説明

基板補強用繊維織物、並びに該補強用繊維織物を使用したプリプレグ、及びプリント配線板用基板

【課題】プリント配線板の接続信頼性、生産性の向上と高密度配線化を両立可能なプリント配線板用基板及びプリプレグ、それに適した補強用繊維織物を提供する。
【解決手段】たて糸とよこ糸から構成される織物であって、表組織と裏組織からなる二重組織を有し、該二重組織の表裏を交換した、風通織組織物である補強用繊維織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用途に用いられる補強繊維織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
両面プリント配線板の製造は、通常以下のような工程で行われる。第一のプリプレグ製造工程において、ガラスクロス等の基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と溶媒からなるワニスを含浸させて加熱乾燥させたプリプレグを作製する。二番目の積層工程において、該プリプレグを単数または複数枚積層して両面に銅箔を貼り、加熱加圧して硬化させた銅張り積層板を作製する。三番目の回路パターン形成工程において、該銅張り積層板の両面にフォトリソグラフィー及びエッチング又はメッキによって銅箔からなる回路パターンを作成する。最後のスルーホール加工工程において、ドリルまたはレーザによりスルーホールを形成し、無電解銅メッキ等の公知の工程により両面の電気的接続を確保する。上述の積層工程の熱と圧力により、また回路パターン形成工程において銅箔の一部がエッチアウトされることにより、銅張り積層板の寸法が変化することが一般的に知られている。また、多層プリント配線板は、上述の両面プリント配線板をコア基板とし、さらにその表層に上述のプリプレグを単数または複数枚重ね合わせて両面に銅箔を貼り、加熱加圧して硬化接着させる逐次成型法により製造することができる。
【0003】
近年のデジタル機器の高機能、小型軽量化のために、使用されるプリント配線板にもさらなる小型及び薄型化、並びに高密度化が要求されている。そのための手法として、上述した逐次成型法によるビルドアップ多層プリント配線板の層数を増大させることも可能であるが、近年は両面プリント配線板同士を中間接続体をはさんで積層し一度に加熱加圧して硬化接着させる一括成型法が採用されることが多くなっている。上記中間接続体となるプリプレグは(以下において、コア基板製造に使用されるプリプレグ等と、中間接続体であるプリプレグを区別する必要がある場合は、「中間接続プリプレグ」という。)、その貫通孔(インタースティシャルビアホール、またはインナビアホールを略して、以下、IVHという。)に導電性ペースト等の導電体を充填することによって、部品ランド直下や任意の層間にIVHを形成可能である。そのため、基板サイズの小型化や高密度実装が実現できる全層IVH構造の多層プリント配線板なども提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
これらの多層プリント配線板の製造方法において、主に基材として使用されるガラス織物については、織物構造の観点から扁平均一化加工と、糸束の拡幅に有利な無撚糸との組み合わせによって、面方向の均一性、及び織物構造の拘束性の向上を図り、基板の寸法安定性向上、レーザ等の小径穴加工の品質改善が達成できることが提案されている。しかしながら、さらなる微細高密度配線化のためには、より高い寸法安定性や小径穴加工性が必要であり、これら基板特性の向上の要求には、従来の平織り構造を主体とする単純平面構造のガラス織物を中心とした織物構造では、信頼性向上による歩留まり及び生産性向上への対応は十分でない。
【0005】
すなわち従来からの寸法安定性改善の手法の1つとして、糸束の拡幅化、全体の織物密度アップなどの対応から、織物構造の拘束力を高め、ガラス織物やプリプレグの製造あるいはプレス成型等の各種工程で生じる、ガラス織物自体の構造変形を抑制し、ガラス織物長手方向(又はMD方向)の張力の影響や種々の工程要因の影響を軽減することが検討されてきたが、平織り構造はせん断方向の応力には塑性変形しやすく、結果的に各種工程要因により寸法安定性は悪影響を受けやすい。
同様に層間等の接続のために必要な小径加工性の改良については、隣り合う糸同士の間隔を設けるなどして、拡幅性に余裕を持たせ、糸束扁平化によりガラス織物の面方向の粗密を極小化し、均一化する手段がとられ、大幅な改善がなされてきたが、さらなる小径加工のために、より高い面方向、厚さ方向の均一性向上が必要となっている。
