説明

塗工ライナー及びそれを用いた段ボールシート

【課題】フレキソインキの発色性、印刷均一性が良好で、かつ罫線割れに優れたライナーおよび段ボールシートを提供することにある。
【解決手段】少なくとも2層以上の多層抄きで構成される基紙の片面に顔料と接着剤とを含有する塗工層を設けてなる塗工ライナーにおいて、該基紙の表層に使用されるパルプとして、針葉樹晒クラフトパルプを5〜100質量%および脱墨パルプ及び/又は広葉樹晒クラフトパルプを0〜95質量%含有し、かつ該塗工層中の顔料として焼成カオリン及びタルクを含有することを特徴とする塗工ライナーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工ライナー及びそのライナーを用いた段ボールシートに関する。特に、フレキソ印刷のインキ発色性に優れた美粧段ボール用のライナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ライナーは2〜9層程度の多層抄きされた厚紙で、2層の場合は裏層、3層以上の場合は中層にコスト及び省資源を目的として、脱墨されない古紙パルプが使用される。ライナーは中芯原紙と組み合わせて段ボールシートに加工され、各種包装箱等に使用されるが、近年段ボール箱の機能が、商品を保管・輸送などの流通過程で受ける物理的な力から守るだけでなく、商品が詰められたまま展示、あるいはセリ等に見られるように商品の顔としての機能を付加するために多色印刷が多く行われようになった。このため印刷方式のなかでもオフセットやグラビア印刷と比べ、技術進歩が目覚ましいフレキソ印刷が、小ロット多品種化や環境と安全性問題、コスト削減などの市場課題に対して、近年のデジタル化の波とともに、画期的で斬新な技術でもって注目されている。さらに印刷品質についても、他の印刷方式と比較しても遜色なく、水性化や無溶剤化の面で大きな優位性が認められ、欧米の包装分野では既にフレキソ印刷が主流となっており、日本においても普及の兆しがある。このよう情勢のなかで、見栄えにある目立つ印刷を通常のクラフト色以外のカラーライナーとして多色印刷が行われる美粧ライナーと呼ばれるライナーは、表層に晒パルプや上白古紙パルプを配合したり、白色顔料塗料を塗工し、表面の白色度を高めるたりすることによって製造されていた。また、表層のみの対策はコストがかかることから、表下層(表層の直下の層)にもある程度白色度のあるパルプを用いて、中層の色を隠蔽する作用を持たせることもある。この様な白色度の高い外観を持ったものは、白紙面だけでなく、これに印刷した場合、印刷面が美麗かつ鮮やかに見える効果を与える。このため、この種のライナーを使用して、カラー印刷を施した段ボ−ル箱は、人の目を引く効果が高く、更に、内容物を忠実に表するために、内容物の優良性を強く訴えることが出来る優れた面がある。近年、量販店を中心に、店頭に段ボ−ル箱に製品を詰めたまま販売するということがよく見受けられるようになって来ており、この点からも印刷面が美麗で鮮やかなライナーが求められている。
【0003】
このため、ライナー表面の白色度と色相を所定の範囲に調整することにより、白紙外観、印刷外観も深みのある落ち着いた視覚効果を与えるライナーが開示されている。(特許文献1参照)さらに、白紙外観、及び印刷画像の鮮明性に優れるライナーとして、表層の明度を60〜73の範囲内で、かつ表層の灰分含有量が3重量%以上、9%未満が開示されている。(特許文献2参照)また、顔料とバインダーを主成分として含有する塗工層により、白色度と色相及び光沢を特定範囲に調整することにより白紙面では落ち着いた視覚効果を与えるとともに、印刷の文字が読み易く、さらにカラー印刷するとインキ発色性が良好で印刷光沢が良好で印刷面が鮮明な美粧ライナーが開示されている。(特許文献3参照)しかしながら、これらの開示はいずれもライナーとしての色相を規定しているだけで、フレキソ印刷における印刷適性を十分満足させる提案になっていない。また、一般の茶ライナーに白インキを多量に印刷した上に、多色を印刷して、美粧性を付加する方法が行われているが、この場合、茶ライナー表面を白くし、赤や藍など多色インキの仕上がりをよくするために、高価な白インキを多量に印刷する必要がありこの方法も経済的に大きな負担となっている。ライナーの表層に顔料とバインダーを含む塗被層を設け、耐油度(キット数)を12級以上としたライナーが開示されている。(特許文献4参照)この種のライナーは耐油度レベルが高すぎて、優れたフレキソインキ発色性は得られない。
