説明

基礎構造物およびその施工方法

【課題】狭小な土地でも人力により施工可能で、産業廃棄物の残土量を減少可能な基礎構造物を提供する。
【解決手段】水平に施工した施工面15に、セメントを含む組成物でプレキャスト成形した複数の敷き板16を設置する。これらの複数の敷き板16の上面に、敷き板16に対して固定するとともに相互に連結した複数の箱形本体21を設置する。この箱形本体21は、セメントを含む組成物でプレキャスト成形した充填物収容空間31を有する。これらの複数の箱形本体21の上面に、セメントを含む組成物でプレキャスト成形した複数の蓋板33をそれぞれ固定設置して、これらの蓋板33上に上部構造物を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト製品を用いた基礎構造物およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信機器などの収容箱を施工する場合、基礎は現場打ちコンクリートで施工されている。この現場打ち基礎コンクリートの場合、木製型枠を現場で用いるため木材資源を消費している、コンクリートの養生期間が通常材齢28日必要とし工期がかかる、型枠・配筋・打設・養生工程があり労務費がかかる、施工が天候に大きく影響を受け工期の確保が難しい、掘削に伴う現場発生土を場外処理するため産業廃棄物が大量に発生する、基礎の品質が天候に大きく影響される、狭小な土地での施工が難しいなどの問題点がある。
【0003】
一方、住宅用の基礎としては、分割されたプレキャストコンクリート基礎ブロックを現場で連結するものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平6−41984号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2000−336662号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプレキャストコンクリート基礎ブロックは、重く、狭小な土地で重機を用いることができない場所では、施工することができず、また、プレキャストコンクリート基礎ブロックを埋め込むための掘削に伴う現場発生土を場外処理するため産業廃棄物が大量に発生する問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、狭小な土地でも人力により施工可能で、産業廃棄物の残土量を減少可能な基礎構造物およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、水平に施工された施工面に配列される、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の敷き板と、これらの複数の敷き板の上面に配列され敷き板に対して固定されるとともに相互に連結される、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された充填物収容空間を有する複数の箱形本体と、これらの複数の箱形本体の上面にそれぞれ固定されて上部構造物を支持する、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の蓋板とを具備した基礎構造物であって、前記箱形本体および蓋板は、セメント、最大粒度が2mm以下の骨材粒子、1次粒子粒度が1μm以下のポゾラン系反応粒子、平均粒度が1mm以下の針状もしくは薄片状粒子、少なくとも1種の分散剤を含有するプレミックス材料、水および金属繊維または有機繊維を混合し、かつ、セメントとポゾラン系反応粒子の合計質量に対する水の質量比率が8乃至24%の範囲にあり、金属繊維または有機繊維の長さが2mm以上で、金属繊維または有機繊維の直径に対する長さの比率が20以上であり、骨材粒子の最大粒度に対する金属繊維または有機繊維の平均長さの比が10以上であり、金属繊維または有機繊維の量が凝結後のコンクリート体積の4%未満であるとの条件を満たした組成物により一体にプレキャスト成形されたものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の基礎構造物における組成物が、平均粒径3〜20μmの石英粉末を含むものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の基礎構造物における箱形本体が、複数の敷き板にわたって載置され、複数の敷き板に対して固定されるものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の基礎構造物における蓋板が、上部構造物取付用のアンカボルトを一体に備えたものである。
【0010】
