説明

塗工層を有するシートの製造方法

【課題】粘性体の付着に起因する切断刃の錆の発生や、切断性の低下が防止された、塗工層を有するシートの製造方法を提供すること。
【解決手段】連続長尺物からなる基材シート1を走行させつつ、その走行方向と交差する方向にわたって該基材シート1を順次裁断して、個別化された複数の基材シート1Aを得;個別化された各基材シート1Aを、それらの走行方向の前後に間隙を設けずに配置した状態下に走行させつつ、個別化された各基材シート1Aの一方の面に粘性体を塗工して塗工層を形成し;塗工層を有する個別化された各基材シート1Bを、それらの走行方向の前後に間隙が生じるように該シート1B間の距離を広げて走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性体の塗工によって形成された塗工層を有するシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の基材の上に粘性体を塗工し、次いで該基材を所定形状に打ち抜く技術が知られている。例えば特許文献1には、通気性を有するシート状の吸水シート上に流動性を有する粘体状の発熱組成物をパターン化、積層し、更にこの上から、該発熱組成物を覆うように別の吸水シートを積層し、該発熱組成物の粘着力で吸水シートを該発熱組成物を挟み込んだ状態で固定した後、シール部を除き、かつ発熱組成物の形状より大きな形状に打ち抜いて積層体を形成し、次いで、この積層体を基材と被覆材との間に挟んで当該被覆材と基材とのシール部を熱融着することを発熱体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−253593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の方法では、吸水シート上に発熱組成物を塗布して塗工層を形成した後に打ち抜きを行なっているので、打ち抜きのときに、発熱組成物の粘性に起因してカッターの刃に該発熱組成物が付着してしまい、製造トラブルが起こりやすい。また装置が汚染されやすい。しかも打ち抜きのときに位置ずれが起こりやすい。更に、同文献に記載の方法では発熱組成物をある決まったパターンで塗工するので、粘性の高い発熱組成物を用いた場合には、同形のパターンを再現性よく、かつ生産性よく製造することが容易でない。
【0005】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る塗工層を有するシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材シートに粘性体を塗工して、塗工層を有するシートを製造する方法であって、
連続長尺物からなる基材シートを走行させつつ、その走行方向と交差する方向にわたって該基材シートを順次裁断して、個別化された複数の基材シートを得、
個別化された各基材シートを、それらの走行方向の前後に間隙を設けずに配置した状態下に走行させつつ、個別化された各基材シートの一方の面に粘性体を塗工して塗工層を形成し、
塗工層を有する個別化された各基材シートを、それらの走行方向の前後に間隙が生じるように該シート間の距離を広げて走行させる、塗工層を有するシートの製造方法を提供するものである。
【0007】
また本発明は、基材シートに粘性体を塗工して、塗工層を有するシートを製造する方法であって、
連続長尺物からなる基材シートを走行させつつ、該基材シートの走行方向に沿って複数の個別化された基材シートが形成されるように該基材シートに閉じた形状の切り込みを順次形成し、
切り込みが形成された連続長尺物からなる基材シートを、該連続長尺物からなる基材シートから個別化された基材シートを分離せずに走行させつつ、該連続長尺物からなる基材シートの一方の面に粘性体を塗工して塗工層を形成し、
塗工層を有する連続長尺物からなる基材シートから、個別化された各基材シートを分離して、塗工層を有する個別化された複数の基材シートを得る、塗工層を有するシートの製造方法を提供するものである。
【0008】
また基材シートに粘性体を塗工して、塗工層を有するシートを製造する方法であって、
連続長尺物からなる基材シートを走行させつつ、該基材シートの走行方向に沿って複数の個別化された基材シートが形成されるように該基材シートに切り込みを順次形成し、
切り込みが形成された連続長尺物からなる基材シートを、該連続長尺物からなる基材シートから個別化された基材シートを分離せずに走行させつつ、該連続長尺物からなる基材シートの一方の面に粘性体を塗工して塗工層を形成し、
塗工層を有する連続長尺物からなる基材シートから、個別化された各基材シートの一部を分離廃棄して、塗工層を有し、かつ分離廃棄された基材シートに由来する切欠部を有する複数の個別化された基材シートを得る、塗工層を有するシートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粘性体を基材シートに塗工する前に、該基材シートを所定の形状に切断するので、切断用の刃への粘性体の付着が防止され、粘性体の付着に起因する切断性の低下や、刃の錆の発生が防止される。それによって安定な製造を長期にわたって行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の方法に好適に用いられる製造装置の好適な一例を示す模式図である。
【図2】図2は、連続長尺物からなる基材シートの裁断パターンの一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の方法に好適に用いられる製造装置の好適な別の例を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の方法に好適に用いられる製造装置の好適な更に別の例を示す模式図である。
