塗布具
【課題】連通管の径が細い場合であっても様々な塗布液を使用可能であって、塗布液をインキ吸蔵体からペン先へ安定して供給可能な塗布具の提供を課題とする。
【解決手段】塗布液収容部5と、塗布液吸蔵体4と、塗布体6とを有し、塗布液収容部5と塗布液吸蔵体4の間に塗布液7を流通可能な流路を有する流路形成部3が設けられた塗布具1を提供する。このとき、流路形成部3には突出部11と、押圧部33とを設ける。そして、押圧部33の少なくとも一部を塗布液吸蔵体4に上方から接触させる。
【解決手段】塗布液収容部5と、塗布液吸蔵体4と、塗布体6とを有し、塗布液収容部5と塗布液吸蔵体4の間に塗布液7を流通可能な流路を有する流路形成部3が設けられた塗布具1を提供する。このとき、流路形成部3には突出部11と、押圧部33とを設ける。そして、押圧部33の少なくとも一部を塗布液吸蔵体4に上方から接触させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵された塗布液をペン先等の塗布体に供給する塗布具に関するものであり、より詳細には、塗布体への塗布液の供給量を安定させるための塗布液供給手段を有する塗布具に関するものである。
なお、本明細書における塗布具とは、フェルトペン、万年筆、ラインマーカー、白板マーカー等の筆記具だけに限らず、例えば、修正ペンのような液状のものを紙面や白板等の任意の対象物に塗り付ける用具を含むものの総称として使用している。
【背景技術】
【0002】
ペン先(塗布体)に塗布液を安定して供給するための塗布液供給手段として、ペン先とインキタンクとの間にインキ(塗布液)を含浸することのできる中綿(塗布液吸蔵体)を設ける技術が知られている。この技術によると余剰なインキを中綿が吸収するので、ペン先にインキが供給されすぎることがない。またペン先でインキが不足した場合に、中綿に吸収されたインキがペン先に供給されるため、インキの供給不足を防ぐことができる。そのことにより、ペン先にインキを安定して供給することができる。
【0003】
この技術を用いた塗布具として、直液式筆記具のインキタンクとインキ吸蔵体(塗布液吸蔵体)の間を接続する連通管を設け、連通管を介してインキタンクからインキ吸蔵体へインキを供給する塗布具が広く知られている。このような塗布具には、例えば、特許文献1に開示されている直液式筆記具がある。
ここで直液式筆記具とは、所謂無操作型筆記具といわれる筆記具である。無操作型筆記具とは、ペン先やペン軸をノックするといったインキ供給のための操作をすることなく、ペン先にインキを供給することができる筆記具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−212884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されている発明のような、連通管を介してインキ吸蔵体へインキを供給する塗布具では、使用するインキによっては連通管を太くしなければならない場合があった。
【0006】
具体的に説明すると、例えば粘度の高いインキを使用する場合、連通管内にインキが詰まってしまい、連通管内を流れるインキがインキ吸蔵体まで到達しないことがあった。即ち、インキの粘度によっては、インキの自重による力だけでは、インキをインキ吸蔵体まで流すことができない場合があった。このような場合では、連通管の径を太くしてインキを流れ易くする必要がある。しかしながら、連通管の径を太くすると、太い連通管を設置するために本体の径を太くしなければならないという設計上の制約があった。
【0007】
また粘度の高いインキを使用した場合、インキ吸蔵体にインキが染み込みにくく、インキ吸蔵体からペン先へのインキの流れが安定しないという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、無操作型の塗布具において、連通管の径が細い場合であっても様々な塗布液を使用可能であって、塗布液をインキ吸蔵体からペン先へ安定して供給可能な塗布具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、充填した塗布液が内部流動可能な塗布液収容部と、塗布液を塗布するための塗布体とを有し、塗布液収容部と塗布体の間に塗布液を含浸する塗布液吸蔵体を備え、塗布液収容部と塗布液吸蔵体の間に塗布液を流通可能な流路を有する流路形成部が設けられた塗布具であって、前記流路形成部は少なくとも1つの突出部と、押圧部とを有するものであり、突出部は塗布体側に向かって突出し、内部に中空部分が形成され、中空部分と外部とを連通する連通孔が設けられており、前記押圧部の少なくとも一部は塗布液吸蔵体に上方から接触していることを特徴とする塗布具である。
【0010】
請求項1に記載の発明では、流路形成部が押圧部を有し、押圧部の少なくとも一部が塗布液吸蔵体に上方から接触している。このように塗布液吸蔵体を上方から押圧することにより、塗布液吸蔵体の毛細管力を高めることができる。そのため、インキの粘度が高い場合や、連通管の孔径が小さい場合のようにインキが自重のみでは下方へ移動しない場合であっても、毛細管力によってインキを塗布液吸蔵体へと引き込むことができる。即ち、径の小さな連通管で多種多様な塗布液を採用することができる。
また塗布液吸蔵体の上方部分が押圧部に押圧されると、塗布液吸蔵体の下端近傍に空隙率が低下した部分が形成される。つまり、塗布液吸蔵体の下端近傍は比較的空隙率が低い高密度部分となり、塗布液吸蔵体の上端近傍は、下端近傍に比べて空隙率が高い低密度部分となる。即ち、塗布液吸蔵体の上端部分と下端部分の間で密度差が形成され、塗布液吸蔵体の上端近傍の毛細管力に比べて、塗布液吸蔵体の下端近傍の毛細管力が強くなった状態となる。ここで、塗布液は毛細管力の小さい部分から大きい部分へ流れるので、塗布液吸蔵体に引き込んだインキをさらに下方へと確実に移動させることができる。つまり、ペン先へのインキの供給を安定させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の塗布具である。
【0012】
本発明では、前記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置している。そのため、押圧部が連通孔と塗布液吸蔵体との接触を阻害することがないので、連通孔と塗布液吸蔵体とを確実に接触させることができる。
具体的に説明すると、押圧部の下端が連通孔の下方にある場合や、押圧部の下端と連通孔との高さ方向の位置が同じ場合、押圧部が突出部から離れる方向へ塗布液吸蔵体を押圧することにより、突出部に形成された連通孔と塗布液吸蔵体の接触が妨げられるおそれがある。しかしながら、本発明では押圧部が連通孔の上方にあるため、突出部の下方側に位置する塗布液吸蔵体と連通孔との接触を阻害することがない。
このように連通管たる突出部が塗布液吸蔵体に接触すると、突出部に設けた前記孔の開口を塗布液吸蔵体が覆うように配置できる。そのことにより、塗布液吸蔵体の毛細管力によって塗布液が引き寄せられ、連通管からの塗布液の時間当たりの流出量が安定する。即ち、連通管の先端で塗布液の表面張力により塗布液の流れが滞るという事態が発生しない。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記押圧部は、前記突出部の側面から外方へ向かって略垂直に突出する平板状の突起であり、突出部の突出方向の基端部分から先端部分の近傍まで延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具である。
【0014】
本発明によると、強度の高い押圧部を有し、製造が容易な突出部(連通管)を有する塗布具を提供することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、塗布液吸蔵体の一部が前記流路形成部の内部に配されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布具である。
【0016】
本発明によると、流路形成部の内部に塗布液吸蔵体の一部が配されている。このことにより、インキの粘度が高い場合や、突出部の径が小さい場合のようにインキが自重のみで下方の放出口まで移動しない場合であっても、流路形成部の内部に位置する塗布液吸蔵体にインキが接触すれば、塗布液吸蔵体の毛細管力によってインキをより下方へ移動させることができる。即ち、確実にインキを塗布液吸蔵体側へ移動させることができ、インキの供給を安定させることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塗布具である。
【0018】
本発明によると、前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であるため、塗布液収容部を交換するたけで塗布液の補充が可能である。したがって、塗布具本体内の塗布液収容部にスポイトのような別部材を使用して塗布液を補充する場合に比べ、塗布液の補充作業が容易である。
【0019】
請求項6に記載の発明は、塗布液収容部は、下方に外部と内部空間とを連通する収容部側貫通孔が設けられており、前記流路形成部は、土台部と突出部から形成され、前記土台部には筒状部が形成されており、筒状部は前記突出部の中空部分と連通するものであって、前記流路形成部と塗布液収容部を取付けたとき、収容部側貫通孔と筒状部とが連通することを特徴とする請求項5に記載の塗布具である。
【0020】
請求項6の構成によると、前記流路形成部と塗布液収容部の着脱がより容易となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、中綿の毛細管力を強くすることができるので、連通管の孔径が小さい場合のようにインキが自重のみでは下方へ移動しない場合であっても、毛細管力によってインキを塗布液吸蔵体へと引き込むことができる。即ち、径の小さな連通管で多種多様な塗布液を採用することができるという効果がある。
