説明

塗工装置

【課題】長尺状の基材にもナノプリントを行うことができる塗工装置を提供する。
【解決手段】グラビアロール12、ブランケットロール14、バックアップロール16をそれぞれダイレクトドライブモータであるモータ18,26,32によって回転させ、こりら各ロールにそれぞれ第1のブレーキ22、第2のブレーキ30、第3のブレーキ36を取り付け、回転中に各モータの30〜70%のトルクでブレーキを掛ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の基材にグラビア塗工を行う塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進み、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィー装置の高精度化が進められてきた。しかし、このリソグラフィー技術も限界に近づき、最近では、プレス装置を用い、基板上に微細構造を形成するナノプリント装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−288811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のナノプリント装置は、板状の基板にナノプリントを行う装置であり、長尺状のフィルムなどの基材に連続してナノプリントを行うことはできないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、長尺状の基材にもナノプリントを行うことができる塗工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、グラビア版を有するグラビアロールと、前記グラビアロールと接触して、前記グラビア版によって転写部が転写されるブランケットロールと、前記転写部が転写される長尺状の基材を搬送するバックアップロールと、前記グラビアロールを回転させるダイレクトドライブモータよりなる第1のモータと、前記グラビアロールの回転中に、前記第1のモータのトルクの30〜70%のブレーキトルクをかける第1のブレーキと、前記ブランケットロールを回転させるダイレクトドライブモータよりなる第2のモータと、前記ブランケットロールの回転中に、前記第2のモータのトルクの30〜70%のブレーキトルクをかける第2のブレーキと、前記バックアップロールを回転させるダイレクトドライブモータよりなる第3のモータと、前記バックアップロールの回転中に、前記第3のモータのトルクの30〜70%のブレーキトルクをかける第3のブレーキと、前記第1のモータ、前記第2のモータ、及び、前記第3のモータを同じ回転速度で回転させる制御部と、を有することを特徴とする塗工装置である。
【0007】
グラビア版を有するグラビアロールと、
また、本発明は、長尺状の基材を搬送すると共に、前記基材に前記グラビア版によって塗工が行われるバックアップロールと、前記グラビアロールを回転させるダイレクトドライブモータよりなる第1のモータと、前記グラビアロールの回転中に、前記第1のモータのトルクの30〜70%のブレーキトルクをかける第1のブレーキと、前記バックアップロールを回転させるダイレクトドライブモータよりなる第3のモータと、前記バックアップロールの回転中に、前記第3のモータのトルクの30〜70%のブレーキトルクをかける第3のブレーキと、前記第1のモータ、及び、前記第3のモータを同じ回転速度で回転させる制御部と、を有することを特徴とする塗工装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長尺状の基材にナノプリントを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す塗工装置の側面図である。
【図2】同じく塗工装置の平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す塗工装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態の塗工装置10について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の第1の実施形態の塗工装置10について、図1と図2に基づいて説明する。
【0012】
本実施形態の塗工装置10は、グラビア塗工を用いて長尺状の基材にナノプリントを行う装置である。
【0013】
なお、本明細書において「ナノプリント」とは、数100μm〜数nm程度の範囲の転写を行うプリントをいう。
【0014】
転写の対象となる長尺状の基材1としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアミドビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール等の熱硬化性樹脂、及びこれらを2種以上ブレンドした材料を用いたものである。
【0015】
(1)塗工装置10の構造
塗工装置10の構造について図1及び図2に基づいて説明する。
【0016】
塗工装置10は、図1及び図2に示すように、グラビアロール12、ブランケットロール14、バックアップロール16とを有する。
【0017】
水平方向に配されたグラビアロール12の下方に、ブランケットロール14が水平方向に配され、このブランケットロール14の下方にバックアップロール16が水平方向に配されている。そして、塗工液が塗工されたグラビアロール12のグラビア版38がブランケットロール14の表面に転写されて転写部40が形成され、この転写部40がバックアップロール16によって搬送されている基材1にナノプリントを行う。
【0018】