【図5】図5(a)は、連続長尺物からなる基材シートに形成される切り込みパターンの一例を示す図であり、図5(b)は、図5(a)に示す切り込みパターンが形成された基材シートから、個別化された基材シートを分離廃棄した後の状態を示す図である。
【図6】図6は、本発明の方法に好適に用いられる製造装置の好適な更に別の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の製造方法を実施するために好適に用いられる製造装置の一例が模式的に示されている。同図に示す製造装置10は、第1裁断部20、塗工部30、リピッチ部40、封止部50及び第2裁断部60を備えている。
【0012】
裁断部20は、ロータリーダイカッタ21及びアンビルローラ22を備えている。ロータリーダイカッタ21においては、ローラ状の本体部21aの周面に、切断刃21bが複数個取り付けられている。切断刃21bは、その幅方向が、本体部21aの軸方向と一致し、かつその刃先方向が、本体部21aの半径方向と一致するように配置されている。アンビルローラ22は、その周面が平滑になっている。アンビルローラ22は、その内部に、軸方向に延びる空間が形成されている。この空間は、図示しない吸引源に接続されている。更にアンビルローラ22は、その周面において開口し、前記の空間に連通する多数の小孔(図示せず)有している。そして、前記の吸引源を作動させると、小孔を通じてアンビルローラ22の周面からアンビルローラ22の内部に向けて空気が吸引されるようになっている。ロータリーダイカッタ21とアンビルローラ22は、ロータリーダイカッタ21の切断刃21bとアンビルローラ22の周面とが当接するか又は両者間に所定のクリアランスが生じるような位置関係で配置されている。
【0013】
塗工部30は、ダイコータ31を有している。また塗工部30は、ダイコータ31のダイリップに対向し、かつ矢印方向に周回するワイヤメッシュ製の通気性無端ベルト32も備えている。更に、無端ベルト32を挟んでダイコータ31のダイリップに対向してサクションボックス33も備えている。
【0014】
更に塗工部30は、個別化され、かつ塗工層が形成された基材シートの塗工層分断手段36も有している。この塗工層分断手段36は例えば、ワイヤー製の円筒状部材や、あるいはポリ四フッ化エチレン製のブレードであり得る。この塗工層分断手段36によって塗工層の分断処理を行なうことにより、塗工液の連続塗工により連続形成された塗工層を首尾良く切り分けることができる。
【0015】
リピッチ部40は、無端ベルト43を備えている。無端ベルト43の周回速度は、塗工部30に備えられている無端ベルト32の周回速度よりも高速に設定されている。この速度差によって、連続搬送されてくる個別化された基材シート1B間のピッチが変更されるようになっている。その他、ピッチ変更装置としては、連続搬送される複数の個別物品のピッチを変更することのできる装置として公知のものを特に制限なく用いることができる。そのような装置の詳細は、例えばEP0812789号公報や特表2004−504107号公報に記載されている。また、リピッチ部40は、第1の被覆シートの合流部41及び第2の被覆シートの合流部42も備えている。
【0016】
封止部50は、シール凸部51aを備えたシールローラ51と、同じくシール凸部52aを備えたシールローラ52とを備えている。シールローラ51及びシールローラ52は、所定温度に加熱可能になっている。シールローラ51とシールローラ52は、シールローラ51のシール凸部51aとシールローラ52のシール凸部52aとが当接するか又は両者間に所定のクリアランスが生じるような位置関係で配置されている。
【0017】
第2裁断部60は、ロータリーダイカッタ61及びアンビルローラ62を備えている。ロータリーダイカッタ61とアンビルローラ62は、ロータリーダイカッタ61の切断刃61bとアンビルローラ62の周面とが当接するか又は両者間に所定のクリアランスが生じるような位置関係で配置されている。
【0018】
以上の構成を有する塗工層を有するシートの製造方法について説明すると、基材シート1は、図示しない原反ロールから繰り出されて連続長尺物の形態で走行する。そして基材シート1は第1裁断部20に導入され、走行方向と交差する方向にわたって順次裁断されて、個別化された毎葉の基材シート1Aとなる。連続長尺物の基材シート1の裁断に際しては、第1裁断部20におけるアンビルローラ22に接続されている吸引源(図示せず)を作動させておき、アンビルローラ22による吸引を行なう。この吸引によって連続長尺物の基材シート1が裁断されて、個別化された毎葉の基材シート1Aになっても、該基材シート1Aはアンビルローラ22の周面に吸引された状態が維持されるので、各基材シート1Aはそれらの走行方向の前後に間隙を設けずに配置された状態が維持され、その状態下に走行する。
【0019】
連続長尺物からなる基材シート1の裁断は、基材シート1の幅方向に延びるように行なわれればよく、例えば基材シート1の幅方向にわたって直線的に行なうことができる。あるいは、図2に示すように、裁断線Cが曲線を描くように裁断を行なうことができる。いずれの場合であっても、裁断によってトリムが発生しないような裁断パターンを採用することが好ましい。
【0020】
個別化された毎葉の基材シート1Aは、第1裁断部20から塗工部30に導入され、塗工部30に備えられた無端ベルト32に乗り移る。無端ベルト32は通気性であり、かつ無端ベルト32を挟んで基材シート1Aと対向する位置に配置されているサクションボックス33が作動しており、更に搬送速度がアンビルローラー22と同速であることで、基材シート1Aの無端ベルト32への乗り移りは円滑に行なわれる。したがって、無端ベルト32に乗り移った後であっても、各基材シート1Aはそれらの走行方向の前後に間隙を設けずに配置された状態が維持されて走行する。
