説明

堀削工具

【課題】 地山に対して傾斜方向、若しくは縦方向等の方向を問わずに掘削することができる上、玉石等が含まれた地層を含んだ軟弱な地質で形成された地山から、比較的硬い地質で形成された地山まで広範に好適に使用することができる掘削工具を提供する。
【解決手段】
中心軸線O回りに回転されるデバイス20の先端部外周に開口した凹部24を設け、前記中心軸線Oから偏心した回転軸線P回りに回転自在であって前記デバイス20が一方向に回転したときに外方に張り出し且つ他方向に回転したときに前記凹部24に収まる拡径ビット30を前記デバイス20先端に取り付け、前記デバイス20先端及び前記拡径ビット30に超硬チップKを備えて、前記デバイス20先端及び前記拡径ビット30を掘削部Dとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、掘削工具に関し、特にトンネル等の地山改良工事に用いられる二重管式掘削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、山岳トンネル等を施工する場合、削岩機の先端に掘削工具を取り付け、被掘削物となる地山を掘削する。その掘削工具にあっては、脆弱地盤を掘削する際に有利となるように、掘削工具の先端となる掘削部が、拡縮可能に構成されるものが提供されている。すなわち、ケーシングパイプ内に中心軸線回りに回転されるデバイスを内蔵し、そのデバイスの後端に回転機構と叩打機構とを備えると共に、デバイスの先端には拡径ビットを備えた掘削工具が提供されている(特許文献1参照)。その拡径ビットは、断面が半円状となって、互いが面当たりになるように形成されている。
【0003】
このような拡径ビットを備えた掘削工具にあっては、デバイスが一方向(順方向)に回転した場合、回転により生じる、デバイス及びビットヘッドと地山との接触面の摩擦力によって、その拡径ビットは外方に張り出し(所謂、掘削部が拡径されている状態)、被掘削物を掘削する。また、被掘削物の掘削を終えて、その掘削工具を収容する場合にあっては、通常通りの掘削部が拡径されていない(所謂、掘削部が縮径されている状態)で、その掘削工具を回収していた。
【0004】
ところで、上述の掘削工具にあっては、デバイスと、その拡径ビットとが完全に分離して構成されている。従って、回転機構によって受ける回転力と、打撃機構によって受ける打撃力との一部をロスさせて、その拡径ビットにその回転力と打撃力が伝達される。さらに、その掘削部は、拡径ビットが外方に張り出すと略円形から乖離された形状となって、被掘削物を掘削する回転抵抗を増加させる。
【特許文献1】特開平5−65787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、被掘削物を掘削する掘削部の径が拡縮可能となる掘削部を備え、地山等の掘削方向が縦方向傾斜方向を問わずに掘削することができ、玉石等が含まれた地層や軟弱な地質で形成された地山から比較的硬い地質で形成された地山まで好適に掘削でき、さらには、回転機構及び打撃機構によって得られる回転力及び打撃力をロスすることなく掘削部に伝達して、被掘削物を掘削することができる掘削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段の掘削工具を提供する。
すなわち、請求項1に係る発明は、中心軸線回りに回転されるデバイスの先端部外周に開口した凹部を設け、前記中心軸線から偏心した回転軸線回りに回転自在であって前記デバイスが一方向に回転したときに外方に張り出し且つ他方向に回転したときに前記凹部に収まる拡径ビットを前記デバイス先端に取り付け、前記デバイス先端及び前記拡径ビットに超硬チップを備えて、前記デバイス先端及び前記拡径ビットを掘削部としたことを特徴とする。
【0007】
この発明に係る掘削工具にあっては、デバイス先端も拡径ビットの先端と共に、掘削部を構成して被掘削物を掘削する。このように、デバイス先端の掘削部は、中心軸線回りに回転するデバイスと一体に構成されているため、掘削するに際してデバイスの回転力及び打撃力を無駄なく被掘削物に伝達する。従って、被掘削物をより無駄なく掘削することができるばかりか、掘削工具の回収にも好適なものとなる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の掘削工具において、前記拡径ビットは、前記デバイス先端の周方向に沿って等間隔置きに複数設けたことを特徴とする。