請求項5記載の発明は、掘削により水平に施工された施工面に、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の敷き板を配列し、これらの複数の敷き板の上面に、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された充填物収容空間を有する複数の箱形本体を配列し、これらの複数の箱形本体を敷き板に対して固定するとともに相互に連結し、これらの複数の箱形本体の充填物収容空間に掘削に伴う現場発生土を埋め戻すように充填し、これらの複数の箱形本体の上面に、セメントを含む組成物でプレキャスト成形されて上部構造物を支持する複数の蓋板をそれぞれ固定した基礎構造物の施工方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の敷き板と、セメント、最大粒度が2mm以下の骨材粒子、1次粒子粒度が1μm以下のポゾラン系反応粒子、平均粒度が1mm以下の針状もしくは薄片状粒子、少なくとも1種の分散剤を含有するプレミックス材料、水および金属繊維または有機繊維を混合し、かつ、セメントとポゾラン系反応粒子の合計質量に対する水の質量比率が8乃至24%の範囲にあり、金属繊維または有機繊維の長さが2mm以上で、金属繊維または有機繊維の直径に対する長さの比率が20以上であり、骨材粒子の最大粒度に対する金属繊維または有機繊維の平均長さの比が10以上であり、金属繊維または有機繊維の量が凝結後のコンクリート体積の4%未満であるとの条件を満たした組成物で成形された複数の箱形本体および複数の蓋板を、水平に配列しながら上方へ積み上げるように固定して基礎構造物を構成するので、狭小な土地で重機を用いることができない場所でも、水平および高さ方向に細分化された個々の敷き板、箱形本体および蓋板を人力により施工することが可能であり、また、箱形本体は充填物収容空間を有し、この充填物収容空間に現場発生土を埋め戻すことが可能であるから、産業廃棄物の残土量を減少させることが可能な基礎構造物を提供できる。また、高強度で緻密な箱形本体および蓋板を成形したので、これらの箱形本体および蓋板の圧縮強度および曲げ強度を損なうことなく、これらの部材厚さを薄くでき、軽量化を図れるとともに、施工時の人力による作業の効率化を図れる。さらに、設置後は、この充填物収容空間内に埋め戻された土が重石として機能し、上部構造物の転倒防止に役立つ。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、前記組成物が、さらに平均粒径3〜20μmの石英粉末を含むので、この石英粉末を含む組成物により製作された箱形本体および蓋板の、より一層の緻密化を図ることができ、耐久性を向上できる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、箱形本体が、複数の敷き板間を固定する部材としても機能するので、箱形本体を各敷き板間に固定することによって敷き板相互間の固定も確実なものにできる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、蓋板に一体に設けられたアンカボルトにより、上部構造物の取付を容易にできる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、掘削により水平に施工された施工面を基準にして、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の敷き板と、複数の箱形本体と、複数の蓋板とをそれぞれ水平に配列しながら上方へ積み上げるようにして固定したので、狭小な土地で重機を用いることができない場所でも、水平および高さ方向に細分化された個々のプレキャスト成形品を人力により施工でき、また、箱形本体の充填物収容空間に掘削に伴う現場発生土を埋め戻すように充填するので、産業廃棄物の残土量を減少させることが可能であるとともに、設置後は、この充填物収容空間内に埋め戻された土が重石として機能し、上部構造物の転倒防止に役立つ基礎構造物の施工方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る基礎構造物を図1乃至図3に示された一実施の形態を参照しながら、また本発明に係る基礎構造物の施工方法を図4乃至図17に示された施工例を参照しながら、詳細に説明する。
【0017】
先ず、図1乃至図3に示された基礎構造物11を説明する。
【0018】
図1および図3に示されるように、地面12を掘削して溝13を形成し、この溝13内に砕石14を水平に施工して施工面15を形成し、この施工面15上に基礎構造物11を設置する。
【0019】