【0021】
塗工部30においては、各基材シート1Aの表面に粘性体の塗工液が塗布される。粘性体とは流動体の一種であって、塗料、ゲル、スラリー、クリーム、インク、ドウなど流動性物質全般を言う。塗工液は、基材シート1Aの表面の全域に塗工されてもよく、あるいは基材シート1Aの走行方向の側部域が非塗工域となるように塗工されてもよい。また、基材シート1Aの走行方向に沿う複数条の塗工域がストライプ状に形成されるように塗工液を塗布してもよい。塗工液の塗布に際しては、各基材シート1Aは、それらの走行方向において前後隣り合う他の基材シート1Aとの間に間隙が設けられていないので、塗工液を連続塗工しても、無端ベルト32を始めとして装置10が塗工液で汚れることはない。つまり、粘性体の塗工液は、基材シート1Aに対して連続塗工される。
【0022】
上述した各種の粘性体のうち、該粘性体が、例えば粉体が液媒体に分散されてなるスラリーである場合、該スラリーの粘度は、500〜20,000mPa・s、特に1,000〜10,000mPa・sであることが好ましい。粘度は、23℃・50%RHの環境下において、例えばB型粘度計の4号ローターを用いて測定される。
測定器:東機産業(株)製 BII形粘度型BHII No.4ローター
回転数6〜20rpm
また、粘性体が例えばドウである場合、該ドウの粘度は、剪断速度が10s-1で3,000〜300,000mPa・sであることが好ましく、剪断速度が1000s-1で60〜20,000mPa・sであることが好ましい。ドウとは、例えば本出願人の先の出願に係る特開平10−204499号公報に記載されるように、粉末組成物と液体、ペースト又はゲル等の流動性を有する物質との捏和物をいう。該流動性を有する物質には加熱や加圧、剪断により流動化するものも含まれる。ドウの粘度は、23℃・50%RHの環境下において、例えば下記の測定器を使用して測定される。
測定器:HAAKE社製回転粘度型 Rotovisco RV20
テストフィクスチュアにはクェット(内径19.2mm、外径23.1mm、ギャップ1.9mm、内筒長31.95mm)を使用。
更に、粘性体が例えばゲル(例えば化粧品シート等に用いられる含水ゲル)である場合、該ゲルの粘度は、400,000〜1,300,000mPa・sであることが好ましい。粘度は、23℃・50%RHの環境下において、例えば下記の測定器を使用して測定される。
測定器:東機産業(株)製 回転粘度計TV−10R型
Tバーステージ TS−10型 Tバースピンドル
回転数5rpm 測定時間1分 ステージ上昇速度20mm/min
【0023】
塗工液の塗工に際しては、ダイコータ31と対向する位置に設置されているサクションボックス33による吸引が行なわれている。したがって基材シート1Aが通気性を有する場合、例えば基材シート1Aが繊維シートである場合には、前記の吸引によって基材シート1Aへ塗工液を安定塗工することができ、安定な塗工層を形成することができる。
【0024】
このようにして基材シート1Aの一方の面に、粘性体からなる塗工液が塗工されて塗工層が形成される。以下の説明においては、塗工層が形成された毎葉の基材シート1Aを塗工シート1Bと呼ぶ。各塗工シート1Bは、それらの走行方向において前後隣り合う他の塗工シート1Bとの間に間隙を設けずに走行して、リピッチ部40に導入される。リピッチ部40を利用して、各塗工シート1Bの走行方向の前後に間隙が生じるように塗工シート1B間の距離を広げる。この距離は、リピッチ装置の設定に応じて任意に決定できる。
【0025】
塗工シート1B間の距離を広げる前に、塗工層分断手段36によって、個別化された塗工シート1Bどうしの間において塗工層を確実に切り分けて、リピッチ部40におけるリピッチを首尾良く行い得るようにすることが好ましい。こうすることで、リピッチ時に粘性体の塗工液が糸引きすることを効果的に防止することができる。なお、糸引きを起こさない塗工液を塗工する場合には、塗工層分断手段36をあえて設ける必要はない。
【0026】
リピッチ部40において、前後で隣り合う塗工シート1B間の距離が広げられるのとともに、各塗工シート1Bの上面側、すなわち塗工層が形成された側に、連続長尺物からなる第1の被覆シート2を配置し、下面側に、同じく連続長尺物からなる第2の被覆シート3を配置する。このようにして、第2の被覆シート3と塗工シート1Bと第1の被覆シート2とが重ね合わされた積層体4が形成される。この積層体4は、塗工シート1Bが間欠配置された連続長尺物からなる。
【0027】
第1及び第2の被覆シート2,3は、塗工シート1Bの左右の側縁から側方に延出する延出域が形成されるような幅を有していることが好適である。これによって、以下に述べる封止部50において、両被覆シート2,3による塗工シート1Bの封止を首尾良く行なうことができる。
【0028】
第1及び第2の被覆シート2,3としては、紙、不織布、フィルムやそれらのラミネート体等が挙げられ、例えば通気性を有するか又は有さない樹脂製のフィルム等を用いることができるが、これらに限られず、本発明の目的物の具体的な用途に応じて適切な材料が用いられる。少なくともどちらか一方が通気性を有することが好ましい。
【0029】
