説明

堤脚水路用ブロック及び水路構造物

【課題】施工に要するコストを低減できる堤脚水路用ブロックを提供する。
【解決手段】堤脚水路用ブロック10は流水路15を画成する左側版部11,右側版部12,頂版部13及び底版部14と頂版部13の一側部上(左側版部11上)に左側版部11と外側面を共有する土留め用壁部16とを一体に有しており、土留め用壁部16と外側面を共有する左側版部11に流水路15と連通する取水孔18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堤脚水路を構築する際に用いられるブロックと、堤脚水路を含む水路構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
堤防の一側には堤体内の浸透水の集水を目的として堤脚水路用ブロックを複数個連結して構成された堤脚水路が一般に設けられている。
【0003】
従前の堤脚水路用ブロックは縦断面L字形の第1ブロックと縦断面逆L字形の第2ブロックとを縦断面矩形の流水路が形成されるように組み合わせて構成されており、縦断面L字形の第1ブロックの側版部分には流水路内に水を取り込むための取水手段(多孔質コンクリート部または孔)が設けられている。また、組み合わせ後の縦断面L字形の第1ブロックの側版部分は縦断面逆L字形の第2ブロックの頂版部分の上面よりも高い位置まで延びていて、該延びた部分は堤防の法面に沿って落下した土砂等を受け止めるための土留め部分として利用されている。
【特許文献1】特開2004−244881
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従前の堤脚水路用ブロックは縦断面L字形の第1ブロックと縦断面逆L字形の第2ブロックとを縦断面矩形の流水路が形成されるように組み合わせて構成されたものであるため、堤脚水路を構築するときには(1)現場にて第1ブロックと第2ブロックを連結して堤脚水路用ブロックを組み立ててから該ブロックを載置して連結する作業、或いは、(2)現場にて第1ブロックを載置して連結してから各第1ブロックに第2ブロックを組み付けて相互に連結する作業が必要となるが、作業が繁雑であるため堤脚水路及び該堤脚水路を含む水路構造物の施工に要するコスト(日数及び労力)がかかってしまうことを避けられない。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、施工に要するコストを低減できる堤脚水路用ブロックと堤脚水路を含む水路構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の堤脚水路用ブロックは、流水路を画成する左側版部,右側版部,頂版部及び底版部と頂版部の一側部上に左右側版部の一方と外側面を共有する土留め用壁部とを一体に有し、且つ、土留め用壁部と外側面を共有する左右側版部の一方に流水路に連通する取水孔が設けられている。
【0007】
また、本発明の水路構造物は、流水路を画成する左側版部,右側版部,頂版部及び底版部と頂版部の一側部上に左右側版部の一方と外側面を共有する土留め用壁部とを一体に有し、且つ、土留め用壁部と外側面を共有する左右側版部の一方に流水路に連通する取水孔が設けられている堤脚水路用ブロックを複数個連結して構成された堤脚水路と;堤脚水路の取水孔の外側に該取水孔と向き合うように配置された通水性のドレーン部と;堤防の一部を構成し、且つ、ドレーン部を覆うと共に堤脚水路の土留め用壁部に支えられた盛土とを含む。
【0008】
前記堤脚水路用ブロックは、流水路を画成する左側版部,右側版部,頂版部及び底版部と頂版部の一側部上に左右側版部の一方と外側面を共有する土留め用壁部とを一体に有しているので、該堤脚水路用ブロックを載置して連結するだけの比較的簡単な作業で所期の堤脚水路を構築でき、これにより堤脚水路及び該堤脚水路を含む水路構造物の施工に要するコスト(日数及び労力)を低減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、施工に要するコストを低減できる堤脚水路用ブロックと堤脚水路を含む水路構造物を提供できる。
【0010】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図3は堤脚水路用ブロック10を示す。以下の説明では、説明の便宜上、図1の手前側を前、奥側を後、左側を左、右側を右と表記する。図1は堤脚水路用ブロックの前面図、図2は図1の左側面図、図3は図1の右側面図である。
【0012】
図1〜図3に示した堤脚水路用ブロック10は、左側版部11,右側版部12,頂版部13,底版部14及びこれらで囲まれた縦断面略矩形の流水路15を有すると共に、頂版部13の一側部上(左側版部11上)に左側版部11と外側面を共有する矩形板状の土留め用壁部16を有し、底版部14の左側版部11側に延長部17を有する。左側版部11,右側版部12,頂版部13,底版部14,土留め用壁部16及び延長部17はコンクリートによって一体物として形成されている。また、左側版部11には縦長略矩形状を成す複数個(図中は6個)の取水孔18が流水路15と連通して設けられている。