基礎構造物11は、砕石14で形成された施工面15上に、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の敷き板16が配列され、図2に示されるように平金具17とこの平金具17に挿入されたボルト(図示せず)とにより相互に連結されている。敷き板16には、このボルトと螺合するインサート(図示せず)が埋設されている。
【0020】
図1に示されるように、これらの複数の敷き板16の上面に、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の箱形本体21が配列されている。これらの箱形本体21は、図1および図2に示されるように2つの敷き板16にわたって跨るように載置され、図3に示されるように敷き板16と箱形本体21との間に配置されたL形金具22と、このL形金具22を通して、敷き板16と箱形本体21とにそれぞれ埋設されたインサート23,24に螺合されたボルト25,26とにより、箱形本体21が敷き板16に対して固定されている。
【0021】
また、図1に示されるように箱形本体21どうしは、隣接し合う側壁27に位置合せされた孔に挿通された上下のボルト28と、これらのボルト28に螺合するナット29とにより相互に連結されている。
【0022】
なお、箱形本体21どうしの連結は、それらの隣接し合う側壁27に蟻溝状の嵌合凹部および凸部を上下方向に形成しておいて、これらを嵌合した上でボルトおよびナットにより隣接し合う側壁27を固定するようにしても良い。このようにすると、箱形本体21どうしの位置決めが容易であるとともに固定が確実になる。
【0023】
箱形本体21は、図1に示されるように上面を開口した角箱状に成形され、内部に充填物収容空間31が設けられている。この充填物収容空間31の4隅の内角部には、角柱状の蓋板固定部32が一体に成形され、これらの蓋板固定部32の上面には、ボルトと螺合するインサート(図示せず)が埋設されている。
【0024】
これらの複数の箱形本体21の上面に、図1および図3に示されるようにセメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の蓋板33が載せられ、図2に示されるように各蓋板33の4隅部にはボルト挿入孔34が設けられ、これらのボルト挿入孔34から、箱形本体21の蓋板固定部32のインサートに螺入されたボルト(図示せず)により各蓋板33が固定されている。
【0025】
各蓋板33には、図1および図2に示されるように長手方向の一側部および他側部にアンカボルト取付部35が一体に成形され、これらのアンカボルト取付部35内に上部構造物取付用のアンカボルト36の下半部が埋設され、アンカボルト36の上半部が蓋板33の上面より突出されている。
【0026】
各蓋板33の上面には、図1および図2に示されるようにコ字形断面の複数の矩形フレーム37を図示されないボルトおよびナットにより連結した上部構造物設置用のチャンネルベース38が設置されている。各矩形フレーム37の下部には、図1に示されるように各蓋板33から突出されたアンカボルト36が挿入され、このアンカボルト36と螺合するナット39により各矩形フレーム37が固定されている。
【0027】
前記敷き板16は、鉄筋コンクリートにより平板状にプレキャスト成形されたものであり、一方、前記箱形本体21および前記蓋板33は、セメント、最大粒度が2mm以下の骨材粒子、1次粒子粒度が1μm以下のポゾラン系反応粒子、平均粒度が1mm以下の針状もしくは薄片状粒子、少なくとも1種の分散剤を含有するプレミックス材料、水および金属繊維または有機繊維を混合し、かつ、セメントとポゾラン系反応粒子の合計質量に対する水の質量比率が8乃至24%の範囲にあり、金属繊維または有機繊維の長さが2mm以上で、金属繊維または有機繊維の直径に対する長さの比率が20以上であり、骨材粒子の最大粒度に対する金属繊維または有機繊維の平均長さの比が10以上であり、金属繊維または有機繊維の量が凝結後のコンクリート体積の4%未満であるとの条件を満たした組成物(ダクタル(登録商標))によりプレキャスト成形されたものである。
【0028】
このセメントを基材として金属繊維または有機繊維で補強された組成物は、鉄筋による補強を必要としないとともに、締め固めも必要としない自己充填性能に優れ、この組成物でプレキャスト成形されたモルタルまたはコンクリート製品は、曲げ強度25MPa以上、かつ圧縮強度150MPa以上の超高強度を有するとともに、鉄筋による補強をしなくても繊維が引張りに抵抗するために脆性的に壊れない高靭性を有し、プレキャスト成形された製品の薄肉化および軽量化を図れる特長がある。
【0029】
さらに、前記組成物に、平均粒径3〜20μmの石英粉末を含ませることにより、モルタルまたはコンクリート製品の、より一層の緻密化を図ることができ、耐久性を向上できる。
【0030】
次に、図4乃至図17により、図1乃至図3に示された基礎構造物11の施工例を説明する。
【0031】
