説明

塗工白板紙

【課題】本発明は、白色濃淡ムラが少なく、印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れた塗工白板紙を提供することにある。
【解決手段】原紙上に、顔料、接着剤を主成分とする塗工液を2層以上する塗工白板紙において、該塗工液に平均分子量が400万〜2000万のアニオン性水溶性高分子を含有し、かつ該塗工液をロッド塗工方式で少なくとも1層以上塗工することを特徴とする。該アニオン性水溶性高分子が、油中水型重合法または分散重合法により得られた高分子であり、その含有量が、塗工液中の顔料全固形分に対して、0.001〜0.5質量%であれば好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工表面の白色濃淡ムラが少なく、印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れた塗工白板紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白板紙とは通常2層以上の多層原紙構造からなる厚紙で各種包装箱等に多く使用されている。包装箱には商品の広告効果を高める目的で美匠性や印刷適性が求められ、片面に少なくとも2層以上の塗工層を設けて印刷適性を付与した塗工白板紙が多く使用されている。なお塗工白板紙は、原紙構成および塗工層形成状態の違いから、塗工白ボールと特殊白板紙の2グレードに大別され、原紙の片面のみに印刷適性、白色外観を付与した塗工白板紙を「塗工白ボール」、原紙表裏の両面(表面は2層の塗工層、裏面は1層の塗工層)に印刷適性、白色外観を付与した塗工白板紙を「特殊白板紙」に細分される。
【0003】
これら塗工白板紙における原紙部分は、一般に大きく4〜5層からなる多層構成で形成される。例えば、塗工白ボール紙は、表面側より、表層、表下層、中層、裏層の4層構成で形成され、一方特殊白板紙は、表層、表下層、中層、裏下層、裏層の5層構成で形成される。各層の使用パルプは、環境面や包材のコストダウンの観点から古紙パルプが多く用いられており、塗工白ボールでは、原紙の中層、および裏層パルプに、特殊白板紙では、中層パルプに、脱墨していない低白色性の古紙パルプをそれぞれ使用している。この低白色性のパルプ層の色を隠蔽するために、塗工白ボールでは表層パルプに、特殊白板紙では、表層および裏層パルプに高白色性のバージンパルプ、あるいは脱墨したパルプを用いている。しかしながら、経済的な問題のために高白色パルプ層(表層、特殊白板紙は裏層も)と低白色パルプ層(中層)の間に中間白色層(表下層、特殊白板紙は表下層と裏下層)を設けて、この層によっても低白色の中層の色を隠蔽させるのが普通である。しかしながら、これらのパルプ層を設けても低白色の中層の色を隠蔽することは不十分であり、原紙表面に、中層、中間層の色(灰色)が表層を透けて映し出された不定形で微小な面積の色差ムラ(白色濃淡ムラ)が生じる。
【0004】
通常塗工白板紙における塗工層部分は、表面2層の塗工層(下塗り、上塗り)から形成されており、エアーナイフ、ブレード、ロッド等の各種塗工方式が使用されている。
【0005】
エアーナイフ塗工は、原紙表面の凹凸状態に追従した輪郭な塗工層を形成できるため、原紙白色濃淡ムラの隠蔽には最も有効な塗工方式である。しかし、塗工後の表面は原紙凹凸に沿った表面のため平滑性は低く、またエアーを吹き付けてアプリケートした塗料をかきとる方式のため、塗料濃度を低く設定しなければならない欠点を有している。
【0006】
それに対して、ブレード塗工方式は、原紙表面の凹凸に関係なく平坦な塗工面を形成するため、塗工後の平滑性はかなり高いという特徴を有するが、反対に原紙白色濃淡ムラの隠蔽や原紙凹凸に起因する塗工ムラのためにオフセット印刷時に、インキの吸収ムラが生じ、インキ着肉ムラ等の印刷品質懸念のほか、操業時に塗料中あるいは原紙表面に含まれる異物が刃先に引っかかり筋状の塗工欠陥となるストリーク欠陥が生じやすいという欠点を有している。
【0007】
最近では表面の平滑性を重視されることが多く、上塗り塗工方式としてブレード塗工方式が選択されることが多い。しかしながらブレード塗工方式は、平滑な表面は形成されるが、他方原紙表面の被覆性に劣り、前述の原紙表面に映し出される白色濃淡ムラを十分に隠蔽することが難しい。この問題を解決するために、塗工層の不透明性を増す目的で酸化チタンを使用する方法(特許文献1参照)や、塗工量を増やす手法が行われている。しかしながら、酸化チタンは高コストである上に、平滑性や印刷品質低下の影響が懸念され実用上添加量が制限される。また塗工量を増やすことについては、上塗りブレード塗工層の増加の場合、高白色で高価な顔料を多く使用する塗工層であるために経済的でない上、平坦化塗工のため不均一な塗工層を形成するため、塗工層間(例えば下塗りと上塗り塗工層)の白色度差で、新たな白色濃淡ムラを生じる等の問題がある。
【0008】
また、構造化カオリン、焼成カオリン、あるいはサチンホワイトのような特殊顔料を添加し、塗料のハイシェア粘性を増すことにより塗工量を増加させる方法もある(特許文献2、3参照)。しかし、これらの塗工用顔料は高価であるため、ハイシェア粘性を大きくする目的のみで使用することは、経済面で望ましくない。
【0009】
さらに、塗工層の塗工量を上げるその他の方法として、単層塗工の印刷用塗被紙において、塗工層中にポリアクリルアミド系共重合物を含有させる方法がいくつか提案されている(特許文献4、5、6)。これらの提案は、アプリケートした塗料をかきとる際に、塗料飛散を生じて紙面に付着して欠点となる他、操業欠陥を引き起こす恐れがあり、実用的ではない。このように、塗工白板紙において、白色濃淡ムラが少なく、かつ高い平滑性および印刷適性等の品質と経済性を両立させることは難しいのが現状である。
