説明

塗工紙用原紙

【課題】
オフ輪印刷の乾燥工程において発生するオフ輪じわ(ひじわ)が顕著に改善され、しかもブリスターの発生温度が実用上充分なレベルにあるオフセット輪転印刷用塗工紙を構成することができる塗工紙用原紙を提供する。
【解決手段】
原紙の少なくとも片面に顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工層を1層以上設けてなるオフセット輪転印刷用塗工紙において、該原紙の超音波伝播速度測定器に基づき測定される繊維配向比が1.20以下、かつ該原紙は平均粒子径が10〜40μm、比表面積が15〜160m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が4cc/g未満、細孔径が0.10〜0.80μmである水和ケイ酸塩を含有することを特徴とする塗工紙用原紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット輪転印刷時のトラブルを抑制する塗工紙用原紙に関し、特に該塗工紙用原紙の少なくとも片面に顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工層を1層以上設けてオフセット輪転印刷用塗工紙を構成してオフセット輪転印刷をした際、印刷後の乾燥工程で発生しがちであったオフ輪じわやブリスターの発生を抑制することができる塗工紙用原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷業界では省力化や高速化に伴って、印刷方式がオフセット枚葉印刷方式(以下、枚葉印刷と称する)からオフセット輪転印刷方式(以下、オフ輪印刷と称する)に移行している。オフ輪印刷は、印刷速度が速く、後工程の省力化等も可能であることから、枚葉印刷と比較して生産性が遥かに高い。しかし、オフ輪印刷には、印刷直後に熱風乾燥を行うために枚葉印刷には見られないブリスターやオフ輪じわ(印刷業界ではひじわと称することがある)等の問題点がある。
【0003】
オフ輪印刷においてインキをドライヤーで乾燥させる際、インキ乾燥と同時に紙層内部の水分が蒸発する。発生した水蒸気は、通常紙層の空隙より外部に抜けるが、紙の通気性が悪いおよび印刷によるインキ皮膜が厚い場合は、水蒸気の逃げ場がなくなり、紙層内でひぶくれの如き状態となり、印刷物の価値を著しく損なう。これは、一般的に「ブリスター」と呼ばれる現象である。
【0004】
上記問題が起こらない場合でも、印刷された画線部にはインキ皮膜があり、印刷されていない非画線部にはインキ皮膜がないため、水蒸気の抜けやすさに差が生じる。一般的に画線部より非画線部での紙中水分の蒸発量が多くなり、よりパルプ繊維間が収縮する。このため、画線部と非画線部の境界付近でしわが発生し、ブリスター同様印刷物の価値を著しく損なう。これは、一般的に「オフ輪じわ(ひじわ)」と呼ばれ、最も重要で解決困難な問題である。
【0005】
そのため、これまでもオフ輪じわ低減の試みがなされており、例えば、原紙を構成するパルプのフリーネスを特定範囲に保持するとともに、当該原紙の透気度をも特定の通気性がよい領域に制御してオフ輪じわの発生を抑制する方法(特許文献1)が提案されている。しかし、オフ輪印刷用塗被紙は、パルプ調製、抄紙、塗工、キャレンダーによる加圧仕上げ等の一連の工程を経て製品化するものであるから、単純にパルプのフリーネスや原紙の透気度を調整しただけでは、十分にオフ輪じわは解消されない。
【0006】
また、マイクロ波法による原紙のマイクロ波透過強度の最大値と最小値の比、抄紙方向に対して直角な方向のフェンチェル浸水伸度、および透気度を紙厚で除した値で規定された原紙を使用することによって、オフ輪じわを解消する手段も提案されている(特許文献2)。しかし、オフ輪じわの発生要因が原紙の繊維配向のみではないため、満足し得る程度の効果が得られない。さらに、J/W比やワイヤーシェーキング装置を利用して繊維配向を制御する方法(特許文献3)も提案されているが、抄紙機の速度が速くなるほどワイヤーシェーキング装置の効果が少なくなるだけでなく、パルプ繊維間の水素結合が強固である場合は、オフ輪じわは全く解消されない。
【0007】
巻き取り水分と原紙の内部層間強度を特定の関係式で規定することにより、オフ輪じわを解消または低減する技術が提案されている(特許文献4)。しかし、この関係式を満足するには、塗被紙水分を低くしておく必要があるが、水分低下はその後の折り工程で、塗工層が割れてしまう現象、いわゆる「折り割れ」を発生させるおそれがある。
【0008】
また、ルーメン幅(L)と繊維幅(D)の比L/Dが0.15〜0.35の広葉樹パルプの濾水度を200〜350mlとし、これを全パルプの10〜35質量%配合することでオフ輪じわを抑制する方法(特許文献5)も提案されているが、このようなパルプは繊維自体が剛直で、形状も角型で大きいため、キャレンダー処理で十分な平滑性が得にくいという難点がある。
【0009】
基紙上にポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコールと顔料を成分とするポリビニルアルコール含有塗被層を設け、その上に顔料塗被層を設けることにより、得られる塗被紙の乾燥収縮力や透気度等を特定範囲内に調整し、オフ輪じわの発生がほとんどなく、また、グラビア印刷やフレキソ印刷でも、見当ずれを起こすことが少ない印刷用塗被紙が提案されている(特許文献6)。しかし、この提案では、オフ輪じわの発生を大幅に低減ないしは解消することができるものの、ポリビニルアルコール含有塗被層をある程度厚くする必要があり、生産設備に制約が生じる難点がある。
【0010】
さらに、オフ輪印刷機のドライヤー出口の後方のウェブパス間で、加熱ロールと表面自由エネルギーが30mN/m以下である加圧ロールとの間を通過させることと、用紙を加湿することにより、ドライヤーで減少した水分を補充すると同時に、加熱ロールと加圧ロールの間を通過させることにより、スチームアイロンと同様の原理でひじわを機械的に消滅させる方法(特許文献7)も提案されている。しかし、この方法では、発生したひじわの深さと本数によっては、数本のひじわが1つにまとまってロール間で加圧され、製品価値を大きく損なう欠陥を生ずることがある。
【0011】
この他にも、塗工紙の塗工層表面に表面サイズ剤あるいは表面サイズ剤とプラスチックピグメント等を塗布することにより、オフ輪じわを低減させる方法(特許文献8、9)やオフ輪印刷用塗被紙の原紙としてカチオン性脂肪酸アミドとノニオン性湿潤剤との混合物を原紙質量に対して0.1〜10質量%含有させること(特許文献10)も提案されているが、必ずしも十分な効果が得られない。
【0012】
【特許文献1】特開昭58−186700号公報
【特許文献2】特開平06−057686号公報
【特許文献3】特開2005−68611号公報
【特許文献4】特開平09−291496号公報
【特許文献5】特開平10−226979号公報
【特許文献6】特開2000−45199号公報
【特許文献7】特開2002−347211号公報
【特許文献8】特開2002−263888号公報
【特許文献9】特開2004−091986号公報
【特許文献10】特開2006−291393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、上記の如き難点を伴うことなく、オフ輪印刷時のブリスターやオフ輪じわをほとんど発生することがない塗工紙用原紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、オフ輪印刷の乾燥工程において発生するオフ輪じわ(ひじわ)を改善し、しかもブリスターの発生温度が実用上充分なレベルにする手段を鋭意検討した。その結果、オフ輪印刷用の塗工紙用原紙の繊維配向比および該塗工紙用原紙に含有させる填料の組成、物性を特定することによりオフ輪じわと耐ブリスター性を大幅に改善することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
本発明は以下の各発明を包含する。
(1)原紙の少なくとも片面に顔料および接着剤を主成分とする顔料塗被層を1層以上設けてなるオフセット輪転印刷用塗工紙において、該原紙の超音波伝播速度測定器に基づき測定される繊維配向比が1.2以下、かつ該原紙は平均粒子径が10〜40μm、比表面積が15〜160m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が4cc/g未満、細孔径が0.10〜0.80μmである水和ケイ酸塩を含有する塗工紙用原紙。
【0016】
(2)前記原紙は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した透気度が10秒以下、かつJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18:2000に準じて測定した内部結合強さが150〜800J/mである(1)に記載の塗工紙用原紙。
