説明

基礎構造

【課題】施工を容易としつつ、基礎の断熱性を長期に亘って維持する。
【解決手段】基礎スラブ1の側部を覆う下側断熱材63と、鋼材基礎2の側部を覆う上側断熱材60とによって、鋼材基礎2と基礎スラブ1とによって構成される基礎と、外気や地盤Yとを断熱する基礎断熱体6を形成する。また、下側断熱材63の上端面を、基礎スラブ1の上端面1aに一致させる。基礎断熱体6は、基礎スラブ1の側部を覆う下側断熱材63の上端部に上側断熱材60を載置することで形成されるので、鋼材基礎2及び基礎スラブ1を、外気や地盤Y等から極めて容易な施工により断熱することができる。また、基礎断熱体6に雨水等が付着したとしても、当該基礎断熱体6に沿って流下することとなり、基礎断熱体6の施工を容易としつつ、鋼材基礎2と基礎スラブ1とによって構成される基礎の断熱性を長期に亘って維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の上部構造を支持する基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の基礎構造として、コンクリート製の基礎スラブの上に鋼材からなる梁を設けたものがある。このような基礎構造として、例えば、特許文献1には、コンクリート製の基礎スラブに鋼材の下部を埋設して当該鋼材を梁として用い、梁の側方に化粧カバーを取り付けた構造が開示されている。また、特許文献2には、コンクリート製の基礎版上に、アンカー部材を介して梁としてのH型鋼を固定し、梁の側方に基礎断熱材を取り付けた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−262586号公報
【特許文献2】特開2002−322653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された基礎構造は、梁の側方に化粧カバーが設けられているだけであり、梁の内側に位置する住宅の床下と外気との断熱を行うことができない。また、上記特許文献2に開示された基礎構造は、基礎のフーチング部が住宅の床下の位置から、基礎断熱材よりも住宅の外側の位置まで延びていることにより、このフーチング部が冷橋(熱橋)となってしまい、フーチング部上に基礎断熱材が配置されているものの、住宅の床下と外気とを有効に断熱することができないという問題がある。そこで、例えば、フーチング部の外気側となる側面と上面とを断熱材により覆うことが考えられるが、フーチング部の上面を断熱材で覆うと、当該断熱材上に溜まった雨水や霜等の影響により、断熱材の断熱性が低下してしまうことが考えられる。また、断熱材上に塵芥等が堆積することが考えられ、これによっても断熱性を損なってしまうことも考えられる。また、フーチング部の幅は設計によって適宜変更されるものであるので、フーチング部の上面を覆う断熱材を部材化することは困難であり、現場で適宜断熱材を所望の大きさに切り取るという作業が必要となるため、断熱材の施工作業に著しく手間が掛かるという問題もある。
【0005】
そこで本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、施工を容易としつつ、基礎の断熱性を長期に亘って維持することができる基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る基礎構造は、上部構造を受ける鋼材基礎と、鋼材基礎の下方に設けられて当該鋼材基礎を支持するコンクリート製の支持体と、上部構造の外周部を支持する鋼材基礎の外面側及び支持体の側部を包囲する基礎断熱体とを備え、基礎断熱体は、支持体の側部を覆う支持体側断熱材と、支持体側断熱材の上方に設けられて鋼材基礎の側部を覆う鋼材側断熱材とを備え、支持体側断熱材の上端面は支持体の上端面に一致しており、支持体側断熱材の上端面、又は、支持体側断熱材の上端面と支持体の上端面とに亘って、鋼材側断熱材が載置されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、支持体側断熱材の上端面が、支持体の上端面に一致していることにより、水平面のレベルを複数設ける必要がなくなり、水平面のレベルを容易に設定することができる。