【0010】
【特許文献1】特開平6−166991号公報
【特許文献2】特開2002−363887公報
【特許文献3】特開2006−328570公報
【特許文献4】特開昭53−94609公報
【特許文献5】特開2003−105689公報
【特許文献6】特開2006−70268公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、塗工白板紙において、原紙に塗工する際の粕によるストリーク等の欠陥発生を抑制し、塗工乾燥時のエネルギー負荷を削減するに有効であるロッド塗工方式を用いる場合に、幅方向のプロファイル制御に対して、剛直なロッドを強力に押し込むことが必要であるために、塗工量の制御範囲が極端に狭く、かつ塗工付着量も他の塗工方式に比べて少なくなって、十分な品質が得られないという点を解消して、塗工白板紙表面の白色濃淡ムラの少ない、印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れた塗工白板紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意検討した結果、顔料、接着剤を主成分とする塗工液をロッド塗工で塗工する際に、該塗工液に特定の平均分子量を有するアニオン性水溶性高分子を含有することによって解決することができることを見出した。即ち、顔料、接着剤を主成分とする塗工液を2層以上塗工する塗工白板紙において、該塗工液中に平均分子量が400万〜2000万のアニオン性水溶性高分子を含有し、かつ該塗工液をロッド塗工方式で少なくとも1層以上塗工することを特徴とする塗工白板紙である。
【0013】
前記原紙に接する塗工層が、ロッド塗工方式で塗工されることが好ましい。
【0014】
前記アニオン性水溶性高分子が油中水型重合法により得られた高分子であることが好ましい。
【0015】
前記アニオン性水溶性高分子が分散重合法により得られた高分子であることが好ましい。
【0016】
前記アニオン性水溶性高分子の含有量は、塗工液中の顔料全固形分に対して、0.001〜0.5質量%であることが好ましい。
【0017】
前記2層以上塗工される最外塗工層がブレード塗工方式で塗工されることが好ましい。
【0018】
前記塗工白板紙の米坪範囲は、150g/m以上、700g/m以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、塗工白板紙表面の白色濃淡ムラが少なく、かつ印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れた塗工白板紙を得ることが可能になると共に、ロッド塗工方式が本来有している塗工欠陥の発生防止、運転調整の容易性等の特有の利点も付加されて、塗工白板紙の生産性および品質共に向上させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、塗工液にアニオン性水溶性高分子を添加することにより、ロッド塗工における平滑性を大幅に向上させ、さらにロッド塗工で下塗りした後上塗り塗工する際にブレード塗工方式を用いた場合には、これまで下塗りで充分な原紙表面の被覆ができず、均一な塗工層が得られなかった下塗り時の平滑性が向上することにより、輪郭塗工方式と同様の均一な塗工層を形成し、かつブレード特有の高平滑な印刷表面が形成できることで、本発明の所望とする目的を達成できた。
【0021】
ここで、平均分子量が400万〜2000万のアニオン性水溶性高分子を含有することで、塗工表面の平滑性、白紙面感や印刷適性を満足できるほど塗工量付着性を改善できる理由については、以下のように推定する。即ち、400〜2000万のアニオン性水溶性高分子の添加は、その超高分子量効果により塗工液の粘弾性特性、特に弾性特性を向上させる働きを発現させ、塗工中のロッド直下で、先の塗料弾性抵抗により、ロッドにより押し込まれた圧力を減ぜさせて、ロッド直下の塗料通過量が増加し、結果として塗工量の増加につながるものと推測される。塗工量増加の結果、原紙の被覆は向上して、塗工白板紙表面の平滑性や光沢の向上、白色濃淡ムラが改善され、さらに低塗工量時にしばしば発生する印刷時におけるインキ着肉性不良、印刷平滑性不良といった印刷欠陥も防止することができる。なお、通常のアルカリ増粘型の流動性改質剤においても添加量の増量で同様の増粘効果は得られるが、低せん断時の極端な粘性上昇(B型粘性3000mPa・s以上)も引き起こすため、塗料調製不良、および送液不良を引き起こすほか、その粘弾性改質作用が吸着や会合等の比較的弱い化学結合のため、高せん断時の結合効果が小さく、塗工量増加効果も限定的である。
【0022】
通常、アニオン性水溶性高分子は、平均分子量が400万を超えると水に溶解した状態では、高粘性を示す為、添加時のハンドリング性や塗料調製時に粘性上昇を引き起こし、塗料攪拌不良、送液不良等の操業トラブルを生じる。しかしながら、油中水型重合あるいは分散重合法により得られた高分子ポリマーは、B型粘度を比較的低く抑えながら、ハイシェア粘性を上昇させることができるため好ましい。アニオン性水溶性高分子としては、具体的にはポリアクリルアミド系共重合体が挙げられる。
【0023】