【0004】
さらに、フレキソ印刷性の優れたライナーを得る方法として、ライナー表面にカチオン性の樹脂を塗布することにより印刷効果を向上させる技術が開示されている。(特許文献5、6参照)しかしながら、インキの発色や印刷面の仕上がりに関して、十分満足できるものではない。
【0005】
また、顔料と接着剤を主成分とする水性組成物をライナー原紙に塗工する際のその水性組成物中の顔料組成として、(a)焼成カオリンが20〜70重量部、(b)構造化カオリンおよび/またはデラミネーテッドカオリンが15〜77重量部、および(c)プラスチックピグメントが3〜20重量部含有せしめられ、かつ(a)+(b)+(c)の合計が70重量部以上である塗工ライナーが開示されている(特許文献7参照)。しかしながら、その目的とするところは、グラビア印刷に適した、かつ白紙光沢、印刷光沢に優れた塗工ライナーを得ることにあり、この顔料組成の塗工層を持ったライナーを水性フレキソ印刷すると、インキ濃度が劣り、印刷仕上がりに劣るものしか得られない。さらに、フレキソ印刷のモトリングの発生がない、白紙光沢および印刷光沢に優れた塗工ライナーを得るために、塗被層面の平滑度特性として、加圧型平滑度計で加圧条件5kgf/cmで測定したときの平滑度が3.0μm以下で、20kgf/cmで測定した平滑度との比が0.3〜0.8である塗工ライナーが提案されている(特許文献8参照)。この提案は、通常の塗工ライナーは平滑が低くモトリングが発生しやすいこと、印刷光沢を高めたいことから、適正な平滑化を規定することで課題を解決したものであるが、規定の平滑性では塗被層のインキ吸収性が劣り、特にインキの発色性が不十分なレベルでしか得られない。また、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、及びインクジェット記録方式において、高い印刷光沢が得られ、印刷後の摩擦によりインクの剥がれ落ちが生じないことを目的として、表層の表面に無機顔料、バインダー、及び表面サイズ剤の3つを配合した塗布剤を塗布することが提案されている。(特許文献9参照)この中で、特に表面サイズ剤が、水、溶剤の吸収を抑制するために配合されているため、インキの吸収が抑制されて、高いインキ発色性は得られない。
【0006】
一方、段ボールシートを形成するには、ライナーの裏面にコルゲータ(貼合機)で波上に加工された中芯と呼ばれるシートを糊付けし、更に糊付けした反対面に別のライナーを貼り合わせた状態に成型するには、折り曲げるための罫線をつけて折り曲げるが、この折り曲げ時や箱に組たてる際、段ボールシートの表面は伸ばされることになる。そのため表側のライナー表面が破断する場合がある。この破断を「罫線割れ」と呼んでいる。
【0007】
この罫線割れの対策として、いろいろな提案がなされている。例えば、ライナー表面に水及び必要に応じて水溶性物質を塗工した後、ソフトカレンダー処理する手法(特許文献10参照)、両性界面活性剤をパルプスラリーに添加して製造されたライナー(特許文献11参照)、ライナー表面にカチオン性界面活性剤を含有させる手法(特許文献12参照)、あるいは古紙パルプを含むパルプスラリーに水溶性リグニンと(メタ)アクリルアミド系の両性またはカチオン性共重合体のなかでも特に、2級のジアリルアミン系重合体の塩を共重合体の必須構成成分を添加して製造されたライナー(特許文献13参照)等が提案されている。これらの罫線割れ対策は、いずれもライナー表面に顔料塗工層を設けておらず、顔料塗工層を設けた場合には適用するのが困難であるか、もしくは満足すべき結果が得られない。
【0008】
【特許文献1】特開2001−146697号公報
【特許文献2】特開2007−100278号公報
【特許文献3】特開2002−317395号公報
【特許文献4】特開2007−154360号公報
【特許文献5】特開2004−232158号公報
【特許文献6】特開2004−231901号公報
【特許文献7】特開平11−279989号公報
