説明

塗布具

【課題】塗布液の範囲内に塗布先が当接しつつ塗布膜を形成する塗布具は、被塗布面に当接する部分が塗布液を掻き取り、塗布膜の範囲内にて塗布液の除かれた部分を形成してしまうことがあった。このように塗布液の除かれた部分は、被塗布面が露呈して液の乗っていない部分となり、例えば修正液では修正対象が被覆されない部分となるなどの問題があった。
【解決手段】 塗布先の先部に形成した凸部分によって、被塗布面に対する非接触部となる凹部を形成し、この凹部に、被塗布面に対して非接触の弁機構を備える液吐出口を配置した塗布具

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキや修正液、化粧料などの液体を収容し、塗布先より塗布して使用する塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
インキや修正液、化粧料などの収容する液を、吐出させるに当たり、塗布先先端の液吐出口から、これを閉塞する弁機構の弁棒を突出させ、弁棒が被塗布面に接触して後退することに伴い弁機構を開放して液を流出させるものが知られている(特許文献1)。また、このものは、塗布先の両側脇部分に突起を形成しており、それより外側に吐出した液が流れないようになされている。
また、液の吐出、非吐出を制御する弁機構として、塗布先そのものを弾性材料により形成し、側部に形成したスリット状の液吐出口を、弾性材料の弾性的形状回復力によって閉鎖し、塗布先を被塗布面に押接する力によって変形させて液吐出口を開放するものも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−31171号公報
【特許文献2】実開昭61−85485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものでは、液吐出口から突出している弁体を被塗布面に接触させて弁機構を開放するので、吐出口から吐出された液は弁体によって掻き分けられてしまう。弁体によって掻き分けられた部分には吐出した液が乗らない部分となり、塗布跡が二重線状になってしまうことがあった。この状態は、粘度が高かったり流動性の低い塗布液を使用する場合、特に顕著であり、誤字などを被覆し隠蔽する修正液や、面塗りする彩色用のペンや化粧料などでは機能を果たさないことになるし、文字筆記用のペンであっても判別困難な文字を形成してしまうなどの問題があった。更に、塗布液が修正液の場合、塗膜の乾燥後に、この乾燥塗膜の上から再筆記することが想定されるが、塗膜の表面が凹凸状態になり易く、再筆記文字が乱れて判別困難になるという問題もあった。
【0005】
特許文献2に記載のものでは、スリット状の液吐出口が側部にあり、被塗布面に載った液はそのままなので、液の自由流動に任せるのみであり、また、塗布先が被塗布面と接触して塗り広げていくので、塗膜の表面に凹凸が形成されやすいものであった。これも特許文1に記載の発明と同様、粘度が高かったり流動性の低い塗布液を使用する場合に顕著であり、修正液の塗膜への再筆記文字が乱れて判別困難になるという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、塗布先の先部に形成した凸部分によって、被塗布面に対する非接触部分となる凹部を形成し、この凹部に、被塗布面に対して非接触の弁機構を備える液吐出口を配置した塗布具を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
凹部に、被塗布面に対して非接触の弁機構を備える液吐出口を配置したので、吐出される液を欠き分けるような当接部分がなく、また、凹部の端が庇状に塗布膜の上部分を均すので、凹凸の変化の少ない乾燥塗膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一例を示す縦断面図。
【図2】図1のI部拡大断面図。
【図3】図2のII−II’線断面矢視図
【図4】他の一例を示す要部拡大断面図。
【図5】使用状態を示す縦断面図。
【図6】他の一例を示す要部拡大断面図。
【図7】使用状態を示す縦断面図。