また本発明によると、中綿の下端近傍の毛細管力を上端近傍の毛細管力より強くすることができる。このことにより、塗布液吸蔵体に引き込んだインキをさらに下方へと確実に移動させることができるので、ペン先へのインキの供給を安定させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の塗布具を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態で使用する中継芯を天地逆にして示す斜視図である。
【図3】図2の中継芯のA−A断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態で使用するインキタンク部を示す斜視図である。
【図5】図4のインキタンク部のA−A断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の塗布具を示す断面図であり、内部にインキがない状態を示す。
【図7】中継芯を一部破断させて、図1の中継芯とインキタンク部を接続するときの様子を示す説明図であり、(a)〜(b)の順に接続する。
【図8】第1の実施形態の塗布具において中綿配置部にインキが満たされていく様子を示す説明図であり、(a)〜(c)の順にインキが満たされていく。
【図9】第1の実施形態の塗布具において中綿配置部に充填されたインキが減少し、再びインキタンクからインキが充填される際のインキの液位(水位)を示す説明図であり、(a)は中綿配置部にインキが充填されている様子を示し、(b)は中綿配置部のインキが減少した状態を示し、(c)は中綿配置部にインキが再び充填されている様子を示す。
【図10】本発明の第2の実施形態の中継芯を示す斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施形態の中継芯を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下さらに、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において「前後」の関係はペン先側を前側、インキタンク側を後側として説明する。
【0024】
本発明の第1の実施形態の塗布具1は具体的には白板用マーカーであり、図1に示されるように、本体筒2、中継芯3(流路形成部)、中綿4(塗布液吸蔵体)、インキタンク部5(塗布液収容部)、ペン先6(塗布体)を有している。そして、本体筒2の内側に設けられた中空部分の後側にインキ7を貯留可能なインキタンク部5が配されており、中空部分の前側には中綿配置部8が形成されている。そして、本体筒2の中空部分の前後は中継芯3によって仕切られている。
【0025】
本体筒2はポリプロピレン等の樹脂やニオブ等の金属といった適宜な材料によって形成された筒体である。この本体筒2は先端部分28と後端部分29から形成されている。先端部分28の外観は、前側に向かうにつれて先細りする形状となっている。具体的には、後方側から前方側へ向かって、径の大きな筒状部分28a、径の小さな筒状部分28b、テーパ状の部分28c、最も径の小さな筒状部分28dの4つの部分が連続している。このとき、径の大きな筒状部分28aと径の小さな筒状部分28bは、段差を介して連続している。また、先端部分28の内部には長手方向に連通している内部空間30があり、この内部空間30も前側に向かうにつれて先細りになっている。また、先端部分28の内周面の後方端部には本体側螺旋溝28eが形成されている。
後端部分29は、一方に開放口が設けられた略有底円筒状の蓋体となっている。
【0026】
中綿4は、公知の中綿であって、インキ7を含浸可能な連続気孔を有している部材である。より詳細にはアクリル繊維等の適宜な繊維で形成されており、内部にインキ7を含浸することができる。
【0027】
中継芯3は、本実施形態の特徴的構成部材であり、以下詳細に説明する。
中継芯3は、ポリプロピレンやポリアセタール等の合成樹脂や金属等の適宜な材料によって形成されるものである。また図2に示されるように、中継芯3は突出部11と土台部12から形成されている。
【0028】
突出部11は略円筒状の突出部本体32と、長方形平板状の押圧片33(押圧部)から形成されている。このとき、突出部本体32は土台部12の前端面25(図2における上端面)から前方(図2の上方)に向かって略垂直に突出しており、突出部本体32と土台部12の中心軸は同じとなるように配置されている。つまり、土台部12の前端面25の中心部分近傍から突出部11が突出している。
【0029】
また押圧片33は、突出部本体32の側面の円周方向に略180度ずれた2箇所にそれぞれ設けられており、突出部本体32の側面から外方へ突出している。ここで、2つの押圧片33は、いずれも突出部本体32の長手方向(突出方向)に対して略垂直な方向に突出している。したがって、この2つの押圧片33は、互いに離れる方向へ突出している。また押圧片33は、突出部本体32の長手方向に沿って延びている。具体的には、押圧片33の後端部分は土台部12の前端面25と接触しており、押圧片33の前端部分は突出部本体32の前端(突出方向先端であり図2の上端)よりやや後側(図2の下側)に位置している。つまり、2つの押圧片33はいずれも土台部12の前端面25(図2の上端面)から前方(図2の上方)に向かって略垂直に突出しており、長手方向の長さが突出部本体32よりもやや短くなっている。
なお押圧片33の幅L1、即ち、押圧片33の突出方向の長さL1は特に限定されるものではないが、2.0mm〜4.5mmが望ましく、さらに好適には3.0mm〜4.0mmであることが望ましい。
また押圧片33の厚みL2、即ち、押圧片33の長手方向(延び方向)及び突出方向に対して略垂直な方向の長さL2は限定されるものではないが、1.0mm〜3.0mmが望ましく、さらに好適には1.5mm〜2.0mmであることが望ましい。
【0030】
ところで、突出部11にはその前端部分に連通孔13が設けられている。
【0031】
連通孔13は突出部11の突出方向先端にある円形の面24(図2における上面であり、突出部11が土台部12と接触している面に対向する位置にある面)に設けられている。そして、連通孔13は開口形状が円形であって、開口の中心が突出部11の中心軸と重なっている。この連通孔13の径の大きさは特に限定されるものではないが、2.0mm〜7.0mmであることが望ましく、より好適には2.0mm〜5.0mmであることが望ましく、さらに好適には2.5mm〜3.0mmであることが望ましい。そして、連通孔13の開口の面積は3.14mm2(平方ミリメートル)〜38.47mm2(平方ミリメートル)であることが望ましく、さらに好適には4.9mm2(平方ミリメートル)〜7.07mm2(平方ミリメートル)であることが望ましい。
【0032】
土台部12は、図2,3で示されるように、外筒部35と、外筒部35の内側に位置する内筒部36から形成されている。外筒部35は、図3で示されるように、一方に開放口39が設けられた略有底円筒状となっている。また内筒部36は略円筒状となっている。そして、内筒部36は外筒部35よりも径が小さく、外筒部35の中心部分に位置しており、内筒部36と外筒部35の中心軸は同一となっている。また、この内筒部36及び外筒部35は、いずれも前後方向(図3の上下方向)に延びる筒体となっている。
この内筒部36の前方端部は、図3に示されるように、外筒部35の内側底面40と連続しており、後方端部は、外筒部35の後端(図3の下端)より後方(図3の下方)に突出している。そして、内筒部36は前後方向(図3の上下方向)の長さが外筒部35より長くなっている。
また内筒部36の後方端部には、内筒部36の外周面が後方に向かうにつれて狭径となったテーパ部36aが形成されている。
【0033】
次に中継芯3の内部構造について説明する。
中継芯3の内部には、図3で示されるように、突出部11の内側に中空部分21が設けられており、土台部12の内側に中空部分22,41が設けられている。
【0034】
突出部11では、突出部本体32の内側に中空部分21が設けられている。中空部分21は断面形状が円形で延びる空間であり、具体的には突出部本体32の土台部12側の端部から連通孔13に向かって、突出部本体32の中心部分を長手方向と平行に延びるように設けられ、連通孔13と連続している。そして、連通孔13と中空部分21は断面の径が同じ大きさであり、開口の中心が同一の位置となっている。つまり、突出部本体32は中空部分21と連通孔13によって中心部分が貫通されて略円筒状になっている。したがって、中空部分21は連通孔13を介して外部と連続している。
【0035】
土台部12の内側には、内筒部36の内側に設けられた中空部分22と、内筒部36の外周面と外筒部35の内周面の間に設けられた環状の中空部分41が形成されている。
内筒部36の内側に設けられた中空部分22は、断面形状が円形で延び、内筒部36の長手方向に沿って延びる空間である。
【0036】
ここで、突出部本体32の中空部分21と内筒部36の中空部分22は連結孔23を介して連続している。この連結孔23は、土台部12の開放口39に対向する位置にある底板部を内部から外部へ貫通する貫通孔であり、断面形状が円形で貫通方向に延びている。
【0037】
このとき、連結孔23と突出部本体32の中空部分21は、いずれも断面形状が円形で延びる孔であり、断面の径、孔の延び方向、中心軸が同一となっている。そして、連結孔23と突出部本体32の中空部分21が重なり合って1つの貫通孔を形成している。したがって、突出部本体32の中空部分21の内周面と連結孔23の内周面は同一面となっている。