【特許文献8】特開2000−314095号公報
【特許文献9】特開2005−089931号公報
【特許文献10】特開2000−303384号公報
【特許文献11】特開2001−262496号公報
【特許文献12】特開平11−200279号公報
【特許文献13】特開平06−184983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、フレキソ印刷インキ、特に水性フレキソインキに対して発色性に優れ、印刷均一性が良好で、かつ罫線割れに優れたライナーおよびそれを用いた段ボールシートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
少なくとも2層以上の多層抄きで構成される基紙の片面に顔料と接着剤を含有する塗工層を設けてなる塗工ライナーにおいて、該基紙の表層に使用されるパルプとして、針葉樹晒クラフトパルプを5〜100質量%、および脱墨パルプ及び/又は広葉樹晒クラフトパルプを0〜95質量%含有し、かつ該塗工層中の顔料として焼成カオリン及びタルクを含有することを特徴とする塗工ライナーである。
前記塗工ライナー表面の白色度が50〜85%であることが好ましい。
前記塗工層中の焼成カオリンの含有量が全顔料100質量部当たり30〜95質量部であることが好ましい。
前記塗工層中のタルクの含有量が顔料100質量部当たり5〜50質量部であることが好ましい。
以上のような塗工ライナーを用いた段ボールシートが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、フレキソ印刷におけるインキ発色性に優れ、印刷均一性が良好で、かつ罫線割れに優れたライナーおよびそれを用いた段ボールシートを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般に、フレキソ印刷は水性タイプのインキを使用して印刷が実施されることから、印刷面の吸水性度合いによりインキの浸み込みが異なる。このため、フレキソインキにおける発色性、印刷均一性および網点再現性は、印刷面の吸水性の度合いとフレキソインキ量に大いに影響される。ライナー表面に形成する塗工層中に焼成カオリンが存在するとフレキソインキ吸収性が極めてよくなり、この焼成カオリンの配合量、及びその他の顔料配合量を調整することにより、各種のフレキソ印刷機に適応したインキ発色性のよいライナーを得ることができる。また、顔料塗工層を設けた塗工ライナーの罫線割れについては、表層に使用するパルプ種として、針葉樹晒クラフトパルプ(以下NBKP)が5%以上含有し、その他のパルプとしては、脱墨パルプ及び/または広葉樹晒クラフトパルプ(以下LBKP)使用することが必要である。
【0013】
ここで、焼成カオリンを塗工層中に含有するとフレキソ印刷適性を改善する理由は必ずしも定かではないが、焼成カオリンは、天然に産するカオリンをキルンなどで約800℃程度の高温処理することにより、カオリンの結晶構造中に存在する結晶水を放出させたもので、結晶構造が崩壊して非晶質な構造となり、不透明性、多孔質でインキ吸収性に優れた性質を持っている。このことから、焼成カオリンのもつ空隙性によって、顔料中にインキを取り込み、またインキ中の溶剤が均一に吸収されて、インキの発色性と均一性が得られ、また密着性の向上による網点の再現性も得られるものと考える。焼成カオリンの含有量は、顔料100質量部当たり30〜95質量部が好ましく、より好ましくは60〜90重量部である。
【0014】
また、塗工層中に含有する顔料として、タルクは必須である。その理由として、段ボールシート、段ボール箱製造時においてライナー表面に異物が接触して擦れた時、ライナー表面の摩擦抵抗が高いとライナー表面に異物付着による汚れが発生しやすいことに対して、タルクが扁平顔料で、塗工層に存在すると摩擦抵抗を低減させる性質を有していることから、異物による汚れを軽減させるためである。一般的に製紙用のタルクは、セディグラフによって測定した平均粒径が1〜5μm、クロライト含有率が0〜90%であるが、中でもクロライト含有率5〜50%のタルクの使用は、顔料の分散性と加工時の汚れを軽減させる効果のバランスがとれているため、より好ましい。また、タルクの含有量は、顔料100質量部当たり、5〜50質量部が好ましい。クロライト含有率によりタルク含有量は変わるが、さらに好ましくは15〜40質量部である。ここで、タルク配合における好ましい焼成カオリンの含有量としては、40〜95重量部、より好ましくは60〜85重量部である。