【図8】他の一例を示す要部拡大断面図。
【図9】使用状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の塗布具における塗布先は、内部が塗布液の液収容室と連通しており、液吐出口と塗布液の流出を制御する弁機構を備えている。内容液である塗布液を収容する手段としては、袋体に液体を収容したり、吸蔵体や袋体によらずに直接液体収容室に液体を収容するものとしてもよい。収容する塗布液を塗布先に流通させる方法としては、塗布液の自重によるものや、その液体収容室の内容積を押圧収縮させることや、圧縮気体を密封して加圧する方式などを採用することができる。
弁機構は、液通路を備えた弁座部材とこの液通路を閉塞し得る弁体とからなる構造弁や、弾性材料にスリット状の液通路を形成した弾性弁などが採用できる。また、塗布先は、被塗布面に対する当接部として凸部分を有しており、構造弁を採用する場合には、この凸部分が被塗布面に接触した際に後退可能な部分として、弁体がこれと連動するようなすことによって、弁機構を開閉するものとできる。弁機構を弾性弁とした場合には、塗布先自体を弾性材料とすることによって、凸部分が被塗布面に当接して押圧力を受けることにより、塗布先が弾性的に変形し、液吐出口を開口し、被塗布面との押圧状態が解除されると弾性的な形状回復によって液吐出口を閉塞するものとできる。
【0010】
塗布先に形成した凸部分の周囲は、被塗布面に非接触の凹部であり、液吐出口は、この凹部内に配置されている。また、塗布先は、液吐出口と、塗布先の側部との間に直線状の角部分を有している。角部分はエッジの立った尖り部分でも、面取りした曲面状部分であってもよいが、凹部内に形成した液吐出口との間に凹部の底部分となる平面部分を有しており、液吐出口から吐出された液が、この底部分と角部とで均され、塗膜表面を平らな面として形成する。
また、凹部の範囲では塗布先が被塗布面とは接触しないので、吐出液を掻き分けることもない。
【0011】
塗布先に形成される凸部分は一つ以上形成されればよいが、複数の方が被塗布面に対する設置が安定して好ましい。複数の凸部分を形成したものでは、この凸部分の間が液の流出する部分となるので、この方向とは反対方向に塗布先を進めることによって、上記隙間部分より液を流出させて被塗布面上に塗膜を形成する。
凸部分の形状は、帯状、円柱状、角柱状など適宜形状のものが採用でき、複数設置する場合に同じ形状のものでも、異なった形状のものを複数組み合わせたものでもよい。特に、突起を液吐出口の両側に形成し、高さを同じくすることで、凹部の底部や角部と被塗布面との距離を均一にでき、塗布膜の厚みに偏りを少なく、均一にすることができる。また、塗布するときの塗布先が被塗布面に接触する方向の角度を変化させても凹部が被塗布面に対して非接触の状態を維持できるように、帯状の凸部分が塗布先の先端から側面に渡って突起を形成させることが好ましい。
【0012】
塗布先を構成する材料としては、内溶液の分散媒である有機溶剤などに対して、溶解や膨潤し難い材料を採用すればよい。例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリオキシメチレンなどの合成樹脂性の硬質部材、ステンレス、アルミニウム、真鍮にニッケルメッキやクロムメッキなどを施したものなどの金属製の硬質部材、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などのセラミックス、弾性変形可能な合成ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質の合成樹脂、アクリルニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。また、被塗布面との接触による摩擦抵抗が低いものとして、非粘着フッ素ゴムや、潤滑剤を添加した水素化ニトリルゴムなどが適しており、これらは摩擦音を防止することもできる。
【0013】
