説明

基準測定法に基づく吸込み式漏れ検出器

【解決手段】吸込み式漏れ検出器は、吸込み先端部(13)を含むハンドル(10)を備えている。吸込み先端部に、測定ガス吸込口(14)及び基準ガス吸込口(15)が設けられている。基準ガス吸込口(15)は周囲空気を吸込むために設けられている。本発明によれば、両方の測定ガス吸込口及び基準ガス吸込口が同一の方向で感知するように、基準ガス吸込口(15)は測定ガス吸込口(14)と略同一に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ装置を含む基部と、吸込み先端部を含みホースを介して基部に接続されているハンドピースと、測定ガスを吸い込むための測定ガス吸込口と、基準ガスを吸い込むための基準ガス吸込口と、測定ガス及び基準ガスの濃度を判定するためのガス分析器とを備えた基準測定法に基づく吸込み式漏れ検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第00/55603号パンフレットは、測定ガス吸込口とは別に、更に基準ガス吸込口を備えた基準測定法に基づく吸込み式漏れ検出器について述べている。吸込み式漏れ検出は、冷却剤又は炭化水素を含む検査対象について行われることが多い。このような処理では、検査対象に存在する媒体が試験ガスとして機能する。漏れ口が存在する場合、少量の試験ガスが吸込み式漏れ検出器に達する。吸込み式漏れ検出器は、試験ガスの検出に適したガス分析器を含んでいる。吸込み式漏れ検出における問題は、漏れ口から生じる試験ガスだけでなく吸込み先端部の周囲のガスも吸い込むことにある。後者の周囲のガスが、それ以前に検出された漏れ口又は生産ラインの充填ステーションから生じる場合がある僅かな濃度の試験ガスを含んでしまう場合、これらの試験ガス濃度もガス検出器によって登録される。測定ガスと周囲ガスとを区別するために、ガス分析器に測定キュベット及び基準キュベットを設けることが提案されており、このような構成により測定ガス信号及び基準信号が得られる。両方の測定ガス信号及び基準信号は、まず夫々の有用な信号が変調されて次に位相感知整流を受けるようにロックイン増幅器で処理される。このようにして、基準信号に対する測定ガス信号の差異を表わす有用な信号が得られる。
【0003】
国際公開第02/48686号パンフレットは、ここでも測定ガス吸込口及び基準ガス吸込口を備えた吸込み式漏れ検出器について述べている。切換バルブにより、両方の測定ガス吸込口及び基準ガス吸込口は、真空ポンプ装置に関連付けて配置されたキュベットの入り口に交互に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第02/48686号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却装置及び空調システムでは、冷却剤としてのCO2 の使用が増大している。このような装置で行なわれる気密性検査では、周囲空気が、試験ガスとしてのCO2 に関して検査される必要がある。CO2 は、作業者によって吐き出される空気中にも高濃度で含まれている。基準測定法に基づき作動する通常の吸込み式漏れ検出器では、測定ガス吸込口が吸込み先端部の端に配置されているのに対し、基準ガス吸込口は引込んだ位置に横方向に配置されている。従って、作業者が吐き出した空気の流れが基準ガス吸込口に達する場合がある。このような場合、測定箇所の周りの周囲空気中のCO2 の濃度が測定箇所におけるCO2 の濃度自体より高いので、装置は「負の漏れ」を検出する。
【0006】
本発明は、信頼し得る結果が周囲空気中の生じ得る流れに関係なく得られて、漏れ検出及び漏れ評価が向上している基準測定法に基づく吸込み式漏れ検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸込み式漏れ検出器は、請求項1に定義されている。本発明の吸込み式漏れ検出器は、吸込み先端部に設けられた測定ガス吸込口及び基準ガス吸込口が互いに略平行に配置されていることを特徴とする。
【0008】
2つの測定ガス吸込口と基準ガス吸込口とを略平行に配置することにより、2つの吸込口が通常同一の方向から空気を吸い込むことが達成される。従って、測定結果の精度が、空気の偶発的又は一時的な横断流によって著しく低下しない。作業者が、漏れを検査すべき箇所に測定ガス吸込口を直接置く一方、基準ガス吸込口は、測定ガス吸込口から横方向に離隔して配置されているが、同一の主方向に向けられている。