【0009】
この発明に係る掘削工具にあっては、中心軸線回りにデバイスが回転すると、複数設けられた拡径ビットは等間隔で外方に張り出して掘削部の径が拡大する。従って、掘削部の径が拡大した場合にあっても、掘削部をバランスよく回転させることができることに従い、デバイス自体もバランスよく回転させることができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の掘削工具において、前記拡径ビットが前記凹部に収まっている場合と、外方に張り出した場合との前記回転軸における回転角度を45度以上90度以下に設定したことを特徴とする。
【0011】
この発明に係る掘削工具にあっては、デバイスが中心軸線回りの一方向に回転した場合に、拡径ビットが好ましく外方に張り出すことができ、さらに、デバイスが中心軸線回りの他方向に一時的に回転した場合、拡径ビットを好ましくデバイス先端の凹部に収められる。従って、掘削する場合にあっても、また、掘削後に回収する場合にあっても、操作者は、掘削部の拡径若しくは縮径を、デバイスの回転によって容易にコントロールできる。加えて、被掘削物も好ましく掘削できる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の掘削工具において、前記拡径ビットの回転軸線同士の距離(D2)が、前記掘削部縮経時の径(D1)の0.500倍以上0.633倍以下に設定したことを特徴とする。
【0013】
この発明に係る掘削工具にあっては、拡径ビットが外方に張り出されたり、凹部に収容されたりすることを、好ましく行うことができる。従って、被掘削物を掘削するに際して、好ましい掘削工具となるばかりか、掘削工具の小型化にも貢献し、掘削工具の剛性の向上にも繋がる。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載の掘削工具において、前記拡径ビットの回転軸の径(D3)が、前記掘削部縮経時の径(D1)の0.2倍以上0.3倍以下に設定したことを特徴とする。
【0015】
この発明に係る掘削工具にあっては、拡径ビットが備えられたデバイスの剛性が良くなり、加えて、拡径ビットが外方に張り出されたり、凹部に収容されたりすることを、好ましく行うことができる。従って、被掘削物を掘削するに際して、好ましい掘削工具となるばかりか、掘削工具の小型化にも貢献し、掘削工具の剛性の向上にも繋がる。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の掘削工具において、前記拡径ビットのビットヘッドの回転軸線方向の厚み(T1)が、前記拡径ビットの回転軸の径(D3)の1倍以上3倍以下に設定したことを特徴とする。
【0017】
この発明に係る掘削工具にあっては、拡径ビットが外方に張り出されたり、凹部に収容されたりすることを、好ましく行うことができる。加えて、回転も安定されたものとなる。従って、被掘削物を掘削するに際して、好ましい掘削工具となるばかりか、掘削工具の小型化にも貢献し、掘削工具の剛性の向上にも繋がる。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のうち何れか一項に記載の掘削工具において、前記拡径ビットの回転軸の長さ(T2)が、前記拡径ビットの回転軸の径(D3)の1.7倍以上5倍以下に設定したことを特徴とする。
【0019】
この発明に係る掘削工具にあっては、拡径ビットが外方に張り出されたり、凹部に収容されたりすることを、好ましく行うことができる。従って、被掘削物を掘削するに際して、好ましい掘削工具となるばかりか、掘削工具の小型化にも貢献し、掘削工具の剛性の向上及び生産コストの低減にも繋がる。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係る掘削工具によれば、被掘削物を掘削する掘削部の径が拡縮可能となる掘削部を備え、地山等の掘削方向が縦方向傾斜方向を問わずに掘削することができ、玉石等が含まれた地層や軟弱な地質で形成された地山から比較的硬い地質で形成された地山まで好適に掘削でき、さらには、回転機構及び打撃機構によって得られる回転力及び打撃力をロスすることなく掘削部に伝達して、被掘削物を掘削することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る掘削工具の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