積層体4は封止部50に導入される。封止部50においては、第1の被覆シート2及び第2の被覆シート3における塗工シート1Bからの延出域を所定の接合手段によって接合する。接合は、塗工シート1Bにおける左右の側縁の外方及び前後の端縁の外方において行なわれる。接合手段としては、熱融着、超音波接合、接着剤による接着等が挙げられる。先に述べたリピッチ部40において前後で隣り合う塗工シート1B間に間隙が設けられているので、塗工シート1Bの前後の端縁の外方において両被覆シート2,3を接合する領域は十分に確保されている。
【0030】
封止部50における接合は、塗工シート1Bを取り囲む閉じた接合域が形成されるように行なわれることが好ましい。この接合域は、連続的に形成され、両被覆シート2,3によって塗工シート1Bが気密状態となるように行なわれてもよく、あるいは断続的に形成されてもよい。
【0031】
このようにして接合された積層体4は、次に第2裁断部60へ導入され、走行方向の前後において隣り合う塗工シート1B間において幅方向にわたって裁断される。これによって目的物100が得られる。
【0032】
以上の方法によれば、先に述べた特許文献1に記載の技術と異なり、粘性体からなる塗工液の塗工前に基材シート1の裁断が行なわれるので、裁断に用いられる刃に塗工液が付着することが効果的に防止される。その結果、刃に錆が生じることが効果的に防止され、刃の切れ性が長期間にわたって維持されるので、製造を長期にわたり安定的に行なうことができる。
【0033】
図3には、図1に示す装置の変形例が示されている。同図に示す装置10においては、塗工部30において、ダイコータ31の下流側にノズル34が配置されている。この装置は、粘性体からなる塗工液が不安定な場合、例えば塗工液に含まれる成分どうしが化学反応を起こす場合に、そのような化学反応を起こす成分どうしを隔離して化学反応を起こさないようにするときに有効である。例えば、塗工液に含まれる成分Aと成分Bとが化学反応を起こす場合、成分Bを成分Aから隔離して、成分Aを含むが成分Bを含まない粘性体からなる塗工液前駆体を調製するとともに、これとは別に成分Bを含む液を調製し、塗工液前駆体をダイコータ31によって、個別化された基材シート1Aに塗工して塗工シート前駆体1B’を形成した後、ノズル34によって成分Bを含む液を、個別化した基材シート1Aに滴下することができる。また成分Bは、リピッチ後の基材シート1Bに対して間欠で滴下しても良い。この方法の別法として、図3に示す装置において、ダイコータ31とノズル34との配置の位置を逆にして、初めにノズル34によって成分Bを含む液を、個別化された基材シート1Aに滴下し、次いでダイコータ31によって塗工液前駆体を、個別化された基材シート1Aに塗工することもできる。なお、図3に示す装置10において、塗工部30よりも下流側の構造は図1に示す装置と同様になっている。
【0034】
図4には、本発明の製造方法に用いられる別の装置10が示されている。この装置は、裁断部20におけるロータリーダイカッタ21の構造が図1に示す装置と相違している。詳細には以下に述べるとおりである。
【0035】
基材シート1は、図示しない原反ロールから繰り出されて連続長尺物の形態で走行する。そして基材シート1は第1裁断部20に導入される。第1裁断部20においては、連続長尺物からなる基材シート1の走行方向に沿って、複数の個別化された基材シート1Aが形成されるように、連続長尺物からなる基材シート1に閉じた形状の切り込み5を順次形成する。切り込み5は連続線からなる。図4においては、長径が基材シート1の走行方向を向く楕円形の切り込み5が形成された状態が示されている。ロータリーダイカッタ21に備えられている刃は、そのような切り込み5の形状に対応した形状になっている。連続長尺物の基材シート1に切り込み5を形成するに際しては、第1裁断部20におけるアンビルローラ22に接続されている吸引源(図示せず)を作動させておき、アンビルローラ22による吸引を行なう。この吸引を行なうことで、切り込み5が形成され、それによって個別化された基材シート1Aが生じても、該基材シート1Aはアンビルローラ22の周面に吸引された状態が維持されるので、該基材シート1Aは、連続長尺物の基材シート1から分離することなく走行する。また、本発明の製造方法において、前記の閉じた形状の切り込み5を形成する代わりに、例えば、後述する図5(a)に示す切り込みを順次形成してもよい。
【0036】
連続長尺物の基材シート1は、該シート1から個別化された基材シート1Aが分離することなく、第1裁断部20から塗工部30に導入され、塗工部30に備えられた無端ベルト32に乗り移る。塗工部30に設置されているサクションボックス33の作動によって、連続長尺物の基材シート1及び個別化された基材シート1Aの無端ベルト32への乗り移りは円滑に行なわれる。したがって、無端ベルト32に乗り移った後であっても、個別化された基材シート1Aは、連続長尺物の基材シート1から分離することなく走行する。
【0037】
塗工部30においては、少なくとも個別化された基材シート1Aの全域に粘性体からなる塗工液が塗工されるように塗工が行なわれる。好適には、少なくとも個別化された基材シート1Aの最大幅を超える幅で塗工が行なわれる。このような塗工を行なうことによって、塗工部30における連続長尺物の基材シート1の走行に蛇行が生じても、個別化された基材シート1Aの全域には塗工液が塗工されるようになるという利点がある。
【0038】
塗工部30における塗工液の塗工に際しては、個別化された基材シート1Aは、連続長尺物の基材シート1から分離しておらず、両者の間には間隙が設けられていないので、塗工液を連続塗工しても、無端ベルト32を始めとして装置10が塗工液で汚れることはない。
【0039】