【発明の効果】
【0017】
本発明のオフ輪印刷用の塗工紙用原紙は、該原紙を用いてオフ輪用塗工紙を構成した際、オフ輪じわをほとんど発生することがなく、しかも耐ブリスター性にも優れるため、印刷物の品位が求められる高級印刷用塗工紙として利用できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明においてオフ輪印刷用の塗工紙用原紙の超音波伝播速度測定器に基づき測定される繊維配向比が1.20以下である必要がある。因みに、繊維配向比が1.20を超えると原紙を構成する繊維の向きをランダムにすることが不十分となり、オフ輪印刷時の乾燥収縮力の横方向伝播を抑制する効果が乏しくなる。
【0019】
ここに、原紙の繊維配向とは、パルプ繊維が抄紙機のワイヤー上に流出され、脱水、紙層が形成される過程で流出(縦)方向に並ぶ傾向のことである。即ち、抄紙に際し紙料がワイヤー上に高速で流出、脱水されるため、縦方向(抄紙機上の原料の流れ方向)に配向する繊維が多くなり、縦方向の引張り強度や剛度等が横方向(幅方向)に比べ、かなり強く、あるいは高くなっている。おそらく、この様な原紙の縦横の差異(不均一性)が、オフ輪印刷時のパルプ繊維の乾燥収縮歪みとなり、ひじわの一因になるものと考えられる。
【0020】
一般に、紙等の繊維配向を測定する方法としては、例えば熱膨張法、力学破断強度法、X線回折法、超音波法、マイクロ波法、NMR法、偏光蛍光法、誘電測定法等が挙げられる。本発明では超音波法を採用し、例えば野村商事社製「SONIC SHEET TESTER」を用いて縦方向の超音波伝播速度(Vmd)と横方向の超音波伝播速度(Vcd)を測定し、その比率(Vmd/Vcd)を繊維配向比として繊維配向のランダム性を評価するものである。この繊維配向比が1.0の場合、繊維が完全にランダム配向となるが、実際のマシン抄き紙の場合、いくらかの繊維配向を有しており1.0以下にすることはできない。
【0021】
他方、繊維配向比はマシンでの抄紙条件によって決定されるから、マシン上の操作を適切にする必要がある。考えられる手段としてはマシン速度、繊維サスペンジョンジェットの流入速度とワイヤー速度の比(J/W比)、ワイヤーシェーキ、ホーミングボードや堰板の配置、ダンディーロール等の適正化が挙げられる。特に、ワイヤーパートにおいて、振動数や振幅を自在に変更できるワイヤーシェーキング装置を用いてワイヤーを流れ方向と水平かつ直角方向に摺動させつつ抄紙を行うと、パルプ繊維の方向がランダム配向化するので好ましい。さらに、抄紙機の運転では、一般的に後ろのパートの速度ほど早くなっており、リールに向けて紙を引っ張りながら紙を抄造している。この速度差を大きくすると、パルプ繊維が流れ方向に配向してしまうため、リールの回転速度(V)とワイヤーの回転速度(V)の比V/Vは1.00〜1.02であることが好ましい。これらの手段の1つまたは2つ以上を組合わせることによって繊維配向比を1.20以下にすることは可能であるが、紙の地合等、他の性質との調和を図る必要があることは言うまでもない。
【0022】
本発明においてオフ輪じわやブリスターを抑制する手段としては、上記繊維配向比が1.20以下となるように制御するだけでは不十分であり、繊維配向の制御に加えて原紙の紙層内部に特定の組成、物性を有する填料を配合することで、パルプ繊維間に空隙を作り出し、通気性を上げると同時に繊維間結合も阻害でき、効果的にオフ輪じわやブリスターが抑制できることを見出した。
【0023】
そのような填料として、本発明では比表面積が15〜160m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が4cc/g未満、かつ細孔径が0.10〜0.80μmである水和ケイ酸塩を配合することが必要である。さらには、比表面積が40〜120m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が3.5cc/g未満、かつ細孔径が0.15〜0.50μmであることが好ましい。
【0024】
本発明において使用される水和ケイ酸塩は、パルプスラリー調製時のシェア、パルプシート形成時のプレス圧およびキャレンダー圧による潰れを防止し、紙に配合した際の嵩高化効果が高い上、白紙不透明性を高くでき、内部結合強さを高くできる。
【0025】
(水和ケイ酸塩)
本発明において使用される水和ケイ酸塩とは、一般式xMO・ySiO、xMO・ySiO、xM・ySiOで表される化合物であって、MがAl、Fe、Ca、Mg、Na、K、Ti、Znのいずれかのものである(x,yは任意の正の数値である。)。
本発明において使用される水和ケイ酸塩は、比表面積が15〜160m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が4cc/g未満、かつ細孔径が0.10〜0.80μmである必要があり、さらには比表面積が40〜120m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が3.5cc/g未満、かつ細孔径が0.15〜0.50μmであることが好ましい。比表面積が15m/g未満の場合は、粒度分布が悪くなり、微細粒子と粗大粒子が多くなり、内部結合強さが低下する。160m/gを超えると、凝集構造体の結合力が弱くなり、パルプスラリー調製時およびプレス圧、キャレンダー処理圧力で潰れやすく、紙に内添した際の嵩高性が不十分となるほか、填料の透明性が向上し、紙に抄き込んだ場合、不透明度が低下する。
細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が4cc/g以上の場合は、インク吸収性という点では良好ではあるが、凝集構造体の結合力が弱くなり、パルプスラリー調製時およびプレス圧、キャレンダー処理圧力で潰れやすく、紙に内添した際の嵩高性が不十分となるほか、填料の透明性が向上し、紙に抄き込んだ場合、不透明度が低下する。同、積算容量が1.5cc/gより小さいと嵩が出ないという問題があるため、1.5cc/g以上、4cc/g未満が好ましい。
また、細孔径が0.10μm未満であれば、凝集構造体の結合力が弱くなり、パルプスラリー調製時およびプレス圧、キャレンダー処理圧力で潰れやすく、紙に内添した際の嵩高性が不十分となるほか、填料の透明性が向上し、紙に抄き込んだ場合、不透明度が低下する。0.80μmを超えると、粒度分布が悪くなり、微細粒子と粗大粒子が多くなり、内部結合強さが低下する。
ここで、比表面積は、ポアサイザ9320((株)島津製作所製)を用いて、細孔形状が幾何学的な円筒であると仮定した全細孔の表面積で、測定範囲内における圧力と圧入された水銀量の関係から求めた値である。また、細孔径も、ポアサイザ9320((株)島津製作所製)を用いて、積分比表面積曲線から得られるメジアン細孔直径のことである。さらに、細孔の積算容積も、ポアサイザ9320((株)島津製作所製)を用いて、水銀圧入法により測定し、細孔直径10オングストローム以下で積算した際の値である。
【0026】
本発明において使用される水和ケイ酸塩は、平均粒子径が10〜40μmであることが必要である。水和ケイ酸塩の平均粒子径が10μm未満であると、紙に配合した際の嵩高効果に乏しく、平均粒子径が40μmを超える場合には、紙面付近に存在する粗大粒子が紙の平滑度を大きく低下させ、塗工後の紙面平滑性にも影響を及ぼす他、脱落に起因して表面強度が低下することがある。さらには15〜30μmであることが好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、SALD2000J((株)島津製作所製)を用いて、レーザー回折法により測定し、体積積算で50%となる値のことである。また、水和ケイ酸塩の粒度分布としては、標準偏差(σ)が0.350以下であることが好ましい。このような粒度分布であれば、粗大粒子および微細粒子が共により少なくなり、紙に配合した際に、より優れた表面強度および内部結合強さが得られる。
【0027】
(水和ケイ酸塩の製造方法)
本発明において使用される水和ケイ酸塩の製造方法について説明する。
該水和ケイ酸塩の製造方法は、ケイ酸アルカリ水溶液中に、鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液を添加し、ケイ酸アルカリ水溶液を中和して酸化ケイ素化合物を一定の電解質の存在下で析出させる方法である。
ここで、ケイ酸アルカリ水溶液としては特に制限されないが、ケイ酸ナトリウム水溶液またはケイ酸カリウム水溶液が好ましい。ケイ酸アルカリ水溶液の濃度は、水和ケイ酸塩が効率的に製造できることから、3〜15%であることが好ましく、ケイ酸アルカリ水溶液がケイ酸ナトリウム水溶液の場合には、SiO/NaOモル比が2.0〜3.4であることが好ましい。