【0008】
また、基礎断熱体は、支持体の側部を覆う支持体側断熱材の上端部に鋼材側断熱材を載置することで形成されるので、鋼材基礎及び支持体を、外気や地盤等から極めて容易な施工により断熱することができる。また、基礎断熱体は、支持体及び鋼材基礎の側方に立ち上がって設けられることとなるので、基礎断熱体に雨水等が付着したとしても、当該基礎断熱体に沿って流下することとなり、基礎断熱体上に雨水等が長期に亘って滞留することを防止することができる。また、基礎断熱体は立ち上がって設けられているので塵芥等の付着は少なく、たとえ付着したとしても当該雨水等の流下に伴って洗い流されることとなる。従って、基礎断熱体の施工を容易としつつ、鋼材基礎と支持体とによって構成される基礎の断熱性を長期に亘って維持することができる。
【0009】
また、支持体側断熱材の上端部が支持体の上端面に一致していることにより、鋼材側断熱材が、支持体側断熱材及び支持体の双方の上面に亘って設置される場合であっても、鋼材側断熱材の立ち上がり姿勢を安定的なものとすることができる。また、安定した姿勢で鋼材側断熱材の鋼材基礎に対する出寸法の調整を容易に行うことができる。
【0010】
また、支持体側断熱材の外面と、鋼材側断熱材の外面とが同一平面上に位置づけられた状態で鋼材側断熱材が支持体側断熱材上に載置され、鋼材側断熱材における上部構造の外側の面は外装材に覆われており、外装材の下端部は、支持体側断熱材の上端部よりも下方の位置まで延設されていることが好ましい。
【0011】
このように、支持体側断熱材の外側の面と、鋼材側断熱材の外側の面とが同一平面であるため、支持体側断熱材及び鋼材側断熱材の両方の外側の面に亘って、外装材を隙間なく設置することができる。また、支持体側断熱材と鋼材側断熱材とによって形成される断熱性能を有するラインが明確となり、不必要な箇所に断熱材を設置する必要がなくなり、断熱材の厚さ、量の削減を図ることができる。
【0012】
また、支持体側断熱材における上部構造の外側の面と、鋼材側断熱材における上部構造の外側の面とに亘って気密シートが張設されていることが好ましい。この場合には、気密シートが設けられていることによって、基礎断熱体の防水を確実に行うことができ、雨水等の影響により断熱材の断熱性が低下してしまうことが防止され、基礎の断熱性を長期に亘って維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、施工を容易としつつ、基礎の断熱性を長期に亘って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る基礎構造を示す断面図である。
【図2】図1の建物の梁の接続構造を示す横方向の断面図である。
【図3】図1の建物の梁を設置する様子を示す斜視図である。
【図4】図1の建物の梁が設置された様子を示す斜視図である。
【図5】図1の建物の梁に柱を取り付ける様子を示す斜視図である。
【図6】図1の建物の外装材を保持する取付金具を示す斜視図である。
【図7】図1の建物の外装材の取り付け構造を示す横方向の断面図である。
【図8】実施形態の変形例に係る基礎構造を示す断面図である。
【図9】図8の建物の外装材の取り付け構造を示す横方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る基礎構造の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1〜図7に本発明の実施形態を示す。図1に示すように、本実施形態の基礎構造は、鉄筋コンクリート製の支持体として形成される基礎スラブ1と、基礎スラブ1の上部にて組み上げられた鋼材基礎2と、基礎スラブ1及び鋼材基礎2の外側の側部に配置された基礎断熱体6とを備えている。
【0017】
鋼材基礎2は、上部構造としての建物Aを受けるものである。この建物Aは、305mmの平面モジュールを有する梁勝ち工法による2階建ての鉄骨造の工業化住宅である。但し、この建物Aの構造は、好適な適用例であって、本発明の適用範囲がこれに限定されるものではない。
【0018】