図4に示す装置を用いる場合には、連続長尺物の基材シート1に形成する切り込みのパターンとして図5(a)に示すパターンを採用することもできる。この場合においては、個別化された複数の基材シート1Aと、個別化された複数の基材シート1Dとが形成される。しかし、この場合には、個別化された基材シート1Aは目的物ではない。個別化された基材シート1Aは、分離廃棄されるべきものであり、目的物は図5(b)に示すように個別化された各基材シート1Aに由来する切欠部Cを有する基材シート1Dである。
【0040】
このようにして塗工層が設けられた、個別化された基材シート1A(以下、これを「個別化された塗工シート1B」と呼ぶ。)及び塗工層が設けられた連続長尺物の基材シート1(以下、これを「連続塗工シート1C」と呼ぶ。)は、リピッチ部40に導入される前に互いに分離される。詳細には、塗工部30の最下流の位置に設置された受け渡しパッド35によって、連続塗工シート1Cから個別化された塗工シート1Bがくりぬかれ、該塗工シート1Bのみがリピッチ部40に導入される。個別化された塗工シート1Bが分離して生じた連続塗工シート1Cは、走行ライン外へ排出される。以降の工程は、図1に示す装置を用いた工程と同様であり、図4に示す装置10における塗工部30よりも下流側の構造は図1に示す装置と同様になっている。
【0041】
図5(a)に示す切り込みパターンが形成されている場合には、個別化された複数の塗工シート1Aが分離廃棄され、残部である個別化された複数の塗工シート1D(図5(b)参照)が目的物となる。この塗工シート1Dにおいては、個別化された塗工シート1Dに由来する切欠部Cが形成されている。塗工シート1Aの分離廃棄には、例えば吸引装置(図示せず)を用いることができる。また、個別化された複数の塗工シート1Dは、必要に応じてリピッチされてもよい。
【0042】
図6には、図4に示す装置の変形例が示されている。同図に示す装置10においては、塗工部30において、ダイコータ31の下流側にノズル34が配置されている。この装置は、先に述べた図3に示す装置に対応するものである。この装置においては、まず塗工液前駆体をダイコータ31によって連続長尺物の基材シート1及び個別化された基材シート1Aに塗工した後、ノズル34によって別の液を滴下する。図6においては液の滴下は、個別化された塗工シート1Bが分離される前であるが、これに代えて、塗工シート1Bが分離された後に液を間欠で滴下してもよい。
【0043】
図6に示す方法の別法として、図6においてダイコータ31とノズル34との配置の位置を逆にして、初めにノズル34によって液を滴下し、次いでダイコータ31によって塗工液前駆体を塗工することもできる。なお、図6に示す装置10において、塗工部30よりも下流側の構造は図1に示す装置と同様になっている。
【0044】
以上の各装置を用いた本発明の製造方法を実施するにあたり、基材シートとしては、目的物の用途に応じた材質のものを特に制限なく用いることができる。例えば、紙、織布、編み物地、不織布などの繊維シート;樹脂製のフィルム、金属箔;それらの積層体などを用いることができる。特に基材シートとして液体の吸収性を有するものを用いると、塗工液中に含まれている液体分が基材シートに吸収されるので、形成された塗工層の基材シートへの定着性が向上するという利点がある。特に、本発明の製造方法で形成される塗工層は、製品特性上適当な水分を残した状態で粉体成分と均一に分散された状態で該塗工膜が形成されていることが理想的であり、更に、基材シートの繊維と粉体成分が絡み合った状態で塗工層を形成していることが、使用中の粉体成分の片寄りを防止する上で望ましい。しかし、最終製品での塗工層の組成では流動性がなく、該組成の塗工液を用いたのでは安定な塗工ができないので、液体で希釈して粘度を低下させた状態で塗工を行なう必要がある。しかし、希釈された塗工液から形成された塗工層は液体分が多いことから製品特性が低下してしまう。そのような場合に、基材シートとして液の吸収性を有するものを用いれば、そのような不都合が生じにくくなる。これらの観点から、基材シートとして、液体の吸収性が高く塗工層の定着性が良好な材料である繊維シートを用いることが好ましい。特に紙や不織布を用いることが好ましい。また、繊維シートを用いることで、水溶性成分が該繊維シートに吸収されて粘稠性が失われることで、個別化された塗工シート1Bの切り分け性が一層向上する。
【0045】
基材シートとして繊維シートを用いる場合、天然繊維及び合成繊維のいずれをも用いることができる。基材シートの構成繊維として親水性繊維を用いることで、発熱層に含まれる被酸化性金属との間で水素結合が形成されやすくなり、発熱層の保形性が良好になるという利点がある。また、親水性繊維を用いることで、基材シートの吸水性ないし保水性が良好になり、発熱層の含水率をコントロールしやすくなるという利点もある。これらの観点から、親水性繊維としてはセルロース繊維を用いることが好ましい。セルロース繊維としては化学繊維(合成繊維)及び天然繊維を用いることができる。
【0046】
セルロースの化学繊維としては、例えばレーヨン及びアセテートを用いることができる。セルロース天然繊維としては、各種の植物繊維、例えば木材パルプ、非木材パルプ、木綿、麻、麦藁、等を用いることができる。これらのセルロース天然繊維のうち、太い繊維を容易に入手できる等の観点から、木材パルプを用いることが好ましい。セルロース天然繊維として太い繊維を用いることは、基材シートの吸水性ないし保水性の観点から有利である。
【0047】
特に、セルロース天然繊維として、嵩高セルロース繊維を用いることが好ましい。嵩高セルロース繊維を用いることで、基材シートにおける構成繊維の繊維間距離を好適なものとすることが容易となる。嵩高セルロース繊維の具体例としては、(a)繊維形状が、捻れ構造、クリンプ構造、屈曲及び/若しくは分岐構造の立体構造をとるか、(b)繊維粗度が0.2mg/m以上であるか、又は(c)セルロース繊維の分子内及び分子間が架橋されたものが挙げられる。