【0028】
本発明で用いる鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液において、鉱酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、鉱酸の金属塩としては、前記鉱酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩などが挙げられる。これらの中でも、価格、ハンドリングの点で、硫酸、硫酸アルミニウムが好ましく、また、水溶液であることが好ましい。
【0029】
鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液の添加量は、理論必要中和量の95〜150%の範囲であり、得られるスラリーのpHを2.5超10以下の範囲に調整する量であることが好ましい。鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液の添加量が理論必要中和量の95%未満あるいは得られるスラリーのpHが10を超える量である場合には、原料であるケイ酸アルカリ水溶液の無駄が多くなる。一方、理論必要中和量の150%超あるいは得られるスラリーのpHが2.5以下になる量である場合には水和ケイ酸塩を濃縮する際に発生するろ液pHが低くなり過ぎ、取り扱いにくくなる。
【0030】
水和ケイ酸塩の析出時には、攪拌装置により、周速として5〜15m/秒で攪拌することが好ましい。ここで、周速は剪断力の指標となり、周速が速ければ剪断力が大きくなる。周速が5m/秒未満である場合は、剪断力が小さすぎて、適切な平均粒子径および粒度分布を得ることが困難になることがある。
一方、析出時の周速が15m/秒を超える場合には、剪断力が大きくなりすぎて、水和ケイ酸塩の粒子径が小さくなり、紙に配合した際に内部結合強さが低くなることがある上に、負荷電力の増加、設備費の高額化を招く。
攪拌装置としては、アジテータ、ホモミキサ、パイプラインミキサなどの装置が好ましい。なお、ボールミルやサンドグラインダ等の粉砕機を用いることも可能ではあるが、微細粒子の増加やスラリーの増粘といった問題が生じる傾向があるため好ましくない。
【0031】
鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液は1段で一括してケイ酸アルカリ水溶液中に添加してもよいが、良好な粒径分布になることから、2段以上に分割して添加することが好ましい。
鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液を2段以上で添加する場合には、良好な粒度分布になることから、1段目のケイ酸アルカリ水溶液の温度を20〜70℃にし、2段目以降では70℃以上にすることが好ましい。また、1段目では、鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液の添加量を理論必要中和量の10〜50%の範囲にすることが好ましい。
【0032】
1段目および2段目以降共に、鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液の添加は、ケイ酸アルカリ水溶液に一括してまたは連続的に添加することができる。
鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液の添加が終了した後には、必要に応じて、添加時の温度を維持したまま攪拌する熟成工程を有してもよい。
【0033】
鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液を1段で添加する場合には、ケイ酸アルカリ水溶液の温度を60℃〜当該溶液の沸点にすることが好ましく、75℃〜当該溶液の沸点にすることがより好ましい。鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液の添加は、ケイ酸アルカリ水溶液に一括してまたは連続的に添加することができる。
【0034】
本発明の製造方法では、得られた水和ケイ酸塩の凝集性を安定、制御するために、最終反応液の電解質濃度を35〜80g/Lとする。35g/L未満であれば、多孔質填料の比表面積が大きくなりすぎ、あるいは細孔径が小さくなりすぎ、パルプスラリーへ添加後の攪拌によるシェア、紙に内添された後のプレス圧およびキャレンダー処理圧で潰れやすくなる。
80g/Lを超えれば、水和ケイ酸塩の粒度分布が悪くなり、微細粒子および粗大粒子が多くなり、紙に内添した際に内部結合強さおよび表面強度が弱くなるといった問題が発生する。さらには64〜80g/Lとすることが好ましい。
【0035】
本発明において使用される電解質濃度とは、反応終了後、200メッシュのフィルター通過スラリー中の電解質濃度のことである。また、電解質濃度を調整するため、電解質物質を適宜添加してもよい。
【0036】
上述したようなケイ酸ナトリウム水溶液に、鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液を添加する水和ケイ酸塩の製造方法では、得られた水和ケイ酸塩は適切な平均粒子径となる上に、耐シェア性に優れる。また、上述したようにケイ酸ナトリウム水溶液に、鉱酸溶液および/または鉱酸の金属塩溶液の添加量、1段目のケイ酸アルカリ水溶液の温度、2段目以降の温度、反応液の電解質濃度を調整することで、比表面積が15〜160m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が4cc/g未満、かつ細孔径が0.10〜0.80μmである水和ケイ酸塩を得ることができる。このような水和ケイ酸塩を紙に配合した際には、嵩高化効果が高く、しかも白紙の不透明性、内部結合強さを高くできる。
【0037】
(原紙の製造方法)
本発明において使用される原紙は、繊維配向の制御に加えて原紙の紙層内部に特定の組成、物性を有する填料を配合し、以下に詳述する方法によって抄紙して製造することができる。
【0038】
本発明において使用される原紙を抄紙するため、原料として使用するパルプの重さ荷重平均繊維長、繊維長分布係数、濾水度、保水度等を適宜調整する。また、種々の内添薬品の使用方法でも濾水度、保水度、重さ荷重平均繊維長、繊維長分布係数を調整する。さらに、叩解方法によっても保水度、繊維長分布係数、濾水度を調整する。
【0039】
パルプは、例えば、ビーター、ジョルダン、デラックス・ファイナー、ダブル・ディスク・リファイナー(以下、DDRという。)等の叩解機により叩解されている。叩解の程度は、抄紙適性の点から、カナディアン・スタンダード・フリーネス(以下、CSFという。)で250〜550ml程度が好ましい。
【0040】
かかるパルプとしては、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、機械パルプ、さらには脱墨古紙パルプ等を適宜配合して使用できる。
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(GP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP)等の未晒し、半晒し、あるいは晒しパルプが使用できる。
【0041】
また、脱墨古紙パルプとしては、以下のような古紙を脱墨したものが使用できる。
「上白、カード」に区分される古紙:製本・印刷工場などで発生する上質紙、クリーム色の未印刷物およびトンボ、青罫・赤罫のある損紙、電算機用の使用済みカード等。
「模造、色上」に区分される古紙:墨印刷のある上質紙、色刷り上質、ケント、アート紙の印刷のあるものを原料とするもの。
「特白、中白、白マニラ」に区分される古紙:中質紙、更質紙、マニラボールの未印刷物およびトンボ、青罫・赤罫のある損紙。
「新聞」に区分される古紙:家庭・会社および公官庁から発生する新聞紙古紙。
「雑誌」に区分される古紙:家庭・会社および公官庁から発生する雑誌古紙。
【0042】
本発明では、必要に応じて種々の内添薬品を使用できる。例えば、ロジン系、スチレン−マレイン酸系、アルキルケテンダイマー系、アルケニルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系などのサイズ剤、天然および合成の製紙用の内添サイズ剤、各種紙力増強剤、濾水歩留り向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、定着剤、蛍光増白剤、着色染料等を使用することができる。
【0043】
さらに、紙料中には、内添紙力増強剤として、澱粉、酸化澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アニオン性、カチオン性または両性ポリアクリルアミド系樹脂等を使用することができる。