グラビアロール12は、FRP、カーボンファイバー、又は、樹脂などよりなるロールの表面にクロムメッキを施し、その表面にグラビアロール版38が刻設されているものであって、その直径は100〜500mmである。グラビアロール12の一方の回転軸には、ダイレクトドライブモータ(以下、単に「DDモータ」という)よりなる第1のモータ18が取り付けられ、この第1のモータ18によりグラビアロール12が回転する。第1のモータ18には、第1のエンコーダ20が取り付けられている。また、グラビアロール12の他方の回転軸には、第1のブレーキ22が取り付けられている。この第1のブレーキ22は、例えば、パウダーブレーキ、電磁ブレーキ、マグネットブレーキ、又は、ディスクブレーキであって、回転中のグラビアロール12に対し一定のブレーキトルクを掛ける。
【0019】
ブランケットロール14は、FRP、カーボンファイバー、又は、樹脂よりなるロールの表面にゴム24を巻き付けたものであって、その直径はグラビアロール12と同じ寸法である。ブランケットロール14の一方の軸には、DDモータよりなる第2のモータ26が取り付けられ、この第2のモータ16にも第2のエンコーダ28が取り付けられている。また、ブランケットロール14の他方の軸には第2のブレーキ30が取り付けられている。この第2のブレーキ30は、第1のブレーキ22と同じ構成である。
【0020】
バックアップロール16は、FRP、カーボンファイバー、又は、樹脂よりなるロールの表面にクロムメッキが施され、その直径はグラビアロール12と同じ寸法である。バックアップロール16の一方の軸には、DDモータよりなる第3のモータ32が取り付けられ、この第3のモータ32にも第3のエンコーダ34が取り付けられている。また、バックアップロール16の他方の軸には第3のブレーキ36が取り付けられている。この第3のブレーキ36は、第1のブレーキ22と同じ構成である。
【0021】
(2)塗工装置10の電気的構成
次に、塗工装置10の電気的構成について図2に基づいて説明する。
【0022】
第1のモータ18、第1のエンコーダ20、第2のモータ26、第2のエンコーダ28、第3のモータ32及び第3のエンコーダ34は、コンピュータよりなる制御部42に接続されている。
【0023】
制御部42は、第1のモータ18、第2のモータ26及び第3のモータ32を同じ回転速度Wで回転させている。この回転速度Wは、例えば、基材1の走行速度Vが6m/分である場合には、例えば、毎分5〜6回転である。そして、制御部42は、第1のモータ18、第2のモータ26及び第3のモータ32がDDモータであるため、これらのモータ18,26,32が同じ回転速度Wで、かつ、一定の回転速度Wになるように位置制御を行い、正確に位置制御が行われているかを第1のエンコーダ20、第2のエンコーダ28、及び第3のエンコーダ34からのパルス信号によって監視している。
【0024】
(3)ナノプリントを行うための対策
塗工装置10が、数100μm〜数nm程度(例えば、±0.5μm以下)の精度で転写を行うための対策について説明する。
【0025】
まず、第1の対策としては、上記したように第1のモータ18、第2のモータ26及び第3のモータ32が、DDモータであるため、位置制御を行うと正確に同じ回転速度で回転する。しかし、グラビアロール12、ブランケットロール14及びバックアップロール16の慣性力によって回転が揺れて回転精度が落ちてくる可能性がある。特に、ナノプリントにおいては、位置制御で0.3μm以下の値に制御しない限り、ナノプリントに必要な±0.5μmの繰り返し精度が出ない。そのため以下の対策も講じている。
【0026】
第2の対策としては、グラビアロール12、ブランケットロール14及びバックアップロール16の慣性力を小さくするため、各ロールの材質を金属ではなく、軽量の材質であるFRP、カーボンファイバー、又は、樹脂によって形成している。これによって、各ロールの慣性力が小さくなり、回転精度を上げることができる。
【0027】
第3の対策としては、グラビアロール12に第1のブレーキ22、ブランケットロール14に第2のブレーキ28、バックアップロール16に第3のブレーキ36を取り付けている点である。そして、グラビアロール12が第1のモータ18によって回転中においては、第1のブレーキ22によって第1のモータ18の回転トルクの30〜70%のブレーキトルクを掛けているので回転の揺れをより少なくできる。ブランケットロール14、バックアップロール16も同様に第2のブレーキ30と第3のブレーキ36によって、第2のモータ26と第3のモータ32の回転トルクの30〜70%のブレーキトルクを掛けているので回転の揺れをより少なくできる。このように各ロール12,14,16の回転中に一定のブレーキ力が加わり、ゲイン値を大きくすることができ、また、コギング等の発生を防止できる。そのため、回転精度を上げることができる。
【0028】
以上の第1〜3の対策により、本実施形態の塗工装置10は、グラビアロール12のグラビア版38がブランケットロール14に転写部40を形成し、この転写部40によって長尺状の基材1に、±0.5μm以下の精度のナノプリントを行うことができる。
【0029】
(4)効果
以上により本実施形態によれば、塗工装置10によって基材1の表面に数100μm〜数nmの精度でナノプリントを行うことができるため、バイオ(免疫)チップ状の流路や、配線基板上の配線にナノプリントすることができる。
【実施例2】
【0030】
本発明の第2の実施形態の塗工装置10について、図3に基づいて説明する。
【0031】
本実施形態と第1の実施形態の異なる点は、本実施形態ではブランケットロール14がなく、塗工装置10は、図3に示すように、グラビアロール12、バックアップロール16のみを有し、水平方向に配されたグラビアロール12の下方に、バックアップロール16が水平方向に配されている。そして、塗工液が塗工されたグラビアロール12のグラビア版が、バックアップロール16によって搬送されている基材1にナノプリントを行う。