【0048】
前記の(a)の捻れ構造、クリンプ構造、屈曲及び/又は分岐構造等の立体構造をとる繊維の具体例としては、木材パルプを化学的な反応で分解した化学パルプや、機械的な処理(叩解)で分解させたパルプや、化学的な反応と機械的な処理を組み合わせて得られたパルプを用いることができる。
等が挙げられる。
【0049】
前記の(b)の繊維は、嵩高な状態でセルロース繊維が集積するので、そのような繊維を用いると、基材シートにおける液体の移動抵抗が小さく、液体の通過速度が大きくなるので、塗工層からの液体の引き抜きのコントロールが容易になる。この観点から、(b)の繊維の繊維粗度は、0.2〜3mg/m、特に0.2〜1mg/mであることが好ましい。
【0050】
繊維粗度とは、木材パルプのように、繊維の太さが不均一な繊維において、繊維の太さを表す尺度として用いられるものであり、例えば、繊維粗度計(FS−200、KAJANNIELECTRONICSLTD.社製)を用いて測定される。繊維粗度が0.2mg/m以上のセルロース繊維の例としては、針葉樹クラフトパルプ〔Federal Paper Board Co.製の「ALBACEL」(商品名)、及びPT Inti Indorayon Utama製の「INDORAYON」(商品名)〕等が挙げられる。
【0051】
前記の(b)の繊維は、繊維断面の真円度が0.5〜1、特に0.55〜1であることが好ましい。このような真円度を有するセルロース繊維を用いることで、基材シートにおける液体の移動抵抗が一層小さくなり、液体の通過速度が一層大きくなる。真円度の測定方法は次のとおりである。面積が変化しないように、繊維をその断面方向に垂直にスライスし、電子顕微鏡により断面写真をとる。断面写真を画像回析装置〔日本アビオニクス社製の「Avio EXCEL」(商品名)〕によって解析し、測定繊維の断面積及び周長を測定する。これらの値を用い、以下に示す式を用いて真円度を算出する。真円度は、任意の繊維断面を100点測定し、その平均値とする。
真円度=4π(測定繊維の断面積)/(測定繊維の断面の周長)2
【0052】
嵩高セルロース繊維として木材パルプを使用する場合、一般に木材パルプの断面は脱リグニン化処理によって偏平であり、その殆どの真円度は0.5未満であるところ、このような木材パルプの真円度を0.5以上にするためには、例えば、かかる木材パルプをマーセル化処理して木材パルプの断面を膨潤させればよい。市販のマーセル化パルプの例としては、ITT Rayonier Inc.製の「FILTRANIER」(商品名)や同社製の「POROSANIER」(商品名)等が挙げられる。
【0053】
前記の(c)の繊維である架橋セルロース繊維は、湿潤状態でも嵩高構造を維持し得るので好ましい。セルロース繊維を架橋するための方法としては、例えば、架橋剤を用いた架橋方法が挙げられる。かかる架橋剤の例としては、ジメチロールエチレン尿素及びジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等のN−メチロール系化合物;クエン酸、トリカルバリル酸及びブタンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸;ジメチルヒドロキシエチレン尿素等のポリオール;ポリグリシジルエーテル系化合物の架橋剤などが挙げられる。架橋剤の使用量は、セルロース繊維100重量部に対して、0.2〜20重量部とすることが好ましい。架橋セルロース繊維は、その繊維粗度が、0.3〜2mg/m、特に0.32〜1mg/mであることが好ましい。また架橋セルロース繊維は、繊維断面の真円度が0.5〜1、特に0.55〜1であることも好ましい。市販の架橋セルロース繊維としては、Weyerhaeuser Paper Co.製の「High Bulk Additive」等が挙げられる。
【0054】
上述の(a)〜(c)の繊維のうち、特に(c)の繊維を用いると、基材シートと発熱層との一体性が高まり、該発熱層の脱落が起こりにくくなるという有利な効果が奏される。また発熱体が柔軟なものとなり、本発明の発熱具を取り付け対象物、例えば人体の皮膚や衣類に取り付けたときのフィット性が良好になるという有利な効果も奏される。意外なことに、発熱体の柔軟性は、発熱終了後においても維持されることは、特筆に値する。基材シートが液体を吸収保持できる特性が一層高まるので好ましい。この繊維を用いた基材シートは柔軟なものとなるので、本発明の製造方法の目的物を例えば人体の皮膚や衣類に取り付けたときのフィット性が良好になるという有利な効果も奏される。
【0055】
上述の各種の親水性繊維は、その繊維長が0.5〜6mm、特に0.8〜4mmであることが、湿式法又は乾式法での基材シートの製造が容易である点から好ましい。
【0056】
基材シートには、上述の親水性繊維に加え、必要に応じて熱融着性繊維を配合してもよい。この繊維の配合によって、湿潤状態での基材シートの強度を高めることができる。熱融着性繊維の配合量は、基材シートにおける繊維の全量に対して0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%であることが好ましい。
【0057】
基材シートが液体を吸収する特性を更に高めるためには、繊維の選択だけであく、基材シート中に、液体を吸収する材料を含有させておくことが有利である。例えば高吸収性ポリマーの粒子を含有させておくことが有利である。高吸収性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収・保持できかつゲル化し得るヒドロゲル材料を用いることが好ましい。粒子の形状は、球状、塊状、ブドウ房状等であり得る。粒子の粒径は、1〜1000μm、特に10〜500μmであることが好ましい。高吸収性ポリマーの具体例としては、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体などが挙げられる。