近年、脱墨古紙パルプを多量に配合した用紙への要望が高まっており、特殊な場合には、パルプ成分の100%を脱墨古紙パルプとすることがあり、紙力低下によりブリスターが発生するおそれがある。
しかし、紙力増強剤の過剰添加は、オフ輪じわの発生を助長するおそれがあるため、紙力増強剤の使用は、印刷時に断紙やブリスターの発生を抑制する程度の必要最小限量の添加が好ましい。
【0044】
紙力増強剤の内添を必要とする場合には、上記の内添紙力増強剤のうちでも、両性ポリアクリルアミド系樹脂を使用すると、オフ輪じわをそれほど悪化させることなく、必要とする紙力を維持することができるので好ましい。
両性ポリアクリルアミド系樹脂のうちでも、分岐状両性ポリアクリルアミド系樹脂を用いると、分岐鎖が効果的にセルロース繊維を結合させ、少量の添加量で紙力増強効果を得ることができ、しかも紙料のpHに関わらず効果を発揮するので好ましい。
【0045】
このような分岐状両性ポリアクリルアミド系樹脂としては、例えば、荒川化学工業株式会社から市販されている「ポリストロン1274C」などを挙げることができる。
本発明においては、紙力増強剤として両性ポリアクリルアミド系樹脂を使用する場合でも、原紙が原紙質量に対して1質量%を超えて両性ポリアクリルアミド系樹脂を含有すると、オフ輪じわが悪化するおそれがあるので、両性ポリアクリルアミド系樹脂の添加は原紙質量に対して1質量%以下となるように配合するのが好ましい。
【0046】
本発明においては、原紙を抄造する際前記に詳述した特定の物性を有する水和ケイ酸塩を配合することが必要である。
【0047】
本発明においては、上記以外に通常の抄紙工程において使用される填料を併用することもでき、かかる填料としては、例えば、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ(ホワイトカーボンなど)、無定形シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料が挙げられ、単独、もしくは適宜2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
填料の含有率については特に限定するものではないが、紙力や原紙平滑性を考慮すると、紙灰分として2〜20質量%となるように添加するのが好ましく、特に紙灰分が5〜15質量%となるように内添するのがより好ましい。なお、紙灰分が2質量%未満であると、パルプ繊維間の結合阻害効果が少なく、オフ輪じわをより低減させる効果が得がたい。また、内添填料を紙灰分として20質量%を超えるように配合すると、紙力が大幅に低下するとともに、原紙の平滑性が悪化し、塗工紙としての価値を損なうおそれがある。
なお、本発明では、上記のように水和ケイ酸塩とそれ以外の通常の填料を併用することもでき、その場合には、填料合計の紙灰分が2〜20質量%となるように添加すればよい。
【0049】
原紙の抄紙方法についても特に限定はなく、酸性抄紙法あるいは中性ないしはアルカリ性抄紙法が任意に採用でき、抄紙設備としては、長網、オントップ、ツインワイヤー等の各種タイプの抄紙機が使用できる。
【0050】
本発明においては、こうして抄紙された原紙にサイズプレス処理を施すこともでき、かかるサイズプレス処理に使用する薬品としては、従来から用いられている各種澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド系樹脂等が使用できる。また、サイズプレス液中には、ワックス、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−マレイン酸−アクリル系樹脂、高級脂肪酸系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン付加物等も適宜添加することができる。なお、サイズプレス処理を施す場合の付着量については特に制限はないが、一般には、両面合計の乾燥付着量で0.1〜10g/m程度が好ましい。
【0051】
原紙の坪量は、特に限定されないが、25〜150g/m程度であることが好ましく、より好ましくは40〜100g/m程度である。
【0052】
前記のようにして抄紙した原紙は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した透気度が10秒以下かつ、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18−2:2000に準じて測定した内部結合強さが150〜800J/mであることが好ましい。より好ましい透気度としては8秒以下である。また、より好ましい内部結合強さとしては、300〜600J/mである。
因みに、透気度が10秒を超えるとオフ輪印刷時のインキ乾燥工程において紙層中の水蒸気が抜け難くなり、ブリスターが発生するおそれがある。また、内部結合強さが150J/m未満であると、パルプ繊維間の水素結合が阻害され過ぎ、オフ輪印刷に耐え得る紙力を確保できなくなるおそれがある。内部結合強さが800J/mを超えると、オフ輪じわ発生を抑制する効果が飽和し、経済性にも乏しくなるおそれがある。
【0053】
これらの結果、本発明の原紙の製造方法では、紙層内剥離又は紙層間剥離が防止され、しかもオフ輪印刷時の熱風乾燥による収縮ストレスに起因するしわが形成されにくい原紙が得られるものと思われる。
【0054】
オフ輪印刷用塗工紙において、原紙上に形成される顔料塗工層には、従前の印刷用塗工紙を製造する場合と同様に、顔料と接着剤を主成分として含有する水系塗料が使用される。
かかる顔料としては、クレー、カオリン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、硫酸カルシウム、タルク、プラスチックピグメント等の1種または2種以上を選択して使用できる。
これらの顔料のうちでも、X線透過式の粒度分布測定器(セディグラフ5100、マイクロメトリックス社製)で測定した平均粒子径が0.15〜0.5μm、より好ましくは0.15〜0.3μmのカオリンを、顔料全体の50〜100質量%の範囲で含有せしめると、オフ輪じわの発生がより改善されるため望ましい。
【0055】
また、接着剤としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体ラテックス等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系(共)重合体ラテックス、あるいはこれらの各種(共)重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性した重合体または共重合体ラテックス等の水分散性接着剤、ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂等の合成樹脂系接着剤、酸化澱粉、陽性澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の水溶性接着剤が例示される。接着剤としては、これら水分散性および/または水溶性接着剤から1種または2種以上を適宜選択して使用できる。
【0056】
なお、顔料と接着剤の配合比率は、一般に顔料100質量部に対して5〜25質量部の接着剤が使用される。
本発明において、顔料塗工組成物の塗工層は、単層であっても、複層であっても差し支えない。しかし、塗工層が単層か複層かに拘わりなく、当該塗工層の形成に際し、塗工層全体の接着剤として顔料100質量部当たり、接着剤が5〜25質量部になるように調整すればよい。なお、接着剤量が5質量部未満では、オフ輪印刷に耐えられる顔料塗工層強度が得られず、一方接着剤量が25質量部を超える場合、オフ輪印刷の乾燥過程でのブリスター発生やインキ乾燥不良となるおそれがある。
また、顔料塗工組成物には、さらに必要に応じて保水剤、増粘剤、各種染料等助剤を添加できる。
【0057】
顔料塗工組成物の水系塗料を原紙に塗工するに当たっては、塗工紙製造に一般に使用される塗工装置が使用でき、例えばブレードコータ、エアーナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータ、グラビアコータ、チャンプレックスコータ、2本ロールサイズプレスコータ、ゲートロールサイズプレスコータ、フィルムメタリングサイズプレスコータ等の塗工装置を使用して、オンマシン方式またはオフマシン方式で原紙の少なくとも片面に、単層または複層で塗工される。塗工時の顔料塗工組成物の固形分濃度は、一般に40〜75質量%の範囲で選ぶことができるが、操業性を考慮すると45〜70質量%の範囲であることが好ましい。塗工層一層あたりの塗工量は乾燥質量で一般に片面当たり3〜20g/mの範囲で選ばれる。
【0058】