【0009】
2つの測定ガス吸込口と基準ガス吸込口とが互いに略平行に配置されているということは、2つの吸込口の僅かな角度のずれが許容され得るということである。このずれは、最大15度であり、好ましくは最大10度である。本発明の利点は、クロスフローを伴って動的に移動している大気で明らかとなる。このようなクロスフローは作業者の息の吸込み及び吐出しの結果として生じる場合がある。上述したように吸込み先端部に測定ガス吸込口及び基準ガス吸込口を配置することによって、ここでは両方の測定ガス吸込口及び基準ガス吸込口が同一の方向に有効であるので、測定感度に方向選択性が与えられる。
【0010】
測定ガス吸込口及び基準ガス吸込口は夫々、単一の開口又は複数の開口として構成されることが可能であり、例えば、個別の孔又は多孔性体の孔構造として構成され得る。更に、測定ガスに透過性を有する膜を使用することが可能である。
【0011】
基準ガス吸込口は、測定ガス吸込口に対して引込んだ位置に配置されていることが好ましい。このような構成により、測定ガス吸込口が測定箇所に直接置かれることが可能である一方、基準ガス吸込口が、測定箇所から更に離れた位置に維持されて、従ってより大量の周囲空気を吸い込むことが達成される。
【0012】
吸込み先端部は、検出システムへの非常に対称的なガス搬送を達成すべく構成されている。このために、吸込み先端部からガス分析器に通じる2本のガス通路の長さ及び体積は略等しい。好ましくは、吸込み先端部に設けられた測定ガス吸込口及び基準ガス吸込口が、互いに同軸であるか、又は回転対称である。測定ガス吸込口が、基準ガス吸込口に近いにもかかわらずガス流のある程度の分離をもたらし得るために、吸込み先端部は適切な形状を有する必要がある。
【0013】
吸込み式漏れ検出器の工業的用途では、装置の頑強性に関する要求が非常に高い。この理由は、一方では厳しい作業環境のためであり、他方では装置の極度の連続稼働のためである。吸込み先端部は、以下の様々な設計オプションの内のいずれか1つによって実現され得る。
1.中央管の周りの開放環状間隙に対して僅かに突出する中央管
2.基準ガス導管に設けられる一連の微小な通路に囲まれて突出する中央管であり、前記微小な通路は、
a.別々に穿孔されるか又はエッチングされる。
b.多孔性フィルタ体として構成されている。
3.基準ガス導管に挿入される環状膜に囲まれて突出する中央管
4.最も高い位置の中心に形成された測定ガス吸込口と、多少「より奥まった位置に設けられた」環状間隙とを含む半球状又は半楕円状体であり、前記環状間隙は、ここでも、開口、個別の孔又は膜によって形成され得る。
【0014】
基準測定法に応じて設計された本発明の吸込み式漏れ検出器は、ガス調整した状態で作動する。測定ガス及び基準ガスは、測定ガス吸込口及び基準ガス吸込口間で交互に吸い込むことにより、検出システムでの測定処理に交互に供給される。それにより、略正弦波の信号が生成されて、該信号の振幅は、測定ガスの濃度と基準ガスの濃度との差を表す。測定ガスと基準ガスとの切換は、ロックインユニットによって制御される切換バルブによって行なわれる。振幅の差は、バルブ切換周波数と同期させて積分される。このようにして、誤った周波数及び/又は位相位置を有する干渉信号が除外される。検出システムの時定数は、不十分な振幅変調による信号強度の損失を回避するために、十分短くされる必要がある。検出システムの時定数は、少なくとも変調周波数の逆数に等しい。他方では、変調周波数は、漏れ口を動的に突き止める得るために十分高くされる必要がある。これは、作業者が漏れ口を見落とさずに、十分に高速で吸込み先端部を移動させ得ることを意味する。一般的な変調周波数は約3Hzである。夫々の用途に応じて、吸込み先端部の材料は、非常に硬いか、又は耐摩耗性且つ弾性を有し得る。
【0015】
ガス流のための切換バルブが、吸込み先端部内若しくは吸込み先端部上に、又は2本のガス搬送導管の端部に配置され得る。切換バルブは可能な限り小さい死空間を有しており、切換バルブの負荷変動耐久性は、バルブがより長い期間に亘って夫々の変調周波数で連続操作に耐え得るために十分である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ガス分析器がハンドルと一体化されている吸込み式漏れ検出器の第1実施形態を示す図である。