【0032】
この場合に、グラビアロール12は、FRP、カーボンファイバー、又は、樹脂などよりなるロールの表面にクロムメッキを施し、その表面にグラビアロール版38が刻設されているものであって、その直径は100〜500mmである。グラビアロール12の一方の回転軸には、DDモータよりなる第1のモータ18が取り付けられ、この第1のモータ18によりグラビアロール12が回転する。第1のモータ18には、第1のエンコーダ20が取り付けられている。また、グラビアロール12の他方の回転軸には、第1のブレーキ22が取り付けられている。この第1のブレーキ22は、例えば、パウダーブレーキ、電磁ブレーキ、マグネットブレーキ、又は、ディスクブレーキであって、回転中のグラビアロール12に対し一定のブレーキトルクを掛ける。
【0033】
バックアップロール16は、FRP、カーボンファイバー、又は、樹脂よりなるロールの表面にクロムメッキが施され、その直径はグラビアロール12と同じ寸法である。バックアップロール16の一方の軸には、DDモータよりなる第3のモータ32が取り付けられ、この第3のモータ32にも第3のエンコーダ34が取り付けられている。また、バックアップロール16の他方の軸には第3のブレーキ36が取り付けられている。この第3のブレーキ36は、第1のブレーキ22と同じ構成である。
【0034】
本実施形態であっても、第1の実施形態と同様に、塗工装置10によって基材1の表面に数100μm〜数nmの精度でナノプリントを行うことができる。
【変更例】
【0035】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
10・・・塗工装置、12・・・グラビアロール、14・・・ブランケットロール、16・・・バックアップロール、18・・・第1のモータ、20・・・第1のエンコーダ、22・・・第1のブレーキ、24・・・ゴム、26・・・第2のモータ、28・・・第2のエンコーダ、30・・・第2のブレーキ、32・・・第3のモータ、34・・・第3のエンコーダ、36・・・第3のブレーキ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア版を有するグラビアロールと、
前記グラビアロールと接触して、前記グラビア版によって転写部が転写されるブランケットロールと、
前記転写部が転写される長尺状の基材を搬送するバックアップロールと、
前記グラビアロールを回転させるダイレクトドライブモータよりなる第1のモータと、
前記グラビアロールの回転中に、前記第1のモータのトルクの30〜70%のブレーキトルクをかける第1のブレーキと、
前記ブランケットロールを回転させるダイレクトドライブモータよりなる第2のモータと、
前記ブランケットロールの回転中に、前記第2のモータのトルクの30〜70%のブレーキトルクをかける第2のブレーキと、
前記バックアップロールを回転させるダイレクトドライブモータよりなる第3のモータと、
前記バックアップロールの回転中に、前記第3のモータのトルクの30〜70%のブレーキトルクをかける第3のブレーキと、
前記第1のモータ、前記第2のモータ、及び、前記第3のモータを同じ回転速度で回転させる制御部と、
を有することを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
グラビア版を有するグラビアロールと、
長尺状の基材を搬送すると共に、前記基材に前記グラビア版によって塗工が行われるバックアップロールと、
前記グラビアロールを回転させるダイレクトドライブモータよりなる第1のモータと、
前記グラビアロールの回転中に、前記第1のモータのトルクの30〜70%のブレーキトルクをかける第1のブレーキと、
前記バックアップロールを回転させるダイレクトドライブモータよりなる第3のモータと、
前記バックアップロールの回転中に、前記第3のモータのトルクの30〜70%のブレーキトルクをかける第3のブレーキと、
前記第1のモータ、及び、前記第3のモータを同じ回転速度で回転させる制御部と、
を有することを特徴とする塗工装置。
【請求項3】
前記グラビアロールが、FRP、カーボンファイバー、又は、樹脂製であって、その表面にメッキが施されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記ブランケットロールが、FRP、カーボンファイバー、又は、樹脂製であって、その表面にゴムが巻回されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記バックアップロールが、FRP、カーボンファイバー、又は、樹脂製であって、その表面にメッキが施されている、
ことを特徴とする1乃至4のいずれか一項に記載の塗工装置。
【請求項6】
前記第1のブレーキ、前記第2のブレーキ、又は、前記第3のブレーキが、パウダーブレーキ、電磁ブレーキ、マグネットブレーキ、又は、ディスクブレーキである、
ことを特徴とする1乃至5のいずれか一項に記載の塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−192370(P2012−192370A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59538(P2011−59538)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(390002015)ヒラノ技研工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】