また、湿潤状態の塗工層を乾燥する方法としては、例えば蒸気加熱シリンダー、加熱熱風エアードライヤー、ガスヒータードライヤー、電気ヒータードライヤー、赤外線ヒータードライヤー、高周波ヒータードライヤー等、あるいは、レーザー加熱、電子線加熱、誘電加熱等各種の方法が単独または併用して用いられる。乾燥時の乾燥条件としては、湿潤状態の塗工層の温度が、接着剤として使用しているラテックスのガラス転移温度以上になることが必要であり、例えば熱風加熱ドライヤーの場合、熱風温度120〜180℃、熱風の流速20〜60m/秒の範囲が好ましく用いられる。なお、乾燥時に湿潤塗工層の温度が接着剤として使用されているラテックスのガラス転移温度以下の場合は、ラテックスが接着剤として機能しないまま乾燥されるので、乾燥後のキャレンダー処理時に塗工層がロールに付着して剥離するおそれがある。
【0059】
顔料塗工層形成後は、通常キャレンダーに通紙して製品として仕上げられる。その際のキャレンダーとしては、例えば、スーパーキャレンダー、グロスキャレンダー、ソフトコンパクトキャレンダー等の金属ロールまたは金属ドラムと弾性ロールよりなる各種キャレンダーが、オンマシンまたはオフマシン仕様で、適宜使用される。
なお、本発明の塗工紙用原紙を用いてオフ輪印刷用塗工紙を構成した際、該オフ輪印刷用塗工紙の裏面に種々の加工、例えば粘着、磁性、難燃、耐熱、耐水、耐油、防滑などの後加工を施すことにより、用途適性を付加して使用することも勿論可能である。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、もちろんこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例において示す部数および%は質量部および質量%を意味する。
また、実施例および比較例で作成されたオフセット輪転印刷用塗工紙は、以下の評価方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0061】
・オフ輪じわの評価方法
オフセット輪転印刷機(三菱リソピアL−BT3−1100/三菱重工社製)を用いて、両面が4色ベタ図柄と、一方の面が4色ベタ図柄で他方の面がピンクの淡い図柄とした組み合わせ図柄で、印刷速度330m/分、乾燥機出口での紙面温度は120℃とし、乾燥機通過後の冷却ロールには10℃の冷却水を通して印刷し、連続して折り加工を施した。印刷後、オフ輪じわの程度を以下の判定基準で目視評価した。
AA:オフ輪じわが発生しない。
A :幅の広いオフ輪じわが一部発生するが、しわの深さは比較的浅く、全く問題ないレベル。
B :幅の広いオフ輪じわが全体に発生するが、しわの深さは比較的浅く、問題ないレベル。
C :幅の広いオフ輪じわが全体に多数発生し、しわの深さは中程度であり、問題となるレベル。
D :幅の細いオフ輪じわが全体に多数発生し、しわの深さも深いため、製本時に波打って大きな問題となるレベル。
【0062】
・ブリスター発生温度
上記オフ輪じわ評価の印刷条件において、印刷速度は変更せずに乾燥温度を上昇させていき、印刷サンプルの両面4色ベタ印刷部でブリスター発生の有無を評価した。ブリスターの発生が認められた時の乾燥機出口の紙面温度をブリスター発生温度とした。
ブリスター発生温度が140℃以上であれば、問題なく印刷できるレベルである。
【0063】
実施例1
(水和ケイ酸塩Aの製造)
水357質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液427質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)91質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(A)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Aを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、15.5μm、標準偏差は0.356であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Aの比表面積は51m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量は2.82cc/g、細孔径は0.25μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、69.5g/Lであった。
【0064】
(紙の製造)
カナダ標準濾水度(CSF)が450mLある広葉樹晒化学パルプ(LBKP)スラリーに、前記水和ケイ酸塩Aを紙質量当たり7部になるよう添加し、さらに絶乾パルプ量100部当たり、澱粉1.0部、アルキルケテンダイマー0.03部、及び硫酸バンドを0.5部、歩留向上剤0.02部(DR−1500、ハイモ社製)となるように添加して紙料を調製した。その紙料を、長網抄紙機を用いて目標坪量が風乾で50g/mとなり、かつワイヤーシェーキング装置で振幅20mm、振動数200rpmとなるようワイヤーを摺動させながら抄造し、プレスにより脱水後、シリンダードライヤーを用いて乾燥しシートを作製した。その際、リールの回転速度(V)とワイヤーの回転速度(V)の比V/Vは1.01とした。その後、線圧10kg/cmでキャレンダー処理を施して塗工紙用原紙を得た。
【0065】
実施例2
(水和ケイ酸塩Bの製造)
水396質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液666質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)91質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(B)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Bを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、18.8μm、標準偏差は0.339であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Bの比表面積は81m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量は3.44cc/g、細孔径は0.21μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、65.1g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Bを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0066】
実施例3
(水和ケイ酸塩Cの製造)
水435質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液905質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)91質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(C)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Cを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、19.8μm、標準偏差は0.331であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Cの比表面積は112m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量は3.49cc/g、細孔径は0.17μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、62.0g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Cを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0067】
実施例4
(水和ケイ酸塩Dの製造)