【図2】ガス分析器が質量分析計である実施形態を示す図である。
【図3】測定ガス吸込口の周りに分配して配置された通路口を含む吸込み先端部を示す概略図である。
【図4】測定ガス吸込口及び基準ガス吸込口が同軸に設けられている吸込み先端部の実施形態を示す図である。
【図5】厳しい作業状態の用途に特に適している更なる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を、図面を参照して以下に更に詳細に説明する。
【0018】
図1に示された吸込み式漏れ検出器は、ハンドグリップとして構成されてホース11を介して基部12に接続されたハンドル10を備えている。吸込み先端部13が、細長い前記ハンドル10の前方端部から延びている。吸込み先端部は、2本の別個の通路が内部に配置されている細長い管を含んでいる。前記通路の内の1つが、前方の測定ガス吸込口14で終端となっている。この測定ガス吸込口の面は、前記吸込み先端部13の長手軸に対して直角の方向を向いている。別の通路は基準ガス吸込口15で終端となっており、基準ガス吸込口15は僅かに引込んだ位置に配置されており、基準ガス吸込口15の表面が前記測定ガス吸込口14の表面と平行に延びている。
【0019】
基部12は、特には真空ポンプ装置を含んでいる。前記ホース11を介して、真空がハンドル10に送られる。ハンドル10はガス分析器(不図示)を含んでいる。該ガス分析器は、気体CO2 を選択的に検出すべく作動する赤外線ガス分析計を含んでいる。このようなガス分析器は、簡素でコンパクトな構造設計であり、そのため、ガス分析器がハンドグリップ内に収容され得る。電力供給がホース11を介して基部12によって行われる。ハンドル10は更に、操作キー、例えばキー16を含んでおり、キー16によって作業者が測定処理を開始する。基準ガス吸込口15が測定ガス吸込口14と略同一の方向に設けられているので、両方の基準ガス吸込口及び測定ガス吸込口は同一方向からガスを吸い込む。
【0020】
図2は、質量分析計が検出システムとして用いられている吸込み式漏れ検出器の別の実施形態を示している。質量分析計は、設備レベルでの費用が増加するが、分析が必要なガスに関して最も高い選択性、最も高い感度及び大きな適応性を有するという利点がある。
【0021】
図2によれば、吸込み先端部13は、測定ガス吸込口14に接続されている測定ガス導管20と、測定ガス導管20と同軸に配置されて基準ガス吸込口15に接続されている基準ガス導管21とを含んでいる。両方の測定ガス導管及び基準ガス導管はホース11を通って基部12に延びている。基部は、本例では3/2 方式バルブとして構成されている切換バルブ22を含んでいる。これは、バルブが3つの接続及び2つの選択的な切換パスを有していることを意味する。入口22aが測定ガス導管20に接続されており、別の入口22bが基準ガス導管21に接続されている。切換バルブの出口22cが、ここでは質量分析計として構成されているガス分析器25に接続されている。前記質量分析計は高真空を必要とする。このために、ターボ分子ポンプの形態であるプレ真空ポンプ27及び高真空ポンプ28を備えた真空ポンプ装置26が設けられている。前記ガス分析器25の入口には、絞り弁29が配置されている。
【0022】
ガス分析器25の測定信号が、ライン30を介してロックインユニット31に与えられる。ロックインユニット31は、出力信号を表示部32又は別の表示器に与える。ロックインユニット31は、更に切換バルブ22のソレノイド33を制御する。ロックインユニット31は、クロック発生器からクロック信号を受け取り、入口22a 又は入口22b を出口22c に交互に接続すべく、対応する周期で切換バルブ22を切り替える。
【0023】
図3,4及び5には、吸込み先端部の様々な実施形態が示されている。図3は、測定ガス吸込口14がその前方端に形成されている管35を備えた吸込み先端部13a の実施形態を示している。管の壁には微小な通路が配置されており、微小な通路は全体として基準ガス吸込口15を構成している。前記微小な通路は、等しい角距離で基準ガス吸込口14を囲んでいる。微小な通路が基準ガス導管21に接続されている一方、測定ガス吸込口14は測定ガス導管20に接続されている。両方の測定ガス導管20及び基準ガス導管21は、図2に示されている切換バルブ22と同一の方法で構成されて制御される切換バルブ22に通じている。