本発明で使用されるアニオン性水溶性高分子の平均分子量は、400万〜2000万であり、より好ましくは、900万〜1700万である。因みに、平均分子量が400万未満であれば、高せん断時の粘弾性が劣るため塗工量の増加が得られない。また2000万を超えると低せん断時の粘性も極端に高くなり(B型粘性3000mPa・s以上)、塗工自体が出来なくなる虞があり、平均分子量2000万が上限である。なお、ここで言う平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0024】
アニオン性水溶性高分子の含有量としては、塗工液の粘性および塗工適性の観点から、顔料全固形分に対して0.001〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.2質量%である。このときの塗工液の物性としては、せん断速度9×10sec−1における塗工液のハイシェア粘度が35mPa・s以上とすることが好ましく、40mPa・s以上とするとより好ましい。また塗工液のハイシェア粘度の上限については、110mPa・s以下とすることが好ましく、より好ましくは100mPa・s以下である。ハイシェア粘度が35mPa・sを下回ると本発明の塗工量増効果が得られにくく、110mPa・sを超えると塗工欠陥(ロッド粕)を生じるため好ましくない。B型粘度としては、60rpm時における粘度が1000mPa・s以上、3000mPa・s以下とすることが好ましく、より好ましくは1200mPa・s以上、2500mPa・s以下である。1000mPa・sを下回ると前述のとおり、アプリケートした塗料をブレードまたはロッドにてかきとる際に塗料粕が発生し、塗工面の汚れや、塗工欠陥が発生しやすくなる。また3000mPa・sを超えると塗料の調整時の攪拌不良や塗料の循環不良が発生するため好ましくない。
【0025】
本発明の塗工液の固形分濃度としては、塗工液のハイシェア粘度が前記した粘度範囲となる固形分濃度とするものが好ましいが、塗工後の乾燥工程における乾燥付加の低減や塗工速度増速による塗工白板紙の生産効率向上の観点から、固形分濃度は出来るだけ高濃度であることが好ましく、50〜70重量%の固形分濃度とすることが好ましい。なおここで言うハイシェア粘度(mPa・s)とは、ハーキュレスハイシェア粘度計(熊谷理機工業製)を用い、ボブF、回転数4400rpmの条件で測定される粘度である。
【0026】
本発明で製造される塗工白板紙の塗工量は、複数回の塗工によって、原紙層上に合計の乾燥重量として片面あたり15〜30g/mで調節される。なお、15g/mより下回ると、原紙の被覆性不足のため、白色ムラおよび印刷適性不良を引き起こしやすくなる。また30g/m2を超えると加工適性、特に罫線割れを引き起こしやすくなる。通常、塗工白板紙は2層の塗被層より形成されることが多いが、その際、原紙に接する第1番目に塗布する下塗り層の塗工量としては、8.5〜15g/m、第2番目に塗布される上塗り層の塗工量としては、6.5〜15g/mで調節することが、コスト面および品質面から好ましい。
【0027】
本発明の塗工白板紙に用いる原紙としては、2層以上の多層抄きの原紙を塗工白板紙の原紙として用いることが好ましく、原紙の米坪としては、150g/m以上、700g/mの範囲であるのが好ましい。
【0028】
前記した原紙の原料としては、一般的な塗工白板紙、または塗工白板紙に用いられる各種パルプを用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば晒ないし未晒の化学パルプ、機械パルプ、更には脱墨ないしは未脱墨の古紙パルプ等の1種または2種以上を適宜混合して使用される。ちなみに多層抄きの原紙を用いる塗工白板紙としては、一般に表面層に晒化学パルプあるいは脱墨した古紙パルプまたはその混合パルプを、表面下層に中程度の脱墨古紙パルプ、中および裏面層には未脱墨古紙パルプを使用して原紙を構成することが多い。また、前記した原料に対しては、必要に応じて、サイズ剤、紙力剤、薬品安定剤、濾水剤、嵩高剤、填料、染料等を適宜添加することができる。
【0029】
前記した原紙の抄紙方法については、特に限定されるものではないが、例えば、丸網式抄紙機、短網式抄紙機、丸網短網あるいは長網短網コンビネーション抄紙機、長網式抄紙機、長網多層抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機等の商業規模の抄紙機を用いることができ、一般的な塗工白板紙、および塗工白板紙の原紙製造方法である一般的な各種抄紙方法を適宜選択して用いることができる。
【0030】
また、前記した原紙については、抄紙した原紙をそのまま顔料塗被層の塗工に供しても問題はないが、顔料塗被層を塗工する前にマシンキャレンダー、ソフトキャレンダー、あるいはヤンキードライヤー等を使用して、あらかじめ原紙を平滑化処理することもできる。
【0031】
さらに、顔料塗被層を塗工する前に、2本ロールサイズプレス、ゲートロールサイズプレスコーター、メタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のトランスファーロールコーター等により、原紙の表面処理を行うこともできる。サイズプレス等の表面処理に用いる表面処理剤としては、特に限定されるものではないが、紙力、塗工適性、印刷適性等を改善または向上させるために一般的に用いられる各種デンプン類、ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、各種表面サイズ剤等を主体とする塗工液を用いることができる。また該塗工液に対しては、塗工用に一般的に使用される各種顔料として、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機顔料、およびポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等の1種以上を必要に応じて配合することができる。