水646質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液138質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)91質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(D)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Dを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、15.4μm、標準偏差は0.311であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Dの比表面積は71m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量は3.35cc/g、細孔径は0.22μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、59.0g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Dを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0068】
実施例5
(水和ケイ酸塩Eの製造)
水1201質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液471質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)91質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(E)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Eを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、19.4μm、標準偏差は0.288であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Eの比表面積は155m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量は3.95cc/g、細孔径は0.11μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、43.2g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Eを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0069】
実施例6
(水和ケイ酸塩Fの製造)
水424質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液558質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)99質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(F)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Fを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、25.4μm、標準偏差は0.343であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Fの比表面積は132m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量は3.48cc/g、細孔径は0.16μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、65.0g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Fを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0070】
実施例7
(水和ケイ酸塩Gの製造)
水507質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液555質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)91質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(G)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Gを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、18.8μm、標準偏差は0.333であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Gの比表面積は102m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量3.46cc/g、細孔径は0.10μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、61.7g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Gを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0071】
実施例8
(水和ケイ酸塩Hの製造)
水73質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液733質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)65質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(H)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Hを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、8.5μm、標準偏差は0.287であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Hの比表面積は41m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量2.03cc/g、細孔径は0.65μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、79.4g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Hを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0072】
実施例9
(水和ケイ酸塩Iの製造)
水622質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液362質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)96質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(I)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Iを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、25.5μm、標準偏差は0.360であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Iの比表面積は158m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量3.98cc/g、細孔径は0.13μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、58.6g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Iを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0073】
実施例10
(水和ケイ酸塩Jの製造)
水543質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液507質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)104質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(J)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Jを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、38.8μm、標準偏差は0.372であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Jの比表面積は155m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量3.36cc/g、細孔径は0.10μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、60.7g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Jを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0074】