【0015】
本発明において、焼成カオリンおよびタルクを含有する塗料の塗工層は、単層であっても、複層であっても差し支えないが、全体の塗工量は2〜10g/m2が好ましい。塗工量がこの範囲であると、経済性にすぐれ、かつ水性フレキソインキの発色性が優れたライナーが得られる。より好ましい塗工量としては、3〜7g/m2である。
【0016】
ライナー原紙表層に塗工する塗料の顔料として焼成カオリン、タルク以外の顔料としては、製紙分野で通常使用されている顔料、例えば、クレー、構造化カオリン、エンジニアードカオリン、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、硫酸カルシウム等の一種または二種以上を、フレキソインキの吸収性の観点から、本発明の所望する効果を阻害しない範囲で使用することができる。ここで、プラスチックピグメント等の有機顔料はインキ吸収性が劣るので好ましくない。
【0017】
さらに、ライナー原紙表層に塗工する塗料に、保水剤を添加すると塗工適性が向上するので好ましい。添加する保水剤としては、製紙分野で一般にCMCと呼ばれているカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース、合成保水剤と呼ばれている多価カルボン剤アクリル系共重合体やメタクリル酸とアクリル酸エステルの共重合体等が挙げられる。その中でもカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩は塗工面が
均一に塗工されやすく、特にエーテル化度0.60〜1.00、重合度600〜1200
の範囲のものが好ましい。なお、通常、CMCは粉袋で供され、塗料には適用するには、溶解して使用しなければならない。塗料を作成する過程において、CMCを別の溶解設備で溶解することは、2つの攪拌タンクが必要となり、その塗料調整工程が複雑になる。また、CMCは、溶解して放置しておくと粘度が低下することがあり、塗料物性の安定性に劣る。そこで、塗料調整の最終段階で添加するだけでよく、添加後の塗料物性の安定性がよく、取り扱いが簡単な合成保水剤の使用も塗料調整を効率よく行う態様である。
【0018】
本発明の塗料中の接着剤としては、特に限定するものではなく、一般の塗被紙製造分野
で使用されている公知の接着剤が適宜使用される。例えば、スチレン−ブタジエン共重合
体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレンーメチルメタクリレートーブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体ラテックス等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性した重合体または共重合体ラテックス等の水分散性接着剤、ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂等の合成樹脂系接着剤、酸化澱粉、陽性澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類が例示される。これら水分散性および/または水溶性接着剤から1種または2種以上を適宜選択して使用できる。接着剤の配合部数は顔料100質量部に対して、10〜50質量部の接着剤の使用が好ましい。さらに好ましくは15〜40質量部である。因みに、接着剤の含有量が10質量部未満であれば塗工層の強度が保てない。50質量部以上であれば塗工層中における顔料の比率が小さくなるため、フレキソ印刷におけるインキ発色性、あるいは印刷均一性もしくはその両方が劣る。
【0019】
インキ発色性向上、印刷均一性の仕上がりに関しての効果を阻害しない範囲において、本発明使用される塗料中に、防滑剤、染料等の添加剤を併用してもよい。
【0020】