【0032】
本発明では、塗工方式として、ロッド塗工とそれ以外のエアーナイフ、バー、カーテン、スプレー等の公知の塗工方式を組み合わせてもよいが、最外塗工層はブレード塗工方式が好ましい。例えば、2層の場合、下塗り層はロッド塗工方式、上塗り層はブレード塗工方式を用いることが特に好ましい。
【0033】
本発明の塗工白板紙を製造する場合に用いられる塗工液としては、顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工液である。前記の顔料塗工液に用いる顔料としては、一般に紙加工用に使用される顔料を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、クレー、焼成カオリン、エンジニアードカオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト、サチンホワイト、タルク等の無機顔料や、密実型、中空型、貫通孔型のプラスチックピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料等、一般塗工紙製造分野で使用されている公知公用の顔料の1種あるいは2種以上を適宜選択して、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0034】
また前記の接着剤としては、一般塗工紙の製造分野で使用されている接着剤が本発明の効果を損なわない範囲で、各塗工層に適宜使用でき、特に限定されるものではない。例えば酸化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶性澱粉、カチオン性澱粉、酵素変性澱粉等の各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品等、また分散液型接着剤として、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等を使用することが可能であり、必要に応じてこれらの中から1種あるいは2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0035】
また前記の顔料塗工液に対しては、必要に応じて、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、染料、耐水化剤、着色顔料、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、撥水剤等の各種助剤を適宜添加することもできる。
【0036】
また、複数の塗工層を設ける前または途中段階である下塗り層を塗工、乾燥した後、および/または複数の塗工層を設ける最終段階の最上層を塗工、乾燥した後に、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダー、あるいはスーパーキャレンダー等を使用して塗工層表面に平滑化処理を施すのが望ましい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。もちろん、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部、および%はそれぞれ質量部および質量%を示す。
【0038】
実施例1
(下塗り塗工層用塗工液の調製)
顔料として、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)100部、分散剤として、前記全顔料に対し、ポリアクリル酸ソーダ0.2部を添加し、コーレス分散機を用いて固形分濃度が74%の顔料スラリーを調製した。このスラリーに酸化澱粉(商品名:エースY、王子コーンスターチ社製)5部(固形分換算)、および固形濃度50%のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:X−400B、JSR社製)15部(固形分換算)、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、ソマール社製、平均分子量1500万)0.05部(有効成分換算)をそれぞれ添加し、さらに水を加えて固形分濃度が64%の塗料を調製した。
【0039】
(上塗り塗工層用塗工液の調製)
顔料として、カオリン(商品名:UW−90、BASF社製)65部、エンジニアード重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−OP2A、ファイマテック社製)35部、分散剤として、前記全顔料に対し、ポリアクリル酸ソーダ0.2部を添加し、コーレス分散機を用いて固形分濃度が71%の顔料スラリーを調製した。このスラリーに酸化澱粉(商品名:エースY、前出)1部(固形分換算)、固形濃度50%のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:L−1825、旭化成社製)15部(固形分換算)をそれぞれ添加し、pH調整剤として苛性ソーダを0.2部、アルカリ増粘型流動性改質剤(商品名:ソマレックス270K、ソマール社製)を0.05部、さらに水を加えて固形分濃度が65%の塗料を調製した。
【0040】
(塗工白板紙原紙の作製)
表、表下層に脱墨古紙パルプ(表層:パルプ白色度76%、表下層:パルプ白色度55%)、中・裏(3〜7)層に未脱墨の古紙パルプ(パルプ白色度50%)を使用して7層に抄き合わされた米坪290g/mの原紙を得た。