【0024】
図4は、外管35と、外管35に同軸に配置された内管40とを含む吸込み先端部13b を示している。前記内管40は測定ガス吸込口14を構成しており、2本の外管及び内管間の環状空間が基準ガス吸込口15を構成している。内管40は外管35に対して順方向に突出していることが好ましい。
【0025】
図5に係る実施形態では、前記2本の測定ガス導管20及び基準ガス導管21を含む吸込み先端部13c が耐摩耗性弾性材料から形成されている。吸込み先端部13c の前方端部が丸みを帯びたドーム42から構成されており、ドーム42の頂部に測定ガス吸込口14が形成されている。更に前記ドーム42には、複数の開口が、全体として基準ガス吸込口15を形成すべく設けられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ装置(26)を含む基部(12)と、吸込み先端部(13)を含みホース(11)を介して前記基部に接続されているハンドピース(10)と、測定ガスを吸い込むための測定ガス吸込口(14)と、基準ガスを吸い込むための基準ガス吸込口(15)と、測定ガス及び基準ガスの濃度を判定するためのガス分析器(25)とを備えている基準測定法に基づく吸込み式漏れ検出器において、
前記吸込み先端部(13)に設けられた測定ガス吸込口(14)及び基準ガス吸込口(15)は、互いに略平行に配置されていることを特徴とする吸込み式漏れ検出器。
【請求項2】
前記基準ガス吸込口(15)は、前記測定ガス吸込口(14)に対して引込んだ位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の吸込み式漏れ検出器。
【請求項3】
前記基準ガス吸込口(15)は、前記測定ガス吸込口(14)の周りに配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸込み式漏れ検出器。
【請求項4】
前記基準ガス吸込口(15)は、前記測定ガス吸込口(14)を囲む環を構成する複数の通路口を含んでいることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の吸込み式漏れ検出器。
【請求項5】
前記吸込み先端部(13)は、耐摩耗性弾性材料から形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の吸込み式漏れ検出器。
【請求項6】
前記吸込み先端部(13)は、前記前記測定ガス吸込口(14)及び基準ガス吸込口(15)が配置されている丸みを帯びたドーム(42)を含んでいることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の吸込み式漏れ検出器。
【請求項7】
前記測定ガス吸込口(14)と前記基準ガス吸込口(15)とを前記ガス分析器(25)に交互に接続するための切換バルブ(22)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の吸込み式漏れ検出器。
【請求項8】
前記切換バルブ(22)は、該切換バルブ(22)の切換と同期させて前記ガス分析器(25)の信号を処理するロックインユニット(31)によって制御されていることを特徴とする請求項7に記載の吸込み式漏れ検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−511294(P2011−511294A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545486(P2010−545486)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051394
【国際公開番号】WO2009/098302
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(500469855)インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (43)
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D−50968 Koeln, Germany
【Fターム(参考)】