さらに、連結孔23と内筒部36の中空部分22もまた、いずれも断面形状が円形で延びる孔であり、断面の径、孔の延び方向、中心軸が同一となっている。そして、連結孔23と内筒部36の中空部分22が重なり合って同一の貫通孔を形成している。したがって、内筒部36の中空部分22の内周面と連結孔23の内周面は同一面となっている。
即ち、中継芯3の内部には、突出部本体32の中空部分21、連結孔23、内筒部36の中空部分22が一体となって形成される内部空間20が形成されている。
この内部空間20は、内筒部36に形成された中空部分22の後端側の開口36bから、突出部本体32に形成された連通孔13の開口までを貫通する貫通孔となっている。そして内部空間20は、断面形状が円形であり、断面の径が略同一で中継芯3の長手方向に沿って前後に延びている。このとき、内筒部36に形成された中空部分22の後端側の開口36bと、突出部本体32に形成された連通孔13の開口とは対向する位置にあり、略同一の形状となっている。
【0038】
インキタンク部5は、図4,5で示されるように、外観が略円柱状のタンク本体部42と、本体筒係合部43から形成されている。
【0039】
タンク本体部42は、図5で示されるように、内側部分が空洞化されて内部空間45が形成されている。このとき、タンク本体部42の後方部分46は中心部分から後方に向かうにつれて内径及び外径が小さくなっている。またタンク本体部42の前方部分47では、中心部分から前方端まで略同じ内径及び略同じ外径で延びている。
【0040】
このとき、図4で示されるように、タンク本体部42の前方端(図4,5の下方端)には円形板状の底板部48が設けられている。このとき、底板部48はタンク本体部42の前方を塞ぐように設けられており、図5で示されるように、底板部48の天面である内側面48aと底板部48の底面である外側面48bとは、タンク本体部42の長手方向に略直交する面となっている。
【0041】
そして、図4,5で示されるように、この底板部48の中心部分には外部とタンク本体部42の内部空間45とを連通するインキ供給孔49が形成されている。このインキ供給孔49は、底板部48の外側面48bから内側面48aまでを貫通する貫通孔であり、断面形状が円形で貫通方向に延びている。そして、外側面48b及び内側面48aに設けられる開口の形状もまた円形となっている。ここで、底板部48の外側面48bに形成される開口49aの径は、特に限定されるものではないが、2.0mm〜7.0mmが望ましく、さらに好適には2.5mm〜3.0mmであることが望ましい。
【0042】
また底板部48の外側面48bでは、底板部48の外側面48bに形成されるインキ供給孔49の開口を取り囲むように中継芯係合部50が設けられている。中継芯係合部50は、底板部48の外側面48bから略垂直下方へ突出する環状立壁となっている。この中継芯係合部50は、インキ供給孔49の開口の縁部分よりやや外側に離れた位置に設けられている。
【0043】
本体筒係合部43は、図5に示されるように、タンク本体部42の長手方向の中心部分近傍を取り囲むように位置する筒状部分43aと、当該筒状部分43aの内周面の前端部分(図5の下端部分)とタンク本体部42の外周面を連結する連結部43bによって形成されている。
ここで筒状部分43aの内周面は、タンク本体部42の外周面から外側にやや離れた位置にある。そして、筒状部分43aの内周面の前端部分とタンク本体部42の外周面の間には連結部43bが位置している。このとき連結部43bは、筒状部分43aの内周面の前端部分、及びタンク本体部42の外周面の一部のそれぞれと一体となっており、これらと隙間なく連続している。したがって、筒状部分43aの内周面とタンク本体部42の外周面との間には、前端が閉塞されて後端が開放された環状溝51が形成されている。
また、筒状部分43aの外周面にはインキタンク側螺旋溝43cが形成されている。
【0044】
ペン先6は、公知のペン先と同様であり繊維束の熱融着加工体、繊維束の樹脂加工体、フェルトの樹脂加工体等の適宜な繊維束を接合した素材で形成され、毛細管現象により中綿4からインキ7を吸い込む作用をするものである。
【0045】
次に、本実施形態の塗布具1の組み立て構造について、図1を参照しつつ説明する。
本体筒2の先端部分28の前側端部にペン先6が取り付けられている。そして、先端部分28の内部空間30にはペン先6の後側に中綿4が設置されている。このとき、中綿4は、PP(ポリプロピレン)等の適宜な材料で形成された筒体(図示せず)内に詰め込まれた状態で、本体筒2内に設置されている。さらにこのとき、中綿4の前端とペン先6の後端が接触している。
【0046】
そして先端部分28の内部空間30には、中継芯3が挿通されている。このとき、中継芯3は突出部11が前方、土台部12が後方となるように挿通されている。そして、突出部11の突出部本体32及び2つの押圧片33の略全ての部分は中綿4に挿し込まれている。即ち、突出部本体32及び2つの押圧片33の前後方向の前端から後端付近までの部分が中綿4に挿し込まれている。さらに詳細には、中継芯3は中綿4の後方側から挿し込まれており、突出部11の突出部本体32及び2つの押圧片33は、中綿4を後方から前方へ(図13における上方から下方へ)押圧している。
【0047】
つまり、先端部分28の内部空間30において、中継芯3の土台部12の前端面25よりやや前方の部分から、内部空間30の前端近傍の部分までが中綿配置部8となっている。
【0048】
このとき、突出部11の連通孔13の開口は、略全面に亘って中綿4で覆われている。そして、図6で示されるように、中綿4の一部が連通孔13から突出部11の内部空間20(中空部分21)に入り込んでいる。即ち、突出部11の内部空間20の前端近傍(図6における下端近傍)には中綿4の一部が配されている。換言すると、連通孔13の開口面より後方(図6における上方)に位置する部分に中綿4の一部が配されると共に、連通孔13の開口が中綿4によって塞がれている。
【0049】
ここで、中継芯3の土台部12の外径(外筒部35の外径)と、本体筒2の先端部分28の内径は略同じであるため、本体筒2の先端部分28に中継芯3が嵌めこまれて固定される。
【0050】
また本体筒2の先端部分28には、内部空間45にインキ7が充填されたインキタンク部5が中継芯3の後方側から取付けられている。このとき、インキタンク部5の外周に形成されたインキタンク側螺旋溝43cと、本体筒2の先端部分28の内周面に形成された本体側螺旋溝28eとが螺合しており、インキタンク部5が本体筒2に固定されている。
またこのとき、図7で示されるように、内筒部36の後方端部が環状立壁である中継芯係合部50の内側に挿入されている。このとき、内筒部36の外径と中継芯係合部50の内径が略同じであるため、中継芯係合部50に内筒部36の後方端部が嵌めこまれて固定される。そして、図1で示されるように、インキ供給孔49の外側に位置する開口49aと、内筒部36に形成された開口36bとが接触している。このことにより、インキ供給孔49と内部空間20が接続され、これらがあたかも一体の貫通孔のようになる。
【0051】
さらに、インキタンク部5の後方から本体筒2の後端部分29が取付けられている。詳しくは、インキタンク部5に形成された環状溝51に、本体筒2の後端部分29の前方端部を挿入している状態になっている。
【0052】
以上で本実施形態の塗布具1の組み立て構造についての説明を終了する。
【0053】
以下さらに図8,9を参照しながら本実施形態の塗布具1の作用について説明する。
筆記のためにペン先6を下側に向けると、図8(a)に示されるように、インキ7が重力によりインキタンク部5の内部空間45から中綿配置部8側へ移動する。このときインキ7は、インキ供給孔49を通過し、中継芯3の内部空間20の下方部分まで移動する。そして、突出部11の下端近傍まで移動したインキ7は、自身の重力並びに中綿4の毛細管力よって下方側へ引かれる。このことにより、インキ7が連通孔13から放出されて、中綿配置部8に供給される。つまり、中継芯3の内部空間20がインキ7を供給するときのインキ流通路となる。
【0054】
ここで本実施形態では、押圧片33によって中綿4を上方から押圧している。そのことにより、中綿4の下方部分に比較的空隙率が低下した中密度部53が形成される。つまり、中綿4を上方から押圧片33等で押圧することより、押圧された中綿4の一部が下方に押し寄せられて集積する。そのことにより、中綿4には、比較的空隙率が高く繊維密度の低い低密度部54が上方部分に形成され、比較的空隙率が低く繊維密度の高い中密度部53が下方部分に形成される。そしてペン先6は、中綿4の中密度部53より繊維密度が高い高密度部となっている。
つまり、本実施形態においては、中綿4の上方部分と下方部分に連続する繊維密度の異なる部分が形成され、下方に向かって繊維密度が高くなっている。そして、中綿4の後端からペン先6の前端に向かって低密度部54、中密度部53、高密度部(ペン先6)が連続している。なお本実施形態においては、図8(a)で示されるように、中綿4の前端から押圧片の下端付近までが中密度部53となっており、押圧片33の下端付近から後方の部分が低密度部54となっている。
このことにより、インキ7をペン先6へ安定して供給することができる。例えば、インキ7が自身の重力だけでは連通孔13の開口まで到達しないようなインキであっても、インキ7を中継芯3から中綿4へと引き込み、中綿4からペン先6へ移動させることができる。
【0055】
このとき、連通孔13から外気(微細な量の空気)がインキタンク部5の内部空間45に導入される。そして、内部空間45内でインキ7と外気の交換が行われ、インキ7が連通孔13から勢いよく中綿配置部8へ供給される。