本発明の塗料をライナー原紙に塗工するに当たっては、塗被紙製造に一般に使用される塗工装置が使用でき、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールサイズプレスコーター、フィルムメタリングサイズプレスコーター等の塗工装置を使用して、オンマシン方式またはオフマシン方式でライナー原紙の表面に、単層または多層で塗工される。塗工時の顔料組成物の固形分濃度は、10〜75重量%の範囲で選ぶことができるが、塗工量が2〜10g/m2の範囲に留まるよう、また、塗工するコーターを考慮し、適宜調整することが好ましい。
【0021】
本発明で塗工された塗工ライナーは、塗工面や印刷適性をさらに向上させるために、弾性ロールにコットンロールを用いたスーパーカレンダーや弾性ロールに合成樹脂ロールを用いたソフトニップ等のカレンダー装置により平滑化処理を行うことが出来る。ソフトニップカレンダーは合成樹脂ロール表面の耐熱温度がコットンロールに比べて高く設定することが可能なため、高温での処理が可能であり、同一の平滑性を目標とした場合、スーパーカレンダーに比べて処理線圧を低く設定できるので好ましい態様である。
【0022】
本発明の塗工ライナー用の原紙について、表層を構成するパルプとしては、NBKPを5%〜100質量%含有し、その叩解度は300〜500mlが好ましい。その他のパルプ種としては、製本、印刷工場等より発生する印刷用塗工紙の裁落を収集した古紙(以後ケント古紙と呼ぶ)、雑誌古紙、チラシ古紙、新聞古紙、オフィス古紙、情報用紙古紙、段ボール古紙、紙器古紙等の古紙を脱墨して得られたパルプおよび/またはLBKPを0〜95質量%配合して使用される。
【0023】
表下層、中層、裏層を構成するパルプとしては、特に限定するものではなく、例えば木材パルプである未晒、晒の化学パルプ、機械パルプ、非木材パルプ、およびケント古紙、雑誌古紙、チラシ古紙、新聞古紙、オフィス古紙、情報用紙古紙、段ボール古紙、紙器古紙等の古紙を脱墨して得られたパルプ、マニラ麻等のパルプから選ばれる一種又は二種以上を適宜配合して使用される。中層、裏層には、ライナーのグレードにより使用するパルプについて適宜選択して用いることが望ましい。例えば、強度か求められる場合には、未晒クラフトパルプまたは段ボール古紙を使用することが好ましい。また、表下層はライナー表層に接する層であるため表面の白色度に影響を及ぼしやすいことから、晒クラフトパルプもしくは脱墨パルプを使用することが好ましい。
【0024】
内添薬品も必要に応じて使用でき、例えば、硫酸バンド、ロジン等のサイズ剤、ポリアミド、澱粉等の紙力増強剤、濾水歩留まり向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロヒドリン等の耐水化剤、染料等が使用される。
【0025】
本発明のライナー原紙は、二層以上のパルプ層を抄き合わせて多層構成とするものであるが、公知の多層抄き抄紙機によって製造することができる。
【0026】
ここで、ライナー原紙表面の白色度については、40〜80%の範囲で本発明に適用される。原紙の白色度が高ければ高いほど、塗工後の目視白さが向上し、フレキソ印刷の有り無しの部分のコントラストが大きくなるので印刷仕上がりが向上する。原紙の白色度を上げるには、使用するパルプを白くする必要があり、経済的な負担が増える。印刷仕上がりと経済性のバランスを考慮すると、原紙白色度は50〜70%の範囲が好ましい。なお、塗工する原紙の表層には、塗料の染み込みを抑えるため、サイズ剤を添加することが望ましい。
【0027】
本発明の塗工ライナー上に印刷する際のフレキソインキとしては、特に制限はなく、アルコール型、コソルベント型、水性型、およびUV硬化型等があげられるが、これらのフレキソインキの中でも水性型が安全性、作業性及び経済性の面でも優れており、本発明の効果が最も顕著に表れる実施態様である。
【0028】
また使用されるフレキソ印刷機は、印刷ユニットの並び方により、スタック型、ライン型、セントラルインプレッション型の3タイプに分けられるが、いずれのタイプも使用できる。
【0029】