図4乃至図7は、水平に施工された施工面15に、複数の敷き板16を配列する施工例を示し、図4に示されるように、地面12を掘削して溝13を掘り、その溝13内に粗大な砕石14aを水平に敷き詰め、さらに、その上に図5に示されるように細かい砕石14bを水平に敷き均して平坦に転圧することで、水平に施工された施工面15を形成し、図6に示されるように、この施工面15上にレベル出し調整用の2本のフラットバー41を平行に設置し、図7に示されるように、これらのフラットバー41上に複数の敷き板16を1枚ずつ設置し、図2に示されるように平金具17およびボルトにより連結する。
【0032】
さらに、図8に示されるように、これらの敷き板16の上面に、複数の箱形本体21を配列し、これらの複数の箱形本体21をL形金具22およびボルト25,26により敷き板16に対して固定するとともに、図1に示されるようにボルト28およびナット29により相互に連結する。
【0033】
さらに、図9に示されるように、箱形本体21の蓋板固定部32の上面に埋設されたインサートを用いて、このインサートに螺合したボルト42により内空埋設用治具43を設置する。
【0034】
この内空埋設用治具43は、バー44に取付板45を介して中子46を取り付けたもので、この中子46は、箱形本体21の充填物収容空間31に掘削に伴う現場発生土を埋め戻した際に角穴を確保するためのものである。
【0035】
そして、図10に示されるように、各箱形本体21の充填物収容空間31に、掘削に伴う現場発生土47を埋め戻すように充填して、突き固め治具48により箱形本体21の開口縁と同じ高さとなるように平坦に突き固める。
【0036】
その後、図11に示されるように、内空埋設用治具43を取り外すと、突き固められた現場発生土47の表面部に角穴49が開くので、この角穴49に、蓋板33の下面に突出するアンカボルト取付部35を嵌入するようにして、各箱形本体21の開口縁に蓋板33を被せ、蓋板33の4隅部の孔を通して箱形本体21の蓋板固定部32のインサートに螺入したボルトにより蓋板33を固定する。
【0037】
このようにして、複数の箱形本体21の上面に複数の蓋板33をそれぞれ固定した後、図12に示されるように、各蓋板33の上面に複数の矩形フレーム37を連結したチャンネルベース38を設置し、図13に示されるように、周囲の掘削残土を埋め戻し、図14に示されるように、チャンネルベース38上に、例えば光ファイバケーブル配線盤のような通信機器収容箱などの上部構造物50をボルトにより固定する。
【0038】
図15乃至図17は、個々の敷き板16、箱形本体21および蓋板33を人力で運搬するための吊り治具51を示し、図15および図16に示されるように、ハンドル52の中央部にロッド53を介してアングルなどにより形成された取付板54が溶接付けされ、この取付板54には、敷き板16、箱形本体21および蓋板33に設けられた全てのボルト挿入用の孔に対応できる複数の取付穴55が形成されている。
【0039】
そして、図17に示されるように、敷き板16、箱形本体21または蓋板33の一側のボルト挿入用の孔に一方の吊り治具51aをボルトで固定するとともに、敷き板16、箱形本体21または蓋板33の他側のボルト挿入用の孔に他方の吊り治具51bをボルトで固定し、両方の吊り治具51a,51bのハンドル52の一端部および他端部をそれぞれ作業者56が持上げるようにして、敷き板16、箱形本体21または蓋板33を運搬し、所定位置に設置する。
【0040】
次に、図1乃至図3に示された基礎構造物の作用効果を説明する。
【0041】
セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の敷き板16、複数の箱形本体21および複数の蓋板33を、水平に配列しながら上方へ積み上げるように固定して基礎構造物を構成するので、狭小な土地で重機を用いることができない場所でも、水平および高さ方向に細分化された個々の敷き板16、箱形本体21および蓋板33を人力により施工することが可能であり、また、箱形本体21は充填物収容空間31を有し、この充填物収容空間31に現場発生土47を埋め戻すことが可能であるから、産業廃棄物の残土量を減少させることが可能な基礎構造物を提供できる。
【0042】
特に、箱形本体21および蓋板33は、セメント、最大粒度が2mm以下の骨材粒子、1次粒子粒度が1μm以下のポゾラン系反応粒子、平均粒度が1mm以下の針状もしくは薄片状粒子、少なくとも1種の分散剤を含有するプレミックス材料、水および金属繊維または有機繊維を混合し、かつ、セメントとポゾラン系反応粒子の合計質量に対する水の質量比率が8乃至24%の範囲にあり、金属繊維または有機繊維の長さが2mm以上で、金属繊維または有機繊維の直径に対する長さの比率が20以上であり、骨材粒子の最大粒度に対する金属繊維または有機繊維の平均長さの比が10以上であり、金属繊維または有機繊維の量が凝結後のコンクリート体積の4%未満であるとの条件を満たした組成物により、高強度で緻密にプレキャスト成形したので、これらの箱形本体21および蓋板33の圧縮強度および曲げ強度を損なうことなく、これらの部材厚さを薄くでき、軽量化を図れるとともに、人力施工による作業の効率化を図れる。