【0013】
図面には各取水孔18の外側(堤防側)の開口面積と内側(流水路側)の開口面積が同じものを示してあるが、ブロック製造過程で取水孔用入れ子を引き抜く際に各取水孔18の内面に抜きテーパが残存する場合には各取水孔18の内側(流水路側)の開口面積は外側(堤防側)の開口面積よりも若干小さくなる。
【0014】
因みに、図1〜図3における符号Wtは頂版部13の上面の左右幅を示し、符号Wbは底版部14及び延長部17の下面の左右幅を示し、符号w1は延長部17の左右幅を示し、符号w2は各取水孔18の前後幅を示す。また、符号Hは堤脚水路用ブロック10全体の高さを示し、符号h1は土留め用壁部16の頂版部13の上面からの高さを示し、符号h2は各取水孔18の上下寸法を示し、符号h3は各取水孔18の下端の下面からの高さを示す。さらに、符号Lは堤脚水路用ブロック10全体の前後長さを示し、符号dは各取水孔18の中心線間隔を示す。さらにまた、符号t1は左側版部11の厚さを示し、符号t2は右側版部12の厚さを示し、符号t3は頂版部13の厚さを示し、符号t4は底版部14の厚さを示し、符号t5は土留め用壁部16の厚さを示し、符号t6は延長部17の厚さを示す。
【0015】
左右幅Wt,左右幅Wb,高さH,高さh1,長さL,厚さt1〜t5は、構築すべき堤脚水路のサイズ及び剛性等に準じて適宜選定される。また、左右幅w1,厚さt6,高さh3及び中心線間隔dは、各取水孔18に向き合うように配置される通水性のドレーン部(図4及び図5の符号23参照)のサイズ等に準じて適宜選定される。
【0016】
各取水孔18の外側(堤防側)の開口の大きさを規定する前後幅w2及び上下寸法h2とその個数も基本的には各取水孔18に向き合うように配置される通水性のドレーン部(図4及び図5の符号23参照)のサイズ等に準じて適宜選定されるが、以下の理由により該前後幅w2及び上下寸法h2は0.3A≧at≧0.05Aの条件、好ましくは0.15A≧at≧0.09Aの条件を満足するように選定することが望ましい。
【0017】
当該条件におけるatは各取水孔18の外側(堤防側)の開口面積の総和であり、前記堤脚水路用ブロック10にあっては取水孔18の個数は6であるためat=a(≒w2×h2)×6となる。また、当該条件におけるAは堤脚水路用ブロック10を左側面からみたときの総面積から壁部16の外側面の面積を減じた値、即ち左側版部11の外側面面積であり、前記堤脚水路用ブロック10にあってはA=(H−h1)×Lとなる。
【0018】
各取水孔18は堤体内の浸透水を流水路15に取り込む役割を成すものであるが、atの値が0.05Aの値を下回ると浸透水の量が増加したときに該役割を十分に発揮することが難しくなる。また、atの値が0.3Aの値を上回ると土圧等の影響で主として左側版部11に亀裂を生じる恐れが高くなる。要するに、atの値を0.3A≧at≧0.05Aの条件、好ましくは0.15A≧at≧0.09Aの条件を満足するように選定すれば、浸透水の量が増加したときでも堤体内の浸透水を流水路15に取り込む役割を十分に発揮させ、且つ、土圧等の影響で主として左側版部11に亀裂を生じる恐れを回避できる。
【0019】
また、前記役割からすれば取水孔18の個数は1個でも構わないが、取水速度を速めるためには前記条件を満足する範囲内でより多くの取水孔18を長さ方向で配列したほうが望ましい。
【0020】
図4は図1〜図3に示した堤脚水路用ブロック10を用いて構築された堤脚水路20を含む水路構造物を示す。
【0021】
図4における符号20は堤脚水路、符号21は堤防、符号21aは盛土、符号22は基礎、符号23は通水性のドレーン部、符号24は道路、符号Rは河川,湖,池または海である。
【0022】
堤脚水路20は、現場で形成した基礎22上に図1〜図3に示した堤脚水路用ブロック10を載置して長さ方向に連結することによって構築されている。基礎22は砕石を基準面が得られるように敷設したものの他、コンクリートを流して基準面が得られるように硬化させたものや、砕石の敷設したものの上にコンクリートを流して基準面が得られるように硬化させたもの等が利用できる。
【0023】
ドレーン部23は砕石や砂利等を金網等の網材内に納め入れたものから成り、堤脚水路20の取水孔18の外側に該取水孔18と向き合うように配置されている。堤防21の一部を構成する盛土21aは堤脚水路20を構築してドレーン部23を配置した後に該ドレーン部23を覆うように設けられており、堤脚水路20の近傍部分を土留め用壁部16に支えられている。
【0024】
道路24はその上面が堤脚水路20の頂版部13の上面と同一平面に位置するように設けられている。この道路は歩道であってもよいし車道であってもよい。
