説明

基盤造成誘導資材及び基盤造成誘導資材を用いた緑化補助工法並びに緑化工法

【課題】緑化施工面に非面的に生育基盤を造成する場合に、任意の造成形状又は不均一な造成厚さの生育基盤の位置出しと造成を容易に行なえる基盤造成誘導資材及び基盤造成誘導資材を用いた緑化工法を提供する。
【解決手段】法面・斜面等の緑化施工面1に非面的な生育基盤2を造成する緑化工法に用いる補助資材としての基盤造成誘導資材21であって、少なくとも緑化施工面1に造成する非面的な生育基盤2の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材22からなる基盤造成誘導資材を提供する。又、緑化施工面1に非面的な生育基盤2を造成する緑化工法において、緑化施工面1の全面若しくは一部に網状体24を張った後、少なくとも輪郭構成部材22,22…からなる基盤造成誘導資材21,21…を任意の間隔で設置し、生育基盤2を、輪郭構成部材22,22…に沿うようにして造成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面・斜面等の緑化施工面に対して、緑化のための生育基盤を非面的(非全面的)に造成する場合に用いる基盤造成誘導資材及び基盤造成誘導資材を用いた緑化補助工法並びに緑化工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
法面・斜面等の緑化においては、植生シート工、植生マット工、厚層基材吹付工、客土種子吹付工などに代表される緑化工法を用いることにより、緑化施工面に全面的に生育基盤を造成する緑化工法が広く適用されている。
【0003】
このような、緑化施工面に生育基盤を全面的に造成する緑化工法に対し、近年では生態系の早期回復、植物の自然侵入の促進、播種、植栽等により同時に導入された植物の競合の回避、緑化施工コストの低減などを目的に、緑化のための生育基盤を緑化施工面に非面的に造成する工法が発明されている(特許文献1)。
【0004】
緑化施工面に生育基盤を全面的に造成する場合には、例えば、植生シート工や植生マット工であれば、施工対象となる緑化施工面を全面的に被覆するように植生シートや植生マットを張り付けることによって所定の緑化を行なうことができる。また、厚層基材吹付工や客土種子吹付工などの吹付や散布による生育基盤造成を行なう場合には、施工対象となる緑化施工面に植生基材を直接吹付・散布したり、金網などを張り付けてから植生基材を吹付・散布したりすることによって侵食防止に有効な面的(全面的)な緑化を行なうことができる。これらの緑化方法は現在では広く普及している。
【0005】
これに対し、法面、斜面等の緑化施工面に生育基盤を非面的に造成する工法を適用する場合には、あらかじめ生育基盤を非面的に造成する部分の位置出しが必要となる。
本発明でいう位置出しとは、緑化施工面に生育基盤を非面的に造成する部分及びその形状並びに基盤造成厚さを、生育基盤の造成作業に前もって設定する作業工程をいう。
【0006】
本発明に関係する先行技術としては、(1)緑化施工面にネットを敷設する際、このネットにあらかじめ生育基盤を造成する位置と造成しない位置とを規定しておく方法(特許文献2)、(2)緑化施工面に金網を敷設した後、生育基盤を造成する部分と造成しない部分の境界部に型枠が合致するように連結部材を有する部材を設置する方法(特許文献3)、(3)施工対象面に金網を敷設した後、生育基盤を造成する部分と造成しない部分の境界部に可撓性の仕切り材を設置する方法(特許文献4)、(4)緑化施工面に帯状に生育基盤を造成する場合に、平面若しく曲面を具備する板状部材を帯状の生育基盤を造成する部分の幅員を横切る位置に立設し、この部材を連続的若しくは断続的に配置する方法(特許文献5)、などが開示されている。
【特許文献1】特開平9−224429号公報
【特許文献2】特開2001−220750号公搬
【特許文献3】特開2002−332640号公報
【特許文献4】特開2002−332641号公報
【特許文献5】特開2004−169366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
法面・斜面等の緑化施工面に生育基盤を非面的に造成する工法では、造成する生育基盤の形状や厚さが異なる揚合がある。具体的には、非面的に造成される生育基盤が帯状、島状、格子状、あるいは任意の形状となったり、急勾配の法面などにおいては、非面的に造成する生育基盤の表面を凸字型や波型にすることがあるため、生育基盤によっては造成する生育基盤の厚さが均一にならない場合がある。このようなあらゆる平面及び断面形状の非面的な生育基盤を造成する緑化工法を適用する上で、緑化施工面の生育基盤を造成する位置に、生育基盤の所定の形状と所定の基盤造成厚をあらかじめ容易に規定することは極めて重要な作業工程であるにもかかわらず、従来の方法では実施が困難であった。この問題は、法面、斜面の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法を適用する上で大きな障害となっていた。