図1に示すように、基礎スラブ1は、全面的にベタ基礎形式となっている。なお、基礎スラブ1は、直交する基準線(X方向基準線、Y方向基準線)の中からそれぞれ複数選択されると共にモジュールの整数倍の間隔となるように設定された通りに対応する所定の幅の範囲について、当該範囲を地反力に対し耐力を発揮しうる基礎梁とみなして鉄筋12の量が算定されている(図3、図4参照)。基礎スラブ1のうち、これ以外の範囲については、地反力を受ける4辺固定のスラブとみなして鉄筋12の量が算定されている。
【0019】
なお、本実施形態ではベタ基礎形式の基礎スラブ1を例示しているが、このようなベタ基礎形式に限定されることはなく、例えば、通りに沿って地耐力に応じた所望の幅を有するフーチング形式とする構成も採用可能である。
【0020】
また、基礎スラブ1は、敷き詰められた砕石17上に形成され、その上端面1aが地盤Yの上面の地盤面Xより高くなるように形成されている。これによって、地盤面X上の雨水等が、基礎スラブ1の上面(建物Aの1階床下空間)へ浸入することが抑制される。
【0021】
鋼材基礎2は、基礎スラブ1の上端面1a上に載置される鋼製の束20と、束20に架設される鋼製の梁30とを備えている。
【0022】
梁30として、例えばH形鋼(I形鋼と呼ばれるような形鋼を含む)が用いられる。梁30の長手方向の両端部には、先端部が折り曲げられてL字状に形成されると共にボルト穴が穿設されたガセットプレート34が溶接により接合されている(図2、図3等参照)。
【0023】
なお、本実施形態において梁30とは、通り上に配置されるいわゆる大梁(1階大梁)30Aのみならず、建物Aの1階床を形成する床パネルを支持するために大梁間に架け渡される小梁30Bも含まれる(図3〜図5参照)。なお、小梁30Bは大梁30Aと他の小梁30Bとの間に架け渡される場合もある。
【0024】
また、図1に示すように、梁30は、互いに平行に配置された平板状の上フランジ30a及び下フランジ30bと、上フランジ30a及び下フランジ30bを連結するウェブ30cとより構成されている。また、図3に示すように、梁30の上フランジ30a及び下フランジ30bには、建物Aの1階の柱50(図5参照)等を接合するためのボルトを挿通するボルト穴30dがモジュールに基づくピッチで等間隔に穿設されている。ボルト穴30dは、平面視で、X方向基準線及びY方向基準線の交点上に位置するよう穿設されている。また、ウェブ30cにも、他の梁30を接合するためのボルトを挿通するボルト穴30dがモジュールに基づくピッチで等間隔に穿設されている。更に、梁30のウェブ30cには所定の間隔で大径の穴(一例として、直径125mmの穴)30eが穿設されている。
【0025】
図2〜図4に示すように、梁30の端部同士を接合する場合、本実施形態ではジョイントボックス31を用いている。図2に示すように、ジョイントボックス31は、平面視十字状のウェブ31cの上下端に、正方形の上フランジ31a(図3参照)及び下フランジ31bをそれぞれ溶接することによって形成されている。このジョイントボックス31に梁30を接合する場合、梁30のガセットプレート34のL字状の外側の2面を、ウェブ31cの直交する2面に当接させ、ガセットプレート34の屈曲部分周囲のボルト穴及びこれに対応するジョイントボックス31のウェブ31cに設けられたボルト穴にボルトを挿通してボルト接合する。
【0026】
梁30を支持する束20は、基礎スラブ1の上端面1aから突出するアンカーボルト19(図1参照)の上端部に接合固定されている。なお、基礎スラブ1には、束20を設ける位置に、予めアンカーボルト19が埋設されている。このアンカーボルト19は、基礎スラブ1を形成する際に倒れこむことがないように、砕石17上に載置されたPC板18に取り付けられている。束20は、建物Aの1階の柱50(図5参照)から伝達される荷重を基礎スラブ1に効率よく伝達する役割を有し、少なくとも梁30上(通り上)に立設される柱50の直下、及び柱50が立設されるジョイントボックス31の直下に設置される。
【0027】