即ち、本実施形態の塗布具1は、連通孔13から外気を導入し、且つ連通孔13からインキ7を放出している。即ち、本実施形態の中継芯3は、連通管たる突出部11を1つのみ有し、1つのみの突出部11が外気導入用の管とインキ放出用の管を兼ねる構成となっている。そして、この突出部11では、外気の導入とインキの放出が同時に実施される構成となっている。なお、連通孔13の径や面積の大きさを上記した望ましい大きさにすることにより、インキ7の流速をより好ましい速さにすることができる。そのことにより、中綿配置部8へのインキ7の供給をより安定させることができる。
【0056】
ここで、本実施形態では、中継芯3が押圧片33を備えた構成となっており、上記したように、インキ7を中継芯3から中綿4へ強く引き込むことが可能な構成となっている。このため、本実施形態では、突出部11が1つのみの構成の構成であってもインキ7を安定して供給することができる。即ち、本実施形態では、2つ以上の突出部を設けたり、径の大きな突出部を設けなくても、1つのみの突出部11でインキ7を十分に供給可能な構成となっている。このことにより、本実施形態では、2つ以上の突出部を設けたり、径の大きな突出部を形成する必要がなく、中継芯3の設計の自由度が高いという利点がある。
【0057】
そして、図8(a)で示される状態からインキ7が中綿配置部8へ供給され続けることにより、図8(b)に示されるように、中綿4にインキ7が含浸されていく。なお、このとき連通孔13と中綿4は接触しているので、連通孔13近傍に到達したインキ7は中綿4の毛細管力によって引っ張られる。そのため、インキ7の表面張力等により連通孔13近傍でインキ7の流れが滞るということがない。
【0058】
そしてインキ7が中綿4に含浸されていくと、中綿配置部8のインキ7の水位が上がっていく(水位の境界線がインキタンク部5側へ近づいていく)。上がっていく中綿配置部8のインキ7の水位は、図8(c)で示されるように、やがて連通孔13の高さ(位置)に到達する。
【0059】
このように中綿配置部8のインキ7の水位が上がっていくと、図8(c)で示されるように、連通孔13の位置までインキ7で満たされる。そのことにより、連通孔13が含浸されたインキ7によって液シール状態となって実質的に閉塞される。そして、インキタンク部5の内部空間45に外気を導入することができなくなり、中綿配置部8へのインキ7の供給が停止する。このとき、中綿4は前側(図8,9における下側)がインキ7に十分に含浸された状態となり、後側(図8,9における上側)はインキ7に含浸されない状態となる。なお、通常、この中綿4の後側はインキ7に含浸されないが、周囲の温度が上昇した場合や、塗布具1の姿勢が傾いた場合等においてはその限りでは無い。
【0060】
そして、図9(a)のような中綿4の前側にインキ7が含浸された状態で筆記を続けると、やがて中綿4に含浸されたインキ7が減少し、連通孔13の液シール状態が解除される。すると、図9(b)で示されるように、再びインキタンク3内に外気が取り込まれるので、中綿配置部8へのインキ7の供給が開始される。そして、図9(c)のように、連通孔13が含浸されたインキ7によって再び液シール状態となるまで、中綿配置部8へのインキ7の供給が継続される。このように、インキ7が筆記により減少するたびに中綿配置部8及び中綿4にインキ7が供給される。そして、中綿4に供給されたインキ7は中密度部53から低密度部54へは流れにくくなっている。つまり、中綿4に供給されたインキ7がペン先6側へ向かって流れ易いため、ペン先6に安定してインキ7を供給することができる。
【0061】
上記した実施形態では、塗布具1がマーカーである例を示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明は万年筆やボールペン、修正液等の塗布具であってもよい。したがって、本体筒2の原料及び形状は適宜変更可能である。
また、ペン先6も、繊維束の樹脂加工体、繊維束の熱融着加工体、フェルト加工体、パイプ状ペン体、先端にスリットを有する万年筆型板状ペン体、毛筆ペン体、合成樹脂の多孔質気泡体、ボールペンチップ、軸方向のインキ誘導路を有する合成樹脂の押出成形体等意4からによって形成されたものであり、先端部分が開口する原料及び形状は適宜変更してよい。
さらにまた、中綿4も上記したようにインキ7を含浸可能な連続気孔を有している部材であればよく、その形状も略円柱型や略直方体型に限らない。原料及び形状は適宜変更可能である。
【0062】
また上記した第1の実施形態では、中継芯3の突出部本体32が中綿4と接触している形態を説明したが、中継芯3と中綿4は必ずしも接触していなくてもよい。しかしながら、中継芯3(の連通孔)と中綿4が接触していないと、中継芯3の内径が小さい場合にインキ7に働く表面張力が重力を上回ってしまい、インキ7が中空部分21内に留まろうとするため、インキ7の中綿配置部8への供給時にインキ7の時間当たりの流出量が低減してしまうおそれがある。それに対して中継芯3と中綿4が接触していると、中綿4の毛細管力によってインキ7が引き寄せられてインキ7が円滑に流れるため、中継芯3の内径を小さく設計してもインキ7の時間当たりの流出量が安定する。したがって、このように中継芯3と中綿4が接触していることが好ましい。
【0063】
また上記した第1の実施形態では、連通孔13の開口の全域を中綿4が覆うように配置したが、必ずしもこれに限るものではない。連通孔13の開口は中綿4で覆われていなくてもよく、連通孔13の開口の一部分のみが中綿4で覆われている構成であってもよい。しかしながら、連通孔13の開口の全域を中綿4が覆うように配置すると、突出部11の前端近傍に位置するインキ7をより確実に中綿4側へ引っ張ることができるため望ましい。
【0064】
そして上記した第1の実施形態では、押圧片33は平板状であって突出部本体32の側面と土台部12の前端面25に接触する構成であったが、本発明の中継芯はこれに限るものではない。例えば、図10で示される第2の実施形態のように、突出部本体32に接触せずに土台部12から前方に突出する押圧片61を備えた中継芯60を採用してもよい。
また、図11で示される第3の実施形態のように、押圧片71が土台部12に接触せずに突出部本体32から屈曲して延びている中継芯70を採用してもよい。
また本発明の押圧片の形状は特に限定されるものではなく、第2の実施形態で示されるような丸棒状の押圧片であってもよく(図10参照)、第3の実施形成で示されるような鉤状(L字板状)の押圧片であってもよい(図11参照)。したがって、押圧片は、断面形状が四角形のような多角形状で延びる押圧片であってもよく、断面形状が円形で延びる押圧片であってもよい。また、一部が屈曲して延びる押圧片であってもよい。
即ち本発明の押圧片は、中綿を押圧することによって、中継芯のインク排出口(連通孔13)近傍に位置する中綿の少なくとも一部又は全部を繊維密度が高い状態することができればよい。
【0065】
上記した各実施形態の押圧片はいずれも中継芯に2つ設けるものであったが、押圧片の数は1つでもよく、3つ以上でも構わない。
【0066】
上記した各実施形態では、中継芯の突出部と中綿の上端面とがなす角が略90度となるように接触させているが、中継芯の配置角度はこれに限るものではない。中継芯の突出部と中綿の上端面とがなす角は特に限定されるものではないが、70度以上90度以下となるように中継芯の突出部と中綿の上端面を接触させることが好ましい。
【0067】
上記した各実施形態で使用されるインキは特に限定されるものではないが、粘度が6.7mPa・sより大きく、且つ固体表面と接触したときの接触角が53.8度より小さく、さらに表面張力が33.5mN/mより小さい特性を持つインキを好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 塗布具
3,60,70 中継芯(流路形成部)
4 中綿(塗布液吸蔵体)
5 インキタンク部(塗布液収容部)
6 ペン先(塗布体)
7 インキ(塗布液)
11 突出部
12 土台部
13 連通孔
21 中空部分
20 内部空間
33,61,71 押圧片(押圧部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵された塗布液をペン先等の塗布体に供給する塗布具に関するものであり、より詳細には、塗布体への塗布液の供給量を安定させるための塗布液供給手段を有する塗布具に関するものである。
なお、本明細書における塗布具とは、フェルトペン、万年筆、ラインマーカー、白板マーカー等の筆記具だけに限らず、例えば、修正ペンのような液状のものを紙面や白板等の任意の対象物に塗り付ける用具を含むものの総称として使用している。
【背景技術】
【0002】
ペン先(塗布体)に塗布液を安定して供給するための塗布液供給手段として、ペン先とインキタンクとの間にインキ(塗布液)を含浸することのできる中綿(塗布液吸蔵体)を設ける技術が知られている。この技術によると余剰なインキを中綿が吸収するので、ペン先にインキが供給されすぎることがない。またペン先でインキが不足した場合に、中綿に吸収されたインキがペン先に供給されるため、インキの供給不足を防ぐことができる。そのことにより、ペン先にインキを安定して供給することができる。
【0003】
この技術を用いた塗布具として、直液式筆記具のインキタンクとインキ吸蔵体(塗布液吸蔵体)の間を接続する連通管を設け、連通管を介してインキタンクからインキ吸蔵体へインキを供給する塗布具が広く知られている。このような塗布具には、例えば、特許文献1に開示されている直液式筆記具がある。