なお、図1は本発明に係る掘削工具の側断面図、図2は図1に示す掘削工具の分解図、図3は掘削工具の要部を示す拡大側断面図、図4はデバイスの側断面図及び正面図、図5は拡径ビットの側断面図及び正面図、図6は掘削部の拡大正面図、図7は掘削部の拡径状態及び縮径状態を示す正面図である。
【0022】
本発明に係る掘削工具1は、ジャンボ削岩機をはじめとする掘削機の先端に取り付けられるものである。図1の側断面図及び図2の分解図に示すように、ケーシングパイプ11は、必要に応じて順次継ぎ足される円管状のパイプ本体12の先端部に、後にも説明する円筒状のケーシングトップ13が同軸に取り付けられて構成される。また、このケーシングパイプ11の内周には、スタビライザー14を備えた中空のインナーロッド15が、前記ケーシングパイプ11の中心軸線Oと同軸に挿入される。また、このインナーロッド15の最後端には、図示されていないが、掘削時において、中心軸線O回りの回転力と先端(図では左方)に向けての打撃力とを、該インナーロッド15に与えるためのドリフターが備えられる。そして、前記インナーロッド15の先端部には、デバイス20が取り付けられるとともに、このデバイス20のさらに先端には、後に詳述する拡径ビット30等を備えた掘削部Dが、ケーシングトップ13の先端部から突出させて設けられている。
【0023】
ここで、前記ケーシングトップ13は、図3に示すように、該ケーシングトップ13の後端部側に、先端部側に対して内外径とも一段縮径するように形成されたパイプ本体被収納部13aが設けられる。前記パイプ本体被収納部13aは、上述したケーシングパイプ11のパイプ本体12に内接し、溶接によって互いが一体となるように構成される。また、パイプ本体被収納部13aの後端部には後端部側(図では右方)に向けて内径が漸次拡径するようにテーパ部13bが形成される。なお、前記ケーシングトップ13の先端部側は、外径をパイプ本体12の外径と略等しく形成されると共に、該ケーシングトップ13先端部は、先端部側に向けて内径が漸次拡径するようにテーパ面状に面取りされた傾斜面13cが設けられている。
【0024】
一方、前記デバイス20は、図4(a)に示すように、後端部側(図では右方)に、前記中央軸線Oを中心として、前記インナーロッド15の外径に合わされて開口される開口凹部21が設けられている。なお、前記開口凹部21は、上述したインナーロッド15の先端部が嵌挿されて接続される。前記開口凹部21には、前記インナーロッド15の先端部が好適に収まるようにロッド係合部21aが設けられる。さらに、前記デバイス20の内部は、掘削部50が好ましく被掘削物を掘削できるように流体等を流出可能な流出孔21b,21cが設けられている。すなわち、掘削部Dを構成するデバイス先端20aに繋がる先端孔21bと、土砂(掘削屑)を後方に流すようにデバイス20の側部に繋がる側部孔21cとに分かれている。従って、前記デバイス20の側部には、後方に土砂(掘削屑)を流し出すことができる流出口29が、その側部を切り欠くように形成されている。
【0025】
また、前記デバイス20の先端部20aは、図4(b)に示すように、中心軸線Oから偏心し且つ中心軸線Oで点対称となる、二つの回転軸線P(P,P)上に、断面円状に形成された回転軸収容孔22(22a,22b)が設けられる。前記回転軸収容孔22(22a,22b)は、後に説明する拡径ビット30の回転軸32を好適に収容する孔であって、断面円状に形成される。前記回転軸収容孔22(22a)の内部には、後に説明する拡径ビット30の回転軸32に設けられた係止凹部34(図5(a)参照)と嵌合して、前記拡径ビット30を回転可能に係止する嵌挿軸23が嵌挿されている。なお、前記デバイス20にあっては、後端側の外径が先端側の外径に比して大きく形成されており、該デバイス20中間付近に、その径の差によって生じるデバイステーパ部26が形成されている。前記デバイステーパ部26は、前記ケーシングトップ13のテーパ部13bに当接し、該ケーシングトップ13に、図示されないドリフターから与えられる打撃力を伝達する。
【0026】