【0025】
図5は図1〜図3に示した堤脚水路用ブロック10を用いて構築された堤脚水路20を含む他の水路構造物を示す。
【0026】
図5に示した水路構造物が図4に示した水路構造物と異なるところは、道路24’の上面高さを堤脚水路20の頂版部13の上面よりも低い高さとした点にある。他の構成は図4に示した水路構造物と同じであるので同一符号を付してその説明を省略する。
【0027】
この水路構造物にあっては、堤脚水路20の頂版部13の上面を歩道とし道路24’を車道とする利用方法が可能である。この場合、堤脚水路20の道路24’側に面した側版部(右側版部12)はその段差によって歩道と車道との境界を形成する。
【0028】
このように、前述の堤脚水路用ブロック10は、流水路15を画成する左側版部11,右側版部12,頂版部13及び底版部14と頂版部13の一側部上(左側版部11上)に左側版部11と外側面を共有する土留め用壁部16とを一体に有しているので、該堤脚水路用ブロック10を載置して連結するだけの比較的簡単な作業で所期の堤脚水路20を構築でき、これにより堤脚水路20及び該堤脚水路20を含む水路構造物の施工に要するコスト(日数及び労力)を低減できる。
【0029】
また、堤脚水路用ブロック10の各取水孔18の外側(堤防側)の開口面積の総和atの値を0.3A≧at≧0.05Aの条件(Aは左側版部11の外側面面積)を満足するように選定することにより、堤体内の浸透水を流水路15に取り込む役割を十分に発揮させ、且つ、土圧等の影響で主として左側版部11に亀裂を生じる恐れを回避できる。
【0030】
尚、前述の説明では、堤脚水路用ブロック10として頂版部13の一側部上(左側版部11上)に左側版部11と外側面を共有する土留め用壁部16を有するものを示したが、左側版部11を右側版部12と称し右側版部12を左側版部11と称する場合には土留め用壁部16は右側版部12と外側面を共有することになる。
【0031】
また、前述の説明では、堤脚水路用ブロック10として延長部17を有するものを示したが、該延長部17は必ずしも必要なものではない。
【0032】
さらに、前述の説明では、堤脚水路用ブロック10として6個の取水孔18を有するものを示したが、取水孔18の個数は前記条件(0.3A≧at≧0.05A)を満足する範囲内で適宜増減してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】堤脚水路用ブロックの前面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】図1の右側面図である。
【図4】図1〜図3に示した堤脚水路用ブロックを用いて構築された堤脚水路を含む水路構造物を示す図である。
【図5】図1〜図3に示した堤脚水路用ブロック10を用いて構築された堤脚水路20を含む他の水路構造物を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10…堤脚水路、11…左側版部、12…右側版部、13…頂版部、14…底版部、15…流水路、16…土留め用壁部、18…取水孔、20…堤脚水路、21…堤防、21a…盛土、23…ドレーン部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水路を画成する左側版部,右側版部,頂版部及び底版部と頂版部の一側部上に左右側版部の一方と外側面を共有する土留め用壁部とを一体に有し、且つ、土留め用壁部と外側面を共有する左右側版部の一方に流水路と連通する取水孔が設けられている、堤脚水路用ブロック。
【請求項2】
流水路を画成する左側版部,右側版部,頂版部及び底版部と頂版部の一側部上に左右側版部の一方と外側面を共有する土留め用壁部とを一体に有し、且つ、土留め用壁部と外側面を共有する左右側版部の一方に流水路と連通する取水孔が設けられている堤脚水路用ブロックを複数個連結して構成された堤脚水路と、
堤脚水路の取水孔の外側に該取水孔と向き合うように配置された通水性のドレーン部と、
堤防の一部を構成し、且つ、ドレーン部を覆うと共に堤脚水路の土留め用壁部に支えられた盛土と、
を含む水路構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−184768(P2008−184768A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17732(P2007−17732)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(390027568)株式会社カイエーテクノ (12)
【出願人】(000162216)共和コンクリート工業株式会社 (44)
【出願人】(506321322)株式会社TKカイエー (2)
【Fターム(参考)】