【0008】
特許文献2に示した、あらかじめ緑化施工面に敷設するネットを用いて位置出しをする方法では、生育基盤を非面的に造成する部分が帯状や一定の形状である場合には適用できるが、あえて緑化施工面にネットを設置する必要がない揚合には過剰な経費をかけることになる。また、造成する生育基盤の厚さを同時に規定することができないことから、基盤造成時には個別の方法を用いて施工、管理しなければならない問題を有している。さらに、生育基盤が均一な厚さとならない表面が凸字状や波状の断面形状の生育基盤を造成する場合にも、別途厚さを施工・管理する手法を適用しなければならない問題を有している。
【0009】
特許文献3に示した、あらかじめ緑化施工面に金網を敷設した後、生育基盤を造成する部分と造成しない部分の境界部に型枠が合致するように連結部材を有する部材を設置することにより位置出しする方法では、型枠を使用することから造成する非面的な生育基盤が等間隔の帯状以外の形状となる場合には適用が困難である問題を有している。また、特許文献2の方法と同様に、生育基盤が均一な厚さとならない凸字状や波状の断面形状の生育基盤を造成する場合には、別途厚さを施工・管理する手法を適用しなければならない問題を有している。
【0010】
特許文献4に示した、あらかじめ施工対象面に金網を敷設した後、生育基盤を造成する部分と造成しない部分の境界部に可撓性の仕切り材を設置することにより位置出しする方法では、特許文献3の方法と比較して凹凸のある緑化施工面へ適用する場合に効果的であるが、特許文献3の方法と同様に、造成する非面的な生育基盤が帯状以外の形状となる場合や、生育基盤が均一な厚さとならない凸字状や断面形状の生育基盤を造成する場合には、別途厚さを施工・管理する手法を適用しなければならない問題を有している。
【0011】
特許文献5に示した、緑化施工面に帯状に生育基盤を造法する場合に、あらかじめ平面若しくは曲面を具備する板状部材を帯状の生育基盤を造成する部分の幅員を横切る位置に立設し、この部材を連続的若しくは断続的に配置する方法では、特許文献3乃至特許文献4の方法と比較して施工が容易な方法であるが、特許文献3乃至特許文献4の方法と同様に、造成する非面的な生育基盤が帯状以外の形状となる場合や、生育基盤が均一な厚さとならない凸字状や波状の断面形状の生育基盤を造成する場合には、別途厚さを施工・管理する手法を適用しなければならない問題を有している。
【0012】
そこで、従来の方法が有していた問題点である、(1)緑化施工面にあらかじめネット等の網状体を敷設しないと位置出が困難な点、(2)非面的に造成される生育基盤が任意の形状となる場合にその位置出しが困難な点、(3)非面的に造成する生育基盤が凸字状や波状となるような造成厚さが均一とならない場合には施工・管理のための別の方法が必要となる点、(4)設計された生育基盤と同じ断面形状の生育基盤の造成とその管理に手間がかかる点、(5)特に傾斜地における吹付や散布による基盤造成において、設計された生育基盤と同じ断面形状の生育基盤の造成とその管理に手間がかかる点、を解決することが求められている。
【0013】
以上の現状に鑑み、本発明は、緑化施工面に非面的に生育基盤を造成する場合に、任意の造成形状又は不均一な造成厚さの生育基盤の位置出しと造成を容易に行なえる基盤造成誘導資材及び基盤造成誘導資材を用いた緑化補助工法並びに緑化工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、法面・斜面等の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法に用いる補助資材としての基盤造成誘導資材であって、少なくとも該緑化施工面に造成する該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなることを特徴とする、基盤造成誘導資材を提供するものである。
【0015】
本発明でいう造成する生育基盤の断面形状の輪郭とは、少なくとも施工後に外見的に見える造成された生育基盤の表面部分の輪郭であり、緑化施工面と接地している外見的に見えない部分の輪郭までは含まない。
【0016】
緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する箇所の位置出しに用いる基盤造成誘導資材は、少なくとも造成する生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる。このような構成とすることにより、造成する生育基盤の所定の形状と厚さを規定することができる。
【0017】
また、一定ではない形状や異なる厚さからなる生育基盤を造成する場合には、少なくとも造成する生育基盤の主要な位置における断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる基盤造成誘導資材を複数組み合わせて緑化施工面に設置することにより、あらゆる形状に対しても位置出しすることができる。さらに、例えば、表面が凸字状や波状の生育基盤を造成する場合には、少なくとも造成する生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材を凸字型や波型にした基盤造成誘導資材とすることにより、所定の形状と厚さを規定することができる。
【0018】
尚、基盤造成誘導資材には、さらに当該資材を緑化施工面に設置するための設置部材が設けられている。設置部材とは、例えば緑化施工面に基盤造成誘導資材を差し込んで設置するための部材(基盤造成誘導資材の延長部材又は別部材)や、緑化施工面にあらかじめ張り付けられた金網やネット等の網状体に設置・結束するための部材などがある。本発明においては、少なくとも造成する生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材から構成されている基盤造成誘導資材であれば、特に設置部材については限定されない。
【0019】
請求項2に係る発明は、法面・斜面等の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法を補助するための緑化補助工法において、少なくとも該緑化施工面に造成する該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる複数の基盤造成誘導資材を、該緑化施工面に任意の間隔で設置することを特徴とする緑化補助工法を提供するものである。
【0020】
例えば、同じ断面の形状からなる帯状の生育基盤を造成する場合には、本発明の請求項1記載の複数の基盤造成誘導資材を任意の間隔で設置することにより、非面的に生育基盤を連続的に造成する場合の位置出しを行なうことができる。また、表面が凸字状や波状の生育基盤を造成する場合には、少なくとも造成する生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材を凸字型や波型にした複数の基盤造成誘導資材を任意の間隔で設置することにより、所定の形状と厚さを規定することができる。
【0021】
また、一定ではない形状や厚さの生育基盤を造成する場合には、その生育基盤の主要な位置における断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる本発明の請求項1記載の基盤造成誘導資材を複数個用意し、これらを組み合わせて任意の間隔で設置することによりあらゆる形状と厚さの位置出しを行なうことができる。さらに、例えば表面が凸字状や波状の生育基盤を造成する場合には、少なくとも造成する生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材を凸字型や波型にした複数の基盤造成誘導資材を任意の間隔で設置することにより、所定の形状を規定することができる。
【0022】
請求項3に係る発明は、法面・斜面等の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法を補助するための緑化補助工法において、該緑化施工面の全面若しくは一部に網状体を張り付けた後、少なくとも該緑化施工面に造成する該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる複数の基盤造成誘導資材を、該緑化施工面に任意の間隔で設置することを特徴とする緑化補助工法を提供するものである。
【0023】
例えば、緑化施工面の全面に金網や樹脂ネットなどの網状体を張ることにより、法面の安定性を向上させ、非面的に造成する生育基盤の接着性を高めることができる。また、基盤造成誘導資材を緑化施工面に挿入して設置することが困難な硬質な場合には、あらかじめ網状体を緑化施工面に張ることにより、基盤造成誘導資材の設置を容易にすることができる。さらに、生育基盤を造成しない部分の土砂移動や落石の防止、散布種子の定着を促進するなどの効果が得られる。
【0024】
