が広くなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄用治具。
【請求項4】
前記板材(20)における前記基板(200)と対向する面には、当該面より前記基板(200)の方向に突出する凸部(21)が設けられており、
この凸部(21)によって、前記入口(11a)から前記出口(11b)へ向かう前記洗浄液の流れとは異なる方向の流れを前記洗浄液に発生させるようにしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の基板洗浄用治具。
【請求項5】
一端側が洗浄液の入口(11a)、他端側が前記洗浄液の出口(11b)とされている貫通した開口部(11)を有するフレーム(10)を備え、
前記開口部(11)の内面には、複数個の基板(200)を、隣り合う前記基板(200)間に隙間を有しつつ前記基板(200)の板面と直交する方向に沿って配列するように、前記開口部(11)内に取り付ける基板取り付け部(12)が設けられており、
前記複数個の基板(200)を前記開口部(11)内に取り付けた状態で、前記洗浄液を前記入口(11a)から導入し前記開口部(11)内を流通させて前記出口(11b)から導出することにより、前記複数個の基板(200)を洗浄する基板洗浄用治具であって、
前記開口部(11)内のうち前記隣り合う前記基板(200)間の隙間となる位置には、前記開口部(11)の前記入口(11a)から前記出口(11b)へ向かう前記洗浄液の流れを乱す乱流発生部材(30)が設けられていることを特徴とする基板洗浄用治具。
【請求項6】
前記乱流発生部材(30)は、前記開口部(11)の前記入口(11a)から前記出口(11b)へ向かう前記洗浄液の流れに対して直角方向且つ前記基板(200)の板面に対して平行方向に延びる複数の柱状部材より構成されており、
これら複数の柱状部材は、前記開口部(11)の前記入口(11a)から前記出口(11b)へ向かって間隔をあけて配列されていることを特徴とする請求項5に記載の基板洗浄用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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