ここで直液式筆記具とは、所謂無操作型筆記具といわれる筆記具である。無操作型筆記具とは、ペン先やペン軸をノックするといったインキ供給のための操作をすることなく、ペン先にインキを供給することができる筆記具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−212884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されている発明のような、連通管を介してインキ吸蔵体へインキを供給する塗布具では、使用するインキによっては連通管を太くしなければならない場合があった。
【0006】
具体的に説明すると、例えば粘度の高いインキを使用する場合、連通管内にインキが詰まってしまい、連通管内を流れるインキがインキ吸蔵体まで到達しないことがあった。即ち、インキの粘度によっては、インキの自重による力だけでは、インキをインキ吸蔵体まで流すことができない場合があった。このような場合では、連通管の径を太くしてインキを流れ易くする必要がある。しかしながら、連通管の径を太くすると、太い連通管を設置するために本体の径を太くしなければならないという設計上の制約があった。
【0007】
また粘度の高いインキを使用した場合、インキ吸蔵体にインキが染み込みにくく、インキ吸蔵体からペン先へのインキの流れが安定しないという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、無操作型の塗布具において、連通管の径が細い場合であっても様々な塗布液を使用可能であって、塗布液をインキ吸蔵体からペン先へ安定して供給可能な塗布具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、充填した塗布液が内部流動可能な塗布液収容部と、塗布液を塗布するための塗布体とを有し、塗布液収容部と塗布体の間に塗布液を含浸する塗布液吸蔵体を備え、塗布液収容部と塗布液吸蔵体の間に塗布液を流通可能な流路を有する流路形成部が設けられた塗布具であって、前記流路形成部は少なくとも1つの突出部と、押圧部とを有するものであり、突出部は塗布体側に向かって突出し、内部に中空部分が形成され、中空部分と外部とを連通する連通孔が設けられており、前記押圧部の少なくとも一部は塗布液吸蔵体に上方から接触していることを特徴とする塗布具である。
【0010】
請求項1に記載の発明では、流路形成部が押圧部を有し、押圧部の少なくとも一部が塗布液吸蔵体に上方から接触している。このように塗布液吸蔵体を上方から押圧することにより、塗布液吸蔵体の毛細管力を高めることができる。そのため、インキの粘度が高い場合や、連通管の孔径が小さい場合のようにインキが自重のみでは下方へ移動しない場合であっても、毛細管力によってインキを塗布液吸蔵体へと引き込むことができる。即ち、径の小さな連通管で多種多様な塗布液を採用することができる。
また塗布液吸蔵体の上方部分が押圧部に押圧されると、塗布液吸蔵体の下端近傍に空隙率が低下した部分が形成される。つまり、塗布液吸蔵体の下端近傍は比較的空隙率が低い高密度部分となり、塗布液吸蔵体の上端近傍は、下端近傍に比べて空隙率が高い低密度部分となる。即ち、塗布液吸蔵体の上端部分と下端部分の間で密度差が形成され、塗布液吸蔵体の上端近傍の毛細管力に比べて、塗布液吸蔵体の下端近傍の毛細管力が強くなった状態となる。ここで、塗布液は毛細管力の小さい部分から大きい部分へ流れるので、塗布液吸蔵体に引き込んだインキをさらに下方へと確実に移動させることができる。つまり、ペン先へのインキの供給を安定させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の塗布具である。
【0012】
本発明では、前記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置している。そのため、押圧部が連通孔と塗布液吸蔵体との接触を阻害することがないので、連通孔と塗布液吸蔵体とを確実に接触させることができる。
具体的に説明すると、押圧部の下端が連通孔の下方にある場合や、押圧部の下端と連通孔との高さ方向の位置が同じ場合、押圧部が突出部から離れる方向へ塗布液吸蔵体を押圧することにより、突出部に形成された連通孔と塗布液吸蔵体の接触が妨げられるおそれがある。しかしながら、本発明では押圧部が連通孔の上方にあるため、突出部の下方側に位置する塗布液吸蔵体と連通孔との接触を阻害することがない。
このように連通管たる突出部が塗布液吸蔵体に接触すると、突出部に設けた前記孔の開口を塗布液吸蔵体が覆うように配置できる。そのことにより、塗布液吸蔵体の毛細管力によって塗布液が引き寄せられ、連通管からの塗布液の時間当たりの流出量が安定する。即ち、連通管の先端で塗布液の表面張力により塗布液の流れが滞るという事態が発生しない。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記押圧部は、前記突出部の側面から外方へ向かって略垂直に突出する平板状の突起であり、突出部の突出方向の基端部分から先端部分の近傍まで延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具である。
【0014】
本発明によると、強度の高い押圧部を有し、製造が容易な突出部(連通管)を有する塗布具を提供することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、塗布液吸蔵体の一部が前記流路形成部の内部に配されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布具である。
【0016】
本発明によると、流路形成部の内部に塗布液吸蔵体の一部が配されている。このことにより、インキの粘度が高い場合や、突出部の径が小さい場合のようにインキが自重のみで下方の放出口まで移動しない場合であっても、流路形成部の内部に位置する塗布液吸蔵体にインキが接触すれば、塗布液吸蔵体の毛細管力によってインキをより下方へ移動させることができる。即ち、確実にインキを塗布液吸蔵体側へ移動させることができ、インキの供給を安定させることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塗布具である。
【0018】
本発明によると、前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であるため、塗布液収容部を交換するたけで塗布液の補充が可能である。したがって、塗布具本体内の塗布液収容部にスポイトのような別部材を使用して塗布液を補充する場合に比べ、塗布液の補充作業が容易である。
【0019】
請求項6に記載の発明は、塗布液収容部は、下方に外部と内部空間とを連通する収容部側貫通孔が設けられており、前記流路形成部は、土台部と突出部から形成され、前記土台部には筒状部が形成されており、筒状部は前記突出部の中空部分と連通するものであって、前記流路形成部と塗布液収容部を取付けたとき、収容部側貫通孔と筒状部とが連通することを特徴とする請求項5に記載の塗布具である。
【0020】
請求項6の構成によると、前記流路形成部と塗布液収容部の着脱がより容易となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、中綿の毛細管力を強くすることができるので、連通管の孔径が小さい場合のようにインキが自重のみでは下方へ移動しない場合であっても、毛細管力によってインキを塗布液吸蔵体へと引き込むことができる。即ち、径の小さな連通管で多種多様な塗布液を採用することができるという効果がある。
また本発明によると、中綿の下端近傍の毛細管力を上端近傍の毛細管力より強くすることができる。このことにより、塗布液吸蔵体に引き込んだインキをさらに下方へと確実に移動させることができるので、ペン先へのインキの供給を安定させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の塗布具を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態で使用する中継芯を天地逆にして示す斜視図である。
【図3】図2の中継芯のA−A断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態で使用するインキタンク部を示す斜視図である。
【図5】図4のインキタンク部のA−A断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の塗布具を示す断面図であり、内部にインキがない状態を示す。
【図7】中継芯を一部破断させて、図1の中継芯とインキタンク部を接続するときの様子を示す説明図であり、(a)〜(b)の順に接続する。
【図8】第1の実施形態の塗布具において中綿配置部にインキが満たされていく様子を示す説明図であり、(a)〜(c)の順にインキが満たされていく。
【図9】第1の実施形態の塗布具において中綿配置部に充填されたインキが減少し、再びインキタンクからインキが充填される際のインキの液位(水位)を示す説明図であり、(a)は中綿配置部にインキが充填されている様子を示し、(b)は中綿配置部のインキが減少した状態を示し、(c)は中綿配置部にインキが再び充填されている様子を示す。
【図10】本発明の第2の実施形態の中継芯を示す斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施形態の中継芯を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下さらに、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において「前後」の関係はペン先側を前側、インキタンク側を後側として説明する。
【0024】