また、束20は、特に図1に示すように、互いに平行に配置された上フランジ20a及び下フランジ20bと、上フランジ20a及び下フランジ20bを連結するウェブ20cとより構成されている。ウェブ20cは、横断面が十字状に形成されている。束20の上フランジ20a及び下フランジ20bには、それぞれボルト穴が穿設されている。束20の下フランジ20bのボルト穴にアンカーボルト19の上端部が挿通され、ナット等によって下フランジ20bとアンカーボルト19とがボルト接合されている。また、束20及び梁30は、束20の上フランジ20aのボルト穴と梁30の下フランジ30bのボルト穴30dとに挿通されたボルトによってボルト接合される。同様に、束20及びジョイントボックス31は、束20の上フランジ20aのボルト穴とジョイントボックス31の下フランジ31bのボルト穴とに挿通されたボルトによってボルト接合される。
【0028】
また、束20は、図3に示すように、建物Aの外周部(即ち、外壁寄りの部分)と内側部(即ち、建物Aの内部)とに適宜配置される。これらのうち、外周部(外通り)に配置される束20は、建物Aの外側においては上フランジ20aと下フランジ20bの上下方向の端縁位置が一致し、建物Aの内側においては下フランジ20bが上フランジ20aよりも建物内側に向けて延伸している。即ち、この束20は、図1に示すように、建物Aの内側においては、ウェブ20cが上フランジ20aの端縁から、延伸する下フランジ20bの端縁にかけて末広がり状に形成された形状(オフセット形状)となっている。また、建物Aの入隅部及び出隅部においては、外壁に沿った2方向について、下フランジ20bが上フランジ20aよりも延伸し、ウェブ20cが上フランジ20aの端縁から、延伸する下フランジ20bの端縁にかけて末広がり状に形成された束20が採用されている(図3参照)。
【0029】
このようなオフセット形状の束20を用いることにより、基礎スラブ1のより広い範囲に荷重が分散して伝達され、基礎スラブ1にて構造計算上の基礎梁とみなせる幅を大きくとることができる。
【0030】
建物Aは、基礎スラブ1及び鋼材基礎2からなる基礎躯体構造上に設けられており、鋼材基礎2上に立設固定された1階の柱50(図5参照)と、1階の柱50の上端を連結するように配置された2階梁と、2階梁上に配置された2階の柱と、R階大梁と、隣接する2本の柱50間に設置された耐力要素51等の部材とが、通りに対応して配置されて基本架構が構成されている。更に、建物Aにおいては、小梁が適宜架け渡され、各階の梁で支持されるALC(Autoclaved Light-weight Concrete;軽量気泡コンクリート)からなる床パネルにより各階床が構成され、更に、外周部の梁を利用してALC等からなる外壁パネルや開口パネルが取り付けられて外壁が構成されている。特に、図1に示すように、建物Aの1階の外壁70は、梁30の上フランジ30aの上面に取り付けられた支持金具85上に載置され、ボルト等によって支持金具85に固定される。これにより、建物Aの1階の外壁70の最下端の高さ位置は、梁30の上フランジ30aの高さ位置と略一致することとなる。また、梁30の上フランジ30aの上面には、1階の床を構成する床パネル90が載置されている。
【0031】
図5に示すように、柱50は、通りと、通りに直交する基準線との交点に配置され、下端部がジョイントボックス31又は梁30の中間部に接合される。これにより、本実施形態の鋼材基礎2の梁30と柱50との接合は、各層(本実施形態においては基礎層)で梁同士を連結して平面視にて閉じたフレーム枠体を構成し、当該梁により形成されるフレーム枠体に柱を接合してなる梁勝ち構法が採用されるものとなっている。なお、柱50及びジョイントボックス31は、ジョイントボックス31の上フランジ31aのボルト穴と柱50の下端部に設けられたボルト穴とに挿通されたボルトを用いてボルト接合される。同様に、柱50及び梁30は、梁30の上フランジ30aのボルト穴30dと柱50の下端部に設けられたボルト穴とに挿通されたボルトを用いてボルト接合される。
【0032】
また、耐力要素51は、所定の間隔(例示すれば、610mm、915mm等)で配置された2本の柱50の内側面にボルト接合される。耐力要素51は例えば筋交い(クロスフレーム)等で構成される。
【0033】