上記の本発明により得られた塗工ライナーは、少なくとも一方の最外面に備えた段ボール用ライナーとして用いることができ、本発明の段ボールシートが提供される。段ボールシートとしては、中芯の片面にのみライナーが貼合された片面段ボールシート、中芯の両面にライナーが貼合された両面段ボールシート、中芯/ライナーの積層体が複数段設けられた複数段の段ボールシートがあるが、本発明はいずれの段ボールシートにも適用可能である。
【0030】
ライナーと共に段ボールシートを構成する波状部材の中芯としては特に制限はなく、一般の段ボールシートに使用されているものが使用できる。原料パルプとしては、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドパルプ(CGP)、段ボール古紙パルプ、雑誌古紙パルプ、未晒クラフトパルプ、クラフトパルプ、合成繊維等が使用でき、中でも、資源保護の観点から、段ボール古紙パルプや雑誌古紙パルプ等の古紙パルプを多く用いることが好ましい。中芯は積層紙であっても良く、さらには層間に合成樹脂接着剤層を有する積層紙であっても良い。
【0031】
本発明の段ボールシートは、従来公知の段ボールの製造方法をそのまま適用でき、例えば、中芯とライナーとを、接着性物質を介して貼合するコルゲーター処理を経て製造することができる。接着性物質としては、澱粉糊や合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエンーアクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル系共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等)等が挙げられる。
【0032】
具体的には、(1)中芯又はライナーの表面に、押出ラミネートや合成樹脂エマルジョンの塗布等により接着剤層を形成してから、これらを重ね合わせ、加圧及び加熱して接着する方法、(2)中芯/ライナー間に合成樹脂フィルムを介在させ、これを加圧及び加熱して接着する方法、(3)中芯/ライナー間に合成樹脂のエマルジョンや溶液等の接着剤を介在させ、これを加圧及び加熱して接着する方法等が挙げられる。なお、(2)の方法においては、あらかじめ成形された合成樹脂フィルムを繰り出し、中芯/ライナー間に供給することもできるし、合成樹脂フィルムを溶融押出成形しながら、中芯/ライナー間に供給することもできる。
【0033】
上記コルゲーター処理を1回実施することで、片面段ボールシートが製造され、複数回繰り返し実施することで、両面段ボールシートや複数段の段ボールシートが製造される。両面段ボールシートは、例えば、中芯とライナーとを加熱加圧ロールで貼合し片面段ボールシートとするシングルフェーサ(SF)と、SFで得られた片面段ボールシートの中芯側に更にライナーを重ね、加圧しながら熱盤上を走行させ貼合するダブルフェーサ(DF)とを有するコルゲーターを用いて製造することができる。加熱加圧条件は特に制限はないが、例えば、SFの加熱温度150〜200℃、線圧20〜40kN/m、加圧時間0.01〜0.20秒、DFの加熱温度150〜200℃、線圧0.1〜1.0kN/m、加圧時間2〜7秒等が好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論、本発明はそれらの範囲に限定されるものでない。なお、例中の「部」、「%」は特に断わらない限り、質量部、質量%を示す。
【0035】
実施例1
表層のパルプとして、NBKP15%、LBKP30%、ケント古紙55%で米坪を30g/m、表下層のパルプとしてケント古紙100%で米坪を30g/m、中層、裏下層、裏面層のパルプとして、新聞古紙70%、雑誌古紙30%で合わせた米坪を110g/mとして、5層に抄き合わせた米坪170g/m2のライナー原紙を得た。なお、表層には、紙力剤(商品名:ポリストロンP−1222、荒川化学工業社製)1.3%、硫酸バンド3%、サイズ剤(商品名:サイズパインSPN−815、荒川化学工業社製)2.5%を添加した。また、表下層、中層、裏面層には、紙力剤(商品名:ポリストロンP−1222、前出)0.1%を添加した。
【0036】