本発明の第1の実施形態の塗布具1は具体的には白板用マーカーであり、図1に示されるように、本体筒2、中継芯3(流路形成部)、中綿4(塗布液吸蔵体)、インキタンク部5(塗布液収容部)、ペン先6(塗布体)を有している。そして、本体筒2の内側に設けられた中空部分の後側にインキ7を貯留可能なインキタンク部5が配されており、中空部分の前側には中綿配置部8が形成されている。そして、本体筒2の中空部分の前後は中継芯3によって仕切られている。
【0025】
本体筒2はポリプロピレン等の樹脂やニオブ等の金属といった適宜な材料によって形成された筒体である。この本体筒2は先端部分28と後端部分29から形成されている。先端部分28の外観は、前側に向かうにつれて先細りする形状となっている。具体的には、後方側から前方側へ向かって、径の大きな筒状部分28a、径の小さな筒状部分28b、テーパ状の部分28c、最も径の小さな筒状部分28dの4つの部分が連続している。このとき、径の大きな筒状部分28aと径の小さな筒状部分28bは、段差を介して連続している。また、先端部分28の内部には長手方向に連通している内部空間30があり、この内部空間30も前側に向かうにつれて先細りになっている。また、先端部分28の内周面の後方端部には本体側螺旋溝28eが形成されている。
後端部分29は、一方に開放口が設けられた略有底円筒状の蓋体となっている。
【0026】
中綿4は、公知の中綿であって、インキ7を含浸可能な連続気孔を有している部材である。より詳細にはアクリル繊維等の適宜な繊維で形成されており、内部にインキ7を含浸することができる。
【0027】
中継芯3は、本実施形態の特徴的構成部材であり、以下詳細に説明する。
中継芯3は、ポリプロピレンやポリアセタール等の合成樹脂や金属等の適宜な材料によって形成されるものである。また図2に示されるように、中継芯3は突出部11と土台部12から形成されている。
【0028】
突出部11は略円筒状の突出部本体32と、長方形平板状の押圧片33(押圧部)から形成されている。このとき、突出部本体32は土台部12の前端面25(図2における上端面)から前方(図2の上方)に向かって略垂直に突出しており、突出部本体32と土台部12の中心軸は同じとなるように配置されている。つまり、土台部12の前端面25の中心部分近傍から突出部11が突出している。
【0029】
また押圧片33は、突出部本体32の側面の円周方向に略180度ずれた2箇所にそれぞれ設けられており、突出部本体32の側面から外方へ突出している。ここで、2つの押圧片33は、いずれも突出部本体32の長手方向(突出方向)に対して略垂直な方向に突出している。したがって、この2つの押圧片33は、互いに離れる方向へ突出している。また押圧片33は、突出部本体32の長手方向に沿って延びている。具体的には、押圧片33の後端部分は土台部12の前端面25と接触しており、押圧片33の前端部分は突出部本体32の前端(突出方向先端であり図2の上端)よりやや後側(図2の下側)に位置している。つまり、2つの押圧片33はいずれも土台部12の前端面25(図2の上端面)から前方(図2の上方)に向かって略垂直に突出しており、長手方向の長さが突出部本体32よりもやや短くなっている。
なお押圧片33の幅L1、即ち、押圧片33の突出方向の長さL1は特に限定されるものではないが、2.0mm〜4.5mmが望ましく、さらに好適には3.0mm〜4.0mmであることが望ましい。
また押圧片33の厚みL2、即ち、押圧片33の長手方向(延び方向)及び突出方向に対して略垂直な方向の長さL2は限定されるものではないが、1.0mm〜3.0mmが望ましく、さらに好適には1.5mm〜2.0mmであることが望ましい。
【0030】
ところで、突出部11にはその前端部分に連通孔13が設けられている。
【0031】
連通孔13は突出部11の突出方向先端にある円形の面24(図2における上面であり、突出部11が土台部12と接触している面に対向する位置にある面)に設けられている。そして、連通孔13は開口形状が円形であって、開口の中心が突出部11の中心軸と重なっている。この連通孔13の径の大きさは特に限定されるものではないが、2.0mm〜7.0mmであることが望ましく、より好適には2.0mm〜5.0mmであることが望ましく、さらに好適には2.5mm〜3.0mmであることが望ましい。そして、連通孔13の開口の面積は3.14mm2(平方ミリメートル)〜38.47mm2(平方ミリメートル)であることが望ましく、さらに好適には4.9mm2(平方ミリメートル)〜7.07mm2(平方ミリメートル)であることが望ましい。
【0032】
土台部12は、図2,3で示されるように、外筒部35と、外筒部35の内側に位置する内筒部36から形成されている。外筒部35は、図3で示されるように、一方に開放口39が設けられた略有底円筒状となっている。また内筒部36は略円筒状となっている。そして、内筒部36は外筒部35よりも径が小さく、外筒部35の中心部分に位置しており、内筒部36と外筒部35の中心軸は同一となっている。また、この内筒部36及び外筒部35は、いずれも前後方向(図3の上下方向)に延びる筒体となっている。
この内筒部36の前方端部は、図3に示されるように、外筒部35の内側底面40と連続しており、後方端部は、外筒部35の後端(図3の下端)より後方(図3の下方)に突出している。そして、内筒部36は前後方向(図3の上下方向)の長さが外筒部35より長くなっている。
また内筒部36の後方端部には、内筒部36の外周面が後方に向かうにつれて狭径となったテーパ部36aが形成されている。
【0033】
次に中継芯3の内部構造について説明する。
中継芯3の内部には、図3で示されるように、突出部11の内側に中空部分21が設けられており、土台部12の内側に中空部分22,41が設けられている。
【0034】
突出部11では、突出部本体32の内側に中空部分21が設けられている。中空部分21は断面形状が円形で延びる空間であり、具体的には突出部本体32の土台部12側の端部から連通孔13に向かって、突出部本体32の中心部分を長手方向と平行に延びるように設けられ、連通孔13と連続している。そして、連通孔13と中空部分21は断面の径が同じ大きさであり、開口の中心が同一の位置となっている。つまり、突出部本体32は中空部分21と連通孔13によって中心部分が貫通されて略円筒状になっている。したがって、中空部分21は連通孔13を介して外部と連続している。
【0035】
土台部12の内側には、内筒部36の内側に設けられた中空部分22と、内筒部36の外周面と外筒部35の内周面の間に設けられた環状の中空部分41が形成されている。
内筒部36の内側に設けられた中空部分22は、断面形状が円形で延び、内筒部36の長手方向に沿って延びる空間である。
【0036】
ここで、突出部本体32の中空部分21と内筒部36の中空部分22は連結孔23を介して連続している。この連結孔23は、土台部12の開放口39に対向する位置にある底板部を内部から外部へ貫通する貫通孔であり、断面形状が円形で貫通方向に延びている。
【0037】
このとき、連結孔23と突出部本体32の中空部分21は、いずれも断面形状が円形で延びる孔であり、断面の径、孔の延び方向、中心軸が同一となっている。そして、連結孔23と突出部本体32の中空部分21が重なり合って1つの貫通孔を形成している。したがって、突出部本体32の中空部分21の内周面と連結孔23の内周面は同一面となっている。
さらに、連結孔23と内筒部36の中空部分22もまた、いずれも断面形状が円形で延びる孔であり、断面の径、孔の延び方向、中心軸が同一となっている。そして、連結孔23と内筒部36の中空部分22が重なり合って同一の貫通孔を形成している。したがって、内筒部36の中空部分22の内周面と連結孔23の内周面は同一面となっている。
即ち、中継芯3の内部には、突出部本体32の中空部分21、連結孔23、内筒部36の中空部分22が一体となって形成される内部空間20が形成されている。
この内部空間20は、内筒部36に形成された中空部分22の後端側の開口36bから、突出部本体32に形成された連通孔13の開口までを貫通する貫通孔となっている。そして内部空間20は、断面形状が円形であり、断面の径が略同一で中継芯3の長手方向に沿って前後に延びている。このとき、内筒部36に形成された中空部分22の後端側の開口36bと、突出部本体32に形成された連通孔13の開口とは対向する位置にあり、略同一の形状となっている。
【0038】
インキタンク部5は、図4,5で示されるように、外観が略円柱状のタンク本体部42と、本体筒係合部43から形成されている。
【0039】
タンク本体部42は、図5で示されるように、内側部分が空洞化されて内部空間45が形成されている。このとき、タンク本体部42の後方部分46は中心部分から後方に向かうにつれて内径及び外径が小さくなっている。またタンク本体部42の前方部分47では、中心部分から前方端まで略同じ内径及び略同じ外径で延びている。
【0040】
このとき、図4で示されるように、タンク本体部42の前方端(図4,5の下方端)には円形板状の底板部48が設けられている。このとき、底板部48はタンク本体部42の前方を塞ぐように設けられており、図5で示されるように、底板部48の天面である内側面48aと底板部48の底面である外側面48bとは、タンク本体部42の長手方向に略直交する面となっている。
【0041】
そして、図4,5で示されるように、この底板部48の中心部分には外部とタンク本体部42の内部空間45とを連通するインキ供給孔49が形成されている。このインキ供給孔49は、底板部48の外側面48bから内側面48aまでを貫通する貫通孔であり、断面形状が円形で貫通方向に延びている。そして、外側面48b及び内側面48aに設けられる開口の形状もまた円形となっている。ここで、底板部48の外側面48bに形成される開口49aの径は、特に限定されるものではないが、2.0mm〜7.0mmが望ましく、さらに好適には2.5mm〜3.0mmであることが望ましい。