【0043】
前記組成物が、さらに平均粒径3〜20μmの石英粉末を含む場合は、この石英粉末を含む組成物により製作された箱形本体21および蓋板33の、より一層の緻密化を図ることができ、耐久性を向上できる。
【0044】
また、箱形本体21が、複数の敷き板16間を固定する部材としても機能するので、箱形本体21を各敷き板16間に固定することによって各敷き板16の相互間の固定も確実なものにできる。さらに、蓋板33に一体に設けられたアンカボルト36により、上部構造物50の取付を容易にできる。
【0045】
また、図4乃至図13に示された基礎構造物の施工方法によれば、掘削により水平に施工された施工面15を基準にして、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の敷き板16と、複数の箱形本体21と、複数の蓋板33とをそれぞれ水平に配列しながら上方へ積み上げるようにして固定したので、狭小な土地で重機を用いることができない場所でも、水平および高さ方向に細分化された個々のプレキャスト成形品を人力により施工でき、また、箱形本体21の充填物収容空間31に掘削に伴う現場発生土47を埋め戻すように充填するので、産業廃棄物の残土量を減少させることが可能であるとともに、基礎構造物11の設置後は、この箱形本体21の充填物収容空間31内に埋め戻された土が重石として機能し、上部構造物50の転倒防止に役立つ。
【0046】
さらに、掘削から基礎構築までの工期を、現場打ちコンクリートの場合に比べて大幅に短縮でき、コスト削減を図れ、また、敷き板16、箱形本体21および蓋板33は工場製品であるため、製品精度および品質が安定しており、また、形枠材や配筋材が不要になるので、天然資源の消費を大幅に削減でき、また、天候の影響をほとんど受けずに工程通りの施工が可能であり、また、敷き板16、箱形本体21および蓋板33のボルト接合であるから、熟練技能を必要とせず、また、敷き板16、箱形本体21および蓋板33は分解して再利用できるとともに、移動も可能である。
【0047】
また、図15乃至図17に示された吊り治具51を用いることにより、複数の作業者が人力により敷き板16、箱形本体21または蓋板33を運搬して所定位置に設置する作業を容易にできる。
【0048】
なお、箱形本体21の充填物収容空間31には、石、水などの他の重量物を充填しても良い。
【0049】
次に、図18乃至図20は、本発明に係る基礎構造物の他の実施の形態を示す。なお、図1に示された実施の形態と同様の部分には同一符号を付して、説明を省略する。
【0050】
図18に示されるように、蓋板33の下面に鉄板などの取付プレート61を介してナット62を取付け、このナット62に上部構造物取付用のアンカボルト36を螺入したものである。
【0051】
図19および図20に示されるように、取付プレート61は、この取付プレート61に穿設された複数のボルト挿入孔63にそれぞれ取付ボルト64を挿入し、これらの取付ボルト64を、蓋板33の下面内に埋設されたフランジ付き6角ナット65に螺合することで蓋板33の下面に固定する。
【0052】
このとき、取付プレート61の下面に溶接付けなどで一体化されたナット62上に穿設されたアンカボルト挿入孔66が、蓋板33に成形されたアンカボルト挿入孔67と位置合わせされるようにし、これらのアンカボルト挿入孔67,66を通して挿入されたアンカボルト36をナット62に螺入する。
【0053】
このように、アンカボルト36を薄い取付プレート61により取付けることで、図1などに示された大きなブロック状のアンカボルト取付部35を廃止して、蓋板33の軽量化および成形容易化を図れるとともに、図9乃至図11に示された内空埋設用治具43およびその施工の手間を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る基礎構造物の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同上基礎構造物の平面図である。
【図3】同上基礎構造物の側面図である。
【図4】同上基礎構造物の施工方法における施工面形成工程の前半を示す斜視図である。
【図5】同上基礎構造物の施工方法における施工面形成工程の後半を示す斜視図である。
【図6】同上基礎構造物の施工方法におけるレベル出し調整用のフラットバー設置工程を示す斜視図である。
【図7】同上基礎構造物の施工方法における敷き板の設置工程を示す斜視図である。