実施例11
実施例1のワイヤーシェーキング装置において、振幅10mm、振動数200rpmとし、かつリールの回転速度(Vr)とワイヤーの回転速度(Vw)の比Vr/Vwが1.01とした以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0075】
実施例12
実施例1のワイヤーシェーキング装置において、振幅20mm、振動数150rpmとし、かつリールの回転速度(Vr)とワイヤーの回転速度(Vw)の比Vr/Vwが1.01とした以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0076】
実施例13
実施例1のワイヤーシェーキング装置において、振幅20mm、振動数200rpmとし、かつリールの回転速度(Vr)とワイヤーの回転速度(Vw)の比Vr/Vwが1.02とした以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0077】
比較例1
(水和ケイ酸塩Kの製造)
水23質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液760質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)91質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(K)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Kを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、43.2μm、標準偏差は0.501であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Kの比表面積は39m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量2.07cc/g、細孔径は0.61μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、81.7g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Kを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0078】
比較例2
(水和ケイ酸塩Lの製造)
水293質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液502質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)78質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(L)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Lを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、14.4μm、標準偏差は0.441であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Lの比表面積は13m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量1.95cc/g、細孔径は0.77μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、71.7g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Lを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0079】
比較例3
(水和ケイ酸塩Mの製造)
水571質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液479質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)104質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(M)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Mを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、30.2μm、標準偏差は0.454であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Mの比表面積は163m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量3.85cc/g、細孔径は0.09μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、59.8g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Mを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0080】
比較例4
(水和ケイ酸塩Nの製造)
水90質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液693質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)91質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(N)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Nを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、21.1μm、標準偏差は0.358であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Nの比表面積は14m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量2.11cc/g、細孔径は0.81μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、79.3g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Nを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0081】
比較例5
(水和ケイ酸塩Oの製造)
水165質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液496質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)104質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(O)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Oを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、20.1μm、標準偏差は0.352であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Oの比表面積は42m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量2.84cc/g、細孔径は0.83μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、79.1g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Oを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0082】
比較例6
(水和ケイ酸塩Pの製造)