【0042】
また底板部48の外側面48bでは、底板部48の外側面48bに形成されるインキ供給孔49の開口を取り囲むように中継芯係合部50が設けられている。中継芯係合部50は、底板部48の外側面48bから略垂直下方へ突出する環状立壁となっている。この中継芯係合部50は、インキ供給孔49の開口の縁部分よりやや外側に離れた位置に設けられている。
【0043】
本体筒係合部43は、図5に示されるように、タンク本体部42の長手方向の中心部分近傍を取り囲むように位置する筒状部分43aと、当該筒状部分43aの内周面の前端部分(図5の下端部分)とタンク本体部42の外周面を連結する連結部43bによって形成されている。
ここで筒状部分43aの内周面は、タンク本体部42の外周面から外側にやや離れた位置にある。そして、筒状部分43aの内周面の前端部分とタンク本体部42の外周面の間には連結部43bが位置している。このとき連結部43bは、筒状部分43aの内周面の前端部分、及びタンク本体部42の外周面の一部のそれぞれと一体となっており、これらと隙間なく連続している。したがって、筒状部分43aの内周面とタンク本体部42の外周面との間には、前端が閉塞されて後端が開放された環状溝51が形成されている。
また、筒状部分43aの外周面にはインキタンク側螺旋溝43cが形成されている。
【0044】
ペン先6は、公知のペン先と同様であり繊維束の熱融着加工体、繊維束の樹脂加工体、フェルトの樹脂加工体等の適宜な繊維束を接合した素材で形成され、毛細管現象により中綿4からインキ7を吸い込む作用をするものである。
【0045】
次に、本実施形態の塗布具1の組み立て構造について、図1を参照しつつ説明する。
本体筒2の先端部分28の前側端部にペン先6が取り付けられている。そして、先端部分28の内部空間30にはペン先6の後側に中綿4が設置されている。このとき、中綿4は、PP(ポリプロピレン)等の適宜な材料で形成された筒体(図示せず)内に詰め込まれた状態で、本体筒2内に設置されている。さらにこのとき、中綿4の前端とペン先6の後端が接触している。
【0046】
そして先端部分28の内部空間30には、中継芯3が挿通されている。このとき、中継芯3は突出部11が前方、土台部12が後方となるように挿通されている。そして、突出部11の突出部本体32及び2つの押圧片33の略全ての部分は中綿4に挿し込まれている。即ち、突出部本体32及び2つの押圧片33の前後方向の前端から後端付近までの部分が中綿4に挿し込まれている。さらに詳細には、中継芯3は中綿4の後方側から挿し込まれており、突出部11の突出部本体32及び2つの押圧片33は、中綿4を後方から前方へ(図13における上方から下方へ)押圧している。
【0047】
つまり、先端部分28の内部空間30において、中継芯3の土台部12の前端面25よりやや前方の部分から、内部空間30の前端近傍の部分までが中綿配置部8となっている。
【0048】
このとき、突出部11の連通孔13の開口は、略全面に亘って中綿4で覆われている。そして、図6で示されるように、中綿4の一部が連通孔13から突出部11の内部空間20(中空部分21)に入り込んでいる。即ち、突出部11の内部空間20の前端近傍(図6における下端近傍)には中綿4の一部が配されている。換言すると、連通孔13の開口面より後方(図6における上方)に位置する部分に中綿4の一部が配されると共に、連通孔13の開口が中綿4によって塞がれている。
【0049】
ここで、中継芯3の土台部12の外径(外筒部35の外径)と、本体筒2の先端部分28の内径は略同じであるため、本体筒2の先端部分28に中継芯3が嵌めこまれて固定される。
【0050】
また本体筒2の先端部分28には、内部空間45にインキ7が充填されたインキタンク部5が中継芯3の後方側から取付けられている。このとき、インキタンク部5の外周に形成されたインキタンク側螺旋溝43cと、本体筒2の先端部分28の内周面に形成された本体側螺旋溝28eとが螺合しており、インキタンク部5が本体筒2に固定されている。
またこのとき、図7で示されるように、内筒部36の後方端部が環状立壁である中継芯係合部50の内側に挿入されている。このとき、内筒部36の外径と中継芯係合部50の内径が略同じであるため、中継芯係合部50に内筒部36の後方端部が嵌めこまれて固定される。そして、図1で示されるように、インキ供給孔49の外側に位置する開口49aと、内筒部36に形成された開口36bとが接触している。このことにより、インキ供給孔49と内部空間20が接続され、これらがあたかも一体の貫通孔のようになる。
【0051】
さらに、インキタンク部5の後方から本体筒2の後端部分29が取付けられている。詳しくは、インキタンク部5に形成された環状溝51に、本体筒2の後端部分29の前方端部を挿入している状態になっている。
【0052】
以上で本実施形態の塗布具1の組み立て構造についての説明を終了する。
【0053】
以下さらに図8,9を参照しながら本実施形態の塗布具1の作用について説明する。
筆記のためにペン先6を下側に向けると、図8(a)に示されるように、インキ7が重力によりインキタンク部5の内部空間45から中綿配置部8側へ移動する。このときインキ7は、インキ供給孔49を通過し、中継芯3の内部空間20の下方部分まで移動する。そして、突出部11の下端近傍まで移動したインキ7は、自身の重力並びに中綿4の毛細管力よって下方側へ引かれる。このことにより、インキ7が連通孔13から放出されて、中綿配置部8に供給される。つまり、中継芯3の内部空間20がインキ7を供給するときのインキ流通路となる。
【0054】
ここで本実施形態では、押圧片33によって中綿4を上方から押圧している。そのことにより、中綿4の下方部分に比較的空隙率が低下した中密度部53が形成される。つまり、中綿4を上方から押圧片33等で押圧することより、押圧された中綿4の一部が下方に押し寄せられて集積する。そのことにより、中綿4には、比較的空隙率が高く繊維密度の低い低密度部54が上方部分に形成され、比較的空隙率が低く繊維密度の高い中密度部53が下方部分に形成される。そしてペン先6は、中綿4の中密度部53より繊維密度が高い高密度部となっている。
つまり、本実施形態においては、中綿4の上方部分と下方部分に連続する繊維密度の異なる部分が形成され、下方に向かって繊維密度が高くなっている。そして、中綿4の後端からペン先6の前端に向かって低密度部54、中密度部53、高密度部(ペン先6)が連続している。なお本実施形態においては、図8(a)で示されるように、中綿4の前端から押圧片の下端付近までが中密度部53となっており、押圧片33の下端付近から後方の部分が低密度部54となっている。
このことにより、インキ7をペン先6へ安定して供給することができる。例えば、インキ7が自身の重力だけでは連通孔13の開口まで到達しないようなインキであっても、インキ7を中継芯3から中綿4へと引き込み、中綿4からペン先6へ移動させることができる。
【0055】
このとき、連通孔13から外気(微細な量の空気)がインキタンク部5の内部空間45に導入される。そして、内部空間45内でインキ7と外気の交換が行われ、インキ7が連通孔13から勢いよく中綿配置部8へ供給される。
即ち、本実施形態の塗布具1は、連通孔13から外気を導入し、且つ連通孔13からインキ7を放出している。即ち、本実施形態の中継芯3は、連通管たる突出部11を1つのみ有し、1つのみの突出部11が外気導入用の管とインキ放出用の管を兼ねる構成となっている。そして、この突出部11では、外気の導入とインキの放出が同時に実施される構成となっている。なお、連通孔13の径や面積の大きさを上記した望ましい大きさにすることにより、インキ7の流速をより好ましい速さにすることができる。そのことにより、中綿配置部8へのインキ7の供給をより安定させることができる。
【0056】
ここで、本実施形態では、中継芯3が押圧片33を備えた構成となっており、上記したように、インキ7を中継芯3から中綿4へ強く引き込むことが可能な構成となっている。このため、本実施形態では、突出部11が1つのみの構成の構成であってもインキ7を安定して供給することができる。即ち、本実施形態では、2つ以上の突出部を設けたり、径の大きな突出部を設けなくても、1つのみの突出部11でインキ7を十分に供給可能な構成となっている。このことにより、本実施形態では、2つ以上の突出部を設けたり、径の大きな突出部を形成する必要がなく、中継芯3の設計の自由度が高いという利点がある。
【0057】
そして、図8(a)で示される状態からインキ7が中綿配置部8へ供給され続けることにより、図8(b)に示されるように、中綿4にインキ7が含浸されていく。なお、このとき連通孔13と中綿4は接触しているので、連通孔13近傍に到達したインキ7は中綿4の毛細管力によって引っ張られる。そのため、インキ7の表面張力等により連通孔13近傍でインキ7の流れが滞るということがない。
【0058】
そしてインキ7が中綿4に含浸されていくと、中綿配置部8のインキ7の水位が上がっていく(水位の境界線がインキタンク部5側へ近づいていく)。上がっていく中綿配置部8のインキ7の水位は、図8(c)で示されるように、やがて連通孔13の高さ(位置)に到達する。
【0059】
このように中綿配置部8のインキ7の水位が上がっていくと、図8(c)で示されるように、連通孔13の位置までインキ7で満たされる。そのことにより、連通孔13が含浸されたインキ7によって液シール状態となって実質的に閉塞される。そして、インキタンク部5の内部空間45に外気を導入することができなくなり、中綿配置部8へのインキ7の供給が停止する。このとき、中綿4は前側(図8,9における下側)がインキ7に十分に含浸された状態となり、後側(図8,9における上側)はインキ7に含浸されない状態となる。なお、通常、この中綿4の後側はインキ7に含浸されないが、周囲の温度が上昇した場合や、塗布具1の姿勢が傾いた場合等においてはその限りでは無い。