図1に示すように、基礎断熱体6は、下側断熱材(支持体側断熱材)63と上側断熱材(鋼材側断熱材)60とより構成されている。下側断熱材63は、基礎スラブ1の側部に設けられている。下側断熱材63の上端は基礎スラブ1の上端面1aに一致し、下側断熱材63の下端は基礎スラブ1の下端部まで延びている。ここで、例えば、基礎スラブ1の上端面1aから下側断熱材63の上端部が突出している場合には、束20等の設置作業中に、突出する下側断熱材63に作業者の足等が当たらないように注意する必要がある。そこで、本実施形態のように、下側断熱材63の上端を基礎スラブ1の上端面1aに一致させることにより、基礎スラブ1の上端面1aから突出する部位がなくなり、作業性を向上させることができる。
【0034】
また、基礎スラブ1の上端面1aから下側断熱材63の上端部が突出している場合には、当該基礎スラブ1の上端面1aから下側断熱材63との間に段差を生じることとなり、これらの上部への部材配置が下側断熱材63の上端部か基礎スラブ1の上端面1aのいずれかとする必要が生じ、また、設置状態の安定性も悪いものとなる。そこで、これら下側断熱材63の上端部と基礎スラブ1の上端面1aとを同一平面状とすることにより、部材配置もこれら下側断熱材63の上端部と基礎スラブ1の上端面1aとに亘って設置することができ、部材設置の容易性及び安定性が向上するものとなる。
【0035】
上側断熱材60は、上側第一断熱材61及び上側第二断熱材62より構成され、下側断熱材63の上端面と基礎スラブ1の上端面1aとに亘って載置される。なお、上側第二断熱材62は、上側第一断熱材61よりも建物Aの内側に配置されている。また、上側第一断熱材61における建物Aの外側面と、下側断熱材63における建物Aの外側面とが略同一面となるように、上側断熱材60が配置される。上側断熱材60は、鋼材基礎2の下端から上端の高さまで延びている。なお、下側断熱材63の上端が基礎スラブ1の上端面1aに一致していることにより、上側断熱材60を下側断熱材63及び基礎スラブ1上に安定して設置することができる。上側第一断熱材61、上側第二断熱材62及び下側断熱材63は、押出法発泡ポリスチレンフォームやフェノールフォーム等のプラスチック系断熱材から形成されている。
【0036】
また、上側第一断熱材61と上側第二断熱材62とは、それぞれ、梁30の長手方向に沿って敷き並べられ、断熱構造が形成されている。ここで、上側第一断熱材61同士の継ぎ目と、上側第二断熱材62同士の継ぎ目とは互いにずれた位置に設けられている。これにより、上側第一断熱材61の継ぎ目の奥側には上側第二断熱材62の外側面が位置することとなり、気密性の向上が図られている。
【0037】
上側断熱材60及び下側断熱材63における建物Aの外側面に、気密シート45が張設される。気密シート45の張設は、図示しないピンや接着剤等、適宜の方法を用いて行われる。気密シート45を設けることにより、上側断熱材60及び下側断熱材63に、雨水等が直接、接触することがなくなる。
【0038】
更に、気密シート45における建物Aの外側の面は、外装材42によって覆われる。外装材42は、不燃板等からなり、外壁70の下端から地盤Yの地盤面Xまでの間を覆う。外装材42の上端部と外壁70の下端部との間にはシール材46が充填されている。さらに、外装材42の繋ぎ目にもシール材46が充填される。これにより、外装材42と外壁70との継ぎ目、外装材42同士の繋ぎ目から建物Aの内側に雨水等が浸入することが防止される。
【0039】
ここで、外装材42の梁30への取り付け構造について説明する。外装材42は、特に図1及び図7に示すように、梁30に固定された固定金具100に取り付けられる。固定金具100は、図6に示すように、互いに平行に配置された板状の梁固定部100a及び外装材固定部100bと、梁固定部100a及び外装材固定部100bとを連結する板状の連結部100cとより構成される。外装材固定部100bは、外周縁の一部が矩形状に切り欠かれている。連結部100cは、外装材固定部100bにおける切り欠かれた部位の底部と、梁固定部100aの側部とを連結している。図1及び図7に示すように、梁固定部100aと外装材固定部100bとの間隔(連結部100cの長さ)は、梁30のウェブ30cにおける建物Aの外側面から、上側第一断熱材61における建物Aの外側面までの長さとなっている。