実際には、糸の種類、織物の厚さ、糸束の拡幅性、拘束性等を考慮し、織物密度を設計し、最適な織物構造を得ているが、織物として相反する拘束性と拡幅性を互いに満足する、すなわち、従来に比較し、より高い寸法安定性と小径加工性を備えたプリント配線板用の基材である補強用繊維織物が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平06−268345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、多層プリント配線板に使用される基板、及び表層の絶縁層、プリプレグの寸法変化量のばらつきを低減し、小径加工性の向上を可能とする補強用繊維織物及び該織物を使用したプリプレグ、さらには該プリプレグを使用したプリント配線板用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、たて糸とよこ糸から構成される補強用繊維織物の織物構造に着目して鋭意研究した結果、織物を上下に2枚重ねた二重組織を有し、かつその2枚の上下関係が交互に入れ替わる構造の補強用繊維織物を基材として使用することにより、従来の平織りの補強用繊維織物に比較し、寸法安定性のばらつき、小径加工性の向上が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1は、たて糸とよこ糸から構成される織物であって、表組織と裏組織からなる二重組織を有し、該表組織と該裏組織を交換する風通組織であることを特徴とするプリント配線板の基板補強用繊維織物である。
上記たて糸及びよこ糸を構成する繊維は、ガラス繊維、または有機繊維であることが好ましい。
本発明の第2は、本発明の第1の補強用繊維織物と半硬化状態のマトリックス樹脂からなるプリプレグである。
本発明の第3は、本発明の第2のプリプレグを加熱加圧硬化させたプリント配線板用基板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の補強用繊維織物を使用したプリプレグで成型したプリント配線板用基板は、寸法変化量のばらつきの低減、小径加工性の向上が可能という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について以下に具体的に説明する。
(1)補強用繊維織物の特徴
本発明の補強用繊維織物は、表になる表組織は表たて糸と表よこ糸より作られ、裏になる裏組織は裏たて糸と裏よこ糸によって作られた上下一重織物を2枚重ね合わせて同時に送り出した二重組織を有し、かつその2枚が該表組織と該裏組織の上下関係がたて方向及びよこ方向の双方において交互に入れ替わる構造(以下、「交換構造」という。)の風通組織を有する補強用繊維織物である。さらに上述した表裏のたて糸同士が同じ糸種であり、且つ表裏のよこ糸同士が同じ糸種であることが好ましく、さらにたて糸とよこ糸が同じ糸種であることがより好ましいが、これらすべてが異なる糸種であってもよい。
【0011】
好ましい風通組織の織物の一例としては、少なくとも表たて糸と表よこ糸が一色(ここ
でいう一色とは同一種類を意味する)であり、裏たて糸と裏よこ糸が一色であり、表組織と裏組織とを交換構造にした二色風通組織の織物があげられる。また、本発明の二色風通組織の補強用繊維織物を、同種あるいは異種のたて糸、よこ糸の交錯によって三色、四色以上とした三色以上の多色風通組織でもよい。
本発明の補強用繊維織物を構成する表組織、及び裏組織は、拘束力に優れた平織り組織を基本として、さらに交換構造とすることにより、織物組織全体での拘束力を高め、目曲がりを生じ易い細い糸で構成される織物であっても、規則的な織物構造を維持し、寸法安定性のばらつきを抑制することが可能となる。また、仮に半分の厚さの平織り繊維織物を単に2枚重ねた場合には、上下の織物の糸が同周期で重なる部分や、交互にずれて重なる部分が不規則に発生するのに対し、本発明の風通組織の補強用繊維織物は、隣り合う糸同士が基本的に上下に分かれるために表面から見た場合、均一に糸が配列し、ドリル加工やレーザ加工等で重要な面方向の均一性に優れる。
【0012】
また、交換構造については、単位組織当たりたて方向1カ所、よこ方向1カ所の割合で上下を交換することが好ましく、これにより織物の拘束力が高まり、工程要因による目曲がり等を抑制し、さらなる寸法変化のばらつきを低減することが可能となる。