【0060】
そして、図9(a)のような中綿4の前側にインキ7が含浸された状態で筆記を続けると、やがて中綿4に含浸されたインキ7が減少し、連通孔13の液シール状態が解除される。すると、図9(b)で示されるように、再びインキタンク3内に外気が取り込まれるので、中綿配置部8へのインキ7の供給が開始される。そして、図9(c)のように、連通孔13が含浸されたインキ7によって再び液シール状態となるまで、中綿配置部8へのインキ7の供給が継続される。このように、インキ7が筆記により減少するたびに中綿配置部8及び中綿4にインキ7が供給される。そして、中綿4に供給されたインキ7は中密度部53から低密度部54へは流れにくくなっている。つまり、中綿4に供給されたインキ7がペン先6側へ向かって流れ易いため、ペン先6に安定してインキ7を供給することができる。
【0061】
上記した実施形態では、塗布具1がマーカーである例を示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明は万年筆やボールペン、修正液等の塗布具であってもよい。したがって、本体筒2の原料及び形状は適宜変更可能である。
また、ペン先6も、繊維束の樹脂加工体、繊維束の熱融着加工体、フェルト加工体、パイプ状ペン体、先端にスリットを有する万年筆型板状ペン体、毛筆ペン体、合成樹脂の多孔質気泡体、ボールペンチップ、軸方向のインキ誘導路を有する合成樹脂の押出成形体等意4からによって形成されたものであり、先端部分が開口する原料及び形状は適宜変更してよい。
さらにまた、中綿4も上記したようにインキ7を含浸可能な連続気孔を有している部材であればよく、その形状も略円柱型や略直方体型に限らない。原料及び形状は適宜変更可能である。
【0062】
また上記した第1の実施形態では、中継芯3の突出部本体32が中綿4と接触している形態を説明したが、中継芯3と中綿4は必ずしも接触していなくてもよい。しかしながら、中継芯3(の連通孔)と中綿4が接触していないと、中継芯3の内径が小さい場合にインキ7に働く表面張力が重力を上回ってしまい、インキ7が中空部分21内に留まろうとするため、インキ7の中綿配置部8への供給時にインキ7の時間当たりの流出量が低減してしまうおそれがある。それに対して中継芯3と中綿4が接触していると、中綿4の毛細管力によってインキ7が引き寄せられてインキ7が円滑に流れるため、中継芯3の内径を小さく設計してもインキ7の時間当たりの流出量が安定する。したがって、このように中継芯3と中綿4が接触していることが好ましい。
【0063】
また上記した第1の実施形態では、連通孔13の開口の全域を中綿4が覆うように配置したが、必ずしもこれに限るものではない。連通孔13の開口は中綿4で覆われていなくてもよく、連通孔13の開口の一部分のみが中綿4で覆われている構成であってもよい。しかしながら、連通孔13の開口の全域を中綿4が覆うように配置すると、突出部11の前端近傍に位置するインキ7をより確実に中綿4側へ引っ張ることができるため望ましい。
【0064】
そして上記した第1の実施形態では、押圧片33は平板状であって突出部本体32の側面と土台部12の前端面25に接触する構成であったが、本発明の中継芯はこれに限るものではない。例えば、図10で示される第2の実施形態のように、突出部本体32に接触せずに土台部12から前方に突出する押圧片61を備えた中継芯60を採用してもよい。
また、図11で示される第3の実施形態のように、押圧片71が土台部12に接触せずに突出部本体32から屈曲して延びている中継芯70を採用してもよい。
また本発明の押圧片の形状は特に限定されるものではなく、第2の実施形態で示されるような丸棒状の押圧片であってもよく(図10参照)、第3の実施形成で示されるような鉤状(L字板状)の押圧片であってもよい(図11参照)。したがって、押圧片は、断面形状が四角形のような多角形状で延びる押圧片であってもよく、断面形状が円形で延びる押圧片であってもよい。また、一部が屈曲して延びる押圧片であってもよい。
即ち本発明の押圧片は、中綿を押圧することによって、中継芯のインク排出口(連通孔13)近傍に位置する中綿の少なくとも一部又は全部を繊維密度が高い状態することができればよい。
【0065】
上記した各実施形態の押圧片はいずれも中継芯に2つ設けるものであったが、押圧片の数は1つでもよく、3つ以上でも構わない。
【0066】
上記した各実施形態では、中継芯の突出部と中綿の上端面とがなす角が略90度となるように接触させているが、中継芯の配置角度はこれに限るものではない。中継芯の突出部と中綿の上端面とがなす角は特に限定されるものではないが、70度以上90度以下となるように中継芯の突出部と中綿の上端面を接触させることが好ましい。
【0067】
上記した各実施形態で使用されるインキは特に限定されるものではないが、粘度が6.7mPa・sより大きく、且つ固体表面と接触したときの接触角が53.8度より小さく、さらに表面張力が33.5mN/mより小さい特性を持つインキを好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 塗布具
3,60,70 中継芯(流路形成部)
4 中綿(塗布液吸蔵体)
5 インキタンク部(塗布液収容部)
6 ペン先(塗布体)
7 インキ(塗布液)
11 突出部
12 土台部
13 連通孔
21 中空部分
20 内部空間
33,61,71 押圧片(押圧部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填した塗布液が内部流動可能な塗布液収容部と、塗布液を塗布するための塗布体とを有し、塗布液収容部と塗布体の間に塗布液を含浸する塗布液吸蔵体を備え、塗布液収容部と塗布液吸蔵体の間に塗布液を流通可能な流路を有する流路形成部が設けられた塗布具であって、
前記流路形成部は少なくとも1つの突出部と、押圧部とを有するものであり、
突出部は塗布体側に向かって突出し、内部に中空部分が形成され、中空部分と外部とを連通する連通孔が設けられており、
前記押圧部の少なくとも一部は塗布液吸蔵体に上方から接触していることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記押圧部は、前記突出部の側面から外方へ向かって略垂直に突出する平板状の突起であり、突出部の突出方向の基端部分から先端部分の近傍まで延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項4】
塗布液吸蔵体の一部が前記流路形成部の内部に配されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布具。
【請求項5】
前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塗布具。
【請求項6】
塗布液収容部は、下方に外部と内部空間とを連通する収容部側貫通孔が設けられており、
前記流路形成部は、土台部と突出部から形成され、前記土台部には筒状部が形成されており、筒状部は前記突出部の中空部分と連通するものであって、
前記流路形成部と塗布液収容部を取付けたとき、収容部側貫通孔と筒状部とが連通することを特徴とする請求項5に記載の塗布具。
【請求項1】
充填した塗布液が内部流動可能な塗布液収容部と、塗布液を塗布するための塗布体とを有し、塗布液収容部と塗布体の間に塗布液を含浸する塗布液吸蔵体を備え、塗布液収容部と塗布液吸蔵体の間に塗布液を流通可能な流路を有する流路形成部が設けられた塗布具であって、
前記流路形成部は少なくとも1つの突出部と、押圧部とを有するものであり、
突出部は塗布体側に向かって突出し、内部に中空部分が形成され、中空部分と外部とを連通する連通孔が設けられており、
前記押圧部の少なくとも一部は塗布液吸蔵体に上方から接触していることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記押圧部は、前記突出部の側面から外方へ向かって略垂直に突出する平板状の突起であり、突出部の突出方向の基端部分から先端部分の近傍まで延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項4】
塗布液吸蔵体の一部が前記流路形成部の内部に配されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布具。
【請求項5】
前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塗布具。
【請求項6】
塗布液収容部は、下方に外部と内部空間とを連通する収容部側貫通孔が設けられており、
前記流路形成部は、土台部と突出部から形成され、前記土台部には筒状部が形成されており、筒状部は前記突出部の中空部分と連通するものであって、
前記流路形成部と塗布液収容部を取付けたとき、収容部側貫通孔と筒状部とが連通することを特徴とする請求項5に記載の塗布具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−240299(P2012−240299A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112334(P2011−112334)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】
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