そして、前記デバイス20の中心軸線O上に回転する回転方向Rに向かって、該デバイス20の先端部20aが切り欠かれたように、周方向及び先端方向に対して開口され、拡径ビット30のビット部(ビットヘッド)31を収容可能とする拡径ビット収容凹部24(24a,24b)が設けられる。なお、前記拡径ビット収容凹部24(24a,24b)が設けられることによって、前記デバイス20の先端20aにおいて、該拡径ビット収容凹部24a,24bに挟まれる部分は、突出したように構成される。すなわち、図示されるように、その断面が略H字状に形成されて、デバイス掘削部25が形成されたものとなる。さらに、前記拡径ビット収容凹部24には、土砂等の掘削屑を排出するために、その外周方向に切り欠き凹部27が設けられる。前記デバイス掘削部25は、拡径ビット30の先端部30aに備えられたビット掘削部33と共に、先端部に超硬チップKを埋設させ、掘削部Dを構成する。
【0027】
次に、拡径ビット30について説明する。すなわち、前記拡径ビット30は、図5(a)に示すように、先端側(図5(a)では左方)から、大まかに、側断面が外方に拡大して形成されるビット部(ビットヘッド)31と、上述した回転軸収容孔22に収容される回転軸32とから構成される。前記ビット部(ビットヘッド)31は、図5(b)に示すように、角部を滑らかに形成した正面断面を略台形状で形成されている。そして、その略台形形状の中心から偏心された位置を回転軸線Pとするように、前記回転軸32が後方に向かって突出して正面断面を円状に形成されている。さらに、前記ビット部31の先端には、前記回転軸32から遠ざかるに従って、後方(図5(a)では右方)に傾斜される傾斜段部35(35a,35b)が形成されている。そして、前記ビット部31は、その先端面31aを被掘削物に当接して掘削するビット掘削部33として形成される。前記ビット掘削部33は、上述したデバイス掘削部25と同様に、超硬チップKが埋設され、掘削部Dを構成する。また、前記回転軸32には、上述した回転軸収容孔22内に嵌挿される嵌挿軸23と嵌合する係止凹部34が、該回転軸32の外周を切り欠いて形成されている。
【0028】
上述のように構成した掘削工具1は、図7(a)に示すように、前記拡径ビット30が外への張り出した、つまり、前記掘削部Dの径が拡径された状態で、上述したドリフターによってR方向に回転力及び打撃力が与えられて被掘削物を掘削し、所望の孔を形成する。さらに、被掘削物の掘削を終えて前記掘削工具1を回収する際は、図7(b)に示すように、R方向とは逆のS方向に回転させて、前記拡径ビット30が前記拡径ビット収容凹部24に収容される、つまり、前記掘削部Dの径が縮径された状態で、その掘削された孔から回収されるものとなっている。
【0029】
ところで、上述のように設けられるデバイス20及び拡径ビット30にあっては、被掘削物を好適に掘削できるように、次のように設定して構成される。
すなわち、図6は、掘削部DがR方向に回転して被掘削物を掘削してゆく場合に、前記拡径ビット30が、土砂との摩擦力によって前記拡径ビット収容凹部24から外方に張り出した図を示している。この拡径ビット30は、前記回転軸線P回りに回転されて外方に張り出された場合(掘削部Dの拡径状態)と、前記拡径ビット収容凹部24に収容された場合(掘削部Dの縮径状態)との回転角度Aが45度以上90度以下に設定される。
【0030】
つまり、前記回転角度Aが90度より大きく設定されると、前記拡径ビット30が前記回転軸線P回りに回転されて外方に張り出される場合(掘削部Dの拡径状態)には問題は生じないが、前記拡径ビット収容凹部24に収容される場合(掘削部Dの縮径状態)には、収容され難くい問題が生じる。加えて、掘削工具1を回収する際に、前記ケーシングパイプ12の内壁に、ビット部(ビットヘッド)31を噛み込んでしまう問題も生じる。また逆に、前記回転角度Aが45度より小さく設定されると、被掘削物の掘削時において、土砂等の掘削屑を排出させるための切り欠き凹部27への通り道が狭くなって、好適に土砂等の掘削屑が排出され難くなって、掘削工具の掘削性能が落ちてしまう問題が生じる。このような問題点に鑑みれば、前記回転角度Aは60度に設定された場合、前記拡径ビット30が前記回転軸線P回りに回転されて外方に張り出される場合(掘削部Dの拡径状態)にあっても、前記拡径ビット収容凹部24に収容される場合(掘削部Dの縮径状態)にあっても、前記拡径ビット30が最もスムーズに回転されるものとなって、被掘削物を好適に掘削することができる。
【0031】
上述したように、前記拡径ビット30の外方への張り出しは、該拡径ビット30回転角度Aに加えて、前記掘削部Dの縮径時の径(D1)と、拡径ビット30a,30bの回転軸線P,P同士の距離(D2)との関係によって、スムーズに行われたりそうでなかったりと異なったものとなる。すなわち、前記拡径ビット30がスムーズに回転されるために、前記拡径ビット30a,30bの回転軸線P,P同士の距離(D2)が、前記掘削部Dが縮経された場合の掘削部Dの径(D1)の0.500倍以上0.633倍以下に設定される。