あらかじめ張り付ける網状体は緑化施工面の一部に張り付けてもよい。例えば非面的に生育基盤を造成する部分のみに張り付けることによって位置出しや生育基盤の接着性を高めたり、あるいは生育基盤を造成しない部分に張り付けることによって緑化施工面を保護することができる。
【0025】
請求項4に係る発明は、法面・斜面等の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法において、少なくとも該緑化施工面に造成する該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる複数の基盤造成誘導資材を任意の間隔で設置した後、生育基盤を、該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材に沿うようにして造成することを特徴とする緑化工法を提供するものである。
【0026】
請求項2又は3記載の工法により設置された基盤造成誘導資材の上から、基盤造成誘導資材の輪郭に沿うようにして生育基盤を造成することにより、設計に基づいて位置出しされた形状と同様の生育基盤を緑化施工面に造成することができる。設置する基盤造成誘導資材の組み合わせによって、あらゆる形状と厚さを規定することができることから、生育基盤を造成する作業においては、任意の間隔で適宜設置された基盤造成誘導資材の輪郭を目安にして、これに沿うようにして生育基盤を造成していくだけで、所定の形状と厚さを有する生育基盤を容易に造成することができる。
【0027】
請求項5に係る発明は、法面・斜面等の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法において、該緑化施工面の全面若しくは一部に網状体を張った後、少なくとも該緑化施工面に造成する該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる複数の基盤造成誘導資材を任意の間隔で設置し、生育基盤を、該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材に沿うようにして造成することを特徴とする緑化工法を提供するものである。
【0028】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加え、請求項3記載の発明の効果も期待できる。
【0029】
請求項6に係る発明は、前記非面的な生育基盤の造成を、吹付機等を用いた吹付・散布手段により行なうことを特徴とする請求項4又は5に記載の緑化工法を提供するものである。
【0030】
本発明の生育基盤の造成方法は、人力や機械による撒き出しのほか、植生基材吹付工の範疇に入る工法として、吹付機を用いた厚層基材吹付工や客土種子吹付工、あるいは吹付機以外の散布装置や撒き出し装置を用いた吹付工や散布工を適用する場合に適用することができる。特に、輪郭構成部材に沿うようにして生育基盤を造成することができる生育基盤の造成方法、例えば作業員が吹き付け位置の近くで基盤造成作業(吹き付け作業)ができるようなエアー方式の厚層基材吹付工を適用する場合に好適である。特に、道路法面や山腹崩壊地等の傾斜地においては、生育基盤の造成を作業員が口―プに吊り下がった状態で吹き付けにより行なわなくてはならないが、その場合においても作業員は設置されている基盤造成誘導資材の輪郭に沿うように生育基盤を吹付造成すれば所定の形状と厚さを有する生育基盤を容易に造成できることから、特別な施工・管理手段を講じることなく、効率的に非面的な生育基盤を緑化施工面に造成することができる。
【0031】
本発明は、非面的に生育基盤を造成する工法が有する特徴である自然回復を図ることを目的とする場合に用いられることから、緑化施工面は、道路法面、山腹崩壊地等の傾斜地となる場合が多いが、平地においてももちろん適用可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、従来から行なわれてきた面的施工法と比較して、法面・斜面等の緑化施工面に非面的に生育基盤を造成する工法が有していた問題を極めて施工が容易で経済的な方法で解決することができる。
即ち、(1)緑化施工面にあらかじめネット等の網状体を敷設しなくても位置出しが可能である。また、付設したネット等の網状体を利用することも可能である。(2)非面的に造成される生育基盤が任意の形状と厚さになる場合にその位置出しが容易である。(3)非面的に造成する生育基盤が凸字状や波状となるような造成厚さが均一とならない場合にも施工・管理が容易であり、別の方法を必要としない。(4)設計された生育基盤と同じ断面形状の生育基盤の造成とその管理が容易である。(5)傾斜地における吹付や散布による基盤造成において設計された生育基盤と同じ断面形状の生育基盤の造成とその管理が容易である。