【0040】
また、梁固定部100aには、ボルト穴100dが3個、穿設されている。ボルト穴100d同士の間隔は、梁30のウェブ30cに設けられたボルト穴30dの間隔(図3参照)と一致している。固定金具100及び梁30は、固定金具100の梁固定部100aのボルト穴100dと梁30のウェブ30cのボルト穴30dとに挿通されたボルトによってボルト接合される。
【0041】
また、外装材固定部100bには、ビス穴100eが設けられている。外装材42と固定金具100とは、外装材42の外側面から、外装材固定部100bのビス穴100eに向けて差し込まれたビス86によって接合される。なお、外装材42を固定金具100に取り付ける場合、予め上側断熱材60及び下側断熱材63に気密シート45を張設した状態で、気密シート45の外側面に外装材42を配置し、ビス86によってビス止めする。外装材42を固定金具100に取り付ける際に、気密シート45のすぐ後ろ側に固定金具100の外装材固定部100bが位置しているため、ビス86を差し込む位置が把握し易い。
【0042】
なお、上側断熱材60は、建物Aの内側の面が束20と、梁30の下フランジ30bとに当接し、建物Aの外側の面が固定金具100の外装材固定部100b及び外装材42に当接している。このように、上側断熱材60は、外装材42及び固定金具100の外装材固定部100bと、束20及び梁30とに挟み込まれることによって位置が保持されている。
【0043】
気密シート45の張設や外装材42の取り付け後、基礎スラブ1の周囲の土を、外装材42の下端部の位置まで埋め戻す。
【0044】
本実施形態は以上のように構成され、下側断熱材63の上端面が、基礎スラブ1の上端面1aに一致していることにより、水平面のレベルを複数設ける必要がなくなり、水平面のレベルを容易に設定することができる。仮に、基礎スラブ1の上端面1aから下側断熱材63の上端部が突出している場合には、束20等の設置作業中に、突出する下側断熱材63に作業者の足等が当たらないように注意する必要がある。これに対し、本実施形態のように、下側断熱材63の上端面を基礎スラブ1の上端面1aに一致させることにより、基礎スラブ1の上端面1aから突出する部位がなくなり、作業性を向上させることができる。
【0045】
また、基礎断熱体6は、基礎スラブ1の側部を覆う下側断熱材63の上端部に上側断熱材60を載置することで形成されるので、鋼材基礎2及び基礎スラブ1を、外気や地盤Y等から極めて容易な施工により断熱することができる。また、基礎断熱体6は、基礎スラブ1及び鋼材基礎2の側方に立ち上がって設けられることとなるので、基礎断熱体6に雨水等が付着したとしても、当該基礎断熱体6に沿って流下することとなり、基礎断熱体6上に雨水等が長期に亘って滞留することを防止することができる。また、基礎断熱体6は立ち上がって設けられているので塵芥等の付着は少なく、たとえ付着したとしても当該雨水等の流下に伴って洗い流されることとなる。従って、基礎断熱体6の施工を容易としつつ、鋼材基礎2と基礎スラブ1とによって構成される基礎の断熱性を長期に亘って維持することができる。
【0046】
また、下側断熱材63の上端部が基礎スラブ1の上端面1aに一致していることにより、上側断熱材60が、下側断熱材63及び基礎スラブ1の双方の上面に亘って設置される場合であっても、上側断熱材60の立ち上がり姿勢を安定的なものとすることができる。また、当該安定した姿勢で上側断熱材60の鋼材基礎2に対する出寸法の調整を容易に行うことができる。
【0047】
また、下側断熱材63の外側の面と、上側断熱材60の外側の面とが同一平面であるため、下側断熱材63及び上側断熱材60の両方の外側の面に亘って、外装材42を隙間なく設置することができる。また、下側断熱材63と上側断熱材60とによって形成される断熱性能を有するラインが明確となり、不必要な箇所に断熱材を設置する必要がなくなり、断熱材の厚さ、量の削減を図ることができる。
【0048】