【0032】
つまり、回転軸線P,P同士の距離(D2)が、前記掘削部Dが縮経された場合の掘削部Dの径(D1)の0.633倍より大きく設定されると、前記拡径ビット30が外への張り出した場合に、外へ張り出してしまう部分が大きなものとなる故に、その拡径ビット30が前記回転軸32に与える負荷を大きくさせてしまう問題が生じる。また逆に、回転軸線P,P同士の距離(D2)が、前記掘削部Dが縮経された場合の掘削部Dの径(D1)の0.500倍より小さく設定されると、前記拡径ビット30が前記回転軸線P回りに回転されて、外方に張り出される場合(掘削部Dの拡径状態)に、デバイス掘削部25の幅が十分にとれなくなり、この部分への超硬チップの植設が困難となってしまう問題が生じる。このような問題点に鑑みれば、回転軸線P,P同士の距離(D2)が、前記掘削部Dが縮経された場合の掘削部Dの径(D1)の0.500倍以上0.633倍以下に設定された場合、前記デバイス掘削部25の幅が十分にとれることとなり、この部分への超硬チップの植設も好適になされる。また、前記回転軸32に与える負荷を適宜に保ち、好ましく遠心力を受けることとなって、前記拡径ビット30a,30bが外方に張り出し(掘削部Dの拡径状態)、及び拡径ビット収容凹部24a,24bに収容(掘削部Dの縮径状態)が、好ましく行われる。
【0033】
また、前記掘削工具1は、工具全体の剛性の向上を目的に、前記拡径ビット30(30a,30b)の回転軸32(32a,32b)の径(D3)が、前記掘削部Dの縮径時の径(D1)の0.2倍以上0.3倍以下に設定される。
【0034】
つまり、前記拡径ビット30(30a,30b)の回転軸32(32a,32b)の径(D3)が、前記掘削部Dの縮径時の径(D1)の0.3倍より大きく設定されると、前記デバイス20の先端20aの肉厚が薄く構成される。従って、デバイス20の剛性が低下してしまう問題が生じる。また逆に、前記拡径ビット30(30a,30b)の回転軸32(32a,32b)の径(D3)が、前記掘削部Dの縮径時の径(D1)の0.2倍より小さく設定されると、次は拡径ビット30(30a,30b)の回転軸32(32a,32b)の剛性が低下してしまう問題が生じる。このような問題点に鑑みれば、拡径ビット30(30a,30b)の回転軸32(32a,32b)の径(D3)が、前記掘削部Dの縮径時の径(D1)の0.2倍以上0.3倍以下に設定された場合、掘削工具1全体としての剛性が適当なものとなって、被掘削物の掘削が好ましく行われる。
【0035】
また、前記掘削工具1は、図5に示すように、工具全体の剛性の向上を目的に、前記拡径ビット30のビット部(ビットヘッド)31の回転軸線方向の厚み(T1)が、前記拡径ビット30の回転軸32の径(D3)の1倍以上3倍以下に設定される。
【0036】
つまり、前記拡径ビット30のビット部(ビットヘッド)31の回転軸線方向の厚み(T1)が、前記拡径ビット30の回転軸32の径(D3)の3倍より大きく設定されると、前記拡径ビット30のビット部(ビットヘッド)31の重量が大きくなり、相対的にビットヘッド軸32の剛性が不足するとともに材料費が増大するという問題が生じる。また逆に、前記拡径ビット30のビット部(ビットヘッド)31の回転軸線方向の厚み(T1)が、前記拡径ビット30の回転軸32の径(D3)の1倍より小さく設定されると、前記拡径ビット30のビット部(ビットヘッド)31の剛性が低下してしまい、安定した性能を確保できなくなる問題が生じる。このような問題点に鑑みれば、拡径ビット(ビットヘッド)31の回転軸線方向の厚み(T1)が、前記拡径ビット30の回転軸32の径(D3)の1倍以上3倍以下に設定された場合、掘削工具1全体としての剛性が適当なものとなって、安定した性能が確保されて被掘削物の掘削が好ましく行われる。
【0037】
また、前記掘削工具1は、図5に示すように、工具全体の剛性の向上及び生産時のコスト低減を目的に、前記拡径ビット30の回転軸32の長さ(T2)が、前記拡径ビット30の回転軸32の径(D3)の1.7倍以上5倍以下に設定される。
【0038】