【0041】
(塗工白板紙下塗りの塗工)
上記で得た原紙に、下塗り塗工層用塗工液をロッドコーターで乾燥塗工量10g/m塗工、乾燥して下塗り層塗工紙を得た。
【0042】
(塗工白板紙上塗りの塗工)
さらに上記の下塗り塗工層上に、上塗り層用塗工液をブレードコーターで乾燥塗工量10g/m塗工、乾燥して、表面2層タイプの塗工白板紙を得た。次に2スタックの、金属ロール表面温度が150℃、2ニップのソフトキャレンダーに通紙して、両面が平滑化処理された塗工白板紙を得た。
【0043】
実施例2
実施例1の下塗り層用塗工液の調製において、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、前出)を油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ハイホールダーC503、栗田工業社製、平均分子量500万)に変えた以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、下塗り塗工層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は9g/mであった。
【0044】
実施例3
実施例1の下塗り層用塗工液の調製において、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、前出)を分散重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ハイモロックFA230、ハイモ社製、分子量1400万)に変えた以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、下塗り塗工層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は10g/mであった。
【0045】
実施例4
実施例1の下塗り層用塗工液の調製において、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、前出)の添加量を0.02部に変えた以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、下塗り塗工層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は9g/mであった。
【0046】
実施例5
実施例1の下塗り塗工層用塗工液の調製において、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、前出)の添加量を0.2部に変えた以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、下塗り塗工層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は11g/mであった。
【0047】
実施例6
実施例1の下塗り塗工層用塗工液の調製において、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、前出)を0.6部としたが、塗料調製時の塗料粘性が高く、塗工時やや塗料戻りが悪かったが、問題なく塗工できた。このとき、下塗り塗工層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は13g/mであった。
【0048】
実施例7
実施例1の下塗り塗工層用塗工液の調製において、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、前出)を添加せず、さらに上塗り層用塗工液をアルカリ増粘型の流動性改質剤(商品名:ソマレックス270K、前出)0.05部を油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、前出)に変更し、ロッドコーターで塗工した以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、下塗り層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は7g/mで、上塗り層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は9g/mであった。
【0049】
実施例8
実施例1の上塗り層用塗工液をロッドコーターで塗工した以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、上塗り層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は9g/mであった。
【0050】
比較例1
実施例1の下塗り塗工層用塗工液の調製において、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、前出)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、下塗り塗工層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は7g/mであった。
【0051】
比較例2
比較例1の上塗り塗工層用塗工液の塗工量を13g/mに上げた以外は比較例1と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、下塗り塗工層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は7g/mであった。