本発明の補強用繊維織物の厚さは、表組織と裏組織の二層あわせて10μm以上、400μm以下であることが好ましく、10μm以上、300μm以下であることがより好ましい。特に厚さが10μm以上、200μm以下である場合、一般的に拘束性に劣る細い糸を使用した織物での拘束性を効果的に改善することが可能となるので好ましい。厚さが10μm未満の補強用繊維織物を製造することは非常に困難であり、また400μmより厚い場合は使用する糸が太く、隣り合う糸同士の間隔が狭いために、たて糸、及び/またはよこ糸を上下交互に配列することが難しく、糸の重なりを生じやすくなるため、本発明の補強用繊維織物を製造することが困難となる。
【0013】
本発明の補強用繊維織物を構成する糸の単繊維径は、細いほうが効果的であるが、細すぎると強度、品質、生産性の問題がある。そのため糸は単繊維の径が直径約3.0μm以上、直径約20.0μm以下が好ましく、直径3.0μm以上、直径約18.0μm以下がより好ましい。
本発明の補強用繊維織物を構成する糸としては、1インチあたりの撚り数が、0から1.0回の撚りを施された糸を用いることが好ましく、0から0.2回の低撚糸(以下、特に撚り数が0回の低撚糸を「無撚糸」ともいう。)を用いることがより好ましい。あるいは、通常の撚り糸を解撚しながら製織することによって、1インチあたりの撚り数が0.2回以下に低撚糸化された補強用繊維織物を用いても良い。低撚糸化により、糸の断面が扁平形状に近づくため補強用繊維織物の面内の隙間を減少させて面方向の繊維分布量の均一性を高め、また糸の撚りが戻ろうとする力が働くことによる基板のそりねじれ量も同時に抑制できる。
【0014】
本発明の補強用繊維織物に使用される繊維は基板の剛性をより高めるために、ガラス繊維、または強度の高い無機繊維もしくは有機繊維であることが好ましい。ここでいう強度の高い繊維とは、長さ方向の引張弾性率が50GPa以上500GPa以下である繊維を意味し、長さ方向の引張弾性率が70GPa以上400GPa以下であることがより好ましい。該当する有機繊維としては、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド、パラフェニレンテレフタルアミド、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール等が例示される。該当する無機繊維としては、炭素繊維が例示される。また、本発明の補強用繊維織物に使用される繊維として異なった材料の繊維を使用した二色風通組織としてもよい。
【0015】
(2)補強用繊維織物の開繊処理
本発明のプリプレグに使用される補強用繊維織物を得るためには、開繊処理を実施する
ことにより糸束中の単繊維をばらけさせることが好ましい。すなわち開繊処理により、風通組織補強繊維織物の面内の隙間を少なくすることが可能となる。また、開繊処理により樹脂ワニスの含浸性を向上し、補強繊維とマトリックス樹脂との均一性を上げ、耐熱性等の向上が可能になることは言うまでもない。
表面から補強繊維織物の各層を観察した際、各層が組合わされて構成された織物のたて糸とよこ糸により囲まれた隙間部の一辺の小さいほうの平均長さ(以下、「隙間長さ」という。)が、0μm以上50μm以下であることが好ましく、0μm以上30μm以下であることがより好ましい。該隙間長さが、小径加工穴に対応可能な0μm以上50μm以下であると、ドリルやレーザ等の加工穴の品質向上が可能となる。
【0016】
開繊処理としては、例えば、水流圧力による開繊、液体を媒体とした高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による加工、ロールによる加圧での加工等があげられ、該開繊処理を施すことによって、糸束中の単繊維はばらけた状態となる。これらの開繊処理法の中では、水流圧力による開繊、または液体を媒体とした高周波の振動による開繊を使用することが、均一性のためにより好ましい。また、該開繊処理の効果を高めるためには、補強用繊維織物にかかる張力を少なくした状態で開繊処理を実施することが好ましい。
さらに、糸に滑剤の特性を示す有機物が付着した状態の補強用繊維織物、または通常の補強用繊維織物を製織する際に使用されるバインダー、糊剤等が付着した状態の補強用繊維織物(以下、「生機」という。)において、開繊処理と低撚糸化の組み合わせによって、さらに糸束中の単繊維をばらけた状態にする効果をより大きくすることが可能となる。
【0017】
また、開繊処理を行った後に、次に述べる表面処理を施し、さらに開繊処理を施すことにより、集束した単繊維間の隙間をさらに広げ、マトリックス樹脂との接着性を高めることが可能である。