つまり、前記拡径ビット30の回転軸32の長さ(T2)が、前記拡径ビット30の回転軸32の径(D3)の5倍より大きく設定されると、前記デバイス20の剛性が低下してしまう問題が生じるばかりか、生産コストも嵩んでしまう問題も生じる。また逆に、前記拡径ビット30の回転軸32の長さ(T2)が、前記拡径ビット30の回転軸32の径(D3)の1.7倍より小さく設定されると、該回転軸32の支持する力を分散できずに、該回転軸32が磨耗され易くなってしまう問題が生じる。このような問題点に鑑みれば、前記拡径ビット30の回転軸32の長さ(T2)が、前記拡径ビット30の回転軸32の径(D3)の1.7倍以上5倍以下に設定された場合、掘削工具1全体としての剛性が適当なものとなって被掘削物の掘削が好ましく行われるばかりか、掘削工具1の生産コストにおいても適当なものとなる。
【0039】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜の選択が可能である。
例えば、上述の実施形態にあっては、掘削部の一部を形成する拡径ビットは、二つで構成されることとされたが、これに限定されず、3つ以上拡径ビットで構成されるものであってもよい。ただし、掘削部が拡径した場合にバランス良く回転されるためにも、前記拡径ビットは前記デバイス先端の周方向等分割間隔で設けられているのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る掘削工具の側断面図である。
【図2】図1に示す掘削工具の分解図である。
【図3】掘削工具の要部を示す拡大側断面図である。
【図4】デバイスの側断面図及び正面図である。
【図5】拡径ビットの側断面図及び正面図である。
【図6】掘削部の拡大正面図である。
【図7】掘削部の拡径状態及び縮径状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 掘削工具
20 デバイス
24 凹部(拡径ビット収容部)
30 拡径ビット
D 掘削部
K 超硬チップ
O 中心軸線
P 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線回りに回転されるデバイスの先端部外周に開口した凹部を設け、前記中心軸線から偏心した回転軸線回りに回転自在であって前記デバイスが一方向に回転したときに外方に張り出し且つ他方向に回転したときに前記凹部に収まる拡径ビットを前記デバイス先端に取り付け、
前記デバイス先端及び前記拡径ビットに超硬チップを備えて、前記デバイス先端及び前記拡径ビットを掘削部としたことを特徴とする掘削工具。
【請求項2】
前記拡径ビットは、前記デバイス先端の周方向に沿って等間隔置きに複数設けたことを特徴とする請求項1に記載の掘削工具。
【請求項3】
前記拡径ビットが前記凹部に収まっている場合と、外方に張り出した場合との前記回転軸における回転角度を45度以上90度以下に設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の掘削工具。
【請求項4】
前記拡径ビットの回転軸線同士の距離(D2)が、前記掘削部縮経時の径(D1)の0.500倍以上0.633倍以下に設定したことを特徴とする請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の掘削工具。
【請求項5】
前記拡径ビットの回転軸の径(D3)が、前記掘削部縮経時の径(D1)の0.2倍以上0.3倍以下に設定したことを特徴とする請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載の掘削工具。
【請求項6】
前記拡径ビットのビットヘッドの回転軸線方向の厚み(T1)が、前記拡径ビットの回転軸の径(D3)の1倍以上3倍以下に設定したことを特徴とする請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の掘削工具。
【請求項7】
前記拡径ビットの回転軸の長さ(T2)が、前記拡径ビットの回転軸の径(D3)の1.7倍以上5倍以下に設定したことを特徴とする請求項1から請求項6のうち何れか一項に記載の掘削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−37612(P2006−37612A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221701(P2004−221701)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】