次に、焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、BASF社製)80部、タルク(商品名:NK−KCL、兼松ケミカル社製)20部、接着剤(商品名:B−1535、旭化成社製)を28部、保水剤(商品名:SN924、サンノプコ社製)0.4部(いずれも固形分換算)からなる塗工液を、濃度40%となるよう調製した。調製した塗工液を上記の170g/m2のライナー原紙にバーコーターで乾燥重量が6g/m2(固形分)となるように塗工、乾燥後、2Nipのカレンダー処理をして塗工ライナーを得た。
【0037】
実施例2
実施例1において、表層のパルプとしてNBKP30%、ケント古紙70%とし、表下層のパルプとして新聞古紙70%、雑誌古紙30%を使用して、硫酸バンド2%、紙力剤(商品名:ポリストロンP−1222、前出)0.8%を添加した以外は実施例1と同様な方法で塗工ライナーを得た。
【0038】
実施例3
実施例1において、塗工液中の顔料を焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、前出)15部、タルク(商品名:NK−KCL、前出)65部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)20部、保水剤としてCMC(商品名:BSH、第一工業製薬社製)を0.4部配合した以外は実施例1と同様な方法で塗工ライナーを得た。
【0039】
実施例4
実施例1において、焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、前出)70部、タルク(商品名:NK−KCL、前出)25部、二酸化チタン(商品名:KA−100、COSMO CHEMICAL社製)5部とした以外は実施例1と同様な方法で塗工ライナーを得た。
【0040】
比較例1
実施例1で使用したライナー原紙に表面サイズ剤(商品名:PM385、荒川化学工業社製)のみを0.2g/m塗布した。
【0041】
比較例2
実施例1において表層のパルプとして、LBKP50%、ケント古紙50%とした以外は、実施例1と同様な方法で塗工ライナーを得た。
【0042】
比較例3
実施例1において、2級カオリン(商品名:HT−GAS、BASF社製)100部とし、塗工量を5.2g/mとした以外は、実施例1と同様にして塗工ライナーを得た。
【0043】
比較例4
実施例1において、焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、前出)100部、塗工量を6.0g/m2とした以外は、実施例1と同様にして塗工ライナーを得た。
【0044】
得られた塗工ライナーについて、下記の評価方法で評価を行い、結果を表1に示した。なお、本発明における印刷ライナーの測定及び評価については特に記載のない限り、23℃、50%RHの環境下で行った。
【0045】
(白色度)
白色度は分光白色度測色計(スガ試験機社製)を用い、JIS P 8148(2001)に準じて求めた。
【0046】
(平滑度)
JAPAN TAPPI No.5−2:2000に準じ、王研式平滑度計(ASAHI−SEIKO社製)を使用して測定した。
【0047】
(罫線割れ評価方法)
凸部が0.5〜1mm、凹部が1〜2mmの幅を有する凸凹構造を持った罫線入れ機で罫線を入れた後、20℃15%RHの条件下で24時間調湿する。調湿後に罫線部を180度に折り曲げ、その上を5kgのローラーで5往復させ、折り曲げた罫線部の割れた部分の長さを計測し、割れた長さの合計値を罫線の全長で割って、罫線割れ率を算出した。
【0048】
(動摩擦係数)
JIS P 8147:1994に準じ、引張試験機(測定器:オートグラフAGS−500NG、島津製作所社製)を使用して、引張速度が100mm/分、おもり1kgで、ライナーの表面同士を擦り合わせて動摩擦係数を測定した。
【0049】
(フレキソ印刷におけるインキの発色性、均一性)
K印刷プルーファー(RK Print−Coat Instruments社製)、100線/インチに彫刻したアニロックスプレートで、水性フレキソ藍インキ(商品名:アクワコンテGN39SA藍、東洋インキ社製)を使用して、得られた塗工ライナーに印刷した。印刷した面をカラー反射濃度計(Model404G、X−Rite社製)でシアンインキ濃度を計測した。