【0058】
基材シートが高吸収性ポリマーの粒子を含有する場合、該基材シートは、(イ)高吸収性ポリマーの粒子と繊維とが均一に混合した状態のワンプライのシートであり得る。また基材シートは、(ロ)高吸収性ポリマーの粒子が、該基材シートの厚み方向略中央域に主として存在しており、かつ該基材シートの表面には該粒子が実質的に存在していない構造を有するワンプライのものでもあり得る。更に基材シートは、(ハ)繊維を含む同一の又は異なる繊維シート間に、高吸収性ポリマーの粒子が配置されたツープライのものでもあり得る。
【0059】
基材シートは、それが前記の(イ)の形態のものである場合、例えばエアレイド法で製造することができる。(ロ)の形態のものである場合には、例えば本出願人の先の出願に係る特開平8−246395号公報に記載の湿式抄造法で製造することができる。(ハ)の形態のものである場合には、エアレイド法又は湿式抄造法で製造することができる。これら種々の形態をとり得る基材シートのうち、液体の吸収保持性を高める観点から、(ロ)の形態のものを用いることが好ましい。
【0060】
基材シートに占める高吸収性ポリマーの割合は、10〜70質量%、特に20〜55質量%であることが、基材シートの吸水性ないし保水性を好適なものとする観点及び発熱層の含水率のコントロールの観点から好ましい。なお、この割合は、基材シート上に塗工層が形成される前の乾燥状態にある該基材シートについて測定された値である。
【0061】
基材シートは、その坪量が10〜200g/m2、特に35〜150g/m2であることが好ましい。基材シートの坪量をこの範囲内に設定することで、湿潤状態における基材シートの強度を十分に確保することができ、また基材シートの吸水性ないし保水性を好適なものとすることができる。一方、基材シートに含まれる高吸収性ポリマーの坪量は、5〜150g/m2、特に10〜100g/m2であることが好ましい。高吸収性ポリマーの坪量をこの範囲内に設定することで、基材シートの吸水性ないし保水性を一層好適なものとすることができる。これらの坪量は、基材シート上に塗工層が形成される前の乾燥状態にある該基材シートについて測定された値である。
【0062】
次に、本発明の製造方法において用いられる粘性体について説明すると、該粘性体としては、目的物の用途に応じた材質のものを特に制限なく用いることができる。例えば乳化物、粘性油、含水ゲル、染料インク、樹脂塗料、ワックス、ホットメルト、液体洗剤のような固形分を含まない粘性体や、 顔料インク、磁気塗料、導電性塗料、絶縁塗料、粘稠化した粉末洗剤、被酸化性金属を水やゲルで粘稠化した液のような固形分を含む粘性体などを用いることができる。本発明の方法が、切断刃の切断性の低下防止に特に効果的であることにかんがみると、粘性体として、固形分を含むものを用いた場合に、本発明の利点が特に顕著なものとなる。
【0063】
固形分を含む粘性体の一例として被酸化性金属の粒子、電解質及び水を含む発熱組成物が挙げられる。この発熱組成物は、更に反応促進剤を含んでいてもよい。また、粘性体中での固形分の分散性を高める観点から、増粘剤や界面活性剤を含んでいてもよい。これらの成分を含む粘性体を基材シートの表面に直接塗工して塗工層を形成することで、シート状の発熱体を得ることができる。基材シートが液体の吸収性を有する場合、粘性体の塗工と同時に、該粘性体に含まれている液体分が基材シートに吸収されて、粘性体の粘性が低下する。その結果、塗工層は粘性を失い、先に説明したリピッチ部40において塗工層の上に第1の被覆シート2を配置したときに、塗工層が第1の被覆シート2に貼り付くことが効果的に防止される。その結果、第1の被覆シート2が例えば通気性を有するシート(例えば合成樹脂製の透湿性を有する多孔性シート)である場合には、該シートが固形分によって目詰まりしづらくなり、通気性の低下が効果的に防止される。基材シートとして液体の吸収性を有するシートを用いることに加えて、粘性体の塗工時に、サクションボックス33による吸引を用いれば、粘性体からの液の引き抜きが一層促進され、塗工層の粘性を一層急速に低下させることができる。
【0064】
上述の発熱組成物からなる粘性体においては、被酸化性金属の粒子、電解質及び水が共存していると、該被酸化性金属の粒子の酸化が促進されてしまうため、被酸化性金属の粒子と電解質とを分離しておくことが有利である。この観点から、上述の発熱組成物からなる粘性体を用いる場合には、図3に示す装置を用い、粘性体として被酸化性金属の粒子及び水を含み、かつ電解質を含まない組成物を用い、個別化した基材シート1Aに該粘性体を塗工した後であって、かつ塗工層を有する個別化された基材シート1A間の距離を広げる前に、該基材シート1Aに前記の電解質の水溶液を添加することが好ましい。また、逆に、前記の電解質の水溶液を、連続長尺物からなる基材シート1の裁断後であって、かつ前記の粘性体の塗工前に、個別化された基材シート1Aに添加することも好ましい。
【0065】
被酸化性金属の粒子と電解質とを分離しておく場合には、図3に示す装置に代えて、図6に示す装置を用いることもできる。図6に示す装置を用いる場合には、粘性体として被酸化性金属の粒子及び水を含み、かつ電解質を含まない組成物を用い、該粘性体を連続長尺物からなる基材シート1に塗工した後であって、かつ塗工層を有する連続長尺物からなる基材シート1から個別化された基材シート1Aを分離する前に、該連続長尺物からなる基材シート1に前記の電解質の水溶液を添加することが好ましい。また、逆に、前記の電解質の水溶液を、連続長尺物からなる基材シート1に切り込み5を形成した後であって、かつ前記の粘性体の塗工前に、該連続長尺物からなる基材シート1に添加することも好ましい。