【図8】同上基礎構造物の施工方法における箱形本体の設置工程を示す斜視図である。
【図9】同上基礎構造物の施工方法における内空埋設用治具の設置工程を示す斜視図である。
【図10】同上基礎構造物の施工方法における箱形本体の充填物収容空間への現場発生土の埋め戻し充填工程を示す斜視図である。
【図11】同上基礎構造物の施工方法における蓋板の設置工程を示す斜視図である。
【図12】同上基礎構造物の施工方法におけるチャンネルベースの設置工程を示す斜視図である。
【図13】同上基礎構造物の施工方法における周囲の掘削残土を埋め戻し工程を示す斜視図である。
【図14】同上基礎構造物上に設置された上部構造物の斜視図である。
【図15】同上基礎構造物の施工方法において用いられる吊り治具の正面図である。
【図16】同上吊り治具の断面図である。
【図17】同上吊り治具の使用方法を示す斜視図である。
【図18】同上基礎構造物の他の実施の形態を示す断面図である。
【図19】同上基礎構造物における蓋板の平面図である。
【図20】図19におけるXX−XX線断面図である。
【符号の説明】
【0055】
15 施工面
16 敷き板
21 箱形本体
31 充填物収容空間
33 蓋板
36 アンカボルト
47 現場発生土
50 上部構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に施工された施工面に配列される、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の敷き板と、
これらの複数の敷き板の上面に配列され敷き板に対して固定されるとともに相互に連結される、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された充填物収容空間を有する複数の箱形本体と、
これらの複数の箱形本体の上面にそれぞれ固定されて上部構造物を支持する、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の蓋板とを具備した基礎構造物であって、
前記箱形本体および蓋板は、
セメント、最大粒度が2mm以下の骨材粒子、1次粒子粒度が1μm以下のポゾラン系反応粒子、平均粒度が1mm以下の針状もしくは薄片状粒子、少なくとも1種の分散剤を含有するプレミックス材料、水および金属繊維または有機繊維を混合し、かつ、セメントとポゾラン系反応粒子の合計質量に対する水の質量比率が8乃至24%の範囲にあり、金属繊維または有機繊維の長さが2mm以上で、金属繊維または有機繊維の直径に対する長さの比率が20以上であり、骨材粒子の最大粒度に対する金属繊維または有機繊維の平均長さの比が10以上であり、金属繊維または有機繊維の量が凝結後のコンクリート体積の4%未満であるとの条件を満たした組成物により一体にプレキャスト成形されたものである
ことを特徴とする基礎構造物。
【請求項2】
前記組成物は、平均粒径3〜20μmの石英粉末を含む
ことを特徴とする請求項1記載の基礎構造物。
【請求項3】
箱形本体は、
複数の敷き板にわたって載置され、複数の敷き板に対して固定される
ことを特徴とする請求項1または2記載の基礎構造物。
【請求項4】
蓋板は、上部構造物取付用のアンカボルトを一体に備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の基礎構造物。
【請求項5】
掘削により水平に施工された施工面に、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された複数の敷き板を配列し、
これらの複数の敷き板の上面に、セメントを含む組成物でプレキャスト成形された充填物収容空間を有する複数の箱形本体を配列し、
これらの複数の箱形本体を敷き板に対して固定するとともに相互に連結し、
これらの複数の箱形本体の充填物収容空間に掘削に伴う現場発生土を埋め戻すように充填し、
これらの複数の箱形本体の上面に、セメントを含む組成物でプレキャスト成形されて上部構造物を支持する複数の蓋板をそれぞれ固定した
ことを特徴とする基礎構造物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−336195(P2006−336195A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158668(P2005−158668)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000228660)日本コンクリート工業株式会社 (50)
【出願人】(000205661)大崎電気工業株式会社 (61)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】