なお、本発明の補強用繊維織物に開繊処理を行う場合においては、例えば両面から開繊処理を施すなどの方法によって、補強用繊維織物を構成する表組織と裏組織の各組織が均一に開繊されるように実施することがより好ましい。
【0018】
(3)表面処理
補強繊維としてガラス糸が使用されるガラス織物の場合には、通常シランカップリング剤を含んだ処理液による表面処理が施されるが、該シランカップリング剤としては通常一般に用いられるシランカップリング剤を使用することができ、必要に応じて、酸、染料、顔料、界面活性剤などを添加しても良い。また、本発明に使用される高強度の有機繊維を使用した補強用繊維織物の場合には、一般的な精錬加工、開繊加工、プラズマ加工等を施した後に基材として使用しても、その後、カップリング剤等を含んだ処理液による接着性、濡れ性等に適した表面処理を施して使用してもよい。
【0019】
(4)プリプレグの製造及び特徴
本発明のプリプレグを製造するには定法に従えばよい。例えば、補強用繊維織物にエポキシ樹脂のようなマトリックス樹脂を有機溶剤で希釈したワニスを含浸した後、乾燥炉にて有機溶剤を揮発させ、熱硬化性樹脂をBステージ状態(半硬化状態)、まで硬化させた樹脂含浸プリプレグを作ればよい。この際に、極力補強用繊維織物に張力を与えないようにすると、さらに寸法安定性に優れたプリプレグを得ることができるのでより好ましい。
マトリックス樹脂としては、上述のエポキシ樹脂の他に、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、BT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂や、PPO(ポリフェニレンオキサイド)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、またはそれらの混合樹脂などが挙げられる。また、該マトリックス樹脂中に水酸化アルミニウム等の無機充填剤を混在させた樹脂を使用してもかまわない。
【0020】
また、該補強用繊維織物へのマトリックス樹脂付着量は、ワニスの固形分と補強用繊維織物の質量の合計に対して、ワニス固形分の質量が20%から80%になるようにするのが好ましい。
また、本発明のプリプレグに金属箔を少なくとも片面に張り合わせて金属箔付きプリプレグとしてもよく、その製造方法については、プリプレグに金属箔を加熱接着する方法、又は補強用繊維織物と金属箔に同時にワニスを塗工する方法等が好適に使用できる。
上述の金属箔付きプリプレグの金属箔としては、通常は銅箔を用いるが、アルミニウム箔も用いることができる。金属箔の厚さは用途にもよるが、3μmから100μmのものが好適に使用される。
【0021】
(5)プリント配線板の製造
本発明のプリプレグを用いたプリント配線板の製造方法は、背景技術に示した方法及び関連する公知技術に従えばよい。例えば、本発明のプリプレグを、レーザで穴加工した後導電性ペーストによりIVHを充填してIVH接続用の中間接続プリプレグとして用い、両面プリント配線板、又は両面導体配線シートと交互に重ねて加熱加圧成型することにより、多層プリント配線板とする方法なども好適に使用できる。
この際の成型条件としては加熱温度が100度から230度、圧力が1MPaから5MPaの条件とすることが好ましく、この条件下に0.5時間から2.0時間保持することが好ましい。
【0022】
本発明のプリプレグへのレーザによるIVH加工の方法については、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、又はエキシマレーザなどの加工方法が適宜使用できる。また加熱加圧、レーザによるIVH加工の前後で、プリプレグの保護、または加工性向上等のために有機フィルム等をプリプレグに張り合わせて用いても良い。この際の有機フィルムとしてはポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリフッ化エチレンフィルム等が使用できる。
また、形成されたIVHに導電性ペーストを充填する場合、銅・銀等の公知の各種素材の導電性ペーストが使用可能である。
【実施例】
【0023】
本発明を実施例に基づいて説明する。
実施例、比較例中の補強用繊維織物の物性、及び隙間長さ、該補強用繊維織物を用いたプリプレグ、及びプリント配線板用基板の作成方法、並びに試験方法は以下の方法で行った。
1.補強用繊維織物の物性測定方法
JIS−R−3420に従い測定した。
2.補強繊維の隙間長さの測定方法:
補強用繊維織物を顕微鏡にて観察し、表面写真を撮影し、各層が組合わされて構成された織物のたて糸とよこ糸により囲まれた隙間部を20点測定し、一辺の小さいほうの長さの平均値を補強用繊維織物の隙間長さとした。
【0024】
3.プリプレグの作成方法
補強用繊維織物に、下記調合割合で調製したエポキシ樹脂ワニスを浸漬し、各補強用繊維織物厚さの約2倍のスリットで余剰樹脂ワニスを掻き落とし、170℃で3分間乾燥させてプリプレグを得た。
[エポキシ樹脂ワニス調合割合]
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名 5046B80):70質量%、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名 180S75B70):14質量%、ジシアンジアミド:1.6質量%、2−エチル−4−メチル−イミダゾール:0.2質量%、ジメチルホルムアミド:7.1質量%、メチルセロソルブ:7.1質量%。
【0025】
4.基板の寸法安定性の評価方法
上述のプリプレグの作成方法により得た、たて340mm、よこ340mmのプリプレグ1枚の両面に12μmの銅箔を配し、175℃、3.9MPaで、1時間加熱加圧し、硬化させて寸法安定性評価用の1ply基板を得た。なお、後述の比較例1においては、ガラスクロスの厚さが実施例1、2および比較例2、3のおよそ半分であるため、寸法安定性評価は2ply基板(プリプレグを2枚重ねたもの)を用いて基板を作成した。
その作成した基板に125mm間隔で、たて糸方向3カ所×よこ糸方向3カ所の合計9カ所の標点をつけ、たて糸方向、よこ糸方向のそれぞれについて、隣接する2標点の標点間隔6箇所を測定した(測定値a)。次に、エッチング処理によって銅箔を除去し、170℃、30分加熱した後、該標点間隔を再度測定した(測定値b)。測定値aと測定値bの差の測定値aに対する割合(%)を寸法変化率とした。たて方向、よこ方向それぞれについて、6つの寸法変化率の平均値(後述の表1では「平均寸法変化率」という。)、及び6つの寸法変化率の最大値から最小値を引いた後の絶対値(後述の表1では「寸法変化率のばらつき」という。)を計算した。
【0026】
5.レーザ加工性の評価方法
上述のプリプレグの作成方法により得た、たて340mm、よこ340mmのプリプレグ1枚を、両面黒化処理を行った35μm銅箔コア基板(0.1mm厚)の両面に、レーザ加工性評価用絶縁層として配し、3.9MPaで、1時間加熱加圧し、硬化させてレーザ加工性評価用多層基板を得た。なお、後述の比較例1においては、ガラスクロスの厚さが実施例1、2および比較例2、3のおよそ半分であるため、評価用絶縁層は2ply層(プリプレグを2枚重ねたもの)とした基板を作成した。
レーザ加工性についてはビア形成後のボトムの穴径分布(n=1000穴)の評価を行った。また、レーザ加工装置は松下電器産業(株)社製 炭酸ガスレーザ「YB−HCS0Y01」を用い、加工条件はビア径145μm、周波数100Hz、マスク3.5φ、パルス幅30μsを採用し、2ショット時のボトムの穴状態を楕円として、長径と短径を測定し、その標準偏差をばらつきとした。
【0027】
<実施例1>
補強繊維として、たて糸およびよこ糸に、引張弾性率74GPaのEガラス糸で構成されるD900 1/0 1.0Z(撚りが1.0回/インチの糸を示す。)を使用し、エアジェットルームで、たて糸110本/25mm、よこ糸110本/25mmの織物密度で、たて・よこともに二重で、一枚織物を上下に二枚重ね合わせて同時に織り出し、表裏の組織を単位組織あたり一箇所の割合で交換した、図1に示す組織図にて製織した二色風通組織補強用繊維織物のガラスクロスの生機を得た。得られた生機に高圧散水流による開繊加工を施した後、ヒートクリーニングした。なお、上記のD900はJIS−R−3413におけるECD900を略した標記であり、Dは呼び径5を意味している(以下、同様)。
【0028】
続いて、表面処理として、シランカップリング剤であるSZ6032(東レ・ダウコーニング(株)製:商品名)を用いて処理液とし、該ガラスクロスを浸漬し、絞液後乾燥し、さらに高圧水流による開繊加工を施し、該ガラスクロスを得た後、上述のプリプレグ作成方法により実施例1のプリプレグとした。表1に示した評価結果からわかるように、実施例1のプリプレグを用いて得られた基板の寸法変化量のばらつき、レーザ加工性の穴径分布のばらつきは非常に小さいものであった。
【0029】
<実施例2>
補強繊維として、たて糸およびよこ糸に、引張弾性率74GPaのEガラス糸で構成さ