【0066】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の実施形態においては、粘性体からなる塗工液の塗工にダイコータを用いたが、これ以外のロール塗布、スクリーン印刷、ロールグラビア、ナイフコーティング、カーテンコーター等の塗工手段を採用してもよい。
【0067】
また、図3に示す製造装置においても、連続長尺物からなる基材シート1から、個別化された基材シート1Aを分離する工程を行う前の位置に、図1に示す塗工層分断手段36と同様の手段を設けてもよい。また、図4及び図6に示す製造装置においても、連続長尺物からなる基材シート1から、個別化された基材シート1Aを分離する前で、かつ受け渡しパッド35より前の位置に、図1に示す塗工層分断手段36と同様の手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 基材シート
1A 個別化された基材シート
1B 塗工層が形成された個別化された基材シート
10 製造装置
20 第1裁断部
30 塗工部
40 リピッチ部
50 封止部
60 第2裁断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートに粘性体を塗工して、塗工層を有するシートを製造する方法であって、
連続長尺物からなる基材シートを走行させつつ、その走行方向と交差する方向にわたって該基材シートを順次裁断して、個別化された複数の基材シートを得、
個別化された各基材シートを、それらの走行方向の前後に間隙を設けずに配置した状態下に走行させつつ、個別化された各基材シートの一方の面に粘性体を塗工して塗工層を形成し、
塗工層を有する個別化された各基材シートを、それらの走行方向の前後に間隙が生じるように該シート間の距離を広げて走行させる、塗工層を有するシートの製造方法。
【請求項2】
基材シートに粘性体を塗工して、塗工層を有するシートを製造する方法であって、
連続長尺物からなる基材シートを走行させつつ、該基材シートの走行方向に沿って複数の個別化された基材シートが形成されるように該基材シートに閉じた形状の切り込みを順次形成し、
切り込みが形成された連続長尺物からなる基材シートを、該連続長尺物からなる基材シートから個別化された基材シートを分離せずに走行させつつ、該連続長尺物からなる基材シートの一方の面に粘性体を塗工して塗工層を形成し、
塗工層を有する連続長尺物からなる基材シートから、個別化された各基材シートを分離して、塗工層を有する個別化された複数の基材シートを得る、塗工層を有するシートの製造方法。
【請求項3】
基材シートに粘性体を塗工して、塗工層を有するシートを製造する方法であって、
連続長尺物からなる基材シートを走行させつつ、該基材シートの走行方向に沿って複数の個別化された基材シートが形成されるように該基材シートに切り込みを順次形成し、
切り込みが形成された連続長尺物からなる基材シートを、該連続長尺物からなる基材シートから個別化された基材シートを分離せずに走行させつつ、該連続長尺物からなる基材シートの一方の面に粘性体を塗工して塗工層を形成し、
塗工層を有する連続長尺物からなる基材シートから、個別化された各基材シートの一部を分離廃棄して、塗工層を有し、かつ分離廃棄された基材シートに由来する切欠部を有する複数の個別化された基材シートを得る、塗工層を有するシートの製造方法。
【請求項4】
基材シートが液体の吸収性を有するものである請求項1ないし3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
粘性体が、被酸化性金属の粒子、電解質及び水を含む発熱組成物である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
粘性体が、被酸化性金属の粒子及び水を含み、かつ電解質を含まない組成物である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
粘性体の塗工前に、個別化された基材シート又は切り込みが形成された基材シートに対して電解質の水溶液を添加する請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
粘性体の塗工後に、該粘性体が塗工された基材シートに対して電解質の水溶液を添加する請求項6記載の製造方法。
【請求項9】
個別化された基材シート間の距離を広げる前、又は個別化された基材シートを分離する前に電解質の水溶液を添加する請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
個別化された基材シート間の距離を広げた後、又は個別化された基材シートを分離した後に電解質の水溶液を添加する請求項8記載の製造方法。
【請求項11】
個別化された基材シート間の距離を広げる前、又は個別化された基材シートを分離する前に塗工層分断処理を行なう請求項1ないし10のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−5982(P2012−5982A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145689(P2010−145689)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】