また、気密シート45が設けられていることによって、基礎断熱体6の防水を確実に行うことができ、雨水等の影響により基礎断熱体6の断熱性が低下してしまうことが防止され、基礎スラブ1及び鋼材基礎2によって構成される基礎の断熱性を長期に亘って維持することができる。
【0049】
次に、外装材42と梁30とを固定する構成の変形例について説明する。本変形例は、上記実施形態で説明した固定金具100の形状が異なるものであり、実施形態と同一構成要素には同一符号を付して説明を省略し、実施形態の構成と異なる箇所を中心に説明する。図8及び図9に示すように、外装材42がビス止めされる固定金具100Aは、梁30に固定される梁固定部100aと、外装材42がビス止めされる外装材固定部100bと、梁固定部100a及び外装材固定部100bを連結する連結部100fとより構成される。梁固定部100aと外装材固定部100bとの間隔(連結部100fの長さ)は、梁30のウェブ30cにおける建物Aの外側面から、上側第二断熱材62における建物Aの内側面までの長さとなっている。外装材42は、外装材42の外側面から気密シート45及び上側断熱材60を貫通して、外装材固定部100bのビス穴100eに向けて差し込まれたビス86によって固定金具100Aに固定される。
【0050】
本変形例においても、基礎断熱体6の施工を容易としつつ、鋼材基礎2と基礎スラブ1とによって構成される基礎の断熱性を長期に亘って維持することができる等、上記の実施形態と同様の効果を奏する。特に、固定金具100Aが基礎断熱体6よりも、建物Aの内側に設けられていることにより、固定金具100Aが基礎断熱体6の内側と外側とを連結する熱橋の役割をすることがない。従って、鋼材基礎2と基礎スラブ1とによって構成される基礎と、外気や地盤Yとをより確実に断熱することができる。
【0051】
なお、実施形態及び変形例において、上側断熱材60の厚みが薄い場合には、上側断熱材60を下側断熱材63の上端面にのみ載置することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1…基礎スラブ(支持体)、2…鋼材基礎、6…基礎断熱体、20…束、30…梁、42…外装材、45…気密シート、60…上側断熱材(鋼材側断熱材)、63…下側断熱材(支持体側断熱材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造を受ける鋼材基礎と、
前記鋼材基礎の下方に設けられて当該鋼材基礎を支持するコンクリート製の支持体と、
前記上部構造の外周部を支持する鋼材基礎の外面側及び前記支持体の側部を包囲する基礎断熱体とを備え、
前記基礎断熱体は、
前記支持体の側部を覆う支持体側断熱材と、
前記支持体側断熱材の上方に設けられて前記鋼材基礎の側部を覆う鋼材側断熱材とを備え、
前記支持体側断熱材の上端面は前記支持体の上端面に一致しており、
前記支持体側断熱材の上端面、又は、前記支持体側断熱材の上端面と前記支持体の上端面とに亘って、前記鋼材側断熱材が載置されている
ことを特徴とする基礎構造。
【請求項2】
前記支持体側断熱材の外面と、前記鋼材側断熱材の外面とが同一平面上に位置づけられた状態で前記鋼材側断熱材が前記支持体側断熱材上に載置され、
前記鋼材側断熱材における前記上部構造の外側の面は外装材に覆われており、
前記外装材の下端部は、前記支持体側断熱材の上端部よりも下方の位置まで延設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の基礎構造。
【請求項3】
前記支持体側断熱材における前記上部構造の外側の面と、前記鋼材側断熱材における前記上部構造の外側の面とに亘って気密シートが張設されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基礎構造。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202188(P2012−202188A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70591(P2011−70591)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】