従って、本発明は、緑化施工面に非面的に生育基盤を造成する場合に、任意の造成形状又は不均一な造成厚さの生育基盤の位置出しと造成を容易に行なえる基盤造成誘導資材及び基盤造成誘導資材を用いた緑化補助工法並びに緑化工法を提供することができる。
【0033】
併せて本発明は、法面・斜面等に非面的に生育基盤を造成する緑化手法の普及に大きく貢献でき、緑化工事の省力化と経済性の向上を図りながら、速やかに自然回復を実現させることが可能となる作用効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1に従い、本発明の形態の概略を説明する。本発明は、法面・斜面等の緑化施工面1に非面的な生育基盤2を造成する緑化工法に関するもので、非面的な生育基盤2を造成する工法とは、法面・斜面等の緑化施工面1に生育基盤を造成しない裸地部分3を残しながら生育基盤2、例えば、造成する生育基盤2の断面形状が凸字状の生育基盤2a、波状の生育基盤2b、あるいは蒲鉾状の生育基盤2cなどを造成する工法をいう。図1では帯状の非面的な生育基盤2を造成する場合の実施例を示しているが、非面的に造成する生育基盤2の形状はこれに限定されるものではなく、緑化施工面1に裸地部分3を残しながら、非全面的に生育基盤2を造成する形状であれば、いかなる形状でもよい。
【0035】
図1に於いて、21は、本発明の基盤造成誘導資材であって、基盤造成誘導資材21は、法面・斜面等の緑化施工面1に非面的な生育基盤2を造成する工法に用いる補助資材であって、少なくとも緑化施工面1に造成する非面的な生育基盤2の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材22から構成されている。
【0036】
この輪郭構成部材22について図1及び図2をもとにさらに詳しく説明する。基盤造成誘導資材21を少なくとも輪郭構成部材22から構成することにより、例えば、非面的な蒲鉾状の生育基盤2cを造成する場合には、比較的単純な断面形状と設計吹付厚tからなる蒲鉾状の輪郭構成部材22cを基盤造成誘導資材21cとして用いることにより蒲鉾型の育成基盤2cを造成することができる。
【0037】
また、非面的な生育基盤2bのように表面が波型であったり、非面的な生育基盤2aのように表面が凸字状である場合には、それぞれ造成する生育基盤2bあるいは2aの断面形状の輪郭を構成する少なくとも輪郭構成部材22bあるいは22aからなる基盤造成誘導資材21b或いは21aを緑化施工面1に設置することにより、設計吹付厚がt1とt2のように異なる断面形状からなる生育基盤2bあるいは2aを造成する場合の位置出しを容易に行なうことができる。
【0038】
基盤造成誘導資材21には、輪郭構成部材22を法面に設置するための設置部材23が兼ね備えられている。例えば、図2に示す実施例において、基盤造成誘導資材21は、輪郭構成部材22の両端部を延設して平行に延びる設置部材23,23が備えられ、設置部材23,23を緑化施工面1である法面に突き刺すことにより、輪郭構成部材22を法面に設置するように構成されている。
【0039】
本実施例では、輪郭構成部材22を法面に設置するための機構である設置部材23,23が、輪郭構成部材22から延設し、輪郭構成部材22に直結しているが、設置部材23は、必ずしも輪郭構成部材22に直結した部材となるものではなく、別部材であっても良く、例えば、法面・斜面等の緑化施工面1にあらかじめ金網や樹脂ネットなどの網状体(図示せず)を張る場合には、設置部材23の部分を網状体に設置できるような取り付け部材や結束部材とすることができる。
【0040】
次に、図3に従って、まず、本発明の緑化工法を補助するための緑化補助工法について説明する。基盤造成誘導資材21の設置においては、少なくとも緑化施工面1に造成する生育基盤2(図例では、凸字状の生育基盤2a)の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材22,22…(図例では、輪郭構成部材22a,22a…)からなる複数の基盤造成誘導資材21,21…(図例では、基盤造成誘導資材21a,21a…)を、緑化施工面1に任意の間隔i1,i2…をおいて設置する。この場合、輪郭構成部材22,22…を設置する前に、緑化施工面1の表面に金網や樹脂ネットなどの網状体24を、アンカーピンや留め串などの張り付け手段25を用いて設置しておくことにより、緑化施工面1の表層の保護と、緑化施工面1と造成する生育基盤2との付着性を向上させることができる。また、輪郭構成部材22,22…を設置するための位置出しが可能となり、更に、輪郭構成部材22,22…を取り付け部材や結束部材を用いて設置することができる。