フレキソ印刷均一性については、下記の目視評価を行った。
◎:フレキソ印刷面の均一性が優れている。
○:フレキソ印刷面にやや濃淡ムラが見られる。
×:フレキソ印刷面に濃淡ムラが顕著に見られる。
【0050】
(網点再現性)
印刷局式グラビア印刷試験機(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No24に準拠)で、インキは水性フレキソインキ(商品名:FK−99D−260くろPR−7、サカタインクス社製)を使用して印刷。50%の階調部を25倍に拡大し、網点の状態を下記の基準で官能評価を行った。
○:網点の形状が明らかに認められるが、一部欠損がある。
△:網点の形状が認められるが、欠損部が全体の半分以上ある。
×:網点の形状が認められない。
【0051】
(加工時汚れ評価)
得られた塗工ライナーおよび非塗工ライナーをコルゲーターで中芯(商品名:S120、王子板紙社製)と裏ライナー(商品名:SF210、王子板紙社製)を使用して貼合し、Aフルート形態で段ボールシートを作成した。その後、製函工程を経て段ボールケースを作成した。貼合、製函工程における汚れは下記の基準で官能評価を行った。
○:ライナー表面に異物付着による汚れが全く見られない。
△:ライナー表面に異物付着による汚れがわずかに見られるが、実用上問題ないレベ
ルである。
×:ライナー表面に異物付着による汚れが著しくみられ、実用上問題があるレベルで
ある。
【0052】
貼合時における、熱板取られ状況等は、実施例、比較例で得られた塗工および非塗工ライナー共段ボールシートにおいては大差なかったが、得られたシートに果物の図柄を印刷すると、実施例1〜4の塗工ライナーは目視の白さ、フレキソ印刷におけるインキの発色性、均一性等が著しく際立っていた。
【0053】
【表1】

【0054】
上記表1で明らかなように、実施例1、2、4は、白色度が高く、フレキソ印刷のインキ濃度、印刷均一性、網点再現性が優れている。実施例3は、フレキソ印刷のインキ濃度
がやや劣るものの、印刷均一性、網点再現性が良好である。これに対して、比較例1はインキ濃度が低く、フレキソ印刷品質が劣っており、また網点再現性も劣っている。比較例2は、表層にN材パルプがないため、罫線割れ率が高い。顔料に焼成カオリン、タルクを全く配合していない比較例3は、フレキソインキの吸収性が劣るため、インキ濃度が低い。さらに、顔料配合が焼成カオリンのみの比較例4では、表面の摩擦係数が高く、加工時の汚れが劣っている。
以上の通り、本発明によりフレキソ印刷インキ、特に水性フレキソインキに対して優れたインキ発色性と印刷面の均一性を持ち、罫線割れに優れたライナーおよびそれを用いた段ボールシートを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層以上の多層抄きで構成される基紙の片面に顔料と接着剤を含有する塗工層を設けてなる塗工ライナーにおいて、該基紙の表層に使用されるパルプとして、針葉樹晒クラフトパルプを5〜100質量%、および脱墨パルプ及び/又は広葉樹晒クラフトパルプを0〜95質量%含有し、かつ該塗工層中の顔料として焼成カオリン及びタルクを含有することを特徴とする塗工ライナー。
【請求項2】
前記塗工ライナー表面の白色度が50〜85%である請求項1記載の塗工ライナー。
【請求項3】
前記塗工層中の焼成カオリンの含有量が全顔料100質量部当たり30〜95質量部である請求項1または2に記載の塗工ライナー。
【請求項4】
前記塗工層中のタルクの含有量が顔料100質量部当たり5〜50質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗工ライナー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工ライナーを用いた段ボールシート。

【公開番号】特開2009−228184(P2009−228184A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77949(P2008−77949)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】