【0052】
比較例3
実施例1の下塗り塗工層用塗工液の調製において、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、ソマール社製、平均分子量1500万)をアルカリ増粘型の流動性改質剤(商品名ソマレックス270K、前出)0.05部とした以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、下塗り塗工層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は7.5g/mであった。
【0053】
比較例4
実施例1の下塗り塗工層用塗工液の調製において、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、前出)の代わりにカルボキシメチルセルロース(商品名:LCコート、第一工業製薬社製)を0.05部添加した以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、下塗り塗工層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は8g/mであった。
【0054】
比較例5
実施例7の上塗り塗工層用塗工液の調製において、油中水型重合法により得られたアニオン性水溶性高分子(商品名:ソマレックス530、前出)を添加しなかった以外は実施例7と同様にして塗工白板紙を得た。このとき、上塗り塗工層用塗工液のロッドコーターでの乾燥塗工量は6g/mであった。
【0055】
上記で得られた塗工白板紙について、下記の評価方法で評価をおこない、その結果を表1に示した。なお、評価は、すべて23℃、50%RHの環境下でおこなった。
【0056】
(B型粘度)
TAPPI基準T648 Su−72に従って、60rpmの回転数で20℃におけるB型粘度(mPa・s)を測定した。
【0057】
(ハイシェア粘度)
ハイシェア粘度(mPa・s)は、ハーキュレスハイシェア粘度計(熊谷理機工業製)を用い、ボブF、剪断速度が9.0×10sec−1(回転数4400rpm)の条件で測定した。
【0058】
(PPS平滑度)
PPS平滑度(μm)は、パーカープリントサーフ(PPS)表面平滑度試験機(機種名:MODEL M−569型、MESSMER BUCHEL社製、英国)を用いて、バッキングディスク:ソフトラバー、クランプ圧力:2MPaで、表面を5回測定し、その平均を求めた。
【0059】
(白色濃淡ムラ)
白色濃淡ムラは、表面のムラの程度を目視で評価した。
◎:均一で白色濃淡ムラがない。
○:一部白色濃淡ムラが認められるが、実用上問題ない。
△:白色濃淡ムラが目立ち、実用上問題ある。
×:白色濃淡ムラが、非常に目立つ。
【0060】
(印刷適性評価)
印刷適性評価として印刷平滑性およびインキ着肉性について、RI印刷機で、印刷インキ(商品名:Values−G 墨 Sタイプ、大日本インキ化学工業社製)を0.1ml使用してRI印刷機で、各塗工白板紙に印刷を行い、インキ転写面を肉眼で観察し、転写した印刷平滑性(インキ濃度の均一性)と、インキ着肉性(転写したインキ濃度)を4段階評価した。
◎:印刷平滑性、インキ着肉性が特に優れる。
○:印刷平滑性、インキ着肉性が優れる。
△:印刷平滑性、インキ着肉性がやや劣る。
×:印刷平滑性、インキ着肉性が劣る。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から明らかなように、本願発明に係るアニオン性水溶性高分子を添加した塗工液をロッド塗工で塗工した実施例においては、十分な塗工量を確保ができており、塗工表面の白色濃淡ムラが少なく、印刷平滑性やインキ着肉性等の印刷適性に優れた塗工白板紙が得られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙上に、顔料、接着剤を主成分とする塗工液が2層以上塗工される塗工白板紙において、該塗工液中に平均分子量が400万〜2000万のアニオン性水溶性高分子を含有し、かつ該塗工液をロッド塗工方式で少なくとも1層以上塗工することを特徴とする塗工白板紙。
【請求項2】
前記原紙に接する塗工層が、ロッド塗工方式で塗工されることを特徴とする請求項1記載の塗工白板紙。
【請求項3】
前記アニオン性水溶性高分子が油中水型重合法により得られた高分子であることを特徴とする請求項1または2記載の塗工白板紙。
【請求項4】
前記アニオン性水溶性高分子が分散重合法により得られた高分子であることを特徴とする請求項1または2記載の塗工白板紙。
【請求項5】
前記アニオン性水溶性高分子の含有量が、塗工液中の顔料全固形分に対して、0.001〜0.5質量%である請求項1〜4のいずれか1項記載の塗工白板紙。
【請求項6】
前記2層以上塗工される最外塗工層がブレード塗工方式で塗工されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の塗工白板紙。
【請求項7】
前記原紙の米坪が150g/m以上、700g/m以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の塗工白板紙。

【公開番号】特開2010−53481(P2010−53481A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219738(P2008−219738)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】