内容液である塗布液としては、筆記・描画用インキ、修正液、のり、化粧料などが使用可能である。が、特にメチルシクロヘキサン、シクロペンタン、イソヘキサン、エチルシクロヘキサン、イソプロピルアルコールなどといった高揮発性溶剤を主溶剤とし、酸化チタン等の顔料を含有した修正液に好適に用いられる。修正液は、塗膜の乾燥後に、塗膜の上から再筆記することを予定しているため、表面が平滑であることが望まれるところ、誤字などに対する隠蔽のために、高粘度(例えば、B型粘度計No1ローター30回転測定で、25℃における粘度が30以上1000mPa以下)であったり、液中の顔料や樹脂成分などの固形分量が多く、素早く乾燥塗膜を形成させるため比較的低沸点の溶剤を使用しているなど、塗布したときの盛り上がりが沈んで表面の凹凸が均一化する前に表面が凹凸のままに乾燥塗膜を形成してしまうことがあるが、本発明の塗布具を使用することで、液の粘度や固形分率などに係わらず平滑な塗膜を形成できるので好ましいといえる。
【実施例】
【0014】
図面に基づき一例について説明する。
図1に、本発明の塗布具の一例の縦断面図を示す。
本例の塗布具は、後軸1とこれに螺合し内部を連通した塗布先2とからなっており、内部にインキ3を収容している。後軸1は、把持した手で強く握るなどの押圧によって形状が変形可能な比較的軟質の合成樹脂の射出成形品である有底筒状部材であり、開口部1aの外側に形成した外螺子部1bと、塗布先2の後部内側に形成した内螺子部2aとを螺合して、後軸1と塗布先2を密閉固定している。
【0015】
図1のI部拡大図である図2に示すように、塗布先2は、先端部にインキ吐出孔2bと、これを挟んで両脇に突起2c、2c’を有している。先端部の、突起2c、2c’以外の部分は相対的な凹部2d部分であり、塗布先を被塗布面に接触させたときに、突起2c、2c’が被塗布面に接触し、凹部2dは被塗布面に非接触の部分である。また、図2のII−II’線断面矢視図である図3に示すように、突起2c、2c’は、塗布先の先端形状に沿って側面に渡り帯状に形成されており、塗布する際に被塗布面に接触する時の角度が変わっても、インキ吐出孔2bが配置された凹部2dを被塗布面に対して被接触の部分として確保するようになしてある。
【0016】
塗布先2の内部には、弾性弁4が配置されており、リング5にて塗布先2との間に挟持固定されている。
弾性弁4は一文字形のスリット孔4aを有しており、前記塗布先2のインキ吐出孔2bと位置合わせされている。スリット孔4aは、非使用時には対峙する壁面が接触して閉塞した状態であり、インキの水頭圧では開放されないが、容器を押して内圧を一定以上に高めると弾性的に変形して開放状態となりインキを吐出するものである。圧力を解除すると、再び弾性的に形状回復して閉塞される。
【0017】
スリット孔4aよりインキが吐出されると、突起2c、2c’の範囲内である凹部2dと被塗布面との間に挟まれた形となる。凹部2dは、塗布先の側部と間に直線状の角部2eを有しており、塗布先を移動させると、凹部2dの底平面と共に被塗布面に残されたインキの上面を均す部分である。
【0018】
図4、図5に他の一例を示す。塗布先2を弾性材料からなる弾性弁部材としたものである。
即ち、軸筒の先端に、塗布先固定用の前軸6を螺合し、前軸内に嵌合固定したリング5で弾性弁7を挟持固定している。前軸6は、先端に周状の内方突出部6aを有し、弾性弁7の肩部7aの前方移動規制をしている。弾性弁7は、先細り状の先端部を有しており、その先端部は、略長方形状であると共に、中心付近にスリット状のインキ吐出孔7bを有し、これを挟んだ側部に弾性弁7の側壁に渡る帯状の突起7c、7c’を有している。スリット状のインキ吐出孔7bは、前例のスリット孔4aと同様であり、外力がかかっていない状態では閉塞されている。スリット孔4aが形成される部分の弾性弁7の肉厚は、即ち、スリット孔4aを液が通過するときの最短距離であるが、薄いと塗布した場合に塗布先の弾性変形によってスリットの端が裂けてしまい、弁機能を果たさなくなることや、厚いと塗布先を強く押し付けても、スリットの対向面が重なりインキ吐出孔が閉鎖したままの状態になってしまうので、0.15〜0.5mm程度とすることが好ましい。
【0019】