れるD900 1/0 0Z(撚りが0回/インチの糸を示す。)を使用し、エアジェットルームで、たて糸110本/25mm、よこ糸110本/25mmの織物密度で、たて・よこともに二重で、一枚織物を上下に二枚重ね合わせて同時に織り出し、表裏の組織を単位組織あたり一箇所の割合で交換した、図1に示す組織図にて製織した二色風通組織補強用繊維織物のガラスクロスの生機を得た他は、実施例1と同様の方法でガラスクロスを得た後、上述のプリプレグ作成方法により実施例2のプリプレグとした。表1に示した評価結果からわかるように、実施例2のプリプレグを用いて得られた基板の寸法変化量のばらつき、レーザ加工性の穴径分布のばらつきは非常に小さいものであった。
【0030】
<比較例1>
補強繊維として、たて糸及びよこ糸に引張弾性率74GPaのEガラス糸で構成される、D900 1/0 1.0Zを使用し、エアジェットルームで、たて糸55本/25mm、よこ糸55本/25mmの織物密度で平織りに製織し生機を得た他は、実施例1と同様の方法で、ガラスクロスを得た後、上述のプリプレグ作成方法により比較例1のプリプレグとした。表1に示した評価結果からわかるように、比較例1のプリプレグを2枚用いて得られた基板の寸法変化量のばらつき、レーザ加工性の穴径分布のばらつきは大きいものであった。
【0031】
<比較例2>
補強繊維として、たて糸及びよこ糸に引張弾性率74GPaのEガラス糸で構成される、D900 1/0 1.0Zを使用し、エアジェットルームで、たて糸110本/25mm、よこ糸110本/25mmの織物密度で平織りに製織し生機を得た他は、実施例1と同様の方法で、ガラスクロスを得た後、上述のプリプレグ作成方法により比較例2のプリプレグとした。表1に示した評価結果からわかるように、比較例2のプリプレグを用いて得られた基板の寸法変化量のばらつき、レーザ加工性の穴径分布のばらつきは大きいものであった。
【0032】
<比較例3>
補強繊維として、たて糸及びよこ糸に引張弾性率74GPaのEガラス糸で構成される、D450 1/0 1.0Zを使用し、エアジェットルームで、たて糸55本/25mm、よこ糸55本/25mmの織物密度で平織りに製織し生機を得た他は、実施例1と同様の方法で、ガラスクロスを得た後、上述のプリプレグ作成方法により比較例3のプリプレグとした。表1に示した評価結果からわかるように、比較例3のプリプレグを用いて得られた基板の寸法変化量のばらつき、レーザ加工性の穴径分布のばらつきは大きいものであった。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、プリプレグ及び多層プリント配線板を作成する工程で、生産性に優れ、寸法変化量のばらつき、レーザ穴加工性の穴径分布のばらつきを低減させることができるプリント配線板の分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1、2記載の補強用繊維織物の組織図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
たて糸とよこ糸から構成される織物であって、表組織と裏組織からなる二重組織を有し、該表組織と該裏組織を交換する風通組織織物であることを特徴とするプリント配線板の基板補強用繊維織物。
【請求項2】
たて糸及びよこ糸を構成する繊維がガラス繊維であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の基板補強用繊維織物。
【請求項3】
たて糸及びよこ糸を構成する繊維が、有機繊維であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の基板補強用繊維織物。
【請求項4】
請求項1から3に記載の繊維織物と半硬化状態のマトリックス樹脂からなるプリプレグ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリプレグを加熱加圧硬化させたプリント配線板用基板。

【図1】
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【公開番号】特開2006−233369(P2006−233369A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50311(P2005−50311)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000116770)旭シュエーベル株式会社 (7)
【Fターム(参考)】