水1609質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液40質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)117質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(P)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Pを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、25.6μm、標準偏差は0.398であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Pの比表面積は253m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量4.21cc/g、細孔径は0.05μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、34.0g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Pを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0083】
比較例7
(水和ケイ酸塩Qの製造)
水656質量部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液398質量部、JIS K 1408−1966に規定される3号けい酸ナトリウム347質量部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)99質量部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12質量%の水和ケイ酸塩(Q)スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩Qを前記レーザー回折式粒度分布計で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は、24.1μm、標準偏差は0.388であった。
水和ケイ酸塩スラリーはろ過・洗浄した後、ケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量、および細孔径を測定に供した。該水和ケイ酸塩Qの比表面積は158m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量4.11cc/g、細孔径は0.11μmであった。またろ過したスラリーの電解質濃度を測定したところ、57.2g/Lであった。
更にこの水和ケイ酸塩Qを用いた以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0084】
比較例8
実施例1のワイヤーシェーキング装置において、振幅10mm、振動数100rpmとし、かつリールの回転速度(Vr)とワイヤーの回転速度(Vw)の比Vr/Vwが1.01とした以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0085】
比較例9
実施例1のワイヤーシェーキング装置において、振幅20mm、振動数200rpmとし、かつリールの回転速度(Vr)とワイヤーの回転速度(Vw)の比Vr/Vwが1.05とした以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0086】
比較例10
実施例1のワイヤーシェーキング装置において、振幅10mm、振動数100rpmとし、かつリールの回転速度(Vr)とワイヤーの回転速度(Vw)の比Vr/Vwが1.05とした以外は実施例1と同様にして塗工紙用原紙を得た。
【0087】
上記各実施例、比較例で得られた塗工紙用原紙に下記顔料塗工層用塗工液を塗工してオフ輪印刷用塗工紙を製造し、オフ輪印刷適性を評価した。
(印刷用塗工紙の製造)
重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)50質量部、微粒カオリン(商品名:ミラグロスOP、平均粒子径:0.25μm、エンゲルハード社製)50質量部からなる顔料をコーレス分散機で水中に分散して顔料スラリーを得た。このスラリーにスチレン−ブタジエン共重合ラテックス(商品名:PA−9000、日本エイアンドエル社製)10質量部(固形分)、予め糊化した酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)3.5質量部(固形分)、消泡剤、蛍光増白染料、印刷適性向上剤を添加し、最終的に固形分濃度64%の顔料塗工層用塗工液を調製した。この塗工液を、上記で得た各原紙に、片面あたりの乾燥塗布量が8g/mになるようにブレードコーターで両面塗工、乾燥して両面塗工紙を得た。次いで、この両面塗工紙を、金属ロールと樹脂ロールよりなる4段スーパーキャレンダーで線圧が100kg/cmの条件で平滑化処理し、オフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
実施例1〜10の水和ケイ酸塩は、パルプスラリーに添加、紙を形成する際の、パルプスラリー調製時のシェアおよびプレス圧およびキャレンダー圧による潰れを防止し、紙形成時の嵩高化効果が高い上に、白紙での不透明性を高くできた。また、適切な平均粒子径を有し、紙の表面強度および内部結合強度を高くできた。また、実施例1〜13の塗工紙用原紙は、繊維配向比が1.2を超えないのでオフ輪じわの発生が抑制された。
これに対し、電解質濃度が80g/Lであり、粒子径が40μm以上の比較例1の水和ケイ酸塩は、表面強度で満足する結果が得られなかった。
細孔表面積が15m/g未満の比較例2の水和ケイ酸塩は、内部結合強度および、表面強度が不足していた。
比表面積が160m/g以上であり、細孔径が0.10μm未満の比較例3の水和ケイ酸塩は、嵩高効果および白紙不透明度が不足していた。
比表面積が15m/g以下であり、細孔径が0.80μm以上の比較例4の水和ケイ酸塩は、内部結合強度および表面強度が不足していた。
細孔径が0.80μmを超える比較例5の水和ケイ酸塩は、内部結合強度および、表面強度が不足していた。
電解質濃度が35g/L以下、細孔表面積160m/g以上、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が4cc/g以上であり、細孔径が0.10μm未満の比較例6の水和ケイ酸塩は、嵩高効果、内部結合強度および白紙不透明度が不足していた。
細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が4cc/g以上の比較例7の水和ケイ酸塩は、嵩高効果および白紙不透明度が不足していた。さらに、比較例8〜10は、繊維配向比が1.2を超えているのでオフ輪じわの発生が酷く、問題となるレベルであった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
塗工紙の原紙として、繊維配向の制御に加えて原紙の紙層内部に特定の組成、物性を有する填料を配合して抄紙した原紙を用いてオフ輪印刷用塗工紙を構成すると、オフ輪じわの発生が顕著に改善され、しかもブリスター発生温度も実用上差し支えない範囲に維持されているため、高品位な印刷が要求されるオフ輪印刷用塗工紙として適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の少なくとも片面に顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工層を1層以上設けてなるオフセット輪転印刷用塗工紙において、該原紙の超音波伝播速度測定器に基づき測定される繊維配向比が1.20以下、かつ該原紙は平均粒子径が10〜40μm、比表面積が15〜160m/g、細孔直径10オングストローム以下の細孔の積算容量が4cc/g未満、細孔径が0.10〜0.80μmである水和ケイ酸塩を含有することを特徴とする塗工紙用原紙。
【請求項2】
前記原紙は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した透気度が10秒以下かつ、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18−2:2000に準じて測定した内部結合強さが150〜800J/mであることを特徴とする請求項1に記載の塗工紙用原紙。

【公開番号】特開2009−256826(P2009−256826A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106444(P2008−106444)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】