図5に、塗布先2を被塗布面に接触させている状態を示すが、被塗布面と塗布具とのなす角度が70°となるように当接させ、0.6mm押し付けた状態を示してある。被塗布面に接触する帯状の突起7c、7c’は、押し付けられることによって反作用を受け、上側に偏移する。この偏移がスリット状のインキ吐出孔7bの上側の肉部分を上方向に偏移させると共に下側の肉部分を若干後方に押し込むのでスリット状のインキ吐出孔7bが開口する。
吐出した液は、塗布先2の凹部2d及び角部2eとによって均されて、均一な塗布膜を形成する点などは上述の例と同様である。
【0020】
図6、図7に更に他の一例を示す。図4、図5にて示した一例に、液流量制御用の構造弁を組み合わせた一例である。
塗布先2の内部には、弁棒8が、コイルスプリング9にて前方付勢された状態で配置されている。外力の付与されていない状態では、弁棒8は後部のバネ受け部分としての鍔部8aの前面を弾性弁7の後段部7dに当接させており、液の流通を遮断している。
塗布状態である図7に示すように、被塗布面と塗布具とのなす角度が70°となるように当接させ、0.6mm押し付けた状態では、前述の一例と同様に、スリット状のインキ吐出孔7bが開口すると共に、スリット状のインキ吐出孔7bの上側の肉部分が弁棒8の先端を押し上げ、鍔部8aと弾性弁7とが離れてインキが流通する。
【0021】
図8、図9に更に他の一例を示す。弁機構として構造弁を使用した一例である。
弁機構は、インキ吐出孔2bの内縁部を弁座とし、そこに挿通する弁体10とからなっている。弁体10は、コイルスプリング9にて前方付勢されており、外力が付与されない状態では、弁座である塗布先2のインキ吐出孔内縁2gに周状に密接してインキの流出を閉塞している。コイルスプリング9は後部を、塗布先2の内壁に嵌合固定されたリング5にて後退規制されている。また、部材としての弁体10は、インキ吐出孔2bに挿通される部分を挟んで両側に突起10a、10a’を有しており、本例の塗布先2の先端部に形成された突起用穴2f、2f’を通じて塗布先の外に露呈している。また、突起用穴2f、2f’には、パッキン11、11’が嵌められており、該部において、突起用穴2f、2f’の内壁と突起10a、10a’との間を液密に閉鎖している。
【0022】
液が吐出できる弁機構の開放状態を図5に示す。
即ち、塗布する際、被塗布面に弁体10の突起10a、10a’が当接して押圧力が付与され、弁体10が後退してリング5に当接し、弁座であるインキ吐出孔内縁2gと弁体10とが離れて、その隙間からインキが流出可能となるとともに、弁体10の突起10a、10a’の先端は突起用穴2f、2f’から僅かに露呈して止まり凹部2dを形成する。弁体10の、インキ吐出孔2bに挿通する弁体10の先端は、弁体10が後退した際に、塗布先2の凹部2dの底面と略同位置にまで後退して、凹部2dの底面、凹部の角部2eと共に吐出されたインキの表面を均すものとなる。
【符号の説明】
【0023】
1 後軸
1a 開口部
1b 外螺子部b
2 塗布先
2a 内螺子部
2b インキ吐出孔
2c 突起
2c’ 突起
2d 凹部
2e 角部
2f 突起用穴
2f’ 突起用穴’
2g インキ吐出孔内縁
3 インキ
4 弾性弁
4a スリット孔
5 リング
6 前軸
6a 内方突出部
7 弾性弁
7a 肩部
7b インキ吐出孔
7c 突起
7c’ 突起
7d 後段部
8 弁棒
8a 鍔部
9 コイルスプリング
10 弁体
10a 突起
10a’ 突起
11 パッキン
11’ パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布先の先部に形成した凸部分によって、被塗布面に対する非接触部となる凹部を形成し、この凹部に、被塗布面に対して非接触の弁機構を備える液吐出口を配置した塗布具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−233660(P2009−233660A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49810(P2009−49810)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】