【0041】
本発明における基盤造成誘導資材21は、法面の形状や造成する生育基盤の形状等に応じて適宜必要な位置に設置する。複数の基盤造成誘導資材21,21…を緑化施工面1に設置する任意の間隔i1、i2…は、それぞれ同じ間隔でも相違する間隔でもかまわない。これらの間隔は、後に生育基盤2を造成する際に、複数の輪郭構成部材22,22…に沿って所定の生育基盤2を造成することができる間隔であればよい。
【0042】
なお、単純な帯状の生育基盤2を造成する場合などにおいては任意の間隔を一定間隔とするとよいが、緑化施工面1に凹凸があったり地形的変化が大きい場合には、基盤造成作業の目安となる箇所に適宜設置するとよい。また、非面的に造成する生育基盤2の接地幅Lが部分的に異なったり変化したりする形状の位置出しを行う場合には、造成する生育基盤2の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材22の接地幅Lの異なる部材を適宜組み合わせることにより、あらゆる非面的に造成する生育基盤2の幅にも対応することができる。
【0043】
次に、帯状以外の非面的な生育基盤2を造成する場合について図4をもとに説明する。
帯状以外の非面的な生育基盤2を造成する場合において、基盤造成誘導資材21は、複数の輪郭構成部材22,22…を連結部材26で連結して構成してもよい。例えば、図に示す円形状の非面的な生育基盤2dを造成する場合には、造成する生育基盤2dの断面形状の輪郭を夫々構成する輪郭構成部材22d,22d…を連結部材26,26…で連結した略円形状の基盤造成誘導資材21dとしてもよい。これによって、容易に円形状の非面的な生育基盤2dを緑化施工面1に造成することができる。
【0044】
又、造成する生育基盤2の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材22,22…と連結部材26,26…とを適宜組み合わせることにより、多角形状、十字形状などの形状は勿論のこと、様々な非面的な形状についても対応することができる。連結部材26,26…の連結位置は、輪郭構成部材22,22…相互が連結できれば限定されない。また、複数の輪郭構成部材22,22…を組み合わせてひとつの形状を構成するようしてもよい。
【0045】
次に、本発明の緑化工法について図3をもとに説明する。本発明の緑化工法は、最初に、前述した緑化補助工法を行なう。即ち、少なくとも緑化施工面1に造成する生育基盤2の輪郭構成部材22,22…からなる基盤造成誘導資材21,21…を任意の間隔i1、i2…をおいて設置する。
この場合、基盤造成誘導資材21を設置する前に、緑化施工面1の表面に金網や樹脂ネットなどの網状体24を、アンカーピンや留め串などの張り付け手段25,25…を用いて設置しておくことにより、緑化施工面1の表層の保護と、緑化施工面1と造成する生育基盤2との付着性を向上させることができる。
そして、緑化施工面1の表面に金網や樹脂ネットなどの網状体24が設置される場合は、取り付け部材や結束部材等を用いて、輪郭構成部材22,22…を網状体24に取り付ける。或いは、図2に示した設置部材23を備える場合は、設置部材23を緑化施工面1に打ち込んでもよい。
【0046】
次に、設置された基盤造成誘導資材21,21…の輪郭構成部材22,22…を目安として、これに沿うようにして基盤造成作業を行なう。これにより、設計された非面的な所定の形状の生育基盤2を緑化施工面1に容易に造成することができる。
【0047】
生育基盤2の造成方法は、吹付機等の吹付・散布手段を用いて行なわれる。
本発明の緑化工法は、特に作業員がロープを頼りに傾斜面に吊り下がった状態で吹付機等の吹付・散布手段を用いて非面的な生育基盤2を造成する場合に好適である。中でも吹付作業は厚さの管理が重要となるが、造成する生育基盤2の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材22を目安とすることにより、吹付作業員は造成厚さの検束棒や検束ピンなどによるチェックを行なわなくても所定の形状と厚さの生育基盤を造成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
法面・斜面をはじめとする緑化の分野では、その目的が侵食防止から自然回復へ向けて大きくシフトしつつある。また、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の施行により、外来牧草類を用いた緑化ではなく、より自然回復が早い緑化工法が求められるようになってきている。外来牧草類を用いることなく法面の自然回復を図るためには、種子や表土(埋土種子)などを植物材料として用いる必要があるが、こうした材料は輸入される外来牧草類と比較して採取や入手が非常に困難であるばかりでなく、集めることができる量が限られ、価格的にも高価となるという制約を有する。本発明の法面に非面的な生育基盤を造成する工法は、従来の面的な緑化手法と比較して経済性に優れるほか、こうした貴重な植物材料の使用量を低減させる上でも有効であり、現在の緑化手法に替わり得る経済的且つ効果的な自然回復緑化手法として杜会に貢献することができる。
【0049】
又、本発明は、緑化施工面に非面的に生育基盤を造成する場合に、任意の造成形状又は不均一な造成厚さの生育基盤の位置出しと造成を容易に行なうことが可能となり、緑化工事の省力化と経済性の向上を図りながら、併せて、法面・斜面等に非面的に生育基盤を造成する緑化手法の普及に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による基盤造成誘導資材を用いた緑化工法を示す斜視図である。
【図2】本発明による基盤造成誘導資材の設置状況を示す断面図である。
【図3】本発明による基盤造成誘導資材を用いた緑化補助工法並びに緑化工法を示す斜視図である。
【図4】本発明による非面的な生育基盤が円形の場合に使用する基盤造成誘導資材の斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 緑化施工面
2,2a,2b,2c,2d 生育基盤
21,21a,21b,21c,21d 基盤造成誘導資材
22,22a,22b,22c,22d 輪郭構成部材
24 網状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面・斜面等の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法に用いる補助資材としての基盤造成誘導資材であって、少なくとも該緑化施工面に造成する該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなることを特徴とする基盤造成誘導資材。
【請求項2】
法面・斜面等の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法を補助するための緑化補助工法において、少なくとも該緑化施工面に造成する該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる複数の基盤造成誘導資材を、該緑化施工面に任意の間隔で設置することを特徴とする緑化補助工法。
【請求項3】
法面・斜面等の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法を補助するための緑化補助工法において、該緑化施工面の全面若しくは一部に網状体を張り付けた後、少なくとも該緑化施工面に造成する該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる複数の基盤造成誘導資材を、該緑化施工面に任意の間隔で設置することを特徴とする緑化補助工法。
【請求項4】
法面・斜面等の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法において、少なくとも該緑化施工面に造成する該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる複数の基盤造成誘導資材を任意の間隔で設置した後、生育基盤を、該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材に沿うようにして造成することを特徴とする緑化工法。
【請求項5】
法面・斜面等の緑化施工面に非面的な生育基盤を造成する緑化工法において、該緑化施工面の全面若しくは一部に網状体を張った後、少なくとも該緑化施工面に造成する該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材からなる複数の基盤造成誘導資材を任意の間隔で設置し、生育基盤を、該非面的な生育基盤の断面形状の輪郭を構成する輪郭構成部材に沿うようにして造成することを特徴とする緑化工法。
【請求項6】
前記非面的な生育基盤の造成を、吹付機等を用いた吹付・散布手段により行なうことを特徴とする請求項4又は5に記載の緑化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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